ケトン体の調節のために、アスパラギン酸塩およびビタミンB12またはビオチンを使用するための製剤
ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによる高濃度のアスパラギン酸塩(aspartate)均等物が、特にグルタミン酸塩(glutamate)均等物がない場合において、特に疾病または傷害性症状を示す哺乳類の体内におけるケトン体および/または乳酸塩の代謝を改善することがわかっていた。その結果、ケトン体および乳酸塩レベルを減少することができ、非生理的に高い酸度を正常化することができる。このように、ケトンおよび乳酸塩の代謝障害、すなわち、ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇、および/またはpHの恒常性の不足、特に哺乳類体内におけるケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇の治療および/または予防のための、経腸的栄養組成物または医薬組成物を提供することが本発明の目的であり、ここにおいて、該組成物は、ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによる高濃度のアスパラギン酸塩均等物を、特にグルタミン酸塩均等物がない状態で含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の血液中における、ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸、特にケトン体および乳酸塩の濃度上昇に関連した代謝障害の予防または治療のために、ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによって高いアスパラギン酸塩(aspartate)含量を有する、特定のタンパク質および/またはペプチド画分を使用するための製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な状態において、炭水化物は、消費された後にグルコースに転換されるが、これは身体の第一のエネルギー源である。しかしながら、炭水化物の摂取が、十分に長い期間制限された場合、または炭水化物代謝が妨害された場合、身体は燃料のために、脂肪またはアミノ酸の貯蔵といった、代替のエネルギーシステムを引き出す状態にまで到達する。脂質の代謝において、アセト酢酸塩、アセトンおよびβ-ヒドロキシ酪酸といった、いくつかの代謝産物が生成され、これらの代謝産物はケトン体と呼ばれる。これらの化合物は、多くの周辺組織、特に心臓および筋肉組織の重要な代謝燃料となり、グルコースがない状態ではケトン体が脳の主要な燃料源となる。
【0003】
ケトン体の形成が、哺乳類がそれらを処理できる能力を超えたとき、ケトン体は血液中に蓄積しケトン血症を引き起こす。尿中のケトン体濃度が高い症状はケトン尿症と呼ばれ、これらの両症状は一般にケトン症と呼ばれる。ケトン症または高ケトン血症の状態では、血液中のケトン体レベルが異常に高くなる。重篤なケトン症はアシドーシスをもたらすことがあり、これは、血液中のpHが典型的に7.3未満に下がり、血液中の二酸化炭素分圧(PCO2)が30 mm Hg未満となり、および血液中の重炭酸塩レベルが15 mm Hg未満となる症状である。アシドーシスの病徴は、倦怠感、脱力感、食欲不振および嘔吐を含み、および最終的に昏睡、さらには死さえもたらす可能性がある。
【0004】
インスリン抵抗性または嫌気的条件下にて起こる可能性のある炭水化物代謝の障害の間、ピルビン酸塩は、しばしばクレブス回路中間体へと十分に代謝されず、代わりに少なくとも乳酸へ部分的に代謝される。乳酸の蓄積は、局所的なレベル、例えば組織または筋肉で起こる可能性があり、このことは細胞機能の代謝障害および痛みを引き起こすと考えられ、また全身的に起こりアシドーシスを引き起こす可能性がある。乳酸アシドーシスをもたらす炭水化物代謝の障害は、妊娠初期(young gestational age)の乳児の一部に起こる可能性がある、肝臓障害またはその場合における酵素機能の発育不全のどちらかによって、肝機能不全に関連しうる。乳酸アシドーシスにおいて、血液中の乳酸塩のレベルの条件は典型的に2 mmol/l超である。高乳酸血症(hyperlactacidemia)と重篤な乳酸アシドーシスは、血液中の乳酸塩濃度によって、つまり通常約5 mol/lで区別されることが一般的である。
【0005】
乳酸アシドーシスまたはケトアシドーシスに加えて、代謝性アシドーシスのグループに属す、有機酸尿症(organic acidurias)のグループ(約25-30の異なるタイプ)が存在し、これは有機酸が血液中および尿中に蓄積するという症状を示す。
【0006】
ケトン症は、高度の内因性生合成および/または排除もしくは代謝における障害によって起こりうる。重篤なエネルギー栄養失調またはタンパク質-エネルギー栄養失調を患う多くの人々はまた、ケトン症の一形態を経験しており、またケトアシドーシスと呼ばれる、さらに重篤な形態(ケトン体血液中レベルが7 mmol/l超)を経験している。糖尿病患者もまた頻繁に、ケトン体レベルの異常な上昇を経験している。ケトン症またはさらにケトアシドーシスは、先天的または一時的な代謝のエラーによって起こり、例えば、グリコーゲン合成速度の遺伝性障害における、カエデシロップ尿症の場合に見られるような、分枝鎖代謝(branched chain metabolism)のエラー、または代謝において特定のタイプの遺伝的エラーを有する人におけるエラー、例えば、プロピオン酸尿症(propionic acidemia)、イソ吉草酸尿症、メチルマロン酸尿症、オキソ酸補酵素Aチオラーゼ欠損またはその他のチオラーゼ活性における欠損を患う人、および妊娠初期(young gestational age)の乳児のような代謝システムの発育不良を患う人におけるエラーによって起こりうる。
【0007】
血中グルコースレベルが正常濃度に比べて増大した代謝状態である高血糖症を患う人においても、ケトン症が関与しうる。これらの高い血液中グルコースレベルにも関わらず、インスリン刺激性のグルコースの細胞への移行が、どういうわけか損なわれるため、細胞は「飢餓する」。高血糖症を患う人の例は、いわゆる代謝症候群またはシンドロームX、肥満ならびにI型、II型および妊娠性糖尿病のようないくつかのタイプの糖尿病に患っていると診断される人である。特に、インスリン放出の障害または「インスリン抵抗性」を患う人は、しばしばケトン症の状態となるだろう。
【0008】
炭水化物代謝障害に起因する長期高血糖症は、好ましくない最終糖化反応産物(advanced glycation products)(AGE)の形成の増大をもたらすだろう。この形成は、リジンが有するような一級アミノ基などのタンパク質の反応性アミノ基と、特に、糖の還元によって生じるようなアルデヒドとの間の反応によって起こる。このようにして、カルボキシメチル化リジンが生じる。酵素および構造タンパク質といった内因性タンパク質のメイラード型反応は、それらのタンパク質の機能を損ない、臓器全体または組織全体の望ましくない機能喪失をもたらす。これらの合併症は特に、大血管障害および微小血管障害といった、心血管性の問題、肝臓、膵臓、腎臓、皮膚、眼に関する問題であり、また妊娠中の胎芽病も、しばしば糖尿病患者にみられ、および老齢の人々においても多少みられる。
【0009】
ケトン症がグルコース代謝障害によって引き起こされる場合、インスリンまたは、グルコース、キシリトール等といった糖の投与によって治療される。しかしながら、上述の通り、ケトン症が必ずしもグルコース代謝障害またはAGE形成に関与しているわけではなく、関与する場合であっても、ケトン体濃度の減少に対するこれらの糖およびインスリンの効果はしばしば一過性であり、短い期間しか続かない。
【0010】
高乳酸血症(Hyperlactacidemia)は、細胞呼吸における障害、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性、クレブス回路、呼吸鎖の異常が原因となり、またはグリコーゲン代謝、糖新生および脂肪酸酸化における障害を含む、肝機能における問題が原因となりうる。乳酸血症(Lactic acidemias)はまた、特に尿管における慢性的感染症、慢性的下痢および組織低酸素症の状態の間にみられ、これらの症状は、血液供給が妨げられる外科手術または外傷的経験、また一部の新生児で見られるような代謝システムまたは解剖学的システムの発育不良にて起こるような、虚血的な状態にて起こりうる。高乳酸血症の間、血液中の乳酸塩とピルビン酸塩の重量比は、典型的に約0.35:1である。それは、感染症、重篤な異化反応、臓器機能不全および組織虚血を含む様々な後天的な環境においてみられ、またいくつかの遺伝性代謝障害においてもみられる。それは、小児科学において、共通の疾病の病徴である。ケトン尿症、高乳酸血症、および高アンモニア血症、またさらに、ピルビン酸塩、グルコース、血液中の空気、電解質およびpHの異常値もまた、患者の代謝的な状況の重要な指標である。
【0011】
血中のケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇、および/または哺乳類の組織における最終糖化反応産物(advanced glycation products)および/またはメイラード反応生成物の濃度上昇に関連する代謝障害の予防または治療のための、栄養性製剤、サプリメントまたは食事療法の必要性が存在する。好ましくは、栄養性製剤またはサプリメントの消費は、その快い感覚刺激的性質によって遵守しやすくあるべきであり、普通の日常生活および食べること/飲むことの習慣に適すべきであり、望ましくない副作用が生じるべきでない。
【0012】
新生児および特に早期産児は、しばしば代謝システムの発育不良を患うことがあり、短期間の間に新たな栄養学的療法に適応する必要がある。最初の数日および数週間の間に、例えば酵素の発現、肝臓、膵臓、腸および腎臓といった臓器の能力、および腸の量に関して、劇的な変化が彼らの身体のなかで起こる。栄養学的習慣が、彼らの代謝能力に順応しない場合、血液中の乳酸塩、ケトン体、アンモニアおよびpHのレベルが、異常に高くまたは低くなるといった障害および疾病がみられ、しばしば医学的処置が必要となる。
【0013】
ケトンはまた、大量の脂質または過度の分枝鎖アミノ酸が消費されたときに形成される。特に、脂質が、成人に対して40 en%(エネルギー%)超、早産児に対して52 en%超を供給する、完全栄養調合乳(complete nutritional formulae)を消費した場合、ケトンが形成される可能性がある。完全栄養調合乳における分枝鎖アミノ酸の量が高い場合、例えば、100 g当りに24 gさらには26 gを超えるアミノ酸が存在する場合、同様の問題が生じる。成人のための完全栄養性製剤は、一日当り、80 gを超えるタンパク質および1800 kcalを超えるエネルギーを提供する。早産児にとって、完全栄養は、一日当り6 gのタンパク質および225 kcalのエネルギーを提供する。
【0014】
血液中のケトン体濃度とアラニン濃度の間の逆の相関が、当該分野において報告されてきた。Nosadini, R.らは、ラットによるモデル実験について報告しており(Biochem J (1980), 190, 323-332)、その中で、大量のアラニン消費の後に、血液中のケトン体レベルが減少することを示している。この積極的な効果は、増大したオキサロ酢酸の利用能に部分的に起因しており、つまり、クエン酸形成が増大しおよびミトコンドリア内アセチル-CoAのケトン体生成への利用能が減少することに起因していると考えられた。
【0015】
この効果は、飢餓状態のラットに1時間当り、kg体重当り6 mmol(= 0.69 g)という非常に大量のアスパラギン酸塩(aspartate)を48時間投与することによって、部分的に擬態され、一方で、半分の投与量では、血液中のケトン体濃度において何れの有意な効果も得られなかった。70 kgのヒトに対する、対応する投与量、つまり一日当たり約193 gのアスパラギン酸塩の投与は、正常な食事の消費をひどく損ない、ならびに患者の遵守しようとする意思を強く必要とする。
【発明の概要】
【0016】
ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによる高濃度のアスパラギン酸塩(aspartate)均等物、より好ましくは、特にグルタミン酸塩(glutamate)均等物が相対的にない状態でのビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによるアスパラギン酸塩均等物が、哺乳類の身体において、特に疾病または外傷のある状態において、ケトン体および/または乳酸塩の代謝を改善することがわかっている。結果として、ケトン体および乳酸塩のレベルを減少させることができ、非生理的に高い酸性度を正常化することができる。
【0017】
このように、ケトンおよび乳酸塩の代謝障害、すなわち、ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇および/またはpHの恒常性の不足、特に疾病、外傷または代謝的負荷(metabolically stressed)を負った状態の哺乳類における、血中ケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇を治療および/または予防するための経腸栄養組成物または医薬組成物を提供することが本発明の目的であり、該組成物は、ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせにて、好ましくはグルタミン酸塩均等物が相対的にない状態で、アスパラギン酸塩均等物を大量に含む。
【0018】
「ケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇」および「ケトンおよび乳酸塩の代謝障害」とは、アセト酢酸塩、アセトンおよびβ-ヒドロキシ酪酸を含むケトン体の血液中濃度が0.5 mmol/lより高く、および乳酸塩の血液中能濃度が2 mmol/lより高い状態と理解される。
【0019】
前記組成物は、好ましくは、タンパク質画分の総重量を基準として、少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分を含む。
【0020】
アスパラギン酸塩均等物の少なくとも一部が、少なくとも12.0 wt%、好ましくは少なくとも12.3 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むアスパラギン酸塩源によって提供されることが好ましい。好ましくは、前記タンパク質画分は、さらにグルタミン酸塩均等物を、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比(asp:glu)が0.41:1と5:1の間となるように含む。
【0021】
少なくとも12.0 wt%で含まれるそのようなアスパラギン酸塩源は、未処理のタンパク質、タンパク質単離物、濃縮物または加水分解物、および/または遊離アスパラギン酸塩均等物でありうる。前記少なくとも12.0 wt%で含まれるアスパラギン酸塩源が、タンパク質、タンパク質単離物、加水分解物の濃縮物である場合、タンパク質画分の5-100 wt%、より好ましくは8-70 wt%、より好ましくは10-60 wt%の量で、それが含まれることが好ましい。少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩を含む2以上のタンパク質が存在する場合、上記の数は、これらのタンパク質の総和に対して適用される。アスパラギン酸塩源が、遊離アスパラギン酸塩均等物から形成される場合、これらは、好ましくは0.2-9 wt%の量で、より好ましくは0.5-6 wt%の量で存在する。
【0022】
上述の使用のための、15-22 en%のタンパク質画分および25-50 en%の炭水化物画分を含む経腸組成物を提供することが本発明の目的であり、前記タンパク質画分は、タンパク質画分の総重量を基準として10.8-30 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含み、および前記組成物はさらに、ビタミンB12およびビオチンのうち少なくとも一つを含む。
【0023】
ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇および/またはpHの恒常性の不足、特にケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇の治療および/または予防を、それらを必要とする哺乳類に対して行う方法であって、本発明による経腸栄養組成物または医薬組成物を該哺乳類に投与することを含む方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の詳細な説明】
【0024】
[アスパラギン酸塩(aspartate)、グルタミン酸塩(glutamate)]
アミノ酸である、アスパラギン酸、アスパラギンおよびグルタミン酸およびグルタミンは、哺乳類の身体にはこれらのアミノ酸を必要なときに合成する代謝能力が備わっており、哺乳類において非必須アミノ酸と考えられている。生理学的に活性な異性体はL体であり、内因性アミノ酸は、典型的に、これらのケト-アナログである、オキサロ酢酸塩(アスパラギン酸塩に対する)およびアルファ-ケトグルタル酸塩(グルタミン酸塩に対する)と平衡状態にある。アスパラギンおよびグルタミンは、体内で加水分解されることで、すなわち、それぞれアスパラギナーゼおよびグルタミナーゼという酵素と相互作用しアンモニア基が放出されることで、それぞれアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩となることができる。アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩は時折、神経毒とみなされる。
【0025】
標準的なアミノ酸含量の分析方法を適用する場合、アスパラギンおよびグルタミンは容易に加水分解される。このことが、タンパク質のアミノ酸組成において、アスパラギンの量を独立に得られず、代わりにアスパラギンおよびアスパラギン酸塩の総量が得られる理由である。同様のことがグルタミンにも当てはまる。
【0026】
この文章の目的において、「アスパラギン酸塩均等物」とは、該均等物が、経口的にまたは経腸的に、例えば経管摂食(tube feeding)によって消費された状況において、直接または肝臓によって消化、吸収、および代謝的転換を受けた後、体内にてL-アスパラギン酸塩を放出することができる組成物として定義される。アスパラギン酸塩均等物の例としては、合成された、または天然原料から抽出された、L-アスパラギン酸および/またはL-アスパラギン、遊離アミノ酸、遊離アミノ酸の塩の形態、例えば、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウムといった金属イオンとの塩、またはその他のアミノ酸、カルニチン、タウリンといったその他の化合物との塩、またはコリンもしくはベタインといった四級アンモニウム化合物、カルボン酸部位の一つに結合したアシル部位を含む化合物といったエステル型のアミノ酸、またはピルビン酸といった有機分子からできるエステル、およびアルキル基またはアシル基が一級窒素原子に結合した遊離アミノ酸の誘導体を含む、タンパク質またはペプチドである。このように、アスパラギン酸塩均等物は、R1-NH-CH(COR2)-[CH2]n-CO-OR3またはR1-NH-CH(COR2)-[CH2]n-CO-NHR3であり、ここにおいてn = 1、R1がH、(置換)アルキル、またはアシル(C-ペプチジルを含む)、R2がOH、OR3、NHR3またはN-ペプチジル、およびR3がH、(置換)アルキルまたはアシルである化学式を有する何れかの化合物、ならびにその陰イオン塩および陽イオン塩および双性イオンを含む。同様なことが、n = 2という例外を除いて、グルタミン酸塩にも当てはまる。前記ペプチドは、好ましくは未処理のタンパク質の加水分解によって得られる。ケトアナログであるオキサロ酢酸塩およびその誘導体は、生じうる技術的(加工(processing))問題および安定性の問題のために、栄養製剤中に包含するのにあまり適さない形態である。
【0027】
投与量は、L-アスパラギン酸のグラム量で与えられる。代用の化合物の対応する投与量は、同じモル量を用いて、該代用の化合物の分子量に対して補正することで算出できる。この計算において、ペプチドおよびタンパク質における残基は、アミノ酸鎖中で水分子を欠くことに対する補正がなされる。全ての均等物は、その完全な形態、すなわち水分子を含む、加水分解された形態における総重量に寄与する。
【0028】
「グルタミン酸塩均等物」は、アスパラギン酸塩均等物の場合と同様に定義される。それらは、合成された、または天然原料から抽出された、L-グルタミン酸および/またはL-グルタミン、遊離グルタミン酸塩およびグルタミンアミノ酸、遊離アミノ酸等の塩の形態を含むタンパク質またはペプチドを含む。N-アセチルグルタミンおよびN-アセチルグルタミン酸塩もまた、適した形態である。本明細書および請求項を通して、投与量は、L-グルタミン、その均等物のグラムにて与えられ、ペプチドおよびタンパク質成分の場合は、欠いている水分子に対して補正が成されて、同様に与えられる。
【0029】
アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩均等物の量は、栄養組成物または医薬組成物の全体を基準として計算される。異なる部分からなる組成物の場合、異なる部分におけるそれらの均等物の量が合算される。
【0030】
本文章を通して、「遊離アスパラギン酸塩均等物」または「遊離グルタミン酸塩均等物」は、アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン酸塩およびグルタミン、およびそれらの遊離酸、ならびにその陰イオン性の形態およびアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩といった塩、および双性イオン種を含むと解され;前記酸は、それらの酸名またはそれらの陰イオン名にて、例えばそれぞれ、アスパラギン酸またはアスパラギン酸塩およびグルタミン酸またはグルタミン酸塩として、区別なく言及される。遊離アスパラギン酸塩均等物および遊離グルタミン酸塩均等物はまた、それぞれ少なくとも1分子のアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩を含むジペプチドを含む。該ジペプチドはアスパラギン酸塩源およびグルタミン酸塩源として役立ち、およびそれらが使用される濃度範囲において、無関係な生物学的活性を有すべきではない。
【0031】
しかしながら、特にアスパラギン酸塩均等物が遊離形態、すなわちオリゴペプチドまたはポリペプチドでない場合には、加工(processing)の間の望ましくない副産物の生成を防ぐために、L-アスパラギンまたはその誘導体の代わりに、L-アスパラギン酸またはその誘導体を使用することが好ましい。L-アスパラギン酸の適した形態は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛およびマグネシウムといった金属との塩、またはL-リジンおよびL-ヒスチジンといったアミノ酸との塩である。
【0032】
アスパラギン酸塩の量は、栄養性製剤の9 wt%を超えてはならず、好ましくは6 wt%未満であってはならず、および特に、タンパク質画分を液体の形態で患者に投与する場合、電解質の不均衡を避けるために、個々の独立したアスパラギン酸塩の量は4.8 wt%を超えるべきでない。例えば、カリウムの量は、典型的に100 ml当り、400 mg未満であり、好ましくは50-250 mgであり、最も好ましくは100-180 mgである。マグネシウムの量は、典型的に100 ml当り、200 mg未満であり、好ましくは10-120 mgであり、より好ましくは12-80 mgである。1以上のアスパラギン酸部分を含むジペプチドもまた適しているが、好ましい実施態様ではない。さらに、代わりとなる原料は、サトウキビからの抽出物といった植物性抽出物であり、特にアスパラギン酸塩およびベタインに富んだ原料またはジャガイモからの抽出物である。少なくとも一部が加水分解されることで、アスパラギン酸塩画分は、より急速に患者に利用可能な状態となる。
【0033】
血液中のケトン体、乳酸塩および有機酸の濃度上昇に関連した障害と闘う重要性のために、アスパラギン酸塩均等物の量をさらに増やすことができるが、タンパク質画分中に95 wt%より高く含むべきでない。タンパク質画分中には、タンパク質画分の重量を基準に、好ましくは少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩、好ましくは11.0-70 wt%、より好ましくは11.5-50 wt%、さらにより好ましくは11.8-45 wt%、さらにより好ましくは12.0-40 wt%および最も好ましくは12.5-36 wt%、特に12.8-30 wt%、さらに特に25 wt%未満のアスパラギン酸塩均等物を含む。13.0 wt%超、または14.0 wt%超のアスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分は、特に好ましい。
【0034】
本発明によるタンパク質画分は、好ましくは、体内ですばやく消化されおよび吸収され、それゆえ利用可能であるアスパラギン酸塩画分を含む。このことは、アスパラギン酸塩の少なくとも一部を、すばやく胃を通過する形態にて含むことで達成することができ、ペプシン、トリプシンおよびキモトリプシンといった消化酵素の活性を強く必要としない。一実施態様において、それゆえアスパラギン酸塩均等物の少なくとも一部、好ましくは0.2 wt%、より好ましくは少なくとも0.5 wt%、さらにより好ましくは少なくとも0.7 wt%および最も好ましくは少なくとも1.0 wt%、特に少なくとも1.5 wt%が、遊離アスパラギン酸塩均等物および/または少なくとも一分子のアスパラギン酸塩均等物を含むジペプチドである。
【0035】
そのうえ、本発明によるタンパク質画分は、好ましくは、タンパク質画分の重量を基準として0.2-30 wt%、好ましくは2.0-25.0 wt%、より好ましくは4.0-22.0 wt%、さらにより好ましくは5.0-22.0 wt%および最も好ましくは8.0-21.0 wt%、特に10.0-20.5 wt%のグルタミン酸塩均等物を含む。時として、12.0-18 wt%のグルタミン酸塩均等物を含むタンパク質画分が好ましい。
【0036】
アスパラギン酸塩均等物(asp)対グルタミン酸塩均等物(glu)の重量比が相対的に高い場合、そのことは本発明による有利な効果をもたらす。特に幼い乳児および赤ん坊のための製剤では、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比は非常に重要である。それゆえ、タンパク質画分は、0.41:1と5:1の間のasp:gluの重量比、好ましくは0.45:1と4:1の間、より好ましくは0.50:1と3:1の間、特に0.53:1と2:1の間のasp:gluの重量比を有する。異なる実施態様において、特に製剤が、多くの大豆由来のタンパク質から成っている場合、つまり、好ましくはタンパク質画分の50 wt%超、より好ましくは60 wt%超、最も好ましくは70 wt%超で成っている場合、より高いasp:gluの重量比が好ましい。そして、タンパク質画分は、好ましくは0.58:1と2:1の範囲、好ましくは0.59:1 - 1.8:1の範囲、より好ましくは0.60:1 - 1.6:1の範囲、さらにより好ましくは0.62 - 1.4:1の範囲、および最も好ましくは0.70:1 - 1.2:1の範囲のアスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比を有する。
【0037】
明らかに、本発明による製剤に課された基準が満たされている範囲が広くなるほど、よりよい結果が得られる。特にこのことは、全アミノ酸組成物において当てはまり、および、グルコース画分と比較して前記製剤の消費者がより急速に利用できる、アスパラギン酸塩均等物の原料の包含において当てはまる。
【0038】
[ビオチン]
ビオチンはまた、その均等物、すなわち、D (+)ビオチンの血液の血漿中レベルを増加させる全ての物質を含むと解される。適した原料は、D-ビオチンの酸性形態(ビタミンH)であり、ならびにその生物学的および技術的に許容可能な塩またはエステルである。ビオチン均等物の量は、二環式ビオチン化合物に等しいモル量を用いて計算することができる。D-ビオチンの食品用に適したグレードの形態(food grade form)が好ましい。
【0039】
経腸的使用のためのビオチンの適した投与量は、一日当り10 - 20000μgの範囲である。ビオチン投与量は、11歳を超える子供および成人に対して、50 - 20000μg/日、好ましくは70 - 2000μg/日、より好ましくは100 - 1000μg/日であり、より幼い子供に対して、10 - 500μg、好ましくは15 - 250μg、より好ましくは18 - 150μgであることが好ましい。早産児には、一日当り6 -200μg、好ましくは8 - 100μg、より好ましくは9 - 50μgの投与量が要求される。疾病が慢性的な性質であり、II型糖尿病を患う多くの患者が血漿中ケトン体レベルの増加を予防または治療するために行うように、経腸的製剤が毎日消費される場合、ビオチンの量は、11歳を超える子供および成人に対しては、一日当り好ましくは50 - 1000μg、より好ましくは70 - 500μg、さらにより好ましくは80 - 300μgであり、一日当り10 - 200μg、より好ましくは15 - 150μg、さらにより好ましくは18 - 100μgである。アシドーシスのように急性の場合、前記量は、好ましくはさらに高い。例えば、11歳を超える子供および成人には、一日当り300 - 20000μg、好ましくは360 - 2000μg、より好ましくは420 - 1000μgの投与量が要求される。より幼い乳児には、40 - 500μg、好ましくは50 - 250μg、より好ましくは60 - 150μgで要求される。早産児には、一日当り9 - 200μg、好ましくは12 - 100μgおよびより好ましくは15 - 50μgの投与量で投与するべきである。
【0040】
組成物は好ましくは、該組成物1 kg当り、ビオチンを、10 - 10000μg、好ましくは15 - 2000μg、より好ましくは20 - 1000μg、特に50 - 500μgの量で含む。
【0041】
本発明による量のビオチンは、血液の血漿中のケトン体のレベルを減少させ、組織におけるAGE生成物およびメイラード生成物のレベルを減少させ、およびより短期間にアシドーシス、例えば乳酸アシドーシス、およびケトンアシドーシス(ketonic acidosis)の程度を減少させ、脂質のプロファイル、特にコレステロールの血漿中レベルを正常化させることがわかっている。
【0042】
[ビタミンB12]
ビタミンB12は、合成シアノコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミンおよびヒドロキシルコバラミンといった適した原料を用いて提供でき、該適した原料は、例えば摘出した臓器、特に肝臓から得られる。例えば、ブタ、ウシ、ニワトリといった家畜における溶解した肝細胞の水溶液濃度が、抽出液100 ml当りコバラミン75μg超の濃度で得られる。
【0043】
組成物は好ましくは、該組成物1kg当り2.5 - 500μg、より好ましくは4 - 100μgおよびさらにより好ましくは8 - 50μgのビタミンB12を含む。
【0044】
製剤が、3 - 50歳であり、胃/腸管に問題がないまたは嚢胞性線維症でない人に投与される場合には、ビタミンB12の有効性を高めるために、乳酸菌、特にLactobacillus acidophilusおよび/またはL. bifidusの培養液にて調製後に前記製剤を発酵させることが有用である。
【0045】
[タンパク質画分:アミノ酸プロファイル]
本明細書及び請求項を通して使用される「タンパク質画分」とは、製剤中の全てのタンパク質、ペプチドおよびアミノ酸と定義され、タンパク質はまた、タンパク質単離物、濃縮物および/または加水分解物である。前記タンパク質画分は、以下の基準を満たす場合に有効である:
アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩の量における条件に加えて、前記タンパク質画分の消化によって哺乳類生物に利用可能となる、メチオニン、分子鎖アミン酸バリン、ロイシンおよびイソロイシン、およびさらにリジン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、スレオニンおよびトリプトファンといった、前記タンパク質画分中の必須アミノ酸の量は、体内の同化作用および適切な機能を保証するために十分な量を提供するべきである。
【0046】
特に、L-メチオニンおよびL-リジンさらにL-ロイシンの量が重要である。患者が腫瘍の成長を患う場合を除いて、L-メチオニンの量は、好ましくはタンパク質画分の1.5 - 4 wt%およびより好ましくは1.7 - 3.3 wt%である。さらにまた、タンパク質画分中のL-メチオニンおよびL-システインの総量は、タンパク質の好ましくは2.7 wt%超、より好ましくは2.9 wt%超および最も好ましくは3.5 - 8 wt%である。正味のインスリン抵抗性(net insulin resistance)および/または高血糖症を患う患者がさらに、腫瘍の成長を患う場合、タンパク質画分はL-メチオニンが補充されないことが好ましい。
【0047】
プロピオン酸血症を患う患者は、異化作用によってプロピオン酸となる、食物中の莫大な量のイソロイシン、バリン、メチオニンおよびスレオニンに対して許容できない。本発明の製剤を併用することで、許容される前記量を増やすことができる。タンパク質画分中のこれらのアミノ酸の総量は、それゆえ前記タンパク質画分の10 wt%超、好ましくは12 - 30 wt%、より好ましくは16 - 26 wt%である。同様の基準が、メチルマロン酸血症を患う人によって使用される製剤に適用される。
【0048】
L-リジンの量は、タンパク質画分の好ましくは5.5 - 15 wt%、より好ましくは6.6 - 12 wt%および最も好ましくは7.1 - 11 wt%である。しかしながら、グルタル酸血症を患う人に投与される場合、リジンの量は、タンパク質画分の7 wt%未満、好ましくは5.5 - 6.9 wt%でなけれればならない。その場合、トリプトファンのレベルは、タンパク質画分の1.7 wt%未満、好ましくは1.3 - 1.6 wt%であるべきである。
【0049】
投与による、インスリンの大量な放出を避けるために、タンパク質画分中のアルギニン、グリシンおよびフェニルアラニンは相対的に低くなければならない。
【0050】
アルギニンの量は、タンパク質画分の好ましくは7.9 wt%未満、より好ましくは7.8 wt%、さらにより好ましくは7.0 wt%未満および好ましくは6.0 wt%未満である。製剤中におけるL-アルギニンとL-リジンの割合は、典型的に0.4:1 - 1.43:1、好ましくは0.5:1 - 1.40:1、および特に幼い乳児に投与される製剤においては、前記割合は好ましくは1:1 - 1.40:1である。製剤中のアスパラギン酸塩均等物とL-アルギニンの割合は、最大の効果および均衡のとれたアミノ酸プロファイルを達成するために、好ましくは1.4超、より好ましくは1.5 - 5、最も好ましくは1.6 - 3.0である。
【0051】
L-グリシンの量は、好ましくは前記タンパク質画分の3.5 wt%超、好ましくは3.6から4.5 wt%の間、およびより好ましくは4.2 wt%未満である。Asp/Glyの重量比は、好ましくは2.8:1 - 100:1の範囲内であり、Asp/Pheの重量比は、2.4:1 - 100:1の範囲内である。特に、L-セリンの量は、少なくとも1.5倍で、L-グリシンの量を上回らなければならない。好ましくは、L-セリン/L-グリシンの割合は、2.0:1より大きく、より好ましくはすくなくとも2.3:1である。このことは、L-グリシンに比べてL-セリンを多く含むタンパク質を加えることにより、および/または合成L-セリンもしくはL-セリンを含むジペプチドを加えることで達成することができる。
【0052】
L-フェニルアラニンの量は、好ましくはタンパク質画分の5.6 wt%未満であり、より好ましくは5.3 wt%未満である。アスパルテームは、その過度の甘さのために、アスパラギン酸塩の原料として適さない。
【0053】
本発明による製剤のタンパク質画分中のロイシンの量は、7.7 - 13 wt%である。イソ吉草酸血症を患う人には、10 wt%未満、好ましくは9.0 wt%未満のロイシンのレベルが望まれる。幼い乳児、早期産児および重篤な肝機能障害を有す人といった、発育不良のおよび/または障害性の代謝機能を有する人にとって、アスパラギン酸塩とロイシンの重量比は、好ましくは0.85:1 - 1.5:1の範囲、より好ましくは0.88:1 - 1.4:1、さらにより好ましくは0.9:1 - 1.1:1および最も好ましくは0.95:1 - 1.04:1の範囲の値である。アスパラギン酸塩およびロイシンの量の釣り合いを保つために、一部のロイシンをアルファ-ケト-イソカプロン酸塩として含むことが推奨される。この成分は、有効性および食味の観点から、アミノ酸またはオルニチンまたはベタインといった成分に対する、優れた対イオンである。
【0054】
本発明によるアスパラギン酸塩均等物のレベルを満たすタンパク質画分を、代謝障害の治療のための製剤の作製において使用することは特に好ましく、ここにおいて、前記タンパク質画分はさらに:a)合計7.7 - 19 wt%の全分枝鎖アミノ鎖;b)7.7 - 9.0 wt%のロイシンおよび3.6 - 4.5 wt%のグリシン;c)合計16 - 26 wt%のイソロイシン、メチオニン、バリンおよびスレオニン;およびd)5.5 - 6.9 wt%のリジンおよび1.3 - 1.6 wt%のトリプトファンのうちの一つを含み、ここにおいてこれらの数値は、前記タンパク質の重量を基準としている。
【0055】
L-ヒスチジンの量は、好ましくはタンパク質画分の2.3 - 4 wt%およびより好ましくは2.5 - 3.2 wt%である。タンパク質画分のアラニンの量は、典型的に4.8 - 8 wt%、好ましくは5.1 - 7.5 wt%およびより好ましくは5.3 - 7.0 wt%であるだろう。
【0056】
グアニジノ基を含む有機分子は、製剤中に有利に含めることができる。しかしながら、遊離アルギニンもしくは塩といったその均等物、またはL-アルギニンを含んだ小ペプチドを含まないことが推奨される。代わりに、グアニジノ-酢酸塩または3-グアニジノ-プロピオン酸塩が、例えば、一日当り2 g未満の量、および好ましくは一日当り0.1 - 1 gの量にて含めることができる。液体製剤において、3-グアニジノ-プロピオン酸塩は優れた原料であり、およびその濃度は、典型的に0.005 - 0.05 wt%であるだろう。それゆえ、トランス硫化経路のいくつかの酵素に対するクレアチンの潜在的有害効果を避けるために、タンパク質画分におけるクレアチン/アスパラギン酸塩均等物の重量比が0.2:1未満、好ましくは0.1:1未満、より好ましくは0.5:1未満となるよう、クレアチンを含まないまたは相対的に少ない量のクレアチンしか含まないことが好ましい。製剤が、高血圧症および勃起不全といったいくつかの血管の疾病といった、高血糖症および/またはインスリン抵抗性のいくつかの二次的な副作用において作用しなければならない、ということが重要である。
【0057】
メチオニンの原料として、合成L-メチオニン、例えばアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛との塩といったその塩、クエン酸もしくはリンゴ酸といった有機酸、またはアスパラギン酸といったアミノ酸を使用できる。合成L-メチオニンよりも、よい味わいのある形態を使用することが好ましい。適した形態は、アシル化メチオニンであり、例えば、EP 0758852およびUS 1560000にて記載された通りのN-アセチルメチオニン、US 5,430,064にて開示されるメチオニンアナログである。少量のメチオニンは、亜鉛メチオニン複合体として適切に添加されてよい。亜鉛の総投与量が、一日当り100 mgを超えることを避けるため、亜鉛メチオニンの量はタンパク質画分の1 wt%未満であるべきである。
【0058】
[実施態様]
本発明の一実施態様において、栄養製剤または医薬製剤は、第一のアスパラギン酸塩に富む原料、すなわち、タンパク質、タンパク質濃縮物、単離物もしくは加水分解物または遊離アスパラギン酸塩均等物のタンパク質画分を含み、および該第一の原料とは異なるアスパラギン酸塩に富む第二の原料のタンパク質画分を含む。ここにおいて、前記第一のアスパラギン酸塩に富む原料は、12.0 wt%超、好ましくは少なくとも12.3 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含む。前記アスパラギン酸塩均等物の第二の原料は、その他のタンパク質とすることができ、好ましくは少なくとも7.8 wt%、より好ましくは少なくとも8.0 wt%、さらにより好ましくは少なくとも9.0 wt%、より好ましくは少なくとも10.0 wt%、さらにより好ましくは少なくとも10.5 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含む。第一の原料としての遊離アスパラギン酸塩均等物の選択は、血液中において、食物からのアスパラギン酸塩のすばやい吸収が要求される場合に特に好ましい。前記第一のアスパラギン酸塩に富む原料のその他の好ましい選択は、ラクトアルブミンが濃縮された乳清およびジャガイモタンパク質である。
【0059】
製剤は少なくとも二つのタンパク質を含むことが好ましい。上述の全ての栄養性の基準を同時に満たすために、植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の組み合わせが最も適していると考えられる。加えて、このように前記タンパク質原料の最終的な食味は、植物由来のタンパク質のみを含むタンパク質を使用する場合に比べ、非常によい。植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の組み合わせの使用はまた、特に、少なくとも一つの該タンパク質が部分的に加水分解される場合に、アスパラギン酸塩均等物の急速な利用可能性をもたらす。タンパク質の可溶性を増加させるために、および加工(processing)の間、特に加熱の間でも安定的な液体を得るために、タンパク質が部分的に加水分解される場合には、特に液体製剤において、それは植物由来のタンパク質であることが好ましい。その場合、動物由来のタンパク質が加水分解されない、またはわずかしか加水分解されなくてもよい。加水分解の度合いは、好ましくは5 - 70%、より好ましくは8 - 60%、最も好ましくは11 - 50%である。植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の間の重量比は、好ましくは4:1と1:4の間であり、より好ましくは3:1と1:3の間であり、最も好ましくは2:1と1:2の間である。
【0060】
表1に、いくつかの比較データを提供した。これにより、本発明によるタンパク質組成物と個々の当該分野で既知のタンパク質との間の違いを明確にしている。
【表1】
【0061】
表1に記載される通りの、最適なアミノ酸組成が、遺伝性の代謝障害を患う人に対する製剤に応用される場合、製剤中に存在する残りのアミノ酸は、この特定のタイプの患者の、特定の栄養的要求に応じるということが重要である。例えば、前記製剤がカエデシロップ病を患う患者により使用される場合、該製剤は、例えばタンパク質の20 wt%、例えば7.7 - 19 wt%の分枝鎖アミノ酸を少量、含むべきである。
【0062】
いくつかの原材料は、本発明によるタンパク質画分において有効に使用することができる。乳清、ダイズ、ルピナス、ジャガイモ、食肉、肝臓、魚、白マメ(white bean)、ライマビーン、レンズマメ、キマメ、黄色カナダエンドウマメ(yellow Canadian pea)といったいくつかのその他のエンドウマメ種、およびケツルアズキ(black gram)は、グルタミン酸塩均等物と比較してアスパラギン酸塩均等物に相対的に富むタンパク質を、相対的に高いレベルで含む。全ての動物、特にウシ、スイギュウ、ウマ、ヤギ、ヒツジおよびラクダの乳の、特定の乳清画分が、上記の基準を満たす限り使用することが可能である。実際的な理由のため、およびその有益なアミノ酸組成のため、牛乳からの乳清は多くの場合の出発原料として特に適しており、例えばチーズ製造後に生じる甘味乳清(sweet whey)または酸味乳性(acid whey)が挙げられる。後者は、グリコマクロペプチド(glycomacropeptide)がないために、非常に適した原料である。
【0063】
牛乳からの未加工の乳清は、ベータ-ラクトグロブリン、免疫グロブリン、ラクトフェリン、ウシ血清アルブミン、アルファ-ラクトアルブミンおよびその他のいくつかといった多くのタンパク質を含む。純粋なアルファ-ラクトアルブミン、およびこれらのタンパク質の総量が20%超、および好ましくは30 - 90 wt%の間および最も好ましくは33 - 70 wt%で含む乳清画分も、本発明の目的のために有利に使用することができる。非常に適した乳清タンパク質は、表2に例示されるような、少なくとも12 wt%のアスパラギン酸塩均等物および少なくとも0.58のasp:gluの比率の含有物を含む、α-ラクトアルブミン-濃縮乳清タンパク質である。
【表2】
【0064】
ジャガイモタンパク質は、すばやく利用できるアスパラギン酸塩として非常に適した形態であり、加水分解自体は、乾燥した製剤に含まれる場合は、要求されない。しかしながら、液体製剤において、それらの溶解度を増大させるために、加水分解されるべきである。同様なことが、脂肪を含まない栄養性製剤における食肉製剤のように、容易に消化されたタンパク質に当てはまる。8.5から11 wt%のアスパラギン酸塩均等物の含有量および0.55から0.9の間のasp:glu比を有するような、食肉または肝臓タンパク質が非常に適している。
【0065】
本発明による製剤が、食肉、乳清または肝臓から選択される動物由来のタンパク質、およびダイズ、ルピナス、エンドウマメ、特にキマメ、マメ、特に白マメ(white bean)、ライマビーン、レンズマメまたはケツルアズキ(black gram)、およびジャガイモから選択される植物由来の第二のタンパク質を含むことが好ましい。タンパク質画分がダイズ加水分解物もしくは濃縮物、または乳製品を含むことが特に好ましい。乳製品とは、ウシ、スイギュウ、ラクダ、ウマ、ヤギおよびヒツジの乳から単離されたタンパク質などの乳製品タンパク質(dairy proteins)を少なくとも80 wt%含むタンパク質画分と解される。乳の二つの主なタンパク質構成物は、乳清(20 wt%)およびカゼイン(80 wt%)である。より重要な(outbalanced)必須アミノ酸プロファイルをともなう、そのようなダイズタンパク質加水分解物または濃縮物または乳製品は、少量のアスパラギン酸塩に富むタンパク質、例えばエンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質またはアルファ-ラクトアルブミンを用いて、アスパラギン酸塩均等物を強化することができる。そのような第二のタンパク質の量は、好ましくは、タンパク質画分の70 wt%未満、より好ましくは40 wt%未満、さらにより好ましくは30 wt%および最も好ましくは20 wt%である。
【0066】
本発明の要求を満たすタンパク質画分を含むいくつかの未加工の成分は、赤血球凝集素(haemaglutinins)、フィチン酸、タンニン、フラボノイドといった栄養阻害因子(anti-nutritional factors)およびプロテアーゼ阻害剤に富む。タンパク質画分中における、これらの化合物の量は、好ましくは非常に低くあるべきであり、従来技術において記述される通りに、単独または加熱処理(焼く(toasting))と組み合わせて、適した単離方法を応用することで達成することができる。すばやく利用できるアスパラギン酸塩原料が製剤に含まれることを保証するために、未処理のタンパク質またはわずかに加水分解されたタンパク質がアスパラギン酸塩均等物として含まれていた場合に特に、プロテアーゼ阻害剤の量が低いことが重要である。プロテアーゼ阻害剤の量は、例えば、当該分野において既知の方法を用いて、残ったトリプシン阻害剤活性(TIA)として、またはボウマン-バーク阻害剤(Bowman-Birk inhibitors)の濃度として定量化することができる。典型的なレベルは、タンパク質画分1 kg当り、0.12 g未満、好ましくは0.06 g未満、より好ましくは0.02 g未満および最も好ましくは0.007 g未満である。特に、キモトリプシンの阻害剤のレベルは、タンパク質画分1 kg当り、0.01未満、好ましくは0.004未満であるべきである。適切に処理されたダイズタンパク質単離物の量は、タンパク質画分1 g当り、1 - 6 TIAである。
【0067】
言及される通りの成分のいくつかのタンパク質画分を混合することにより、完全栄養のための本発明に従って設定される基準を満たす、アミノ酸プロファイルを得ることができる。本発明の実施態様において、ダイズタンパク質と合成アミノ酸の混合物、またはダイズタンパク質と特定の乳清タンパク質、特にアルファ-ラクトアルブミンに富んだ乳清タンパク質の混合物が好ましい。
【0068】
遊離L-アスパラギン酸またはその塩が製剤に含まれない場合に、少なくとも一つのタンパク質が加水分解されていることが好ましいが、全体のタンパク質の内、重要な部分が、食味を考慮して未処理のままであるべきである。そして、典型的に前記タンパク質画分の30 - 95 wt%が未処理であり、好ましくは40 - 92 wt%、より好ましくは50 - 89 wt%、さらにおり好ましくは少なくとも60 wt%および特に少なくとも70 wt%が未処理である。上述のように、特に感覚受容性の理由および製剤の安定性の理由、例えば熱処理の間および/または有効期間の理由のために、動物由来のタンパク質よりも、植物性タンパク質原料が加水分解される方が好ましい。例えば、95 wt%のダイズタンパク質、および2 wt%のL-アスパラギン酸塩および1 wt%のL-リジンおよび1 wt%のL-メチオニンを混合することで作製されるタンパク質画分は、設定される基準を満たすだろう。
【0069】
ある実施態様において、ダイズタンパク質の単離物または加水分解物の大部分の画分を使用することが好ましい。しかしながら、約10 wt%のアスパラギン酸塩均等物を提供するダイズタンパク質の単離物は、92 wt%未満であること、好ましくは90 wt%未満であること、およびさらにより好ましくは85 wt%未満でさえあることが好ましい。タンパク質画分は次に、すばやく消化される、少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含んだ非ダイズタンパク質または遊離アスパラギン酸塩均等物を用いて、アスパラギン酸塩均等物の要求されるレベルまで補強される。
【0070】
本発明の基準を満たすタンパク質の組み合わせの例は、83 wt%の加水分解ダイズタンパク質濃縮物、乳清タンパク質中に豊富である15 wt%の加水分解アルファ-ラクトアルブミン(Arlaとして提供される)、および0.5 wt%のL-メチオニン、0.5 wt%のL-ヒスチジンおよび1 wt%のL-セリンの混合物、または40 wt%のダイズタンパク質、50 wt%の食肉タンパク質および10 wt%ジャガイモタンパク質の混合物、または50 wt%の加水分解ダイズタンパク質単離物および48 wt%の牛乳乳清画分、0.5 wt%のN-アセチルメチオニン、0.5 wt%L-ヒスチジンおよび1 wt%のセリンの混合物である。
【0071】
乳製品(dairy)を基礎とした組成物を作製することが好ましい場合において、特に高血糖症、インスリン抵抗性または小児肥満もしくは糖尿病を患う幼い乳児またはそれらの発症の危険のある幼い乳児の治療において、乳製品タンパク質または乳タンパク質の量は、タンパク質画分の少なくとも50 wt%、好ましくは少なくとも60 wt%、より好ましくは少なくとも70 wt%および最も好ましくは少なくともタンパク質画分の80 wt%である。そのような組成物は、該組成物が本発明による最低限のasp:gluの重量比の基準を満たすようにするため、アスパラギン酸塩に富む原料で補強されなければならない。
【0072】
多くの成分が、消化管にて消化された後に、アスパラギン酸塩の代謝的な前駆体として役立つことができるにも関わらず、好ましいものはこれらの成分の内のいくつかである。いくつかの原料からの未処理のタンパク質ならびにそれらの加水分解物が推奨される。それゆえ、タンパク質画分が、そのペプチド、未処理のタンパク質および/または加水分解物を含むことが好ましい。
【0073】
グルタミン酸塩均等物は、アミノ酸の要求を満たすよう選択されるタンパク質中に豊富に存在する。しかしながら、全タンパク質組成物における上記の要求を満たす限り、N-アセチルグルタミンを含むことのみが有用であり、N-アセチルグルタミンの総量は、タンパク質画分の重量を基準として、グルタミン酸塩均等物の量が50 wt%超えず、好ましくはグルタミン酸塩均等物の量が2 - 40およびより好ましくは5 - 25重量パーセントの範囲である。後者の条件は、窒素のバランスとともに恒常性の問題を回避するために重要である。しかしながら、高アンモニア血症の場合、このことは優位な役割を担わないため、N-アセチルグルタミンの画分における制限は、患者が高アンモニア血症と診断されたときは適用されない。
【0074】
タンパク質が、食事全体(total diet)の中で、炭水化物と組み合わせて用いられる場合、提供されるタンパク質の量は、消化性(digestible)炭水化物の量より少なくなければならない。完全な栄養としての使用が意図される製剤中のタンパク質の典型的な量は、10 - 30、好ましくは15 - 25およびより好ましくは18 - 22エネルギーパーセント、特に約20エネルギーパーセントで含むだろう。
【0075】
タンパク質画分は、カゼインまたはその加水分解物を含まない、または低い量で含むだろう。というのは、それが、アスパラギン酸塩均等物に乏しい原料であり、本発明の目的に対して、グルタミン酸塩均等物を過度に含むためである。その量は、好ましくは、タンパク質の40 wt%未満であり、より好ましくは25 wt%未満であり、さらにより好ましくは10 wt%未満でありおよび最も好ましくは5 wt%未満である。
【0076】
グルコースのレベルに有益な効果をもたらすために投与される栄養組成物の、成分の一日の量を推定するために、本文章を通して、タンパク質の重量パーセンテージを、以下の計算法を用いて一日の投与量に変換することができる。つまり、患者への全エネルギー供給は、70 kgの体重に対して約2000kcal/日であると考えられる:本発明による典型的な栄養組成物は、約20エネルギーパーセントのタンパク質画分を含むため、患者に投与されるタンパク質画分の全量は、一日当り約400 kcalであり、また重量では約100 gのタンパク質画分である。それゆえ、一日の投与量は、一日当り100 gのタンパク質消費を基準として計算することが可能であり、例えば、必要とされるアスパラギン酸塩含量がタンパク質画分の12 wt%である場合、それは12 gのアスパラギン酸塩の一日の投与量に相当する。必要な場合、これらの量は、必要とされる量にB/70(Bは体重(kg))を乗じることで、実際の体重に適用することができる。乳児に適した投与量の計算には、560 kcalのエネルギー供給および10エネルギーパーセントのタンパク質含量が想定でき、これにより56 kcalまたは14グラムのタンパク質消費とすることができる。つまり、要求されるアスパラギン酸塩含量に0.14 (1/7)という因子を乗じればよい。例えば、必要とされるアスパラギン酸塩含量が、12 wt%である場合、それは12 x 0.14 = 1.68 gの一日の投与量に相当する。必要な場合、これらの量は、B/2(2 kgとは、これらの計算の初期段階において使用した、乳児の体重)を乗じることで、体重に適用することができる。
【0077】
[炭水化物画分]
タンパク質画分を、少なくとも炭水化物画分と組み合わせて使用することは好ましい。食物中の炭水化物の画分は、アスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分と比較して、哺乳類の消化管において相対的にゆっくりと消化されなければならない。最も良い結果は、グリセミック指数(glycemic index)が70を下回ること、および好ましくは55を下回ることが実証される製剤を用いることで得られる。このことは、70を下回る、好ましくは15から70の間である、より好ましくは25から55の間であるグリセミック指数を示す炭水化物画分を用いることによって達成される。該グリセミック指数とは、グルコースと比較した場合の、血漿中グルコースレベルにおける炭水化物画分の即時効果に相当し、100までの値で表される。いくつかの炭水化物に対する値を含む、グリセミック指数を決定する方法は、当該分野にて記述されている。
【0078】
消化性(digestible)炭水化物の適した原料は、オオムギ、オート、ジャガイモ、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、ライコムギ、キビ、ソルガム、アマランス、イネ、サトウキビ、テンサイ、キャッサバ、タピオカ等といった、塊茎または穀物からの、何れかの食品等級の炭水化物抽出物であってよい。
【0079】
消化性炭水化物画分は、二つの種類の炭水化物を含み得る:(i)グルコースポリマー、グルコースオリゴマー、二糖と解されるグルコース均等物であり、ここにはグルコースおよびグルコースそのものが含まれ、および(ii)グルコースとは異なる単糖単位を主に含んだ炭水化物である。後者の分類は、典型的にヒトの消化管において消化されにくい。しかしながら、単糖自身および幾つかの二糖はしばしば、相対的に吸収され易く、および消化され易い。
【0080】
好ましくは、アスパラギン酸塩均等物は、アスパラギン酸塩均等物とグルコース均等物の重量比が0.037:1 - 2:1、より好ましくは0.045:1 - 1.8:1、さらにより好ましくは0.050:1 - 1.5:1および最も好ましくは0.060:1 - 1:1という重量比にそった量で投与される。グルコース均等物とは、1錠以上の栄養製剤または医薬製剤として投与されるすべてのグルコースと理解されるが、アスパラギン酸塩に富む製剤の投与後60分以内における、その人に消費された食事に含まれる均等物も含む。アスパラギン酸塩とグルコースの比率を計算する場合において、α-グルカン、グルコース自体、スクロースおよびラクトースから生じる何れかのグルコースは、当該グルカンが吸収または消化が容易か困難かに関わらず、含められる。
【0081】
消化性炭水化物の原料は、該炭水化物への消化酵素の接触が困難になるように扱うことができる。その例は、レジスタントスターチ (resistant starch)である。炭水化物はまた、通常の消化酵素で加水分解されにくい、ベータ-1,6-またはアルファ-1,1グリコシド結合で互いにつながった、グルコース部分を含むことができる。この種の炭水化物の例は当該分野において記述されており、例えば、WO 2004/023891、改変デンプンおよびプルランについてのWO 03/105605などに記載されている。また、高-アミロペクチン炭水化物のような、高度に分枝化した炭水化物の使用は、消化を遅らせ、および、好ましくは温和に加水分解される場合には、デンプンが75 wt%を超えるアミロペクチンを含むように、適切に含めることが可能である。適した原料は、ジャガイモ、タピオカ、トウモロコシ、キャッサバ、または穀物(ソルガム、コムギ、ライムギ、ライコムギ、オオムギ、オートまたはキビ等)といった植物の選択を通して、遺伝学的に改変または取得されてきた。調合乳(formula)に含まれうる、その他の原料は、9を超える単糖単位を有す高い重合度のポリマーを含む、マルトデキストリンである。未処理のデンプンを低い程度で加水分解することで、適したグルコースの原料が得られる。US 6,720,312に開示されるように、デンプンの加水分解において、デンプン顆粒の膜構造をより未処理のままに保つ添加物を用いることによって、消化をさらに遅らせることができる。
【0082】
約40 - 100 wt%の炭水化物画分から、グルコース均等物が形成されなければならない。好ましくは、この量は、45 - 90および、より好ましくは49 - 80および最も好ましくは52 - 75 wt%である。有用なグルコース均等物は、例えば、鎖長が9単位より大きく、例えばマルトデキストリン DE 2 -31にて生じるグルコースポリマー、およびいくつかのグルコースシロップである。その他の有用なグルコースオリゴマーは、グルコースが、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、マンノース、フコース、ラムノース、シアル酸またはヘキスロン酸(hexuronic acid)といったその他の単糖とともに成るものであって、1 - 60 wt%の量のグルコース均等物が含まれるものである。幼い乳児のために、フコース、ラムノース、シアル酸またはヘキスロン酸(hexuronic acid)が含まれるグルコース均等物を含むことが好ましい。適した成分は、乳、特にヤギの乳から抽出することができる。その例は、EP0957692において示されている。後者のグループの使用者のために、これらは、好ましくは、1 - 40 wt%の量のグルコース均等物にて使用される。
【0083】
80 wt%を超えるグルコースを含む、グルコース多糖は、乾燥した製剤への包含に特に有用である。その例は、顆粒またはデンプン分子の化学的または物理的修飾によって、遅延した消化を示すタイプのデンプンである。本発明の目的のために、EnglystおよびCummingsの方法(Adv. Exp. Med. Biol. 270, 205-225 (1990)) を適用することで、レジスタントスターチ (resistant starch) を定量することができる。レジスタントスターチは、非消化性炭水化物(線維)画分の重量に対して、好ましくは10 - 80、好ましくは15 - 60、より好ましくは20 - 40%のレベルで存在してよい。
【0084】
適したグルコース均等物のその他の例は、50 wt%を超えるグルコースを含み、3 - 9の鎖長を有する、オリゴ糖である。これらのオリゴグルコシドの量は、消化性炭水化物の重量の50%未満、好ましくは40%未満、および最も好ましくは30%未満であるべきである。純粋なグルコースの量は、その浸透価への寄与およびその甘さのために、低くなくてはならない。好ましくは、その量は、炭水化物画分の10 wt%未満、より好ましくは1 - 8 wt%である。
【0085】
特にスクロースおよびラクトースといった、グルコース部分を含む二糖の分類において、その甘さおよび製剤の浸透圧への影響のため、消化性炭水化物画分の5 wt%を超える量でスクロースを含まないことが好ましい。後者の特性はラクトースにも当てはまるものの、ラクトースの存在に明確な不耐性がない限り、製剤にラクトースが含まれることが好ましい。後者はまた、ダイズ、ハウチワマメ、エンドウマメ、ジャガイモ等が由来のタンパク質を5 wt%超で有するタンパク質画分を含む栄養性製剤にも適用される。
【0086】
グルコースでない単糖の分類はまた、少量ではあるが、製剤に含めることができる。というのは、それらは、浸透価へ大きく影響し、および甘さにある程度影響し、腹部に関する不満を生じさせる可能性があるためである。単糖の例は、アラビノース、アラビトール、マンノース、リボース、ガラクトース、ラムノース、キシルロース、キシリトールおよびフルクトースである。セドヘプツロースといった、七炭素糖類(hepta-carbon saccharides)の量は、単糖の重量の10%未満および好ましくは5%未満であるべきである。グルコースとは異なる単糖の総量は、製剤中のグルコース均等物の量未満でなくてはならず、好ましくはグルコース均等物の0.8倍の量未満でなくてはならない。言い換えると、これらの量は、それゆえ、消化性炭水化物の画分の1 - 40 wt%、好ましくは2 - 30 wt%およびより好ましくは3 - 20 wt%である。
【0087】
フルクトースが含まれる場合、相対的に限定された量で含むことが好ましい。フルクトースの量は、血漿中レベルを150μM未満および好ましくは120μM未満に保つために、消化性炭水化物の0.1 - 20 wt%の範囲内にあるべきである。これは、炭水化物画分の重量を基準として、0.2 - 15 wt%、好ましくは0.3 - 10 wt%、より好ましくは0.4 - 5 wt%、および最も好ましくは0.5 - 4 wt%のフルクトースを含むことで達成される。このように、2 g未満のフルクトース、好ましくは1 g未満のフルクトースが、食事一回当りに消費される。一方で、食事一回当りに同時に2 gを越えるグルコース単位、好ましくは10 gを超えるグルコース単位が消費される。グルコース/フルクトースの重量比は、2:1より大きく、好ましくは5:1から100:1および最も好ましくは10:1から50:1である。
【0088】
グルコースおよびフルクトース以外に、D-ガラクトースが好ましい単糖である。後者が含まれる場合、その量は、製剤中の単糖の重量の1 - 20および好ましくは2 - 10%の量をとり得る。
【0089】
消化性炭水化物とは、消化管にて生じる消化酵素にさらされた後に、80%超が加水分解され、続いて腸にて吸収される炭水化物と定義される。消化性炭水化物の総量は、全栄養組成物の10 - 70エネルギーパーセント、好ましくは20 - 65、より好ましくは30 - 60および最も好ましくは34 - 55 en%でなければならない。
【0090】
栄養物中のタンパク質をその一日の投与量に変換する上述の計算を用いると、患者への全エネルギー供給量が約2000 kcal/日であるので、体重が70 kgおよび消化性炭水化物が好ましくは40 en%と仮定した場合、患者に投与する消化性炭水化物の総量は、約800 kcal/日であり、また重量で表すと一日当り200 gの消化性炭水化物である。これらの数値を適切な体重に変換することで、特定の患者に対する一日の投与量を決定することは、当業者にとって容易なことである。
【0091】
炭水化物の消化はまた、ポリフェノールの化合物または食物繊維といった消化速度を低下させる化合物とともに包含させることによって、遅らせることができる。製剤中に生じるようなタンパク質との間、または消化系にて作用する酵素との間での好ましくない相互作用を回避するために、製剤中にポリフェノールを含まないことが好ましい。特に、ダイズまたはその他の植物の市販品として利用可能なタンパク質画分に存在しうるような、フラボノイドおよびタンニン、特にイソフラボンの量は、一日の投与量当り、200 mg未満、好ましくは100 mg未満、およびより好ましくは50 mg未満に維持されるべきである。製剤1リッター当り、その濃度は、それゆえ、100 mg/L未満、好ましくは50 mg/L未満およびより好ましくは25 mg/Lであるだろう。これを達成するため、ポリフェノールに富んだ植物性原料から単離されたタンパク質画分は、典型的に、例えばエタノールといった有機溶媒によって洗浄することで、処理されるだろう。
【0092】
炭水化物画分は、食物繊維を含むことが好ましい。食物繊維は、陰イオン性多糖類またはその他の多糖類もしくはオリゴ糖であってよい。該その他の多糖類もしくはオリゴ糖の例は、キサンタンガム、アラビアゴム、コンニャクガム(Konjac gum)、ゲランガム(gellan gum)、タラガム(tara gum)およびガーゴムといったゴムを由来とするもの、カッパーまたはイオタ変異体(variant)といったペクチン、イヌリン、アルギナート、カラギーナン硫酸化デキストラン、特にSaccharomyces cerevisiaeといった酵母を由来とするベータグルカン、およびエンドウマメのさやといったエンドウマメ、オオムギ、コムギ、オートまたはイネの繊維、またはそれらの食物繊維の加水分解物である。当該線維は、経管摂食(tube feeding)に効果的な量の包含を許容するために、低い固有粘度を有すべきである。製剤の最終液体形態の粘度は、20℃、秒間100で測定した場合、1 -30 cPである必要がある。天然由来の線維の加水分解、または天然由来の線維の特定の単離物の選択によって得られたオリゴ糖の使用が推奨される。有効量は、典型的に、成人に対して、一日の投与当り、1 - 30 g、好ましくは1.5 - 20 gおよびより好ましくは1.8 - 15 gの食物繊維である。液体製剤中の量は、典型的に、炭水化物画分の0.05 - 4.0 wt%、好ましくは0.075 - 2.5 wt%およびより好ましくは0.09 - 1.5 wt%、特に0.1 - 1.0 wt%である。乳児に対する量は、体重を用いて補正することで計算できる。驚くべきことに、特にフスマ(wheat bran)または低メチル化ペクチンが有効な食物繊維であることがわかった。上述のとおり、レジスタントスターチ(resistant starch)は、線維組成物の重要な部分である。
【0093】
[脂質画分]
脂質画分が含まれる場合には、大部分が消化可能であり、特に、グルコース均等物と比較してアスパラギン酸塩画分の、消化率および吸収率を損なわない状態であるべきである。
【0094】
脂質画分の脂肪酸は、主に18以上の炭素原子の鎖長を有する、いわゆる長鎖脂肪酸である。特に、脂肪酸の50 wt%、好ましくは60 - 90 wt%およびより好ましくは65 - 80 wt%が、LC-脂肪酸、すなわち18以上の鎖長を有する。トランス構造を有する、不飽和脂肪酸の量は、脂肪酸の総量の0.8 wt%未満、好ましくは0.5 wt%未満およびより好ましくは0 - 0.3 wt%である。中鎖トリグリセリドの量は、脂肪酸の総量の0 - 20 wt%および好ましくは0 - 10 wt%の値をとり得る。アラキドン酸の量は、相対的に小さく:脂肪酸の重量の0 - 5%および好ましくは0 - 3%である。これにより、亜鉛とアラキドン酸の重量は、0.5より大きく、および好ましくは0.8より大きくなるだろう。製剤中の脂肪酸の総量は、脂質画分の抽出およびAOAC法992.25を用いた脂質画分中の脂肪酸の決定によって、決めることができる。
【0095】
オレイン酸は、脂質画分中の重要な成分である。その量は、脂肪酸の30 - 60 wt%の範囲内である。エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)といった、ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸LC-PUFA’sが相対的に高い。ω-3 LC-PUFA’sの総量は、脂肪酸の0.5 - 20 wt%および好ましくは1 - 15 wt%である。EPAおよびDHAの総量は、好ましくは、脂肪酸の0.5 - 10 wt%、より好ましくは1 - 10 wt%である。飽和脂肪酸の量は、好ましくは、脂肪酸の総重量の10 wt%未満であるべきである。
【0096】
脂質画分は、食品認可(food authorities)によって推奨される、リノール酸およびアルファ-リノレン酸といった必須長鎖脂肪酸を、必要とされる一日の投与量の、0.8 - 1.5倍、好ましくは1 - 1.2倍の量で含む。脂質画分中のω-6 LC-PUFA’sの量は、相対的に小さい。リノール酸の量は、全ての脂肪酸の総量の5 - 35 wt%、好ましくは6 - 25 wt%、より好ましくは7 - 20 wt%でなければならない。
【0097】
脂肪酸は、大部分がリン脂質として含まれることが好ましい。リン脂質の量は、脂質画分の6 - 50 wt%、好ましくは7 - 30 wt%および最も好ましくは8 - 25 wt%である。
【0098】
脂肪酸の重要な原料は、構造化脂質(structured lipids)および天然の油である。天然の油とは、魚油およびクリール抽出物といった海洋性の油、米ぬか油および、オリーブ油および高オレイン酸サフラワー油といった高オレイン酸植物油、ピーナツ油およびカノーラ油またはtrisun-80のような高オレイン酸ヒマワリ油抽出物である。
【0099】
成人および青年のための完全調合乳(formulae)中の脂質の総量は、それゆえ、栄養組成物の30エネルギーパーセント超、好ましくは32 - 60エネルギーパーセント、より好ましくは35 - 50エネルギーパーセントおよび最も好ましくは40エネルギーパーセント超である。製剤が乳児、特に早産児に使用されることが意図される場合、脂質は、調合乳中の全エネルギーの30 - 60%、好ましくは31 - 58%、より好ましくは35%超、最も好ましくは52%超のエネルギーを提供する。このことは、特に、早期乳児のように代謝システムの発育不良を患う乳児にとって、およびインスリン抵抗性または早期肥満もしくは糖尿病を発症する危険性のある乳児にとって重要であり、このことは例えば、これらの障害または疾病の相対的な罹患率から明らかであり、また不安定な免疫系をもった乳児から明らかである。後者の乳児のグループの例は、2型T細胞の活性と比較して、1型T細胞の活性が低い乳児である。このことは、1型T細胞および2型T細胞に特異的なサイトカイン(例として、1型はインターフェロンガンマ、2型はインターロイキン-4または-5)の量を測定し、それらの重量を比較することで決定することができる。インターフェロンと(IL-4 + IL-5)の重量比が異常な(低すぎる)値、例えば1未満の値を示す乳児は、不安定な免疫系を有すると定義され、アレルギーまたはアトピー反応にもつながる可能性がある。
【0100】
[製剤]
本発明による製剤は、多くの形態をとることができる。それは、液体、バー状もしくは粉状といった乾燥製剤、またはプディングといった中間的な水分含量を有する製剤、アイスクリームまたはいくつかの形態の軽食(snack)の形とすることができる。しかしながら、液状形態のものを患者の経管摂食(tube feeding)および少量の飲用摂取(sip feeding)のために使用することが好ましい。製剤は、栄養的に完全とすることができ、また補充的な調合乳(formula)とすることができる。製剤は、身体に血液からのグルコースの取り込みを行わせるために、グルコース均等物を含んだ食事と同時に、またはそのような食事に先立って消費される医薬製剤とすることができる。アスパラギン酸塩に富む栄養製剤または医薬製剤が、食事に先立って消費される場合、グルコース均等物を含んだ食事の最大60分前、好ましくは最大45分前、より好ましくは最大30分前、さらにより好ましくは15分前、および最も好ましくは10分前、特に最大5分前に前記製剤を消費することが好ましい。
【0101】
製剤のモル浸透圧濃度が高くなることは避けるべきである。すぐに使用できる調合乳のモル浸透圧濃度は、典型的に500 mOsm/l未満であり、および好ましくは250 - 400 mOsm/lである。製剤のモル浸透圧濃度は、当該分野にて知られる栄養性製剤のための標準的方法を用いて測定することができる。即時に使用可能なアスパラギン酸塩画分以外に、タンパク質画分中の残りのアスパラギン酸塩均等物は、アスパラギン酸塩が未処理のタンパク質として存在する場合のように、幾分か、より穏やかな消化を期待できる。食味の理由のため、未処理のタンパク質を原料として用いることがより好ましい。
【0102】
成人および青年期のための液体完全調合乳は、典型的に、70 kgの体重の人に対して一日当り2000 kcal、つまり一日当り約28 kcal/kg体重を提供するよう設計される。投与される調合乳の体積は、それゆえそのエネルギー密度に依存する。製剤が、1.0 kcal/mlのエネルギー密度を有する場合、一日に必要な投与量の放出のためには、2 Lが必要となる。エネルギー密度が1.25 kcal/mlである場合、約1600 mlが一日に必要となる。
【0103】
典型的に、栄養組成物は、少なくとも0.95 kcal/ml、好ましくは少なくとも1.0 kcal/ml、より好ましくは少なくとも1.1 kcal/mlのエネルギー密度有し、および0.046:1 - 2:1、好ましくは少なくとも0.050:1、より好ましくは0:060:1のアスパラギン酸塩均等物とグルコース均等物の重量比を有する。しかしながら、栄養組成物が乳児に投与される場合、該組成物は、好ましくは0.8 kcal/ml未満、より好ましくは0.7 kcal/ml未満、最も好ましくは0.6 kcal/ml未満のエネルギー密度を有する。組成物の投与によって、0.037:1 - 2:1、好ましくは少なくとも0.040:1、より好ましくは少なくとも0:045:1および最も好ましくは少なくとも0:050:1のアスパラギン酸塩均等物とグルコース均等物の重量比が達成される。ここにおいて、asp:グルコースの重量比は、組成物中のアスパラギン酸塩およびグルコース均等物の量、ならびに組成物の投与後60分以内の食事によって供給されるアスパラギン酸塩およびグルコース均等物の量を基準としており、その数字はそれぞれ、タンパク質および炭水化物の総重量を基準としている。
【0104】
乳児に対して、一日に供給されるエネルギーの量は、体重3 kgの乳児にとって540 kcalであり、つまり一日当り180 kcal/kg体重である。このエネルギー量は、体重の増加とともに急激に減少し、数月齢後には約60 kcal/kg体重となる。製剤が、完全栄養を補助するサプリメントであり、低血糖症および高血糖症および/またはインスリン抵抗性を予防する場合、一日当りに供給されるエネルギーの量は、100-800 kcal、好ましくは180-600 kcalおよびより好ましくは190-560 kcalの範囲となるだろう。製剤が、現存の食事との組み合わせによる栄養組成物または医薬組成物として使用される場合、供給されるエネルギーの量は、一投与当り、10-200 kcal、好ましくは15-160 kcalおよびより好ましくは20-140 kcalとなるだろう。このことはまた、製剤が、グルコース均等物を含む食事と同時に、またはそのような食事に先立って用いられる場合に適用される。
【0105】
乳児用調合乳(formulae)は、幼児および出生から生後24ヶ月の乳児の完全栄養として意図される栄養性製剤であって、6-12.5 en%のタンパク質画分、38-50 en%の消化性炭水化物、40-52 en%の脂質画分、ならびに公式な推奨にしたがう全ミネラル、微量元素およびビタミンを、推奨される一日の投与当りの取り込みの0.8 - 1.2倍の量で含む栄養性製剤と定義され、および55-76 kcal/mlのエネルギー密度を有する。
【0106】
栄養組成物は、少なくとも二つの分離した部分を含むことができ、一つの部分は、タンパク質に富む画分および相対的に炭水化物に乏しい画分および脂肪に乏しい画分を含み、別の部分は、相対的に大量なグルコース均等物および第一の部分に比べ重量的に少ないタンパク質を含む。これらの部分は連続的に投与され、タンパク質に富む画分を含む部分は、炭水化物に富む画分の投与の前60分以内に投与される。好ましくは、タンパク質に富む画分および炭水化物に富む画分の投与の間の時間は、45分未満、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満、さらにより好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満であり、ここにおいてタンパク質に富む画分を含む部分が最初に投与される。これらの二つの部分はともに、本発明による栄養性製剤の上述の基準を満たす。
【0107】
連続的な投与の場合、第一の部分中のタンパク質レベルは、典型的に、エネルギーの観点において、消化性炭水化物の量よりも大きい。典型的に、タンパク質レベルは、第一の部分で40 - 80 en%であり、他方で、第一の部分中の炭水化物画分は、第一の全エネルギー含量を基準として60 en%未満、好ましくは50 en%未満、最も好ましくは40 en%未満である。液体調合乳(formulae)において、この第一の部分は、脂質を含んだ第一の部分の総重量を基準として、8 - 10 wt%のタンパク質画分、および5 - 15 wt%、好ましくは6 - 12 wt%の消化性炭水化物を含むだろう。相対的に乾燥した形態において、第一の部分は、軽食(snack)またはバー状の形態をとることができる。食物繊維を第一の部分の乾燥質量の3 - 30 wt%の量で含むことが好ましい。
【0108】
第二の部分は、グルコース原料を含むあらゆる普通の食品とすることができる。典型的に、この第二の部分は、第二の部分のエネルギー含量を基準として、10 - 32 en%、好ましくは14 - 30 en%およびより好ましくは18 - 22 wt%のタンパク質を含むだろう。炭水化物は、第二の部分の25 - 70 en%、好ましくは30 - 60 en%、より好ましくは34 - 56 en%、最も好ましくは38 - 54 en%を占める。脂質画分は、その80 - 100%が第二の部分から生じ、その量は典型的に20 - 130グラムの脂質となる。
【0109】
タンパク質、炭水化物および脂質の、製剤のエネルギー含量に対する寄与は、タンパク質均等物または炭水化物均等物の4 kcal/gという係数(factor)、およびリン脂質を含む脂質の9 kcal/gという係数を用いて、当該分野において既知の方法によって算出される。
【0110】
経腸組成物が、成人および青年に対して、1800kcal/日超、より好ましくは1900 - 2500kcal/日、好ましくは約2000kcal/日で提供されることが好ましい。組成物が早産児の投与に使用される場合、該組成物は、225kcal/日超、好ましくは300 - 1000kcal/日で提供される。
【0111】
[ミネラル等]
本発明による栄養組成物は、任意に、上述のタンパク質、消化性炭水化物および脂質画分以外のその他の成分を含む。以下に好ましい成分および投与量を含めて、いくつかの成分を述べる。
【0112】
タンパク質画分のアルギニンレベルが相対的に低い、例えばタンパク質画分の4.0 wt%未満および特に3.0 wt%未満である、これらの実施態様において、製剤中にL-オルニチンおよび/またはL-シトルリンを含むことが推奨される。アルギニン、オルニチンおよびあらゆるシトルリンの総量は、タンパク質画分の少なくとも3.0 wt%、特に少なくとも4.0 wt%であることが好ましい。L-オルニチンまたはその均等物を、L-オルニチン/シトルリンの比が、1より大きい状態で、好ましくは5より大きい状態で使用することが好ましい。L-異性体が好ましい。推奨される量は、タンパク質画分の重量を基準として、0.3 - 5 wt%および好ましくは0.5 - 4 wt%である。L-オルニチン + L-シトルリンとL-アルギニンの重量比は、0.07:1 - 2:1の範囲内、および好ましくは0.12:1 - 1.2:1である。未処理のタンパク質および/またはその加水分解物を含んだ製剤中の、L-オルニチンとL-アルギニンの比は、それゆえ、0.11-1.1の範囲であり、このましくは0.2-0.9の範囲であるだろう。L-オルニチンはまた、食肉または肝臓といった未加工の材料からの抽出物として、含めることができる。適した形態とはまた、塩であり、特に例えばアスパラギン酸塩といったアミノ酸などの有機酸との塩、またはリンゴ酸もしくはクエン酸もしくはα-ケト-イソカプロン酸(もしくは2-オキソ-イソカプロン酸)といった有機酸との塩である。
【0113】
特に補充的なメチオニン均等物との組み合わせによる、L-オルニチンおよび/またはL-シトルリンまたはそれらの均等物の付加的な包含によって、内因性のポリアミン生合成速度が保証される。付加的なオルニチンまたはその均等物の、調合乳への包含は、高血糖症またはインスリン抵抗性を患う人の腎臓機能を補助する。これらの効果をさらに増大させるために、製剤中に炭酸塩または炭酸水素塩を含めることが重要である。適した形態は、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅およびカルシウムといった金属との塩である。炭酸銅、炭酸カルシウム、およびナトリウム、マグネシウムおよびカリウムの炭酸水素塩が推奨される。調合乳のpHは、6.3 - 7.1の範囲および好ましくは6.4 - 6.8の範囲内になければならない。その対イオンを含む、炭酸塩および炭酸水素塩の量は、調合乳の乾燥質量100 g当り、0.8 - 10 g、好ましくは1.0 - 6 gおよびより好ましくは1.2 - 5 gの範囲内でなければならない。
【0114】
腎臓の合併症または腎臓機能の障害をもたらす、インスリン抵抗性または血中グルコースレベルの増大に苦しむ患者において、ビオチンのレベルは、40 - 4000μg/100 mlの間のレベルまで増大させなければならない。マグネシウムは、本発明による液体の製剤中に、4 - 20 mg/100 mlの濃度で含めるべきである。本発明によるこの実施態様におけるタンパク質レベルは、化合物の10から22エネルギーパーセントの間でなければならない。
【0115】
本発明による栄養性製剤は、経口的に消費されたとき、本質的にホルモン活性を示さない。グルカゴンおよびステロイド性化合物から選択されるホルモン型化合物は、それゆえ、製剤1リッター当りグルカゴン10 mg未満の量にて、存在する。ステロイドのレベルは、典型的に、0.1 ppm未満で、好ましくは検出不能である。
【0116】
タンパク質画分が、2.3:1未満のセリンとグリシンの重量比を示す場合、コリン、ベタイン、ジメチルグリシンおよびサルコシンの群から選択される成分が、特に栄養失調および炎症を患う患者での、高血糖症の治療における有効性および正味のインスリン抵抗性の間の有効性を補助するために、含まれなければならない。これらの成分の一日の投与量は、0.5 g超および好ましくは0.8 g超であるべきである。本発明による液体製剤において、濃度はそれゆえ、0.025 wt%超、または好ましくは0.032-2 wt%、より好ましくは0.04-0.4 wt%および最も好ましくは0.06-0.25 wt%となる。乾燥製剤において、その量は、典型的に0.04-3 wt%であろう。有効性は、C-反応性タンパク質の血中レベルまたは幾つかのサイトカインの血中レベルのように、炎症の循環マーカーを測定することによって立証することができる。
【0117】
製剤が、大規模なメイラード反応、すなわち褐変を、製造の際、特に滅菌の際に示さないことが重要である。このことは、液体製剤中の糖の減少に次いで、カルノシンといった成分の包含の防止によって達成される。製剤中のL-リジンとカルノシンの重量比は、それゆえ、典型的に5:1より大きく、および好ましくは10:1より大きい。
【0118】
亜鉛は、高血糖症および/またはインスリン抵抗性を患う人に対して、必須のミネラルである。亜鉛の量は、典型的に一日の投与量当り、14 mg超、好ましくは18 - 40 mg超、より好ましくは20 - 35 mgおよび最も好ましくは22 - 30 mgである。銅の量を相対的に低く保つこと、例えば、亜鉛と銅の重量比を、7-16:1および好ましくは8-15:1および最も好ましくは9-13:1に保つことが重要である。製剤中の亜鉛が相対的に高い濃度であるにもかかわらず、製剤中の亜鉛とL-ヒスチジンの重量比は、L-ヒスチジンが相対的に高い量であるため、好ましくは0.002:1 - 0.2:1の範囲内である。
【0119】
カルシウムは、100 ml当り40 mg超、好ましくは50-200 mgおよびより好ましくは60-120 mgの量で、有利に含むことができる。
【0120】
マグネシウムは、液体調合乳100 ml当り、20-60 mg、好ましくは25-40 mgおよびより好ましくは28-35 mgの投与量にて、液体製剤中に含めることができる。三リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸水素マグネシウムは、液体調合乳の使用に適したマグネシウムの原料である。
【0121】
ナトリウムレベルは、本発明による液体製剤100 ml当り、100 mg未満、好ましくは50-80 mgおよび好ましくは55-74 mgである。ナトリウムとカリウムの重量比は、典型的に0.3-0.66、好ましくは0.4-0.64およびより好ましくは0.45-0.62であるだろう。
【0122】
クロムまたはバナジウムは、本発明による液体製剤100 ml当り、1 - 50μgの量で含まれるべきである。
【0123】
完全食(complete diets)において、全てのビタミン、ミネラルおよび微量元素を、例えば食品医薬品局(the Food and Drug Administration)によって定められた栄養学的要件を満たすのに十分な量であって、同時に、長期に亘るおよび頻繁な使用による過量服用を避けるため、記載がある場合を除いて、これらの推奨を超えない状態で含むことが重要である。
【0124】
本発明による栄養組成物中にビタミンB6を含むことが好ましい。そのレベルは、好ましくは、高血糖症および/またはインスリン抵抗性の治療における製剤の効果をさらに改善するため、推奨される一日の量の少なくとも二倍になるよう選択される。
【0125】
合成的に作製されたもの、天然原料から単離されたものも含めて、ピリドキシン、ピリドキサミンもしくはピリドキサールまたはそれらの塩、リン酸化物、グリコシル化物またはその他の誘導体が、ビタミンB6の適した原料として使用することができ、特にピリドキシンが適す。成人に対して一日の投与量当り、3.2 - 100 mgおよび好ましくは3.5 - 30 mgのビタミンB6を含むことが好ましい。調合乳(formula)中のビタミンB6の重量は、製剤中のアスパラギン酸塩均等物またはマグネシウムの重量より小さいだろう。典型的に、ビタミンB6の量は、製剤中のアスパラギン酸塩均等物の量の0.01倍未満であり、マグネシウムの量の0.1倍未満である。完全乳児用調合乳(complete infant formula)の場合、ビタミンB6の量は、好ましくは100 kcal当り75μg未満、特に80-120μg/100 kcalである。
【0126】
パントテン酸およびリポ酸を相対的に高いレベルで含むことがさらに推奨される。パントテン酸は、成人に対して、酸またはその塩またはパンテチンまたはパントテン酸として、一日の投与量当り、12 - 300 mgの量、好ましくは14 - 100 mgおよび最も好ましくは18 - 40 mgの量で含むべきである。本発明による液体製剤100 ml当り、該量は、それゆえ、0.6-15 mg、好ましくは0.7-5 mgおよび最も好ましくは0.9-2 mgである。完全乳児用調合乳の場合、パントテン酸の好ましい量は、480μg超、特に500μg - 2.0 mgである。リポ酸は、一日の投与量当り5 - 500 mg、好ましくは10 - 300 mg、および最も好ましくは20 - 200 mgの量で、遊離塩、それらの塩またはより味わいある誘導体といった当該分野において知られる形態で含むことができる。本発明による液体製剤100 ml当り、該量は、それゆえ、0.25-25 mg、好ましくは0.5-15 mgおよび最も好ましくは1-10 mgのリポ酸である。
【0127】
葉酸、その塩またはそのメチル化された誘導体は、成人に対して、一日の投与量当り、300 - 3000μg、好ましくは350 - 2000μg、より好ましくは400 - 1500μgおよび最も好ましくは500 - 1200μgの量で含まれる。本発明による液体製剤100 ml当り、葉酸の濃度は、それゆえ15μg、好ましくは17.5-100μg、より好ましくは20-75μgおよび最も好ましくは25-60μgである。完全乳児用調合乳において、葉酸の好ましい量は、100 kcal当り18μg超であり、特に100 ml当り19-40 mgである。
【0128】
本発明による栄養性製剤が、代謝システムの発育不良を患う幼い乳児に投与されることが意図される場合、リモネンを含むこともまた好ましい。この化合物は、合成的に作製して、または柑橘類といった果実から単離して、純粋な(R)-(+)-リモネンとして得ることができる。この単離は、好ましくは水蒸気蒸留によって行われる。その濃度は、製剤の乾燥物100 g当り、1-1000 mgの幅であるべきである。
【0129】
本発明による組成物は、インスリンと組み合わせて消費することができる。当該組成物は、インスリンの必要とされる投与量を減らし、またインスリン抵抗性の危険性も減らすことがわかった。
【0130】
[治療]
製剤は、血液中のケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇と関連する代謝障害、および/または好ましくはケトン体および乳酸塩の濃度上昇と関連するpHの恒常性の不足の予防および/または治療、およびこれらの代謝障害と関連する二次障害の予防または治療に適している。
【0131】
本発明における代謝障害は、代謝的アシドーシスおよび組織における長期最終糖化反応産物(advanced glycation product)(AGE)形成および/またはメイラード反応生成物形成を含み、この場合において、グリコシル化生成物、特にHbA1cのグリコシル化生成物が血液中および/または組織において観察される。体内中の高濃度のAGEおよびメイラード反応生成物の存在は、痴呆症、網膜症および一過的な虚血性の事故の発生に寄与する可能性がある。
【0132】
本発明における代謝的アシドーシスは、短時間持続的なケトン体および/または乳酸塩レベルの増大によって引き起こされ、および急性な状況で発生し、および典型的に高ケトン血症、(高)ケトン症、ケトアシドーシス、(高) ケトン尿症、高乳酸血症、乳酸尿症といった有機酸尿症および乳酸血症を含む。ケトン体、アンモニア、乳酸塩またはその他の有機酸、ピルビン酸塩、グルコース、低い血液pH値および/または低い二酸化炭素分圧(PCO2)が、その重要な指標である。代謝的アシドーシスの治療は特に、新生児および特に早産児、ならびに術中および術後の患者にとって重要である。
【0133】
本発明による製剤を必要とする哺乳類は、典型的に、導入部分に記載した障害を患っており、特に、アテローム性動脈硬化症および微小血管における問題、脳血管における問題、特に一過的虚血性問題(Transient Ischemic Accidents)、腎疾患、肥満症、小児性肥満症、視力障害、高血圧および組織または臓器の機能喪失、免疫機能の障害、生殖器機能不全、特に性欲減退、特に外傷、手術の後における、または癌といった疾病の重い段階の間における異化作用、感染症、肢における壊疽性の問題、後天性免疫促迫症候群(acquired immune distress syndrome)、代謝性症候群、糖尿病、HbA1Cレベルの増大、慢性炎、慢性閉塞性肺疾患および肝臓疾患の群から選択される二次的疾病または障害を伴う。
【0134】
本発明による栄養組成物または医薬組成物を必要とする哺乳類は、絶食後または食後高血糖、インスリン抵抗性、糖尿病を患っていてよく、また楓糖症といった遺伝性の代謝障害、グリコーゲン合成速度における遺伝性障害、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症、オキソ酸補酵素Aチオラーゼ欠損症またはその他のチオラーゼにおける欠損症を患っていてよく、また妊娠初期(young gestational age)の乳児といった代謝システムの発育不良を患う人であってよい。
【0135】
当該製剤は特に、インスリン抵抗性が重要な役割をもつ女性に適す。
【0136】
当該製剤の効果は、本発明による栄養性製剤の消費後における血液中のグルコースレベルを測定することによって決定することができる。相対的に高濃度の即時利用可能なアスパラギン酸塩を含むタンパク質画分の消費により、摂食後または術後における、グルコース源消費後において観察されるグルコースレベルを減少させるだろう。特に、開示されるような炭水化物画分の穏やかな放出機構は、アスパラギン酸塩と比べて、食事性グルコースのより穏やかな利用可能性を保証する。この効果を達成するための別の方法は、別々のタンパク質画分および消化性炭水化物画分の連続的な投与によって行われ、ここにおいて該タンパク質画分は、該炭水化物画分より先に投与される。グルコースおよびインスリンのクリアランス速度(t 1/2)ならびに定常状態のグルコースおよびインスリンレベルは、モニターすることができる。食事療法の効果は、例えば、高血糖状態の生じた回数とともに、低血糖状態(血糖値が50 mg/100 ml未満)が生じた回数から明らかになる。
【0137】
本明細書において特定されるアミノ酸の包含の有効性は、高血糖症およびインスリン抵抗性を患う人、特に栄養失調の糖尿病患者における、除脂肪体重(lean body mass)の減少を測定することで決定できる。
【0138】
本明細書において特定されるビタミンの包含の有効性は、高血糖症および/またはインスリン抵抗性を患う肥満体の人における、脂肪分解の速度、インスリン抵抗性および除脂肪体重を測定することで検出できる。
【0139】
合併症の危険性は、HbA1cおよび/またはC-反応性タンパク質の血中レベルの減少を測定することでモニターできる。心血管性問題のような典型的な合併症の発生率は、表にすることができる。高血糖症、インスリン抵抗性またはケトン体の血中レベルの増大および付加的な腎臓の問題を患う人においては、血中アンモニアレベルを測定すべきである。
【0140】
ストレスホルモンの放出の増大によるインスリン抵抗性の増大を患う人において、例えば外傷または重い手術を経験した後における血漿中グルコースレベルおよび除脂肪体重の変化を、罹患率および死亡率を含めて測定すべきである。
【0141】
アシドーシスの発症における製剤の効果は、例えば、血液中の気体レベル、炭酸水素塩およびナトリウムのような電解質、ピルビン酸塩、乳酸塩、グルコースおよびpHを測定することでモニターできる。
【0142】
臓器に食事性タンパク質組成物を適応させるため、測定は2日以上の期間に亘って行うことが重要である。それゆえその効果は、患者に依存して、即効性または遅効性となりうる。
【実施例】
【0143】
[実施例1]
50 wt%アルファ-ラクトアルブミンおよび50 wt%ダイズタンパク質単離物から成る、1.0 kcal/ml、17 en%のタンパク質画分、45 en%の炭水化物画分および38 en%の脂質画分を含む、代謝性アシドーシスの予防または治療における経腸的使用のための飲料。さらに、製剤100 ml当り30μgのビオチンおよび10μgのヒドロキシコバラミン、および製剤100 ml当り16 mgのマグネシウム、4 mgの亜鉛および80 mgのカルシウムを含む場合、200 mlの該飲料を一日に2-5回に分けて投与する。
【0144】
[実施例2]
79 wt%のアルファ-ラクトアルブミンに富む乳清、1 wt%のアスパラギン酸塩(aspartate)ジペプチド(アルギニンまたはセリン)および20 wt%のダイズタンパク質単離物を含む、1.0 kcal/ml、22 en%のタンパク質画分、55 en%の炭水化物、23 en%の脂質、100 ml当り50μgのビオチンおよび10μgのビタミンB12を提供するビタミン画分、および本明細書による範囲の濃度にてカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を提供するミネラル/微量元素画分を提供する、組織のラクトースレベルの増大の予防における経腸的使用のための飲料。該飲料は、一日当り0.5-2リッターの量で消費されなければならない。
【0145】
[実施例3]
60 wt%アルファ-ラクトアルブミンに富む乳清および40 wt%のダイズタンパク質、2 wt%のアスパラギン酸塩に富むジャガイモタンパク質を含む、1.0 kcal/mlおよび18 en%のタンパク質、35 en%の脂質および47 en%の炭水化物画分、および100 ml当り20μgのビオチンおよび5 μgのシアノコバラミンを提供するビタミン画分を提供する、高ケトン血症の治療または予防のための経腸的使用のための飲料。該飲料は、200 ml-2 Lの量で消費されなければならない。
【0146】
[実施例4]
63 wt%のダイズタンパク質、15 wt%のアスパラギン酸塩に富むジャガイモタンパク質および20 wt%の乳清タンパク質、2 wt%のアミノ酸(L-リジン、L-メチオニン、L-セリン)を含む、1.0 kcal/ml、20 en%のタンパク質、35 en%の脂質、45 en%の炭水化物、および100 ml当り20μgのビオチン均等物および10μgのビタミンB12を提供するビタミン画分を提供する、肥満体の人による経腸的使用のための飲料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の血液中における、ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸、特にケトン体および乳酸塩の濃度上昇に関連した代謝障害の予防または治療のために、ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによって高いアスパラギン酸塩(aspartate)含量を有する、特定のタンパク質および/またはペプチド画分を使用するための製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な状態において、炭水化物は、消費された後にグルコースに転換されるが、これは身体の第一のエネルギー源である。しかしながら、炭水化物の摂取が、十分に長い期間制限された場合、または炭水化物代謝が妨害された場合、身体は燃料のために、脂肪またはアミノ酸の貯蔵といった、代替のエネルギーシステムを引き出す状態にまで到達する。脂質の代謝において、アセト酢酸塩、アセトンおよびβ-ヒドロキシ酪酸といった、いくつかの代謝産物が生成され、これらの代謝産物はケトン体と呼ばれる。これらの化合物は、多くの周辺組織、特に心臓および筋肉組織の重要な代謝燃料となり、グルコースがない状態ではケトン体が脳の主要な燃料源となる。
【0003】
ケトン体の形成が、哺乳類がそれらを処理できる能力を超えたとき、ケトン体は血液中に蓄積しケトン血症を引き起こす。尿中のケトン体濃度が高い症状はケトン尿症と呼ばれ、これらの両症状は一般にケトン症と呼ばれる。ケトン症または高ケトン血症の状態では、血液中のケトン体レベルが異常に高くなる。重篤なケトン症はアシドーシスをもたらすことがあり、これは、血液中のpHが典型的に7.3未満に下がり、血液中の二酸化炭素分圧(PCO2)が30 mm Hg未満となり、および血液中の重炭酸塩レベルが15 mm Hg未満となる症状である。アシドーシスの病徴は、倦怠感、脱力感、食欲不振および嘔吐を含み、および最終的に昏睡、さらには死さえもたらす可能性がある。
【0004】
インスリン抵抗性または嫌気的条件下にて起こる可能性のある炭水化物代謝の障害の間、ピルビン酸塩は、しばしばクレブス回路中間体へと十分に代謝されず、代わりに少なくとも乳酸へ部分的に代謝される。乳酸の蓄積は、局所的なレベル、例えば組織または筋肉で起こる可能性があり、このことは細胞機能の代謝障害および痛みを引き起こすと考えられ、また全身的に起こりアシドーシスを引き起こす可能性がある。乳酸アシドーシスをもたらす炭水化物代謝の障害は、妊娠初期(young gestational age)の乳児の一部に起こる可能性がある、肝臓障害またはその場合における酵素機能の発育不全のどちらかによって、肝機能不全に関連しうる。乳酸アシドーシスにおいて、血液中の乳酸塩のレベルの条件は典型的に2 mmol/l超である。高乳酸血症(hyperlactacidemia)と重篤な乳酸アシドーシスは、血液中の乳酸塩濃度によって、つまり通常約5 mol/lで区別されることが一般的である。
【0005】
乳酸アシドーシスまたはケトアシドーシスに加えて、代謝性アシドーシスのグループに属す、有機酸尿症(organic acidurias)のグループ(約25-30の異なるタイプ)が存在し、これは有機酸が血液中および尿中に蓄積するという症状を示す。
【0006】
ケトン症は、高度の内因性生合成および/または排除もしくは代謝における障害によって起こりうる。重篤なエネルギー栄養失調またはタンパク質-エネルギー栄養失調を患う多くの人々はまた、ケトン症の一形態を経験しており、またケトアシドーシスと呼ばれる、さらに重篤な形態(ケトン体血液中レベルが7 mmol/l超)を経験している。糖尿病患者もまた頻繁に、ケトン体レベルの異常な上昇を経験している。ケトン症またはさらにケトアシドーシスは、先天的または一時的な代謝のエラーによって起こり、例えば、グリコーゲン合成速度の遺伝性障害における、カエデシロップ尿症の場合に見られるような、分枝鎖代謝(branched chain metabolism)のエラー、または代謝において特定のタイプの遺伝的エラーを有する人におけるエラー、例えば、プロピオン酸尿症(propionic acidemia)、イソ吉草酸尿症、メチルマロン酸尿症、オキソ酸補酵素Aチオラーゼ欠損またはその他のチオラーゼ活性における欠損を患う人、および妊娠初期(young gestational age)の乳児のような代謝システムの発育不良を患う人におけるエラーによって起こりうる。
【0007】
血中グルコースレベルが正常濃度に比べて増大した代謝状態である高血糖症を患う人においても、ケトン症が関与しうる。これらの高い血液中グルコースレベルにも関わらず、インスリン刺激性のグルコースの細胞への移行が、どういうわけか損なわれるため、細胞は「飢餓する」。高血糖症を患う人の例は、いわゆる代謝症候群またはシンドロームX、肥満ならびにI型、II型および妊娠性糖尿病のようないくつかのタイプの糖尿病に患っていると診断される人である。特に、インスリン放出の障害または「インスリン抵抗性」を患う人は、しばしばケトン症の状態となるだろう。
【0008】
炭水化物代謝障害に起因する長期高血糖症は、好ましくない最終糖化反応産物(advanced glycation products)(AGE)の形成の増大をもたらすだろう。この形成は、リジンが有するような一級アミノ基などのタンパク質の反応性アミノ基と、特に、糖の還元によって生じるようなアルデヒドとの間の反応によって起こる。このようにして、カルボキシメチル化リジンが生じる。酵素および構造タンパク質といった内因性タンパク質のメイラード型反応は、それらのタンパク質の機能を損ない、臓器全体または組織全体の望ましくない機能喪失をもたらす。これらの合併症は特に、大血管障害および微小血管障害といった、心血管性の問題、肝臓、膵臓、腎臓、皮膚、眼に関する問題であり、また妊娠中の胎芽病も、しばしば糖尿病患者にみられ、および老齢の人々においても多少みられる。
【0009】
ケトン症がグルコース代謝障害によって引き起こされる場合、インスリンまたは、グルコース、キシリトール等といった糖の投与によって治療される。しかしながら、上述の通り、ケトン症が必ずしもグルコース代謝障害またはAGE形成に関与しているわけではなく、関与する場合であっても、ケトン体濃度の減少に対するこれらの糖およびインスリンの効果はしばしば一過性であり、短い期間しか続かない。
【0010】
高乳酸血症(Hyperlactacidemia)は、細胞呼吸における障害、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性、クレブス回路、呼吸鎖の異常が原因となり、またはグリコーゲン代謝、糖新生および脂肪酸酸化における障害を含む、肝機能における問題が原因となりうる。乳酸血症(Lactic acidemias)はまた、特に尿管における慢性的感染症、慢性的下痢および組織低酸素症の状態の間にみられ、これらの症状は、血液供給が妨げられる外科手術または外傷的経験、また一部の新生児で見られるような代謝システムまたは解剖学的システムの発育不良にて起こるような、虚血的な状態にて起こりうる。高乳酸血症の間、血液中の乳酸塩とピルビン酸塩の重量比は、典型的に約0.35:1である。それは、感染症、重篤な異化反応、臓器機能不全および組織虚血を含む様々な後天的な環境においてみられ、またいくつかの遺伝性代謝障害においてもみられる。それは、小児科学において、共通の疾病の病徴である。ケトン尿症、高乳酸血症、および高アンモニア血症、またさらに、ピルビン酸塩、グルコース、血液中の空気、電解質およびpHの異常値もまた、患者の代謝的な状況の重要な指標である。
【0011】
血中のケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇、および/または哺乳類の組織における最終糖化反応産物(advanced glycation products)および/またはメイラード反応生成物の濃度上昇に関連する代謝障害の予防または治療のための、栄養性製剤、サプリメントまたは食事療法の必要性が存在する。好ましくは、栄養性製剤またはサプリメントの消費は、その快い感覚刺激的性質によって遵守しやすくあるべきであり、普通の日常生活および食べること/飲むことの習慣に適すべきであり、望ましくない副作用が生じるべきでない。
【0012】
新生児および特に早期産児は、しばしば代謝システムの発育不良を患うことがあり、短期間の間に新たな栄養学的療法に適応する必要がある。最初の数日および数週間の間に、例えば酵素の発現、肝臓、膵臓、腸および腎臓といった臓器の能力、および腸の量に関して、劇的な変化が彼らの身体のなかで起こる。栄養学的習慣が、彼らの代謝能力に順応しない場合、血液中の乳酸塩、ケトン体、アンモニアおよびpHのレベルが、異常に高くまたは低くなるといった障害および疾病がみられ、しばしば医学的処置が必要となる。
【0013】
ケトンはまた、大量の脂質または過度の分枝鎖アミノ酸が消費されたときに形成される。特に、脂質が、成人に対して40 en%(エネルギー%)超、早産児に対して52 en%超を供給する、完全栄養調合乳(complete nutritional formulae)を消費した場合、ケトンが形成される可能性がある。完全栄養調合乳における分枝鎖アミノ酸の量が高い場合、例えば、100 g当りに24 gさらには26 gを超えるアミノ酸が存在する場合、同様の問題が生じる。成人のための完全栄養性製剤は、一日当り、80 gを超えるタンパク質および1800 kcalを超えるエネルギーを提供する。早産児にとって、完全栄養は、一日当り6 gのタンパク質および225 kcalのエネルギーを提供する。
【0014】
血液中のケトン体濃度とアラニン濃度の間の逆の相関が、当該分野において報告されてきた。Nosadini, R.らは、ラットによるモデル実験について報告しており(Biochem J (1980), 190, 323-332)、その中で、大量のアラニン消費の後に、血液中のケトン体レベルが減少することを示している。この積極的な効果は、増大したオキサロ酢酸の利用能に部分的に起因しており、つまり、クエン酸形成が増大しおよびミトコンドリア内アセチル-CoAのケトン体生成への利用能が減少することに起因していると考えられた。
【0015】
この効果は、飢餓状態のラットに1時間当り、kg体重当り6 mmol(= 0.69 g)という非常に大量のアスパラギン酸塩(aspartate)を48時間投与することによって、部分的に擬態され、一方で、半分の投与量では、血液中のケトン体濃度において何れの有意な効果も得られなかった。70 kgのヒトに対する、対応する投与量、つまり一日当たり約193 gのアスパラギン酸塩の投与は、正常な食事の消費をひどく損ない、ならびに患者の遵守しようとする意思を強く必要とする。
【発明の概要】
【0016】
ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによる高濃度のアスパラギン酸塩(aspartate)均等物、より好ましくは、特にグルタミン酸塩(glutamate)均等物が相対的にない状態でのビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせによるアスパラギン酸塩均等物が、哺乳類の身体において、特に疾病または外傷のある状態において、ケトン体および/または乳酸塩の代謝を改善することがわかっている。結果として、ケトン体および乳酸塩のレベルを減少させることができ、非生理的に高い酸性度を正常化することができる。
【0017】
このように、ケトンおよび乳酸塩の代謝障害、すなわち、ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇および/またはpHの恒常性の不足、特に疾病、外傷または代謝的負荷(metabolically stressed)を負った状態の哺乳類における、血中ケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇を治療および/または予防するための経腸栄養組成物または医薬組成物を提供することが本発明の目的であり、該組成物は、ビタミンB12および/またはビオチンとの組み合わせにて、好ましくはグルタミン酸塩均等物が相対的にない状態で、アスパラギン酸塩均等物を大量に含む。
【0018】
「ケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇」および「ケトンおよび乳酸塩の代謝障害」とは、アセト酢酸塩、アセトンおよびβ-ヒドロキシ酪酸を含むケトン体の血液中濃度が0.5 mmol/lより高く、および乳酸塩の血液中能濃度が2 mmol/lより高い状態と理解される。
【0019】
前記組成物は、好ましくは、タンパク質画分の総重量を基準として、少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分を含む。
【0020】
アスパラギン酸塩均等物の少なくとも一部が、少なくとも12.0 wt%、好ましくは少なくとも12.3 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むアスパラギン酸塩源によって提供されることが好ましい。好ましくは、前記タンパク質画分は、さらにグルタミン酸塩均等物を、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比(asp:glu)が0.41:1と5:1の間となるように含む。
【0021】
少なくとも12.0 wt%で含まれるそのようなアスパラギン酸塩源は、未処理のタンパク質、タンパク質単離物、濃縮物または加水分解物、および/または遊離アスパラギン酸塩均等物でありうる。前記少なくとも12.0 wt%で含まれるアスパラギン酸塩源が、タンパク質、タンパク質単離物、加水分解物の濃縮物である場合、タンパク質画分の5-100 wt%、より好ましくは8-70 wt%、より好ましくは10-60 wt%の量で、それが含まれることが好ましい。少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩を含む2以上のタンパク質が存在する場合、上記の数は、これらのタンパク質の総和に対して適用される。アスパラギン酸塩源が、遊離アスパラギン酸塩均等物から形成される場合、これらは、好ましくは0.2-9 wt%の量で、より好ましくは0.5-6 wt%の量で存在する。
【0022】
上述の使用のための、15-22 en%のタンパク質画分および25-50 en%の炭水化物画分を含む経腸組成物を提供することが本発明の目的であり、前記タンパク質画分は、タンパク質画分の総重量を基準として10.8-30 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含み、および前記組成物はさらに、ビタミンB12およびビオチンのうち少なくとも一つを含む。
【0023】
ケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇および/またはpHの恒常性の不足、特にケトン体および/または乳酸塩の濃度上昇の治療および/または予防を、それらを必要とする哺乳類に対して行う方法であって、本発明による経腸栄養組成物または医薬組成物を該哺乳類に投与することを含む方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の詳細な説明】
【0024】
[アスパラギン酸塩(aspartate)、グルタミン酸塩(glutamate)]
アミノ酸である、アスパラギン酸、アスパラギンおよびグルタミン酸およびグルタミンは、哺乳類の身体にはこれらのアミノ酸を必要なときに合成する代謝能力が備わっており、哺乳類において非必須アミノ酸と考えられている。生理学的に活性な異性体はL体であり、内因性アミノ酸は、典型的に、これらのケト-アナログである、オキサロ酢酸塩(アスパラギン酸塩に対する)およびアルファ-ケトグルタル酸塩(グルタミン酸塩に対する)と平衡状態にある。アスパラギンおよびグルタミンは、体内で加水分解されることで、すなわち、それぞれアスパラギナーゼおよびグルタミナーゼという酵素と相互作用しアンモニア基が放出されることで、それぞれアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩となることができる。アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩は時折、神経毒とみなされる。
【0025】
標準的なアミノ酸含量の分析方法を適用する場合、アスパラギンおよびグルタミンは容易に加水分解される。このことが、タンパク質のアミノ酸組成において、アスパラギンの量を独立に得られず、代わりにアスパラギンおよびアスパラギン酸塩の総量が得られる理由である。同様のことがグルタミンにも当てはまる。
【0026】
この文章の目的において、「アスパラギン酸塩均等物」とは、該均等物が、経口的にまたは経腸的に、例えば経管摂食(tube feeding)によって消費された状況において、直接または肝臓によって消化、吸収、および代謝的転換を受けた後、体内にてL-アスパラギン酸塩を放出することができる組成物として定義される。アスパラギン酸塩均等物の例としては、合成された、または天然原料から抽出された、L-アスパラギン酸および/またはL-アスパラギン、遊離アミノ酸、遊離アミノ酸の塩の形態、例えば、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウムといった金属イオンとの塩、またはその他のアミノ酸、カルニチン、タウリンといったその他の化合物との塩、またはコリンもしくはベタインといった四級アンモニウム化合物、カルボン酸部位の一つに結合したアシル部位を含む化合物といったエステル型のアミノ酸、またはピルビン酸といった有機分子からできるエステル、およびアルキル基またはアシル基が一級窒素原子に結合した遊離アミノ酸の誘導体を含む、タンパク質またはペプチドである。このように、アスパラギン酸塩均等物は、R1-NH-CH(COR2)-[CH2]n-CO-OR3またはR1-NH-CH(COR2)-[CH2]n-CO-NHR3であり、ここにおいてn = 1、R1がH、(置換)アルキル、またはアシル(C-ペプチジルを含む)、R2がOH、OR3、NHR3またはN-ペプチジル、およびR3がH、(置換)アルキルまたはアシルである化学式を有する何れかの化合物、ならびにその陰イオン塩および陽イオン塩および双性イオンを含む。同様なことが、n = 2という例外を除いて、グルタミン酸塩にも当てはまる。前記ペプチドは、好ましくは未処理のタンパク質の加水分解によって得られる。ケトアナログであるオキサロ酢酸塩およびその誘導体は、生じうる技術的(加工(processing))問題および安定性の問題のために、栄養製剤中に包含するのにあまり適さない形態である。
【0027】
投与量は、L-アスパラギン酸のグラム量で与えられる。代用の化合物の対応する投与量は、同じモル量を用いて、該代用の化合物の分子量に対して補正することで算出できる。この計算において、ペプチドおよびタンパク質における残基は、アミノ酸鎖中で水分子を欠くことに対する補正がなされる。全ての均等物は、その完全な形態、すなわち水分子を含む、加水分解された形態における総重量に寄与する。
【0028】
「グルタミン酸塩均等物」は、アスパラギン酸塩均等物の場合と同様に定義される。それらは、合成された、または天然原料から抽出された、L-グルタミン酸および/またはL-グルタミン、遊離グルタミン酸塩およびグルタミンアミノ酸、遊離アミノ酸等の塩の形態を含むタンパク質またはペプチドを含む。N-アセチルグルタミンおよびN-アセチルグルタミン酸塩もまた、適した形態である。本明細書および請求項を通して、投与量は、L-グルタミン、その均等物のグラムにて与えられ、ペプチドおよびタンパク質成分の場合は、欠いている水分子に対して補正が成されて、同様に与えられる。
【0029】
アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩均等物の量は、栄養組成物または医薬組成物の全体を基準として計算される。異なる部分からなる組成物の場合、異なる部分におけるそれらの均等物の量が合算される。
【0030】
本文章を通して、「遊離アスパラギン酸塩均等物」または「遊離グルタミン酸塩均等物」は、アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン酸塩およびグルタミン、およびそれらの遊離酸、ならびにその陰イオン性の形態およびアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩といった塩、および双性イオン種を含むと解され;前記酸は、それらの酸名またはそれらの陰イオン名にて、例えばそれぞれ、アスパラギン酸またはアスパラギン酸塩およびグルタミン酸またはグルタミン酸塩として、区別なく言及される。遊離アスパラギン酸塩均等物および遊離グルタミン酸塩均等物はまた、それぞれ少なくとも1分子のアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩を含むジペプチドを含む。該ジペプチドはアスパラギン酸塩源およびグルタミン酸塩源として役立ち、およびそれらが使用される濃度範囲において、無関係な生物学的活性を有すべきではない。
【0031】
しかしながら、特にアスパラギン酸塩均等物が遊離形態、すなわちオリゴペプチドまたはポリペプチドでない場合には、加工(processing)の間の望ましくない副産物の生成を防ぐために、L-アスパラギンまたはその誘導体の代わりに、L-アスパラギン酸またはその誘導体を使用することが好ましい。L-アスパラギン酸の適した形態は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛およびマグネシウムといった金属との塩、またはL-リジンおよびL-ヒスチジンといったアミノ酸との塩である。
【0032】
アスパラギン酸塩の量は、栄養性製剤の9 wt%を超えてはならず、好ましくは6 wt%未満であってはならず、および特に、タンパク質画分を液体の形態で患者に投与する場合、電解質の不均衡を避けるために、個々の独立したアスパラギン酸塩の量は4.8 wt%を超えるべきでない。例えば、カリウムの量は、典型的に100 ml当り、400 mg未満であり、好ましくは50-250 mgであり、最も好ましくは100-180 mgである。マグネシウムの量は、典型的に100 ml当り、200 mg未満であり、好ましくは10-120 mgであり、より好ましくは12-80 mgである。1以上のアスパラギン酸部分を含むジペプチドもまた適しているが、好ましい実施態様ではない。さらに、代わりとなる原料は、サトウキビからの抽出物といった植物性抽出物であり、特にアスパラギン酸塩およびベタインに富んだ原料またはジャガイモからの抽出物である。少なくとも一部が加水分解されることで、アスパラギン酸塩画分は、より急速に患者に利用可能な状態となる。
【0033】
血液中のケトン体、乳酸塩および有機酸の濃度上昇に関連した障害と闘う重要性のために、アスパラギン酸塩均等物の量をさらに増やすことができるが、タンパク質画分中に95 wt%より高く含むべきでない。タンパク質画分中には、タンパク質画分の重量を基準に、好ましくは少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩、好ましくは11.0-70 wt%、より好ましくは11.5-50 wt%、さらにより好ましくは11.8-45 wt%、さらにより好ましくは12.0-40 wt%および最も好ましくは12.5-36 wt%、特に12.8-30 wt%、さらに特に25 wt%未満のアスパラギン酸塩均等物を含む。13.0 wt%超、または14.0 wt%超のアスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分は、特に好ましい。
【0034】
本発明によるタンパク質画分は、好ましくは、体内ですばやく消化されおよび吸収され、それゆえ利用可能であるアスパラギン酸塩画分を含む。このことは、アスパラギン酸塩の少なくとも一部を、すばやく胃を通過する形態にて含むことで達成することができ、ペプシン、トリプシンおよびキモトリプシンといった消化酵素の活性を強く必要としない。一実施態様において、それゆえアスパラギン酸塩均等物の少なくとも一部、好ましくは0.2 wt%、より好ましくは少なくとも0.5 wt%、さらにより好ましくは少なくとも0.7 wt%および最も好ましくは少なくとも1.0 wt%、特に少なくとも1.5 wt%が、遊離アスパラギン酸塩均等物および/または少なくとも一分子のアスパラギン酸塩均等物を含むジペプチドである。
【0035】
そのうえ、本発明によるタンパク質画分は、好ましくは、タンパク質画分の重量を基準として0.2-30 wt%、好ましくは2.0-25.0 wt%、より好ましくは4.0-22.0 wt%、さらにより好ましくは5.0-22.0 wt%および最も好ましくは8.0-21.0 wt%、特に10.0-20.5 wt%のグルタミン酸塩均等物を含む。時として、12.0-18 wt%のグルタミン酸塩均等物を含むタンパク質画分が好ましい。
【0036】
アスパラギン酸塩均等物(asp)対グルタミン酸塩均等物(glu)の重量比が相対的に高い場合、そのことは本発明による有利な効果をもたらす。特に幼い乳児および赤ん坊のための製剤では、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比は非常に重要である。それゆえ、タンパク質画分は、0.41:1と5:1の間のasp:gluの重量比、好ましくは0.45:1と4:1の間、より好ましくは0.50:1と3:1の間、特に0.53:1と2:1の間のasp:gluの重量比を有する。異なる実施態様において、特に製剤が、多くの大豆由来のタンパク質から成っている場合、つまり、好ましくはタンパク質画分の50 wt%超、より好ましくは60 wt%超、最も好ましくは70 wt%超で成っている場合、より高いasp:gluの重量比が好ましい。そして、タンパク質画分は、好ましくは0.58:1と2:1の範囲、好ましくは0.59:1 - 1.8:1の範囲、より好ましくは0.60:1 - 1.6:1の範囲、さらにより好ましくは0.62 - 1.4:1の範囲、および最も好ましくは0.70:1 - 1.2:1の範囲のアスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比を有する。
【0037】
明らかに、本発明による製剤に課された基準が満たされている範囲が広くなるほど、よりよい結果が得られる。特にこのことは、全アミノ酸組成物において当てはまり、および、グルコース画分と比較して前記製剤の消費者がより急速に利用できる、アスパラギン酸塩均等物の原料の包含において当てはまる。
【0038】
[ビオチン]
ビオチンはまた、その均等物、すなわち、D (+)ビオチンの血液の血漿中レベルを増加させる全ての物質を含むと解される。適した原料は、D-ビオチンの酸性形態(ビタミンH)であり、ならびにその生物学的および技術的に許容可能な塩またはエステルである。ビオチン均等物の量は、二環式ビオチン化合物に等しいモル量を用いて計算することができる。D-ビオチンの食品用に適したグレードの形態(food grade form)が好ましい。
【0039】
経腸的使用のためのビオチンの適した投与量は、一日当り10 - 20000μgの範囲である。ビオチン投与量は、11歳を超える子供および成人に対して、50 - 20000μg/日、好ましくは70 - 2000μg/日、より好ましくは100 - 1000μg/日であり、より幼い子供に対して、10 - 500μg、好ましくは15 - 250μg、より好ましくは18 - 150μgであることが好ましい。早産児には、一日当り6 -200μg、好ましくは8 - 100μg、より好ましくは9 - 50μgの投与量が要求される。疾病が慢性的な性質であり、II型糖尿病を患う多くの患者が血漿中ケトン体レベルの増加を予防または治療するために行うように、経腸的製剤が毎日消費される場合、ビオチンの量は、11歳を超える子供および成人に対しては、一日当り好ましくは50 - 1000μg、より好ましくは70 - 500μg、さらにより好ましくは80 - 300μgであり、一日当り10 - 200μg、より好ましくは15 - 150μg、さらにより好ましくは18 - 100μgである。アシドーシスのように急性の場合、前記量は、好ましくはさらに高い。例えば、11歳を超える子供および成人には、一日当り300 - 20000μg、好ましくは360 - 2000μg、より好ましくは420 - 1000μgの投与量が要求される。より幼い乳児には、40 - 500μg、好ましくは50 - 250μg、より好ましくは60 - 150μgで要求される。早産児には、一日当り9 - 200μg、好ましくは12 - 100μgおよびより好ましくは15 - 50μgの投与量で投与するべきである。
【0040】
組成物は好ましくは、該組成物1 kg当り、ビオチンを、10 - 10000μg、好ましくは15 - 2000μg、より好ましくは20 - 1000μg、特に50 - 500μgの量で含む。
【0041】
本発明による量のビオチンは、血液の血漿中のケトン体のレベルを減少させ、組織におけるAGE生成物およびメイラード生成物のレベルを減少させ、およびより短期間にアシドーシス、例えば乳酸アシドーシス、およびケトンアシドーシス(ketonic acidosis)の程度を減少させ、脂質のプロファイル、特にコレステロールの血漿中レベルを正常化させることがわかっている。
【0042】
[ビタミンB12]
ビタミンB12は、合成シアノコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミンおよびヒドロキシルコバラミンといった適した原料を用いて提供でき、該適した原料は、例えば摘出した臓器、特に肝臓から得られる。例えば、ブタ、ウシ、ニワトリといった家畜における溶解した肝細胞の水溶液濃度が、抽出液100 ml当りコバラミン75μg超の濃度で得られる。
【0043】
組成物は好ましくは、該組成物1kg当り2.5 - 500μg、より好ましくは4 - 100μgおよびさらにより好ましくは8 - 50μgのビタミンB12を含む。
【0044】
製剤が、3 - 50歳であり、胃/腸管に問題がないまたは嚢胞性線維症でない人に投与される場合には、ビタミンB12の有効性を高めるために、乳酸菌、特にLactobacillus acidophilusおよび/またはL. bifidusの培養液にて調製後に前記製剤を発酵させることが有用である。
【0045】
[タンパク質画分:アミノ酸プロファイル]
本明細書及び請求項を通して使用される「タンパク質画分」とは、製剤中の全てのタンパク質、ペプチドおよびアミノ酸と定義され、タンパク質はまた、タンパク質単離物、濃縮物および/または加水分解物である。前記タンパク質画分は、以下の基準を満たす場合に有効である:
アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩の量における条件に加えて、前記タンパク質画分の消化によって哺乳類生物に利用可能となる、メチオニン、分子鎖アミン酸バリン、ロイシンおよびイソロイシン、およびさらにリジン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、スレオニンおよびトリプトファンといった、前記タンパク質画分中の必須アミノ酸の量は、体内の同化作用および適切な機能を保証するために十分な量を提供するべきである。
【0046】
特に、L-メチオニンおよびL-リジンさらにL-ロイシンの量が重要である。患者が腫瘍の成長を患う場合を除いて、L-メチオニンの量は、好ましくはタンパク質画分の1.5 - 4 wt%およびより好ましくは1.7 - 3.3 wt%である。さらにまた、タンパク質画分中のL-メチオニンおよびL-システインの総量は、タンパク質の好ましくは2.7 wt%超、より好ましくは2.9 wt%超および最も好ましくは3.5 - 8 wt%である。正味のインスリン抵抗性(net insulin resistance)および/または高血糖症を患う患者がさらに、腫瘍の成長を患う場合、タンパク質画分はL-メチオニンが補充されないことが好ましい。
【0047】
プロピオン酸血症を患う患者は、異化作用によってプロピオン酸となる、食物中の莫大な量のイソロイシン、バリン、メチオニンおよびスレオニンに対して許容できない。本発明の製剤を併用することで、許容される前記量を増やすことができる。タンパク質画分中のこれらのアミノ酸の総量は、それゆえ前記タンパク質画分の10 wt%超、好ましくは12 - 30 wt%、より好ましくは16 - 26 wt%である。同様の基準が、メチルマロン酸血症を患う人によって使用される製剤に適用される。
【0048】
L-リジンの量は、タンパク質画分の好ましくは5.5 - 15 wt%、より好ましくは6.6 - 12 wt%および最も好ましくは7.1 - 11 wt%である。しかしながら、グルタル酸血症を患う人に投与される場合、リジンの量は、タンパク質画分の7 wt%未満、好ましくは5.5 - 6.9 wt%でなけれればならない。その場合、トリプトファンのレベルは、タンパク質画分の1.7 wt%未満、好ましくは1.3 - 1.6 wt%であるべきである。
【0049】
投与による、インスリンの大量な放出を避けるために、タンパク質画分中のアルギニン、グリシンおよびフェニルアラニンは相対的に低くなければならない。
【0050】
アルギニンの量は、タンパク質画分の好ましくは7.9 wt%未満、より好ましくは7.8 wt%、さらにより好ましくは7.0 wt%未満および好ましくは6.0 wt%未満である。製剤中におけるL-アルギニンとL-リジンの割合は、典型的に0.4:1 - 1.43:1、好ましくは0.5:1 - 1.40:1、および特に幼い乳児に投与される製剤においては、前記割合は好ましくは1:1 - 1.40:1である。製剤中のアスパラギン酸塩均等物とL-アルギニンの割合は、最大の効果および均衡のとれたアミノ酸プロファイルを達成するために、好ましくは1.4超、より好ましくは1.5 - 5、最も好ましくは1.6 - 3.0である。
【0051】
L-グリシンの量は、好ましくは前記タンパク質画分の3.5 wt%超、好ましくは3.6から4.5 wt%の間、およびより好ましくは4.2 wt%未満である。Asp/Glyの重量比は、好ましくは2.8:1 - 100:1の範囲内であり、Asp/Pheの重量比は、2.4:1 - 100:1の範囲内である。特に、L-セリンの量は、少なくとも1.5倍で、L-グリシンの量を上回らなければならない。好ましくは、L-セリン/L-グリシンの割合は、2.0:1より大きく、より好ましくはすくなくとも2.3:1である。このことは、L-グリシンに比べてL-セリンを多く含むタンパク質を加えることにより、および/または合成L-セリンもしくはL-セリンを含むジペプチドを加えることで達成することができる。
【0052】
L-フェニルアラニンの量は、好ましくはタンパク質画分の5.6 wt%未満であり、より好ましくは5.3 wt%未満である。アスパルテームは、その過度の甘さのために、アスパラギン酸塩の原料として適さない。
【0053】
本発明による製剤のタンパク質画分中のロイシンの量は、7.7 - 13 wt%である。イソ吉草酸血症を患う人には、10 wt%未満、好ましくは9.0 wt%未満のロイシンのレベルが望まれる。幼い乳児、早期産児および重篤な肝機能障害を有す人といった、発育不良のおよび/または障害性の代謝機能を有する人にとって、アスパラギン酸塩とロイシンの重量比は、好ましくは0.85:1 - 1.5:1の範囲、より好ましくは0.88:1 - 1.4:1、さらにより好ましくは0.9:1 - 1.1:1および最も好ましくは0.95:1 - 1.04:1の範囲の値である。アスパラギン酸塩およびロイシンの量の釣り合いを保つために、一部のロイシンをアルファ-ケト-イソカプロン酸塩として含むことが推奨される。この成分は、有効性および食味の観点から、アミノ酸またはオルニチンまたはベタインといった成分に対する、優れた対イオンである。
【0054】
本発明によるアスパラギン酸塩均等物のレベルを満たすタンパク質画分を、代謝障害の治療のための製剤の作製において使用することは特に好ましく、ここにおいて、前記タンパク質画分はさらに:a)合計7.7 - 19 wt%の全分枝鎖アミノ鎖;b)7.7 - 9.0 wt%のロイシンおよび3.6 - 4.5 wt%のグリシン;c)合計16 - 26 wt%のイソロイシン、メチオニン、バリンおよびスレオニン;およびd)5.5 - 6.9 wt%のリジンおよび1.3 - 1.6 wt%のトリプトファンのうちの一つを含み、ここにおいてこれらの数値は、前記タンパク質の重量を基準としている。
【0055】
L-ヒスチジンの量は、好ましくはタンパク質画分の2.3 - 4 wt%およびより好ましくは2.5 - 3.2 wt%である。タンパク質画分のアラニンの量は、典型的に4.8 - 8 wt%、好ましくは5.1 - 7.5 wt%およびより好ましくは5.3 - 7.0 wt%であるだろう。
【0056】
グアニジノ基を含む有機分子は、製剤中に有利に含めることができる。しかしながら、遊離アルギニンもしくは塩といったその均等物、またはL-アルギニンを含んだ小ペプチドを含まないことが推奨される。代わりに、グアニジノ-酢酸塩または3-グアニジノ-プロピオン酸塩が、例えば、一日当り2 g未満の量、および好ましくは一日当り0.1 - 1 gの量にて含めることができる。液体製剤において、3-グアニジノ-プロピオン酸塩は優れた原料であり、およびその濃度は、典型的に0.005 - 0.05 wt%であるだろう。それゆえ、トランス硫化経路のいくつかの酵素に対するクレアチンの潜在的有害効果を避けるために、タンパク質画分におけるクレアチン/アスパラギン酸塩均等物の重量比が0.2:1未満、好ましくは0.1:1未満、より好ましくは0.5:1未満となるよう、クレアチンを含まないまたは相対的に少ない量のクレアチンしか含まないことが好ましい。製剤が、高血圧症および勃起不全といったいくつかの血管の疾病といった、高血糖症および/またはインスリン抵抗性のいくつかの二次的な副作用において作用しなければならない、ということが重要である。
【0057】
メチオニンの原料として、合成L-メチオニン、例えばアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛との塩といったその塩、クエン酸もしくはリンゴ酸といった有機酸、またはアスパラギン酸といったアミノ酸を使用できる。合成L-メチオニンよりも、よい味わいのある形態を使用することが好ましい。適した形態は、アシル化メチオニンであり、例えば、EP 0758852およびUS 1560000にて記載された通りのN-アセチルメチオニン、US 5,430,064にて開示されるメチオニンアナログである。少量のメチオニンは、亜鉛メチオニン複合体として適切に添加されてよい。亜鉛の総投与量が、一日当り100 mgを超えることを避けるため、亜鉛メチオニンの量はタンパク質画分の1 wt%未満であるべきである。
【0058】
[実施態様]
本発明の一実施態様において、栄養製剤または医薬製剤は、第一のアスパラギン酸塩に富む原料、すなわち、タンパク質、タンパク質濃縮物、単離物もしくは加水分解物または遊離アスパラギン酸塩均等物のタンパク質画分を含み、および該第一の原料とは異なるアスパラギン酸塩に富む第二の原料のタンパク質画分を含む。ここにおいて、前記第一のアスパラギン酸塩に富む原料は、12.0 wt%超、好ましくは少なくとも12.3 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含む。前記アスパラギン酸塩均等物の第二の原料は、その他のタンパク質とすることができ、好ましくは少なくとも7.8 wt%、より好ましくは少なくとも8.0 wt%、さらにより好ましくは少なくとも9.0 wt%、より好ましくは少なくとも10.0 wt%、さらにより好ましくは少なくとも10.5 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含む。第一の原料としての遊離アスパラギン酸塩均等物の選択は、血液中において、食物からのアスパラギン酸塩のすばやい吸収が要求される場合に特に好ましい。前記第一のアスパラギン酸塩に富む原料のその他の好ましい選択は、ラクトアルブミンが濃縮された乳清およびジャガイモタンパク質である。
【0059】
製剤は少なくとも二つのタンパク質を含むことが好ましい。上述の全ての栄養性の基準を同時に満たすために、植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の組み合わせが最も適していると考えられる。加えて、このように前記タンパク質原料の最終的な食味は、植物由来のタンパク質のみを含むタンパク質を使用する場合に比べ、非常によい。植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の組み合わせの使用はまた、特に、少なくとも一つの該タンパク質が部分的に加水分解される場合に、アスパラギン酸塩均等物の急速な利用可能性をもたらす。タンパク質の可溶性を増加させるために、および加工(processing)の間、特に加熱の間でも安定的な液体を得るために、タンパク質が部分的に加水分解される場合には、特に液体製剤において、それは植物由来のタンパク質であることが好ましい。その場合、動物由来のタンパク質が加水分解されない、またはわずかしか加水分解されなくてもよい。加水分解の度合いは、好ましくは5 - 70%、より好ましくは8 - 60%、最も好ましくは11 - 50%である。植物由来のタンパク質と動物由来のタンパク質の間の重量比は、好ましくは4:1と1:4の間であり、より好ましくは3:1と1:3の間であり、最も好ましくは2:1と1:2の間である。
【0060】
表1に、いくつかの比較データを提供した。これにより、本発明によるタンパク質組成物と個々の当該分野で既知のタンパク質との間の違いを明確にしている。
【表1】
【0061】
表1に記載される通りの、最適なアミノ酸組成が、遺伝性の代謝障害を患う人に対する製剤に応用される場合、製剤中に存在する残りのアミノ酸は、この特定のタイプの患者の、特定の栄養的要求に応じるということが重要である。例えば、前記製剤がカエデシロップ病を患う患者により使用される場合、該製剤は、例えばタンパク質の20 wt%、例えば7.7 - 19 wt%の分枝鎖アミノ酸を少量、含むべきである。
【0062】
いくつかの原材料は、本発明によるタンパク質画分において有効に使用することができる。乳清、ダイズ、ルピナス、ジャガイモ、食肉、肝臓、魚、白マメ(white bean)、ライマビーン、レンズマメ、キマメ、黄色カナダエンドウマメ(yellow Canadian pea)といったいくつかのその他のエンドウマメ種、およびケツルアズキ(black gram)は、グルタミン酸塩均等物と比較してアスパラギン酸塩均等物に相対的に富むタンパク質を、相対的に高いレベルで含む。全ての動物、特にウシ、スイギュウ、ウマ、ヤギ、ヒツジおよびラクダの乳の、特定の乳清画分が、上記の基準を満たす限り使用することが可能である。実際的な理由のため、およびその有益なアミノ酸組成のため、牛乳からの乳清は多くの場合の出発原料として特に適しており、例えばチーズ製造後に生じる甘味乳清(sweet whey)または酸味乳性(acid whey)が挙げられる。後者は、グリコマクロペプチド(glycomacropeptide)がないために、非常に適した原料である。
【0063】
牛乳からの未加工の乳清は、ベータ-ラクトグロブリン、免疫グロブリン、ラクトフェリン、ウシ血清アルブミン、アルファ-ラクトアルブミンおよびその他のいくつかといった多くのタンパク質を含む。純粋なアルファ-ラクトアルブミン、およびこれらのタンパク質の総量が20%超、および好ましくは30 - 90 wt%の間および最も好ましくは33 - 70 wt%で含む乳清画分も、本発明の目的のために有利に使用することができる。非常に適した乳清タンパク質は、表2に例示されるような、少なくとも12 wt%のアスパラギン酸塩均等物および少なくとも0.58のasp:gluの比率の含有物を含む、α-ラクトアルブミン-濃縮乳清タンパク質である。
【表2】
【0064】
ジャガイモタンパク質は、すばやく利用できるアスパラギン酸塩として非常に適した形態であり、加水分解自体は、乾燥した製剤に含まれる場合は、要求されない。しかしながら、液体製剤において、それらの溶解度を増大させるために、加水分解されるべきである。同様なことが、脂肪を含まない栄養性製剤における食肉製剤のように、容易に消化されたタンパク質に当てはまる。8.5から11 wt%のアスパラギン酸塩均等物の含有量および0.55から0.9の間のasp:glu比を有するような、食肉または肝臓タンパク質が非常に適している。
【0065】
本発明による製剤が、食肉、乳清または肝臓から選択される動物由来のタンパク質、およびダイズ、ルピナス、エンドウマメ、特にキマメ、マメ、特に白マメ(white bean)、ライマビーン、レンズマメまたはケツルアズキ(black gram)、およびジャガイモから選択される植物由来の第二のタンパク質を含むことが好ましい。タンパク質画分がダイズ加水分解物もしくは濃縮物、または乳製品を含むことが特に好ましい。乳製品とは、ウシ、スイギュウ、ラクダ、ウマ、ヤギおよびヒツジの乳から単離されたタンパク質などの乳製品タンパク質(dairy proteins)を少なくとも80 wt%含むタンパク質画分と解される。乳の二つの主なタンパク質構成物は、乳清(20 wt%)およびカゼイン(80 wt%)である。より重要な(outbalanced)必須アミノ酸プロファイルをともなう、そのようなダイズタンパク質加水分解物または濃縮物または乳製品は、少量のアスパラギン酸塩に富むタンパク質、例えばエンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質またはアルファ-ラクトアルブミンを用いて、アスパラギン酸塩均等物を強化することができる。そのような第二のタンパク質の量は、好ましくは、タンパク質画分の70 wt%未満、より好ましくは40 wt%未満、さらにより好ましくは30 wt%および最も好ましくは20 wt%である。
【0066】
本発明の要求を満たすタンパク質画分を含むいくつかの未加工の成分は、赤血球凝集素(haemaglutinins)、フィチン酸、タンニン、フラボノイドといった栄養阻害因子(anti-nutritional factors)およびプロテアーゼ阻害剤に富む。タンパク質画分中における、これらの化合物の量は、好ましくは非常に低くあるべきであり、従来技術において記述される通りに、単独または加熱処理(焼く(toasting))と組み合わせて、適した単離方法を応用することで達成することができる。すばやく利用できるアスパラギン酸塩原料が製剤に含まれることを保証するために、未処理のタンパク質またはわずかに加水分解されたタンパク質がアスパラギン酸塩均等物として含まれていた場合に特に、プロテアーゼ阻害剤の量が低いことが重要である。プロテアーゼ阻害剤の量は、例えば、当該分野において既知の方法を用いて、残ったトリプシン阻害剤活性(TIA)として、またはボウマン-バーク阻害剤(Bowman-Birk inhibitors)の濃度として定量化することができる。典型的なレベルは、タンパク質画分1 kg当り、0.12 g未満、好ましくは0.06 g未満、より好ましくは0.02 g未満および最も好ましくは0.007 g未満である。特に、キモトリプシンの阻害剤のレベルは、タンパク質画分1 kg当り、0.01未満、好ましくは0.004未満であるべきである。適切に処理されたダイズタンパク質単離物の量は、タンパク質画分1 g当り、1 - 6 TIAである。
【0067】
言及される通りの成分のいくつかのタンパク質画分を混合することにより、完全栄養のための本発明に従って設定される基準を満たす、アミノ酸プロファイルを得ることができる。本発明の実施態様において、ダイズタンパク質と合成アミノ酸の混合物、またはダイズタンパク質と特定の乳清タンパク質、特にアルファ-ラクトアルブミンに富んだ乳清タンパク質の混合物が好ましい。
【0068】
遊離L-アスパラギン酸またはその塩が製剤に含まれない場合に、少なくとも一つのタンパク質が加水分解されていることが好ましいが、全体のタンパク質の内、重要な部分が、食味を考慮して未処理のままであるべきである。そして、典型的に前記タンパク質画分の30 - 95 wt%が未処理であり、好ましくは40 - 92 wt%、より好ましくは50 - 89 wt%、さらにおり好ましくは少なくとも60 wt%および特に少なくとも70 wt%が未処理である。上述のように、特に感覚受容性の理由および製剤の安定性の理由、例えば熱処理の間および/または有効期間の理由のために、動物由来のタンパク質よりも、植物性タンパク質原料が加水分解される方が好ましい。例えば、95 wt%のダイズタンパク質、および2 wt%のL-アスパラギン酸塩および1 wt%のL-リジンおよび1 wt%のL-メチオニンを混合することで作製されるタンパク質画分は、設定される基準を満たすだろう。
【0069】
ある実施態様において、ダイズタンパク質の単離物または加水分解物の大部分の画分を使用することが好ましい。しかしながら、約10 wt%のアスパラギン酸塩均等物を提供するダイズタンパク質の単離物は、92 wt%未満であること、好ましくは90 wt%未満であること、およびさらにより好ましくは85 wt%未満でさえあることが好ましい。タンパク質画分は次に、すばやく消化される、少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含んだ非ダイズタンパク質または遊離アスパラギン酸塩均等物を用いて、アスパラギン酸塩均等物の要求されるレベルまで補強される。
【0070】
本発明の基準を満たすタンパク質の組み合わせの例は、83 wt%の加水分解ダイズタンパク質濃縮物、乳清タンパク質中に豊富である15 wt%の加水分解アルファ-ラクトアルブミン(Arlaとして提供される)、および0.5 wt%のL-メチオニン、0.5 wt%のL-ヒスチジンおよび1 wt%のL-セリンの混合物、または40 wt%のダイズタンパク質、50 wt%の食肉タンパク質および10 wt%ジャガイモタンパク質の混合物、または50 wt%の加水分解ダイズタンパク質単離物および48 wt%の牛乳乳清画分、0.5 wt%のN-アセチルメチオニン、0.5 wt%L-ヒスチジンおよび1 wt%のセリンの混合物である。
【0071】
乳製品(dairy)を基礎とした組成物を作製することが好ましい場合において、特に高血糖症、インスリン抵抗性または小児肥満もしくは糖尿病を患う幼い乳児またはそれらの発症の危険のある幼い乳児の治療において、乳製品タンパク質または乳タンパク質の量は、タンパク質画分の少なくとも50 wt%、好ましくは少なくとも60 wt%、より好ましくは少なくとも70 wt%および最も好ましくは少なくともタンパク質画分の80 wt%である。そのような組成物は、該組成物が本発明による最低限のasp:gluの重量比の基準を満たすようにするため、アスパラギン酸塩に富む原料で補強されなければならない。
【0072】
多くの成分が、消化管にて消化された後に、アスパラギン酸塩の代謝的な前駆体として役立つことができるにも関わらず、好ましいものはこれらの成分の内のいくつかである。いくつかの原料からの未処理のタンパク質ならびにそれらの加水分解物が推奨される。それゆえ、タンパク質画分が、そのペプチド、未処理のタンパク質および/または加水分解物を含むことが好ましい。
【0073】
グルタミン酸塩均等物は、アミノ酸の要求を満たすよう選択されるタンパク質中に豊富に存在する。しかしながら、全タンパク質組成物における上記の要求を満たす限り、N-アセチルグルタミンを含むことのみが有用であり、N-アセチルグルタミンの総量は、タンパク質画分の重量を基準として、グルタミン酸塩均等物の量が50 wt%超えず、好ましくはグルタミン酸塩均等物の量が2 - 40およびより好ましくは5 - 25重量パーセントの範囲である。後者の条件は、窒素のバランスとともに恒常性の問題を回避するために重要である。しかしながら、高アンモニア血症の場合、このことは優位な役割を担わないため、N-アセチルグルタミンの画分における制限は、患者が高アンモニア血症と診断されたときは適用されない。
【0074】
タンパク質が、食事全体(total diet)の中で、炭水化物と組み合わせて用いられる場合、提供されるタンパク質の量は、消化性(digestible)炭水化物の量より少なくなければならない。完全な栄養としての使用が意図される製剤中のタンパク質の典型的な量は、10 - 30、好ましくは15 - 25およびより好ましくは18 - 22エネルギーパーセント、特に約20エネルギーパーセントで含むだろう。
【0075】
タンパク質画分は、カゼインまたはその加水分解物を含まない、または低い量で含むだろう。というのは、それが、アスパラギン酸塩均等物に乏しい原料であり、本発明の目的に対して、グルタミン酸塩均等物を過度に含むためである。その量は、好ましくは、タンパク質の40 wt%未満であり、より好ましくは25 wt%未満であり、さらにより好ましくは10 wt%未満でありおよび最も好ましくは5 wt%未満である。
【0076】
グルコースのレベルに有益な効果をもたらすために投与される栄養組成物の、成分の一日の量を推定するために、本文章を通して、タンパク質の重量パーセンテージを、以下の計算法を用いて一日の投与量に変換することができる。つまり、患者への全エネルギー供給は、70 kgの体重に対して約2000kcal/日であると考えられる:本発明による典型的な栄養組成物は、約20エネルギーパーセントのタンパク質画分を含むため、患者に投与されるタンパク質画分の全量は、一日当り約400 kcalであり、また重量では約100 gのタンパク質画分である。それゆえ、一日の投与量は、一日当り100 gのタンパク質消費を基準として計算することが可能であり、例えば、必要とされるアスパラギン酸塩含量がタンパク質画分の12 wt%である場合、それは12 gのアスパラギン酸塩の一日の投与量に相当する。必要な場合、これらの量は、必要とされる量にB/70(Bは体重(kg))を乗じることで、実際の体重に適用することができる。乳児に適した投与量の計算には、560 kcalのエネルギー供給および10エネルギーパーセントのタンパク質含量が想定でき、これにより56 kcalまたは14グラムのタンパク質消費とすることができる。つまり、要求されるアスパラギン酸塩含量に0.14 (1/7)という因子を乗じればよい。例えば、必要とされるアスパラギン酸塩含量が、12 wt%である場合、それは12 x 0.14 = 1.68 gの一日の投与量に相当する。必要な場合、これらの量は、B/2(2 kgとは、これらの計算の初期段階において使用した、乳児の体重)を乗じることで、体重に適用することができる。
【0077】
[炭水化物画分]
タンパク質画分を、少なくとも炭水化物画分と組み合わせて使用することは好ましい。食物中の炭水化物の画分は、アスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分と比較して、哺乳類の消化管において相対的にゆっくりと消化されなければならない。最も良い結果は、グリセミック指数(glycemic index)が70を下回ること、および好ましくは55を下回ることが実証される製剤を用いることで得られる。このことは、70を下回る、好ましくは15から70の間である、より好ましくは25から55の間であるグリセミック指数を示す炭水化物画分を用いることによって達成される。該グリセミック指数とは、グルコースと比較した場合の、血漿中グルコースレベルにおける炭水化物画分の即時効果に相当し、100までの値で表される。いくつかの炭水化物に対する値を含む、グリセミック指数を決定する方法は、当該分野にて記述されている。
【0078】
消化性(digestible)炭水化物の適した原料は、オオムギ、オート、ジャガイモ、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、ライコムギ、キビ、ソルガム、アマランス、イネ、サトウキビ、テンサイ、キャッサバ、タピオカ等といった、塊茎または穀物からの、何れかの食品等級の炭水化物抽出物であってよい。
【0079】
消化性炭水化物画分は、二つの種類の炭水化物を含み得る:(i)グルコースポリマー、グルコースオリゴマー、二糖と解されるグルコース均等物であり、ここにはグルコースおよびグルコースそのものが含まれ、および(ii)グルコースとは異なる単糖単位を主に含んだ炭水化物である。後者の分類は、典型的にヒトの消化管において消化されにくい。しかしながら、単糖自身および幾つかの二糖はしばしば、相対的に吸収され易く、および消化され易い。
【0080】
好ましくは、アスパラギン酸塩均等物は、アスパラギン酸塩均等物とグルコース均等物の重量比が0.037:1 - 2:1、より好ましくは0.045:1 - 1.8:1、さらにより好ましくは0.050:1 - 1.5:1および最も好ましくは0.060:1 - 1:1という重量比にそった量で投与される。グルコース均等物とは、1錠以上の栄養製剤または医薬製剤として投与されるすべてのグルコースと理解されるが、アスパラギン酸塩に富む製剤の投与後60分以内における、その人に消費された食事に含まれる均等物も含む。アスパラギン酸塩とグルコースの比率を計算する場合において、α-グルカン、グルコース自体、スクロースおよびラクトースから生じる何れかのグルコースは、当該グルカンが吸収または消化が容易か困難かに関わらず、含められる。
【0081】
消化性炭水化物の原料は、該炭水化物への消化酵素の接触が困難になるように扱うことができる。その例は、レジスタントスターチ (resistant starch)である。炭水化物はまた、通常の消化酵素で加水分解されにくい、ベータ-1,6-またはアルファ-1,1グリコシド結合で互いにつながった、グルコース部分を含むことができる。この種の炭水化物の例は当該分野において記述されており、例えば、WO 2004/023891、改変デンプンおよびプルランについてのWO 03/105605などに記載されている。また、高-アミロペクチン炭水化物のような、高度に分枝化した炭水化物の使用は、消化を遅らせ、および、好ましくは温和に加水分解される場合には、デンプンが75 wt%を超えるアミロペクチンを含むように、適切に含めることが可能である。適した原料は、ジャガイモ、タピオカ、トウモロコシ、キャッサバ、または穀物(ソルガム、コムギ、ライムギ、ライコムギ、オオムギ、オートまたはキビ等)といった植物の選択を通して、遺伝学的に改変または取得されてきた。調合乳(formula)に含まれうる、その他の原料は、9を超える単糖単位を有す高い重合度のポリマーを含む、マルトデキストリンである。未処理のデンプンを低い程度で加水分解することで、適したグルコースの原料が得られる。US 6,720,312に開示されるように、デンプンの加水分解において、デンプン顆粒の膜構造をより未処理のままに保つ添加物を用いることによって、消化をさらに遅らせることができる。
【0082】
約40 - 100 wt%の炭水化物画分から、グルコース均等物が形成されなければならない。好ましくは、この量は、45 - 90および、より好ましくは49 - 80および最も好ましくは52 - 75 wt%である。有用なグルコース均等物は、例えば、鎖長が9単位より大きく、例えばマルトデキストリン DE 2 -31にて生じるグルコースポリマー、およびいくつかのグルコースシロップである。その他の有用なグルコースオリゴマーは、グルコースが、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、マンノース、フコース、ラムノース、シアル酸またはヘキスロン酸(hexuronic acid)といったその他の単糖とともに成るものであって、1 - 60 wt%の量のグルコース均等物が含まれるものである。幼い乳児のために、フコース、ラムノース、シアル酸またはヘキスロン酸(hexuronic acid)が含まれるグルコース均等物を含むことが好ましい。適した成分は、乳、特にヤギの乳から抽出することができる。その例は、EP0957692において示されている。後者のグループの使用者のために、これらは、好ましくは、1 - 40 wt%の量のグルコース均等物にて使用される。
【0083】
80 wt%を超えるグルコースを含む、グルコース多糖は、乾燥した製剤への包含に特に有用である。その例は、顆粒またはデンプン分子の化学的または物理的修飾によって、遅延した消化を示すタイプのデンプンである。本発明の目的のために、EnglystおよびCummingsの方法(Adv. Exp. Med. Biol. 270, 205-225 (1990)) を適用することで、レジスタントスターチ (resistant starch) を定量することができる。レジスタントスターチは、非消化性炭水化物(線維)画分の重量に対して、好ましくは10 - 80、好ましくは15 - 60、より好ましくは20 - 40%のレベルで存在してよい。
【0084】
適したグルコース均等物のその他の例は、50 wt%を超えるグルコースを含み、3 - 9の鎖長を有する、オリゴ糖である。これらのオリゴグルコシドの量は、消化性炭水化物の重量の50%未満、好ましくは40%未満、および最も好ましくは30%未満であるべきである。純粋なグルコースの量は、その浸透価への寄与およびその甘さのために、低くなくてはならない。好ましくは、その量は、炭水化物画分の10 wt%未満、より好ましくは1 - 8 wt%である。
【0085】
特にスクロースおよびラクトースといった、グルコース部分を含む二糖の分類において、その甘さおよび製剤の浸透圧への影響のため、消化性炭水化物画分の5 wt%を超える量でスクロースを含まないことが好ましい。後者の特性はラクトースにも当てはまるものの、ラクトースの存在に明確な不耐性がない限り、製剤にラクトースが含まれることが好ましい。後者はまた、ダイズ、ハウチワマメ、エンドウマメ、ジャガイモ等が由来のタンパク質を5 wt%超で有するタンパク質画分を含む栄養性製剤にも適用される。
【0086】
グルコースでない単糖の分類はまた、少量ではあるが、製剤に含めることができる。というのは、それらは、浸透価へ大きく影響し、および甘さにある程度影響し、腹部に関する不満を生じさせる可能性があるためである。単糖の例は、アラビノース、アラビトール、マンノース、リボース、ガラクトース、ラムノース、キシルロース、キシリトールおよびフルクトースである。セドヘプツロースといった、七炭素糖類(hepta-carbon saccharides)の量は、単糖の重量の10%未満および好ましくは5%未満であるべきである。グルコースとは異なる単糖の総量は、製剤中のグルコース均等物の量未満でなくてはならず、好ましくはグルコース均等物の0.8倍の量未満でなくてはならない。言い換えると、これらの量は、それゆえ、消化性炭水化物の画分の1 - 40 wt%、好ましくは2 - 30 wt%およびより好ましくは3 - 20 wt%である。
【0087】
フルクトースが含まれる場合、相対的に限定された量で含むことが好ましい。フルクトースの量は、血漿中レベルを150μM未満および好ましくは120μM未満に保つために、消化性炭水化物の0.1 - 20 wt%の範囲内にあるべきである。これは、炭水化物画分の重量を基準として、0.2 - 15 wt%、好ましくは0.3 - 10 wt%、より好ましくは0.4 - 5 wt%、および最も好ましくは0.5 - 4 wt%のフルクトースを含むことで達成される。このように、2 g未満のフルクトース、好ましくは1 g未満のフルクトースが、食事一回当りに消費される。一方で、食事一回当りに同時に2 gを越えるグルコース単位、好ましくは10 gを超えるグルコース単位が消費される。グルコース/フルクトースの重量比は、2:1より大きく、好ましくは5:1から100:1および最も好ましくは10:1から50:1である。
【0088】
グルコースおよびフルクトース以外に、D-ガラクトースが好ましい単糖である。後者が含まれる場合、その量は、製剤中の単糖の重量の1 - 20および好ましくは2 - 10%の量をとり得る。
【0089】
消化性炭水化物とは、消化管にて生じる消化酵素にさらされた後に、80%超が加水分解され、続いて腸にて吸収される炭水化物と定義される。消化性炭水化物の総量は、全栄養組成物の10 - 70エネルギーパーセント、好ましくは20 - 65、より好ましくは30 - 60および最も好ましくは34 - 55 en%でなければならない。
【0090】
栄養物中のタンパク質をその一日の投与量に変換する上述の計算を用いると、患者への全エネルギー供給量が約2000 kcal/日であるので、体重が70 kgおよび消化性炭水化物が好ましくは40 en%と仮定した場合、患者に投与する消化性炭水化物の総量は、約800 kcal/日であり、また重量で表すと一日当り200 gの消化性炭水化物である。これらの数値を適切な体重に変換することで、特定の患者に対する一日の投与量を決定することは、当業者にとって容易なことである。
【0091】
炭水化物の消化はまた、ポリフェノールの化合物または食物繊維といった消化速度を低下させる化合物とともに包含させることによって、遅らせることができる。製剤中に生じるようなタンパク質との間、または消化系にて作用する酵素との間での好ましくない相互作用を回避するために、製剤中にポリフェノールを含まないことが好ましい。特に、ダイズまたはその他の植物の市販品として利用可能なタンパク質画分に存在しうるような、フラボノイドおよびタンニン、特にイソフラボンの量は、一日の投与量当り、200 mg未満、好ましくは100 mg未満、およびより好ましくは50 mg未満に維持されるべきである。製剤1リッター当り、その濃度は、それゆえ、100 mg/L未満、好ましくは50 mg/L未満およびより好ましくは25 mg/Lであるだろう。これを達成するため、ポリフェノールに富んだ植物性原料から単離されたタンパク質画分は、典型的に、例えばエタノールといった有機溶媒によって洗浄することで、処理されるだろう。
【0092】
炭水化物画分は、食物繊維を含むことが好ましい。食物繊維は、陰イオン性多糖類またはその他の多糖類もしくはオリゴ糖であってよい。該その他の多糖類もしくはオリゴ糖の例は、キサンタンガム、アラビアゴム、コンニャクガム(Konjac gum)、ゲランガム(gellan gum)、タラガム(tara gum)およびガーゴムといったゴムを由来とするもの、カッパーまたはイオタ変異体(variant)といったペクチン、イヌリン、アルギナート、カラギーナン硫酸化デキストラン、特にSaccharomyces cerevisiaeといった酵母を由来とするベータグルカン、およびエンドウマメのさやといったエンドウマメ、オオムギ、コムギ、オートまたはイネの繊維、またはそれらの食物繊維の加水分解物である。当該線維は、経管摂食(tube feeding)に効果的な量の包含を許容するために、低い固有粘度を有すべきである。製剤の最終液体形態の粘度は、20℃、秒間100で測定した場合、1 -30 cPである必要がある。天然由来の線維の加水分解、または天然由来の線維の特定の単離物の選択によって得られたオリゴ糖の使用が推奨される。有効量は、典型的に、成人に対して、一日の投与当り、1 - 30 g、好ましくは1.5 - 20 gおよびより好ましくは1.8 - 15 gの食物繊維である。液体製剤中の量は、典型的に、炭水化物画分の0.05 - 4.0 wt%、好ましくは0.075 - 2.5 wt%およびより好ましくは0.09 - 1.5 wt%、特に0.1 - 1.0 wt%である。乳児に対する量は、体重を用いて補正することで計算できる。驚くべきことに、特にフスマ(wheat bran)または低メチル化ペクチンが有効な食物繊維であることがわかった。上述のとおり、レジスタントスターチ(resistant starch)は、線維組成物の重要な部分である。
【0093】
[脂質画分]
脂質画分が含まれる場合には、大部分が消化可能であり、特に、グルコース均等物と比較してアスパラギン酸塩画分の、消化率および吸収率を損なわない状態であるべきである。
【0094】
脂質画分の脂肪酸は、主に18以上の炭素原子の鎖長を有する、いわゆる長鎖脂肪酸である。特に、脂肪酸の50 wt%、好ましくは60 - 90 wt%およびより好ましくは65 - 80 wt%が、LC-脂肪酸、すなわち18以上の鎖長を有する。トランス構造を有する、不飽和脂肪酸の量は、脂肪酸の総量の0.8 wt%未満、好ましくは0.5 wt%未満およびより好ましくは0 - 0.3 wt%である。中鎖トリグリセリドの量は、脂肪酸の総量の0 - 20 wt%および好ましくは0 - 10 wt%の値をとり得る。アラキドン酸の量は、相対的に小さく:脂肪酸の重量の0 - 5%および好ましくは0 - 3%である。これにより、亜鉛とアラキドン酸の重量は、0.5より大きく、および好ましくは0.8より大きくなるだろう。製剤中の脂肪酸の総量は、脂質画分の抽出およびAOAC法992.25を用いた脂質画分中の脂肪酸の決定によって、決めることができる。
【0095】
オレイン酸は、脂質画分中の重要な成分である。その量は、脂肪酸の30 - 60 wt%の範囲内である。エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)といった、ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸LC-PUFA’sが相対的に高い。ω-3 LC-PUFA’sの総量は、脂肪酸の0.5 - 20 wt%および好ましくは1 - 15 wt%である。EPAおよびDHAの総量は、好ましくは、脂肪酸の0.5 - 10 wt%、より好ましくは1 - 10 wt%である。飽和脂肪酸の量は、好ましくは、脂肪酸の総重量の10 wt%未満であるべきである。
【0096】
脂質画分は、食品認可(food authorities)によって推奨される、リノール酸およびアルファ-リノレン酸といった必須長鎖脂肪酸を、必要とされる一日の投与量の、0.8 - 1.5倍、好ましくは1 - 1.2倍の量で含む。脂質画分中のω-6 LC-PUFA’sの量は、相対的に小さい。リノール酸の量は、全ての脂肪酸の総量の5 - 35 wt%、好ましくは6 - 25 wt%、より好ましくは7 - 20 wt%でなければならない。
【0097】
脂肪酸は、大部分がリン脂質として含まれることが好ましい。リン脂質の量は、脂質画分の6 - 50 wt%、好ましくは7 - 30 wt%および最も好ましくは8 - 25 wt%である。
【0098】
脂肪酸の重要な原料は、構造化脂質(structured lipids)および天然の油である。天然の油とは、魚油およびクリール抽出物といった海洋性の油、米ぬか油および、オリーブ油および高オレイン酸サフラワー油といった高オレイン酸植物油、ピーナツ油およびカノーラ油またはtrisun-80のような高オレイン酸ヒマワリ油抽出物である。
【0099】
成人および青年のための完全調合乳(formulae)中の脂質の総量は、それゆえ、栄養組成物の30エネルギーパーセント超、好ましくは32 - 60エネルギーパーセント、より好ましくは35 - 50エネルギーパーセントおよび最も好ましくは40エネルギーパーセント超である。製剤が乳児、特に早産児に使用されることが意図される場合、脂質は、調合乳中の全エネルギーの30 - 60%、好ましくは31 - 58%、より好ましくは35%超、最も好ましくは52%超のエネルギーを提供する。このことは、特に、早期乳児のように代謝システムの発育不良を患う乳児にとって、およびインスリン抵抗性または早期肥満もしくは糖尿病を発症する危険性のある乳児にとって重要であり、このことは例えば、これらの障害または疾病の相対的な罹患率から明らかであり、また不安定な免疫系をもった乳児から明らかである。後者の乳児のグループの例は、2型T細胞の活性と比較して、1型T細胞の活性が低い乳児である。このことは、1型T細胞および2型T細胞に特異的なサイトカイン(例として、1型はインターフェロンガンマ、2型はインターロイキン-4または-5)の量を測定し、それらの重量を比較することで決定することができる。インターフェロンと(IL-4 + IL-5)の重量比が異常な(低すぎる)値、例えば1未満の値を示す乳児は、不安定な免疫系を有すると定義され、アレルギーまたはアトピー反応にもつながる可能性がある。
【0100】
[製剤]
本発明による製剤は、多くの形態をとることができる。それは、液体、バー状もしくは粉状といった乾燥製剤、またはプディングといった中間的な水分含量を有する製剤、アイスクリームまたはいくつかの形態の軽食(snack)の形とすることができる。しかしながら、液状形態のものを患者の経管摂食(tube feeding)および少量の飲用摂取(sip feeding)のために使用することが好ましい。製剤は、栄養的に完全とすることができ、また補充的な調合乳(formula)とすることができる。製剤は、身体に血液からのグルコースの取り込みを行わせるために、グルコース均等物を含んだ食事と同時に、またはそのような食事に先立って消費される医薬製剤とすることができる。アスパラギン酸塩に富む栄養製剤または医薬製剤が、食事に先立って消費される場合、グルコース均等物を含んだ食事の最大60分前、好ましくは最大45分前、より好ましくは最大30分前、さらにより好ましくは15分前、および最も好ましくは10分前、特に最大5分前に前記製剤を消費することが好ましい。
【0101】
製剤のモル浸透圧濃度が高くなることは避けるべきである。すぐに使用できる調合乳のモル浸透圧濃度は、典型的に500 mOsm/l未満であり、および好ましくは250 - 400 mOsm/lである。製剤のモル浸透圧濃度は、当該分野にて知られる栄養性製剤のための標準的方法を用いて測定することができる。即時に使用可能なアスパラギン酸塩画分以外に、タンパク質画分中の残りのアスパラギン酸塩均等物は、アスパラギン酸塩が未処理のタンパク質として存在する場合のように、幾分か、より穏やかな消化を期待できる。食味の理由のため、未処理のタンパク質を原料として用いることがより好ましい。
【0102】
成人および青年期のための液体完全調合乳は、典型的に、70 kgの体重の人に対して一日当り2000 kcal、つまり一日当り約28 kcal/kg体重を提供するよう設計される。投与される調合乳の体積は、それゆえそのエネルギー密度に依存する。製剤が、1.0 kcal/mlのエネルギー密度を有する場合、一日に必要な投与量の放出のためには、2 Lが必要となる。エネルギー密度が1.25 kcal/mlである場合、約1600 mlが一日に必要となる。
【0103】
典型的に、栄養組成物は、少なくとも0.95 kcal/ml、好ましくは少なくとも1.0 kcal/ml、より好ましくは少なくとも1.1 kcal/mlのエネルギー密度有し、および0.046:1 - 2:1、好ましくは少なくとも0.050:1、より好ましくは0:060:1のアスパラギン酸塩均等物とグルコース均等物の重量比を有する。しかしながら、栄養組成物が乳児に投与される場合、該組成物は、好ましくは0.8 kcal/ml未満、より好ましくは0.7 kcal/ml未満、最も好ましくは0.6 kcal/ml未満のエネルギー密度を有する。組成物の投与によって、0.037:1 - 2:1、好ましくは少なくとも0.040:1、より好ましくは少なくとも0:045:1および最も好ましくは少なくとも0:050:1のアスパラギン酸塩均等物とグルコース均等物の重量比が達成される。ここにおいて、asp:グルコースの重量比は、組成物中のアスパラギン酸塩およびグルコース均等物の量、ならびに組成物の投与後60分以内の食事によって供給されるアスパラギン酸塩およびグルコース均等物の量を基準としており、その数字はそれぞれ、タンパク質および炭水化物の総重量を基準としている。
【0104】
乳児に対して、一日に供給されるエネルギーの量は、体重3 kgの乳児にとって540 kcalであり、つまり一日当り180 kcal/kg体重である。このエネルギー量は、体重の増加とともに急激に減少し、数月齢後には約60 kcal/kg体重となる。製剤が、完全栄養を補助するサプリメントであり、低血糖症および高血糖症および/またはインスリン抵抗性を予防する場合、一日当りに供給されるエネルギーの量は、100-800 kcal、好ましくは180-600 kcalおよびより好ましくは190-560 kcalの範囲となるだろう。製剤が、現存の食事との組み合わせによる栄養組成物または医薬組成物として使用される場合、供給されるエネルギーの量は、一投与当り、10-200 kcal、好ましくは15-160 kcalおよびより好ましくは20-140 kcalとなるだろう。このことはまた、製剤が、グルコース均等物を含む食事と同時に、またはそのような食事に先立って用いられる場合に適用される。
【0105】
乳児用調合乳(formulae)は、幼児および出生から生後24ヶ月の乳児の完全栄養として意図される栄養性製剤であって、6-12.5 en%のタンパク質画分、38-50 en%の消化性炭水化物、40-52 en%の脂質画分、ならびに公式な推奨にしたがう全ミネラル、微量元素およびビタミンを、推奨される一日の投与当りの取り込みの0.8 - 1.2倍の量で含む栄養性製剤と定義され、および55-76 kcal/mlのエネルギー密度を有する。
【0106】
栄養組成物は、少なくとも二つの分離した部分を含むことができ、一つの部分は、タンパク質に富む画分および相対的に炭水化物に乏しい画分および脂肪に乏しい画分を含み、別の部分は、相対的に大量なグルコース均等物および第一の部分に比べ重量的に少ないタンパク質を含む。これらの部分は連続的に投与され、タンパク質に富む画分を含む部分は、炭水化物に富む画分の投与の前60分以内に投与される。好ましくは、タンパク質に富む画分および炭水化物に富む画分の投与の間の時間は、45分未満、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満、さらにより好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満であり、ここにおいてタンパク質に富む画分を含む部分が最初に投与される。これらの二つの部分はともに、本発明による栄養性製剤の上述の基準を満たす。
【0107】
連続的な投与の場合、第一の部分中のタンパク質レベルは、典型的に、エネルギーの観点において、消化性炭水化物の量よりも大きい。典型的に、タンパク質レベルは、第一の部分で40 - 80 en%であり、他方で、第一の部分中の炭水化物画分は、第一の全エネルギー含量を基準として60 en%未満、好ましくは50 en%未満、最も好ましくは40 en%未満である。液体調合乳(formulae)において、この第一の部分は、脂質を含んだ第一の部分の総重量を基準として、8 - 10 wt%のタンパク質画分、および5 - 15 wt%、好ましくは6 - 12 wt%の消化性炭水化物を含むだろう。相対的に乾燥した形態において、第一の部分は、軽食(snack)またはバー状の形態をとることができる。食物繊維を第一の部分の乾燥質量の3 - 30 wt%の量で含むことが好ましい。
【0108】
第二の部分は、グルコース原料を含むあらゆる普通の食品とすることができる。典型的に、この第二の部分は、第二の部分のエネルギー含量を基準として、10 - 32 en%、好ましくは14 - 30 en%およびより好ましくは18 - 22 wt%のタンパク質を含むだろう。炭水化物は、第二の部分の25 - 70 en%、好ましくは30 - 60 en%、より好ましくは34 - 56 en%、最も好ましくは38 - 54 en%を占める。脂質画分は、その80 - 100%が第二の部分から生じ、その量は典型的に20 - 130グラムの脂質となる。
【0109】
タンパク質、炭水化物および脂質の、製剤のエネルギー含量に対する寄与は、タンパク質均等物または炭水化物均等物の4 kcal/gという係数(factor)、およびリン脂質を含む脂質の9 kcal/gという係数を用いて、当該分野において既知の方法によって算出される。
【0110】
経腸組成物が、成人および青年に対して、1800kcal/日超、より好ましくは1900 - 2500kcal/日、好ましくは約2000kcal/日で提供されることが好ましい。組成物が早産児の投与に使用される場合、該組成物は、225kcal/日超、好ましくは300 - 1000kcal/日で提供される。
【0111】
[ミネラル等]
本発明による栄養組成物は、任意に、上述のタンパク質、消化性炭水化物および脂質画分以外のその他の成分を含む。以下に好ましい成分および投与量を含めて、いくつかの成分を述べる。
【0112】
タンパク質画分のアルギニンレベルが相対的に低い、例えばタンパク質画分の4.0 wt%未満および特に3.0 wt%未満である、これらの実施態様において、製剤中にL-オルニチンおよび/またはL-シトルリンを含むことが推奨される。アルギニン、オルニチンおよびあらゆるシトルリンの総量は、タンパク質画分の少なくとも3.0 wt%、特に少なくとも4.0 wt%であることが好ましい。L-オルニチンまたはその均等物を、L-オルニチン/シトルリンの比が、1より大きい状態で、好ましくは5より大きい状態で使用することが好ましい。L-異性体が好ましい。推奨される量は、タンパク質画分の重量を基準として、0.3 - 5 wt%および好ましくは0.5 - 4 wt%である。L-オルニチン + L-シトルリンとL-アルギニンの重量比は、0.07:1 - 2:1の範囲内、および好ましくは0.12:1 - 1.2:1である。未処理のタンパク質および/またはその加水分解物を含んだ製剤中の、L-オルニチンとL-アルギニンの比は、それゆえ、0.11-1.1の範囲であり、このましくは0.2-0.9の範囲であるだろう。L-オルニチンはまた、食肉または肝臓といった未加工の材料からの抽出物として、含めることができる。適した形態とはまた、塩であり、特に例えばアスパラギン酸塩といったアミノ酸などの有機酸との塩、またはリンゴ酸もしくはクエン酸もしくはα-ケト-イソカプロン酸(もしくは2-オキソ-イソカプロン酸)といった有機酸との塩である。
【0113】
特に補充的なメチオニン均等物との組み合わせによる、L-オルニチンおよび/またはL-シトルリンまたはそれらの均等物の付加的な包含によって、内因性のポリアミン生合成速度が保証される。付加的なオルニチンまたはその均等物の、調合乳への包含は、高血糖症またはインスリン抵抗性を患う人の腎臓機能を補助する。これらの効果をさらに増大させるために、製剤中に炭酸塩または炭酸水素塩を含めることが重要である。適した形態は、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅およびカルシウムといった金属との塩である。炭酸銅、炭酸カルシウム、およびナトリウム、マグネシウムおよびカリウムの炭酸水素塩が推奨される。調合乳のpHは、6.3 - 7.1の範囲および好ましくは6.4 - 6.8の範囲内になければならない。その対イオンを含む、炭酸塩および炭酸水素塩の量は、調合乳の乾燥質量100 g当り、0.8 - 10 g、好ましくは1.0 - 6 gおよびより好ましくは1.2 - 5 gの範囲内でなければならない。
【0114】
腎臓の合併症または腎臓機能の障害をもたらす、インスリン抵抗性または血中グルコースレベルの増大に苦しむ患者において、ビオチンのレベルは、40 - 4000μg/100 mlの間のレベルまで増大させなければならない。マグネシウムは、本発明による液体の製剤中に、4 - 20 mg/100 mlの濃度で含めるべきである。本発明によるこの実施態様におけるタンパク質レベルは、化合物の10から22エネルギーパーセントの間でなければならない。
【0115】
本発明による栄養性製剤は、経口的に消費されたとき、本質的にホルモン活性を示さない。グルカゴンおよびステロイド性化合物から選択されるホルモン型化合物は、それゆえ、製剤1リッター当りグルカゴン10 mg未満の量にて、存在する。ステロイドのレベルは、典型的に、0.1 ppm未満で、好ましくは検出不能である。
【0116】
タンパク質画分が、2.3:1未満のセリンとグリシンの重量比を示す場合、コリン、ベタイン、ジメチルグリシンおよびサルコシンの群から選択される成分が、特に栄養失調および炎症を患う患者での、高血糖症の治療における有効性および正味のインスリン抵抗性の間の有効性を補助するために、含まれなければならない。これらの成分の一日の投与量は、0.5 g超および好ましくは0.8 g超であるべきである。本発明による液体製剤において、濃度はそれゆえ、0.025 wt%超、または好ましくは0.032-2 wt%、より好ましくは0.04-0.4 wt%および最も好ましくは0.06-0.25 wt%となる。乾燥製剤において、その量は、典型的に0.04-3 wt%であろう。有効性は、C-反応性タンパク質の血中レベルまたは幾つかのサイトカインの血中レベルのように、炎症の循環マーカーを測定することによって立証することができる。
【0117】
製剤が、大規模なメイラード反応、すなわち褐変を、製造の際、特に滅菌の際に示さないことが重要である。このことは、液体製剤中の糖の減少に次いで、カルノシンといった成分の包含の防止によって達成される。製剤中のL-リジンとカルノシンの重量比は、それゆえ、典型的に5:1より大きく、および好ましくは10:1より大きい。
【0118】
亜鉛は、高血糖症および/またはインスリン抵抗性を患う人に対して、必須のミネラルである。亜鉛の量は、典型的に一日の投与量当り、14 mg超、好ましくは18 - 40 mg超、より好ましくは20 - 35 mgおよび最も好ましくは22 - 30 mgである。銅の量を相対的に低く保つこと、例えば、亜鉛と銅の重量比を、7-16:1および好ましくは8-15:1および最も好ましくは9-13:1に保つことが重要である。製剤中の亜鉛が相対的に高い濃度であるにもかかわらず、製剤中の亜鉛とL-ヒスチジンの重量比は、L-ヒスチジンが相対的に高い量であるため、好ましくは0.002:1 - 0.2:1の範囲内である。
【0119】
カルシウムは、100 ml当り40 mg超、好ましくは50-200 mgおよびより好ましくは60-120 mgの量で、有利に含むことができる。
【0120】
マグネシウムは、液体調合乳100 ml当り、20-60 mg、好ましくは25-40 mgおよびより好ましくは28-35 mgの投与量にて、液体製剤中に含めることができる。三リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸水素マグネシウムは、液体調合乳の使用に適したマグネシウムの原料である。
【0121】
ナトリウムレベルは、本発明による液体製剤100 ml当り、100 mg未満、好ましくは50-80 mgおよび好ましくは55-74 mgである。ナトリウムとカリウムの重量比は、典型的に0.3-0.66、好ましくは0.4-0.64およびより好ましくは0.45-0.62であるだろう。
【0122】
クロムまたはバナジウムは、本発明による液体製剤100 ml当り、1 - 50μgの量で含まれるべきである。
【0123】
完全食(complete diets)において、全てのビタミン、ミネラルおよび微量元素を、例えば食品医薬品局(the Food and Drug Administration)によって定められた栄養学的要件を満たすのに十分な量であって、同時に、長期に亘るおよび頻繁な使用による過量服用を避けるため、記載がある場合を除いて、これらの推奨を超えない状態で含むことが重要である。
【0124】
本発明による栄養組成物中にビタミンB6を含むことが好ましい。そのレベルは、好ましくは、高血糖症および/またはインスリン抵抗性の治療における製剤の効果をさらに改善するため、推奨される一日の量の少なくとも二倍になるよう選択される。
【0125】
合成的に作製されたもの、天然原料から単離されたものも含めて、ピリドキシン、ピリドキサミンもしくはピリドキサールまたはそれらの塩、リン酸化物、グリコシル化物またはその他の誘導体が、ビタミンB6の適した原料として使用することができ、特にピリドキシンが適す。成人に対して一日の投与量当り、3.2 - 100 mgおよび好ましくは3.5 - 30 mgのビタミンB6を含むことが好ましい。調合乳(formula)中のビタミンB6の重量は、製剤中のアスパラギン酸塩均等物またはマグネシウムの重量より小さいだろう。典型的に、ビタミンB6の量は、製剤中のアスパラギン酸塩均等物の量の0.01倍未満であり、マグネシウムの量の0.1倍未満である。完全乳児用調合乳(complete infant formula)の場合、ビタミンB6の量は、好ましくは100 kcal当り75μg未満、特に80-120μg/100 kcalである。
【0126】
パントテン酸およびリポ酸を相対的に高いレベルで含むことがさらに推奨される。パントテン酸は、成人に対して、酸またはその塩またはパンテチンまたはパントテン酸として、一日の投与量当り、12 - 300 mgの量、好ましくは14 - 100 mgおよび最も好ましくは18 - 40 mgの量で含むべきである。本発明による液体製剤100 ml当り、該量は、それゆえ、0.6-15 mg、好ましくは0.7-5 mgおよび最も好ましくは0.9-2 mgである。完全乳児用調合乳の場合、パントテン酸の好ましい量は、480μg超、特に500μg - 2.0 mgである。リポ酸は、一日の投与量当り5 - 500 mg、好ましくは10 - 300 mg、および最も好ましくは20 - 200 mgの量で、遊離塩、それらの塩またはより味わいある誘導体といった当該分野において知られる形態で含むことができる。本発明による液体製剤100 ml当り、該量は、それゆえ、0.25-25 mg、好ましくは0.5-15 mgおよび最も好ましくは1-10 mgのリポ酸である。
【0127】
葉酸、その塩またはそのメチル化された誘導体は、成人に対して、一日の投与量当り、300 - 3000μg、好ましくは350 - 2000μg、より好ましくは400 - 1500μgおよび最も好ましくは500 - 1200μgの量で含まれる。本発明による液体製剤100 ml当り、葉酸の濃度は、それゆえ15μg、好ましくは17.5-100μg、より好ましくは20-75μgおよび最も好ましくは25-60μgである。完全乳児用調合乳において、葉酸の好ましい量は、100 kcal当り18μg超であり、特に100 ml当り19-40 mgである。
【0128】
本発明による栄養性製剤が、代謝システムの発育不良を患う幼い乳児に投与されることが意図される場合、リモネンを含むこともまた好ましい。この化合物は、合成的に作製して、または柑橘類といった果実から単離して、純粋な(R)-(+)-リモネンとして得ることができる。この単離は、好ましくは水蒸気蒸留によって行われる。その濃度は、製剤の乾燥物100 g当り、1-1000 mgの幅であるべきである。
【0129】
本発明による組成物は、インスリンと組み合わせて消費することができる。当該組成物は、インスリンの必要とされる投与量を減らし、またインスリン抵抗性の危険性も減らすことがわかった。
【0130】
[治療]
製剤は、血液中のケトン体、乳酸塩および/またはその他の有機酸の濃度上昇と関連する代謝障害、および/または好ましくはケトン体および乳酸塩の濃度上昇と関連するpHの恒常性の不足の予防および/または治療、およびこれらの代謝障害と関連する二次障害の予防または治療に適している。
【0131】
本発明における代謝障害は、代謝的アシドーシスおよび組織における長期最終糖化反応産物(advanced glycation product)(AGE)形成および/またはメイラード反応生成物形成を含み、この場合において、グリコシル化生成物、特にHbA1cのグリコシル化生成物が血液中および/または組織において観察される。体内中の高濃度のAGEおよびメイラード反応生成物の存在は、痴呆症、網膜症および一過的な虚血性の事故の発生に寄与する可能性がある。
【0132】
本発明における代謝的アシドーシスは、短時間持続的なケトン体および/または乳酸塩レベルの増大によって引き起こされ、および急性な状況で発生し、および典型的に高ケトン血症、(高)ケトン症、ケトアシドーシス、(高) ケトン尿症、高乳酸血症、乳酸尿症といった有機酸尿症および乳酸血症を含む。ケトン体、アンモニア、乳酸塩またはその他の有機酸、ピルビン酸塩、グルコース、低い血液pH値および/または低い二酸化炭素分圧(PCO2)が、その重要な指標である。代謝的アシドーシスの治療は特に、新生児および特に早産児、ならびに術中および術後の患者にとって重要である。
【0133】
本発明による製剤を必要とする哺乳類は、典型的に、導入部分に記載した障害を患っており、特に、アテローム性動脈硬化症および微小血管における問題、脳血管における問題、特に一過的虚血性問題(Transient Ischemic Accidents)、腎疾患、肥満症、小児性肥満症、視力障害、高血圧および組織または臓器の機能喪失、免疫機能の障害、生殖器機能不全、特に性欲減退、特に外傷、手術の後における、または癌といった疾病の重い段階の間における異化作用、感染症、肢における壊疽性の問題、後天性免疫促迫症候群(acquired immune distress syndrome)、代謝性症候群、糖尿病、HbA1Cレベルの増大、慢性炎、慢性閉塞性肺疾患および肝臓疾患の群から選択される二次的疾病または障害を伴う。
【0134】
本発明による栄養組成物または医薬組成物を必要とする哺乳類は、絶食後または食後高血糖、インスリン抵抗性、糖尿病を患っていてよく、また楓糖症といった遺伝性の代謝障害、グリコーゲン合成速度における遺伝性障害、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症、オキソ酸補酵素Aチオラーゼ欠損症またはその他のチオラーゼにおける欠損症を患っていてよく、また妊娠初期(young gestational age)の乳児といった代謝システムの発育不良を患う人であってよい。
【0135】
当該製剤は特に、インスリン抵抗性が重要な役割をもつ女性に適す。
【0136】
当該製剤の効果は、本発明による栄養性製剤の消費後における血液中のグルコースレベルを測定することによって決定することができる。相対的に高濃度の即時利用可能なアスパラギン酸塩を含むタンパク質画分の消費により、摂食後または術後における、グルコース源消費後において観察されるグルコースレベルを減少させるだろう。特に、開示されるような炭水化物画分の穏やかな放出機構は、アスパラギン酸塩と比べて、食事性グルコースのより穏やかな利用可能性を保証する。この効果を達成するための別の方法は、別々のタンパク質画分および消化性炭水化物画分の連続的な投与によって行われ、ここにおいて該タンパク質画分は、該炭水化物画分より先に投与される。グルコースおよびインスリンのクリアランス速度(t 1/2)ならびに定常状態のグルコースおよびインスリンレベルは、モニターすることができる。食事療法の効果は、例えば、高血糖状態の生じた回数とともに、低血糖状態(血糖値が50 mg/100 ml未満)が生じた回数から明らかになる。
【0137】
本明細書において特定されるアミノ酸の包含の有効性は、高血糖症およびインスリン抵抗性を患う人、特に栄養失調の糖尿病患者における、除脂肪体重(lean body mass)の減少を測定することで決定できる。
【0138】
本明細書において特定されるビタミンの包含の有効性は、高血糖症および/またはインスリン抵抗性を患う肥満体の人における、脂肪分解の速度、インスリン抵抗性および除脂肪体重を測定することで検出できる。
【0139】
合併症の危険性は、HbA1cおよび/またはC-反応性タンパク質の血中レベルの減少を測定することでモニターできる。心血管性問題のような典型的な合併症の発生率は、表にすることができる。高血糖症、インスリン抵抗性またはケトン体の血中レベルの増大および付加的な腎臓の問題を患う人においては、血中アンモニアレベルを測定すべきである。
【0140】
ストレスホルモンの放出の増大によるインスリン抵抗性の増大を患う人において、例えば外傷または重い手術を経験した後における血漿中グルコースレベルおよび除脂肪体重の変化を、罹患率および死亡率を含めて測定すべきである。
【0141】
アシドーシスの発症における製剤の効果は、例えば、血液中の気体レベル、炭酸水素塩およびナトリウムのような電解質、ピルビン酸塩、乳酸塩、グルコースおよびpHを測定することでモニターできる。
【0142】
臓器に食事性タンパク質組成物を適応させるため、測定は2日以上の期間に亘って行うことが重要である。それゆえその効果は、患者に依存して、即効性または遅効性となりうる。
【実施例】
【0143】
[実施例1]
50 wt%アルファ-ラクトアルブミンおよび50 wt%ダイズタンパク質単離物から成る、1.0 kcal/ml、17 en%のタンパク質画分、45 en%の炭水化物画分および38 en%の脂質画分を含む、代謝性アシドーシスの予防または治療における経腸的使用のための飲料。さらに、製剤100 ml当り30μgのビオチンおよび10μgのヒドロキシコバラミン、および製剤100 ml当り16 mgのマグネシウム、4 mgの亜鉛および80 mgのカルシウムを含む場合、200 mlの該飲料を一日に2-5回に分けて投与する。
【0144】
[実施例2]
79 wt%のアルファ-ラクトアルブミンに富む乳清、1 wt%のアスパラギン酸塩(aspartate)ジペプチド(アルギニンまたはセリン)および20 wt%のダイズタンパク質単離物を含む、1.0 kcal/ml、22 en%のタンパク質画分、55 en%の炭水化物、23 en%の脂質、100 ml当り50μgのビオチンおよび10μgのビタミンB12を提供するビタミン画分、および本明細書による範囲の濃度にてカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を提供するミネラル/微量元素画分を提供する、組織のラクトースレベルの増大の予防における経腸的使用のための飲料。該飲料は、一日当り0.5-2リッターの量で消費されなければならない。
【0145】
[実施例3]
60 wt%アルファ-ラクトアルブミンに富む乳清および40 wt%のダイズタンパク質、2 wt%のアスパラギン酸塩に富むジャガイモタンパク質を含む、1.0 kcal/mlおよび18 en%のタンパク質、35 en%の脂質および47 en%の炭水化物画分、および100 ml当り20μgのビオチンおよび5 μgのシアノコバラミンを提供するビタミン画分を提供する、高ケトン血症の治療または予防のための経腸的使用のための飲料。該飲料は、200 ml-2 Lの量で消費されなければならない。
【0146】
[実施例4]
63 wt%のダイズタンパク質、15 wt%のアスパラギン酸塩に富むジャガイモタンパク質および20 wt%の乳清タンパク質、2 wt%のアミノ酸(L-リジン、L-メチオニン、L-セリン)を含む、1.0 kcal/ml、20 en%のタンパク質、35 en%の脂質、45 en%の炭水化物、および100 ml当り20μgのビオチン均等物および10μgのビタミンB12を提供するビタミン画分を提供する、肥満体の人による経腸的使用のための飲料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の血液中における、ケトン体、乳酸塩および/または有機酸の濃度上昇、および/またはpHの恒常性の不足に関連した、代謝障害の予防および/または治療のための経腸組成物の製造における、アスパラギン酸塩(aspartate)均等物ならびにビタミンB12およびビオチンの内の少なくとも一つの使用であって、前記組成物が、タンパク質画分の総重量を基準として、少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分を含んだ使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、前記タンパク質画分が15 - 22 en%を提供し、および前記経腸組成物がさらに、25 - 50 en%を提供する炭水化物画分を含んだ使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用であって、前記組成物が、該組成物1 kg当り2.5 - 500μgの量でビタミンB12を含む使用。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物が、該組成物1 kg当り10 - 10000μgの量でビオチンを含む使用。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の使用であって、前記代謝障害が、代謝性アシドーシス、組織における長期最終糖化反応産物(advanced glycation product)(AGE)形成および/またはメイラード反応生成物形成である使用。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の使用であって、前記代謝性アシドーシスが、高ケトン血症、(高)ケトン症、ケトアシドーシス、(高) ケトン尿症、高乳酸血症、乳酸尿症といった有機酸尿症および乳酸血症である使用。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の使用であって、前記アスパラギン酸塩均等物の少なくとも一部が、少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含んだアスパラギン酸塩源によって提供される使用。
【請求項8】
請求項7に記載の使用であって、前記アスパラギン酸塩源が、前記タンパク質画分の0.2 - 9 wt%の量で遊離アスパラギン酸塩均等物を含む使用。
【請求項9】
請求項7に記載の使用であって、前記アスパラギン酸塩源が、タンパク質、またはその加水分解物の単離物、濃縮物であり、前記タンパク質画分の5 - 100 wt%の量で存在する使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用であって、前記タンパク質がラクトアルブミンに富む乳清またはジャガイモタンパク質である使用。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の使用であって、前記タンパク質画分はさらに、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩(glutamate)均等物の重量比(asp:glu)が、0.41:1から5:1の間でグルタミン酸塩均等物を含む使用。
【請求項12】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の使用であって、前記タンパク質画分が、哺乳類の食肉または肝臓、乳清およびジャガイモから選択される動物由来のタンパク質、ならびにダイズ、ルピナス、エンドウマメおよびマメ(bean)から選択される植物由来のタンパク質を含む使用。
【請求項13】
哺乳類の血液中における、ケトン体、乳酸塩および/または有機酸の濃度上昇、および/またはpHの恒常性の不足に関連した、代謝障害の予防および/または治療のための経腸組成物の製造における、アスパラギン酸塩均等物ならびにビタミンB12およびビオチンの内の少なくとも一つの使用であって、前記アスパラギン酸塩均等物が、一日当り140 - 400 mg/kg体重の量で投与される使用。
【請求項14】
それぞれ15 - 22 en%および25 - 50 en%を提供する、タンパク質画分および炭水化物画分を含む経腸栄養組成物であって、該タンパク質画分が、該タンパク質画分の総重量を基準として少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含み、および前記組成物がさらに、ビタミンB12およびビオチンの内の少なくとも一つを含む、経腸栄養組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の経腸栄養組成物であって、該組成物1 kg当り2.5 - 500μgの量でビタミンB12を含む経腸栄養組成物。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の経腸栄養組成物であって、該組成物1 kg当り10 - 10000μgの量でビオチンを含む経腸栄養組成物。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の経腸栄養組成物であって、前記タンパク質画分が、少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むアスパラギン酸塩源を含んだ経腸栄養組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の経腸栄養組成物であって、前記アスパラギン酸塩源が、前記タンパク質画分の0.2 - 9 wt%の量で遊離アスパラギン酸塩均等物を含む経腸栄養組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の経腸栄養組成物であって、前記アスパラギン酸塩源が、タンパク質、またはその加水分解物の単離物、濃縮物であり、前記タンパク質画分の5 - 100 wt%の量で存在する経腸栄養組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の経腸栄養組成物であって、前記タンパク質が、ラクトアルブミンに富む乳清またはジャガイモタンパク質である経腸栄養組成物。
【請求項21】
請求項14から請求項20のいずれか1項に記載の経腸栄養組成物であって、前記タンパク質画分がさらに、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比(asp:glu)が、0.41:1から5:1の間でグルタミン酸塩均等物を含む経腸栄養組成物。
【請求項1】
哺乳類の血液中における、ケトン体、乳酸塩および/または有機酸の濃度上昇、および/またはpHの恒常性の不足に関連した、代謝障害の予防および/または治療のための経腸組成物の製造における、アスパラギン酸塩(aspartate)均等物ならびにビタミンB12およびビオチンの内の少なくとも一つの使用であって、前記組成物が、タンパク質画分の総重量を基準として、少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むタンパク質画分を含んだ使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、前記タンパク質画分が15 - 22 en%を提供し、および前記経腸組成物がさらに、25 - 50 en%を提供する炭水化物画分を含んだ使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用であって、前記組成物が、該組成物1 kg当り2.5 - 500μgの量でビタミンB12を含む使用。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用であって、前記組成物が、該組成物1 kg当り10 - 10000μgの量でビオチンを含む使用。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の使用であって、前記代謝障害が、代謝性アシドーシス、組織における長期最終糖化反応産物(advanced glycation product)(AGE)形成および/またはメイラード反応生成物形成である使用。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の使用であって、前記代謝性アシドーシスが、高ケトン血症、(高)ケトン症、ケトアシドーシス、(高) ケトン尿症、高乳酸血症、乳酸尿症といった有機酸尿症および乳酸血症である使用。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の使用であって、前記アスパラギン酸塩均等物の少なくとも一部が、少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含んだアスパラギン酸塩源によって提供される使用。
【請求項8】
請求項7に記載の使用であって、前記アスパラギン酸塩源が、前記タンパク質画分の0.2 - 9 wt%の量で遊離アスパラギン酸塩均等物を含む使用。
【請求項9】
請求項7に記載の使用であって、前記アスパラギン酸塩源が、タンパク質、またはその加水分解物の単離物、濃縮物であり、前記タンパク質画分の5 - 100 wt%の量で存在する使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用であって、前記タンパク質がラクトアルブミンに富む乳清またはジャガイモタンパク質である使用。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の使用であって、前記タンパク質画分はさらに、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩(glutamate)均等物の重量比(asp:glu)が、0.41:1から5:1の間でグルタミン酸塩均等物を含む使用。
【請求項12】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の使用であって、前記タンパク質画分が、哺乳類の食肉または肝臓、乳清およびジャガイモから選択される動物由来のタンパク質、ならびにダイズ、ルピナス、エンドウマメおよびマメ(bean)から選択される植物由来のタンパク質を含む使用。
【請求項13】
哺乳類の血液中における、ケトン体、乳酸塩および/または有機酸の濃度上昇、および/またはpHの恒常性の不足に関連した、代謝障害の予防および/または治療のための経腸組成物の製造における、アスパラギン酸塩均等物ならびにビタミンB12およびビオチンの内の少なくとも一つの使用であって、前記アスパラギン酸塩均等物が、一日当り140 - 400 mg/kg体重の量で投与される使用。
【請求項14】
それぞれ15 - 22 en%および25 - 50 en%を提供する、タンパク質画分および炭水化物画分を含む経腸栄養組成物であって、該タンパク質画分が、該タンパク質画分の総重量を基準として少なくとも10.8 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含み、および前記組成物がさらに、ビタミンB12およびビオチンの内の少なくとも一つを含む、経腸栄養組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の経腸栄養組成物であって、該組成物1 kg当り2.5 - 500μgの量でビタミンB12を含む経腸栄養組成物。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の経腸栄養組成物であって、該組成物1 kg当り10 - 10000μgの量でビオチンを含む経腸栄養組成物。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の経腸栄養組成物であって、前記タンパク質画分が、少なくとも12.0 wt%のアスパラギン酸塩均等物を含むアスパラギン酸塩源を含んだ経腸栄養組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の経腸栄養組成物であって、前記アスパラギン酸塩源が、前記タンパク質画分の0.2 - 9 wt%の量で遊離アスパラギン酸塩均等物を含む経腸栄養組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の経腸栄養組成物であって、前記アスパラギン酸塩源が、タンパク質、またはその加水分解物の単離物、濃縮物であり、前記タンパク質画分の5 - 100 wt%の量で存在する経腸栄養組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の経腸栄養組成物であって、前記タンパク質が、ラクトアルブミンに富む乳清またはジャガイモタンパク質である経腸栄養組成物。
【請求項21】
請求項14から請求項20のいずれか1項に記載の経腸栄養組成物であって、前記タンパク質画分がさらに、アスパラギン酸塩均等物とグルタミン酸塩均等物の重量比(asp:glu)が、0.41:1から5:1の間でグルタミン酸塩均等物を含む経腸栄養組成物。
【公表番号】特表2008−506772(P2008−506772A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522448(P2007−522448)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000520
【国際公開番号】WO2006/009438
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000520
【国際公開番号】WO2006/009438
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]