説明

ケトン類化合物を不斉水素添加する方法

【課題】操作が簡便で、選択性及び生産性が高く、良好なアトムエコノミー及び良好な工業化への応用可能性を有する、ケトン類化合物を不斉水素添加する方法を提供する。
【解決手段】本発明のケトン類化合物を不斉水素添加する方法は、水素雰囲気で、キラル配位子と金属ルテニウム塩とから得られたin−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えてケトン類化合物を不斉水素添加反応させるステップを含む。前記in−situ触媒は前記キラル配位子と前記金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることにより得られることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機及び医薬品合成化学の分野に関し、具体的には、ケトン類化合物に対して不斉水素添加を行う方法に関する。本発明は、プロキラルのケトンをキラルアルコールに還元する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
光学活性であるアルコール類化合物は、医薬品、農薬、香料などの精密化学工業分野での応用が非常に広がっており、近年、その各種の合成方法に対する研究が日増しに増大している。プロキラルのケトンの不斉水素添加は、光学活性であるアルコールを製造する最も重要な方法の一つである。該方法は、触媒活性が高く、反応速度が速く、アトムエコノミーが高く、生成物の分離が簡便で、後処理が簡単で、副反応が少ないので、幅広い注目を集めている。
【0003】
そのため、多くのキラル配位子がプロキラルのケトンの不斉水素添加反応に開発されて応用されており、そのうち、代表的なものは、日本の化学者である野依の発明したBINAP類配位子(特許文献1)であり、多くのケトン類化合物の不斉水素添加に対していずれも優れた選択性を実現している。但し、該配位子の合成は相対的に複雑で、コストが高く、更に安定的に保存できない。また、その上多くのキラル配位子がケトンの不斉水素添加に開発されて応用されており、例えば、非特許文献1においては、キラル配位子PennPhosとルテニウムとの錯体を用いてケトンに対する不斉水素添加の適用について言及しているが、選択性がそれほど高くなく、配位子の合成が難しく、安定性が極めて悪く、工業化生産への応用が難しく、かつ金属ロジウムを用いるため反応におけるコストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP0901997A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】張緒穆ら、“Highly Enantioselective Hydrogenation of Simple Ketones Catalyzed by a Rh-PennPhos Complex(ルテニウムとPennPhosとの錯体による単純ケトンに対する高選択的不斉水素添加)”、Angew. Chem., Int. Ed.(ドイツ応用化学会誌)、1998年、第37巻、1100−1103頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の従来技術に存在する欠点を克服するために鋭意検討を行った上で完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケトン類化合物を不斉水素添加する方法を提供することを目的とするものであり、簡便かつ効率的に光学活性のアルコール類化合物を合成できることにより、医薬品及び精密化学工業などの分野に応用できる。
【0008】
本発明は、以下の方法により行われる。
本発明のケトン類化合物を不斉水素添加する方法は、水素雰囲気で、キラル配位子と金属ルテニウム塩とから得られたin−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させるステップを含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、水素雰囲気で、キラル配位子と金属ルテニウム塩とから得られたin−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させるステップを含むことを特徴とする不斉水素が添加されたケトン類化合物の製造方法を提供する。
【0010】
本発明において、in−situ触媒はキラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることにより得られる。
【0011】
また、本発明は、キラル配位子が下記一般式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(IV)において、Mは鉄又はルテニウムであり、Rはメチル基、C2−C8の飽和脂肪族基、フェニル基又はベンジル基を表し、Arはフェニル基又は置換フェニル基である。本発明は、一般式(IV)において、Mは鉄又はルテニウムであり、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、フェニル基又はベンジル基を表し、Arはフェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジーtert−ブチルフェニル基又は3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基を表すことが更に好ましい。
【0014】
また、本発明は、金属ルテニウム塩がトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー及びジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマーの中から選ばれるいずれか1種の塩であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、金属ルテニウム塩由来のルテニウムとキラル配位子のモル比が1:0.5〜0.7であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、第1溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン及びキシレンから選ばれるいずれか1種の溶媒であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、反応温度が30℃〜140℃で、反応時間が0.5時間〜3時間であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、第2溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン及びキシレンから選ばれるいずれか1種の溶媒であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、ケトン類化合物が下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(I)において、R1はC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、R2はC4−C20の置換基を有し若しくは置換基を有していない芳香族基又は芳香族複素環基、又はC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、
一般式(II)において、R3は−OR5、−NHR6、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、C1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、n1は0−4であり、ここで、R5及びR6はそれぞれ独立してC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基を表し、
一般式(III)において、R4は−OR7、−NHR8、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、C1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、n2は0−4であり、ここで、R7及びR8はそれぞれ独立してC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基を表す。
【0022】
また、本発明は、アルカリがカリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムの中から選ばれるいずれか1種のアルカリであることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、アルカリとケトン類化合物のモル比が0.2〜0.02:1であることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、反応温度が−20〜50℃で、水素圧力が3〜50大気圧で、反応時間が6〜72時間であることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる第1ステップと、水素雰囲気で、前記in−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる第2ステップとを含み、且つ、第1ステップで得られたin−situ触媒に対して単独で分離を行わず、第1ステップと第2ステップとを連続して行うことがより好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明はフェロセン又はルテノセンを骨格とするC2対称の面キラル配位子を用いることにより上述の従来技術の多くの欠点を克服する。本発明の明らかな長所は、主に、(1)3〜4ステップのみで配位子が得られ、かつ生産性が高いため合成が容易であり、(2)この種の配位子は水と酸素に対しいずれも安定なため、保存及び使用が容易であり、(3)この種のC2対称の面キラル配位子が2つの中心を有する構造であるため、1分子の配位子が2分子のルテニウム金属と配位されて2つの反応中心を形成でき、よってアトムエコノミーが高く、(4)大部分のケトン基質に対して100%の転化と最高で99.7%の立体選択性とを実現できるため触媒効果が良好である、という点で示される。以上の多くの長所により、本発明に用いられるC2対称の面キラル配位子をケトンの不斉還元に応用する方法は、工業化への可能性が非常に高い。
本発明は、操作が簡単で、転化率と選択性が高く、低コストで、アトムエコノミーが高く、環境にやさしいなどの長所があり、非常に明らかな工業化への応用可能性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、本発明は、in−situ触媒の存在下、ケトン類化合物の不斉水素添加反応が行われる。該in−situ触媒は、金属ルテニウム塩とキラル配位子との錯体であり、かつそのうちのキラル配位子はC2対称の面キラルフェロセン又はルテノセン類配位子であり、その構造式は上述の一般式(IV)に示したとおりである。
【0028】
一般式(IV)において、Mは鉄又はルテニウムであり、Rはメチル基、C2−C8の飽和脂肪族基、フェニル基又はベンジル基であり、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、フェニル基又はベンジル基を表すことが好ましい。ArはC4−C10の置換基を有し若しくは置換基を有していない芳香族基であり、該芳香族基上の置換基としては、C1〜C4のアルキル基、C4−C10アルコキシ基又はC4−C10ハロアルキル基が挙げられる。Arはフェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基又は3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基を表すことが好ましい。
【0029】
本発明の金属ルテニウム塩において、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリドは、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)ジクロリドとも称され、その英語名はTris(triphenylphosphine)ruthenium(II) chlorideであり、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマーはベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマーとも称され、その英語名はbenzeneruthenium(II) chloridedimerであり、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムジクロリドダイマーはジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウム(II)ジクロリド又はジクロロp−シメンルテニウムダイマーとも称され、その英語名はDichloro(p-cymene)ruthenium(II)dimerである。
【0030】
本発明において、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、金属ルテニウム塩由来のルテニウムとキラル配位子のモル比が1:0.5〜0.7であることが好ましく、1:0.5〜0.65であることがより好ましく、1:0.5〜0.6であることが更に好ましく、1:0.5〜0.55であることが特に好ましい。
【0031】
本発明において、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、反応温度は必要に応じて任意に設定可能であるが、反応効率及び操作安定性から、反応温度は30〜140℃であることが好ましく、40〜120℃であることがより好ましく、40〜105℃であることが更に好ましく、65〜85℃であることが特に好ましい。
【0032】
本発明において、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、反応効率の観点から、攪拌を行うことが好ましい。反応効率及び操作安定性を総括的に鑑みて、攪拌速度は200〜800回/分間であることが好ましく、300〜600回/分間であることがより好ましく、400〜500回/分間であることが更に好ましい。攪拌方法は任意に選択可能であり、例えば、攪拌翼を用いた攪拌装置又は攪拌子を用いたマグネチックスターラーなどを用いてもよい。
【0033】
本発明において、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、反応収率の観点から、反応時間は0.5〜3時間であることが好ましく、1〜2時間であることがより好ましく、1〜1.5時間であることが更に好ましい。
【0034】
本発明において、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、上述の反応温度、攪拌速度及び反応時間を任意に組み合わせてもよいことは明らかである。
【0035】
本発明において、不斉水素添加を行うケトン類化合物は、上述のような一般的(I)、(II)又は(III)で表される化合物である。一般式(I)において、R1はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基などであることが好ましい。R2はC4−C20の置換基を有するか若しくは置換基を有していない芳香族基又は芳香族複素環基であることが好ましい。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基などが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基及びチエニル基などが挙げられる。芳香族基上の置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基及びフェニル基などが挙げられる。これらの芳香族基上の置換基は単置換、二置換及び三置換のいずれであってもよい。また、これらの置換基の芳香族基上における置換位置については特に限定されない。更に具体的には、一般式(I)で表される化合物としては、アセトフェノン、m−メチルアセトフェノン、o−メチルアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、m−クロロアセトフェノン、o−クロロアセトフェノン、p−クロロアセトフェノン、m−メトキシアセトフェノン、o−メトキシアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、p−ブロモアセトフェノン、p−フルオロアセトフェノン、3,4−ジクロロアセトフェノン、2,4−ジフルオロアセトフェノン、m−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、p−フェニルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、3,4−ジメトキシアセトフェノン、3,4,5−トリメトキシアセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、イソブチロフェノン、p−メチルオクタノフェノン、3−アセチルピリジル、2−アセチルフランなどが挙げられる。
【0036】
一般式(II)において、R3は−OCH3、−NHCH3、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基又はtert−ブチル基などであることが好ましい。n1は0、1、2、3又は4であることが好ましい。更に具体的には、一般式(II)で表される化合物としては、1−テトラロン、1−インダノン及び5−メトキシ−1−テトラロンなどが挙げられる。
【0037】
一般式(III)において、R4は−OCH3、−NHCH3、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基又はn−アミル基などであることが好ましく、n2は0、1、2、3又は4であることが好ましい。更に具体的には、一般式(III)で表される化合物としては、1−メチルシクロペンタノン、2−フルオロシクロヘキサノン及び2−メトキシシクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0038】
本発明に用いられるアルカリとしては、無機アルカリであってもよく、あるいは有機アルカリであってもよい。例えば、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。更に具体的には、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、アルカリとケトン類化合物のモル比は0.2〜0.02:1であることが好ましく、0.15〜0.03:1であることがより好ましく、0.15〜0.04:1であることが更に好ましく、0.1〜0.06:1であることが特に好ましく、とりわけ0.1〜0.08:1であることが好ましい。
【0040】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、ケトン類化合物とin−situ触媒のモル比は好ましくは100〜5000:1である。このとき、実質的にケトン類化合物とin−situ触媒のモル比についてはいかなる限定もない。in−situ触媒の触媒効率が高いので、少量のin−situ触媒を使う場合においても、ケトン類化合物の不斉水素添加を難なく行うことができ、かつ高い転化率及び誘導効果が得られる。この点は、以下の実施例からも分かる。
【0041】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、反応温度は必要に応じて任意に設定してもよい。反応効率及び操作安定性の観点から、反応温度は−20〜50℃であることが好ましく、−10〜40℃であることがより好ましく、−10〜25℃であることが更に好ましく、0〜20℃であることが特に好ましく、とりわけ10℃〜20℃であることが好ましい。
【0042】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、反応効率の観点から、攪拌を行うことが好ましい。反応効率及び操作安定性を総括的に鑑みて、攪拌速度は200〜800回/分間であることが好ましく、300〜600回/分間であることがより好ましく、400〜500回/分間であることが更に好ましい。攪拌方法は任意に選択可能であり、例えば、攪拌翼を用いた攪拌装置又は攪拌子を用いたマグネチックスターラーなどを用いてもよい。
【0043】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、反応時間については制限されないが、反応収率の観点から、反応時間は6〜72時間であることが好ましく、12〜48時間であることがより好ましく、12〜24時間であることが更に好ましく、18〜24時間であることが更に好ましい。
【0044】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、水素圧力については制限されないが、反応収率の観点から、反応圧力は3〜50大気圧(以下、“atm”とする場合がある)であることが好ましく、5〜40大気圧であることがより好ましく、10〜20大気圧であることが更に好ましく、10〜15大気圧であることが更に好ましい。
【0045】
本発明において、ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、上述の反応温度、攪拌速度、反応時間及び水素圧力を任意に組み合わせてもよいことは明らかである。
【0046】
本発明において、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる際に、及びケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、加熱しながら攪拌することが好ましく、このようにすることで、反応時間を短縮可能であり、かつ反応効率を向上できる。
【0047】
本発明において、第1溶媒と第2溶媒とは同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。操作が容易で簡便であることから、第1溶媒と第2溶媒とは同一の溶媒であることが好ましい。
【0048】
本発明は、以下のように、キラル配位子と金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることによりin−situ触媒が得られる第1ステップと、水素雰囲気で、キラル配位子と金属ルテニウム塩とから得られたin−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる第2ステップとを含み、且つ、第1ステップで得られたin−situ触媒に対して単独で分離を行わず、第1ステップと第2ステップとを連続して行うことがより好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。本実施例では、本発明の技術方案を前提として実施し、詳しい実施方式及び具体的な操作過程を提示するが、本発明の保護範囲は以下の実施例に限定されるものでないことは明らかである。
以下の実施例において、“mol%”で表すのはケトン類化合物に対する該物質のモル%である。
【0050】
〔実施例1〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化3】

【0051】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=4−MeC64−、2.6μmmol、0.65mol%)とをメタノール(3mL)に溶かし、65℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、メタノール(2mL)及び水酸化ナトリウムのメタノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0052】
〔実施例2〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化4】

【0053】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=s−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをエタノール(3mL)に溶かし、80℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、エタノール(2mL)及び水酸化カリウムのエタノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(20atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.0%)が測定される。
【0054】
〔実施例3〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化5】

【0055】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=Me、Ar=3,5−(CF3263−、2.6μmmol、0.65mol%)とをトルエン(3mL)に溶かし、120℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、トルエン(2mL)及び水酸化カリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(20atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.3%)が測定される。
【0056】
〔実施例4〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化6】

【0057】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=n−Pr、Ar=3,5−t−Bu263−、1.3μmmol、0.33mol%)とをテトラヒドロフラン(3mL)に溶かし、65℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)及び炭酸ナトリウムの水溶液(0.2mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(20atm)の条件で48時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0058】
〔実施例5〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化7】

【0059】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=Bn、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及びカリウムtert-ブトキシドのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(20atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.1%)が測定される。
【0060】
〔実施例6〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化8】

【0061】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(0.5mg、1μmmol、0.25mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=Ph、Ar=4−MeOC64−、2.6μmmol、0.33mol%)とをジエチルエーテル(3mL)に溶かし、40℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.8mmol)、ジエチルエーテル(2mL)及び炭酸ナトリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、50℃及びH2(40atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0062】
〔実施例7〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化9】

【0063】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをテトラヒドロフラン(3mL)に溶かし、65℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)及びナトリウムエトキシドのテトラヒドロフラン溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0064】
〔実施例8〕
アセトフェノンより1−フェニルエタノールを製造する。
【化10】

【0065】
窒素雰囲気で、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマー(1.2mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=3,5−Me263−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、アセトフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及びナトリウムエトキシドのイソプロパノール溶液(0.8mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−フェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.1%)が測定される。
【0066】
〔実施例9〕
m−メチルアセトフェノンより1−m−メチルフェニルエタノールを製造する。
【化11】

【0067】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをジクロロメタン(3mL)に溶かし、40℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、m−メチルアセトフェノン(0.4mmol)、ジクロロメタン(2mL)及び水酸化リチウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(20atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−m−メチルフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.0%)が測定される。
【0068】
〔実施例10〕
o−メチルアセトフェノンより1−o−メチルフェニルエタノールを製造する。
【化12】

【0069】
窒素雰囲気で、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマー(1.2mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=i−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをトルエン(3mL)に溶かし、120℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、o−メチルアセトフェノン(0.4mmol)、トルエン(2mL)及び水酸化カリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−o−メチルフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0070】
〔実施例11〕
p−メチルアセトフェノンより1−p−メチルフェニルエタノールを製造する。
【化13】

【0071】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.33mol%)とをジエチルエーテル(3mL)に溶かし、40℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−メチルアセトフェノン(0.8mmol)、ジエチルエーテル(2mL)及びカリウムエトキシドのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−メチルフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.3%)が測定される。
【0072】
〔実施例12〕
m−クロロアセトフェノンより1−m−クロロフェニルエタノールを製造する。
【化14】

【0073】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.33mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、m−クロロアセトフェノン(0.8mmol)、イソプロパノール(2mL)及びカリウムメトキシドのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(50atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−m−クロロフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0074】
〔実施例13〕
o−クロロアセトフェノンより1−o−クロロフェニルエタノールを製造する。
【化15】

【0075】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(0.5mg、1μmmol、0.25mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.33mol%)とをメタノール(3mL)に溶かし、65℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、o−クロロアセトフェノン(0.8mmol)、メタノール(2mL)及びナトリウムtert-ブトキシドのメタノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、50℃及びH2(40atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−o−クロロフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0076】
〔実施例14〕
p−クロロアセトフェノンより1−p−クロロフェニルエタノールを製造する。
【化16】

【0077】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=n−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをエタノール(3mL)に溶かし、80℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−クロロアセトフェノン(0.4mmol)、エタノール(2mL)及びナトリウムエトキシドのエタノール溶液(0.2mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(5atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−クロロフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0078】
〔実施例15〕
m−メトキシアセトフェノンより1−m−メトキシフェニルエタノールを製造する。
【化17】

【0079】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、m−メトキシアセトフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及びナトリウムメトキシドのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、40℃及びH2(5atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−m−メトキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.2%)が測定される。
【0080】
〔実施例16〕
o−メトキシアセトフェノンより1−o−メトキシフェニルエタノールを製造する。
【化18】

【0081】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(1.0mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをキシレン(3mL)に溶かし、140℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、o−メトキシアセトフェノン(0.4mmol)、キシレン(2mL)及び水酸化カリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(3atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−o−メトキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0082】
〔実施例17〕
p−メトキシアセトフェノンより1−p−メトキシフェニルエタノールを製造する。
【化19】

【0083】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=i−Pr、Ar=3,5−Me263−、1.3μmmol、0.33mol%)とをテトラヒドロフラン(3mL)に溶かし、65℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−メトキシアセトフェノン(0.4mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)及び炭酸水素ナトリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、40℃及びH2(20atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−メトキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.1%)が測定される。
【0084】
〔実施例18〕
p−ブロモアセトフェノンより1−p−ブロモフェニルエタノールを製造する。
【化20】

【0085】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=n−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをエタノール(3mL)に溶かし、80℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−ブロモアセトフェノン(0.4mmol)、エタノール(2mL)及びナトリウムメトキシドのエタノール溶液(0.8mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−ブロモフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0086】
〔実施例19〕
p−フルオロアセトフェノンより1−p−フルオロフェニルエタノールを製造する。
【化21】

【0087】
窒素雰囲気で、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマー(1.2mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とを1,4−ジオキサン(3mL)に溶かし、105℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−フルオロアセトフェノン(0.4mmol)、1,4−ジオキサン(2mL)及び炭酸ナトリウムの1,4−ジオキサン溶液(0.8mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(5atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−フルオロフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0088】
〔実施例20〕
3,4−ジクロロアセトフェノンより1−3,4−ジクロロフェニルエタノールを製造する。
【化22】

【0089】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(1.0mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=s−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、3,4−ジクロロアセトフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(3mL)及びカリウムtert-ブトキシドのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、−20℃及びH2(3atm)の条件で72時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−3,4−ジクロロフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=95%)が測定される。
【0090】
〔実施例21〕
2,4−ジフルオロアセトフェノンより1−2,4−ジフルオロフェニルエタノールを製造する。
【化23】

【0091】
窒素雰囲気で、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマー(1.2mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、2,4−ジフルオロアセトフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及び水酸化ナトリウムの水溶液(1.0mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(20atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−2,4−ジフルオロフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=93%)が測定される。
【0092】
〔実施例22〕
m−ヒドロキシアセトフェノンより1−m−ヒドロキシフェニルエタノールを製造する。
【化24】

【0093】
窒素雰囲気で、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマー(1.2mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=Bn、Ar=3,5−Me263−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、m−ヒドロキシアセトフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及びナトリウムエトキシドのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(50atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/2である)で分離し、純品として1−m−ヒドロキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0094】
〔実施例23〕
o−ヒドロキシアセトフェノンより1−o−ヒドロキシフェニルエタノールを製造する。
【化25】

【0095】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=Ph、Ar=C65−、1.3μmmol、0.33mol%)とをキシレン(3mL)に溶かし、140℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、o−ヒドロキシアセトフェノン(0.4mmol)、キシレン(2mL)及び水酸化ナトリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/2である)で分離し、純品として1−o−ヒドロキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0096】
〔実施例24〕
p−アミノアセトフェノンより1−p−アミノフェニルエタノールを製造する。
【化26】

【0097】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=t−Bu、Ar=3,5−(CF3263−、1.3μmmol、0.33mol%)とをテトラヒドロフラン(3mL)に溶かし、65℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−アミノアセトフェノン(0.4mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)及び炭酸ナトリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(20atm)の条件で48時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/1である)で分離し、純品として1−p−アミノフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0098】
〔実施例25〕
p−フェニルアセトフェノンより1−p−フェニルフェニルエタノールを製造する。
【化27】

【0099】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、1.3μmmol、0.33mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−フェニルアセトフェノン(0.8mmol)、イソプロパノール(2mL)及び炭酸カリウムのイソプロパノール溶液(0.8mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、−20℃及びH2(10atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−フェニルフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.2%)が測定される。
【0100】
〔実施例26〕
1−アセトナフトンより1−(1−ナフチル)エタノールを製造する。
【化28】

【0101】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=Me、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とを1,4−ジオキサン(3mL)に溶かし、105℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、1−アセトナフトン(0.4mmol)、1,4−ジオキサン(2mL)及びカリウムtert-ブトキシドの1,4−ジオキサン溶液(0.4mL、0.4M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(40atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−(1−ナフチル)エタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0102】
〔実施例27〕
2−アセトナフトンより1−(2−ナフチル)エタノールを製造する。
【化29】

【0103】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=3,5−t−Bu263−、2.6μmmol、0.65mol%)とをジクロロメタン(3mL)に溶かし、40℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、2−アセトナフトン(0.4mmol)、ジクロロメタン(2mL)及び水酸化カリウムの水溶液(0.2mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、50℃及びH2(10atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−(2−ナフチル)エタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0104】
〔実施例28〕
3,4−ジメトキシアセトフェノンより1−3,4−ジメトキシフェニルエタノールを製造する。
【化30】

【0105】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(0.38mg、0.4μmmol、0.1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=t−Bu、Ar=C65−、0.26μmmol、0.065mol%)とをトルエン(3mL)に溶かし、120℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、3,4−ジメトキシアセトフェノン(0.4mmol)、トルエン(2mL)及び炭酸ナトリウムの水溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−3,4−ジメトキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=96%)が測定される。
【0106】
〔実施例29〕
3,4,5−トリメトキシアセトフェノンより1−3,4,5−トリメトキシフェニルエタノールを製造する。
【化31】

【0107】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをエタノール(3mL)に溶かし、80℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、3,4,5−トリメトキシアセトフェノン(0.4mmol)、エタノール(2mL)及びナトリウムtert-ブトキシドのエタノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(10atm)の条件で48時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−3,4,5−トリメトキシフェニルエタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=97%)が測定される。
【0108】
〔実施例30〕
プロピオフェノンより1−フェニルプロパノールを製造する。
【化32】

【0109】
窒素雰囲気で、ジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマー(1.2mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、プロピオフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及び炭酸ナトリウムのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、10℃及びH2(5atm)の条件で24時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/8である)で分離し、純品として1−フェニルプロパノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.2%)が測定される。
【0110】
〔実施例31〕
ブチロフェノンより1−フェニルブタノールを製造する。
【化33】

【0111】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(1.0mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=3,5−t−Bu263−、2.6μmmol、0.65mol%)とをイソプロパノール(3mL)に溶かし、85℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、ブチロフェノン(0.4mmol)、イソプロパノール(2mL)及び水酸化ナトリウムのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.4M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、40℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/8である)で分離し、純品として1−フェニルブタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.2%)が測定される。
【0112】
〔実施例32〕
イソブチロフェノンより2−メチル−1−フェニル−1−ブタノールを製造する。
【化34】

【0113】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(1.0mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=i−Pr、Ar=4−MeC64−、2.6μmmol、0.65mol%)とをキシレン(3mL)に溶かし、140℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、イソブチロフェノン(0.4mmol)、キシレン(2mL)及び炭酸ナトリウムのイソプロパノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、40℃及びH2(5atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として2−メチル−1−フェニル−1−ブタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.3%)が測定される。
【0114】
〔実施例33〕
バレロフェノンより1−フェニルペンタノールを製造する。
【化35】

【0115】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、1.3μmmol、0.33mol%)とをキシレン(3mL)に溶かし、140℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、バレロフェノン(0.4mmol)、キシレン(2mL)及び水酸化カリウムのメタノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(10atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/8である)で分離し、純品として1−フェニルペンタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.6%)が測定される。
【0116】
〔実施例34〕
p−メチルオクタノフェノンより1−p−メチルフェニルオクタノールを製造する。
【化36】

【0117】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、1.3μmmol、0.33mol%)とをキシレン(3mL)に溶かし、140℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、p−メチルオクタノフェノン(0.8mmol)、キシレン(2mL)及び水酸化カリウムのメタノール溶液(0.8mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、50℃及びH2(10atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−p−メチルフェニルオクタノールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.0%)が測定される。
【0118】
〔実施例35〕
3−アセチルピリジルより3−(1−ヒドロキシエチル)ピリジルを製造する。
【化37】

【0119】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(3.8mg、4μmmol、1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=t−Bu、Ar=C65−、2.6μmmol、0.65mol%)とをテトラヒドロフラン(3mL)に溶かし、65℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、3−アセチルピリジル(0.4mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)及びカリウムエトキシドのエタノール溶液(0.1mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(50atm)の条件で6時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/1である)で分離し、純品として3−(1−ヒドロキシエチル)ピリジルが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=93%)が測定される。
【0120】
〔実施例36〕
2−アセチルフランより2−(1−ヒドロキシエチル)フランを製造する。
【化38】

【0121】
窒素雰囲気で、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー(1.0mg、2μmmol、0.1mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Fe、R=t−Bu、Ar=4−MeOC64−、2.6μmmol、0.13mol%)とをイソプロパノール(15mL)に溶かし、85℃の条件で0.5時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、2−アセチルフラン(2.0mmol)、イソプロパノール(15mL)及びカリウムメトキシドのイソプロパノール溶液(2.0mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、−20℃及びH2(40atm)の条件で48時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として2−(1−ヒドロキシエチル)フランが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=98%)が測定される。
【0122】
〔実施例37〕
1−テトラロンより1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールを製造する。
【化39】

【0123】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(1.9mg、2μmmol、0.5mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、1.3μmmol、0.33mol%)とをエタノール(3mL)に溶かし、80℃の条件で1時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、1−テトラロン(0.4mmol)、エタノール(2mL)及び水酸化カリウムのエタノール溶液(0.4mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、0℃及びH2(10atm)の条件で48時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.7%)が測定される。
【0124】
〔実施例38〕
1−インダノンより1−ヒドロキシインダンを製造する。
【化40】

【0125】
窒素雰囲気で、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド(0.76mg、0.8μmmol、0.2mol%)とキラル配位子(一般式(IV)で表される化合物であり、M=Ru、R=i−Pr、Ar=C65−、0.52μmmol、0.13mol%)とをジエチルエーテル(3mL)に溶かし、40℃の条件で2時間加熱して攪拌する。室温まで冷却し、1−インダノン(0.4mmol)、ジエチルエーテル(2mL)及び炭酸カリウムの水溶液(0.2mL、0.2M)を加える。反応系をオートクレーブ内に置き、25℃及びH2(5atm)の条件で12時間攪拌する。溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムを採用し、溶出剤は酢酸エチル/石油エーテル=1/5である)で分離し、純品として1−ヒドロキシインダンが得られ、生成物はGC分析によってee値(ee=99.5%)が測定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素雰囲気で、キラル配位子と金属ルテニウム塩とから得られたin−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させるステップを含むことを特徴とするケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項2】
前記in−situ触媒は、前記キラル配位子と前記金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項3】
前記キラル配位子は、下記一般式(IV)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【化1】

(一般式(IV)において、Mは鉄又はルテニウムであり、Rはメチル基、C2−C8の飽和脂肪族基、フェニル基又はベンジル基を表し、ArはC4−C10の置換基を有するか又は置換基を有していない芳香族基である。)
【請求項4】
一般式(IV)において、
Mは鉄又はルテニウムであり、
Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、フェニル基又はベンジル基を表し、
Arはフェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジーtert−ブチルフェニル基又は3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基を表すことを特徴とする請求項3に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項5】
前記金属ルテニウム塩は、トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンゼンルテニウムジクロリドダイマー及びジクロロビス(4−メチルイソプロピルフェニル)ルテニウムダイマーの中から選ばれるいずれか1種の塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項6】
前記キラル配位子と前記金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることにより前記in−situ触媒が得られる際に、前記金属ルテニウム塩由来のルテニウムと前記キラル配位子のモル比が1:0.5〜0.7であることを特徴とする請求項2に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項7】
前記第1溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン及びキシレンから選ばれるいずれか1種の溶媒であることを特徴とする請求項2に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項8】
前記キラル配位子と前記金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることにより前記in−situ触媒が得られる際に、反応温度が30℃〜140℃で、反応時間が0.5時間〜3時間であることを特徴とする請求項2に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項9】
前記第2溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン及びキシレンから選ばれるいずれか1種の溶媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項10】
前記ケトン類化合物は下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【化2】

(一般式(I)において、R1はC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、R2はC4−C20の置換基を有し若しくは置換基を有していない芳香族基又は芳香族複素環基、又はC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、
一般式(II)において、R3は−OR5、−NHR6、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、C1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、n1は0−4であり、ここで、R5及びR6はそれぞれ独立してC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基を表し、
一般式(III)において、R4は−OR7、−NHR8、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、C1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基であり、n2は0−4であり、ここで、R7及びR8はそれぞれ独立してC1−C15の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基、又はC3−C15の環状飽和炭化水素基を表す。)
【請求項11】
前記アルカリは、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムの中から選ばれるいずれか1種のアルカリであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項12】
前記アルカリと前記ケトン類化合物のモル比が0.2〜0.02:1であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項13】
前記ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる際に、反応温度が−20〜50℃で、水素圧力が3〜50大気圧で、反応時間が6〜72時間であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項14】
前記キラル配位子と前記金属ルテニウム塩とを第1溶媒で反応させることにより前記in−situ触媒が得られる第1ステップと、
水素雰囲気で、前記キラル配位子と前記金属ルテニウム塩とから得られた前記in−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させる第2ステップとを含み、
且つ、第1ステップで得られたin−situ触媒に対して単独で分離を行わず、第1ステップと第2ステップとを連続して行うことを特徴とする請求項2に記載のケトン類化合物を不斉水素添加する方法。
【請求項15】
水素雰囲気で、キラル配位子と金属ルテニウム塩とから得られたin−situ触媒の存在下、第2溶媒にケトン類化合物とアルカリとを加えて該ケトン類化合物を不斉水素添加反応させるステップを含むことを特徴とする不斉水素が添加されたケトン類化合物の製造方法。

【公開番号】特開2013−43888(P2013−43888A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164529(P2012−164529)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】