説明

ケトチフェン配合水性組成物

【課題】十分なpH緩衝能を与え、さらには、使用感を高めた、ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物のケトチフェン又はその塩の経時的安定性の確保、また、水性組成物調製時の不溶性の物質の出現防止。
【解決手段】ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物にpH緩衝能を持つ成分としては一般に例のないグリチルリチン酸又はその塩を配合することで十分なpH緩衝能を与えることができ、ホウ酸を0.5%以下の濃度で配合することでグリチルリチン酸又はその塩、さらには、テルペノイドを配合したケトチフェン又はその塩含有の水性組成物の、ケトチフェン又はその塩の経時的安定性が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルリチン酸又はその塩の存在下で、経時的に不安定なケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物(例えば、点眼液、点鼻液など)のケトチフェン又はその塩の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
ケトチフェン又はその塩は、抗ヒスタミン作用・ケミカルメディエーターの遊離抑制、好酸球の活性化抑制作用を有し、抗アレルギー剤として点眼液、点鼻液、経口剤として利用されている。特にケトチフェン又はその塩を配合した水性組成物は、一般用医薬品として「ザジテンAL点眼薬」という点眼液や「ザジテンAL鼻炎スプレー」という点鼻液等の市販品が販売されている。「ザジテンAL点眼薬」はpH緩衝剤が配合されておらず、経時的なpHの変化に不安が拭えない。一方、「ザジテンAL鼻炎スプレー」はpH緩衝剤としてクエン酸類を配合しているが、細菌の好む成分であり、製品が菌汚染した場合のことを考えると防腐剤を多く添加する必要があり、点眼液・点鼻液のように眼粘膜又は鼻粘膜のようなデリケートな部分に適用するため適用部位に障害を与えるリスクが高くなる。クエン酸類の他にpH緩衝剤としてアミノ酸類、有機酸類も考えられるが、いずれもクエン酸と同様のことがいえる。また、点眼液においてはpH緩衝剤としてホウ酸がよく使用されるが、ケトチフェン又はその塩の安定性及び眼粘膜又は鼻粘膜に適用することを考慮するとpH4.5〜6が好ましく、ホウ酸はこの領域に対するpH緩衝能は低いため、適切であるとは言い難い。
【非特許文献1】日本医薬品集 一般薬2010−11 924頁、958頁
【0003】
グリチルリチン酸又はその塩は抗炎症作用を有し、様々な医薬品、医薬部外品、化粧品に利用されている。特に眼粘膜又は鼻粘膜におけるアレルギー症状は炎症を伴うことが多く、薬理作用の面からグリチルリチン酸又はその塩のような抗炎症剤を配合することは非常に有用なことである。しかし、眼粘膜又は鼻粘膜に適用組成物において、ケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩を組み合わせて配合した製剤はなかった。
【0004】
ケトチフェン又はその塩にグリチルリチン酸又はその塩を配合した例として、特許3935539号公報が挙げられる。この特許文献は、錠剤、カプセル剤又は顆粒剤等服用の非水性組成物において、製剤化助剤との相互作用によるケトチフェンの安定性が確保できなくなる問題をグリチルリチン酸又はその塩を配合することで解消するものである。
【特許文献1】特許3935539号公報
【0005】
しかしながら、水性組成物においては、グリチルリチン酸又はその塩の存在下では、ケトチフェン又はその塩の安定性が損なわれるという問題があった。さらに、グリチルリチン酸又はその塩の配合量次第では、水性組成物調製時に不溶性の物質が出現するという問題があった。
【0006】
また、点眼時、点鼻時の使用感を高めるため点眼液・点鼻液にメントール類、ボルネオール類、カンフル類等のテルペノイドを配合することはしばしば行われているが、ケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩を含有する水性組成物にテルペノイドを配合することにより、ケトチフェンの安定性はさらに損なわれる。
【0007】
また、ホウ酸とケトチフェン又はその塩について配合した点眼剤が特開2002−308770号公報に記載されているが、ホウ酸のケトチフェン又はその塩への安定性に関する影響についてはなんら言及されていない、また、ホウ酸はその配合量次第ではケトチフェン又はその塩の分解を促進する。
【特許文献1】特開2002−308770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、十分なpH緩衝能を与え、さらには、使用感を高めたケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物のケトチフェン又はその塩の安定性を確保し、また、水性組成物調製時に不溶性の物質の出現を防ぐものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物にpH緩衝能を持つ成分としては一般に例のないグリチルリチン酸又はその塩を配合することで十分なpH緩衝能を与えることができ、ホウ酸を0.5%以下の濃度で配合することでグリチルリチン酸又はその塩、さらには、テルペノイドを配合したケトチフェン又はその塩含有の水性組成物の、ケトチフェン又はその塩の経時的安定性が確保でき、本発明の水性組成物を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明のケトチフェン又はその塩含有組成物は、ケトチフェン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩を配合することでpH緩衝能を持った水性組成物である。また、ケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩及びホウ酸又はその塩を配合した、経時的にケトチフェン又はその塩が安定化された水性組成物である。
【0011】
すなわち、本発明は下記に掲げるpH緩衝能の付与された、または、経時的に安定化された組成物である。
(1)ケトチフェン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩を含有する水性組成物。
(2)ホウ酸又はその塩をさらに含む請求項1記載の水性組成物。
(3)ケトチフェン又はその塩の総量1重量部に対して、グリチルリチン酸又はその塩の総量を、0.7〜4.5重量部を配合する請求項1又は2記載の水性組成物。
(4)テルペノイドを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の水性組成物。
(5)テルペノイドがメントール類、ボルネオール類、カンフル類から選ばれる少なくとも1種からなる請求項4に記載の水性組成物。
(6)ホウ酸又はその塩の濃度が0.5%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の水性組成物。
(7)眼粘膜又は鼻粘膜適用組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の水性組成物。
【0012】
本発明は、ケトチフェン又はその塩含有組成物に、グリチルリチン酸又はその塩を含有した水性組成物。もしくは、ケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩含有組成物にホウ酸又はその塩を配合した水性組成物。もしくは、ケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩及びメントール類、ボルネオール類、カンフル類等のテルペノイド含有組成物にホウ酸又はその塩を配合した水性組成物である。
【0013】
本発明の組成物は、ケトチフェン又はその塩の薬理作用に基づいて種々の組成物として使用でき、水性組成物及び粘膜適用組成物、例えば、点眼剤、洗眼剤、点鼻剤、コンタクトレンズ用剤などが好ましい。なお、コンタクトレンズには、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズなどのあらゆるタイプのコンタクトレンズが含まれる。
【0014】
また、本発明の組成物は、ガラス又はプラスチック製の容器など点眼剤、洗眼剤、点鼻剤、コンタクトレンズ用剤の各用途に収容するのに適している。
【0015】
本発明には、ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物にpH緩衝能を付与する方法、及びケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩を含有する水性組成物のケトチフェン又はその塩の安定化する方法も含まれる。
【0016】
なお、本明細書中、「塩」とは薬理学的に又は生理学的に許容される塩を意味する。
【0017】
本発明のケトチフェンは4−(1−メチル−4−ピペリジリデン)−4H−ベンゾ−[4,5]−シクロヘプタ[1,2−b]チオフェン−10(9H)−オンとして知られる公知化合物である。
【0018】
本発明のケトチフェンの塩としては、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等)]等が例示できる。
【0019】
ケトチフェン又はその塩のうち、有機酸塩、特にフマル酸ケトチフェン等が好ましい。
【0020】
前記ケトチフェン又はその塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
本発明ではケトチフェン又はその塩の含有量は0.001〜0.2W/V%が好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1W/V%である。
【0022】
本発明のグリチルリチン酸の塩としては、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム等が例示できる。
【0023】
グリチルリチン酸又はその塩のうち、特にグリチルリチン酸二カリウム等が好ましい。
【0024】
本発明ではケトチフェン又はその塩の総量1重量部に対して、グリチルリチン酸又はその塩の総量を、0.7〜4.5重量部を配合することが好ましい。
【0025】
本発明のホウ酸の塩としては、ホウ酸ナトリウム等が例示できる。
【0026】
本発明のテルペノイドとしては、メントール、カンフル、ボルネオール、リモネン、シネオール、テルピネン、フェランドレン、メントン、テルピネオール、カルボン、ペリルアルデヒド、チモール、p-シメン、カルバクロール、クミナール、ピネン、カンフェン、ツヨン、カレンなどの環状モノテルペノイド、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、シトロネラール、ミルセン、オシメン等が例示できる。
【0027】
本発明のメントール類としては、l−メントール、d−メントール、dl−メントール等が例示できる。
【0028】
本発明のカンフル類としては、l−カンフル、d−カンフル、dl−カンフル等が例示できる。
【0029】
本発明のボルネオール類としてはl−ボルネオール、d−ボルネオール、dl−ボルネオール等が例示できる。
【0030】
本発明の組成物は、水性組成物として有用である。このような水性組成物としては、例えば、外皮用クリーム、外皮用液剤、点眼液、洗眼液、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用剤、点鼻液、鼻洗浄液、口腔咽頭薬、含嗽剤、点耳液、化粧料などが挙げられる。
【0031】
さらに、本発明の組成物は、刺激が全く又は殆どなく安全であることから、刺激を感じやすい口唇や粘膜(角膜及び結膜などの眼粘膜、口腔粘膜、鼻腔粘膜、咽頭部粘膜など)への適用に有用である。このような粘膜適用組成物としては、例えば、眼科用組成物[点眼薬(コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼薬も含む)、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬(コンタクトレンズ装用中にも使用できる洗眼薬を含む)、コンタクトレンズ用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューション)など]、耳鼻科用組成物(点鼻薬、点耳薬、鼻洗浄液など)、口腔用組成物(口腔咽頭薬、含嗽薬など)などが例示できる。なお、本明細書において、コンタクトレンズとは、ハードコンタクトレンズ(酸素透過性ハードコンタクトレンズも含む)、ソフトコンタクトレンズなどのあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する。
【0032】
本発明が適用される水性組成物に配合される薬効成分としては、例えば、充血除去成分、眼調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分、殺菌薬成分、糖類、多糖類またはその誘導体、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、前述以外の水溶性高分子、局所麻酔薬成分等が例示できる。本発明において好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0033】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリン等。
【0034】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピン等。
【0035】
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン等。
【0036】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミン等。
【0037】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等。
【0038】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
【0039】
抗菌薬成分または殺菌薬成分:例えば、硫酸アミノデオキシカナマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ストレプトマイシン、トブラマイシン、硫酸ミクロノマイシン、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スルベニシンナトリウム、塩酸セフメノキシム、ベンジルペニシリンカリウム、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、ホウ酸、コリスチンメタスルホン酸ナトリウム、エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸ポリミキシン、ジベカシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アシクロビル、イオドデオキシサイチジン、イドクスウリジン、シクロサイチジン、シトシンアラビノシド、トリフルオロチミジン、ブロモデオキシウリジン、ポリビニルアルコールヨウ素、ヨウ素、アムホテリシンB、イソコナゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、ピマリシン、フルオロシトシン、ミコナゾール等。
【0040】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、トレハロース等。
【0041】
多糖類又はその誘導体:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
【0042】
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等。
【0043】
前述以外の水溶性高分子:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン等。
【0044】
局所麻酔薬成分:例えば、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカイン等。
【0045】
これらの成分の含有量は、製剤の種類、活性成分の種類などに応じて選択でき、例えば、製剤全体に対して0.001〜10%程度の範囲から選択できる。
【0046】
また、本発明の防腐剤が適用される水性組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を組み合わせて含有していてもよい。該成分または添加物の配合割合については、当業界において通常採用されている範囲に基づいて、適宜設定すればよい。該成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される水性担体(水、水性溶媒)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料または清涼化剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤などの各種添加剤を挙げることができる。以下に、本発明が適用される水性組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0047】
水性担体:例えば、水、含水エタノール等。
【0048】
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
【0049】
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。
【0050】
界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポロキサミン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン (具体的には、ポリソルベート80等) 、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(具体的には、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油等)、ステアリン酸ポリオキシルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0051】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)。
【0052】
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等。
【0053】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコール等。
【0054】
香料又は清涼化剤:例えば、カンフル、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、リュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等。
【0055】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸等。
【0056】
緩衝剤:アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂
、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等。
【0057】
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム等。
【発明の効果】
【0058】
本発明では、ケトチフェンまたはその塩を含有する水性組成物にグリチルリチン酸又はその塩を含有することによって、pH4.5〜6におけるpH緩衝能を付与することができる。さらに、本発明のグリチルリチン酸又はその塩を、さらには、テルペノイドを含有するケトチフェンまたはその塩を含有する水性組成物は、経時的な安定性が改善された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
比較例1〜3及び実施例1
【表1】

表1に示す成分を、表に示す割合で精製水に溶解させて100mlとした。この薬液につき、0.05mol/L NaOH及び0.05mol/L HClを一定量間隔で添加しながらpHを測定し、各試料についてのpH緩衝曲線(図1)を描いた。
【0061】
比較例4〜6及び実施例2〜20
表2〜6に示す成分を、表に示す割合で精製水に溶解させて100mlとし、褐色瓶に充填し、60℃で7日間保存した。充填時及び保存終了後の試料につき高速液体クロマトグラフィーでケトチフェンの定量を行い、その残存率(%)を算出した。定量については表1の比較例1、実施例1についても行った。
【表2】

【0062】
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【0063】
表1の水性組成物についてのpH緩衝曲線(図1)より、ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物にグリチルリチン酸又はその塩を配合したものは、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸類を配合したものより優れたpH緩衝能があり、十分なpH緩衝能を持つ水性組成物であった。
【0064】
表2の結果よりケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物に0.05〜0.3%のグリチルリチン酸又はその塩を配合することでケトチフェン又はその塩の安定性はやや確保された。少なくとも0.03未満では不溶性の物質が出現し、少なくとも0.5以上では安定性の確保ができなかった。
【0065】
表1の比較例1及び表3、表4より、ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物に対し、ホウ酸又はその塩の配合はケトチフェン又はその塩の安定性に影響を与えていた。グリチルリチン酸又はその塩を含まないケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物に対し、ホウ酸を点眼剤として常識的である1.5%配合すると、ケトチフェン又はその塩の安定性は著しく損なわれた。しかし、グリチルリチン酸又はその塩を配合して安定性が損なわれたケトチフェン又はその塩を含有する水性液剤にホウ酸又はその塩を0.5%以下の濃度で配合すると、ケトチフェン又はその塩の安定性は向上した。
【0066】
表4、表5及び表6より、ケトチフェン又はその塩およびグリチルリチン酸又はその塩を含有する水性組成物にテルペノイドを配合するとケトチフェン又はその塩の安定性は損なわれたが、ホウ酸又はその塩を配合することで、ケトチフェン又はその塩及びグリチルリチン酸又はその塩及びテルペノイドを含有する水性組成物のケトチフェン又はその塩の安定性は向上した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ケトチフェン又はその塩を含有する水性組成物にグリチルリチン酸又はその塩を配合することでpH緩衝能が付与でき、さらに、グリチルリチン酸又はその塩さらにテルペノイドを配合することによりケトチフェン又はその塩の安定性が損なわれた水性液剤にホウ酸を配合することで経時的な安定性が改善され、よりpH及びケトチフェン又はその塩の安定な水性組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】表1の比較例及び実施例の製剤のpH緩衝曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトチフェン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩を含有する水性組成物。
【請求項2】
ホウ酸又はその塩をさらに含む請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
ケトチフェン又はその塩の総量1重量部に対して、グリチルリチン酸又はその塩の総量を、0.7〜4.5重量部を配合する請求項1又は2記載の水性組成物。
【請求項4】
テルペノイドを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項5】
テルペノイドがメントール類、ボルネオール類、カンフル類から選ばれる少なくとも1種からなる請求項4に記載の水性組成物。
【請求項6】
ホウ酸又はその塩の濃度が0.5%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項7】
眼粘膜又は鼻粘膜適用組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の水性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−173801(P2011−173801A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36988(P2010−36988)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(599043770)佐賀製薬株式会社 (2)
【Fターム(参考)】