説明

グローブ補強部材

【課題】従来技術の欠点の少なくとも一部を克服し、安価に製造できる過伸展を防止するためのグローブ補強部材を提供する。
【解決手段】指および/または手を握り方向へは屈曲させるが過伸展させない、特にゴールキーパー用グローブのグローブ補強部材(1)を提供する。グローブ補強部材は少なくとも1つの屈曲領域(10)を有し、その屈曲領域(10)がグローブ補強部材(1)を少なくとも第1の方向に屈曲させ、少なくとも第2の方向には屈曲させない形状の湾曲を有している。また、少なくとも1つのこのようなグローブ補強部材を有するグローブも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指および/または手を握り方向へは屈曲させるが、過伸展させないグローブ用、特にゴールキーパー用グローブの補強部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱効果以外に、グローブは一般に手の保護に役立つ。手に対する機械的衝撃を遮断するか、少なくとも和らげることにより負傷せずに済む。例えば、作業用グローブは手を傷つけないようにするため一般に丈夫で破れ難い材料から成っている。
【0003】
ゴールキーパー用グローブには幾つかの役割がある。手の内側のボールを捉える力を増すことを別にすれば、鋭くシュートされたボールを逸らす際に受ける大きな機械的負荷から手を保護することが重要である。ゴールキーパー用グローブに付随する独特の危険は個々の指または親指の過伸展である。ゴールキーパーが手を広げてボールを逸らそうとしたとき、広げた手の辛うじてボールに届いた指が全衝撃を受けて過伸張する。それが指または手の捻挫、または場合によって骨折につながる。そのため、ここ数年来、スノーボード用グローブと同様の負荷を手に受けるゴールキーパー用グローブおよびその他のスポーツ用グローブに能動的な補強部材を備えることが知られている。このような補強部材によって、手の握り方向への屈曲は可能であるが、広げた手を反対方向、即ち、過伸展の方向へ屈曲することが防止される。ゴールキーパー用グローブの場合、鋭くシュートされたボールを逸らす際、広げた手、特に親指を含む個々の指がグローブによって能動的に支持される。
【0004】
所望の機械的特性を得るため、グローブ背面の特定の領域に2つの層を形成することが特許文献1によって知られている。柔軟かつ非屈曲第1層(例えば、適切なホイル)に一連の非圧縮体が配される。このような背面を有するグローブは第1柔軟層が変形に対して大きな抵抗力を有していないため容易に屈曲する。しかし、手およびグローブを広げると第2層の非圧縮体が互いに接触する。第1層の非屈曲特性と合わせてグローブ背面がグローブを広げた状態より更に過伸展の方向に屈曲することが防止される。
【0005】
別の方法が特許文献2によって知られている。特許文献にはヒンジ連結された複数の部品から成るグローブ補強部材が開示されている。それぞれが回転ピンと対応するベアリング・キャビティーとから成る結合体を有している。2つの結合体が一方向にのみ回転するように構成され、結合体の連鎖によってグローブを広げた状態より更に反対方向に屈曲するのが防止される。
【0006】
更に別の方法が特許文献3に示されている。この特許文献に開示されているグローブ補強部材は牽引体に通された複数の結合体から成っている。この構成は特許文献1のグローブ背面の構成と似ており、例えば、ワイヤーである牽引体が第1非屈曲層の機能を有している。
【0007】
しかし、過伸展を能動的に防止する周知のグローブ補強部材はすべて製造が困難である。前記構成において、まず、例えば、接着、縫合、または各々の非圧縮体の開口部に牽引体を通すことにより第2層の非圧縮体を非屈曲第1層に確実に固定する必要がある。この処理を自動化することは困難である。
【0008】
このことは複数のヒンジ連結された結合体から成る補強部材にも当てはまる。まず各々の結合要素を製造する必要がある。その後すべての結合要素を相互連結する必要がある。手を完全に保護するためには最大10個の補強部材が必要であり、そのためには大きな製造努力が必要でありコスト高となる。このため、今日まで過伸展を能動的に防止するグローブはプロ(セミプロ)用の一部の高価なグローブに限定されていた。特に、負傷する可能性が最も高いのは子供であるにも関わらず、過伸展防止機能を有する子供向けグローブを市場が受け入れる価格で製造することは困難であった。
【0009】
特許文献1に記載の背面を有するグローブの別の欠点は重量が比較的重くなることである。このことは、別の周知のグローブ補強部材を有するグローブにも当てはまる。その結果、ゴールキーパーの動作が緩慢になり、不意のシュートに素早く反応できなくなる。
【0010】
更に、周知のグローブ補強部材は一般にグローブの着用心地を悪くし、例えば、拳でボールを逸らす場合、指および/または手の背面に圧点が生じる。このため補強部材に非常に高い負荷が局部的に作用する。グローブ製造業者は複雑な緩衝機構を設けることによりこのような効果を回避しようとしている。しかし、複雑な緩衝機構を設けることにより更に価格が上昇すると共に、グローブが大きくなり補強部材の直接的な支持機能が低下する。
【0011】
最後に、複数の非圧縮体またはヒンジの使用により、ボールを拳で逸らす場合のコントロールが難しくなり、ボールが勝手な向に逸れることが往々にしてある。
【0012】
まったく別の技術分野、即ち、サッカーシューズの製造において、ロールオフ中は靴を屈曲させ、ボールをシュートするときには固定する湾曲した補強中敷を靴底に一体化する方法が特許文献4によって知られている。
【特許文献1】独国特許発明第3516545号明細書
【特許文献2】独国実用新案第20113431号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10010404号明細書
【特許文献4】独国特許発明第2732463号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の課題は、前記従来技術の欠点の少なくとも一部を克服し、安価に製造できる過伸展を防止するためのグローブ補強部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は少なくとも1つの屈曲領域を有して成る、指および/または手を握り方向へは屈曲させるが過伸展させないグローブ補強部材によって解決される。前記屈曲領域がグローブ補強部材を少なくとも第1の方向に屈曲させ、少なくとも第2の方向には屈曲させない形状の湾曲を有している。
【0015】
本発明によるグローブ補強部材は従来のグローブ補強部材とは根本的に異なる機械的原理に基づいている。ヒンジ連結された結合体あるいは非屈曲または非圧縮要素を有する材料層の代わりに、グローブ補強部材の少なくとも1つの屈曲領域の適切な形状を成す湾曲によって単方向の屈曲性がもたらされる。
【0016】
最も基本的な実施の形態において、本発明のグローブ補強部材が溝形を成す部品によって実現できる。つまり、溝形によりグローブ補強部材は溝の開放側には屈曲できるが反対方向に屈曲させようとしても使用材料が破壊するまで屈曲しない。溝形の湾曲は1つの空間方向にのみアーチ状に屈曲し、断面の湾曲線が、例えば、円弧アーチの一部を示す一方、長手方向の断面は湾曲しない。従って、後で説明する別のすべての実施の形態は、この基本原理を任意に変更して湾曲を適切な形状にすることによりグローブ補強部材に異方性屈曲特性を持たせているに過ぎない。
【0017】
本発明のグローブ補強部材は前記構造を成す従来のものと比較して飛躍的に容易かつコスト効率よく製造できることは明白である。最も単純な実施の形態において、適切なプラスチック材料を射出成形することによって形成できる部品がグローブ補強部材の不可欠な部品として使用される。個々の部品を組み立てる複雑な工程を必要としない。更に、本発明のグローブ補強部材は、例えば、異なる射出成形型を使用することにより、容易に指の寸法に合わせることができる。
【0018】
好ましい実施の形態において、グローブ補強部材の少なくとも1つの屈曲領域がドーム形、即ち、1つ以上の方向に湾曲している形状を成している。ドーム形の湾曲の断面および長手方向の断面のいずれにおいても切断線が湾曲している。溝形の湾曲と異なり、ドーム形の湾曲は屈曲を所定の位置、即ち、基本的にドーム形湾曲の中心を通る線に沿った位置に局部化できる。
【0019】
特に好ましい実施の形態において、屈曲領域が指および/または手首の関節領域に配される。手首または指の関節を屈曲すると、関節の外面が上方に湾曲するため、別の手段を用いなくても同方向に湾曲しているグローブ補強部材の屈曲領域が確実に関節上に配される。指および/または手の背面形状とその上に配されることが好ましいグローブ補強部材の形状とが一致していることにより、従来の角切りされた形状を成す補強部材に見られた局部圧点が生じない。グローブ補強部材が指の複数の関節に対応する複数の屈曲領域を有していることが好ましい。
【0020】
基本的に硬い相互連結領域が溝形の湾曲を成していることが好ましい少なくとも1つの屈曲領域に隣接配置されていることが好ましく、相互連結領域が変形を防止する少なくとも1つの補剛要素を有していることが好ましい。屈曲領域とは対照的に前記硬化領域は湾曲を成していてもグローブ補強部材が屈曲される方向とは関わりなく基本的に屈曲しないことが好ましい。この場合、相互連結領域が湾曲していることにより、グローブ補強部材を効果的かつ確実に指または手の背面に配することができる。
【0021】
構造が簡単であるためグローブ補強部材を好ましい製造方法である一体成形によって製造できる。一体成形部品を少なくとも2つの異なるプラスチック材料を用いた多成分射出成形によって形成することにより更に複雑な特性を与えることができる。例えば、相互連結領域と弾性の異なるプラスチック材料用いて屈曲領域を形成できる。
【0022】
一般に、従来の補強部材は永久接着またはベルクロ(商標)接続によって正しい位置に保持される。これに反し、本発明のグローブ補強部材はグローブの収容部内をスライドさせるのに適した材料から成るおよび/または適切なコーティングが施されていることが好ましい。既に説明したように、湾曲の使用により、指または手の背面形状とグローブ補強部材の内側形状とが一致するため、グローブ補強部材は基本的に正しい位置に自動的にスライドする。
【0023】
この作用は、好ましい実施の形態のように、少なくとも1つの屈曲領域および/または少なくとも1つの相互連結領域の湾曲が指の背面から側面に伸びている場合特に大きくなる。更に、このような形状により、例えば、プレーヤーのサッカーシューズの硬いスパイクによる指の側面の負傷が防止される。また、少なくとも1つの屈曲領域および/または少なくとも1つの相互連結領域に少なくとも1つの切欠を設けることが考えられる。このような切欠を設けることにより、グローブ補強部材の重量を更に低減できる。また、切欠によりグローブ補強部材のそれぞれの区域の屈曲特性を選択的に変更できる。
【0024】
本発明のグローブ補強部材の更に別の好ましい実施の形態は従属クレームに規定されている。
【0025】
別の態様によれば、本発明は上記実施の形態の1つに基づく少なくとも1つの補強部材を有して成るグローブ、特にゴールキーパー用グローブに関連している。このグローブは少なくとも1つのグローブ補強部材が好ましくは着脱可能に装着される部材を手の背面に有していることが好ましい。また、この部材は手の背面の負傷を防止するためのプレートとして配されていることが好ましい。このようなグローブにより、過伸展が防止されるのみならず、例えば、ゴールキーパーがスパイクの鋭いエッジに手を接触して負傷することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の現時点における好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
以下、ゴールキーパー用グローブのグローブ補強部材を参照して、本発明の現時点における好ましい実施の形態について説明する。しかし、本発明は別の種類のグローブ、例えば、スノーボード用グローブや親指を含む個々の指または手全体が過伸展する危険を伴う作業をするための作業用グローブにも適用できることは当然である。
【0028】
図1は1つのグローブ補強部材1を示す斜視図である。図から分かるように、2つの相互連結領域20によって接続されている上方に大きく湾曲した領域10が3つある。後端および前端に端部領域30を有している。
【0029】
破線矢印が示すように、各々の領域10は伸縮自在に屈曲し、グローブ補強部材1を下方に屈曲する。しかし、反対方向には材料が破壊するまで大きな抵抗を示す。図1の破線矢印は、屈曲領域10を屈曲させたときの座屈線を略示している。図に示すように、座屈線はそれぞれ略ドーム状に湾曲した領域の略中心から伸びている。しかし、座屈線の位置は屈曲領域10の形状によって概略規定されるだけであり、下部に位置する指の解剖学的状態に応じて一定の限度内において変化する(図2)。領域10の湾曲形状がドーム状でなくなる程前記対応性が大きくなる。グローブ補強部材が完全に溝形の湾曲(図示せず)を有している場合には同じ力によって屈曲領域の任意の場所を下方に屈曲できる。
【0030】
屈曲領域10と10との間に相互連結領域20が配されている。相互連結領域20も湾曲を成している。しかし、この湾曲は完全に溝形を成していることが好ましく、関節を除く指の背面輪郭に対応していることが好ましい。
【0031】
グローブ補強部材の屈曲領域10のみを弾性体とするため、各々の相互連結領域20にリブ21を設ける。これにより、グローブ補強部材のこれ等の領域は湾曲しているにも関わらず基本的に硬くなる。また、別の方法、例えば、相互連結領域20を非弾性材料によって形成することにより、このような特性を得ることもできる。以下に詳細に説明するように、好ましい実施の形態におけるグローブ補強部材1は一体成形されていることが好ましい。しかし、適切な方法を用いることにより幾つかの異なる材料から成ることができる。リブ21によって硬化された相互連結領域20の代わりに、指に沿って伸び別の処理を必要とせず高い剛性を示すスリーブのような管状の相互連結領域を配することができる(図示せず) 。別の実施の形態(図示せず)は、1つ以上の補剛リブ21を用いるのみで湾曲した相互連結面を有していない。
【0032】
図1の現時点における好ましい実施の形態において、相互連結領域20は指の側面を囲むように伸び(図1には示さず)、例えば、プレーヤーのサッカーシューズの固いスパイクに接触することによる負傷等から指を保護する。屈曲領域10において、屈曲を容易にするため側面方向の長さが若干短くなっている。
【0033】
端部領域30は基本的に相互連結領域20に対応している。しかし、例えば、図1のように3つではなく1つというように、補剛リブ21の数を相互連結領域20より少なくすることができる。
【0034】
図2aは図1の補強部材1がグローブ(図示せず)内の何処に配されるかを示す概略図である。図から容易に分かるように、3つの屈曲領域10が保護する指の3つの関節の上部に配され、基本的に硬い相互連結領域20が関節と関節との間を直線状に伸びる骨を覆っている。図2bは屈曲状態にあるグローブ保護部材を示している。図から分かるように、弾性を有する屈曲領域10が屈曲しているのに対し、実質的に硬い相互連結領域20は変化しない。従って、グローブ保護部材は自ら指の屈曲輪郭に順応する。その結果、グローブ保護部材はその内側形状が指の背面形状に対応し指の背面に“ラッチ”する。従って、グローブ保護部材は自動的に正しい位置に移動するか、またはその位置を保持する。
【0035】
そのために、グローブ保護部材をグローブの一般にはポケットのような空洞である収容部内の一定の範囲を容易にスライドする材料で形成することが好ましい。これは、例えば、摩擦を低減する、例えば、デュポン社が販売しているテフロン(商標)のようなPTFE材料をコーティングするおよび/またはグローブ内の収容部(図示せず)にそのような摩擦を低減する材料をコーティングすることにより達成できる。最後に、一連のドーム形の屈曲領域10および溝形の相互連結領域20によってもたらされるグローブ保護部材1の良好なフィット感覚により、指の関節に位置を合わせるようになっていない一般には平板状の結合体を有する従来の補強部材と比較して着用の快適性が大幅に向上する。
2つの端部領域30は保護する指の先端および後端より若干先に伸びていることが好ましい。これにより、ボール等が前面から当たったとき、それによって生じた負荷が直接グローブ保護部材1によって吸収されるため指の先端部が更に保護される。後端において、端部領域30は過伸展負荷をグローブ補強部材1から手の全領域に確実に伝達する少なくとも1つの延長部を有している。
【0036】
また、図1、2a、および2bはグローブ補強部材1の上方に向いた上面の形状が、リブ21を除き、基本的に無保護状態の指の輪郭に対応していることを示している。これにより、例えば、拳でボールを逸らす場合など、上面を使用してボールを逸らすことが容易になる。一連の比較的厚く角切りされエッジの多い形状を成す硬い部材を有する周知の補強部材とは対照的に、図1、2a、および2bのグローブ補強部材は特定の方向にボールを逸らすのを容易にする。必要があれば、硬化リブの外側を第2の湾曲面で覆うことができる。これにより、一般的な指の背面形状(図示せず)にほぼ完全に一致させることができ、ボールを逸らす方向をより正確に制御できる。
【0037】
図3はグローブ補強部材1の端部領域30に配される付加錘40を示している。付加錘40により、グローブの動力学的特性、従って、ゴールキーパーの動作に影響を与えることができる。例えば、指先が重くなると、ゴールキーパーが素早く腕を上げてできるだけ広い領域を手でカバーしようとしたとき、その遠心力により手が自動的に大きく広がる。付加錘は様々な方法によってグローブに装着できる。例えば、クリップ止め、ネジ止め、側面挿入、あるいはその他の着脱可能な方法によって装着できる。これにより、付加錘を質量が異なる別の錘と交換するか、または付加錘40を装着しないでグローブ補強部材1を使用できる。一般に付加錘40を永続的にグローブ補強部材1に一体化することも考えられる。また、端部領域30の好ましい実施の形態を除き、付加錘40をグローブ補強部材1の別の任意の部分に配することができる。更に、指に応じて異なる付加錘を使用することも考えられる。
【0038】
図4および5はグローブ補強部材1の現時点における好ましい実施の形態がどのようにしてグローブ(図示せず)内において完全な保護システムに一体化されるかを示す図である。必要があれば親指(図示せず)を含めた各々の指のグローブ保護部材1が手の背面プレート50に着脱可能に装着される。付加錘40に関連して既に説明したように、当業者は多くの装着方法を知っている。重要なことは、各々のグローブ補強部材1に生じた負荷を手の背面プレート50に確実に伝達できるよう相互連結することである。図4および5の実施の形態において、グローブ保護部材1が前方から収容部52に挿入される。収容部52の上端側は、必要があれば適切なラッチ手段を備えた補強リッジ53によって閉じられている。後端領域30と収容部52との好ましい接触方法にフォーム・フィット接触があり、これにより必要な安定性が得られる。
【0039】
手の背面プレート50は、例えば、ゴールキーパーが開いた手を別の選手のスパイクシューズで踏まれても保護されるよう手の背面全体を覆うことが好ましい。図5の側面図が示すように、手の背面プレート50の後部が手の側面を包んで、それによって良好なフィット感覚が得られると共に、手の側面も保護される。図4および5には示してないが、手の背面プレート50は、図1〜3の個々のグローブ補強部材1が指の関節を保護するのと同様に、手首を過伸展から保護する湾曲を有する屈曲領域を後部に設けることもできる。
【0040】
前記実施の形態のグローブ補強部材は、射出成形によって一体プラスチック部品として製造されることが好ましい。プラスチック材料の押出成形による製造も可能である。何れの方法によっても安価かつ軽量のグローブ補強部材の製造が可能であると共に、対応する鋳型を用いることにより、例えば、子供向けグローブのように、サイズの異なるグローブ補強部材を容易に製造できる。適切なプラスチック材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはポリプロピレン(PP)である。使用開始後暫くしてサポート機能が低下したとき熱等により初期状態に戻すことができる形状記憶材料の使用も考えられる。しかし、射出成形によるコスト効率のよい製造方法によって、グローブ補強部材を消耗品として使用できる。この場合、永続的に屈曲するかまたは不安定になったグローブ補強部材を交換すればよい。
【0041】
更に進んだ実施の形態において、一体成形が好ましいグローブ補強部材を1つ以上のプラスチック材料を用いた多成分射出成形によって製造できる。例えば、硬いプラスチック材料を用いて相互連結領域20を形成し、特に軟らかい弾性プラスチック材料を用いて屈曲領域10を形成することにより、特に子供向けグローブに対し、屈曲抵抗を小さくできる。多成分射出成形は1つ以上のノズルを用いて同時に行うか、または連続的に行うことができる。別の方法として、グローブ補強部材の半製品の周囲に別のプラスチック材料を射出できる。例えば、充分硬い材料(例えば、金属または炭素繊維を含む複合材料)から成る相互連結領域を、屈曲領域10を形成するための軟らかいプラスチック材料で囲むことができる。
【0042】
最後に、グローブ補強部材のそれぞれの区域に選択的に切欠(図示せず)を設けることにより、前記実施の形態に変更を加えることができる。切欠により屈曲特性を変更できる。また、全体の重量が更に低減する。切欠の配置、材料の選択、グローブ補強部材の正確な形状は有限要素解析によって容易に最適化できる。
前記グローブ補強部材1はグローブに着脱可能に装着されることが好ましい。これにより複数の個別調整が可能になる。例えば、ゴールキーパーが小さい屈曲抵抗を好む場合、硬いグローブ補強部材を軟らかいものと交換できる。長さを個別に調整できる他、幅を調整して指の厚さに合わせることもできる。最後に、視覚の観点から、補強部材がグローブ背面の透明“ポケット”に配されている場合には、例えば、特定のトリコット色に調和する色に調整することもできる。更に、着脱可能な装着方法により、ゴールキーパーは破損するかまたは剛性が不足しているグローブ補強部材を直ちに、即ち、試合中に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるグローブ補強部材の現時点おける好ましい実施の形態の概略斜視図。
【図2a】グローブ(図示せず)内においてグローブ補強部材が指の背面に配される様子を示す図。
【図2b】手を握り方向に屈曲したときの図2aのグローブ補強部材の様子を示す図。
【図3】図1および2の実施の形態の一端に錘が付加される様子を示す概略図。
【図4】図1〜3の複数のグローブ補強部材が着脱可能に装着された手の背面用プレートの斜視図。
【図5】図4のグローブ補強部材が装着された手の背面用プレートの側面図。
【符号の説明】
【0044】
1 グローブ補強部材または保護部材
10 屈曲領域
20 相互連結領域
21 補剛要素または補剛リブ
30 端部領域
40 付加錘
50 手の背面プレートまたは部材
52 収容部
53 補強リッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指および/または手を握り方向へは屈曲させるが過伸展させないグローブ補強部材(1)であって、
少なくとも1つの屈曲領域(10)を有して成り、
前記屈曲領域(10)が前記グローブ補強部材(1)を少なくとも第1の方向に屈曲させ、少なくとも第2の方向には屈曲させない形状の湾曲を有して成る
ことを特徴とする部材(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの屈曲領域(10)がドーム形の湾曲を有して成ることを特徴とする請求項1記載の部材(1)。
【請求項3】
前記屈曲領域(10)が指および/または手首の関節領域に配されていることを特徴とする請求項1または2記載の部材(1)。
【請求項4】
指の複数の関節に対応する複数の前記屈曲領域(10)を有して成ることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項5】
基本的に硬い相互連結領域(20)が前記少なくとも1つの屈曲領域(10)に隣接配置されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項6】
前記相互連結領域(20)が溝形の湾曲を有して成ることを特徴とする請求項5記載の部材(1)。
【請求項7】
前記相互連結領域(20)が変形を防止する少なくとも1つの補剛要素(21)を有して成ることを特徴とする請求項5または6記載の部材(1)。
【請求項8】
手の背面から基本的に指の先端まで達するのに充分な長さを有して成ることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項9】
指の先端を越える長さを有して成ることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項10】
一体成形されていることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項11】
少なくとも2つの異なるプラスチック材料を用いた多成分射出成形によって形成されていることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項12】
グローブの収容部内をスライドさせるのに適した材料から成るおよび/または適切なコーティングが施されていることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項13】
付加錘(40)が更に装着されて成ることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項14】
前記付加錘(40)が先端に配されていることを特徴とする請求項13記載の部材(1)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの屈曲領域(10)および/または前記少なくとも1つの相互連結領域(20)が指の側面を囲むように伸びていることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの屈曲領域(10)および/または前記少なくとも1つの相互連結領域(20)が少なくとも1つの切欠を有して成ることを特徴とする請求項1〜15いずれか1項記載の部材(1)。
【請求項17】
請求項1〜16いずれか1項記載のグローブ補強部材(1)を少なくとも1つ有して成ることを特徴とするグローブ。
【請求項18】
前記グローブ補強部材(1)が収容部に交換可能に配されていることを特徴とする請求項17記載のグローブ。
【請求項19】
前記少なくとも1つのグローブ補強部材(1)が装着される部材(50)を手の背面に更に有して成ることを特徴とする請求項17または18記載のグローブ。
【請求項20】
前記手の背面の前記部材(50)が該手の背面の負傷を防止するためのプレートとして配されていることを特徴とする請求項17〜19いずれか1項記載のグローブ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−280939(P2006−280939A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93879(P2006−93879)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(503052173)アディダス インターナショナル マーケティング ベー ヴェー (23)
【氏名又は名称原語表記】adidas International Marketing B.V.