説明

ケイ酸系高活性吸着性材料及びその製造方法

【課題】 本来有する優れた吸着特性や通水性をそこなうことなく、できるだけ大きい平均粒子径、狭い粒子分布範囲及び大きい空隙率すなわち気孔率を有する新規なケイ酸系高活性吸着性材料を提供する。
【解決手段】 長方薄片状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡合して形成され、平均細孔径2〜20nm、空隙率0.92〜0.99、透過率2.0〜10.0Darcy、全細孔体積が0.3〜4.0ml/g及び平均粒子径70〜200μmを有するケイ酸系凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い活性を有し、比較的大きい粒子から構成されて、取り扱いやすい新規なケイ酸系高活性吸着性材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸カルシウムやシリカを主体とするケイ酸系吸着性材料は、細胞培養担体、触媒担体、タンパク質その他の吸着材、悪臭除去剤、ろ過助剤などとして広く利用されている。
そして、このようなケイ酸系吸着性材料は、ケイ酸原料と石灰とを所定の割合で混合し、水の存在下でかきまぜながら水熱反応させることによって、長方薄片状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡合した凝集体、すなわち二次粒子として得られることが知られている。
【0003】
例えば、沈降容積5ml以上の石灰乳と結晶質ケイ酸原料とを、固形分に対する水の量が15重量倍以上となるように混合調製して得られる原料スラリーを加圧下で加熱撹拌しながら水熱反応を行わせ、トベルモライト結晶を主成分とするケイ酸カルシウム結晶二次粒子を生成させる方法(特許文献1参照)、針状の非晶質シリカに粒状の非晶質シリカが多数不規則に付着している複合一次粒子が三次元的に不規則に絡合してほぼ球状の非晶質シリカ複合二次粒子を形成したもの(特許文献2参照)などが知られている。
しかしながら、このような方法により得られる二次粒子は、粒子径が10〜150μmという広範囲に分布しており、その平均粒子径は50μm又はそれ以下である。
【0004】
ところで、ケイ酸系吸着性材料をろ過助剤や触媒担体として用いる場合には、その平均粒子径があまり小さすぎると取り扱いにくくなるし、またろ過助剤の場合は効率が低下するのを免れない。また、細胞培養担体として用いる場合は、細胞の均一な付着や増殖が一様に行われるように、担体の粒子径は狭い範囲に分布していることや細胞の担持効率を高めるために、気孔率を大きくすることが望ましいが、これまで平均粒子径が70μm以上のもの、狭い粒子径の分布範囲をもつもの、あるいは気孔率が92%以上のものは知られていなかった(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−40715号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開平7−206639号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】特開2003−55061号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑み、本来有する優れた吸着特性や通水性をそこなうことなく、できるだけ大きい平均粒子径、狭い粒子分布範囲及び大きい空隙率すなわち気孔率を有する新規なケイ酸系高活性吸着性材料を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは先にケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水の存在下で水熱反応させ、酸処理して脱カルシウムすることにより、ろ過特性に優れた耐酸性ケイ酸質系ろ過助剤を得る方法を提案した(特開平10−323559号)が、さらに研究を重ねた結果、ケイ酸原料及び石灰原料質量に対する水の添加割合、オートクレーブの昇温速度及びオートクレーブの撹拌速度を調整することにより、高速ろ過に適したろ過特性、優れた吸着能、例えばチトクロームCに対する高い吸着能力を有し、しかも細胞の培養担体としての要求を満たした機能性に優れたケイ酸系高活性吸着性材料を簡単かつ安価に製造しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、長方薄片状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡合して形成され、平均細孔径2〜20nm、空隙率0.92〜0.99、透過率2.0〜10.0Darcy、全細孔体積が0.3〜4.0ml/g及び平均粒子径70〜200μmを有するケイ酸系凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料、ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.4〜1.5になる割合で混合し、ケイ酸原料と石灰原料の合計質量に対して40〜200倍の水の存在下、昇温速度0.05〜3.0℃/min、反応温度140〜250℃、撹拌速度40〜200rpmで水熱反応を行わせて、ケイ酸カルシウム凝集体を形成させることを特徴とするケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法、及びケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.4〜1.5になる割合で混合し、ケイ酸原料と石灰原料の合計質量に対して40〜200倍の水の存在下、昇温速度0.05〜3.0℃/min、反応温度140〜250℃、撹拌速度40〜200rpmで水熱反応を行わせて、ケイ酸カルシウム凝集体含有水性スラリ−を調製したのち、これに酸を添加してこの中の酸化カルシウムを徐々に溶解除去してシリカ多孔質凝集体を形成させることを特徴とするケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法を提供するものである。
【0009】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のケイ酸系高活性吸着性材料は、長方薄片状又は繊維状の一次粒子を基本体とするものであるが、この長方薄片状一次粒子は、長さ5〜50μm、幅1〜20μm、厚さ0.05〜0.5μm、長さと厚さのアスペクト比100〜300、平均細孔径1〜20nm、全細孔体積0.1〜1.5ml/g、BET比表面積200〜500m2/gを有する薄板状シリカ多孔体からなり、また繊維状一次粒子は、繊維長5〜50μm、繊維径0.05〜0.5μm、繊維長と繊維径とのアスペクト比100〜300、平均細孔径1〜20nm、全細孔体積0.1〜1.5ml/g、BET比表面積300〜800m2/gを有し、かつX線回折スペクトルにおいて、21°付近及び26.5°付近に2θのピークが存在しない繊維状シリカ多孔体からなっている。
【0010】
そして、本発明のケイ酸系高活性吸着性材料は、これらの一次粒子が三次元的に絡み合って凝集し、平均粒子径70〜200μmという大きい粒子径をもつ二次粒子を形成したもので、2〜20nmという大きい平均細孔径、0.92〜0.99という大きい空隙率、2.0〜10.0Darcyという大きい透過率、及び0.3〜4.0ml/gという大きい全細孔体積によって特徴づけられている。
なお、上記の透過率の数値は、測定方法によって若干異なるが、ここではろ過面積8.5cm2の円筒型容器内に、厚さ2cmの吸着性材料サンプル層を担持させたろ過板を装着し、上方より200mlの水を注入し、圧力0.1kg/cm2で加圧して透過させ、下方からろ液を約100ml採取し、単位時間(秒)当りのろ液量により示した。
【0011】
本発明のケイ酸系高活性吸着性材料の透過率は、市販のケイソウ土系ろ過助剤の透過率の約2〜20倍に相当する。
このようなケイ酸系高活性吸着性材料は、ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.4〜1.5になる割合で混合し、ケイ酸原料と石灰原料の合計質量に対して40〜200倍の水の存在下、昇温速度0.05〜3.0℃/min、反応温度140〜250℃、撹拌速度40〜200rpmで水熱反応を行わせてケイ酸カルシウム凝集体を形成させるか、これをさらに酸処理してこの中の酸化カルシウムを徐々に溶解除去してシリカ多孔質凝集体を形成させることによって製造することができる。
【0012】
そして、このようにして得られるケイ酸カルシウム凝集体はBET比表面積20〜200m2/gをもち、またシリカ多孔質凝集体はBET比表面積100〜1000m2/g、好ましくは400〜1000m2/gをもっている。
このケイ酸カルシウム凝集体及びシリカ多孔質凝集体は所望に応じ、反応混合物から分離回収し、さらに300〜1400℃で加熱処理することにより活性を向上させることができる。
【0013】
本発明方法においては、先ず長方薄片状シリカ多孔体を生成するが、さらにこれを水の存在下で加熱すると、この長方薄片状シリカ多孔体が次第に分割して繊維状シリカ多孔体が形成される。
【0014】
本発明方法において用いられるケイ酸原料としては、通常ケイ酸原料として用いられているものであればよく、特に制限はない。このようなケイ酸原料としては、例えば石英、ケイ砂、非晶質ケイ酸、ホワイトカーボン、ナトリウム長石、カリ長石、ガラス、陶石、シラス、フライアッシュ、スラグ、パーライトなどのケイ酸含有物質を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
これらのケイ酸原料は、粒径10μm以下のものを30質量%以上含むものが好ましい。そして、スラリー中の分散性、水熱反応性、経済性など、特に分散したケイ酸カルシウムの板状化及び繊維状化の面から、通常平均粒子径0.01〜50μm、ことに0.1〜20μmの範囲のものが選ばれる。
【0016】
次に、このケイ酸原料と組み合わせて用いられる石灰原料としては、通常の石灰原料として用いられるもの、例えば生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)などの粉末を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明方法において、前記シリカ原料と石灰原料は、CaO/SiO2モル比が0.4〜1.5、好ましくは0.6〜1.0の範囲になるような割合で用いることが望ましい。CaO/SiO2モル比0.4以下、又は1.5以上でもケイ酸カルシウムは得られるが所望の物性をもつ凝集体を得ることができない。
【0018】
本発明における水熱反応は、上記のケイ酸原料と石灰原料とを所定の割合で水の存在下、例えば水又は水酸化アルカリ水溶液中に分散させて行う。この際の水酸化アルカリ水溶液としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物を水に溶解して調製したものが用いられる。これらのアルカリ水酸化物は、単独で用いてもよいし、また2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0019】
この場合のアルカリ水溶液の濃度としては、0.01〜1.0モルが好ましい。アルカリ水溶液の濃度が0.01モル未満では、生成するケイ酸カルシウムの結晶形態を変化させたり、水熱反応を促進させるアルカリ添加効果が十分に発揮されない。また、1.0モルより高くしても、アルカリ添加効果の向上は認められない。
【0020】
一方、シリカ原料と石灰原料を含む水又は水酸化アルカリ水溶液スラリーの濃度については、ケイ酸原料と石灰原料との合計量に対し、水性溶媒を40〜200倍、好ましくは100〜180倍質量の割合で含むスラリーにする必要がある。
【0021】
次に、本発明方法における水熱反応は、例えばオートクレーブ中において、140〜250℃の温度の範囲で実施される。この水熱反応は自生圧力下で進行するが、必要に応じ適当に加圧して反応を行ってもよい。また、反応中は反応速度を促進させるために、必要に応じて撹拌を行ってもよい。この際、昇温速度としては0.05〜3.0℃/min、好ましくは0.5〜2.0℃/minの範囲で徐々に昇温させ、かつ撹拌速度40〜200rpmでかきまぜながら行うことが必要である。
【0022】
水熱反応温度が140℃未満では反応速度が遅すぎて長時間を要し、実用的でなく、また250℃を超えると自生圧力が高くなりすぎ、装置面などにおいて経済的に不利になる。反応時間は、スラリー濃度、原料の種類や粒度、反応温度などに左右され、一概に定めることはできないが、通常は0.5〜24時間程度で十分である。
【0023】
水熱反応に続いて所望に応じ行う酸処理は、水熱反応で得られたケイ酸カルシウムスラリーに酸性物質、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸のような無機酸やギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、乳酸、酸性陽イオン交換剤のような有機酸を導入することによって行われる。なお、この無機酸は硝酸アンモニウムのような塩の形でもよい。
【0024】
この場合、塩酸、硝酸などの無機酸は、電離度が大きく、急激にpHを降下させるので、塩酸、硝酸などでケイ酸カルシウムを処理する場合、pHが急激に降下しないように希釈した酸を徐々に添加する。このようにすれば、ケイ酸カルシウムの形態を変化させることなく、酸化カルシウムが除去される。なお、ケイ酸カルシウムの結晶性に応じては、ケイ酸カルシウムスラリーを室温ないし100℃の範囲で加熱することによって、より効率的に酸化カルシウムを除去することができる。
【0025】
これに対し、電離度が小さい酢酸、炭酸などの場合、高濃度の酸で直接ケイ酸カルシウムを処理しても、酸化カルシウムの除去も徐々に進行し、ケイ酸カルシウムの形態が維持された薄板状及び繊維状シリカ多孔体となる。また、ケイ酸カルシウムスラリーを室温ないし100℃の範囲で加熱すると電離度が大きくなり、酸化カルシウムの除去が促進される。
【0026】
なお、炭酸で処理したケイ酸カルシウムは、長方薄片状及び繊維状シリカ多孔体と水に難溶性の炭酸カルシウムが得られるため、炭酸カルシウムを塩酸などで溶解除去する必要がある。この酸処理に必要な時間は、ケイ酸カルシウムの結晶化度、使用する酸の種類、濃度、処理条件などにより左右されるが、通常は1〜120分間の範囲である。
【0027】
ケイ酸カルシウムから酸化カルシウムを除去するために用いる酸としては、例えば塩酸、硝酸などの無機酸、酢酸、炭酸などの有機酸を挙げることができるが、酸性陽イオン交換剤も用いることができる。
【0028】
この酸処理としては、水熱反応により得られるケイ酸カルシウムスラリーに、二酸化炭素ガスを吹き込む方法が、酸化カルシウムを徐々に溶解除去しうる点で有利である。
【0029】
次に本発明方法においては、前記の水熱合成したケイ酸カルシウムから酸化カルシウムを除去した長方薄片状及び繊維状シリカ多孔体を固液分離後、乾燥処理した固形分を、所望により300〜1400℃の範囲の温度で加熱処理することにより、結晶形態、含水率、比表面積、細孔容積、細孔径を任意に調整でき、物理的及び化学的安定性が増大すると同時に、ろ過特性も改善され、シリカゲルより優れたタンパク質の吸着能や吸油能を有する長方薄片状及び繊維状シリカ多孔体が得られる。
この温度が300℃未満では、上記の特性を十分に変化させることができず、1400℃を超えると固形分が溶融して特性が損なわれる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高い吸着性能をもち、従来方法によっては得られない、大きい平均粒子径をもつ新規なケイ酸系凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、本発明は、3リットルのオートクレーブを使用して行ったもので、各例中の物性は以下の方法によって求めたものである。
【0032】
(1)シリカ原料の平均粒子径
レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置を用い、粒子径は体積基準で、平均粒子径(メジアン径)を求めた。
【0033】
(2)凝集体(二次粒子)の平均粒子径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用い写真撮影し、約150個の粒子径測定を行い、平均粒子径を求めた。
【0034】
(3)BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径
BET比表面積測定装置を用い、250℃で十分に加熱脱気した試料について、窒素ガスを吸着させる多点法による比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を求めた。
【0035】
(4)空隙率
メスシリンダーの中に試料を約50ml入れ、タッピングして充填体積が一定になったところを体積とし、試料の真比重、質量及び体積から空隙率を求めた。
【0036】
(5)ケイ酸含有率
ケイ酸含有率は、蛍光X線を用いて測定した。
【0037】
(6)透過率(Darcy)
ろ過面積8.5cm2の円柱状加圧ろ過器を用い、ろ過板の上に約2cmのケーク層を形成させ、次にケーク層を崩さないように200mlの水を注ぎ込み、0.1kg/cm2で加圧し、ろ液の単位時間(秒)当りの採取量から透過率(Darcy)を求めた。
【0038】
(7)チトクロームCの吸着率
pH4に調整した500μg/mlのチトクロームC水溶液を100ml採取し、これに試料0.3gを投入して30℃の恒温インキュベーターで1時間浸透後、5Cのろ紙を用いてろ過した。このろ液中のチトクロームCの残量を分光光度計を用いて吸光度(波長410nm)を測定し、初期濃度との差から吸着率を求めた。
【実施例1】
【0039】
結晶質のケイ酸原料(平均粒子径5.2μm)と生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.8になるように混合し、原料全量に対して、質量比で120倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを3リットルのオートクレーブ中に入れ、撹拌速度120rpm、昇温速度0.25℃/minにおいて撹拌しながら180℃まで昇温し、180℃で4時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーを洗浄ろ過して120℃で乾燥処理することにより、ケイ酸カルシウム凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【実施例2】
【0040】
実施例1で得たケイ酸カルシウム凝集体を、電気炉中で1000℃にて1時間加熱処理し、加熱処理したケイ酸カルシウム凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【実施例3】
【0041】
実施例1で得たケイ酸カルシウムスラリーを70℃まで冷却して、ケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な高濃度の酢酸(濃度99.7%)を添加し、60分間撹拌したのち、洗浄ろ過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。また、シリカ多孔質凝集体の顕微鏡写真を図1に示す。
【実施例4】
【0042】
実施例3で得たシリカ多孔質凝集体を、電気炉中で600℃にて1時間加熱処理し、加熱処理したシリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【実施例5】
【0043】
結晶質のケイ酸原料(平均粒子径5.2μm)と生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.8になるように混合し、原料全量に対して、質量比で120倍の0.05モルのNaOH溶液水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを3リットルのオートクレーブ中に入れ、撹拌速度90rpm、昇温速度0.1℃/minにおいて撹拌しながら180℃まで昇温し、180℃で2時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーを70℃まで冷却して、0.05モルのNaOH溶液水の中和及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な高濃度の酢酸(濃度99.7%)を添加し、60分間撹拌しながら保持したのち、洗浄ろ過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【実施例6】
【0044】
非晶質のケイ酸原料(平均粒子径3.9μm)と生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.85になるように混合し、原料全量に対して、質量比で160倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを3リットルのオートクレーブ中に入れ、撹拌速度120rpm、昇温速度1.0℃/minにおいて撹拌しながら180℃まで昇温し、180℃で4時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーを30℃まで冷却して二酸化炭素ガスをオートクレーブの内圧が2kg/cm2になるように調整しながら2時間吹き込んだ後、1M−塩酸で処理し、洗浄ろ過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【実施例7】
【0045】
結晶質のケイ酸原料(平均粒子径5.2μm)と生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.8になるように混合し、原料全量に対して、質量比で120倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを3リットルのオートクレーブ中に入れ、撹拌速度120rpm、昇温速度2.0℃/minにおいて撹拌しながら180℃まで昇温し、180℃で4時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーを50℃まで冷却し、0.2モルの塩酸水溶液を用い、徐々にpH4に調整して10分間保持し、さらにpH2に1時間保持したのち、洗浄ろ過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【実施例8】
【0046】
非晶質のケイ酸原料(平均粒子径3.9)と生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.6になるように混合し、原料全量に対して、質量比で120倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを3リットルのオートクレーブ中に入れ、撹拌速度120rpm、昇温速度0.5℃/minにおいて撹拌しながら180℃まで昇温し、180℃で4時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーを70℃まで冷却して、ケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な高濃度の酢酸(濃度99.7%)を添加し、60分間撹拌したのち、洗浄ろ過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料を得た。このものの平均粒子径、BET比表面積、全細孔体積及び平均細孔径を表1に、空隙率、ケイ酸含有率、透過率(Darcy)及びチトクロームCの吸着率を表2に示す。
【0047】
比較例1〜3
比較のために市販の高速ろ過用のケイソウ土系ろ過助剤(比較例1)、市販の精密ろ過用のケイソウ土系ろ過助剤(比較例2)及び市販のビール安定化処理用シリカゲル(比較例3)の性能を表1及び2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により得られるケイ酸カルシウム凝集体及びシリカ多孔質凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料は、従来のろ過助剤では達成できなかった高速ろ過特性と、シリカゲルに匹敵するタンパク吸着能を有し、さらに高い空隙率と高比表面積を有するもので、特に高速用のろ過助剤や無機系の細胞培養担体として好適である。また、そのほか光触媒担持体として広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例3で得たシリカ多孔質凝集体の顕微鏡写真図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方薄片状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡合して形成され、平均細孔径2〜20nm、空隙率0.92〜0.99、透過率2.0〜10.0Darcy、全細孔体積が0.3〜4.0ml/g及び平均粒子径70〜200μmを有するケイ酸系凝集体からなるケイ酸系高活性吸着性材料。
【請求項2】
ケイ酸系凝集体がBET比表面積20〜200m2/gをもつケイ酸カルシウム凝集体である請求項1記載のケイ酸系高活性吸着性材料。
【請求項3】
ケイ酸系凝集体がBET比表面積100〜1000m2/gをもつシリカ多孔質凝集体である請求項1記載のケイ酸系高活性吸着性材料。
【請求項4】
ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.4〜1.5になる割合で混合し、ケイ酸原料と石灰原料の合計質量に対して40〜200倍の水の存在下、昇温速度0.05〜3.0℃/min、反応温度140〜250℃、撹拌速度40〜200rpmで水熱反応を行わせて、ケイ酸カルシウム凝集体を形成させることを特徴とするケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。
【請求項5】
ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.4〜1.5になる割合で混合し、ケイ酸原料と石灰原料の合計質量に対して40〜200倍の水の存在下、昇温速度0.05〜3.0℃/min、反応温度140〜250℃、撹拌速度40〜200rpmで水熱反応を行わせて、ケイ酸カルシウム凝集体含有水性スラリーを調製したのち、これに酸を添加してこの中の酸化カルシウムを徐々に溶解除去してシリカ多孔質凝集体を形成させることを特徴とするケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。
【請求項6】
反応混合物からケイ酸カルシウム凝集体又はシリカ多孔質凝集体を分離回収し、乾燥後さらに300〜1400℃で加熱処理する請求項4又は5記載のケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。
【請求項7】
ケイ酸原料が石英、ガラス、ケイ砂、非晶質ケイ酸、長石、陶石、スラグ、ホワイトカーボンの中から選ばれたSiO2含有物質の少なくとも1種である請求項4ないし6のいずれかに記載のケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。
【請求項8】
石灰原料が生石灰又は消石灰あるいはその混合物である請求項4ないし7のいずれかに記載のケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。
【請求項9】
酸が塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸の無機酸及び酢酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、マレイン酸、乳酸、酸性陽イオン交換剤の有機酸の中から選ばれる酸である請求項5ないし8のいずれかに記載のケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。
【請求項10】
酸がガス状二酸化炭素である請求項5ないし8のいずれかに記載のケイ酸系高活性吸着性材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−21113(P2006−21113A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201007(P2004−201007)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(592012384)小野田化学工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】