ケイ素結合ポリメタクリレートを含有する有機変性シリカエアロゲル
本発明は、種々の用途向けの、強化エアロゲルモノリス、並びに繊維強化複合体を提供する。本発明はまた、組成物と、上記モノリス及び上記組成物の調製方法とを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府公園の研究開発に関する記述
本発明は、連邦航空宇宙局(NASA)より授与された、第NAS09−03022号規約(SBIR(中小企業技術革新制度)助成金)の下、アメリカ合衆国政府の支援により部分的になされたものである。
【0002】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2004年1月6日に出願された米国暫定特許出願第60/534,804号の優先権の利益を主張する(全体を参照し、本明細書に組み入れる)。
【0003】
本発明は、溶媒充填型の、ナノ構造のゲル構造体および繊維強化ゲル複合体の生成に関する。これらの材料は、超臨界流体抽出法(過臨界溶媒抽出法)で移動相溶媒を完全に抽出した後に、ナノ多孔性エアロゲル構造体となる。上記複合体およびエアロゲル構造体に関する配合および製造方法、並びにそれらの機械的特性の改良に基づく使用方法が提供される。
【背景技術】
【0004】
エアロゲルは、構造的特徴、すなわち、低密度、開放セル構造、大きな表面積(900m2/g以上であることが多い)およびナノメートル未満の孔サイズに基づく一群の材料を表現するものである。脆い孔から、孔を潰すことなく流体を抽出するためには、一般に、超臨界および亜臨界流体抽出技術が使用される。エアロゲルは、特定の材料よりも、むしろ一群の構造を表す名称であるため、多様なエアロゲル組成物が知られており、例えば、無機、有機、および無機/有機ハイブリッド組成物が含まれる(N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45)。
【0005】
無機エアロゲルは、金属アルコキシドに基づくのが一般的であり、シリカ、各種カーバイド、およびアルミナ等の材料が含まれる。有機エアロゲルには、ウレタンエアロゲル、レゾルシノールホルムアルデヒドエアロゲル、およびポリイミドエアロゲルが含まれるが、これらに限定されるものではない。有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に有機変性シリカ(ormosil,organically modified silica)エアロゾルである。この好ましい実施態様では、上記有機成分を、シリカネットワークに完全に分散させるか、または化学結合させる。分散させたまたは弱く結合させた有機材料は、製造プロセスの間中、比較的容易に流出しうることが判明している。無機構造体に共有結合している有機材料は、流出量の大幅な減少または解消となるであろう。
【0006】
低密度(0.01〜0.3g/mL)エアロゲル材料は、最高の硬質フォーム(ポリイソシアヌレート、ポリウレタン等)よりも十分に良好な最高の固形断熱材であると広く考えられている。例えば、エアロゲル材料の熱伝導率は、37.8℃および1気圧の条件下で、15mW/m・K未満であることが多い(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)。エアロゲルは、主に、伝導(低密度、固体ナノ構造体によるねじれた熱伝達経路)と、対流(非常に小さい孔サイズが対流を最小化する)と、放射(赤外線吸収性または散乱性のドーパントが、エアロゲルマトリックス中に容易に分散される)とを最小化することで、断熱材として作用する。エアロゲルは、配合次第で、極低温〜550℃以上の温度範囲で十分に機能しうる。より高温では、エアロゲル構造体は、収縮、焼結する傾向があり、当初の孔体積および表面積をほとんど失ってしまう。エアロゲル材料はまた、他にも、消費及び産業の両方の市場で有用な、数多くの興味深い音響的、光学的、機械的および化学的特性を示す。
【0007】
低密度断熱材は、コア断熱材が著しい圧縮力を受ける用途で、数多くの断熱問題を解決するために改良されている。例えば、ポリマー材料が、中空ガラス微小球と混合され、一般に、極めて堅い圧縮抵抗材料であるシンタクチックフォームを生成させる。シンタクチック材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチックフォーム材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチック材料は、比較的硬質であり、Aspen Aerogls,Inc.製の(繊維で強化されたエアロゲルマトリックス)軟質エアロゲル複合体と比べて熱伝導率が高い。
【0008】
エアロゲルを、ゲル前駆体から生成させることができる。軟質繊維強化エアロゲルを含む種々の層を、容易に結合し、そして成形して、一軸または複数の軸で圧縮された場合に、任意の軸に沿った圧縮に強い本体を与えるプレフォームを与えることができる。このように、圧縮成形されたエアロゲル体は、シンタクチックフォームよりも十分に優れた断熱性を示す。これらの材料の物性を改良する方法、例えば、密度を最適化し、熱抵抗性を高め、発塵性を最小化する等の方法は、種々の産業や用途、例えば、水中の石油/ガスパイプライン等への外断熱材としてのこれらの材料の大規模使用を促進するであろう。
【0009】
シリカエアロゲルは、溶媒(ゲル溶媒)と共に、低密度セラミックまたは架橋ポリマーマトリックスから構成される場合、脆いのが普通である。取り扱いや加工には細心の注意が必要である。
シリカゲル化点の後は、シリカゲル構造体の中で、重合シリカ鎖の拡散と、その後の固体ネットワークの成長とは、非常に遅くなるが、技術上周知のように、最高の熱的/機械的特性を有するエアロゲルを得るには、ゲル化後の一定時間にわたる原料ゲル液(母液)の維持が必須である。その間にゲルが乱れ(disturbance)なく「熟成」する現象は、「シネレシス」といわれる。シネレシス条件(時間、温度、pH、固体濃度)は、エアロゲル生成物の品質に重要である。
【0010】
特許および学術文献で開示されているゾル−ゲル法によるモノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル生成物の通常の方法には、決まってバッチキャスティングが使用される。バッチキャスティングは、ここでは、ある容量全体のゾルに触媒作用を及ぼしてその全量を同時にゲル化させるものと規定する。モノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル構造体を生成させる別の方法は、ゲル化前に、ゾルに連続的に触媒作用を及ぼす(繊維強化複合体の場合には、繊維の存在下で)ものであり、米国特許出願公開第20020094426号明細書に開示されている。ゲル生成技術は、当業者に周知である。例には、希釈金属酸化物ゾルのpHおよび/または温度をゲルが生ずるまで調節する方法が含まれる(R.K.Iler,Colloid Chemistry of Silica and Silicates,1954,chapter 6;R.K.Iler,The Chemistry of Silica,1979,chapter 5;C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,chapters 2 and 3)。無機エアロゲルを生成させるための好適な材料は、酸化物を生成しうる大部分の金属、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム等である。特に好ましいのは、入手しやすさ、低コスト、加工しやすさ等のため、加水分解されたシリケートエステルのアルコール溶液から主に生成したゲルである。
【0011】
有機エアロゲルが、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシノールホルムアルデヒド等から製造することができることも当業者に知られている(例えば、N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45を参照)。
繊維強化エアロゲル複合体の有効性が、エアロゲル材料に数多くの用途領域を切り開いた。上記複合体は、大部分の有用な品質のエアロゲルと、エアロゲル複合体の大きな部分の製造を可能にする。上記複合体を、より効率的に、改良された機械的特性を有するより大きな部分として、そしてより低コストで製造することができる。真空断熱パネル(VIP,vacuum insulation panel)は、断熱材市場向けの上記高性能製品の一例である。低密度の繊維強化シリカエアロゲルは、17.5psiの荷重下で40%超収縮する。VIP構造体の中に生ずる圧力に耐えるための強い(stiffer)エアロゲル複合体を生成させるためには、別の強化法が必要である。
【0012】
この20年間、シリカネットワークに直接結合されている第二のポリマー相の導入によって、多数の研究者がモノリスゲル構造体の生成の際、クラック傾向を抑制するために、シリカエアロゲルおよびシリカキセロゲルの機械的特性の改良を試みてきた。これらの試みは、多くのタイプの無機−有機ハイブリッド材料の合成へとつながった。最も注目に値する例は、次のとおりである。
【0013】
L.Leventis,C.Sotiriou−Leventis,G.Zhang and A.M.Rawashdeh,Nano Letters,2002,2(9),957−960には、シリカヒドロゲルのシラノール基を、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)と架橋させることによる、シリカエアロゲル強度の100超のファクターの向上が報告されている。しかし、得られる材料は、Si−O−C−のケイ素と酸素の間に加水分解性の結合を含み、またSi−C結合を含まない。
H.Schmidt,J.Non−Cryst.Solid,73,681,1985には、ポリメタクリレート(以下、「PMA」という。)の導入によるシリカキセロゲルの引張特性の向上が報告されている。
【0014】
以下の執筆者もまた、PMA/シリカキセロゲルの製造と組織的構造研究を行っている:J.H.Harreld,B.Dunn and J.I.Zink,J.Mater.Chem.,1997,7(8),1511−1517;Z.H.Huang and Y.K.Qiu,Polymer,38(3),1997,521−526;D.L.Ou,A.Adamjee,S.L.Lana and A.B.Seddon,Ceramic,Tran.,1998,10,291−294;D.Donescu,M.Teodorescu,S.Serban,L.Fusulan,C.Petcu,European Polymer Journal,35(1999),1679−1686.そのうちZinkらとOuらは、相分離を防いで透明なPMA/シリカキセロゲルを生成させる方法を報告している。
【0015】
エアロゲルとキセロゲルを区別すると、エアロゲルは、低密度、高い孔体積およびナノメートルの孔サイズを特徴とする、ユニークな一群の材料である。高い孔体積とナノメートルの孔サイズのため、一般に表面積が大きく、熱伝導率が低い。その高い多孔性は、固体熱伝導率の低さにつながり、そして気体の熱伝導が部分的に抑制される。というのは、ナノメートルの孔サイズは、典型的には、気体の平均自由行程よりも小さいからである。エアロゲルのこうした構造形態は、断熱材用途では大いに有利である。例えば、周囲条件下で、熱伝導率は、シリカエアロゲルの場合、15mW/m・K未満であることが測定されている(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)、そして有機エアロゲルの場合、12mW/m・Kの低さである(レゾルシノール−ホルムアルデヒドから構成されるエアロゲル等;R.W.Pekala and L.W.Hrubesh、米国特許第5,731,360号明細書を参照)。これは、キセロゲルとは大きく異なり、キセロゲルは、エアロゲルよりも高密度であり、そして絶縁コーティング等のようなコーティングとして使用される。
【0016】
ゾル−ゲル法は、多種多様な無機、有機およびやや少数のハイブリッド無機−有機キセロゲル、エアロゲルおよび複合体の合成に使用されてきた。シリカゲルは、無機およびハイブリッド無機−有機材料の合成用のベース原料として使用されることが多い。シリカベースエアロゲル合成用の関連前駆材料には、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、単量体のアルキルアルコキシシラン、ビストリアルコキシアルキルまたはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン等が含まれるが、これらに限定されるものではない。種々のポリマーが、シリカゲル中に導入され、得られるゲル、キセロゲル(J.D.Mackenzie,Y.J.Chung and Y.Hu,J.Non−Crystalline Solid 147&148(1992),271−279;Y.Hu and J.D.Mackenzie,J.Mater.Science,27(1992)を参照)、エアロゲル(S.J.Kramer,F.Rubio−Alonso and J.D.Mackenzie,MRS Proc.Vol.435,295−300,1996を参照)の機械的特性が改良されてきた。エアロゲルは、ウェットなゲルを、構造への変化をゼロまたは最小限に抑えるようにして乾燥させると得られる。これは、典型的には、溶媒または(乾燥工程の補助に共溶媒を使用する場合は)混合溶媒の臨界点超で、ゲルから溶媒相を除去して達成される。
【0017】
シリカゲルマトリックス中に分散された有機ポリマーの物理的混合物は、得られるハイブリッド材料の物理的、化学的および機械的特性に影響を及ぼしうる。シリカゲル構造体に、典型的には、Si−OH(シラノール)基への水素結合により、弱く結合しているポリマー材料は、製造工程中の相分離のために、上記構造体の中に不均一に分散する可能性がある。複合体のエアロゲル製造の場合には、弱く結合または会合したポリマードーパントは、常用の溶媒交換段階の際の、アルコゲルまたはヒドロゲルのエアロゲルへの変換の際に流出する可能性がある。ドーパントポリマーまたは改質剤の複合体構造への結合を改良する単純な方法は、Leventisら(Nano Letters,2002,2(9),957−960および米国特許出願公開第20040132846号明細書)に教示されているような、完全な形のシリカゲル構造体の中に本来存在するシラノール基を種々の反応性部分(イソシアネート等)と選択的に反応させる方法である。得られる化学構造がSi−O−X結合を生じさせる場合には、上記基は、水の存在下で、加水分解切断を容易に受ける可能性がある。
【0018】
ウェットなゲルは、共連続の固相と孔の液相とから成る、質量フラクタル特性を有する構造体を呈することが多い。上記構造体では、孔の液相がサンプル体積の実に98%を占める場合がある。エアロゲルの構造は、元のゲルの構造に非常に似ている。というのは、ウェットなゲルを、ゲル構造崩壊の原因となる毛細管力をなくす超臨界法で乾燥させるからである。対照的に、キセロゲルの構造は、乾燥中に大きく変化する。蒸発乾燥工程の際に、固体ネットワークに作用する毛細管力のためである。蒸発の際、固体ネットワークにかかる毛細管圧は、従って、孔の大きさ(例えば、孔径)に反比例するので、孔がナノメートル(10-9)領域の場合には、非常に大きなものとなりうる。蒸発乾燥の際に、生じるこれらの表面張力は、粒子の配位(coordination)数が多くなるので、キセロゲル製造の際にゲルネットワークの折り重なりや凝集を引き起こす。
【0019】
言い換えると、キセロゲルは、ウェットなゲルの通常の(蒸発)乾燥、すなわち、当初の一様なゲル体の大幅な収縮(および大部分の破壊)と同時に、温度の上昇または圧力の降下によって生成される。孔液の蒸発に伴うゲル体のこの大幅な収縮は、当該液がゲル体中に逃げ込む際に孔壁に作用する毛細管力に起因する。これにより、フィリグラン、ウェットなゲルの高多孔性無機ネットワークが崩壊する。構造体の崩壊は、上記ゲルネットワークが、表面張力に起因する圧縮力に耐えるように十分に強くなるととまる。
【0020】
得られたキセロゲルは、最密球状構造を有するが、孔は、TEMではもはや観察されなかった。これは、そうした孔が空間充填型であることを示唆している。従って、乾燥キセロゲル構造体(骨格相と多孔相の両方を含む)は、元のウェットなゲル構造の収縮/変形版である。キセロゲルとエアロゲルとは、乾燥手順の違いのため、構造及び材料特性が大きく異なる。例えば、表面積、孔体積、および代表的Si原子に対して立体的に接近可能なペンダント型の反応性側基の数は、エアロゲル構造体のほうが、対応するキセロゲル構造体(同じ出発原料であるが、蒸発法で乾燥させ、生成させた)よりも、平均的には非常に多い。言い換えると、キセロゲルの調製に一般的に用いられる溶液または混合液は、単に乾燥条件を変えるだけでは、エアロゲルの調製には使用できない。というのは、得られる生成物が、自動的にエアロゲルの密度を有する訳ではないからである。このように、キセロゲルとエアロゲルとの間には、それらの表面積、反応性、孔体積、熱伝導率、圧縮性、機械的強度、弾性係数および他の諸特性を大きく左右するような根本的な組成上の差異が存在する。
【0021】
従って、キセロゲルとの比較において、エアロゲルは、膨張された構造体であり、溶媒充填ゲル構造体に非常に似通っていることが多い。エアロゲルのTEM顕微鏡写真が、大きな格子空洞に隣接する薄いクラスター集合を示すことが多い。窒素吸着法による多孔性の測定ではまた、ナノメートルサイズレベルでの構造的差異が示される。エアロゲルは、対応するキセロゲルと比較して、孔体積が2倍超であり、そして高い相対圧力(>0.9)下での大きな吸着量からも明らかなように、孔サイズがかなり大きい(C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,Chapter 9を参照)。エアロゲルとキセロゲルとの間の構造的差異のため、これら2種の材料の物理的特性、例えば、誘電率、熱伝導率等は大きく異なる。従って、たとえ同じ元素組成から出発しても、エアロゲルとその対応キセロゲルは、完全に異なる材料であり、両者の関係はどちらも同じ糖分子からなるグラニュー糖と綿菓子の関係にやや似ている。
【0022】
本明細書での文献の引用は、いずれかが関連先行技術であることを承認するものではない。文献の日付または内容に関する表示、表明はいずれも出願人に得られた限りでの情報に基づくものであり、文献の日付または内容の正しさを何ら承認するものではない。
エアロゲルは、構造的特徴、すなわち、低密度、開放セル構造、大きな表面積(900m2/g以上であることが多い)およびナノメートル未満の孔サイズに基づく一群の材料を表現するものである。脆い孔から、孔を潰すことなく流体を抽出するためには、一般に、超臨界および亜臨界流体抽出技術が使用される。エアロゲルは、特定の材料よりも、むしろ一群の構造を表す名称であるため、多様なエアロゲル組成物が知られており、例えば、無機、有機、および無機/有機ハイブリッド組成物が含まれる(N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45)。
【0023】
無機エアロゲルは、金属アルコキシドに基づくのが一般的であり、シリカ、各種カーバイド、およびアルミナ等の材料が含まれる。有機エアロゲルには、ウレタンエアロゲル、レゾルシノールホルムアルデヒドエアロゲル、およびポリイミドエアロゲルが含まれるが、これらに限定されるものではない。有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に有機変性シリカ(ormosil,organically modified silica)エアロゾルである。この好ましい実施態様では、上記有機成分を、シリカネットワークに完全に分散させるか、または化学結合させる。分散させたまたは弱く結合させた有機材料は、製造プロセスの間中、比較的容易に流出しうることが判明している。無機構造体に共有結合している有機材料は、流出量の大幅な減少または解消となるであろう。
【0024】
低密度(0.01〜0.3g/mL)エアロゲル材料は、最高の硬質フォーム(ポリイソシアヌレート、ポリウレタン等)よりも十分に良好な最高の固形断熱材であると広く考えられている。例えば、エアロゲル材料の熱伝導率は、37.8℃および1気圧の条件下で、15mW/m・K未満であることが多い(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)。エアロゲルは、主に、伝導(低密度、固体ナノ構造体によるねじれた熱伝達経路)と、対流(非常に小さい孔サイズが対流を最小化する)と、放射(赤外線吸収性または散乱性のドーパントが、エアロゲルマトリックス中に容易に分散される)とを最小化することで、断熱材として作用する。エアロゲルは、配合次第で、極低温〜550℃以上の温度範囲で十分に機能しうる。より高温では、エアロゲル構造体は、収縮、焼結する傾向があり、当初の孔体積および表面積をほとんど失ってしまう。エアロゲル材料はまた、他にも、消費及び産業の両方の市場で有用な、数多くの興味深い音響的、光学的、機械的および化学的特性を示す。
【0025】
低密度断熱材は、コア断熱材が著しい圧縮力を受ける用途で、数多くの断熱問題を解決するために改良されている。例えば、ポリマー材料が、中空ガラス微小球と混合され、一般に、極めて堅い圧縮抵抗材料であるシンタクチックフォームを生成させる。シンタクチック材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチックフォーム材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチック材料は、比較的硬質であり、Aspen Aerogls,Inc.製の(繊維で強化されたエアロゲルマトリックス)軟質エアロゲル複合体と比べて熱伝導率が高い。
【0026】
エアロゲルを、ゲル前駆体から生成させることができる。軟質繊維強化エアロゲルを含む種々の層を、容易に結合し、そして成形して、一軸または複数の軸で圧縮された場合に、任意の軸に沿った圧縮に強い本体を与えるプレフォームを与えることができる。このように、圧縮成形されたエアロゲル体は、シンタクチックフォームよりも十分に優れた断熱性を示す。これらの材料の物性を改良する方法、例えば、密度を最適化し、熱抵抗性を高め、発塵性を最小化する等の方法は、種々の産業や用途、例えば、水中の石油/ガスパイプライン等への外断熱材としてのこれらの材料の大規模使用を促進するであろう。
【0027】
シリカエアロゲルは、溶媒(ゲル溶媒)と共に、低密度セラミックまたは架橋ポリマーマトリックスから構成される場合、脆いのが普通である。取り扱いや加工には細心の注意が必要である。
シリカゲル化点の後は、シリカゲル構造体の中で、重合シリカ鎖の拡散と、その後の固体ネットワークの成長とは、非常に遅くなるが、技術上周知のように、最高の熱的/機械的特性を有するエアロゲルを得るには、ゲル化後の一定時間にわたる原料ゲル液(母液)の維持が必須である。その間にゲルが乱れ(disturbance)なく「熟成」する現象は、「シネレシス」といわれる。シネレシス条件(時間、温度、pH、固体濃度)は、エアロゲル生成物の品質に重要である。
【0028】
特許および学術文献で開示されているゾル−ゲル法によるモノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル生成物の通常の方法には、決まってバッチキャスティングが使用される。バッチキャスティングは、ここでは、ある容量全体のゾルに触媒作用を及ぼしてその全量を同時にゲル化させるものと規定する。モノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル構造体を生成させる別の方法は、ゲル化前に、ゾルに連続的に触媒作用を及ぼす(繊維強化複合体の場合には、繊維の存在下で)ものであり、米国特許出願公開第20020094426号明細書に開示されている。ゲル生成技術は、当業者に周知である。例には、希釈金属酸化物ゾルのpHおよび/または温度をゲルが生ずるまで調節する方法が含まれる(R.K.Iler,Colloid Chemistry of Silica and Silicates,1954,chapter 6;R.K.Iler,The Chemistry of Silica,1979,chapter 5;C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,chapters 2 and 3)。無機エアロゲルを生成させるための好適な材料は、酸化物を生成しうる大部分の金属、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム等である。特に好ましいのは、入手しやすさ、低コスト、加工しやすさ等のため、加水分解されたシリケートエステルのアルコール溶液から主に生成したゲルである。
【0029】
有機エアロゲルが、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシノールホルムアルデヒド等から製造することができることも当業者に知られている(例えば、N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45を参照)。
【0030】
繊維強化エアロゲル複合体の有効性が、エアロゲル材料に数多くの用途領域を切り開いた。上記複合体は、大部分の有用な品質のエアロゲルと、エアロゲル複合体の大きな部分の製造を可能にする。上記複合体を、より効率的に、改良された機械的特性を有するより大きな部分として、そしてより低コストで製造することができる。真空断熱パネル(VIP,vacuum insulation panel)は、断熱材市場向けの上記高性能製品の一例である。低密度の繊維強化シリカエアロゲルは、17.5psiの荷重下で40%超収縮する。VIP構造体の中に生ずる圧力に耐えるための強い(stiffer)エアロゲル複合体を生成させるためには、別の強化法が必要である。
【0031】
この20年間、シリカネットワークに直接結合されている第二のポリマー相の導入によって、多数の研究者がモノリスゲル構造体の生成の際、クラック傾向を抑制するために、シリカエアロゲルおよびシリカキセロゲルの機械的特性の改良を試みてきた。これらの試みは、多くのタイプの無機−有機ハイブリッド材料の合成へとつながった。最も注目に値する例は、次のとおりである。
【0032】
L.Leventis,C.Sotiriou−Leventis,G.Zhang and A.M.Rawashdeh,Nano Letters,2002,2(9),957−960には、シリカヒドロゲルのシラノール基を、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)と架橋させることによる、シリカエアロゲル強度の100超のファクターの向上が報告されている。しかし、得られる材料は、Si−O−C−のケイ素と酸素の間に加水分解性の結合を含み、またSi−C結合を含まない。
H.Schmidt,J.Non−Cryst.Solid,73,681,1985には、ポリメタクリレート(以下、「PMA」という。)の導入によるシリカキセロゲルの引張特性の向上が報告されている。
【0033】
以下の執筆者もまた、PMA/シリカキセロゲルの製造と組織的構造研究を行っている:J.H.Harreld,B.Dunn and J.I.Zink,J.Mater.Chem.,1997,7(8),1511−1517;Z.H.Huang and Y.K.Qiu,Polymer,38(3),1997,521−526;D.L.Ou,A.Adamjee,S.L.Lana and A.B.Seddon,Ceramic,Tran.,1998,10,291−294;D.Donescu,M.Teodorescu,S.Serban,L.Fusulan,C.Petcu,European Polymer Journal,35(1999),1679−1686.そのうちZinkらとOuらは、相分離を防いで透明なPMA/シリカキセロゲルを生成させる方法を報告している。
【0034】
エアロゲルとキセロゲルを区別すると、エアロゲルは、低密度、高い孔体積およびナノメートルの孔サイズを特徴とする、ユニークな一群の材料である。高い孔体積とナノメートルの孔サイズのため、一般に表面積が大きく、熱伝導率が低い。その高い多孔性は、固体熱伝導率の低さにつながり、そして気体の熱伝導が部分的に抑制される。というのは、ナノメートルの孔サイズは、典型的には、気体の平均自由行程よりも小さいからである。エアロゲルのこうした構造形態は、断熱材用途では大いに有利である。例えば、周囲条件下で、熱伝導率は、シリカエアロゲルの場合、15mW/m・K未満であることが測定されている(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)、そして有機エアロゲルの場合、12mW/m・Kの低さである(レゾルシノール−ホルムアルデヒドから構成されるエアロゲル等;R.W.Pekala and L.W.Hrubesh、米国特許第5,731,360号明細書を参照)。これは、キセロゲルとは大きく異なり、キセロゲルは、エアロゲルよりも高密度であり、そして絶縁コーティング等のようなコーティングとして使用される。
【0035】
ゾル−ゲル法は、多種多様な無機、有機およびやや少数のハイブリッド無機−有機キセロゲル、エアロゲルおよび複合体の合成に使用されてきた。シリカゲルは、無機およびハイブリッド無機−有機材料の合成用のベース原料として使用されることが多い。シリカベースエアロゲル合成用の関連前駆材料には、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、単量体のアルキルアルコキシシラン、ビストリアルコキシアルキルまたはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン等が含まれるが、これらに限定されるものではない。種々のポリマーが、シリカゲル中に導入され、得られるゲル、キセロゲル(J.D.Mackenzie,Y.J.Chung and Y.Hu,J.Non−Crystalline Solid 147&148(1992),271−279;Y.Hu and J.D.Mackenzie,J.Mater.Science,27(1992)を参照)、エアロゲル(S.J.Kramer,F.Rubio−Alonso and J.D.Mackenzie,MRS Proc.Vol.435,295−300,1996を参照)の機械的特性が改良されてきた。エアロゲルは、ウェットなゲルを、構造への変化をゼロまたは最小限に抑えるようにして乾燥させると得られる。これは、典型的には、溶媒または(乾燥工程の補助に共溶媒を使用する場合は)混合溶媒の臨界点超で、ゲルから溶媒相を除去して達成される。
【0036】
シリカゲルマトリックス中に分散された有機ポリマーの物理的混合物は、得られるハイブリッド材料の物理的、化学的および機械的特性に影響を及ぼしうる。シリカゲル構造体に、典型的には、Si−OH(シラノール)基への水素結合により、弱く結合しているポリマー材料は、製造工程中の相分離のために、上記構造体の中に不均一に分散する可能性がある。複合体のエアロゲル製造の場合には、弱く結合または会合したポリマードーパントは、常用の溶媒交換段階の際の、アルコゲルまたはヒドロゲルのエアロゲルへの変換の際に流出する可能性がある。ドーパントポリマーまたは改質剤の複合体構造への結合を改良する単純な方法は、Leventisら(Nano Letters,2002,2(9),957−960および米国特許出願公開第20040132846号明細書)に教示されているような、完全な形のシリカゲル構造体の中に本来存在するシラノール基を種々の反応性部分(イソシアネート等)と選択的に反応させる方法である。得られる化学構造がSi−O−X結合を生じさせる場合には、上記基は、水の存在下で、加水分解切断を容易に受ける可能性がある。
【0037】
ウェットなゲルは、共連続の固相と孔の液相とから成る、質量フラクタル特性を有する構造体を呈することが多い。上記構造体では、孔の液相がサンプル体積の実に98%を占める場合がある。エアロゲルの構造は、元のゲルの構造に非常に似ている。というのは、ウェットなゲルを、ゲル構造崩壊の原因となる毛細管力をなくす超臨界法で乾燥させるからである。対照的に、キセロゲルの構造は、乾燥中に大きく変化する。蒸発乾燥工程の際に、固体ネットワークに作用する毛細管力のためである。蒸発の際、固体ネットワークにかかる毛細管圧は、従って、孔の大きさ(例えば、孔径)に反比例するので、孔がナノメートル(10-9)領域の場合には、非常に大きなものとなりうる。蒸発乾燥の際に、生じるこれらの表面張力は、粒子の配位(coordination)数が多くなるので、キセロゲル製造の際にゲルネットワークの折り重なりや凝集を引き起こす。
【0038】
言い換えると、キセロゲルは、ウェットなゲルの通常の(蒸発)乾燥、すなわち、当初の一様なゲル体の大幅な収縮(および大部分の破壊)と同時に、温度の上昇または圧力の降下によって生成される。孔液の蒸発に伴うゲル体のこの大幅な収縮は、当該液がゲル体中に逃げ込む際に孔壁に作用する毛細管力に起因する。これにより、フィリグラン、ウェットなゲルの高多孔性無機ネットワークが崩壊する。構造体の崩壊は、上記ゲルネットワークが、表面張力に起因する圧縮力に耐えるように十分に強くなるととまる。
【0039】
得られたキセロゲルは、最密球状構造を有するが、孔は、TEMではもはや観察されなかった。これは、そうした孔が空間充填型であることを示唆している。従って、乾燥キセロゲル構造体(骨格相と多孔相の両方を含む)は、元のウェットなゲル構造の収縮/変形版である。キセロゲルとエアロゲルとは、乾燥手順の違いのため、構造及び材料特性が大きく異なる。例えば、表面積、孔体積、および代表的Si原子に対して立体的に接近可能なペンダント型の反応性側基の数は、エアロゲル構造体のほうが、対応するキセロゲル構造体(同じ出発原料であるが、蒸発法で乾燥させ、生成させた)よりも、平均的には非常に多い。言い換えると、キセロゲルの調製に一般的に用いられる溶液または混合液は、単に乾燥条件を変えるだけでは、エアロゲルの調製には使用できない。というのは、得られる生成物が、自動的にエアロゲルの密度を有する訳ではないからである。このように、キセロゲルとエアロゲルとの間には、それらの表面積、反応性、孔体積、熱伝導率、圧縮性、機械的強度、弾性係数および他の諸特性を大きく左右するような根本的な組成上の差異が存在する。
【0040】
従って、キセロゲルとの比較において、エアロゲルは、膨張された構造体であり、溶媒充填ゲル構造体に非常に似通っていることが多い。エアロゲルのTEM顕微鏡写真が、大きな格子空洞に隣接する薄いクラスター集合を示すことが多い。窒素吸着法による多孔性の測定ではまた、ナノメートルサイズレベルでの構造的差異が示される。エアロゲルは、対応するキセロゲルと比較して、孔体積が2倍超であり、そして高い相対圧力(>0.9)下での大きな吸着量からも明らかなように、孔サイズがかなり大きい(C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,Chapter 9を参照)。エアロゲルとキセロゲルとの間の構造的差異のため、これら2種の材料の物理的特性、例えば、誘電率、熱伝導率等は大きく異なる。従って、たとえ同じ元素組成から出発しても、エアロゲルとその対応キセロゲルは、完全に異なる材料であり、両者の関係はどちらも同じ糖分子からなるグラニュー糖と綿菓子の関係にやや似ている。
【0041】
本明細書での文献の引用は、いずれかが関連先行技術であることを承認するものではない。文献の日付または内容に関する表示、表明はいずれも出願人に得られた限りでの情報に基づくものであり、文献の日付または内容の正しさを何ら承認するものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、溶媒充填型の、ナノ構造のゲル構造体、並びに上記ゲル構造体より生成される繊維強化ゲル複合体の生成を提供する。上記ゲル構造体は、超臨界流体抽出法等で移動層溶媒を完全に抽出した後に、ナノ多孔性エアロゲル構造体となる。本発明によって提供される配合および方法は、ひとたび抽出が完了すると、エアロゲルモノリスおよび複合体に、改良された機械的特性をもたらす。この新規な有機変性シリカは、ormosil(organically modified silica)ともいう。本発明は、エアロゲル複合体の圧縮特性を改良することにより、上記複合体を耐圧縮性用途、例えば、真空断熱パネル(VIP)や水中の石油/ガスパイプライン用断熱材等に適したものにする。本明細書で開示する試料では、他の特質の改良も観測された。
【0043】
本発明で開示する有機変性シリカマトリックス材料は、ゾル−ゲル法で生成させるのが最善であり、1メートルの10億分の1オーダー超の微孔を有する構造体を規定するポリマー(無機、有機または無機/有機ハイブリッド)からなるのが好ましい。ポリマーのゲル化前に繊維性材料が随意選択的に添加されると、本発明で開示するマトリックス材料が強化される。繊維性強化材は、嵩だかな(lofty)繊維性構造体(バット(batting))であることが好ましいが、個々の配向またはランダムな超極細繊維を含むこともできる。特に、好ましい繊維性強化材は、有機(例えば、熱可塑性ポリエステル、高強度カーボン、アラミド、高強度延伸ポリエチレン)繊維、低温の無機(各種の金属酸化物ガラス、例えば、Eガラス)繊維、または耐火物(例えば、シリカ、アルミナ、リン酸アルミニウム、アルミノシリケート)繊維である。
【0044】
従って、第1の態様では、本発明は、エアロゲル構造体の中の強化成分として、随意選択的にエアロゲルのシリカネットワークに共有結合されている、有機材料を有する有機変性シリカエアロゲルを提供する。好ましい実施態様は、溶媒交換および/または超臨界溶媒抽出等のようなエアロゲル製造段階の際に、流出および損失量を最小化するため、上記有機材料の炭素原子と上記無機構造体のケイ素原子の間の非加水分解性Si−C結合を介して有機材料を共有結合させることである。上記有機材料は、アクリレート、アクリレートモノマーからなるビニルポリマーでもよく、それらは、ビニル基(カルボニル炭素に直接結合した、互いに二重結合した2個の炭素原子)を含むエステルである。強化成分として、シリカ結合ポリメタクリレートを使用するのが好ましい。本明細書に記載される配合は、ゲル構造体の機械的強度を変化させ、加工性を高める。有機材料とシリカネットワークの間の共有結合を欠く有機変性シリカの実施態様では、両者を結合させる可能性のある相互作用として、電荷相互作用、引き付けあう双極子のアラインメント、疎水性−疎水性(van der Waals)相互作用、水素結合等が考えられる。
【0045】
本発明はまた、複数の結合線状ポリマー強化材コンセプトに基づくとみなされる場合もあるであろう。というのは、混合の無機および有機ポリマードメイン間に複数のSi−C結合点をもつ組成物が教示されているからである。本発明によってもたらされる利点の一つは、既知ハイブリッド材料、例えば、シリカ/PMAブレンド等の公知のハイブリッド材料から、より堅い無機有機ハイブリッドエアロゲルが生成されることである。非限定的な例として、本明細書に記載されるように、得られる有機変性シリカの機械的特性を改良するため、数種のPMAを、シリカネットワーク中に導入してもよい。PMA相は、シリカネットワーク中に共有結合と水素結合の両方を導入するのが好ましい。得られるPMA/シリカ有機変性シリカエアロゲルでは、図1に示すように、複数の結合PMA鎖が、脆い多孔性シリカマトリックスを強くする。これにより、100psiを上回る可能性のある曲げ強度値を有する高強度のエアロゲル構造体がもたらされる。比較の目的では、同じ密度の「純」シリカエアロゲル材料の曲げ強度は、典型的には、約1〜2psiである。
【0046】
本発明は、Si−C結合を介して、有機ポリマードメインを、シリカ構造体中に、密接に、そして共有結合的に結合させ、上記構造体を補強し、そしてエアロゲル複合体の圧縮変形を大きく減少させることも重要である。加えて、ポリマードメインの導入は、圧縮レジリエンスを向上させ、圧縮変形を受けた際に、元の厚さへの回復力を強める。断熱材用途では、この圧縮抵抗およびレジリエンスは、大きな利点である。所要の方向の限界熱抵抗は、固有熱伝導率とその方向の材料の厚さとの関数である。厚さが減少すると、断熱性能が低下することは、当業者に周知である。本発明は、断熱材の構造体に(真空パネルまたは水中の断熱パイプライン)一定の圧縮力、または一時的な圧縮荷重が直接かかるような用途では、大きな利点がある。
【0047】
本発明に従って製造されるアクリレート/シリカまたはPMMA/シリカエアロゲルと公知のPMMA/シリカキセロゲルは、その元素組成の類似性にもかかわらず、構造が基本的に異なる。これは、主にこれら2種類の材料のナノメートルスケールでの構造的差異を反映するものである。
【0048】
別の態様では、本発明は、得られるハイブリッドゲルの機械的特性、例えば、剛性、硬さ、靭性の改良を目的とした、ナノ強化成分をシリカネットワーク中に導入することを提供する。機械的強度の向上により、ゲル調製工程の際の、亀裂発生の確率が低下し、機械的特性、例えば、高曲げ強度、低い圧縮変形のエアロゲルが得られる。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、アクリレート/シリカまたはシリカ/PMAハイブリッドエアロゲルの製造法を提供し、そこでは、水素結合と共有結合との両方で、アクリレートまたはPMA相をシリカ相に結合させる。アクリレートまたはPMAの導入により、得られる有機変性シリカゲルに、巨視的な相分離は生じないであろう。
【0050】
さらに別の態様では、本発明は、トリアルコキシシリル含有アクリレートまたはポリメタクリレートオリゴマーを、加水分解されたアルコキシシラン等(これらに限定されるものではない)のシリカ前駆体と共縮合させる方法、そしてアクリレート/シリカまたはPMA/シリカエアロゲルを得る次の手段を提供する。アクリレートまたはPMA強化材の導入により、得られる有機変性シリカハイブリッドモノリスの曲げおよび圧縮強度は、さらに高まる。100psi超の曲げ強度を有するアクリレート/シリカまたはPMA/シリカ有機変性シリカハイブリッドエアロゲルが、本明細書に記載される方法で生成した。
【0051】
本発明はまた、高強度で、かつ圧縮下で変形が少ない(17.5psiで、<10%、4000psiの荷重後で最大98%の回復ひずみ)の繊維強化エアロゲル複合体を提供する。このハイブリッドエアロゲルの機械的特性の改良は、他のエアロゲル特有の特性、例えば、低密度、および低熱伝導率を犠牲にすることなく実現された。本発明に記載されるアクリレート/シリカまたはPMA/シリカハイブリッドエアロゲルはまた、ビーズ形状に容易に成形可能である。
【0052】
従って、本発明は、アクリレート系またはポリマーを含有する有機変性シリカエアロゲル組成物を提供する。上記オリゴマーまたはポリマーを、有機変性シリカエアロゲルのシリケートネットワーク中に、共有結合および/または水素結合を用いて導入させることが好ましい。シリケートネットワークと上記オリゴマーとの間の結合には、シリケートネットワーク中のケイ素原子と上記オリゴマーまたはポリマーの炭素原子との間のSi−C結合が含まれることが好ましい。従って本発明は、エアロゲルのシリケートネットワーク中に結合されるオリゴマーを提供する。
【0053】
上記オリゴマーの非限定的な例には、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)、またはそれらの組み合わせが含まれる。上記オリゴマーまたはポリマーは、硬質シリカマトリックス材料用のナノ強化成分として機能する。
【0054】
上記オリゴマーまたはポリマーの質量パーセントは、非限定的な例として、約1〜95質量%、好ましくは、約5〜85質量%である。他の範囲には、約10〜75質量%、約15〜65質量%、約20〜55質量%、約25〜45質量%、約30〜35質量%が含まれる。
【0055】
本発明の組成物は、シリカとアクリレート相との間に、複数の結合を生成させる架橋剤を含んでもよい。シリケートネットワークおよびオリゴマーに結合する前の上記架橋剤を、次式:
(R1−O)3Si−R2
(式中、R1−Oは、上記架橋剤と上記シリケートネットワークとの間に共有結合を生成させるための、上記架橋剤から開裂しうる一般的な加水分解性基であり、そして
R2は、アクリレートと共有結合を生成する基、例えば、アクリレートモノマーのビニル部である)
と表示することができる。
他のR2の非限定的な例は、アクリレートオリゴマーまたはポリマーの一端または両端において、炭素−炭素二重結合(ビニル基)と反応しうる基である。例示的な基は、当業者に周知のように、上記二重結合と付加または酸化反応しうる基である。
【0056】
従って、R1−Oは、シリケートネットワークとの結合によって置換される加水分解性基と考えることができる。R2の非限定的な例には、ポリアクリレートに結合されうる他の重合性基である。架橋剤は、アルコキシシリルアクリレートであるアクリレートモノマーであることが好ましい。
上記架橋剤の非限定的な例には、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TMSPM)およびトリメトキシシリルプロピルアクリレートが含まれる。上記架橋剤は、トリメトキシシリルプロピルメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0057】
本発明はまた、TMSPMを、アクリレートモノマー(メタクリレートモノマー等)と、溶媒中、高温で反応させることで、トリアルコキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーの調製法を提供する。上記アクリレートモノマーの非限定的な例には、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、およびヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートが含まれる。
【0058】
上記溶媒中のメタクリレートモノマー反応体量の非限定的な例は、高速反応を可能にする50%w/w超である。上記反応を行うための有効な溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるものではない。
高温には、熱開始を起こさせるための非限定的な例として、60〜90℃または70〜80℃が含まれる。
【0059】
本発明は、トリアルコキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーを、シリカ前駆体と、溶媒中、室温または高温で共縮合させる方法をさらに提供する。当該方法には、トリアルコキシシリルグラフト化有機ポリマー樹脂とシリカ前駆体とを、加水分解条件下(典型的には、酸触媒の存在下に)で結合させてシリカ縮合反応を促進させる段階、次に、ハイブリッドゾル混合物のゲル化を触媒してハイブリッドゲル構造体を生成させる段階が含まれる。加水分解条件の非限定的な例には、HClまたは他の強酸の存在下等の酸還流が含まれる。
【0060】
本発明では、トリアルコキシシリルグラフト化オリゴマー反応体は、溶媒に対し、約5〜約50質量%、好ましくは、約10〜約30質量%の範囲である。
反応温度は、約10〜約90℃、約10〜約30℃、約30〜約50℃、約50〜約70℃、または約70〜約80℃の範囲である。
【0061】
シリカ前駆体の非限定的な例には、アルコキシシラン、部分的に加水分解されたアルコキシルシラン、テトラエトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラエトキシルシランの縮合ポリマー、テトラメトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラメトキシルシランの縮合ポリマー、テトラ−n−プロポキシシラン、部分的に加水分解されたテトラ−n−プロポキシシランの縮合ポリマー、またはそれらの組み合わせが含まれる。部分的に加水分解されたアルコキシルシランの例には、Silbond H5、Silbond40およびその製品群;Dynasil40およびその製品群; Dow Corning Z6818および他のDow Corning樹脂が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
本発明は、本明細書に記載されるような、有機変性シリカエアロゲル材料、好ましくは、ポリメタクリレート含有有機変性シリカエアロゲルモノリスの製造に使用しうるゲル組成物をさらに提供する。上記ゲル組成物は、もちろん、本明細書に記載されるような、繊維強化されたアクリレートまたはポリアクリレート含有有機変性シリカエアロゲル複合体を製造するための繊維性材料を含有してもよい。アクリレートまたはポリアクリレートの質量%は、得られるエアロゲルモノリスまたは複合体中で、約1〜約90%であり、好ましくは、約5〜約80%、約10〜約75%、約15〜約65%、約20〜約55%、約25〜約45%、または約30〜約35%である。
【0063】
得られる本発明のエアロゲルモノリスは、約0.01または約0.08〜約0.30または約0.35g/cm3(約0.05〜約0.25g/cm3、約0.1〜約0.20g/cm3、約0.15〜約0.20g/cm3、約0.18〜約0.25g/cm3または約0.18〜約0.30g/cm3を含む)の密度を有することが好ましい。熱伝導率は、1気圧、周囲温度の条件下で、20mW/m・K未満であり、好ましくは、約9〜約14または約19mW/m・K(約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18または約19mW/m・Kを含む)であり、そして約2psi超〜約102psiの曲げ強度である。本発明の繊維強化エアロゲル複合体は、好ましくは、0.10〜0.20g/cm3の密度(約0.12、約0.14、約0.16または約0.18g/cm3を含む)を有し、そして熱伝導率は、周囲条件下で、9〜16mW/m・K(約10、約11、約12、約13、約14または約15mW/m・Kを含む)である。
【0064】
本発明の繊維強化エアロゲル複合体はまた、約17.5psiの荷重下で約10%未満(または約8%未満または約6%未満)の低い圧縮変形を有することが好ましい。あるいは、上記繊維強化エアロゲル複合体は、4000psiの圧縮後に、最大約94.5%(または約90%以下、または約85%以下)の高い回復ひずみを有することができる。
【0065】
本発明の好ましいエアロゲル材料は、少なくとも100psi以上の動的圧縮荷重を受けた後に、少なくとも10%のひずみ回復と共に、0.3g/cm3未満の密度を有する。もちろん、本明細書に記載される全てのエアロゲルを、ビーズまたは他の特定形状に調製することができる。
【0066】
本発明はまた、次の段階;
アクリレートモノマーまたはアクリレートオリゴマーを準備する段階;
アルコキシルシリルアルキル含有基を、上記アクリレートモノマーまたはアクリレートオリゴマーと反応させ、反応体を生成させる段階;
上記反応体を、溶媒中、周囲以上の温度で、シリカ前駆体と混合して、混合物を生成させる段階;
上記混合物を乾燥させ、本明細書に記載されるエアロゲル組成物を生成させる段階:
を含む上記エアロゲル組成物の製法を提供する。
【0067】
上記方法は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせから選択される溶媒中で実施されることが好ましい。
さらなる実施態様では、本発明は、17.5psiの荷重下で、約10%以下の低い圧縮変形を有する繊維強化エアロゲル複合体を含む冷容積密閉容器(cold volume enclosure)用の真空断熱パネル(VIP)または断熱材を提供する。
【0068】
本発明の1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付図面および以下の明細書に示されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、添付図面および詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明で用いられるナノ強化成分には、PMAポリマー系、例えば、ポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」という。)、ポリブチルメタクリレート(以下、「PBMA」という。)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「PHEMA」という。)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
ポリマーまたはオリゴマーをシリカネットワークに導入する方法は、たくさん存在する。本発明には、系内の2つの分離相の混和性を高めるため、架橋剤であるトリメチルシリルプロピルメチメタクリレート(以下、「TMSPM」という。)を使用することが含まれる。TMSPMは、図2に示すように、重合性メタクリレート成分と縮合性トリメトキシシリル官能基との両方を有する。
【0071】
本発明の利点は、有機ポリマー構造体とシリケートネットワークとを共有結合させる非加水分解性のSi−C結合を導入することにある(図1等を参照)。この結合は、エアロゲル製造のための通常の処理条件に無傷で存在し、また400℃以上の高温でも安定でありうる。加えて、本発明は、ゾル段階において、有機ポリマーおよびシリケートドメインの間に共有結合ネットワーク構造体を生成させ、種々の相の一様またはほぼ一様な混合物をもたらす。次に、得られた触媒作用を及ぼされたゾルは、独立して考えられる個々の相とは異なる物理的、化学的、機械的特性を備える、はっきりとしたアモルファスゲル構造体へとゲル化させることができる。
【0072】
トリアルコキシシリルグラフト化オリゴマーの、ケイ酸およびエステルベースゾル(オルトシリケート、例えば、テトラエチルオルトシリケートに由来する)との加水分解ベース縮合は、上記有機オリゴマーを、シリカネットワーク中に共有結合させるが、有機ポリマー化合物のさらなる重合が、それをPMA相中にさらに架橋させるであろう。原則として、この架橋剤は、シリカネットワークと線状ポリメタクリレートエレメントの間の留め金として機能するであろう。シリカネットワークのシラノール基と、PMA上のカルボニル基との間の広範囲な水素結合の存在がまた、均一なゲルの生成に有利となりうる。ポリマー相とシリカ相との間のこれらの相互作用は、溶液の均一性を高め、相分離を抑制する可能性がある。
【0073】
TMSPMは、メタクリレートモノマーと重合して、図3に示すような、トリメトキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーを生成させた。重合を開始させるため、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)またはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等の熱開始剤を用いることができる。メタクリレートモノマーの例には、メチルメタクリレート(以下、「MMA」という。)、エチルメタクリレート(以下、「EMA」という。)、ブチルメタクリレート(以下、「BMA」という。)、ヒドロキシメチルメタクリレート(以下、「HEMA」という。)、ヘキサフルオロブチルメタクリレート(以下、「HFBMA」という。)が含まれるが、それらに限定されるものではない。重合は、低級(C1〜C6)アルコール溶液中で、約40〜約100℃、好ましくは、約70〜約80℃の高温で行った。高速反応を確実に実現するには、アルコール溶液中の反応体の濃度は、約5〜約95質量%、好ましくは、約40〜約70質量%の範囲内であることが好ましい。TMSPM/メタクリレートモノマーのモル比は、約1〜約10、好ましくは、約1〜約4の範囲内である。得られるトリメトキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーは、比較的低分子量で、通常の有機溶媒に可溶であるべきである。
【0074】
一般に、有機変性シリカエアロゲル生成のための主要な合成経路は、図4に示すように、好適なケイ素アルコキシドを、オルガノトリアルコキシルシランと、加水分解および縮合させることである。最も好適なケイ素アルコキシドは、各アルキル基において、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜3個の炭素原子を有するものである。上記化合物の具体例には、テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」という。)、テトラメトキシシラン(以下、「TMOS」という。)、およびテトラ−n−プロポキシシランが含まれる。これらの材料を、部分加水分解させて、ポリジエトキシシロキサン等のポリケイ酸エステルのポリマーとして、低pHで安定化させることができる。これらの材料は、アルコール溶液中で、例えば、Silbond(商標)40、Silbond(商標)25、Silbond(商標)H5、およびDynasil(商標)40として市販されている。有機変性シリカの配合には、より高分子量のシリコーン樹脂もまた使用することができる。例には、Dow Corning Foxシリーズ、Dow Corning Z6075、Dow Corning MQ樹脂が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
ゾル−ゲル法を使用して生成されたゲル材料は、多様な金属酸化物または他のポリマー生成種から誘導させることができることは、当業者に理解されている。ゲル生成物の物理的、機械的特性に影響を及ぼす固体(IR不透明剤、焼結抑制剤、マイクロファイバー)を用いて、ゾルをドープしうることもまた周知である。上記ドーパントに好適な量は、一般的に、本発明の組成物を用いて、最終複合体の約1〜約40質量%、好ましくは、約2〜約30質量%の範囲にわたる。
【0076】
有機変性シリカエアロゲル生成法の可変パラメーターには、アルコキシド種、溶液pH、並びにアルコキシド/アルコール/水の比、シリカ/ポリマーの比、およびモノマー/架橋剤の比が含まれる。上記パラメーターの制御は、「ゾル」状態から「ゲル」状態への転移を通して、マトリックス種の成長および凝集を制御することを可能にする。得られるエアロゲルの特性は、シリカ/ポリマー比に大きな影響を受けるが、本発明では、ゲル生成を可能にする任意の比を用いることができる。
【0077】
一般に、開示の方法に使用される溶媒は、炭素原子数が1〜6、好ましくは、2〜4の低級アルコールであろう。しかし、当業者に公知のような、他の同等の溶媒を使用することも可能である。他の有用な液体の例には、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
以下の説明では、便宜上、本発明で使用される前駆体の合成方法を説明するための代表的な実施態様として、アルコゲル経由の有機変性シリカゲルおよび複合体生成経路を示す。これは、本発明を、特定タイプのPMAのシリカネットワークへの導入に限定することを意図するものではない。本発明は、他の同様のコンセプト構造を有する他の有機変性シリカにも適用可能である。
【0079】
本発明の方法を用いて調製されるゲル材料の特定の後、好適なシリカアルコキシド/トリエトキシルシリルグラフト化PMAオリゴマーのアルコール溶液を調製する。シリカエアロゲル生成液の調製は、当業者に周知である。例えば、S.J.Teichner et al.,Inorganic Oxide Aerogel,Advances in Colloid and Interface Science,Vol.5,1976,pp245−273およびL.D.LeMay et al.,Low−Density Microcellular Materials,MRS Bulletin,Vol.15,1990,p19を参照。有機変性シリカゲルモノリスの製造では、典型的には、原料は、部分加水分解させたアルコキシシラン、トリメトキシルシリルグラフト化PMAオリゴマー、水、およびエタノール(EtOH)が好ましい。以上の全ての原料は、周囲温度または高温で一緒に混合することができる。
【0080】
部分的に加水分解されたアルコキシシランの例には、以下の市販の材料が含まれるが、これらに限定されるものではない:Silbond H5、Silbond40およびその製品群; Dynasil40およびその製品群。好ましいSiO2:水のモル比は、約0.1〜約1:1であり、好ましいSiO2:MeOHのモル比は、約0.02〜約0.5:1であり、そして好ましいPMA/(PMA+SiO2)の質量%は、約5〜約90質量%である。上記成分の本来のpHは、約5である。よりpHの低い溶液を得るために、任意の酸を用いることができるが、HCl、H2SO4またはHFが、好ましい酸である。よりpHを高くするためには、NH4OHが好ましい塩基である。
【0081】
図4に示したスキームに従って、縮合触媒添加後に、約1〜約80質量%(好ましくは、約5〜約70%)のPMA添加量の透明有機変性シリカゲルモノリスを生成させた。上記触媒の非限定的な例は、NH4OH、NH4F、HFまたはHClである。上記モノリスは、CO2超臨界抽出後、不透明になるであろう。得られる有機変性シリカエアロゲルモノリスは、密度が約0.05〜約0.40であり、熱伝導率が約10〜約18mW/m・Kである。PMAの強化作用により、機械的特性が大幅に向上する。密度0.3g/cm3のPHEMA/シリカエアロゲルでは、最大102.2psiの破断曲げ強度が測定された。この特定の有機変性シリカエアロゲルモノリスは、100psiの荷重の後、変形が1%未満であった。「変形」または「変形する」は、本明細書では、荷重の適用後のエアロゲルの変化の度合いを指す。上記度合いは、荷重の適用前後で、荷重の適用前のエアロゲルサイズに対するエアロゲルサイズの変化の比(またはそれに基づく百分率)でとして表現することができる。
【0082】
繊維強化有機変性シリカエアロゲル複合体では、シリカ前駆体としては、プレ重合化シリカ前駆体(例えば、Silbond(商標)H5およびその製品群)が好ましい。その他の変動因子の効果は、有機変性シリカモノリスの製造の場合とほぼ同じである。
【0083】
嵩だかなバットは、本明細書では、内部(bulk)特性および(完全内部回復を伴うかまたは伴わない)何らかのレジリエンス特性を示す繊維性材料をいう。使用可能な嵩だかバットの非限定的な例は、米国特許出願公開第2002/0094426号明細書で開示されている。本発明の好ましい実施態様では、同じ材料の非強化エアロゲル体と比較して、強化複合体の熱特性を大きく変化させない個別フィラメント(または繊維)を、非常に少量含む場合に、本発明に使用するバットが「嵩だか」となる。一般に、上記バットを含む最終エアロゲル複合体の断面を見ると、上記繊維の断面積は、上記断面の総表面積の約10%未満、好ましくは、約8%未満、最も好ましくは、約5%未満である。
【0084】
この材料の好ましい形態は、軟質ウエブである。嵩だかなバット強化材により、エアロゲルの熱的性能の劣化がほぼ防止される一方、支持されていないエアロゲルの体積が最小化される。バットは、好ましくは、繊維性材料の層またはシートを指し、キルトの中綿もしくは詰め物または包装、あるいは断熱材のブランケットとして常用される。
【0085】
コンベヤー成形システムに導入するために、相当の抗張力を有するバット材料が有利であるが、要件とされるものではない。調製されたゾル流への浸透の前に、デリケートなバット材料を、コンベヤー領域に導入するために、工程に荷重伝達機構を用いることができる。
【0086】
嵩だかなバット層およびx−y配向の張力強化層の両方を生成させるための好適な繊維性材料には、任意の繊維生成材料が含まれる。特に好適な材料には:ガラス繊維、石英、ポリエステル(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾ−ビスオキサゾール(PBO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTET)、ポリメタフェニレンジアミン(Nomex)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、例えば、SpectraTM、ノボロイド樹脂(Kynol)、ポリアクリロニトリル(PAN)、PAN/炭素およびカーボンファイバーが含まれる。
【0087】
得られる繊維強化PMA/シリカエアロゲル複合体は、密度が0.05〜0.25g/cm3であり、熱伝導率が12〜18mW/m・Kである。PMAの強化効果により、エアロゲル複合体の圧縮特性が大幅に改良される。この有機変性シリカエアロゲル複合体では、17.5psiの荷重下で、10%未満の圧縮変形が観測された。この高強度繊維強化PMA/シリカエアロゲル複合体は、密度が0.18g/cm3の場合で、4000psiで圧縮後に元の厚さの94.5%まで回復する。
【0088】
本発明を一般的に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明をさらに理解することができるであろう。以下の実施例は、具体例を説明するために提供するものであり、特に断らない限り本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0089】
以下の非限定的な個別実施例では、ケイ素結合線状ポリマーを含む有機変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化エアロゲル複合体の、本発明に従う製造、ならびにそれらの試験結果を開示するが、そこからは本発明のさらなる詳細および説明が得られよう。
【0090】
当業者に本発明をさらに理解してもらうため、以下に、非限定的な実施例を示す。実施例では、質量をグラム(g)で表す。熱開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と共に、モノマーのMMA、BMA、HEMAはAldrichより購入した。架橋剤のTMSPMは、Dow Corning Z6030シランとして、Ashland Chemicalsから購入した。
【0091】
例1
本例では、56.9質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。1.0gのAIBNを、10gのMMA、24.8gのTMSPMおよび20gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、60gのシリカ前駆体であるSilbond H5、1.0gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mn:526)および300gのエタノールからなる混合液に、9.9gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0092】
得られた溶液を、12.8gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29%NH3水溶液/エタノール)の添加により14分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0093】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.16g/cm3、周囲条件下での熱伝導率10.8mW/m・K、および破断点曲げ強度21.9psi(図5に、3点試験として示す)を示した。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.15g/cm3、熱伝導率が15.0mW/m・Kであった。窒素吸着法による測定では、本実施例のエアロゲルモノリスは、BET比表面積が695m2/g、総孔体積が2.08cm3/gであった。本実施例の孔サイズ分布は、図6に示すように2〜80nmと、やや範囲が広かった。
【0094】
シリケート中のケイ素中心周辺の局所的な環境は、特徴的な29Si化学シフトを引き起こすことが見出されており、それらの相関関係は、29Si MAS NMR分析法によりシリケートベース材料中に存在する状況の種類を確認するために用いられてきた。図7に示すように、−100ppmにショルダーを有する−110ppmのピークが1つあり、これは、Q3およびQ4の基礎構造を有するシリケートに対応し、10ppmにおける1つのピークは、トリメチシロキサン基に対応し、そして−66ppmにおける(ショルダーを有する)1つのピークと、−60ppmにおけるショルダーは、基礎構造T2およびT3を有する有機変性シリケートT官能基に対応する。T種の存在は、エアロゲル中の有機相とシリカ相との間のC−Si共有結合の生成したことの直接的な証拠である。
【0095】
例2
本例では、61.0質量%のポリブチルメタクリレート(PBMA)の添加量を有するPBMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。1.4gのAIBNを、14gのBMA、24.8gのTMSPMおよび14gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、60gのシリカ前駆体であるSilbond H5および300gのエタノールからなる混合液に、9.9gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0096】
得られた溶液を、10.0gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)および2.5gの1.0Mフッ化アンモニウム水溶液の添加により5分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29%NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0097】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PBMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.17g/cm3、周囲条件下での熱伝導率12.7mW/m・K、破断点曲げ強度9.7psiを示した。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.11g/cm3、熱伝導率が17.5mW/m・Kであった。窒素吸着法による測定では、本実施例のエアロゲルモノリスは、BET比表面積が611m2/g、総孔体積が1.68cm3/gであった。本実施例の孔サイズ分布は、図8に示すように2〜65nmと、やや範囲が広かった。
【0098】
図9に示すように、上記エアロゲルは、−100ppmにショルダーを有する−110ppmのピークを1つ示し、これは、Q3およびQ4の基礎構造をもつシリケートに対応し、10ppmにおける1つのピークは、トリメチルシロキサン基に対応し、そして−66ppmにおける(ショルダーを有する)1つのピークと、−60ppmにおけるショルダーは、基礎構造T2およびT3を有する基礎変性シリケートT官能基に対応する。T種の存在は、エアロゲル中の有機相とシリカ相との間にC−Si共有結合が生成したことを示す直接的な証拠である。
【0099】
例3
本例では、83.2質量%のポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)の添加量を有するPHEMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。1.3gのAIBNを、13gのHEMAと24.8gのTMSPMとの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液および200gのエタノールからなる混合液に、8.1gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で45分間還流させた。
【0100】
得られた溶液を、2.1gのエタノール希釈アンモニア溶液(25/75v/v、29% NH3水溶液/エタノール)の添加後、55℃において8時間でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスが得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95 v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0101】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PHEMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスが得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.32g/cm3、周囲条件下での熱伝導率18.5mW/m・K、ASTM D790(非強化および強化プラスチックおよび電気絶縁材料の曲げ特性の標準試験方法)による破断点曲げ強度102.3psiを示した。図10を参照。
【0102】
例4
本例では、20質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。0.5gのAIBNを、5gのMMA、6.2gのTMSPMおよび5gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、150gのシリカ前駆体であるSilbond H5、および135gのエタノールからなる混合液に、14.1gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0103】
得られた溶液を、190mlのエタノールと1.74gのエタノール希釈アンモニア溶液(50/50v/v、29% NH3水溶液/エタノール)との添加により、5分でゲル化させることができた。本例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0104】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.15g/cm3、周囲条件下での熱伝導率13.7mW/m・K、および破断点曲げ強度12.5psiを示した。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.16g/cm3、熱伝導率が16.3mW/m・Kであった。圧縮試験によれば17.5psiの荷重下での上記複合体の変形は、12.2%であった。
【0105】
例5
本例では、20質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。0.5gのAIBNを、5gのMMA、6.2gのTMSPMおよび5gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、150gのシリカ前駆体であるSilbond H5、および121gのエタノールからなる混合液に、28.2gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0106】
得られた溶液を、136mlのエタノールと9.30gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)との添加により13分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で2日間熟成させた。
【0107】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルの繊維強化ゲル複合体が得られた。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.17/cm3、熱伝導率が12.8mW/m・Kであった。圧縮試験によれば17.5psiの荷重下での上記複合体の変形は、10.9%であり、4000psiの荷重後の回復ひずみは、84.2%であった。
【0108】
例6
本例では、20質量%のポリブチルメタクリレート(PBMA)の添加量を有するPBMA変性シリカエアロゲルのモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。2.8gのAIBNを、28gのBMA、24.8gのTMSPMおよび28gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、787.5gのシリカ前駆体であるSilbond H5および610mlのエタノールからなる混合液に、147.15gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で0.5時間還流させた。
【0109】
得られた溶液を、28gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95 v/v、29% NH3水溶液/エタノール)の添加により11分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間熟成させた。
【0110】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PBMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度が0.16g/cm3、周囲条件下での熱伝導率が13.2mW/m・Kであった。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.18g/cm3、熱伝導率が13.5mW/m・Kであった。圧縮試験によれば4000psiの荷重後の回復ひずみは、94.5%であった。
【0111】
例7
本例では、20質量%のポリブチルメタクリレート(PBMA)の添加量を有するPBMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。2.8gのAIBNを、28gのBMA、24.8gのTMSPMおよび28gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、787.5gのシリカ前駆体であるSilbond H5および610mlのエタノールからなる混合液に、147.15gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で0.5時間還流させた。
【0112】
得られた溶液を、250gのエタノールと30gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)との添加により7分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、NH3/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0113】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度が0.16g/cm3、周囲条件下での熱伝導率が13.2mW/m・Kであった。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.16g/cm3、熱伝導率が13.1mW/m・Kであった。圧縮試験によれば上記複合体の17.5psiの荷重下の変形は、7.7%であり、4000psiの荷重後の回復ひずみは、87.4%であった。
【0114】
例8
本例では、33.6質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルビーズの生成について具体的に説明する。3.9gのAIBNを、39gのMMA、48.75gのTMSPMおよび41.7gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、589gのシリカ前駆体であるSilbond H5、および764mlのエタノールからなる混合液に、58.3gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で1時間還流させた。
【0115】
得られた溶液を、1.4質量%のアンモニア水溶液と2:1の容量比で混合して、有機変性シリカのゾルを生成させた。このゾルを、多量の非混和性(non−miserable)の溶媒、例えば、シリコーン油中に、周囲温度でたえず撹拌しながら滴下した。PMMA/シリカの事前縮合ゾルがシリコーン油中に分散した状態でゲル化するため、適切に球状のビーズ様ヒドロゲルが生成する結果となった。ウェットなゲルを、エタノールで2回洗浄し、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(10/90v/v、HMDS/エタノール)中で1日間熟成させた。本実施例からは、CO2超臨界抽出後にPMMA/シリカのハイブリッドエアロゲルビーズが得られた。
【0116】
例9
本例では、15%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するポリエステル繊維強化PMMA/シリカエアロゲル複合体の生成について具体的に説明する。0.90gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートを、40gのMMA、24.8gのTMSPMおよび18.3gのメタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。
【0117】
30.97gのトリメチシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーを、622.28gのSilbond H5(商標)、155.93gのエタノール、68.08gの水、および42.0gの0.1M HCl水溶液と、周囲条件下で1時間混合した。得られた溶液を、12.87gのAlcoblack、2.57gのカーボンファイバー、および527.78gのエタノールと5分間さらに混合し、そして71.1gのエタノールと2.4gの29%アンモニア水溶液との添加により3分でゲル化した。本実施例からは、繊維強化ゲル複合体が得られた。ウェットなゲルは、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で1日間、熟成させた。
【0118】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に繊維強化ハイブリッドエアロゲル複合体が得られた。本発明の繊維強化エアロゲル複合体のクーポンは、密度が0.14g/cm3で、周囲条件下での熱伝導率が12.9mW/m・Kであった。
【0119】
例10
本例では、20質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有する炭素遮蔽型繊維強化PMMA変性シリカエアロゲル複合体の生成について説明する。0.47gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートを、7.8gのMMA、9.75gのTMSPMおよび4.22gのメタノールの混合液に添加し、次いで、70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化PMMAオリゴマーが、濃縮されたメタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。
【0120】
上記トリメトキシシリルグラフト化PMMAオリゴマー(8.04g)を、6gのTHF、30gのエタノールおよび14.7gの0.1M HCl水溶液からなる溶液中にさらに溶解させ、そして79.1gのシリカ前駆体であるSilbond H5と周囲温度で1時間混合した。
【0121】
得られた溶液を、2.57gのカーボンブラック溶液(Alcoblack(商標))と45gのエタノールとからなる溶液に混合し、最終的に21.3gのエタノールと0.3gのアンモニア溶液(29% NH3水溶液)の添加により5.5分でゲル化させた。本実施例からは、ポリエステル繊維強化ゲル複合体が得られた。ウェットなゲルは、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0122】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、単一の繊維強化エアロゲル複合体が得られた。比較のため、別のウェットなゲルを周囲条件でヒュームフードに3日間入れておくと、細分化された繊維強化キセロゲル複合体が得られる結果となった。
【0123】
この例の繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.16g/cm3で、周囲条件下での熱伝導率が15.7mW/m・Kであった。この例の繊維強化キセロゲル複合体は、密度が0.36g/cm3で、周囲条件下での熱伝導率が29.7mW/m・Kであった。
【0124】
本発明の繊維強化遮蔽型エアロゲル複合体の切り取り片(coupon)は、きわめて堅いように見えた。圧縮試験では、図11に示すように、250psiの荷重下での変形は27%にすぎず、1500psiの荷重下での変形は57%であった。
この例のエアロゲルとキセロゲルとの間のナノメートルサイズレベルでの構造的差異は、窒素吸着法による孔分布分析でも明らかとなった。図12に示すように、エアロゲルは、総孔体積が2.97cm3/g、平均孔サイズが30nmであったのに対して、キセロゲルは、全孔体積が1.95cm3/g、平均孔サイズが17nmであった。従って、上記エアロゲルは、対応するキセロゲルと比べて、総孔体積が非常に大きく、そして孔サイズが大きい。
【0125】
本明細書で引用した諸々の参考文献は、その旨の個別の言及の有無を問わず、ここに参照によりその全体が開示される。本明細書では、任意の可算名詞は、単数と複数の両方を含むものとする。
【0126】
本発明の説明は、以上で尽きるが、本発明が広範囲の同等パラメーター、濃度および条件の下で、その精神と範囲から逸脱することなく、また必要以上の実験に俟つことなく、実行しうることは、当業者には自明であろう。本発明の説明は、特定の実施態様との関連で行ったが、変更態様が可能であることは自明であろう。本願は、総じて本発明の原理に従う本発明の任意の変動、使用、または翻案を、関連技術分野の内部で公知または慣行となっているような、また本願で開示した本質的な特徴に当てはまるような、本発明からの逸脱を含めて、包摂するものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、複数の結合されたポリメタクリレート分子鎖によって強化されるシリカエアロゲル多孔性マトリックスを具体的に説明するものである(1:Si−C共有結合、2:シリカ粒子、3:PMMAオリゴマー鎖)。
【図2】図2は、架橋剤であるトリメトキシシリルプロピルメチルメタクリレートの分子構造を具体的に説明するものである。
【図3】図3は、トリメトキシシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーの構造を具体的に説明するものである。
【図4】図4は、トリメトキシシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーとアルコキシシランとの加水分解ベースの縮合反応を具体的に説明するものである。
【0128】
【図5】図5は、例1のPMMA/シリカのハイブリッドエアロゲルモノリスの3点曲げ試験の結果を示している。
【図6】図6は、例1のモノリスの孔サイズ分布を示している。
【図7】図7は、例1のモノリスの29Si固体NMRスペクトルを示している。
【図8】図8は、例2のエアロゲルの孔サイズ分布を示している。
【0129】
【図9】図9は、例2のエアロゲルの29Si固体NMRスペクトルを示している。
【図10】図10は、例3のPMMA/シリカのハイブリッドエアロゲルモノリスの3点曲げ試験の結果を示している。
【図11】図11は、例6の繊維強化エアロゲルの圧縮測定を示している。
【図12】図12は、例6のエアロゲルおよびキセロゲルの孔サイズ分布を示している。
【技術分野】
【0001】
連邦政府公園の研究開発に関する記述
本発明は、連邦航空宇宙局(NASA)より授与された、第NAS09−03022号規約(SBIR(中小企業技術革新制度)助成金)の下、アメリカ合衆国政府の支援により部分的になされたものである。
【0002】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2004年1月6日に出願された米国暫定特許出願第60/534,804号の優先権の利益を主張する(全体を参照し、本明細書に組み入れる)。
【0003】
本発明は、溶媒充填型の、ナノ構造のゲル構造体および繊維強化ゲル複合体の生成に関する。これらの材料は、超臨界流体抽出法(過臨界溶媒抽出法)で移動相溶媒を完全に抽出した後に、ナノ多孔性エアロゲル構造体となる。上記複合体およびエアロゲル構造体に関する配合および製造方法、並びにそれらの機械的特性の改良に基づく使用方法が提供される。
【背景技術】
【0004】
エアロゲルは、構造的特徴、すなわち、低密度、開放セル構造、大きな表面積(900m2/g以上であることが多い)およびナノメートル未満の孔サイズに基づく一群の材料を表現するものである。脆い孔から、孔を潰すことなく流体を抽出するためには、一般に、超臨界および亜臨界流体抽出技術が使用される。エアロゲルは、特定の材料よりも、むしろ一群の構造を表す名称であるため、多様なエアロゲル組成物が知られており、例えば、無機、有機、および無機/有機ハイブリッド組成物が含まれる(N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45)。
【0005】
無機エアロゲルは、金属アルコキシドに基づくのが一般的であり、シリカ、各種カーバイド、およびアルミナ等の材料が含まれる。有機エアロゲルには、ウレタンエアロゲル、レゾルシノールホルムアルデヒドエアロゲル、およびポリイミドエアロゲルが含まれるが、これらに限定されるものではない。有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に有機変性シリカ(ormosil,organically modified silica)エアロゾルである。この好ましい実施態様では、上記有機成分を、シリカネットワークに完全に分散させるか、または化学結合させる。分散させたまたは弱く結合させた有機材料は、製造プロセスの間中、比較的容易に流出しうることが判明している。無機構造体に共有結合している有機材料は、流出量の大幅な減少または解消となるであろう。
【0006】
低密度(0.01〜0.3g/mL)エアロゲル材料は、最高の硬質フォーム(ポリイソシアヌレート、ポリウレタン等)よりも十分に良好な最高の固形断熱材であると広く考えられている。例えば、エアロゲル材料の熱伝導率は、37.8℃および1気圧の条件下で、15mW/m・K未満であることが多い(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)。エアロゲルは、主に、伝導(低密度、固体ナノ構造体によるねじれた熱伝達経路)と、対流(非常に小さい孔サイズが対流を最小化する)と、放射(赤外線吸収性または散乱性のドーパントが、エアロゲルマトリックス中に容易に分散される)とを最小化することで、断熱材として作用する。エアロゲルは、配合次第で、極低温〜550℃以上の温度範囲で十分に機能しうる。より高温では、エアロゲル構造体は、収縮、焼結する傾向があり、当初の孔体積および表面積をほとんど失ってしまう。エアロゲル材料はまた、他にも、消費及び産業の両方の市場で有用な、数多くの興味深い音響的、光学的、機械的および化学的特性を示す。
【0007】
低密度断熱材は、コア断熱材が著しい圧縮力を受ける用途で、数多くの断熱問題を解決するために改良されている。例えば、ポリマー材料が、中空ガラス微小球と混合され、一般に、極めて堅い圧縮抵抗材料であるシンタクチックフォームを生成させる。シンタクチック材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチックフォーム材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチック材料は、比較的硬質であり、Aspen Aerogls,Inc.製の(繊維で強化されたエアロゲルマトリックス)軟質エアロゲル複合体と比べて熱伝導率が高い。
【0008】
エアロゲルを、ゲル前駆体から生成させることができる。軟質繊維強化エアロゲルを含む種々の層を、容易に結合し、そして成形して、一軸または複数の軸で圧縮された場合に、任意の軸に沿った圧縮に強い本体を与えるプレフォームを与えることができる。このように、圧縮成形されたエアロゲル体は、シンタクチックフォームよりも十分に優れた断熱性を示す。これらの材料の物性を改良する方法、例えば、密度を最適化し、熱抵抗性を高め、発塵性を最小化する等の方法は、種々の産業や用途、例えば、水中の石油/ガスパイプライン等への外断熱材としてのこれらの材料の大規模使用を促進するであろう。
【0009】
シリカエアロゲルは、溶媒(ゲル溶媒)と共に、低密度セラミックまたは架橋ポリマーマトリックスから構成される場合、脆いのが普通である。取り扱いや加工には細心の注意が必要である。
シリカゲル化点の後は、シリカゲル構造体の中で、重合シリカ鎖の拡散と、その後の固体ネットワークの成長とは、非常に遅くなるが、技術上周知のように、最高の熱的/機械的特性を有するエアロゲルを得るには、ゲル化後の一定時間にわたる原料ゲル液(母液)の維持が必須である。その間にゲルが乱れ(disturbance)なく「熟成」する現象は、「シネレシス」といわれる。シネレシス条件(時間、温度、pH、固体濃度)は、エアロゲル生成物の品質に重要である。
【0010】
特許および学術文献で開示されているゾル−ゲル法によるモノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル生成物の通常の方法には、決まってバッチキャスティングが使用される。バッチキャスティングは、ここでは、ある容量全体のゾルに触媒作用を及ぼしてその全量を同時にゲル化させるものと規定する。モノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル構造体を生成させる別の方法は、ゲル化前に、ゾルに連続的に触媒作用を及ぼす(繊維強化複合体の場合には、繊維の存在下で)ものであり、米国特許出願公開第20020094426号明細書に開示されている。ゲル生成技術は、当業者に周知である。例には、希釈金属酸化物ゾルのpHおよび/または温度をゲルが生ずるまで調節する方法が含まれる(R.K.Iler,Colloid Chemistry of Silica and Silicates,1954,chapter 6;R.K.Iler,The Chemistry of Silica,1979,chapter 5;C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,chapters 2 and 3)。無機エアロゲルを生成させるための好適な材料は、酸化物を生成しうる大部分の金属、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム等である。特に好ましいのは、入手しやすさ、低コスト、加工しやすさ等のため、加水分解されたシリケートエステルのアルコール溶液から主に生成したゲルである。
【0011】
有機エアロゲルが、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシノールホルムアルデヒド等から製造することができることも当業者に知られている(例えば、N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45を参照)。
繊維強化エアロゲル複合体の有効性が、エアロゲル材料に数多くの用途領域を切り開いた。上記複合体は、大部分の有用な品質のエアロゲルと、エアロゲル複合体の大きな部分の製造を可能にする。上記複合体を、より効率的に、改良された機械的特性を有するより大きな部分として、そしてより低コストで製造することができる。真空断熱パネル(VIP,vacuum insulation panel)は、断熱材市場向けの上記高性能製品の一例である。低密度の繊維強化シリカエアロゲルは、17.5psiの荷重下で40%超収縮する。VIP構造体の中に生ずる圧力に耐えるための強い(stiffer)エアロゲル複合体を生成させるためには、別の強化法が必要である。
【0012】
この20年間、シリカネットワークに直接結合されている第二のポリマー相の導入によって、多数の研究者がモノリスゲル構造体の生成の際、クラック傾向を抑制するために、シリカエアロゲルおよびシリカキセロゲルの機械的特性の改良を試みてきた。これらの試みは、多くのタイプの無機−有機ハイブリッド材料の合成へとつながった。最も注目に値する例は、次のとおりである。
【0013】
L.Leventis,C.Sotiriou−Leventis,G.Zhang and A.M.Rawashdeh,Nano Letters,2002,2(9),957−960には、シリカヒドロゲルのシラノール基を、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)と架橋させることによる、シリカエアロゲル強度の100超のファクターの向上が報告されている。しかし、得られる材料は、Si−O−C−のケイ素と酸素の間に加水分解性の結合を含み、またSi−C結合を含まない。
H.Schmidt,J.Non−Cryst.Solid,73,681,1985には、ポリメタクリレート(以下、「PMA」という。)の導入によるシリカキセロゲルの引張特性の向上が報告されている。
【0014】
以下の執筆者もまた、PMA/シリカキセロゲルの製造と組織的構造研究を行っている:J.H.Harreld,B.Dunn and J.I.Zink,J.Mater.Chem.,1997,7(8),1511−1517;Z.H.Huang and Y.K.Qiu,Polymer,38(3),1997,521−526;D.L.Ou,A.Adamjee,S.L.Lana and A.B.Seddon,Ceramic,Tran.,1998,10,291−294;D.Donescu,M.Teodorescu,S.Serban,L.Fusulan,C.Petcu,European Polymer Journal,35(1999),1679−1686.そのうちZinkらとOuらは、相分離を防いで透明なPMA/シリカキセロゲルを生成させる方法を報告している。
【0015】
エアロゲルとキセロゲルを区別すると、エアロゲルは、低密度、高い孔体積およびナノメートルの孔サイズを特徴とする、ユニークな一群の材料である。高い孔体積とナノメートルの孔サイズのため、一般に表面積が大きく、熱伝導率が低い。その高い多孔性は、固体熱伝導率の低さにつながり、そして気体の熱伝導が部分的に抑制される。というのは、ナノメートルの孔サイズは、典型的には、気体の平均自由行程よりも小さいからである。エアロゲルのこうした構造形態は、断熱材用途では大いに有利である。例えば、周囲条件下で、熱伝導率は、シリカエアロゲルの場合、15mW/m・K未満であることが測定されている(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)、そして有機エアロゲルの場合、12mW/m・Kの低さである(レゾルシノール−ホルムアルデヒドから構成されるエアロゲル等;R.W.Pekala and L.W.Hrubesh、米国特許第5,731,360号明細書を参照)。これは、キセロゲルとは大きく異なり、キセロゲルは、エアロゲルよりも高密度であり、そして絶縁コーティング等のようなコーティングとして使用される。
【0016】
ゾル−ゲル法は、多種多様な無機、有機およびやや少数のハイブリッド無機−有機キセロゲル、エアロゲルおよび複合体の合成に使用されてきた。シリカゲルは、無機およびハイブリッド無機−有機材料の合成用のベース原料として使用されることが多い。シリカベースエアロゲル合成用の関連前駆材料には、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、単量体のアルキルアルコキシシラン、ビストリアルコキシアルキルまたはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン等が含まれるが、これらに限定されるものではない。種々のポリマーが、シリカゲル中に導入され、得られるゲル、キセロゲル(J.D.Mackenzie,Y.J.Chung and Y.Hu,J.Non−Crystalline Solid 147&148(1992),271−279;Y.Hu and J.D.Mackenzie,J.Mater.Science,27(1992)を参照)、エアロゲル(S.J.Kramer,F.Rubio−Alonso and J.D.Mackenzie,MRS Proc.Vol.435,295−300,1996を参照)の機械的特性が改良されてきた。エアロゲルは、ウェットなゲルを、構造への変化をゼロまたは最小限に抑えるようにして乾燥させると得られる。これは、典型的には、溶媒または(乾燥工程の補助に共溶媒を使用する場合は)混合溶媒の臨界点超で、ゲルから溶媒相を除去して達成される。
【0017】
シリカゲルマトリックス中に分散された有機ポリマーの物理的混合物は、得られるハイブリッド材料の物理的、化学的および機械的特性に影響を及ぼしうる。シリカゲル構造体に、典型的には、Si−OH(シラノール)基への水素結合により、弱く結合しているポリマー材料は、製造工程中の相分離のために、上記構造体の中に不均一に分散する可能性がある。複合体のエアロゲル製造の場合には、弱く結合または会合したポリマードーパントは、常用の溶媒交換段階の際の、アルコゲルまたはヒドロゲルのエアロゲルへの変換の際に流出する可能性がある。ドーパントポリマーまたは改質剤の複合体構造への結合を改良する単純な方法は、Leventisら(Nano Letters,2002,2(9),957−960および米国特許出願公開第20040132846号明細書)に教示されているような、完全な形のシリカゲル構造体の中に本来存在するシラノール基を種々の反応性部分(イソシアネート等)と選択的に反応させる方法である。得られる化学構造がSi−O−X結合を生じさせる場合には、上記基は、水の存在下で、加水分解切断を容易に受ける可能性がある。
【0018】
ウェットなゲルは、共連続の固相と孔の液相とから成る、質量フラクタル特性を有する構造体を呈することが多い。上記構造体では、孔の液相がサンプル体積の実に98%を占める場合がある。エアロゲルの構造は、元のゲルの構造に非常に似ている。というのは、ウェットなゲルを、ゲル構造崩壊の原因となる毛細管力をなくす超臨界法で乾燥させるからである。対照的に、キセロゲルの構造は、乾燥中に大きく変化する。蒸発乾燥工程の際に、固体ネットワークに作用する毛細管力のためである。蒸発の際、固体ネットワークにかかる毛細管圧は、従って、孔の大きさ(例えば、孔径)に反比例するので、孔がナノメートル(10-9)領域の場合には、非常に大きなものとなりうる。蒸発乾燥の際に、生じるこれらの表面張力は、粒子の配位(coordination)数が多くなるので、キセロゲル製造の際にゲルネットワークの折り重なりや凝集を引き起こす。
【0019】
言い換えると、キセロゲルは、ウェットなゲルの通常の(蒸発)乾燥、すなわち、当初の一様なゲル体の大幅な収縮(および大部分の破壊)と同時に、温度の上昇または圧力の降下によって生成される。孔液の蒸発に伴うゲル体のこの大幅な収縮は、当該液がゲル体中に逃げ込む際に孔壁に作用する毛細管力に起因する。これにより、フィリグラン、ウェットなゲルの高多孔性無機ネットワークが崩壊する。構造体の崩壊は、上記ゲルネットワークが、表面張力に起因する圧縮力に耐えるように十分に強くなるととまる。
【0020】
得られたキセロゲルは、最密球状構造を有するが、孔は、TEMではもはや観察されなかった。これは、そうした孔が空間充填型であることを示唆している。従って、乾燥キセロゲル構造体(骨格相と多孔相の両方を含む)は、元のウェットなゲル構造の収縮/変形版である。キセロゲルとエアロゲルとは、乾燥手順の違いのため、構造及び材料特性が大きく異なる。例えば、表面積、孔体積、および代表的Si原子に対して立体的に接近可能なペンダント型の反応性側基の数は、エアロゲル構造体のほうが、対応するキセロゲル構造体(同じ出発原料であるが、蒸発法で乾燥させ、生成させた)よりも、平均的には非常に多い。言い換えると、キセロゲルの調製に一般的に用いられる溶液または混合液は、単に乾燥条件を変えるだけでは、エアロゲルの調製には使用できない。というのは、得られる生成物が、自動的にエアロゲルの密度を有する訳ではないからである。このように、キセロゲルとエアロゲルとの間には、それらの表面積、反応性、孔体積、熱伝導率、圧縮性、機械的強度、弾性係数および他の諸特性を大きく左右するような根本的な組成上の差異が存在する。
【0021】
従って、キセロゲルとの比較において、エアロゲルは、膨張された構造体であり、溶媒充填ゲル構造体に非常に似通っていることが多い。エアロゲルのTEM顕微鏡写真が、大きな格子空洞に隣接する薄いクラスター集合を示すことが多い。窒素吸着法による多孔性の測定ではまた、ナノメートルサイズレベルでの構造的差異が示される。エアロゲルは、対応するキセロゲルと比較して、孔体積が2倍超であり、そして高い相対圧力(>0.9)下での大きな吸着量からも明らかなように、孔サイズがかなり大きい(C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,Chapter 9を参照)。エアロゲルとキセロゲルとの間の構造的差異のため、これら2種の材料の物理的特性、例えば、誘電率、熱伝導率等は大きく異なる。従って、たとえ同じ元素組成から出発しても、エアロゲルとその対応キセロゲルは、完全に異なる材料であり、両者の関係はどちらも同じ糖分子からなるグラニュー糖と綿菓子の関係にやや似ている。
【0022】
本明細書での文献の引用は、いずれかが関連先行技術であることを承認するものではない。文献の日付または内容に関する表示、表明はいずれも出願人に得られた限りでの情報に基づくものであり、文献の日付または内容の正しさを何ら承認するものではない。
エアロゲルは、構造的特徴、すなわち、低密度、開放セル構造、大きな表面積(900m2/g以上であることが多い)およびナノメートル未満の孔サイズに基づく一群の材料を表現するものである。脆い孔から、孔を潰すことなく流体を抽出するためには、一般に、超臨界および亜臨界流体抽出技術が使用される。エアロゲルは、特定の材料よりも、むしろ一群の構造を表す名称であるため、多様なエアロゲル組成物が知られており、例えば、無機、有機、および無機/有機ハイブリッド組成物が含まれる(N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45)。
【0023】
無機エアロゲルは、金属アルコキシドに基づくのが一般的であり、シリカ、各種カーバイド、およびアルミナ等の材料が含まれる。有機エアロゲルには、ウレタンエアロゲル、レゾルシノールホルムアルデヒドエアロゲル、およびポリイミドエアロゲルが含まれるが、これらに限定されるものではない。有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に有機変性シリカ(ormosil,organically modified silica)エアロゾルである。この好ましい実施態様では、上記有機成分を、シリカネットワークに完全に分散させるか、または化学結合させる。分散させたまたは弱く結合させた有機材料は、製造プロセスの間中、比較的容易に流出しうることが判明している。無機構造体に共有結合している有機材料は、流出量の大幅な減少または解消となるであろう。
【0024】
低密度(0.01〜0.3g/mL)エアロゲル材料は、最高の硬質フォーム(ポリイソシアヌレート、ポリウレタン等)よりも十分に良好な最高の固形断熱材であると広く考えられている。例えば、エアロゲル材料の熱伝導率は、37.8℃および1気圧の条件下で、15mW/m・K未満であることが多い(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)。エアロゲルは、主に、伝導(低密度、固体ナノ構造体によるねじれた熱伝達経路)と、対流(非常に小さい孔サイズが対流を最小化する)と、放射(赤外線吸収性または散乱性のドーパントが、エアロゲルマトリックス中に容易に分散される)とを最小化することで、断熱材として作用する。エアロゲルは、配合次第で、極低温〜550℃以上の温度範囲で十分に機能しうる。より高温では、エアロゲル構造体は、収縮、焼結する傾向があり、当初の孔体積および表面積をほとんど失ってしまう。エアロゲル材料はまた、他にも、消費及び産業の両方の市場で有用な、数多くの興味深い音響的、光学的、機械的および化学的特性を示す。
【0025】
低密度断熱材は、コア断熱材が著しい圧縮力を受ける用途で、数多くの断熱問題を解決するために改良されている。例えば、ポリマー材料が、中空ガラス微小球と混合され、一般に、極めて堅い圧縮抵抗材料であるシンタクチックフォームを生成させる。シンタクチック材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチックフォーム材料は、水中の石油/ガスパイプラインおよび支持装置用の断熱材として周知である。シンタクチック材料は、比較的硬質であり、Aspen Aerogls,Inc.製の(繊維で強化されたエアロゲルマトリックス)軟質エアロゲル複合体と比べて熱伝導率が高い。
【0026】
エアロゲルを、ゲル前駆体から生成させることができる。軟質繊維強化エアロゲルを含む種々の層を、容易に結合し、そして成形して、一軸または複数の軸で圧縮された場合に、任意の軸に沿った圧縮に強い本体を与えるプレフォームを与えることができる。このように、圧縮成形されたエアロゲル体は、シンタクチックフォームよりも十分に優れた断熱性を示す。これらの材料の物性を改良する方法、例えば、密度を最適化し、熱抵抗性を高め、発塵性を最小化する等の方法は、種々の産業や用途、例えば、水中の石油/ガスパイプライン等への外断熱材としてのこれらの材料の大規模使用を促進するであろう。
【0027】
シリカエアロゲルは、溶媒(ゲル溶媒)と共に、低密度セラミックまたは架橋ポリマーマトリックスから構成される場合、脆いのが普通である。取り扱いや加工には細心の注意が必要である。
シリカゲル化点の後は、シリカゲル構造体の中で、重合シリカ鎖の拡散と、その後の固体ネットワークの成長とは、非常に遅くなるが、技術上周知のように、最高の熱的/機械的特性を有するエアロゲルを得るには、ゲル化後の一定時間にわたる原料ゲル液(母液)の維持が必須である。その間にゲルが乱れ(disturbance)なく「熟成」する現象は、「シネレシス」といわれる。シネレシス条件(時間、温度、pH、固体濃度)は、エアロゲル生成物の品質に重要である。
【0028】
特許および学術文献で開示されているゾル−ゲル法によるモノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル生成物の通常の方法には、決まってバッチキャスティングが使用される。バッチキャスティングは、ここでは、ある容量全体のゾルに触媒作用を及ぼしてその全量を同時にゲル化させるものと規定する。モノリスゲルおよび/または繊維強化複合体ゲル構造体を生成させる別の方法は、ゲル化前に、ゾルに連続的に触媒作用を及ぼす(繊維強化複合体の場合には、繊維の存在下で)ものであり、米国特許出願公開第20020094426号明細書に開示されている。ゲル生成技術は、当業者に周知である。例には、希釈金属酸化物ゾルのpHおよび/または温度をゲルが生ずるまで調節する方法が含まれる(R.K.Iler,Colloid Chemistry of Silica and Silicates,1954,chapter 6;R.K.Iler,The Chemistry of Silica,1979,chapter 5;C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,chapters 2 and 3)。無機エアロゲルを生成させるための好適な材料は、酸化物を生成しうる大部分の金属、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム等である。特に好ましいのは、入手しやすさ、低コスト、加工しやすさ等のため、加水分解されたシリケートエステルのアルコール溶液から主に生成したゲルである。
【0029】
有機エアロゲルが、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシノールホルムアルデヒド等から製造することができることも当業者に知られている(例えば、N.Husing and U.Schubert,Angew.Chem.Int.Ed.1998,37,22−45を参照)。
【0030】
繊維強化エアロゲル複合体の有効性が、エアロゲル材料に数多くの用途領域を切り開いた。上記複合体は、大部分の有用な品質のエアロゲルと、エアロゲル複合体の大きな部分の製造を可能にする。上記複合体を、より効率的に、改良された機械的特性を有するより大きな部分として、そしてより低コストで製造することができる。真空断熱パネル(VIP,vacuum insulation panel)は、断熱材市場向けの上記高性能製品の一例である。低密度の繊維強化シリカエアロゲルは、17.5psiの荷重下で40%超収縮する。VIP構造体の中に生ずる圧力に耐えるための強い(stiffer)エアロゲル複合体を生成させるためには、別の強化法が必要である。
【0031】
この20年間、シリカネットワークに直接結合されている第二のポリマー相の導入によって、多数の研究者がモノリスゲル構造体の生成の際、クラック傾向を抑制するために、シリカエアロゲルおよびシリカキセロゲルの機械的特性の改良を試みてきた。これらの試みは、多くのタイプの無機−有機ハイブリッド材料の合成へとつながった。最も注目に値する例は、次のとおりである。
【0032】
L.Leventis,C.Sotiriou−Leventis,G.Zhang and A.M.Rawashdeh,Nano Letters,2002,2(9),957−960には、シリカヒドロゲルのシラノール基を、ポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)と架橋させることによる、シリカエアロゲル強度の100超のファクターの向上が報告されている。しかし、得られる材料は、Si−O−C−のケイ素と酸素の間に加水分解性の結合を含み、またSi−C結合を含まない。
H.Schmidt,J.Non−Cryst.Solid,73,681,1985には、ポリメタクリレート(以下、「PMA」という。)の導入によるシリカキセロゲルの引張特性の向上が報告されている。
【0033】
以下の執筆者もまた、PMA/シリカキセロゲルの製造と組織的構造研究を行っている:J.H.Harreld,B.Dunn and J.I.Zink,J.Mater.Chem.,1997,7(8),1511−1517;Z.H.Huang and Y.K.Qiu,Polymer,38(3),1997,521−526;D.L.Ou,A.Adamjee,S.L.Lana and A.B.Seddon,Ceramic,Tran.,1998,10,291−294;D.Donescu,M.Teodorescu,S.Serban,L.Fusulan,C.Petcu,European Polymer Journal,35(1999),1679−1686.そのうちZinkらとOuらは、相分離を防いで透明なPMA/シリカキセロゲルを生成させる方法を報告している。
【0034】
エアロゲルとキセロゲルを区別すると、エアロゲルは、低密度、高い孔体積およびナノメートルの孔サイズを特徴とする、ユニークな一群の材料である。高い孔体積とナノメートルの孔サイズのため、一般に表面積が大きく、熱伝導率が低い。その高い多孔性は、固体熱伝導率の低さにつながり、そして気体の熱伝導が部分的に抑制される。というのは、ナノメートルの孔サイズは、典型的には、気体の平均自由行程よりも小さいからである。エアロゲルのこうした構造形態は、断熱材用途では大いに有利である。例えば、周囲条件下で、熱伝導率は、シリカエアロゲルの場合、15mW/m・K未満であることが測定されている(J.Fricke and T.Tillotson,Thin Solid Films,297(1997)212−223を参照)、そして有機エアロゲルの場合、12mW/m・Kの低さである(レゾルシノール−ホルムアルデヒドから構成されるエアロゲル等;R.W.Pekala and L.W.Hrubesh、米国特許第5,731,360号明細書を参照)。これは、キセロゲルとは大きく異なり、キセロゲルは、エアロゲルよりも高密度であり、そして絶縁コーティング等のようなコーティングとして使用される。
【0035】
ゾル−ゲル法は、多種多様な無機、有機およびやや少数のハイブリッド無機−有機キセロゲル、エアロゲルおよび複合体の合成に使用されてきた。シリカゲルは、無機およびハイブリッド無機−有機材料の合成用のベース原料として使用されることが多い。シリカベースエアロゲル合成用の関連前駆材料には、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、単量体のアルキルアルコキシシラン、ビストリアルコキシアルキルまたはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン等が含まれるが、これらに限定されるものではない。種々のポリマーが、シリカゲル中に導入され、得られるゲル、キセロゲル(J.D.Mackenzie,Y.J.Chung and Y.Hu,J.Non−Crystalline Solid 147&148(1992),271−279;Y.Hu and J.D.Mackenzie,J.Mater.Science,27(1992)を参照)、エアロゲル(S.J.Kramer,F.Rubio−Alonso and J.D.Mackenzie,MRS Proc.Vol.435,295−300,1996を参照)の機械的特性が改良されてきた。エアロゲルは、ウェットなゲルを、構造への変化をゼロまたは最小限に抑えるようにして乾燥させると得られる。これは、典型的には、溶媒または(乾燥工程の補助に共溶媒を使用する場合は)混合溶媒の臨界点超で、ゲルから溶媒相を除去して達成される。
【0036】
シリカゲルマトリックス中に分散された有機ポリマーの物理的混合物は、得られるハイブリッド材料の物理的、化学的および機械的特性に影響を及ぼしうる。シリカゲル構造体に、典型的には、Si−OH(シラノール)基への水素結合により、弱く結合しているポリマー材料は、製造工程中の相分離のために、上記構造体の中に不均一に分散する可能性がある。複合体のエアロゲル製造の場合には、弱く結合または会合したポリマードーパントは、常用の溶媒交換段階の際の、アルコゲルまたはヒドロゲルのエアロゲルへの変換の際に流出する可能性がある。ドーパントポリマーまたは改質剤の複合体構造への結合を改良する単純な方法は、Leventisら(Nano Letters,2002,2(9),957−960および米国特許出願公開第20040132846号明細書)に教示されているような、完全な形のシリカゲル構造体の中に本来存在するシラノール基を種々の反応性部分(イソシアネート等)と選択的に反応させる方法である。得られる化学構造がSi−O−X結合を生じさせる場合には、上記基は、水の存在下で、加水分解切断を容易に受ける可能性がある。
【0037】
ウェットなゲルは、共連続の固相と孔の液相とから成る、質量フラクタル特性を有する構造体を呈することが多い。上記構造体では、孔の液相がサンプル体積の実に98%を占める場合がある。エアロゲルの構造は、元のゲルの構造に非常に似ている。というのは、ウェットなゲルを、ゲル構造崩壊の原因となる毛細管力をなくす超臨界法で乾燥させるからである。対照的に、キセロゲルの構造は、乾燥中に大きく変化する。蒸発乾燥工程の際に、固体ネットワークに作用する毛細管力のためである。蒸発の際、固体ネットワークにかかる毛細管圧は、従って、孔の大きさ(例えば、孔径)に反比例するので、孔がナノメートル(10-9)領域の場合には、非常に大きなものとなりうる。蒸発乾燥の際に、生じるこれらの表面張力は、粒子の配位(coordination)数が多くなるので、キセロゲル製造の際にゲルネットワークの折り重なりや凝集を引き起こす。
【0038】
言い換えると、キセロゲルは、ウェットなゲルの通常の(蒸発)乾燥、すなわち、当初の一様なゲル体の大幅な収縮(および大部分の破壊)と同時に、温度の上昇または圧力の降下によって生成される。孔液の蒸発に伴うゲル体のこの大幅な収縮は、当該液がゲル体中に逃げ込む際に孔壁に作用する毛細管力に起因する。これにより、フィリグラン、ウェットなゲルの高多孔性無機ネットワークが崩壊する。構造体の崩壊は、上記ゲルネットワークが、表面張力に起因する圧縮力に耐えるように十分に強くなるととまる。
【0039】
得られたキセロゲルは、最密球状構造を有するが、孔は、TEMではもはや観察されなかった。これは、そうした孔が空間充填型であることを示唆している。従って、乾燥キセロゲル構造体(骨格相と多孔相の両方を含む)は、元のウェットなゲル構造の収縮/変形版である。キセロゲルとエアロゲルとは、乾燥手順の違いのため、構造及び材料特性が大きく異なる。例えば、表面積、孔体積、および代表的Si原子に対して立体的に接近可能なペンダント型の反応性側基の数は、エアロゲル構造体のほうが、対応するキセロゲル構造体(同じ出発原料であるが、蒸発法で乾燥させ、生成させた)よりも、平均的には非常に多い。言い換えると、キセロゲルの調製に一般的に用いられる溶液または混合液は、単に乾燥条件を変えるだけでは、エアロゲルの調製には使用できない。というのは、得られる生成物が、自動的にエアロゲルの密度を有する訳ではないからである。このように、キセロゲルとエアロゲルとの間には、それらの表面積、反応性、孔体積、熱伝導率、圧縮性、機械的強度、弾性係数および他の諸特性を大きく左右するような根本的な組成上の差異が存在する。
【0040】
従って、キセロゲルとの比較において、エアロゲルは、膨張された構造体であり、溶媒充填ゲル構造体に非常に似通っていることが多い。エアロゲルのTEM顕微鏡写真が、大きな格子空洞に隣接する薄いクラスター集合を示すことが多い。窒素吸着法による多孔性の測定ではまた、ナノメートルサイズレベルでの構造的差異が示される。エアロゲルは、対応するキセロゲルと比較して、孔体積が2倍超であり、そして高い相対圧力(>0.9)下での大きな吸着量からも明らかなように、孔サイズがかなり大きい(C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol−Gel Science,1990,Chapter 9を参照)。エアロゲルとキセロゲルとの間の構造的差異のため、これら2種の材料の物理的特性、例えば、誘電率、熱伝導率等は大きく異なる。従って、たとえ同じ元素組成から出発しても、エアロゲルとその対応キセロゲルは、完全に異なる材料であり、両者の関係はどちらも同じ糖分子からなるグラニュー糖と綿菓子の関係にやや似ている。
【0041】
本明細書での文献の引用は、いずれかが関連先行技術であることを承認するものではない。文献の日付または内容に関する表示、表明はいずれも出願人に得られた限りでの情報に基づくものであり、文献の日付または内容の正しさを何ら承認するものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、溶媒充填型の、ナノ構造のゲル構造体、並びに上記ゲル構造体より生成される繊維強化ゲル複合体の生成を提供する。上記ゲル構造体は、超臨界流体抽出法等で移動層溶媒を完全に抽出した後に、ナノ多孔性エアロゲル構造体となる。本発明によって提供される配合および方法は、ひとたび抽出が完了すると、エアロゲルモノリスおよび複合体に、改良された機械的特性をもたらす。この新規な有機変性シリカは、ormosil(organically modified silica)ともいう。本発明は、エアロゲル複合体の圧縮特性を改良することにより、上記複合体を耐圧縮性用途、例えば、真空断熱パネル(VIP)や水中の石油/ガスパイプライン用断熱材等に適したものにする。本明細書で開示する試料では、他の特質の改良も観測された。
【0043】
本発明で開示する有機変性シリカマトリックス材料は、ゾル−ゲル法で生成させるのが最善であり、1メートルの10億分の1オーダー超の微孔を有する構造体を規定するポリマー(無機、有機または無機/有機ハイブリッド)からなるのが好ましい。ポリマーのゲル化前に繊維性材料が随意選択的に添加されると、本発明で開示するマトリックス材料が強化される。繊維性強化材は、嵩だかな(lofty)繊維性構造体(バット(batting))であることが好ましいが、個々の配向またはランダムな超極細繊維を含むこともできる。特に、好ましい繊維性強化材は、有機(例えば、熱可塑性ポリエステル、高強度カーボン、アラミド、高強度延伸ポリエチレン)繊維、低温の無機(各種の金属酸化物ガラス、例えば、Eガラス)繊維、または耐火物(例えば、シリカ、アルミナ、リン酸アルミニウム、アルミノシリケート)繊維である。
【0044】
従って、第1の態様では、本発明は、エアロゲル構造体の中の強化成分として、随意選択的にエアロゲルのシリカネットワークに共有結合されている、有機材料を有する有機変性シリカエアロゲルを提供する。好ましい実施態様は、溶媒交換および/または超臨界溶媒抽出等のようなエアロゲル製造段階の際に、流出および損失量を最小化するため、上記有機材料の炭素原子と上記無機構造体のケイ素原子の間の非加水分解性Si−C結合を介して有機材料を共有結合させることである。上記有機材料は、アクリレート、アクリレートモノマーからなるビニルポリマーでもよく、それらは、ビニル基(カルボニル炭素に直接結合した、互いに二重結合した2個の炭素原子)を含むエステルである。強化成分として、シリカ結合ポリメタクリレートを使用するのが好ましい。本明細書に記載される配合は、ゲル構造体の機械的強度を変化させ、加工性を高める。有機材料とシリカネットワークの間の共有結合を欠く有機変性シリカの実施態様では、両者を結合させる可能性のある相互作用として、電荷相互作用、引き付けあう双極子のアラインメント、疎水性−疎水性(van der Waals)相互作用、水素結合等が考えられる。
【0045】
本発明はまた、複数の結合線状ポリマー強化材コンセプトに基づくとみなされる場合もあるであろう。というのは、混合の無機および有機ポリマードメイン間に複数のSi−C結合点をもつ組成物が教示されているからである。本発明によってもたらされる利点の一つは、既知ハイブリッド材料、例えば、シリカ/PMAブレンド等の公知のハイブリッド材料から、より堅い無機有機ハイブリッドエアロゲルが生成されることである。非限定的な例として、本明細書に記載されるように、得られる有機変性シリカの機械的特性を改良するため、数種のPMAを、シリカネットワーク中に導入してもよい。PMA相は、シリカネットワーク中に共有結合と水素結合の両方を導入するのが好ましい。得られるPMA/シリカ有機変性シリカエアロゲルでは、図1に示すように、複数の結合PMA鎖が、脆い多孔性シリカマトリックスを強くする。これにより、100psiを上回る可能性のある曲げ強度値を有する高強度のエアロゲル構造体がもたらされる。比較の目的では、同じ密度の「純」シリカエアロゲル材料の曲げ強度は、典型的には、約1〜2psiである。
【0046】
本発明は、Si−C結合を介して、有機ポリマードメインを、シリカ構造体中に、密接に、そして共有結合的に結合させ、上記構造体を補強し、そしてエアロゲル複合体の圧縮変形を大きく減少させることも重要である。加えて、ポリマードメインの導入は、圧縮レジリエンスを向上させ、圧縮変形を受けた際に、元の厚さへの回復力を強める。断熱材用途では、この圧縮抵抗およびレジリエンスは、大きな利点である。所要の方向の限界熱抵抗は、固有熱伝導率とその方向の材料の厚さとの関数である。厚さが減少すると、断熱性能が低下することは、当業者に周知である。本発明は、断熱材の構造体に(真空パネルまたは水中の断熱パイプライン)一定の圧縮力、または一時的な圧縮荷重が直接かかるような用途では、大きな利点がある。
【0047】
本発明に従って製造されるアクリレート/シリカまたはPMMA/シリカエアロゲルと公知のPMMA/シリカキセロゲルは、その元素組成の類似性にもかかわらず、構造が基本的に異なる。これは、主にこれら2種類の材料のナノメートルスケールでの構造的差異を反映するものである。
【0048】
別の態様では、本発明は、得られるハイブリッドゲルの機械的特性、例えば、剛性、硬さ、靭性の改良を目的とした、ナノ強化成分をシリカネットワーク中に導入することを提供する。機械的強度の向上により、ゲル調製工程の際の、亀裂発生の確率が低下し、機械的特性、例えば、高曲げ強度、低い圧縮変形のエアロゲルが得られる。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、アクリレート/シリカまたはシリカ/PMAハイブリッドエアロゲルの製造法を提供し、そこでは、水素結合と共有結合との両方で、アクリレートまたはPMA相をシリカ相に結合させる。アクリレートまたはPMAの導入により、得られる有機変性シリカゲルに、巨視的な相分離は生じないであろう。
【0050】
さらに別の態様では、本発明は、トリアルコキシシリル含有アクリレートまたはポリメタクリレートオリゴマーを、加水分解されたアルコキシシラン等(これらに限定されるものではない)のシリカ前駆体と共縮合させる方法、そしてアクリレート/シリカまたはPMA/シリカエアロゲルを得る次の手段を提供する。アクリレートまたはPMA強化材の導入により、得られる有機変性シリカハイブリッドモノリスの曲げおよび圧縮強度は、さらに高まる。100psi超の曲げ強度を有するアクリレート/シリカまたはPMA/シリカ有機変性シリカハイブリッドエアロゲルが、本明細書に記載される方法で生成した。
【0051】
本発明はまた、高強度で、かつ圧縮下で変形が少ない(17.5psiで、<10%、4000psiの荷重後で最大98%の回復ひずみ)の繊維強化エアロゲル複合体を提供する。このハイブリッドエアロゲルの機械的特性の改良は、他のエアロゲル特有の特性、例えば、低密度、および低熱伝導率を犠牲にすることなく実現された。本発明に記載されるアクリレート/シリカまたはPMA/シリカハイブリッドエアロゲルはまた、ビーズ形状に容易に成形可能である。
【0052】
従って、本発明は、アクリレート系またはポリマーを含有する有機変性シリカエアロゲル組成物を提供する。上記オリゴマーまたはポリマーを、有機変性シリカエアロゲルのシリケートネットワーク中に、共有結合および/または水素結合を用いて導入させることが好ましい。シリケートネットワークと上記オリゴマーとの間の結合には、シリケートネットワーク中のケイ素原子と上記オリゴマーまたはポリマーの炭素原子との間のSi−C結合が含まれることが好ましい。従って本発明は、エアロゲルのシリケートネットワーク中に結合されるオリゴマーを提供する。
【0053】
上記オリゴマーの非限定的な例には、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)、またはそれらの組み合わせが含まれる。上記オリゴマーまたはポリマーは、硬質シリカマトリックス材料用のナノ強化成分として機能する。
【0054】
上記オリゴマーまたはポリマーの質量パーセントは、非限定的な例として、約1〜95質量%、好ましくは、約5〜85質量%である。他の範囲には、約10〜75質量%、約15〜65質量%、約20〜55質量%、約25〜45質量%、約30〜35質量%が含まれる。
【0055】
本発明の組成物は、シリカとアクリレート相との間に、複数の結合を生成させる架橋剤を含んでもよい。シリケートネットワークおよびオリゴマーに結合する前の上記架橋剤を、次式:
(R1−O)3Si−R2
(式中、R1−Oは、上記架橋剤と上記シリケートネットワークとの間に共有結合を生成させるための、上記架橋剤から開裂しうる一般的な加水分解性基であり、そして
R2は、アクリレートと共有結合を生成する基、例えば、アクリレートモノマーのビニル部である)
と表示することができる。
他のR2の非限定的な例は、アクリレートオリゴマーまたはポリマーの一端または両端において、炭素−炭素二重結合(ビニル基)と反応しうる基である。例示的な基は、当業者に周知のように、上記二重結合と付加または酸化反応しうる基である。
【0056】
従って、R1−Oは、シリケートネットワークとの結合によって置換される加水分解性基と考えることができる。R2の非限定的な例には、ポリアクリレートに結合されうる他の重合性基である。架橋剤は、アルコキシシリルアクリレートであるアクリレートモノマーであることが好ましい。
上記架橋剤の非限定的な例には、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TMSPM)およびトリメトキシシリルプロピルアクリレートが含まれる。上記架橋剤は、トリメトキシシリルプロピルメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0057】
本発明はまた、TMSPMを、アクリレートモノマー(メタクリレートモノマー等)と、溶媒中、高温で反応させることで、トリアルコキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーの調製法を提供する。上記アクリレートモノマーの非限定的な例には、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、およびヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートが含まれる。
【0058】
上記溶媒中のメタクリレートモノマー反応体量の非限定的な例は、高速反応を可能にする50%w/w超である。上記反応を行うための有効な溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるものではない。
高温には、熱開始を起こさせるための非限定的な例として、60〜90℃または70〜80℃が含まれる。
【0059】
本発明は、トリアルコキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーを、シリカ前駆体と、溶媒中、室温または高温で共縮合させる方法をさらに提供する。当該方法には、トリアルコキシシリルグラフト化有機ポリマー樹脂とシリカ前駆体とを、加水分解条件下(典型的には、酸触媒の存在下に)で結合させてシリカ縮合反応を促進させる段階、次に、ハイブリッドゾル混合物のゲル化を触媒してハイブリッドゲル構造体を生成させる段階が含まれる。加水分解条件の非限定的な例には、HClまたは他の強酸の存在下等の酸還流が含まれる。
【0060】
本発明では、トリアルコキシシリルグラフト化オリゴマー反応体は、溶媒に対し、約5〜約50質量%、好ましくは、約10〜約30質量%の範囲である。
反応温度は、約10〜約90℃、約10〜約30℃、約30〜約50℃、約50〜約70℃、または約70〜約80℃の範囲である。
【0061】
シリカ前駆体の非限定的な例には、アルコキシシラン、部分的に加水分解されたアルコキシルシラン、テトラエトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラエトキシルシランの縮合ポリマー、テトラメトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラメトキシルシランの縮合ポリマー、テトラ−n−プロポキシシラン、部分的に加水分解されたテトラ−n−プロポキシシランの縮合ポリマー、またはそれらの組み合わせが含まれる。部分的に加水分解されたアルコキシルシランの例には、Silbond H5、Silbond40およびその製品群;Dynasil40およびその製品群; Dow Corning Z6818および他のDow Corning樹脂が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
本発明は、本明細書に記載されるような、有機変性シリカエアロゲル材料、好ましくは、ポリメタクリレート含有有機変性シリカエアロゲルモノリスの製造に使用しうるゲル組成物をさらに提供する。上記ゲル組成物は、もちろん、本明細書に記載されるような、繊維強化されたアクリレートまたはポリアクリレート含有有機変性シリカエアロゲル複合体を製造するための繊維性材料を含有してもよい。アクリレートまたはポリアクリレートの質量%は、得られるエアロゲルモノリスまたは複合体中で、約1〜約90%であり、好ましくは、約5〜約80%、約10〜約75%、約15〜約65%、約20〜約55%、約25〜約45%、または約30〜約35%である。
【0063】
得られる本発明のエアロゲルモノリスは、約0.01または約0.08〜約0.30または約0.35g/cm3(約0.05〜約0.25g/cm3、約0.1〜約0.20g/cm3、約0.15〜約0.20g/cm3、約0.18〜約0.25g/cm3または約0.18〜約0.30g/cm3を含む)の密度を有することが好ましい。熱伝導率は、1気圧、周囲温度の条件下で、20mW/m・K未満であり、好ましくは、約9〜約14または約19mW/m・K(約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18または約19mW/m・Kを含む)であり、そして約2psi超〜約102psiの曲げ強度である。本発明の繊維強化エアロゲル複合体は、好ましくは、0.10〜0.20g/cm3の密度(約0.12、約0.14、約0.16または約0.18g/cm3を含む)を有し、そして熱伝導率は、周囲条件下で、9〜16mW/m・K(約10、約11、約12、約13、約14または約15mW/m・Kを含む)である。
【0064】
本発明の繊維強化エアロゲル複合体はまた、約17.5psiの荷重下で約10%未満(または約8%未満または約6%未満)の低い圧縮変形を有することが好ましい。あるいは、上記繊維強化エアロゲル複合体は、4000psiの圧縮後に、最大約94.5%(または約90%以下、または約85%以下)の高い回復ひずみを有することができる。
【0065】
本発明の好ましいエアロゲル材料は、少なくとも100psi以上の動的圧縮荷重を受けた後に、少なくとも10%のひずみ回復と共に、0.3g/cm3未満の密度を有する。もちろん、本明細書に記載される全てのエアロゲルを、ビーズまたは他の特定形状に調製することができる。
【0066】
本発明はまた、次の段階;
アクリレートモノマーまたはアクリレートオリゴマーを準備する段階;
アルコキシルシリルアルキル含有基を、上記アクリレートモノマーまたはアクリレートオリゴマーと反応させ、反応体を生成させる段階;
上記反応体を、溶媒中、周囲以上の温度で、シリカ前駆体と混合して、混合物を生成させる段階;
上記混合物を乾燥させ、本明細書に記載されるエアロゲル組成物を生成させる段階:
を含む上記エアロゲル組成物の製法を提供する。
【0067】
上記方法は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせから選択される溶媒中で実施されることが好ましい。
さらなる実施態様では、本発明は、17.5psiの荷重下で、約10%以下の低い圧縮変形を有する繊維強化エアロゲル複合体を含む冷容積密閉容器(cold volume enclosure)用の真空断熱パネル(VIP)または断熱材を提供する。
【0068】
本発明の1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付図面および以下の明細書に示されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、添付図面および詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明で用いられるナノ強化成分には、PMAポリマー系、例えば、ポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」という。)、ポリブチルメタクリレート(以下、「PBMA」という。)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「PHEMA」という。)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
ポリマーまたはオリゴマーをシリカネットワークに導入する方法は、たくさん存在する。本発明には、系内の2つの分離相の混和性を高めるため、架橋剤であるトリメチルシリルプロピルメチメタクリレート(以下、「TMSPM」という。)を使用することが含まれる。TMSPMは、図2に示すように、重合性メタクリレート成分と縮合性トリメトキシシリル官能基との両方を有する。
【0071】
本発明の利点は、有機ポリマー構造体とシリケートネットワークとを共有結合させる非加水分解性のSi−C結合を導入することにある(図1等を参照)。この結合は、エアロゲル製造のための通常の処理条件に無傷で存在し、また400℃以上の高温でも安定でありうる。加えて、本発明は、ゾル段階において、有機ポリマーおよびシリケートドメインの間に共有結合ネットワーク構造体を生成させ、種々の相の一様またはほぼ一様な混合物をもたらす。次に、得られた触媒作用を及ぼされたゾルは、独立して考えられる個々の相とは異なる物理的、化学的、機械的特性を備える、はっきりとしたアモルファスゲル構造体へとゲル化させることができる。
【0072】
トリアルコキシシリルグラフト化オリゴマーの、ケイ酸およびエステルベースゾル(オルトシリケート、例えば、テトラエチルオルトシリケートに由来する)との加水分解ベース縮合は、上記有機オリゴマーを、シリカネットワーク中に共有結合させるが、有機ポリマー化合物のさらなる重合が、それをPMA相中にさらに架橋させるであろう。原則として、この架橋剤は、シリカネットワークと線状ポリメタクリレートエレメントの間の留め金として機能するであろう。シリカネットワークのシラノール基と、PMA上のカルボニル基との間の広範囲な水素結合の存在がまた、均一なゲルの生成に有利となりうる。ポリマー相とシリカ相との間のこれらの相互作用は、溶液の均一性を高め、相分離を抑制する可能性がある。
【0073】
TMSPMは、メタクリレートモノマーと重合して、図3に示すような、トリメトキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーを生成させた。重合を開始させるため、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)またはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等の熱開始剤を用いることができる。メタクリレートモノマーの例には、メチルメタクリレート(以下、「MMA」という。)、エチルメタクリレート(以下、「EMA」という。)、ブチルメタクリレート(以下、「BMA」という。)、ヒドロキシメチルメタクリレート(以下、「HEMA」という。)、ヘキサフルオロブチルメタクリレート(以下、「HFBMA」という。)が含まれるが、それらに限定されるものではない。重合は、低級(C1〜C6)アルコール溶液中で、約40〜約100℃、好ましくは、約70〜約80℃の高温で行った。高速反応を確実に実現するには、アルコール溶液中の反応体の濃度は、約5〜約95質量%、好ましくは、約40〜約70質量%の範囲内であることが好ましい。TMSPM/メタクリレートモノマーのモル比は、約1〜約10、好ましくは、約1〜約4の範囲内である。得られるトリメトキシシリルグラフト化ポリメタクリレートオリゴマーは、比較的低分子量で、通常の有機溶媒に可溶であるべきである。
【0074】
一般に、有機変性シリカエアロゲル生成のための主要な合成経路は、図4に示すように、好適なケイ素アルコキシドを、オルガノトリアルコキシルシランと、加水分解および縮合させることである。最も好適なケイ素アルコキシドは、各アルキル基において、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜3個の炭素原子を有するものである。上記化合物の具体例には、テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」という。)、テトラメトキシシラン(以下、「TMOS」という。)、およびテトラ−n−プロポキシシランが含まれる。これらの材料を、部分加水分解させて、ポリジエトキシシロキサン等のポリケイ酸エステルのポリマーとして、低pHで安定化させることができる。これらの材料は、アルコール溶液中で、例えば、Silbond(商標)40、Silbond(商標)25、Silbond(商標)H5、およびDynasil(商標)40として市販されている。有機変性シリカの配合には、より高分子量のシリコーン樹脂もまた使用することができる。例には、Dow Corning Foxシリーズ、Dow Corning Z6075、Dow Corning MQ樹脂が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
ゾル−ゲル法を使用して生成されたゲル材料は、多様な金属酸化物または他のポリマー生成種から誘導させることができることは、当業者に理解されている。ゲル生成物の物理的、機械的特性に影響を及ぼす固体(IR不透明剤、焼結抑制剤、マイクロファイバー)を用いて、ゾルをドープしうることもまた周知である。上記ドーパントに好適な量は、一般的に、本発明の組成物を用いて、最終複合体の約1〜約40質量%、好ましくは、約2〜約30質量%の範囲にわたる。
【0076】
有機変性シリカエアロゲル生成法の可変パラメーターには、アルコキシド種、溶液pH、並びにアルコキシド/アルコール/水の比、シリカ/ポリマーの比、およびモノマー/架橋剤の比が含まれる。上記パラメーターの制御は、「ゾル」状態から「ゲル」状態への転移を通して、マトリックス種の成長および凝集を制御することを可能にする。得られるエアロゲルの特性は、シリカ/ポリマー比に大きな影響を受けるが、本発明では、ゲル生成を可能にする任意の比を用いることができる。
【0077】
一般に、開示の方法に使用される溶媒は、炭素原子数が1〜6、好ましくは、2〜4の低級アルコールであろう。しかし、当業者に公知のような、他の同等の溶媒を使用することも可能である。他の有用な液体の例には、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
以下の説明では、便宜上、本発明で使用される前駆体の合成方法を説明するための代表的な実施態様として、アルコゲル経由の有機変性シリカゲルおよび複合体生成経路を示す。これは、本発明を、特定タイプのPMAのシリカネットワークへの導入に限定することを意図するものではない。本発明は、他の同様のコンセプト構造を有する他の有機変性シリカにも適用可能である。
【0079】
本発明の方法を用いて調製されるゲル材料の特定の後、好適なシリカアルコキシド/トリエトキシルシリルグラフト化PMAオリゴマーのアルコール溶液を調製する。シリカエアロゲル生成液の調製は、当業者に周知である。例えば、S.J.Teichner et al.,Inorganic Oxide Aerogel,Advances in Colloid and Interface Science,Vol.5,1976,pp245−273およびL.D.LeMay et al.,Low−Density Microcellular Materials,MRS Bulletin,Vol.15,1990,p19を参照。有機変性シリカゲルモノリスの製造では、典型的には、原料は、部分加水分解させたアルコキシシラン、トリメトキシルシリルグラフト化PMAオリゴマー、水、およびエタノール(EtOH)が好ましい。以上の全ての原料は、周囲温度または高温で一緒に混合することができる。
【0080】
部分的に加水分解されたアルコキシシランの例には、以下の市販の材料が含まれるが、これらに限定されるものではない:Silbond H5、Silbond40およびその製品群; Dynasil40およびその製品群。好ましいSiO2:水のモル比は、約0.1〜約1:1であり、好ましいSiO2:MeOHのモル比は、約0.02〜約0.5:1であり、そして好ましいPMA/(PMA+SiO2)の質量%は、約5〜約90質量%である。上記成分の本来のpHは、約5である。よりpHの低い溶液を得るために、任意の酸を用いることができるが、HCl、H2SO4またはHFが、好ましい酸である。よりpHを高くするためには、NH4OHが好ましい塩基である。
【0081】
図4に示したスキームに従って、縮合触媒添加後に、約1〜約80質量%(好ましくは、約5〜約70%)のPMA添加量の透明有機変性シリカゲルモノリスを生成させた。上記触媒の非限定的な例は、NH4OH、NH4F、HFまたはHClである。上記モノリスは、CO2超臨界抽出後、不透明になるであろう。得られる有機変性シリカエアロゲルモノリスは、密度が約0.05〜約0.40であり、熱伝導率が約10〜約18mW/m・Kである。PMAの強化作用により、機械的特性が大幅に向上する。密度0.3g/cm3のPHEMA/シリカエアロゲルでは、最大102.2psiの破断曲げ強度が測定された。この特定の有機変性シリカエアロゲルモノリスは、100psiの荷重の後、変形が1%未満であった。「変形」または「変形する」は、本明細書では、荷重の適用後のエアロゲルの変化の度合いを指す。上記度合いは、荷重の適用前後で、荷重の適用前のエアロゲルサイズに対するエアロゲルサイズの変化の比(またはそれに基づく百分率)でとして表現することができる。
【0082】
繊維強化有機変性シリカエアロゲル複合体では、シリカ前駆体としては、プレ重合化シリカ前駆体(例えば、Silbond(商標)H5およびその製品群)が好ましい。その他の変動因子の効果は、有機変性シリカモノリスの製造の場合とほぼ同じである。
【0083】
嵩だかなバットは、本明細書では、内部(bulk)特性および(完全内部回復を伴うかまたは伴わない)何らかのレジリエンス特性を示す繊維性材料をいう。使用可能な嵩だかバットの非限定的な例は、米国特許出願公開第2002/0094426号明細書で開示されている。本発明の好ましい実施態様では、同じ材料の非強化エアロゲル体と比較して、強化複合体の熱特性を大きく変化させない個別フィラメント(または繊維)を、非常に少量含む場合に、本発明に使用するバットが「嵩だか」となる。一般に、上記バットを含む最終エアロゲル複合体の断面を見ると、上記繊維の断面積は、上記断面の総表面積の約10%未満、好ましくは、約8%未満、最も好ましくは、約5%未満である。
【0084】
この材料の好ましい形態は、軟質ウエブである。嵩だかなバット強化材により、エアロゲルの熱的性能の劣化がほぼ防止される一方、支持されていないエアロゲルの体積が最小化される。バットは、好ましくは、繊維性材料の層またはシートを指し、キルトの中綿もしくは詰め物または包装、あるいは断熱材のブランケットとして常用される。
【0085】
コンベヤー成形システムに導入するために、相当の抗張力を有するバット材料が有利であるが、要件とされるものではない。調製されたゾル流への浸透の前に、デリケートなバット材料を、コンベヤー領域に導入するために、工程に荷重伝達機構を用いることができる。
【0086】
嵩だかなバット層およびx−y配向の張力強化層の両方を生成させるための好適な繊維性材料には、任意の繊維生成材料が含まれる。特に好適な材料には:ガラス繊維、石英、ポリエステル(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾ−ビスオキサゾール(PBO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTET)、ポリメタフェニレンジアミン(Nomex)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、例えば、SpectraTM、ノボロイド樹脂(Kynol)、ポリアクリロニトリル(PAN)、PAN/炭素およびカーボンファイバーが含まれる。
【0087】
得られる繊維強化PMA/シリカエアロゲル複合体は、密度が0.05〜0.25g/cm3であり、熱伝導率が12〜18mW/m・Kである。PMAの強化効果により、エアロゲル複合体の圧縮特性が大幅に改良される。この有機変性シリカエアロゲル複合体では、17.5psiの荷重下で、10%未満の圧縮変形が観測された。この高強度繊維強化PMA/シリカエアロゲル複合体は、密度が0.18g/cm3の場合で、4000psiで圧縮後に元の厚さの94.5%まで回復する。
【0088】
本発明を一般的に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明をさらに理解することができるであろう。以下の実施例は、具体例を説明するために提供するものであり、特に断らない限り本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0089】
以下の非限定的な個別実施例では、ケイ素結合線状ポリマーを含む有機変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化エアロゲル複合体の、本発明に従う製造、ならびにそれらの試験結果を開示するが、そこからは本発明のさらなる詳細および説明が得られよう。
【0090】
当業者に本発明をさらに理解してもらうため、以下に、非限定的な実施例を示す。実施例では、質量をグラム(g)で表す。熱開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と共に、モノマーのMMA、BMA、HEMAはAldrichより購入した。架橋剤のTMSPMは、Dow Corning Z6030シランとして、Ashland Chemicalsから購入した。
【0091】
例1
本例では、56.9質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。1.0gのAIBNを、10gのMMA、24.8gのTMSPMおよび20gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、60gのシリカ前駆体であるSilbond H5、1.0gのポリエチレングリコールメタクリレート(Mn:526)および300gのエタノールからなる混合液に、9.9gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0092】
得られた溶液を、12.8gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29%NH3水溶液/エタノール)の添加により14分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0093】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.16g/cm3、周囲条件下での熱伝導率10.8mW/m・K、および破断点曲げ強度21.9psi(図5に、3点試験として示す)を示した。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.15g/cm3、熱伝導率が15.0mW/m・Kであった。窒素吸着法による測定では、本実施例のエアロゲルモノリスは、BET比表面積が695m2/g、総孔体積が2.08cm3/gであった。本実施例の孔サイズ分布は、図6に示すように2〜80nmと、やや範囲が広かった。
【0094】
シリケート中のケイ素中心周辺の局所的な環境は、特徴的な29Si化学シフトを引き起こすことが見出されており、それらの相関関係は、29Si MAS NMR分析法によりシリケートベース材料中に存在する状況の種類を確認するために用いられてきた。図7に示すように、−100ppmにショルダーを有する−110ppmのピークが1つあり、これは、Q3およびQ4の基礎構造を有するシリケートに対応し、10ppmにおける1つのピークは、トリメチシロキサン基に対応し、そして−66ppmにおける(ショルダーを有する)1つのピークと、−60ppmにおけるショルダーは、基礎構造T2およびT3を有する有機変性シリケートT官能基に対応する。T種の存在は、エアロゲル中の有機相とシリカ相との間のC−Si共有結合の生成したことの直接的な証拠である。
【0095】
例2
本例では、61.0質量%のポリブチルメタクリレート(PBMA)の添加量を有するPBMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。1.4gのAIBNを、14gのBMA、24.8gのTMSPMおよび14gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、60gのシリカ前駆体であるSilbond H5および300gのエタノールからなる混合液に、9.9gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0096】
得られた溶液を、10.0gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)および2.5gの1.0Mフッ化アンモニウム水溶液の添加により5分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29%NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0097】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PBMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.17g/cm3、周囲条件下での熱伝導率12.7mW/m・K、破断点曲げ強度9.7psiを示した。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.11g/cm3、熱伝導率が17.5mW/m・Kであった。窒素吸着法による測定では、本実施例のエアロゲルモノリスは、BET比表面積が611m2/g、総孔体積が1.68cm3/gであった。本実施例の孔サイズ分布は、図8に示すように2〜65nmと、やや範囲が広かった。
【0098】
図9に示すように、上記エアロゲルは、−100ppmにショルダーを有する−110ppmのピークを1つ示し、これは、Q3およびQ4の基礎構造をもつシリケートに対応し、10ppmにおける1つのピークは、トリメチルシロキサン基に対応し、そして−66ppmにおける(ショルダーを有する)1つのピークと、−60ppmにおけるショルダーは、基礎構造T2およびT3を有する基礎変性シリケートT官能基に対応する。T種の存在は、エアロゲル中の有機相とシリカ相との間にC−Si共有結合が生成したことを示す直接的な証拠である。
【0099】
例3
本例では、83.2質量%のポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)の添加量を有するPHEMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。1.3gのAIBNを、13gのHEMAと24.8gのTMSPMとの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液および200gのエタノールからなる混合液に、8.1gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で45分間還流させた。
【0100】
得られた溶液を、2.1gのエタノール希釈アンモニア溶液(25/75v/v、29% NH3水溶液/エタノール)の添加後、55℃において8時間でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスが得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95 v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0101】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PHEMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスが得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.32g/cm3、周囲条件下での熱伝導率18.5mW/m・K、ASTM D790(非強化および強化プラスチックおよび電気絶縁材料の曲げ特性の標準試験方法)による破断点曲げ強度102.3psiを示した。図10を参照。
【0102】
例4
本例では、20質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。0.5gのAIBNを、5gのMMA、6.2gのTMSPMおよび5gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、150gのシリカ前駆体であるSilbond H5、および135gのエタノールからなる混合液に、14.1gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0103】
得られた溶液を、190mlのエタノールと1.74gのエタノール希釈アンモニア溶液(50/50v/v、29% NH3水溶液/エタノール)との添加により、5分でゲル化させることができた。本例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0104】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度0.15g/cm3、周囲条件下での熱伝導率13.7mW/m・K、および破断点曲げ強度12.5psiを示した。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.16g/cm3、熱伝導率が16.3mW/m・Kであった。圧縮試験によれば17.5psiの荷重下での上記複合体の変形は、12.2%であった。
【0105】
例5
本例では、20質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。0.5gのAIBNを、5gのMMA、6.2gのTMSPMおよび5gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリメチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、150gのシリカ前駆体であるSilbond H5、および121gのエタノールからなる混合液に、28.2gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で2時間還流させた。
【0106】
得られた溶液を、136mlのエタノールと9.30gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)との添加により13分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で2日間熟成させた。
【0107】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルの繊維強化ゲル複合体が得られた。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.17/cm3、熱伝導率が12.8mW/m・Kであった。圧縮試験によれば17.5psiの荷重下での上記複合体の変形は、10.9%であり、4000psiの荷重後の回復ひずみは、84.2%であった。
【0108】
例6
本例では、20質量%のポリブチルメタクリレート(PBMA)の添加量を有するPBMA変性シリカエアロゲルのモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。2.8gのAIBNを、28gのBMA、24.8gのTMSPMおよび28gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、787.5gのシリカ前駆体であるSilbond H5および610mlのエタノールからなる混合液に、147.15gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で0.5時間還流させた。
【0109】
得られた溶液を、28gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95 v/v、29% NH3水溶液/エタノール)の添加により11分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間熟成させた。
【0110】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PBMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度が0.16g/cm3、周囲条件下での熱伝導率が13.2mW/m・Kであった。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.18g/cm3、熱伝導率が13.5mW/m・Kであった。圧縮試験によれば4000psiの荷重後の回復ひずみは、94.5%であった。
【0111】
例7
本例では、20質量%のポリブチルメタクリレート(PBMA)の添加量を有するPBMA変性シリカエアロゲルモノリスおよび繊維強化複合体の生成について具体的に説明する。2.8gのAIBNを、28gのBMA、24.8gのTMSPMおよび28gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、787.5gのシリカ前駆体であるSilbond H5および610mlのエタノールからなる混合液に、147.15gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で0.5時間還流させた。
【0112】
得られた溶液を、250gのエタノールと30gのエタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)との添加により7分でゲル化させることができた。本実施例からは、有機変性シリカモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。ウェットなゲルを、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、NH3/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0113】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、PMMA/シリカの有機変性シリカエアロゲルモノリスと繊維強化ゲル複合体との両方が得られた。本実施例のエアロゲルモノリスは、密度が0.16g/cm3、周囲条件下での熱伝導率が13.2mW/m・Kであった。本実施例の石英繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.16g/cm3、熱伝導率が13.1mW/m・Kであった。圧縮試験によれば上記複合体の17.5psiの荷重下の変形は、7.7%であり、4000psiの荷重後の回復ひずみは、87.4%であった。
【0114】
例8
本例では、33.6質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するPMMA変性シリカエアロゲルビーズの生成について具体的に説明する。3.9gのAIBNを、39gのMMA、48.75gのTMSPMおよび41.7gのエタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。上記トリメトキシシリルグラフト化ポリブチルメタクリレートオリゴマーのエタノール溶液、589gのシリカ前駆体であるSilbond H5、および764mlのエタノールからなる混合液に、58.3gの0.1M HCl水溶液を添加した。この混合液を70〜75℃で1時間還流させた。
【0115】
得られた溶液を、1.4質量%のアンモニア水溶液と2:1の容量比で混合して、有機変性シリカのゾルを生成させた。このゾルを、多量の非混和性(non−miserable)の溶媒、例えば、シリコーン油中に、周囲温度でたえず撹拌しながら滴下した。PMMA/シリカの事前縮合ゾルがシリコーン油中に分散した状態でゲル化するため、適切に球状のビーズ様ヒドロゲルが生成する結果となった。ウェットなゲルを、エタノールで2回洗浄し、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(10/90v/v、HMDS/エタノール)中で1日間熟成させた。本実施例からは、CO2超臨界抽出後にPMMA/シリカのハイブリッドエアロゲルビーズが得られた。
【0116】
例9
本例では、15%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有するポリエステル繊維強化PMMA/シリカエアロゲル複合体の生成について具体的に説明する。0.90gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートを、40gのMMA、24.8gのTMSPMおよび18.3gのメタノールの混合液に添加し、次いで70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーが、濃縮されたエタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。
【0117】
30.97gのトリメチシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーを、622.28gのSilbond H5(商標)、155.93gのエタノール、68.08gの水、および42.0gの0.1M HCl水溶液と、周囲条件下で1時間混合した。得られた溶液を、12.87gのAlcoblack、2.57gのカーボンファイバー、および527.78gのエタノールと5分間さらに混合し、そして71.1gのエタノールと2.4gの29%アンモニア水溶液との添加により3分でゲル化した。本実施例からは、繊維強化ゲル複合体が得られた。ウェットなゲルは、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で1日間、熟成させた。
【0118】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に繊維強化ハイブリッドエアロゲル複合体が得られた。本発明の繊維強化エアロゲル複合体のクーポンは、密度が0.14g/cm3で、周囲条件下での熱伝導率が12.9mW/m・Kであった。
【0119】
例10
本例では、20質量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)の添加量を有する炭素遮蔽型繊維強化PMMA変性シリカエアロゲル複合体の生成について説明する。0.47gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートを、7.8gのMMA、9.75gのTMSPMおよび4.22gのメタノールの混合液に添加し、次いで、70〜80℃で0.5時間、激しく撹拌した。トリメトキシシリルグラフト化PMMAオリゴマーが、濃縮されたメタノール溶液中に粘稠な液体として得られた。
【0120】
上記トリメトキシシリルグラフト化PMMAオリゴマー(8.04g)を、6gのTHF、30gのエタノールおよび14.7gの0.1M HCl水溶液からなる溶液中にさらに溶解させ、そして79.1gのシリカ前駆体であるSilbond H5と周囲温度で1時間混合した。
【0121】
得られた溶液を、2.57gのカーボンブラック溶液(Alcoblack(商標))と45gのエタノールとからなる溶液に混合し、最終的に21.3gのエタノールと0.3gのアンモニア溶液(29% NH3水溶液)の添加により5.5分でゲル化させた。本実施例からは、ポリエステル繊維強化ゲル複合体が得られた。ウェットなゲルは、エタノール希釈アンモニア溶液(5/95v/v、29% NH3水溶液/エタノール)中で1日間、そしてエタノール希釈ヘキサメチルジシラザン(5/95v/v、HMDS/エタノール)中で3日間、熟成させた。
【0122】
本実施例からは、CO2超臨界抽出後に、単一の繊維強化エアロゲル複合体が得られた。比較のため、別のウェットなゲルを周囲条件でヒュームフードに3日間入れておくと、細分化された繊維強化キセロゲル複合体が得られる結果となった。
【0123】
この例の繊維強化エアロゲル複合体は、密度が0.16g/cm3で、周囲条件下での熱伝導率が15.7mW/m・Kであった。この例の繊維強化キセロゲル複合体は、密度が0.36g/cm3で、周囲条件下での熱伝導率が29.7mW/m・Kであった。
【0124】
本発明の繊維強化遮蔽型エアロゲル複合体の切り取り片(coupon)は、きわめて堅いように見えた。圧縮試験では、図11に示すように、250psiの荷重下での変形は27%にすぎず、1500psiの荷重下での変形は57%であった。
この例のエアロゲルとキセロゲルとの間のナノメートルサイズレベルでの構造的差異は、窒素吸着法による孔分布分析でも明らかとなった。図12に示すように、エアロゲルは、総孔体積が2.97cm3/g、平均孔サイズが30nmであったのに対して、キセロゲルは、全孔体積が1.95cm3/g、平均孔サイズが17nmであった。従って、上記エアロゲルは、対応するキセロゲルと比べて、総孔体積が非常に大きく、そして孔サイズが大きい。
【0125】
本明細書で引用した諸々の参考文献は、その旨の個別の言及の有無を問わず、ここに参照によりその全体が開示される。本明細書では、任意の可算名詞は、単数と複数の両方を含むものとする。
【0126】
本発明の説明は、以上で尽きるが、本発明が広範囲の同等パラメーター、濃度および条件の下で、その精神と範囲から逸脱することなく、また必要以上の実験に俟つことなく、実行しうることは、当業者には自明であろう。本発明の説明は、特定の実施態様との関連で行ったが、変更態様が可能であることは自明であろう。本願は、総じて本発明の原理に従う本発明の任意の変動、使用、または翻案を、関連技術分野の内部で公知または慣行となっているような、また本願で開示した本質的な特徴に当てはまるような、本発明からの逸脱を含めて、包摂するものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、複数の結合されたポリメタクリレート分子鎖によって強化されるシリカエアロゲル多孔性マトリックスを具体的に説明するものである(1:Si−C共有結合、2:シリカ粒子、3:PMMAオリゴマー鎖)。
【図2】図2は、架橋剤であるトリメトキシシリルプロピルメチルメタクリレートの分子構造を具体的に説明するものである。
【図3】図3は、トリメトキシシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーの構造を具体的に説明するものである。
【図4】図4は、トリメトキシシリル含有ポリメタクリレートオリゴマーとアルコキシシランとの加水分解ベースの縮合反応を具体的に説明するものである。
【0128】
【図5】図5は、例1のPMMA/シリカのハイブリッドエアロゲルモノリスの3点曲げ試験の結果を示している。
【図6】図6は、例1のモノリスの孔サイズ分布を示している。
【図7】図7は、例1のモノリスの29Si固体NMRスペクトルを示している。
【図8】図8は、例2のエアロゲルの孔サイズ分布を示している。
【0129】
【図9】図9は、例2のエアロゲルの29Si固体NMRスペクトルを示している。
【図10】図10は、例3のPMMA/シリカのハイブリッドエアロゲルモノリスの3点曲げ試験の結果を示している。
【図11】図11は、例6の繊維強化エアロゲルの圧縮測定を示している。
【図12】図12は、例6のエアロゲルおよびキセロゲルの孔サイズ分布を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機変性シリカ(ormosil)エアロゲル組成物であって、前記エアロゾルのシリケートネットワーク内に結合されているアクリレート系オリゴマーを含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記シリケートネットワーク中のケイ素原子と前記オリゴマーの炭素原子との間のSi−C結合を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オリゴマーが、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーが、1〜95%w/wまたは5〜85%w/wで存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記シリカと前記オリゴマーとの間に複数の結合を生成させるために、架橋剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、前記シリケートネットワークと前記オリゴマーとの結合前に、次式:
(R1−O)3Si−R2
(式中、
R1−Oは、前記架橋剤と前記シリケートネットワークとの間に共有結合を生成させるための、前記架橋剤から開列されうる一般的な加水分解性基であり、
R2は、アクリレートと共有結合を生成させる基(例えば、アクリレートモノマーのビニル部)である)
で表される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TMSPM)およびトリメトキシシリルプロピルアクリレートから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋剤が、アルコキシシリルアクリレート、好ましくは、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TMSPM)またはトリメトキシシリルプロピルアクリレートを、溶媒中、高温でアクリレートモノマーと反応させることにより調製され、ここで、前記アクリレートモノマーが、随意選択的に、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、およびヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
高速反応を可能にするため、メタクリレートモノマー反応体の濃度が50%w/w超であり、そして/または反応温度が、60〜90℃または70〜80℃である、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
ビーズまたは粒子の形状である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
下記;
アクリレート系オリゴマーを準備する段階;
アルコキシルシリルアルキル含有基を、前記オリゴマーと反応させて反応体を生成させる段階;
前記反応体を、溶媒中、周囲以上の温度で、シリカ前駆体と混合し、混合物を生成させる段階;そして
前記混合物を乾燥させ、エアロゲル組成物を生成させる段階:
を含む、前記エアロゲル組成物の製造方法。
【請求項13】
メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせから選択される溶媒をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリカ前駆体が、アルコキシシラン、部分的に加水分解されたアルコキシシラン、テトラエトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラエトキシルシランの縮合ポリマー、テトラメトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラメトキシルシランの縮合ポリマー、テトラ−n−プロポキシシラン、部分的に加水分解されたテトラ−n−プロポキシシランの縮合ポリマー、またはそれらの組み合わせより選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応温度が、10〜90℃、10〜30℃または70〜80℃の範囲にある、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エアロゲル組成物が、下記;
0.01〜0.35g/cm3の密度;
1気圧および周囲温度において、20mW/m・K未満の熱伝導率;並びに/または
2psi超の曲げ強度;
を有する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記エアロゲル組成物が、下記;
4000psiの圧縮の後に、最大94.5%のひずみ回復;または
少なくとも100psiの動的圧縮荷重を受けた後に、少なくとも10%のひずみ回復と共に0.3g/cm3未満の密度:
を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
17.5psiの荷重下で、約10%以下の低圧縮変形を有する繊維強化エアロゲル複合体を含む、冷容積密閉容器用の真空断熱パネル(VIP)または断熱材。
【請求項19】
請求項18に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
【請求項1】
有機変性シリカ(ormosil)エアロゲル組成物であって、前記エアロゾルのシリケートネットワーク内に結合されているアクリレート系オリゴマーを含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記シリケートネットワーク中のケイ素原子と前記オリゴマーの炭素原子との間のSi−C結合を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オリゴマーが、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーが、1〜95%w/wまたは5〜85%w/wで存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記シリカと前記オリゴマーとの間に複数の結合を生成させるために、架橋剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、前記シリケートネットワークと前記オリゴマーとの結合前に、次式:
(R1−O)3Si−R2
(式中、
R1−Oは、前記架橋剤と前記シリケートネットワークとの間に共有結合を生成させるための、前記架橋剤から開列されうる一般的な加水分解性基であり、
R2は、アクリレートと共有結合を生成させる基(例えば、アクリレートモノマーのビニル部)である)
で表される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TMSPM)およびトリメトキシシリルプロピルアクリレートから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋剤が、アルコキシシリルアクリレート、好ましくは、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(TMSPM)またはトリメトキシシリルプロピルアクリレートを、溶媒中、高温でアクリレートモノマーと反応させることにより調製され、ここで、前記アクリレートモノマーが、随意選択的に、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、およびヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
高速反応を可能にするため、メタクリレートモノマー反応体の濃度が50%w/w超であり、そして/または反応温度が、60〜90℃または70〜80℃である、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
ビーズまたは粒子の形状である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
下記;
アクリレート系オリゴマーを準備する段階;
アルコキシルシリルアルキル含有基を、前記オリゴマーと反応させて反応体を生成させる段階;
前記反応体を、溶媒中、周囲以上の温度で、シリカ前駆体と混合し、混合物を生成させる段階;そして
前記混合物を乾燥させ、エアロゲル組成物を生成させる段階:
を含む、前記エアロゲル組成物の製造方法。
【請求項13】
メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、またはそれらの組み合わせから選択される溶媒をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリカ前駆体が、アルコキシシラン、部分的に加水分解されたアルコキシシラン、テトラエトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラエトキシルシランの縮合ポリマー、テトラメトキシルシラン、部分的に加水分解されたテトラメトキシルシランの縮合ポリマー、テトラ−n−プロポキシシラン、部分的に加水分解されたテトラ−n−プロポキシシランの縮合ポリマー、またはそれらの組み合わせより選択される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応温度が、10〜90℃、10〜30℃または70〜80℃の範囲にある、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エアロゲル組成物が、下記;
0.01〜0.35g/cm3の密度;
1気圧および周囲温度において、20mW/m・K未満の熱伝導率;並びに/または
2psi超の曲げ強度;
を有する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記エアロゲル組成物が、下記;
4000psiの圧縮の後に、最大94.5%のひずみ回復;または
少なくとも100psiの動的圧縮荷重を受けた後に、少なくとも10%のひずみ回復と共に0.3g/cm3未満の密度:
を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
17.5psiの荷重下で、約10%以下の低圧縮変形を有する繊維強化エアロゲル複合体を含む、冷容積密閉容器用の真空断熱パネル(VIP)または断熱材。
【請求項19】
請求項18に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−519780(P2007−519780A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547628(P2006−547628)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/000349
【国際公開番号】WO2005/098553
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506229844)アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/000349
【国際公開番号】WO2005/098553
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506229844)アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
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