説明

ケミカルフィルター

【課題】空気中に存在する化学汚染物質や有害物質の除去を目的として用いられるケミカルフィルター、特に少なくとも2枚の繊維シート間に活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された構造を有するシートがプリーツ加工され、加工されたプリーツろ材の山と山とのスペースの保持にセパレーターを用い、枠体で固定されて構成されるケミカルフィルターにおいて、単位面積当たりの活性炭充填量が高く、かつひだ折りの容易な濾材を用いて活性炭充填量の高いケミカルフィルターを提供することを技術的な課題とするものである。
【解決手段】異なる目付の繊維シート間に、活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層を有する濾材で、異なる目付の繊維シートのうち目付の高い方の繊維シートがスパンボンド不織布からなり、目付の高い方のスパンボンド不織布の目付が、目付の低い方の繊維シートの目付の2倍を超える濾材を、目付の低い方の繊維シート側を向き合わせ、共折りし、プリーツを形成したケミカルフィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶、食品、医薬品等の製造工場におけるクリーンルームや、博物館、美術館等で使用され、空気中に存在する化学汚染物質や有害物質の除去を目的として用いられるケミカルフィルター、特に吸着剤によって化学汚染物質を吸着除去するケミカルフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶の工場では化学汚染物質や有害物質の除去を目的としたケミカルフィルターが用いられている。これはこれらの分野においてデバイスの高集積化、精密化が進むに従って、粒子状物質のみならず分子状の化学汚染物質の影響が問題となってきたため、こうした分子状の汚染物質を除去するために導入されている。同様のユニットは食品、医薬品等の工場でも製品の汚染防止、美術館や博物館では展示物や保管物の劣化防止のために使用されるようになってきた。ケミカルフィルターは一般的には活性炭に代表される吸着剤によって化学汚染物質を吸着除去するものである。
【0003】
一般的に空調用ケミカルフィルターにはシート状濾材をジグザグにひだ折りする加工、即ちプリーツ加工したものが多く用いられている。加工された濾材は、プリーツを縦向きにして枠体に収納され、濾材の有効濾過面積を確保するために、プリーツの折り山間に所定の間隔を保持するセパレート手段が設けられている。セパレート手段の代表的なものとしては、シート状濾材の表裏面にプリーツと直交する樹脂ビードを付着するビード方式、櫛歯状の厚紙製スタビライザをプリーツと直交させて差し込むスタビライザ方式、波状に形成したアルミニウム箔製のセパレーターをプリーツの折り山間に挿入するセパレーター方式等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ケミカルフィルターにおいては、粒状活性炭をパンチングメタルやメッシュで構成された箱に充填しケーシング内にW字型に配置したものや、繊維状活性炭のフェルトをプリーツ化し、波形セパレーターを用いて固定したものが代表的である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
最近の傾向としては空調機の小型化に伴うフィルターの薄型化が進みつつあり、クリーンルームの天井等に設置されるファンフィルターユニット(FFU)や半導体製造装置に取り付けられるケミカルフィルターの高寿命化要求が顕著になっている。小型薄型のケミカルフィルターにおいては、従来から活性炭を含む極めて薄いシートを用いてハニカム形状に成型したものがあるが、充填される活性炭の量が少なく、短寿命という問題があった。シートに含有される活性炭量を増やせば、フィルター当たりの活性炭量も増加するが、同時にシートが厚くなり、ハニカムの開口部、すなわち流路が狭くなってしまい圧力損失の上昇が問題となる。また、ハニカムピッチを小さくして多量のシートを充填する方法でも同様に流路が狭くなり圧力損失の上昇が問題となる(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
一方、合成繊維不織布内に粒状活性炭を熱可塑性樹脂接着剤により固定化しシート化されたフィルター濾材も提案されている(例えば、特許文献4参照)。このような活性炭フィルターに代表される高い充填密度のフィルター濾材は、密度が高い故に小型で高除去率のフィルターユニットの実現を可能にする。しかし、濾材の剛性が高すぎるため、奥行きの小さい薄型ユニットを製造する方法として良く知られているビード方式を、プリーツの折り山間に所定の間隔を保持するセパレート手段として利用するには適さない。そこで、アルミニウム箔を用いて波型に加工した波型セパレーターを用いるセパレーター方式が検討されているが、この場合、セパレーターの波の高さがあまり小さくなると極端に圧力損失が上昇するため、高寿命化のためには一定以上の波高のセパレーターを用い、出来るだけ活性炭充填量の高いシートを使用する必要がある。
【0007】
活性炭シートは、生産条件が許す限りどのような高い充填量のものでも製造するは可能であるが、あまり活性炭充填量が高いとろ材の剛性が高くなり、プリーツ加工時にひび割れが生じる問題が発生する。また、適度な活性炭充填量のろ材を複数枚積層して共折りすることも可能だが、やはり剛性が上がるため、希望とする山数をひだ折りして枠体に収納することが困難となる。したがって1枚のケミカルフィルターあたりの活性炭充填量には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−361016号公報
【特許文献2】特開平6−47232号公報
【特許文献3】特公昭59−51423号公報
【特許文献4】特開2002−273123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、単位面積当たりの活性炭充填量が高く、かつひだ折りの容易な濾材を用いて活性炭充填量の高いケミカルフィルターを提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑み、鋭意検討した結果得られたものである。すなわち本発明
は、以下の通りである。
1.異なる目付の繊維シート間に、活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層を有する濾材であって、異なる目付の繊維シートのうち目付の高い方の繊維シートがスパンボンド不織布からなり、該スパンボンド不織布の目付が、目付の低い方の繊維シートの目付の2倍を超える濾材を、目付の低い方の繊維シート側を向き合わせ、共折りし、プリーツを形成したケミカルフィルター。
2.目付の低い方の繊維シートの目付が、活性炭と熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層の目付の0.008〜0.03倍である上記1に記載のケミカルフィルター。
3.目付の低い方の繊維シートがスパンボンド不織布である上記1または2に記載のケミカルフィルター。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、密度が高く、取扱いが困難であった活性炭を高充填化した濾材を用いて1枚あたりの活性炭充填量の多いケミカルフィルターを製造することが可能となった。これによりケミカルフィルターの高効率化、高寿命化に寄与することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明におけるフィルターの全体斜視図である。
【図2】本発明におけるフィルターの共折りされた状態の濾材断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
異なる目付の繊維シート間に、活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層を有する濾材を、重ね合せ、共折りすることによりプリーツ加工し、加工された濾材のプリーツの保持にセパレーターを用い、フィルター枠に設置されてなるケミカルフィルターにおいて用いられる。濾材に用いられる異なる目付の繊維シートは、目付の高い方の繊維シートがスパンボンド不織布であり、その目付が、目付の低い方の繊維シートの目付の2倍を超え、これらの異なる目付の繊維シート間に、活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層を有する濾材を、目付の低い方の繊維シート側を向き合わせ、共折りし、プリーツを形成することが1枚当たりの活性炭充填量を高めたケミカルフィルターを得る上で重要である。
【0014】
濾材に使用される繊維シートは、目付の高い方の繊維シートが、スパンボンド不織布からなり、その目付が、目付の低い方の繊維シートの目付の2倍を超える場合において、ひだ折りの容易さやフィルター1枚当たりのプリーツの山数を向上させることが可能であり好ましく、さらには2.5倍以上であることが好ましい。目付が2倍以下である場合、共折り時のシートの剛性が強くなり、フィルター1枚当たりのプリーツ山数を増やすことが困難となり、フィルターの1枚当たりの活性炭充填量を増やすことが困難となる。反面、倍率が高い場合は大きな問題は生じないが、6倍以上では目付の高い方のスパンボンド不織布の目付が総じて高くなるため、濾材の圧力損失の上昇や、厚みの増加に伴うプリーツ加工性にやや困難さが生じてくる。
【0015】
さらに、目付の低い方の繊維シートの目付が、活性炭と熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層の目付の0.008〜0.03倍、好ましくは0.1〜2.8倍であることが、共折り時のプリーツ加工性とフィルター1枚当たりの活性炭充填量を高める上で好ましい。0.008倍未満では、活性炭と熱可塑性樹脂によって接着固定された吸着層の剛性に負けてプリーツ加工時に破断してしまい好ましくない。また、目付の低い方の繊維シートの目付が、活性炭と熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層の目付に対して0.03倍より大きい場合、活性炭の量に対して濾材の重量比率が大きくなるため、フィルター1枚の活性炭充填量を増加させることが困難となり、好ましくない。
【0016】
ここで用いられる目付の高い方のスパンボンド不織布の材質としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂など公知のものであれば限定されない。目付の高い方のスパンボンド不織布は、目付20〜70g/m、厚み0.15〜0.31mm、引張強さ縦方向60〜270N/5cm、横方向30〜110N/5cm、伸度縦方向20〜70%、横方向25〜70%に該当するものがプリーツ加工性に優れるため好適に用いられる。
【0017】
また、目付の低い方の繊維シートは、特に不織布の種類に限定されない。しかしながら、濾材としての厚みや加工性を鑑みた場合、目付10〜20g/mの不織布であることが好ましく、より好ましくはスパンボンド不織布である。
【0018】
濾材に用いられる活性炭としては、粒状活性炭が好ましく、平均粒子径は、通気性、加工性を考慮して、JIS標準ふるい(JIS Z8801)による値で平均100〜600μmであることが好ましく、より好ましくは200〜500μmである。平均粒子径が100μm未満の場合には、一定の吸着容量を得るのに圧力損失が大きくなりすぎ、平均粒子径が600μmを越える場合には、化学汚染物質の除去率が極端に悪くなるとともに、プリーツ加工時の加工性が悪くなってしまう。なお、該粒状活性炭は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整を行うことによって得られる。粒状活性炭の種類は、特に限定されるものではなく、例えばヤシガラ系、木質系、石炭系、ピッチ系等が好適に用いられる。形状的には破砕炭、造粒炭、ビーズ炭等が好適に用いられる。なお、該粒状活性炭のJIS K1474に準拠して測定したときのトルエン吸着量は20重量%以上が好ましい。
これは微量な化学汚染物質に対し高い吸着性能を必要とするためである。なお通常活性炭は無極性の分子状物質に特に良好な吸着特性を示すが、極性物質に対する吸着特性を向上させるため、各種化学吸着剤をあらかじめ担持あるいは添着した粒状活性炭を使用することもできる。例えばアルデヒド系ガスや二酸化窒素等の窒素化合物、二酸化硫黄や硫化水素等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質に対しては、エタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、アニシジン等のアミン系の化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸グアニジン、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等が好適に用いられ、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質に対しては、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が好適に用いられる。
【0019】
活性炭および繊維シートを接合するための熱可塑性樹脂は、粒状活性炭に対して5〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。粒状活性炭と熱可塑性樹脂の混合物(吸着層となる)を2層の繊維シートの間に配して加熱しながら圧着することにより、繊維シート、熱可塑性樹脂、粒状活性炭が一体化される。熱可塑性樹脂が、5重量%未満の場合は粒状活性炭同士の接着が不充分となり、活性炭の脱落が起こったり、フィルターフィルター濾材のプリーツ形状が崩れてしまったりという現象が引き起こる。30重量%を越える場合には、吸着層が必要以上に固くなってしまいプリーツ加工時の加工性の悪化を招いてしまう。
【0020】
また、該熱可塑性樹脂の形状は粉末状あるいは粒状が好適であり、平均粒子径はJIS標準ふるい(JIS Z8801)による値で平均10〜120μmであることが好ましい。10μm未満の場合は、粒状活性炭と混合し繊維シート上に散布する際、樹脂粉末が舞い上がってしまい均一な散布が困難となってしまう。120μmを越える場合には粒状活性炭との混合が不均一になりやすいうえ、粒子数が少なくなるため望ましい接着状態を選得るのに非常に多量の樹脂が必要となってしまい好ましくない。また、繊維シートとの接合性を優先させる場合は繊維シートと吸着層の間に接着性繊維シートを挿入してもよい。
【0021】
接着に用いられる熱可塑性樹脂、繊維シート、熱可塑性繊維からなる接着性繊維シート、またプリーツ折加工されたフィルター濾材とフィルター枠を接着・シールするために用いる接着剤は、すべてガス状有機物の発生が少ないことが重要で、各々の100℃加熱時に発生するガス状有機物の発生総量が1μg/g以下であることが好ましい。加熱発生ガスの分析方法は一般に「P&T(パージ&トラップ)−GC/MS(ガスクロマトグラフ/ますスペクトル)法」あるいは「ダイナミックヘッドスペース法」と呼ばれる方法が用いられている。これは所定量のサンプルを採取しヘリウムガスを流しながら所定時間加熱し、揮発成分を冷却された吸着管で捕集・濃縮した後、再度キャリアガスで加熱脱着しGC/MSに導入、分析するという方法である。本法は通常ガス状有機物を加熱により揮発させるため、クリーンルームのように常温に温度制御された空間での発生量は、温度と蒸気圧の関係から極めて微量となり、100℃加熱下での発生総量が1μg/g以下の材料を使用することにより、実使用上の問題を生じる危険性は極めて低くなる。前記熱可塑性樹脂、合成繊維不織布、熱可塑性繊維からなる接着性繊維シート、フィルター濾材とフィルター枠を接着・シールするための接着剤の材質としては、特に限定されるものではなく、熱可塑性のもの、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、EVA系接着剤等を用いることが出来るが、粘着付与剤や酸化防止剤、可塑剤、離型剤等の添加剤を含まない、あるいは含む場合でもごく微量であることが好ましい。
【0022】
具体的な製造方法を以下に述べる。繊維シートのうち目付の高い方の繊維シートであるスパンボンド不織布を巻き出し、必要であれば接着性繊維シートをその上に積層して搬送装置にセットし、あらかじめ所定の粒状活性炭と熱可塑性樹脂をブレンダーで混合したものを搬送装置の上方に設置された散布装置にセットする。巻き出したスパンボンド不織布を一定の速度で搬送しながら、上方の散布装置より一定量のブレンドされた活性炭を散布する。散布された活性炭層の上方に、目付の低い方の繊維シートをかぶせるような形で一緒に搬送させ、そのまま加熱コンベヤに通し、一定の温度と圧力で15〜60秒間連続加熱してシートを接着する。あくまで公知の製造方法の範囲であり、2枚の繊維シート間に活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された構造を有する濾材を製造する方法であれば特に限定されない。得られた濾材は所定の寸法を有する枠に収められる巾に合わせた巾でスリットされる。スリットされた濾材は、目付の低い方の繊維シートを向かい合わせた形で重ね合わせてひだ折り、即ち共折りする。ひだ折りは必要であれば加熱、加圧など行っても良いが、目付の低い方の繊維シートを向かい合わせた形で重ね合わせること以外、ひだ折りする方法は特に限定されない。ひだ折りされた濾材は、枠に収める前にひだの間のスペースを保持するためセパレーターを挿入する。セパレーターはアルミ箔や紙などのシートをコルゲート機で波型に加工した波型セパレーターや、くし型のセパレーターの他、ひプリーツの頂点を樹脂で固定する方法などがあるが特に限定されない。セパレーターが挿入された状態で接着剤が塗布された上下の枠体を濾材のスリットされた側に接合し、さらに左右の枠を固定してフィルターを製造する。枠体の濾材の組み込み方法に関しては公知の方法であり、限定されない。
【実施例】
【0023】
以下実施例によって本発明を更に詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお、測定方法および活性炭充填量、吸着層の重量の算出は下記の方法で実施した。
【0024】
(1)目付(g/m):200mm角の寸法で切り出し、秤量して寸法で除した。
(2)厚み(mm):荷重0.7kPaの厚みを読み取った。
(3)引張強度(N/5cm):ろ材の長手方向および巾方向に長さ200mm、巾50mmで各3点サンプリングし、引張試験機にて引張速度100mm/minで引張り、破断時の強度を測定した。
(4)活性炭充填量(kg):濾材製造時の活性炭と、熱可塑性樹脂の混合物の散布時の設定目付から、熱可塑性樹脂の含有量を差し引き、単位面積当たりの活性炭重量を算出した。濾材のスリット巾、設定山高、および山数の2倍を各々乗してフィルター1台当たりの活性炭充填量とした。
【0025】
<実施例1>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を10:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付40g/m、厚み0.23mm、引張強度(縦方向)177N/5cm、伸度(縦方向)40%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が700g/mとなるように散布した後、目付12g/m、厚み0.10mm、引張強度(縦方向)25N/5cm、伸度(縦方向)50%のポリエステル(芯部)/ポリエチレン(鞘部)の芯鞘繊維から構成されるスパンボンド不織布(B)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度150℃、圧力10N/cmの条件で60秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み2.0mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、(B)側を向かい合わせる形で重ね合わせ、山高さ90mmで43山分プリーツ折加工し、さらに605mm幅でスリットした。得られたプリーツ濾材に、厚み40μmのアルミ箔をコルゲート加工した山高さ3mmのセパレーターを作成してプリーツの間に挟みこみ、周囲をアルミニウム製の枠材で固定し、濾材と枠材の間を接着剤で接着してフィルターとした。このときのフィルター1台当たりの活性炭充填量は6.6kgであった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造されたフィルターの山数および活性炭充填量を表1に示す。
【0026】
<実施例2>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を10:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付40g/m、厚み0.23mm、引張強度(縦方向)177N/5cm、伸度(縦方向)40%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が1000g/mとなるように散布した後、目付12g/m、厚み0.10mm、引張強度(縦方向)25N/5cm、伸度(縦方向)50%のポリエステル(芯部)/ポリエチレン(鞘部)の芯鞘繊維から構成されるスパンボンド不織布(B)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度150℃、圧力10N/cmの条件で60秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み2.6mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、(B)側を向かい合わせる形で重ね合わせ、山高さ90mmで35山分プリーツ折加工し、さらに605mm幅でスリットした。得られたプリーツ濾材に、厚み40μmのアルミ箔をコルゲート加工した山高さ3mmのセパレーターを作成してプリーツの間に挟みこみ、周囲をアルミニウム製の枠材で固定し、濾材と枠材の間を接着剤で接着してフィルターとした。このときのフィルター1台当たりの活性炭充填量は7.6kgであった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造されたフィルターの山数および活性炭充填量を表1に示す。
【0027】
<実施例3>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を10:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付60g/m、厚み0.30mm、引張強度(縦方向)223N/5cm、伸度(縦方向)29%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が1000g/mとなるように散布した後、目付12g/m、厚み0.10mm、引張強度(縦方向)25N/5cm、伸度(縦方向)50%のポリエステル(芯部)/ポリエチレン(鞘部)の芯鞘繊維から構成されるスパンボンド不織布(B)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度150℃、圧力10N/cmの条件で60秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み3.1mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、(B)側を向かい合わせる形で重ね合わせ、山高さ90mmで32山分プリーツ折加工し、さらに605mm幅でスリットした。得られたプリーツ濾材に、厚み40μmのアルミ箔をコルゲート加工した山高さ3mmのセパレーターを作成してプリーツの間に挟みこみ、周囲をアルミニウム製の枠材で固定し、濾材と枠材の間を接着剤で接着してフィルターとした。このときのフィルター1台当たりの活性炭充填量は7.0kgであった.各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造されたフィルターの山数および活性炭充填量を表1に示す。
【0028】
<比較例1>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を10:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付40g/m、厚み0.23mm、引張強度(縦方向)177N/5cm、伸度(縦方向)40%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が1000g/mとなるように散布した後、上方よりポリエステルスパンボンド不織布(A)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度150℃、圧力10N/cmの条件で60秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み2.8mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、重ね合わせ、山高さ90mmで27山分プリーツ折加工し、さらに605mm幅でスリットした。得られたプリーツ濾材に、厚み40μmのアルミ箔をコルゲート加工した山高さ3mmのセパレーターを作成してプリーツの間に挟みこみ、周囲をアルミニウム製の枠材で固定し、濾材と枠材の間を接着剤で接着してフィルターとした。このときのフィルター1台当たりの活性炭充填量は5.9kgであった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造されたフィルターの山数および活性炭充填量を表1に示す。
【0029】
<比較例2>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を5:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付40g/m、厚み0.23mm、引張強度(縦方向)177N/5cm、伸度(縦方向)40%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が500g/mとなるように散布した後、上方よりポリエステルスパンボンド不織布(A)重ね合わせサンドイッチした状態で、温度140℃、圧力5N/cmの条件で30秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み1.8mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、重ね合わせ、山高さ90mmで43山分プリーツ折加工し、さらに605mm幅でスリットした。得られたプリーツ濾材に、厚み40μmのアルミ箔をコルゲート加工した山高さ3mmのセパレーターを作成してプリーツの間に挟みこみ、周囲をアルミニウム製の枠材で固定し、ろ材と枠材の問を接着剤で接着してフィルターとした。このときのフィルター1台当たりの活性炭充填量は4.7kgであった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造されたフィルターの山数および活性炭充填量を表1に示す。
【0030】
<比較例3>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を5:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付40g/m、厚み0.23mm、引張強度(縦方向)177N/5cm、伸度(縦方向)40%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が500g/mとなるように散布した後、目付20g/m、厚み0.15mm、引張強度(縦方向)65N/5cm、伸度(縦方向)25%のポリエステルスパンボンド不織布(B)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度140℃、圧力5N/cmの条件で30秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み1.7mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、(B)側を向かい合わせる形で重ね合わせ、山高さ90mmで38山分プリーツ折加工し、さらに605mm幅でスリットした。得られたプリーツ濾材に、厚み40μmのアルミ箔をコルゲート加工した山高さ3mmのセパレーターを作成してプリーツの間に挟みこみ、周囲をアルミニウム製の枠材で固定し、濾材と枠材の間を接着剤で接着してフィルターとした。このときのフィルター1台当たりの活性炭充填量は4.9kgであった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造されたフィルターの山数および活性炭充填量を表1に示す。
【0031】
<比較例4>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を10:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付15g/m、厚み0.12mm、引張強度(縦方向)41N/5cm、伸度(縦方向)26%のポリエステルスパンボンド不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が1000g/mとなるように散布した後、目付12g/m、厚み0.10mm、引張強度(縦方向)25N/5cm、伸度(縦方向)50%のポリエステル(芯部)/ポリエチレン(鞘部)の芯鞘繊維から構成されるスパンボンド不織布(B)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度150℃、圧力10N/cmの条件で60秒間加熱・圧着されるように連続搬送し、厚み2.5mmの濾材を得た。
この濾材はロール状で供給され、2つのロールからシートを巻き出し、(B)側を向かい合わせる形で重ね合わせ、山高さ90mmでプリーツ折加工を行ったが、加工時に活性炭がポリエステルスパンボンド不織布から漏れたり、濾材の破損が相次いだためフィルター製造が不可となった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造状況を表1に示す。
【0032】
<比較例5>
平均粒子径300μmのヤシガラ系粒状活性炭と平均粒子径12μmの粉末状ポリエチレン系接着剤を10:1の割合で混合し、均一になるまで撹拌したものを、目付35g/m、厚み0.67mm、引張強度(縦方向)40N/5cm、伸度(縦方向)40%のポリプロピレンスパンレース不織布(A)と、目付10g/mのポリアミド系繊維からなる接着性繊維シートを重ねたものの上に、粒状活性炭充填量が1000g/mとなるように散布した後、目付12g/m、厚み0.10mm、引張強度(縦方向)25N/5cm、伸度(縦方向)50%のポリエステル(芯部)/ポリエチレン(鞘部)の芯鞘繊維から構成されるスパンボンド不織布(B)を重ね合わせサンドイッチした状態で、温度150℃、圧力10N/cmの条件で60秒間加熱・圧着されるように連続搬送した。
しかしながら搬送中に繊維シート(A)と活性炭充填層に皺が寄り、活性炭充填が不均一となったため均一なシートが製造できなかった。各繊維シート(A)、(B)の目付、吸着層(C)の目付、繊維シート(A)と(B)の目付倍率、繊維シート(B)と吸着層(C)の目付倍率、製造状況を表に示す。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のケミカルフィルターは、活性炭シートのプリーツ加工時の折曲げの反発力を緩和してフィルター1台当たりのプリーツ数を上げることにより、フィルター1台あたりの活性炭充填量を大きくすることが可能である。したがって微量の化学物質を除去するケミカルフィルターの寿命において大きく寄与するものである。
【符号の説明】
【0035】
1:フィルター濾材
2:セパレーター
3:枠体
4:スパンボンド不織布(高目付側)
5:粒状活性炭充填層
6:繊維シート(低目付側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる目付の繊維シート間に、活性炭が熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層を有する濾材であって、異なる目付の繊維シートのうち目付の高い方の繊維シートがスパンボンド不織布からなり、該スパンボンド不織布の目付が、目付の低い方の繊維シートの目付の2倍を超える濾材を、目付の低い方の繊維シート側を向き合わせ、共折りし、プリーツを形成したケミカルフィルター。
【請求項2】
目付の低い方の繊維シートの目付が、活性炭と熱可塑性樹脂により接着固定された吸着層の目付の0.008〜0.03倍である請求項1に記載のケミカルフィルター。
【請求項3】
目付の低い方の繊維シートがスパンボンド不織布である請求項1または2に記載のケミカルフィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−188318(P2010−188318A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37793(P2009−37793)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】