説明

ケイ酸カルシウム系材料の製造方法

【課題】より効率的にケイ酸カルシウム系材料を製造できる方法を提供する。
【解決手段】ケイ酸カルシウム系材料を製造する方法であって、(1)水性媒体中にてカルシウム成分、ケイ素成分及びアルミニウム成分を含む原料を反応させて反応生成物を得る工程、及び(2)前記反応生成物を水熱処理することによりケイ酸カルシウムを生成させる工程を含む、ケイ酸カルシウム系材料の製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なケイ酸カルシウム系材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸カルシウムは、例えば医薬、食品添加物等のほか、成形助剤、断熱材・保温材等のさまざまな用途に用いられている。ケイ酸カルシウムの一般的な製法としては、例えば水性媒体中で石膏とケイ酸アルカリとを混合反応する反応工程、該反応工程で得られる固形分を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程で得られる固形分をスラリー溶液とするスラリー化工程、該スラリー化工程で得られるスラリー溶液を水熱処理する水熱処理工程及び該水熱処理工程で得られるケイ酸カルシウム又はケイ酸カルシウム−石膏複合体を分離する分離工程よりなることを特徴とするケイ酸カルシウム又はケイ酸カルシウム−石膏複合体の製造方法が知られている(特許文献1)。その他にも、種々の条件によりケイ酸カルシウムを製造する方法が提案されている(特許文献2〜4)
【0003】
このような方法で製造されたケイ酸カルシウムは、特に嵩比容積及び吸油量が大きいことから、例えば除湿剤の付着防止・流動改善のための添加剤、液状物質等を含浸するための担体、成形助剤、吸着剤等の用途に利用することができる。特に、特定のアスペクト比と高い吸油量を有するケイ酸カルシウムが医薬品の製剤化等に使用することも提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−5317
【特許文献2】特開昭55−85445
【特許文献3】特開昭55−32753
【特許文献4】特開昭54−93698
【特許文献5】特許第4431391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のケイ酸カルシウムの製法では、水熱合成反応の条件(特に温度・時間)という点においてはさらなる改善の余地がある。すなわち、より短時間でより低い温度でケイ酸カルシウムを合成することができれば工業的規模では生産に貢献できるものの、そのような技術は開発されるに至っていないのが実情である。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、より効率的にケイ酸カルシウム系材料を製造できる方法を提供することにある。また、本発明は、高い嵩比容積及び吸油量を発揮できるケイ酸カルシウム系材料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の方法を採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のケイ酸カルシウム系材料の製造方法に係る。
1. ケイ酸カルシウム系材料を製造する方法であって、
(1)水性媒体中にてカルシウム成分、ケイ素成分及びアルミニウム成分を含む原料を反応させて反応生成物を得る工程、及び
(2)前記反応生成物を水熱処理することによりケイ酸カルシウムを生成させる工程
を含む、ケイ酸カルシウム系材料の製造方法。
2. アルミニウム成分の供給源としてアルミニウム塩、アルミニウム水酸化物及びアルミニウム酸化物の少なくとも1種のアルミニウム化合物を用いる、前記項1に記載の製造方法。
3. アルミニウム化合物がアルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの少なくとも1種である、前記項2に記載の製造方法。
4. ケイ酸カルシウムが、ジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶を含む、前記項1に記載の製造方法。
5. 原料におけるAl/SiOモル比が0.002以上である、前記項1に記載の製造方法。
6. 水熱処理の条件が温度150〜250℃で1〜4時間である、前記項1に記載の製造方法。
7. アルミニウム成分を含むケイ酸カルシウム系材料であって、
(1)嵩比容積が8mL/g以上であり、吸油量が2.5mL/g以上であって、
(2)アルミニウムの含有量が0.1〜1.0重量%である、
ケイ酸カルシウム系材料。
8. ジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶を含む、前記項7に記載のケイ酸カルシウム系材料。
9. 比表面積が120m/g以上である、前記項7に記載のケイ酸カルシウム系材料。
10. 前記項7に記載のケイ酸カルシウム系材料を含む医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケイ酸カルシウム系材料の製造方法によれば、原料中にアルミニウム成分を添加することによって、効率的にケイ酸カルシウム系材料を製造することができる。特に、水熱処理工程において、より低い温度及び/又はより短い時間で所望の嵩比容積及び吸油量を有するケイ酸カルシウム系材料を製造することができる。
【0010】
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、より高い嵩比容積及び吸油量を有する。また、比表面積も比較的大きい。このため、これらの特徴を活かして次に示すような様々な用途に利用することができる。
【0011】
(1)除湿剤の付着防止・流動改善
本発明のケイ酸カルシウム系材料のもつ高い吸液性・成形性を利用して、例えば塩化カルシウム等との複合粒子を造粒することができる。この場合、塩化カルシウムが吸収した水分をケイ酸カルシウム系材料に取り込むことができので、粒子表面がほとんど濡れることなく、サラサラした状態を維持することができる。
【0012】
(2)液状物質の含浸担体
本発明のケイ酸カルシウム系材料の成形体(造粒物を含む。)に香料等の液体を含浸させる場合は、吸液量が大きいので芳香等を長時間持続させることができる。
【0013】
(3)液体の粉末化
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、細孔容積が比較的大きいことから、特に粘度の高い液体の粉末化に適している。例えば、前記のような液体香料のほか、液状栄養剤(ビタミンE等)、液状帯電防止剤等の粉末化に好適に用いることができる。
【0014】
(4)成形助剤
固形浴用剤、吸着剤造粒物等の製造において、本発明のケイ酸カルシウム系材料を成形助剤として好適に用いることができる。
【0015】
(5)各種の添加剤
ビタミン等の脂溶性薬剤等の液状物質あるいは固形薬剤を溶解してなる液状物質の固形化担体として用いることができる。また、製剤化において、有効成分の放出性(放出速度)を制御するための徐放性添加剤(賦形剤)として利用できるほか、流動性改善剤、pH調整剤、安定化剤等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法の工程例を示す図である。
【図2】アルミニウム成分の添加量が嵩比容積及び吸油量に与える影響を調べた結果を示すグラフである。
【図3】アルミニウム成分の添加量が嵩比容積及び吸油量に与える影響を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.ケイ酸カルシウム系材料の製造方法
本発明のケイ酸カルシウム系材料の製造方法は、
(1)水性媒体中にてカルシウム成分、ケイ素成分及びアルミニウム成分を含む原料を反応させて反応生成物を得る工程(反応工程)、及び
(2)前記反応生成物を水熱処理することによりケイ酸カルシウムを生成させる工程(水熱処理工程)
を含むことを特徴とする。
【0018】
反応工程
反応工程では、水性媒体中にてカルシウム成分、ケイ素成分及びアルミニウム成分を含む原料を反応させて反応生成物を得る。
【0019】
水性媒体としては、水及び水溶性有機溶媒の少なくとも1種を使用することができる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類のほか、例えばアセトン等を使用することができる。本発明では、特に水を用いることが好ましい。水性媒体の使用量は特に制限されず、通常は原料の固形分濃度が1〜25重量%程度となるように適宜調整すれば良い。
【0020】
原料は、カルシウム成分、ケイ素成分及びアルミニウム成分を含む。各成分は、これらの成分を供給源となる化合物を使用することができる。
カルシウム成分としては、その供給源としてカルシウム化合物を使用することができる。カルシウム化合物は、カルシウムの塩類、水酸化物、酸化物等のいずれも使用することができる。特に、カルシウムの硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩等のカルシウム塩を好適に用いることができる。より具体的には、硫酸カルシウム(又は石膏)、塩化カルシウム等を例示することができる。本発明では、これらの化合物は水溶性のものを用いることが好ましい。
【0021】
ケイ素成分としては、その供給源としてケイ素化合物を使用することができる。ケイ素化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩を好適に用いることができる。本発明では、これらの化合物は水溶性のものを用いることが好ましい。
【0022】
アルミニウム成分としては、その供給源としてアルミニウム化合物を使用することができる。アルミニウム化合物としては、アルミニウム塩、アルミニウム水酸化物、アルミニウム酸化物等の少なくとも1種を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0023】
原料の配合割合は、特にカルシウム成分及びケイ素成分については、ケイ酸カルシウム(2CaO・3SiO・mSiO・nHO(但し、1≦m≦2、2≦n≦3である。)で示される組成となるようにすれば良い。従って、Ca/Siモル比で0.4〜0.5程度の範囲内に設定することが好ましい。
【0024】
アルミニウム成分については、原料中におけるAl/SiOモル比で0.002以上とすることが好ましく、特に0.003以上となるように配合することがより好ましい。なお、上記Al/SiOモル比の上限値は、ケイ酸カルシウムの用途等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.04程度とすれば良い。
【0025】
原料中には、必要に応じてpH調整剤(水酸化ナトリウム等)の添加剤を適宜配合することができる。
【0026】
これら所定の配合割合で添加された原料を水性媒体中で混合し、反応させる。この場合の反応温度は限定的ではないが、例えば5〜100℃、特に5〜25℃の範囲内で適宜設定することが好ましい。反応時間は、反応温度等に応じて適宜調節することができる。このようにして、上記原料から反応生成物を得ることができる。
【0027】
必要に応じて、得られた反応生成物は、水熱処理工程に先立って水洗することもできる。水洗(洗浄)する方法は公知の方法と同様にすれば良く、例えば反応生成物を固液分離した後、固形分を水で洗浄する方法等を採用することができる。固液分離の方法も限定的でなく、例えばろ過、遠心分離等の公知の方法によれば良い。上記の洗浄は、繰り返して実施することもできる。
【0028】
水熱処理工程
水熱処理工程では、前記反応生成物を水熱処理することによりケイ酸カルシウム(特に結晶性ケイ酸カルシウム)を生成させる。
【0029】
水熱処理に際し、反応生成物に水性媒体を添加してスラリーとしても良い。この場合の水性媒体は、前記で例示したようなものを用いることができる。スラリーの固形分濃度は特に限定されないが、通常は1〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%程度とすれば良い。
【0030】
水熱処理は、例えばオートクレーブ等の公知の装置を用いて実施することができる。反応温度は、通常は150〜250℃の範囲内とすれば良い。水熱処理の時間は、所定の結晶性ケイ酸カルシウムが生成するのに十分な時間とすれば良い。水熱処理の温度及び時間に関し、本発明では原料中にアルミニウム成分を配合することによって、嵩比容積及び吸油量が高いケイ酸カルシウム系材料をより低い温度又はより短時間で生成させることが可能となる。換言すれば、同じ温度及び時間では、嵩比容積及び吸油量がより高いケイ酸カルシウム系材料を得ることができる。
【0031】
2.ケイ酸カルシウム系材料
本発明は、アルミニウム成分を含むケイ酸カルシウム系材料であって、
(1)嵩比容積が8mL/g以上であり、吸油量が2.5mL/g以上であって、
(2)アルミニウムの含有量が0.1〜1.0重量%である、
ケイ酸カルシウム系材料を包含する。このようなケイ酸カルシウム系材料は、特に本発明の製造方法によって得られるものを好適に採用することができる。
【0032】
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、嵩比容積が8mL/g以上であり、好ましくは10mL/g以上である。また、本発明のケイ酸カルシウム系材料は、吸油量が2.5mL/g以上であり、好ましくは2.5mL/g以上である。
【0033】
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、ケイ酸カルシウムとアルミニウム成分を含むものであり、好ましくは実質的に、ケイ酸カルシウムにアルミニウム成分を含むものからなる。
【0034】
ケイ酸カルシウム系材料中のアルミニウムの含有量は、ケイ酸カルシウムの用途、使用方法等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.1重量%以上とし、好ましくは0.2重量%以上とする。なお、アルミニウムの含有量の上限値は1.0重量%程度とすれば良い。
【0035】
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、ケイ酸カルシウム結晶を含み、より好ましくはジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶を含む。特に、ジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶は、薄片が集合することによって形成されたバラの花弁状の粒子からなり、それによって所望の嵩比容積及び吸油量を達成することができる。
【0036】
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、通常は粉末状であり、その平均粒子径は1〜100μmの範囲内であり、好ましくは10〜40μmである。
【0037】
本発明のケイ酸カルシウム系材料の比表面積は限定的ではないが、好ましくは120m/g以上であり、特に120〜200m/g程度がより好ましく、さらに120〜180m/gが最も好ましい。本発明の比表面積は、本発明のケイ酸カルシウム系材料粉末試料0.02gを下記の測定装置、前処理条件及び試験条件により多点BET法により測定した値を示す。
【0038】
測定装置:高速比表面積細孔分布測定装置(Quantachrome社製:NOVA−4000e)
前処理条件:脱気しながら、105℃で1時間保持
試験条件:窒素吸着法により3点プロット法で測定
相対圧:0.1、0.2、0.3
【0039】
本発明のケイ酸カルシウム系材料のpH(5%SUS)は、通常はアルカリ性であり、特に8以上であり、好ましくは8.5〜9.5である。この場合のpHは、試料2.5gを水50mLに懸濁させた液のpHをpH計により測定した値である。
【0040】
本発明のケイ酸カルシウム系材料は、ケイ酸カルシウムが前記のように花弁状のジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶から実質的に構成される場合は比較的大きな細孔を有するという特徴を有する。これによって、非晶質の無水ケイ酸が凝集粒子間に形成する細孔とは異なり、大きな吸液性、液体保持特性等を発現することができる。例えば、本発明のケイ酸カルシウム系材料を圧縮成形して錠剤とした場合でも、上記のような大きい細孔を有することから高い吸液性、液体保持特性等を発揮できる。このような構造の平均細孔径は、通常6〜100nm程度である。また、細孔容積は0.1〜6.0cc/g程度である。
【0041】
3.医薬組成物
本発明は、本発明のケイ酸カルシウム系材料を含む医薬組成物を包含する。本発明のケイ酸カルシウム系材料は、例えば賦形剤、成形助剤、安定化剤のほか、液状薬剤や固形薬剤を溶解してなる液状物質の担体等として用いることができる。従って、例えば錠剤を成形する場合に本発明のケイ酸カルシウム系材料を好適に用いることができる。また、有効成分を本発明のケイ酸カルシウム系材料の細孔内に添着させることにより、有効成分の溶出性、及び徐放性を任意にコントロールすることができる。
【0042】
本発明の医薬組成物において使用できる有効成分(医薬有効成分)は特に限定されず、公知又は市販のものをいずれも使用することができる。例えば、高脂血症薬、抗潰瘍薬、降圧薬、抗うつ薬、抗喘息薬、抗てんかん薬、抗アレルギー薬、抗菌薬、抗ガン薬、鎮痛薬、抗炎症薬、糖尿病薬、代謝拮抗薬、骨粗しょう症薬、抗血小板薬等、制吐薬、麻酔薬、ホルモン剤等のいずれも採用することができる。
【0043】
本発明の医薬組成物中におけるケイ酸カルシウム系材料の含有量は限定的ではないが、通常0.1〜99重量%の範囲内で適宜調節することができる。
【0044】
また、本発明の医薬組成物では、前記のケイ酸カルシウム系材料及び医薬有効成分のほかにも、公知の医薬用添加剤が含まれていても良い。医薬用添加剤としては、例えば賦形剤(乳糖等)、崩壊剤(クロスポピドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)等)、結合剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)、pH調整剤(クエン酸、酢酸、硫酸、塩酸、乳酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、安定化剤(水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等)等を用いることができる。医薬用添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲内であれば特に制限されないが、通常は0.1〜99重量%の範囲内とすることが望ましい。
【0045】
医薬組成物は、様々な剤形に適用することができる。例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、細粒剤、懸濁剤、乳剤等のいずれであっても良い。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0047】
実施例1
図1に示すフローに従ってケイ酸カルシウム系材料を調製した。まず、2水石膏0.5kgと水6.79kgを反応槽に入れて十分に攪拌してスラリーを調製した。次いで、前記スラリーを攪拌しながら、大気圧下20〜25℃で3号ケイ酸ナトリウム1.303Kg及び表1の試料No.2〜6、9〜11に示す所定量の添加剤(アルミニウム化合物及び水酸化ナトリウム)を添加し、原料を混合しながら反応させた(反応工程)。このときの仕込みCaSO/NaO・nSiOモル比は1.06であった。次に、反応生成物をろ過した後、水を用いて反応生成物を洗浄した(洗浄工程)。得られたケーキ状物に水を加え、固形分5重量%のスラリーを調製した。このスラリーをオートクレーブに入れ、密閉状態下で表1に示す所定の温度・時間にて水熱処理を実施した(水熱処理工程)。水熱処理が終了した後、ろ過し、得られた固形分を105℃で24時間乾燥した(乾燥工程)。このようにして粉末状のケイ酸カルシウム系材料(試料No.2〜6、9〜11)を得た。
【0048】
得られた試料を粉末X線回折により分析した結果、いずれもジャイロライト型ケイ酸カルシウムであることが確認された。また、走査型電子顕微鏡により観察した結果、いずれも花弁状の形状を有することも確認された。
【0049】
比較例1
図1に示すフローに従ってケイ酸カルシウム系材料を調製した。まず、2水石膏0.5kgと水6.79kgを反応槽に入れて十分に攪拌してスラリーを調製した。次いで、前記スラリーを攪拌しながら、大気圧下20〜25℃で3号ケイ酸ナトリウム1.303Kg及び表1(試料No.1、7、8)に示す所定量の添加剤(アルミニウム化合物及び水酸化ナトリウム)を添加し、原料を混合しながら反応させた(反応工程)。このときの仕込みCaSO/NaO・nSiOモル比は1.06であった。次に、反応生成物をろ過した後、水を用いて反応生成物を洗浄した(洗浄工程)。得られたケーキ状物に水を加え、固形分5重量%のスラリーを調製した。このスラリーをオートクレーブに入れ、密閉状態下で表1に示す所定の温度・時間にて水熱処理を実施した(水熱処理工程)。水熱処理が終了した後、ろ過し、得られた固形分を105℃で24時間乾燥した(乾燥工程)。このようにして粉末状のケイ酸カルシウム系材料(試料No.1、7、8)を得た。
【0050】
比較例2
2水石膏0.5kgと水6.79kgを反応槽に入れて十分に攪拌してスラリーを調製した。次いで、前記スラリーを攪拌しながら、大気圧下20〜25℃で3号ケイ酸ナトリウム1.303Kg及び表1(試料No.12)に示す所定量の水酸化ナトリウムを添加し、原料を混合しながら反応させた(反応工程)。このときの仕込みCaSO/NaO・nSiOモル比は1.06であった。次に、反応生成物をろ過した後、水を用いて反応生成物を洗浄した(洗浄工程)。得られたケーキ状物に水を加え、水酸化アルミニウム0.010Kgを加え、固形分5重量%のスラリーを調製した。このスラリーをオートクレーブに入れ、密閉状態下で表1に示す所定の温度・時間にて水熱処理を実施した(水熱処理工程)。水熱処理が終了した後、ろ過し、得られた固形分を105℃で24時間乾燥した(乾燥工程)。このようにして粉末状のケイ酸カルシウム系材料(試料No.12)を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
試験例1
前記実施例及び比較例で得られた各試料について、アルミニウム含有量、嵩比容積及び吸油量を測定した。その結果を表1に示す。なお、アルミニウム含有量、嵩比容積及び吸油量の測定は、次のようにして実施した。
【0053】
(1)アルミニウム含有量
アルミニウム含有量を下記の装置及び測定条件で標準添加法により測定した。
本品1.0gを正確に量り、希塩酸30mLを加え水浴上で1時間加熱し、冷後、超純水にて100mLとする。この液を定量ろ紙(No.5C)にてろ過し、このろ液を試料溶液とする。この試料溶液につきICP発光分光分析装置を用いて標準添加法によりアルミニウム含有量を測定した。
測定装置:Vista−PRO(セイコーインスツルメンツ社製)
測定条件:雰囲気アルゴン―窒素、
内標準物質Y
Al 396.152
Y 377.433
【0054】
(2)嵩比容積
試料2.5gを量りとり、50mLメスシリンダーに入れ、4cmの高さにて100回/250秒の速度でタッピングを行い、粉体の体積を測定し、次式により嵩比容積を算出した。
嵩比容積(mL/g)= 粉体体積(mL)/粉体重量(g)
【0055】
(3)吸油量
試料1.0gを量り、黒色のプラスチック板に乗せる。上からビュレットに入れた煮アマニ油を4〜5滴ずつ滴下し、その都度ヘラで粉体と十分練り合わせる。全体が硬いパテ状の塊となったら1滴ごとに練り合わせ、最後の1滴で急激に軟らかくなる直前に滴下を終了し、その時の煮アマニ油滴下量を読み取り、次式により吸油量を算出した。
吸油量(mL/g)= 滴下した煮アマニ油の容量(mL)/試料の質量(g)
【0056】
試験例2
前記実施例及び比較例で得られた各試料について、アルミニウム含有量と嵩比容積及び吸油量との関係について調べた。その結果を図2に示す。図2の結果からも明らかなように、アルミニウム成分を添加した場合はアルミニウム含有量が0.0058重量%の場合に比べて嵩比容積及び吸油量ともに高くなることがわかる。特に、0.10〜0.60重量%という比較的微量でその効果が発揮できることがわかる。
【0057】
試験例3
水熱処理の条件を200℃で4時間としたほかは、実施例1の試料No.5と同様にして調製した試料(試料No.9)の嵩比容積及び吸油量を調べた。その結果を図3に示す。図3には、アルミニウム成分を添加していない試料(試料No.8)の結果も併せて示す。図3の結果からも明らかなように、アルミニウム含有量が0.23重量%の試料は、無添加の試料に比べて嵩比容積及び吸油量ともに高くなることがわかる。
【0058】
試験例4
前記の試料No.5及び試料No.9について、pH、平均粒子径、アルミニウム含有量、比表面積等について調べた。その結果を表2に示す。表2には、アルミニウム成分を添加していない試料(試料No.1及び試料No.8)についての測定結果も併せて示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2の結果からも明らかなように、試料No.5及び試料No.9は、アルミニウム成分を添加していない試料に比べて嵩比容積及び吸油量が高くなっていることに加え、比表面積が120〜180m/gの範囲内にあって、比較的高くなっていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム系材料を製造する方法であって、
(1)水性媒体中にてカルシウム成分、ケイ素成分及びアルミニウム成分を含む原料を反応させて反応生成物を得る工程、及び
(2)前記反応生成物を水熱処理することによりケイ酸カルシウムを生成させる工程
を含む、ケイ酸カルシウム系材料の製造方法。
【請求項2】
アルミニウム成分の供給源としてアルミニウム塩、アルミニウム水酸化物及びアルミニウム酸化物の少なくとも1種のアルミニウム化合物を用いる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルミニウム化合物がアルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの少なくとも1種である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ケイ酸カルシウムが、ジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
原料におけるAl/SiOモル比が0.002以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
水熱処理の条件が温度150〜250℃で1〜4時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
アルミニウム成分を含むケイ酸カルシウム系材料であって、
(1)嵩比容積が8mL/g以上であり、吸油量が2.5mL/g以上であって、
(2)アルミニウムの含有量が0.1〜1.0重量%である、
ケイ酸カルシウム系材料。
【請求項8】
ジャイロライト型ケイ酸カルシウムの結晶を含む、請求項7に記載のケイ酸カルシウム系材料。
【請求項9】
比表面積が120m/g以上である、請求項7に記載のケイ酸カルシウム系材料。
【請求項10】
請求項7に記載のケイ酸カルシウム系材料を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87052(P2013−87052A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158028(P2012−158028)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】