説明

ケト原性食

本発明は、少なくとも2種の異なる源に由来するタンパク質、脂質及び消化可能な炭化水素を含有し、乾燥質量100g当たり2520〜3080キロジュールを提供する、固体又は半固体の栄養組成物に関する。タンパク質と消化可能な炭化水素との合計に対する脂質の重量は、2.6〜3.8対1である。組成物は、水中に溶解して液体食品を提供し得る。組成物は、特に癲癇性幼児のための栄養調合物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誕生から12ヶ月齢迄の癲癇患者による経腸使用に適切であり、少量のトランス脂肪酸、高いエネルギー密度、及び比較的大量のタンパク質を含有するケト原性食として使用し得る、良好な味の単一製品に関する。
【背景技術】
【0002】
人の身体は、必要とされるエネルギーを主としてタンパク質、脂質及び消化可能な炭水化物の摂食及び代謝から誘導する。典型的な洋風食では、消化可能な炭水化物は、エネルギーの大半を提供しており、殆どの場合、消化可能な炭水化物及びタンパク質の換算係数として1グラム当たり4kcal、即ち16.8kJ、脂質の換算係数として9kcal、即ち37.8kJを使用して50エネルギー%を超えるエネルギーを提供する。消化可能な炭水化物の代謝により、人体のためのエネルギー源として好ましいブドウ糖が優位に放出される。特殊な条件下では、人の細胞の殆どがエネルギー源として例えばアミノ酸、脂肪酸及びケトン等、他の有機化合物も使用し得る。脂質量に対する炭水化物量の増加は、一般に、製品のケト原性の性質を低下させると考えられている。従って、小児性癲癇のための古典的なケト原性製品は、重量ベースで計算して、タンパク質と消化可能な炭水化物との合計の4倍の脂質を提供する。
【0003】
ケト原性食は、摂取、消化及び代謝後に、主要エネルギー源としてケトンを提供する食品である。これらのケトン化合物は、特にアセトアセテート、D−3ヒドロキシブチレート及びアセトンを含む。オキサロ酢酸のようなケト酸は、ケト体として計算されない。特に、ケト原性食は、食物製品の乾燥質量100g当たり60g超、つまり77エネルギー%超の脂質を含有する。
【0004】
ケト原性食は、癲癇発作の治療のため及び肥満症や体重管理の処置において使用されている。このような食品は、各々がその食品に適合する様々な異なる食物から構成されてもよく、又は単独の栄養物として使用される場合、人の栄養状態を完全なものとするよう使用される、一つの単一製品から構成されてもよい。Ketocalと称される製品は後者のカテゴリーに属し、癲癇、特に年少乳児の難治性癲癇に対抗(combating)するために使用されている。該製品は、乾燥物100g当たり3011キロジュールを提供し、乾燥物100g当たりタンパク質15.25g、脂質73g及び消化可能な炭水化物3gを含有する。飽和脂肪酸の量は、トリグリセリドの約22重量%である。しかしながら、極度に少量の炭水化物、及び脂質の性質は、該製品を人が摂取するのに最適なものとしなかった。したがって、本発明の目的は、ケト原性の特性、耐性、安全性及びより少量のトランス脂肪酸の観点から、より良好な脂肪酸部分を提供する一方、より良好な味の、非常に効果的な製品を提供することにある。
【0005】
欧州特許第0843972号には、組成物の33〜63エネルギー%の脂肪及び5〜30エネルギー%のタンパク質を含有し、かつ脂肪酸が、55〜90重量%の中鎖脂肪酸、5〜25重量%のポリ不飽和脂肪酸、及び0〜30重量%の他の脂肪酸を含む、メタボリック症候群又は高トリグリセリド血症に罹患した人への経腸供給のための完全製品が開示されている。パルミチン酸の濃度は非常に低く、脂肪酸を基準として0.5〜1%程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0843972号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の根底にある問題は、乾燥、半固体、又は再構成された液体製品として投与される際、完全栄養物として使用するに適し、また特に高い濃度のケト原性成分を提供し、先行技術による製品の不都合を回避した、幼児癲癇患者の必要性を満たすことを意図した栄養調合物を提供することにある。
【0008】
[発明を解決するための手段]
この問題は、本発明により、消化可能な炭水化物の量を増加させ、成分として特定の脂質を選択することにより解決された。これらの脂質は、異化された際に正しい種類のエネルギーを提供するだけでなく、生合成目的のために、特に、一般に成長遅延に苦しむ小児癲癇患者に使用し得る比較的大量のパルミチン酸をも提供する。
【0009】
本発明の製品は、人、特に幼児、さらに特に幼児性癲癇患者の完全栄養物(perfect nourishment)に適した製品である。したがって、該製品は、タンパク質部分、脂質部分、消化可能な炭水化物部分、ビタミン部分、及びミネラル/微量元素部分、並びに場合により他の成分を含有する。
【0010】
タンパク質部分は、8アミノ酸よりも大きいペプチドを含有することが好ましく、そのことは、潜在的なアレルギー反応により、製品を非経口投与に不適切なものとする。調合物中には、例えば当技術分野にて周知の、ある種のカゼイン等の強力な乳化特性を有するタンパク質が含まれることが好ましい。部分加水分解タンパク質を使用する場合、栄養必要量を満たすために、以下に示すように少なくとも20%の加水分解ホエイを含有することが好ましい。しかしながら、水中での再構成又は液体調合物に使用可能な製品は、飲用に適した製品を得るためにリゾレシチン、酒石酸エステル、又はそれらの組み合わせを安定化系として含有することが好ましいであろう。
【0011】
製品は、例えば粉末、バー、プリン等の固体又は半固体の性質を有する製品であることが好ましい。半固体製品は、使用準備済(ready to use)製品100g当たり40gを超える固体含有量を有する製品であると理解するべきである。より好ましくは、該製品は、水中で再構成されて単一の完全食品として使用される粉末である。粉末は、一次粒子で構成されていてもよく、また凝集した一次粒子又は様々なサイズの粒子の混合物で構成されていてもよい。そのような粉末は、特に流動性の改善に補助が使用される場合に、例えばスプレードライ等の当技術分野にて公知の方法により製造し得る。
【0012】
幼児性癲癇患者に供給するに有用な液体は、0.9〜3.0kcal/ml(3.8〜12.6kJ/ml)、好ましくは1.1〜2.0kcal/ml(4.6〜8.4kJ)、より好ましくは1.2〜1.7(5.0〜7.2kJ/ml)のエネルギー密度を有する。調合物により栄養分を完全に与える際には、特に1.3〜1.6kcal/ml(5.4〜6.7kJ/ml)が有用であると思われる。液体調合物のエネルギー密度が8.4〜12.6kJ/mlの場合、製品は患者の中間強化(intermediate fortification)にも有用である。
【0013】
食間に固体又は半固体製品を中間強化物(intermediate fortifier)として使用する場合、該製品は、製品により提供される100kJ当たり、セリン、コリン、ベタイン、ジメチルグリシン、サルコシン、MSM及びSAMからなる群から選択される添加されるメチル供与体を、4.0mgを超えて、好ましくは8mgを超えて、より好ましくは20〜1000mg含有することが有益である。
【0014】
乾燥製品は、所望であれば、液体食品を容易に形成できるように少なくとも部分的に水溶性である。20℃で水中に10%(w/v)として溶解する場合、乾燥質量の少なくとも50重量%、より好ましくは75重量%が可溶であることが好ましい。
【0015】
製品は、幼児用製品のために比較的高エネルギーである。詳細には、乾燥物100グラム当たり600〜735kcal、即ち2520〜3080kJ、好ましくは2800〜3040kJを提供する。タンパク質及び消化可能な炭水化物に対する脂質の重量比は、2.6〜3.8対1、好ましくは2.7〜3.4対1、さらに好ましくは2.7〜約3対1の範囲内である。
【0016】
消化可能な炭水化物の量は、乾燥質量100g当たり3.2〜9g、好ましくは4〜8.6g、より好ましくは5〜8.2gである。タンパク質の量は、乾燥質量100g当たり13〜18g、好ましくは13.8〜17g、より好ましくは14.2〜16.2gである。脂質の量は、乾燥質量100g当たり60〜80g、好ましくは63〜75g、より好ましくは65〜72gである。
【0017】
タンパク質は、ケト原性食が付与される際に成長遅延を回避、又は拮抗(counteract)さえするために、全部の必須アミノ酸、特に比較的大量のリジン、ロイシン、及び硫黄アミノ酸メチオニン又はシステインを含有する。
【0018】
タンパク質100g当たりのロイシンの量は、一般に9.4gを超え、好ましくは10.2gを超える。リジンは、タンパク質の7.7重量%を超える量、より好ましくは7.9重量%を超える量、最も好ましくは9.1重量%を超える量にて含まれることが好ましいであろう。脂肪使用を促進するために、システインは適切にはタンパク質100g当たり1.8gを超える量、好ましくは2.2gを超える量、さらにより好ましくは2.4gを超える量で含まれる。メチオニンにも同様のことが当てはまり、タンパク質100g当たり1.8gを超える量、好ましくは2.2gを超える量、さらにより好ましくは2.4gを超える量で含まれる。
【0019】
α−ラクトアルブミン、又はこのタンパク質を大量に含む成分を含有することが特に適切である。タンパク質部分中に20重量%を超えるα−ラクトアルブミンが存在すると、ロシン、リジン、メチオニン及びシステインに関する要求、卓越した味の良さ、及び消化特性を容易に満たす。タンパク質部分の20%を超えて、より好ましくは40〜80重量%がα−ラクトアルブミンからなることが好ましい。
【0020】
脂質部分は、トリグリセリド、ジアシル−グリセリド、モノアシル−グリセリド、リン脂質、リゾリン酸、コレステロール及び糖脂質を含有してもよい。脂質源として97%を超えるトリグリセリドを含有することにより、有効性、安全性及び良好な味の観点から卓越した製品が得られるが、消化率は、トリグリセリドの一部をリン脂質、リゾリン脂質、ジアシル−グリセリド及び/又はモノアシル−グリセリドで置き換えることにより改善し得る。このことは便秘を解消し、また二価陽イオン、特にカルシウム、マグネシウム及び亜鉛のバイオアベイラビリティを増大させる。この観点から、(重量ベースで)少なくとも10%、好ましくは14%超、例えば最大25%、又は好ましくは最大20%のトリグリセリドを、リン脂質、リソリン脂質、ジアシルグリセリド及びモノグリセリドのうち1又は複数で置き換えることが有益であると思われる。高過ぎるリン濃度を防ぐために、リン脂質の量は、脂質部分の14%未満、好ましくは8%未満である必要があり、このことは二価陽イオンに消化性を付与し得る。
【0021】
脂質部分は、リノレン酸及びα−リノレン酸を含有しなければならない。これらが一緒になって、(脂肪酸を基準として)15重量%超、特に17重量%超の脂質を提供する。リノレン酸は、組成物の14エネルギー%超、好ましくは15〜25エネルギー%、特に16〜21エネルギー%(因数37.8kJ/g脂肪酸も使用)を提供する。α−リノレン酸は、組成物の少なくとも1.2エネルギー%を提供する必要がある。
【0022】
トランス脂肪酸は除外されるポリ不飽和脂肪酸(即ち、2以上の不飽和結合を有する)の量は、脂質100g当たり16〜40g、好ましくは20〜30gである。脂質部分は、α−リノレン酸以外のω−3ポリ不飽和脂肪酸も含有することが好ましい。詳細には、ポリ不飽和脂肪酸は、0.5重量%超、好ましくは1.0〜10重量%のドコサヘキサエン酸を含有する。ポリ不飽和部分中に、アラキドン酸がポリ不飽和脂肪酸部分の1.0重量%を超えて、最大6重量%含まれることがさらに好ましい。脂質100g当たりのトランス脂肪酸の量は、20g以下、好ましくは0〜10g、より好ましくは0.2〜4gである。
【0023】
飽和脂肪酸の量は、比較的多い。詳細には、飽和脂肪酸の量は、脂肪酸を基準として脂質100g当たり23〜50g、好ましくは25〜45g、より好ましくは33〜44gでなければならない。飽和脂肪酸は、8〜24個の炭素原子を有する。飽和脂肪酸の主要な部分がパルミチン酸(C16:0)であることが好ましい。したがって、パルミチン酸は、脂質100g当たり例えば15〜50g、好ましくは18〜45g、より好ましくは23〜44gを与える。特定の実施態様では、脂質100g当たり30〜37gのパルミチン酸を含有する。したがって、パーム油(palm oil)は、脂質部分の少なくとも50%、好ましくは70〜90%である好ましい源である。残りの脂質部分は、例えば、紅花油、ゴマ油、大豆油若しくはヒマワリ油又はそれらの混合物、好ましくは大豆油(好ましくは2〜30)、中鎖トリグリセリド(8〜14個の炭素原子を有する脂肪酸を含む;0〜14)、海産物油(好ましくは0〜14重量%、より好ましくは2〜12重量%)並びにリン脂質、モノグリセリド及びジグリセリドから選択され得る。
【0024】
モノ不飽和脂肪酸の量は、脂質100g当たり(脂肪酸を基準として)、適切には25〜48g、好ましくは28〜43g、より好ましくは30〜40gである。
【0025】
表1に示す成分の1又は複数、好ましくは少なくとも2、3、4、5個、最も好ましくはこれら全部の成分を含有する油ブレンドは、ケト原性食の製造における使用に非常に適していることが見い出されている。
【0026】
【表1】

【0027】
パーム油(PO)は、食物等級油として定義され、ジエチルエーテル中に可溶で、ヤシの木に由来する。10%超のカロテノイド、スクアラン又はスクアレン等のテルペン、トコフェロール及びステロイド等の非トリグリセリド化合物(NTG)を含むヤシ果実/実又はパーム核油に由来する粗製油(crude oil)と、ヤシ実若しくは核又はそれらの混合物由来の精製油(RPO)とを含む。従って、NTGは、水又は汚れ、灰分又は細胞壁材料ではない。
【0028】
ベジタブルオイル(VO)は、大豆、紅花、ヒマワリ若しくは亜麻仁由来の、粗製又は精製された植物等級油として定義される。SBOは、大豆に由来し、様々な量の非トリグリセリド材料、例えばリン脂質を含み得る。精製SBO(RSBO)は、10%未満の非トリグリセリド化合物(NTG)を含む。
【0029】
MCT油は、当技術分野にて周知の食物等級油であり、8、10又は12個の炭素原子を有する飽和脂肪酸である脂肪酸を90重量%超含むと定義される。
【0030】
リン脂質(PL)は、例えば卵、大豆又は菜種等の当技術分野にて周知の源を由来とし得、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミン、及び場合によりホスファチジルイノシトール又はホスファチジルセリンとの混合物を提供し得る。
【0031】
LCP油は、20以上の炭素原子を有する脂肪酸を15%超含む任意の食物等級油として定義される。詳細には、これらの油は、15%を超えるドコサヘキサエン酸又はアラキドン酸を含む。そのような油の適切な源は、例えば魚油(FO)等の海産物油、藻類油、又はこれらの脂肪酸を生合成するように遺伝子改変された酵母、菌類若しくは有機体、例えばバクテリア、酵母、植物、又は特に給餌若しくは改変した家禽の卵である。
【0032】
これらの脂肪の使用により、適切な脂肪酸プロファイル、少量のトランス脂肪酸が提供されると思われ、癲癇の幼児又は成人に高い許容性を有する製品の製造が可能になる。
【0033】
消化可能な炭水化物部分は、例えばグルコースシロップ、マルトデキストリン、乳糖、スクロース、ガラクトース、リボース等の食物等級成分を含み得る。本明細書に開示されている他のいくつかの技術的特徴を適用すれば、有効性の点で卓越した製品を得ることができるが、消化可能な炭水化物部分が特定の形態をとった場合に、副作用回避と有効性の点で最良の結果が得られる。消化可能な炭水化物部分の少なくとも20%、好ましくは30〜90%がガラクトース又はリボース源から形成される場合に有益であると思われる。本目的のためには、ラクトースが適切な成分であると考えられる。詳細には、このような非ブドウ糖の消化可能な炭水化物を含有するこれらケト原性調合物が摂取される際、酸化ストレスが低減するであろう。
【0034】
消化率は、Englyst 1999法を適用することにより測定される。
【0035】
タンパク質、脂質、及び炭水化物は、好ましくは少なくとも二種の異なる源に由来し、例えばタンパク質は、少なくとも一部は動物、特に牛乳源に由来するが、一部は植物源にも由来してもよく、脂質は、少なくとも一部は植物源に由来し、炭水化物は、少なくとも一部は牛乳源に由来し、又は牛乳(乳糖)と植物(ブドウ糖、マルトデキストリン等)との組み合わせに由来する。
【0036】
製品中に含まれる必要がある微量成分の量は、幼児用の推奨に従う。しかしながら、数種の特定の成分を推奨された量を超えて増加させることにより、有効性が向上し、幼児性癲癇における副作用が防止される。
【0037】
例えば、有効性を改善し、好ましくない副作用を低減させるための乾燥製品100g当たりのビタミンB6の量は、0.8mg超、好ましくは0.9〜90mg、最も好ましくは1.0〜60mgでなければならない。これは特に、製品が抗痙攣薬に反応しない幼児性癲癇患者に使用される場合に適用される。適切な源の例としては、ピリドキシン、ピリドキサミン及びピリドキサールであり、これらの成分のホスフェート又は塩を含む。しかしながら、ピリドキサールを使用することが好ましい。
【0038】
ビオチンは、本発明の組成物の他の好ましい一成分である。幼児は、一日用量当たり6〜200μg、好ましくは8〜100μg、より好ましくは9〜50μgを必要とする。そのような一日用量は、一般に100gの粉末により提供され、これは水中で再構成されて、2ヶ月齢の乳児には500mlの食品(約20%溶液)となる。この一日用量は、6ヶ月齢で粉末200gに増加される。血中ケトン濃度の上昇を防止又は治療するために、メタボリック症候群又は2型糖尿病に罹患した多くの人のように、疾患が慢性であり、経腸製品が毎日摂取される場合、ビオチン量は、11歳を超える年齢の子供及び大人には好ましくは一日当たり50〜1000μg、より好ましくは70〜500μg、さらにより好ましくは80〜300μgであり、一日当たり10〜200μg、より好ましくは15〜150μg、さらにより好ましくは18〜100μgである。アシドーシスのような急性症状では、この量はより多いことが好ましい。例えば、11歳を超える子供及び大人は、一日用量当たり300〜20000μg、好ましくは360〜2000μg、より好ましくは420〜1000μgを必要とするであろう。より年少の幼児は、40〜500μg、好ましくは50〜250μg、より好ましくは60〜150μgを必要とする。早産児には、一日用量当たり9〜200μg、好ましくは12〜100μg、より好ましくは15〜50μgを投与する必要がある。
【0039】
したがって、組成物は、乾燥物100g当たりビオチンを6〜1000μg、好ましくは8〜400μgの量で含有することが好ましい。一般的な調合物において好ましい量は、100g当たり9〜50μg、特に12〜50μgである。例えばアシドーシス等の特別な目的のための好ましい量は、乾燥物100g当たり40〜400μg、特に50〜250μgである。
【0040】
本発明に従った量のビオチンは、短時間で血漿中のケトン体濃度、組織中のAGE産物及びメイラード(Maillard)産物の濃度、並びにアシドーシス、例えば乳酸アシドーシス及びケトン性アシドーシス(ketonic acidosis)の程度を低下させ、また脂質プロファイル、特に血漿コレステロール濃度を正常化させることが見い出されている。
【0041】
ビタミンB12は、例えば合成シアノコバラミン(Cyanocobalamin)、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン及び水酸化コバラミン等の適切な源を用いて提供されることができ、例えば臓器、特に肝臓の単離物(isolate)、例えば豚、牝牛、鶏等の農業用動物の溶解肝細胞の水性濃縮物から、抽出物100ml当たりコバラミン濃度75μg超にて得ることができる。組成物は、乾燥組成物100g当たり好ましくは0.25〜50μg、より好ましくは0.4〜10μg、最も好ましくは0.8〜5μgの量のビタミンB12を含有する。
【0042】
パントテン酸の量は、乾燥物100g当たり好ましくは3mg超、より好ましくは4〜20mg、最も好ましくは4.5〜14mgである。
【0043】
L−カルニチンを乾燥製品100g当たり25mg超、好ましくは28〜200mgで含むことにより、製品からのエネルギー生成を向上させる。非常に適切な成分は、アルキル化カルニチン、特にN−アセチルカルニチン、N−プロピル又はN−イソプロピルカルニチンである。
【0044】
調合物中のカルシウム量は比較的多く、即ち、乾燥質量100g当たり580mg超、好ましくは600〜900mg、より好ましくは620〜750mgである。カルシウムのバイオアベイラビリティを高めるために、カルシウム対リンの比は、1.1:1超、より好ましくは1.2〜2:1である。カルシウム塩は、好ましくは可溶性塩、例えば有機陰イオンの塩である。
【0045】
タウリン量は、乾燥質量100g当たり有利には35mg超、好ましくは40〜400mg、より好ましくは45〜200mgである。適切なタウリン源は、当技術分野にて周知であり、タウレートを含む。
【0046】
製品は、有利には、ヌクレオチド、ヌクレオシド又はヌクレオ塩基の源を含有する。これらの源は、それらの塩を含む例えばウリジン、シチジン、アデニン等の合成化合物、及び例えばウリジン一リン酸、ウリジン二リン酸等のそれらのリン酸塩、並びにそれらの成分を提供する酵母の培養物、藻類培養物、細菌培養物又は他の培養物若しくは組織を含む。非常に適切な源は、UMP、CMP及びシチコリン(cyticoline)を含む。ヌクレオシド又は等価な化合物は、乾燥質量100g当たり2〜600mg、好ましくは6〜100mg、最も好ましくは10〜35mgの量にて含まれることが好ましい。ウリジンは、乾燥質量100g当たり2〜50mg、好ましくは4〜30mg、最も好ましくは7〜12mgの量にて含まれることが最も好ましい。
【0047】
製品はまた、有利にはオリゴ糖を含有する。特に、乾燥重量100g当たり10mg〜2g、好ましくは40mg〜1.8gの量で含有する。適切なオリゴ糖は、3〜20単糖単位の鎖長を有するものを含む。そのようなオリゴ糖は、好ましくはガラクトース、フルクトース、フコース、マンノース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、シアル酸、N−アセチルグルコサミンからなる群から少なくとも二種、好ましくは少なくとも三種の異なる単糖を含む。このような混合物は、純粋なオリゴ糖又は少なくとも二種の混合したオリゴ糖、例えばβ−ガラクト−オリゴ糖及びフルクト−オリゴ糖を含めることにより獲得し得る。それらオリゴ糖を含めることにより、ケト原性食を単一の栄養物として使用する患者における免疫学的問題が減少する。
【0048】
製品は、改善された発作制御、特に、短期及び長期における発作頻度の低下の観点から、また、発作の重症度を低下させる観点から有効である。特に、調合物は、糖輸送担体に異常に苦しむ幼児、及び抗痙攣療法に反応しない幼児以外の、先天性の代謝異常を全く有さない幼児に有効である。成長遅延、代謝性アシドーシス、免疫機能の低下、腎臓の問題、及び便秘等の望ましくない副作用は、比較的低い。
【0049】
製品は、25を超えるBMIを有する成人及び他の肥満の人、特にメタボリック症候群又はインスリン抵抗性に苦しむ肥満の人用のDr.Atkinsによる見解に従った体重管理計画に適用される際にも有用である。このことは、製品が単一栄養物として使用され、好ましくは、本発明に従った組成物が、そのうち少なくとも2種が液体、半固体又は固体の異なる物理的形態を有する数種の使用準備済製品として摂取される際に、特に当てはまる。
【0050】
製品は、保険局のガイドライン(例、Gezondheidsraad 2000)に記載されているような一般的なエネルギー消費推奨に従って、12ヶ月未満の乳児用に、乾燥質量として計算して一日当たり50〜200g、好ましくは75〜150gの量で、適切には液体製品に再構成後、投与され得る。より年長の子供に関して、乾燥質量で計算される好ましい一日量は、100〜360g、特に150〜300gである。成人に関して、これらの量は、100〜500g、最も好ましくは150〜340gであり、殆どのエネルギーをケトン体として提供し、同時に十分量の必須アミノ酸、炭水化物骨格及び他の栄養素を提供し、耐性が高く安全である。
[実施例]
【実施例1】
【0051】
小児用の抗癲癇調合物
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
本組成物は、パーム油と大豆油とのブレンドを、インタクトな牛乳タンパク質、マルトデキストリン、ビタミン及びミネラル、並びに香料等の他の成分を含有する水性相と共に混合し、該混合物をホモジナイズし、噴霧乾燥することにより調製される。場合により、更なる加熱及び冷却ステップ、並びに更なるホモジナイズ法を含んでもよい。製品は、5重量%未満のトランス脂肪酸を含有し、そして酸化成分の形成及び異臭の観点から、脂肪酸化に対する比較的優れた耐性を示す。
【実施例2】
【0059】
小児科幼児用の新しい調合物
実施例1と同様であるが、特定の成分を変更した製品:
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、脂質及び消化可能な炭水化物を含有する固体又は半固体の栄養組成物であって、これらの成分が少なくとも2種の異なる源に由来し、乾燥質量100g当たり2520〜3080キロジュールを提供し、かつタンパク質と消化可能な炭水化物との合計に対する脂質の重量が、2.6〜3.8対1である組成物。
【請求項2】
タンパク質と消化可能な炭水化物との合計に対する脂質の重量が、2.7〜3.4対1である、請求項1又は2に記載の栄養製品。
【請求項3】
脂質が、脂肪酸を基準として23〜50重量%のパルミチン酸を含有する、請求項1又は2に記載の栄養製品。
【請求項4】
脂質が、10〜25重量%のリン脂質、リゾリン脂質、ジアシルグリセリド及びモノグリセリドのうち1又は複数を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項5】
脂質が、脂肪酸を基準として16〜40重量%のポリ不飽和脂肪酸を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項6】
ポリ不飽和脂肪酸が、1〜10重量%のドコサヘキサエン酸を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項7】
タンパク質が、少なくとも20重量%のα−ラクトアルブミンを含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項8】
炭水化物が、20〜90重量%のガラクトース及び/又はリボース単位の源を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項9】
乾燥物100g当たり6〜100mgのヌクレオチドを含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項10】
乾燥物100g当たり25mgを超えるL−カルニチンを含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項11】
ガラクトース、フルクトース、フコース、マンノース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、シアル酸、及びN−アセチルグルコサミンから選択される少なくとも2種の異なる単糖単位を含む、3〜20の単糖単位を有する非消化性オリゴヌクレオチドを乾燥物100g当たり40mg〜1.8g含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項12】
20℃において水中10%として溶解した際に、乾燥質量の少なくとも50%が可溶である、請求項1〜11のいずれかに記載の栄養製品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の栄養製品を水で再構成することにより得られる液体栄養製品。
【請求項14】
添加されたビタミン及び/又は添加された微量要素を含有し、かつ1.2〜1.8kcal./mlのエネルギー密度を有する、請求項12に記載の液体製品。

【公表番号】特表2010−506587(P2010−506587A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533266(P2009−533266)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050491
【国際公開番号】WO2008/048094
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】