説明

ケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジ

【課題】 従来、着脱可能にした蓋板と下板及び両側板とからなる略長立方体の箱体と箱体の前面及び背面開口部に取り付けた多孔板とから構成したフィルタカートリッジ本体の中空部に吸着材を充填したフィルタカートリッジをケミカルフィルタユニットの取り付け枠にセットしているが、フィルタカートリッジの材質が金属に塗装したものが使用されているため、フィルタカートリッジが重くなり、ケミカルフィルタユニット枠にセットするのが容易でない上溶接構造でのコストアップといった問題があった。
【解決手段】本発明はフィルタカートリッジ本体の一部または全部を合成樹脂の材質で形成し、軽量にしてケミカルフィルタユニット枠へのセットを容易にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体、液晶、精密機械、医療、食品、薬品工場などのクリーンルーム内の浄化を目的に外気を取り入れ循環系及び装置対応の際に使用される粒状吸着材を使ったケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジに関するものである。
【0002】
一般にフィルタカートリッジは、着脱可能にした蓋板と下板及び両側板とからなる略長立方体の箱体と箱体の前面及び背面開口部に貼り付けたパンチング板とから構成したフィルタカートリッジ本体の中空部に、被処理有害ガスの種類によって、物理吸着型の粒状吸着材、素材に酸を添着して交換基を形成した粒状化学吸着材、素材にアルカリを添着、結合して交換基を形成した粒状化学吸着材が充填されている。そして、このフィルタカートリッジに有機ガス、アルカリ性ガス、酸性ガスを通過させることによって有害ガスを吸着除去するため、フィルタカートリッジはケミカルフィルタユニットの取り付け枠にセットされ使用されている。
【0003】
そして、ケミカルフィルタユニットの取り付け枠にセットするための取り扱いに強度をもたせるため、フィルタカートリッジの材質は金属に塗装したものが使用されている
【0004】
このため、フィルタカートリッジが重くなり、ケミカルフィルタユニット枠にセットするのが容易でないといった問題があった。
【0005】
また、フィルタカートリッジ本体を組み立てる部品点数が多くなり、組立ての手間やコストも高くなってしまうといった懸念があった。
【0006】
さらに、有害ガスや湿度によりフィルタカートリッジ本体が腐蝕しやすくサビなどが発生して、サビの粒子が飛び散ったり、強度的にも弱くなってしまうといった懸念があった。
【発明が解決しょうとする課題】
【0007】
まず、本発明の目的は、ケミカルフィルタユニット枠へのセットを容易にしょうとしたものである。
【0008】
また、本発明の目的は、フィルタカートリッジを軽量にしようとしたものである。
【0009】
また、本発明の目的は、フィルタカートリッジ本体の組み立て部品点数を少なくし組立ての手間を簡単にしたものである。
【0010】
また、本発明の目的は、フィルタカートリッジのコストを低減したものである。
【0011】
また、本発明の目的は、フィルタカートリッジ本体にサビなどの腐蝕が生じないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の解決手段は、フィルタカートリッジ本体を着脱可能にした蓋板と下板及び両側板とからなる略長立方体の箱体と箱体の前面及び背面開口部に形成した多孔板とから形成したことである。
【0013】
本発明の第2の解決手段は、フィルタカートリッジ本体を構成する蓋板、下板、両側板および多孔板のいずれか一部あるいは全部を合成樹脂の材質で形成したことである。
【0014】
本発明の第2の解決手段は、フィルタカートリッジ本体の中空部に粒状物理吸着材あるいは粒状化学吸着材を充填したことである。
【0015】
ここでフィルタカートリッジ本体を構成する蓋板や下板及び両側板に使用される合成樹脂の材質はポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂が使用されるが、これに限定されるものではない。
【0016】
次に、箱体の前面及び背面開口部に形成した多孔板の穴の径は粒状吸着材の径より小さくなっていればよく、形状は円形が好ましいが四角形、△形などどんな形状のものでもガス導通出来れば構わない。
【0017】
さらに、カチオン交換基を形成した粒状化学吸着材は素材をグラフト重合法や薬品添着などの方法によりにカチオン交換基を形成することにより製造する。またアニオン交換基を形成した粒状化学吸着材は素材をグラフト重合法や薬品添着などの方法によりにアニオン交換基を形成させることにより製造する。
【0018】
粒状化学吸着材の素材は粒状活性炭あるいはゼオライト、シリカゲルなどが好ましいがこれに限るものではない。
【0019】
次に、フィルタカートリッジの製作について説明する。まず、下枠、左右の側版からなる略長立方体の箱体とこの箱体の前面及び背面開口部に設けた多孔板を成形機等にて製作する。並行して箱体に着脱可能にした蓋板を成形機等にて製作する。このようにして合成樹脂の材質のフィルタカートリッジ本体を形成する。また、必要に応じて箱体の補強板も成形製作してもよい。
【0020】
そして、フィルタカートリッジ本体の中空部には有機ガス用の粒状物理吸着材あるいはカチオン交換基またはアニオン交換基、薬品添着を形成した粒状化学吸着材を充填しフィルタカートリッジを製作する。
【0021】
吸着材を充填したフィルタカートリッジをケミカルフィルタユニット枠へセットし完了する
【0022】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。まず、フィルタカートリッジの正面を通過することで大気中に含まれる有機ガスは粒状物理吸着材によって物理吸着され清浄な空気となってフィルタカートリッジの背面より流出される。また、大気中に含まれる酸性ガスはカチオン交換基の粒状化学吸着材で吸着され清浄な空気となってフィルタカートリッジの背面より流出される。また、大気中に含まれるアルカリ性ガスもアニオン交換基の粒状化学吸着材で吸着されて清浄な空気となってフィルタカートリッジの背面より流出される。
【0023】
しかし、粒状吸着材またはそれぞれの粒状化学吸着材は新品時での取り付け及び寿命があるため、吸着材の交換が必要となってくる。
【0024】
そこで、フィルタカートリッジが合成樹脂の材質で出来ているため、従来の金属製に比べ軽くケミカルフィルタユニット枠へのフィルタカートリッジの取り付け、取り外し作業が極めて容易且つ簡単である。
【発明の効果】
【0025】
上述したように、本発明のケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジは次のような効果が得られる。
(1)フィルタカートリッジを軽量にしたので、ケミカルフィルタユニット枠へのセットが容易である上、取り扱い易いといった利点があることから作業が簡単となる。
(2)フィルタカートリッジ本体の組み立て部品点数が少なく組立ての手間が簡単である。
(3)フィルタカートリッジ本体にサビなどの腐蝕が生じることがない。
(4)フィルタカートリッジのコストは溶接などを省略出来低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】蓋板を取り外した状態を示すフィルタカートリッジの正面図である。
【図2】蓋板と左右の側板の取り付け部を示す概略図である。
【図3】フィルタカートリッジをケミカルフィルタユニットに組み込んだ概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジを添付図面に基づいて説明する。
(実施形態)
1はフィルタカートリッジの箱体を示し、箱体1は下板2と蓋板3及び左右の側板4,5からなり略長立方体の中空部となっている。これらの下板2と蓋板3及び左右の側板4,5は合成樹脂製となっている。
【0028】
そして、左右の側板4,5は下板2の左右端から上方に垂直に折曲することにより形成されている。
【0029】
一方、蓋板3の左右端には左右の側板4,5の上部内側に取り付けられた蓋板受台6にそれぞれ穿った穴に合致する穴が設けられそれぞれの穴を貫通してビス7等で固定され、取り付け取り外し可能に結合されている。
【0030】
8、9は箱体1の前面及び背面開口部に箱体と一体に型等で成形した多孔板でフィルタカートリッジ本体を形成する。また10はフィルタカートリッジ本体の補強板である。
【0031】
なお、上記実施例では多孔板8、9を箱体1と一体に型等で成形したが、箱体とは別に多孔板を成形しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【0032】
そして、フィルタカートリッジ本体の中空部へ吸着材を充填する。吸着材の充填後、左右の側板4,5の上端部に蓋板3を覆って蓋板3の穴を左右の側板4,5の上部内側に取り付けられた蓋板受台6の穴と合致させてそれぞれの穴に貫通してビス7等で固定するか、はめ合いすることによりフィルタカートリッジを形成する。
【0033】
次に、吸着材の交換に当たっては、ビス7等を外して左右の側板4,5の上端部を覆っている蓋板3を取り外し、左右の側板4,5の上端部より吸着材を排出しフィルタカートリッジ本体の中空部を空の状態にする。
【0034】
そして、空となったフィルタカートリッジ本体の中空部に所望の吸着材を充填し、再び左右の側板4,5の上端部に蓋板3を覆って蓋板3の穴を左右の側板4,5の上部内側に取り付けた蓋板受台6の穴と合致させてそれぞれの穴に貫通してビス7等にて固定することによりフィルタカートリッジを完成する。
【0035】
次に、新規となったフィルタカートリッジをケミカルフィルタユニット枠11に取り付けて完了する。
【0036】
なお、上記実施例では1実施例を述べただけで種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。例えば、箱体の形状を略長立方体の中空部としたが、略正立方体の中空部としても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
半導体、液晶、精密機械、医療、食品、薬品工場などのクリーンルーム内のガス清浄化、外気を取り入れる等の際に使用される粒状吸着材を使ったケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジに関するもので、略長立方体の箱体とこの箱体の前面及び背面開口部に設けた多孔板とからなるフィルタカートリッジを合成樹脂の材質とし軽量にしたフィルタカートリッジをケミカルフィルタユニット枠にセットし易くしたもので実用上はなはだ効果大なるものである。
【符号の説明】
【0038】
1・・・ケーシング 2・・・下板 3・・・蓋板
4、5・・・側板 6・・・蓋板受台 7・・・ビス
8、9・・・多孔板 10・・・補強板
11・・・ケミカルフィルタユニット枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能にした蓋板と下板及び両側板から形成した略直方体の箱体と箱体の前面及び背面開口部に形成した多孔板とからなるフィルタカートリッジ本体に於いて、フィルタカートリッジ本体の中空部にガス除去を目的に粒状物理吸着材あるいは粒状化学吸着材を充填したことを特徴とするケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジ。
【請求項2】
フィルタカートリッジ本体の一部または全部を合成樹脂の材質で形成したことを特徴とする請求項1記載のケミカルフィルタユニットのフィルタカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−738(P2013−738A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148653(P2011−148653)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】