説明

ケモカイン受容体CCR4に対する遺伝子組換え抗体を含む医薬

ヒトCCケモカイン受容体4に対する遺伝子組換え抗体あるいはその抗体断片、または薬剤のいずれかの単独投与よりも高い治療効果を与える医薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒトCCケモカイン受容体4(CCR4)に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを組み合わせてなる医薬に関する。
【背景技術】
ケモカイン受容体にリガンドが結合すると、白血球の遊走が誘導される。正常組織において主としてTh2型のCD4陽性ヘルパーT細胞上に発現しているヒトCCケモカイン受容体4(以下CCR4と称する)はケモカイン受容体ファミリーの一種である[Int.Immunol.,11,81(1999)]。CCR4はリガンドであるTARC(thymus and activation−regulated chemokine)またはMDC(macrophage−derived chemokine)と特異的に結合する。Th2型のCD4陽性ヘルパーT細胞は液性免疫における制御細胞であり、アレルギーや自己免疫疾患において重要な役割を果たしていると考えられている。
T細胞系統の白血病/リンパ腫細胞では、種々のケモカイン受容体が発現しており、T細胞白血病/リンパ腫のサブタイプと細胞で発現される受容体の種類との間には関連がある。白血病/リンパ腫細胞においてCCR4は高い頻度で発現していることが報告された[Blood,96,685(2000)]。CCR4はALK−陽性異型性大細胞リンパ腫(ALK−positive anaplastic large−cell lymphoma)、菌状息肉症細胞(mycosis fungoides)で高頻度に発現しているので、特定の癌種においては非常に選択性の高い腫瘍マーカーとなりうる可能性が示唆された[Blood,96,685(2000)、Mod.Pathol.,15,838(2002)、J.Invest.Dermatol.,119,1405(2002)]。またヒトT細胞性白血病ウイルス1型(human T−cell leukemiavirus type 1)の感染が原因である成人T細胞性白血病(以下ATLと称す;adult T−cell leukemia)でも、CCR4が非常に高い頻度で発現していることが報告された[Blood,99,1505(2002)]。また、ATLにおけるCCR4発現に関しては、CCR4の発現は予後不良と有意に相関する[Clin.Cancer Res.,9,3625(2003)]。さらに慢性T細胞性白血病(以下CTLと称す;cutaneous T cell lymphoma)の細胞でもCCR4は選択的に発現している[J.Invest.Dermatol.,119,1405(2002)]。
白血病/リンパ腫に対する主な治療法は、複数の低分子抗癌剤の組み合わせを中心とした化学療法である。しかしながら、これまでに充分な治療効果が得られる化学療法は知られていない[癌と化学療法、26,Supplement I,165−172,(1999)]。
上記のCCR4陽性の白血病/リンパ腫の中でも、特にATLの予後が不良である。通常行われているCHOP療法(cyclophosphamide、vincristine、doxrubicin、prednisoneの併用療法)を行なったATL全体の7割以上を占める急性型あるいはリンパ腫型患者のうち、4年生存率は5%程度である[British J.Haematol.,79,428−437(1991)]。
通常の化学療法では、薬剤耐性腫瘍細胞の出現などにより寛解を導入することが難しい場合があるが、化学療法と抗体との併用により優れた治療成績が得られる場合がある。抗HER2/neuヒト化抗体rhuMAb HER2(Herceptin/trastuzumab、Roche社)はtaxane系抗癌剤との併用療法により乳癌に対して顕著な効果を示した[Clinical Therapeutics,21,309(1999)]。また、抗CD20ヒト型キメラ抗体IDEC−C2B8(Rituxan/rituximab、IDEC社)は多剤療法との併用療法によりB細胞リンパ腫に対して顕著な効果を示した[J.Clin.Oncol.,17,268(1999)]。
抗体とサイトカインとを用いる併用療法も腫瘍に対する新たな免疫療法として期待されている。サイトカインは免疫反応における細胞間相互作用を司る種々の液性因子の総称である。細胞障害活性の一つである抗体依存性細胞障害活性(以下ADCC活性と称す)は、単核球、マクロファージ、NK細胞などのエフェクター細胞に抗体が結合することにより引き起こされる[J.Immunol.,138,1992(1987)]。サイトカインはエフェクター細胞を活性化する目的で、抗体とサイトカインを組み合わせて用いる併用療法が試みられている。B細胞系の白血病/リンパ腫に対しては、IDEC−C2B8とインターロイキン(IL)−2[British J.Haematol.,117,828−834(2002)]、あるいはIDEC−C2B8と顆粒球コロニー刺激因子[Leukemia,17,1658−1664(2003)]との併用投与の臨床試験が行われているが、抗体を単独で使用した場合と比較して顕著な治療効果は認められていない。
上記のCCR4陽性の白血病/リンパ腫に対し、抗CCR4抗体KM2760は、ADCC活性を介して選択的に腫瘍細胞を減少させる治療薬として知られている(WO03/18635)。これまでに抗CCR4抗体と化学療法剤またはサイトカインとの併用については知られていない。
癌、特に白血病・リンパ腫の治療において、十分な効果を奏する治療方法はこれまでに知られていない。
【発明の開示】
本発明の目的は、CCR4に対する遺伝子組換え抗体またはその抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを組み合わせてなる医薬を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(26)に関する。
(1) ヒトCCケモカイン受容体4(CCR4)に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを組み合わせてなる医薬。
(2) CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを併用して投与するための医薬。
(3) CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを同時に又は逐次的に投与するための医薬。
(4) 医薬が、抗腫瘍剤であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医薬。
(5) 腫瘍がCCR4を発現している腫瘍である上記(4)に記載の医薬。
(6) CCR4が発現している腫瘍が造血器腫瘍である上記(5)に記載の医薬。
(7) CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、CCR4の細胞外領域に特異的に結合し、ヒト血小板に反応性を示さない抗体である上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の医薬。
(8) CCR4の細胞外領域に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、CCR4リガンドであるTARC(thymus and activation−regulated chemokine)またはMDC(macrophage−derived chemokine)のCCR4への結合を阻害する活性を有さない上記(7)に記載の医薬。
(9) 細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の1〜39、98〜112、176〜206および271〜284番目からなる群から選ばれる細胞外領域である上記(7)または(8)に記載の医薬。
(10) 細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の2〜29番目に存在するエピトープである上記(7)〜(9)のいずれか1項に記載の医薬。
(11) 細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜29番目に存在するエピトープである上記(7)〜(10)のいずれか1項に記載の医薬。
(12) 細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目に存在するエピトープである上記(7)〜(11)のいずれか1項に記載の医薬。
(13) CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目を含むペプチドのうち、16、19、20および22番目の少なくとも1つのチロシン残基が硫酸化されたペプチドへの結合性が配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目を含むペプチドへの結合性よりも低いことを特徴とする上記(12)に記載の医薬。
(14) CCR4の細胞外領域に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、ハイブリドーマKM2160(FERM BP−10090)が生産するモノクローナル抗体が認識するエピトープに特異的に反応する抗体または該抗体断片である、上記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の医薬。
(15) ヒト型遺伝子組換え抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト型CDR移植抗体である上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の医薬。
(16) ヒト型キメラ抗体がCCR4に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、上記(15)に記載の医薬。
(17) ヒト型キメラ抗体が配列番号5、6、7で表されるアミノ酸配列からなる抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)のCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号8、9、10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖(L鎖)V領域のCDR1、CDR2、CDR3を含む上記(15)または(16)に記載の医薬。
(18) ヒト型キメラ抗体が配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および/または配列番号12で表される抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域を含む上記(15)〜(17)のいずれか1項に記載の医薬。
(19) ヒト型CDR移植抗体がCCR4に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、上記(15)に記載の医薬。
(20) ヒト型CDR移植抗体が配列番号5、6、7で表されるアミノ酸配列からなる抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)のCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号8、9、10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖(L鎖)V領域のCDR1、CDR2、CDR3を含む上記(15)または(19)に記載の医薬。
(21) ヒト型CDR移植抗体が配列番号16または17で示されるアミノ酸配列で表されるアミノ酸配列からなる抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および/または配列番号18で表される抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域を含む、上記(15)、(18)および(20)のいずれか1項に記載の医薬。
(22) 薬剤が、蛋白質または低分子の薬剤である上記(1)〜(21)のいずれか1項に記載の医薬。
(23) 蛋白質が、サイトカインまたは抗体である、上記(22)記載の医薬。
(24) サイトカインが、G−CSF、M−CSF、インターフェロン−α、IL−2およびIL−15から選ばれるサイトカインである上記(23)記載の医薬。
(25) 低分子の薬剤が、化学療法剤またはホルモン療法剤である上記(1)〜(24)のいずれか1項に記載の医薬。
(26) 化学療法剤が、ビンクリスチン、シクロフォスファミド、エトポシドおよびメトトレキセートから選ばれる薬剤である上記(25)に記載の薬剤。
本発明の医薬の形態としては、CCR4に特異的に反応する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを組み合わせてなる医薬、CCR4に特異的に反応する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを併用して投与するための医薬、CCR4に特異的に反応する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを同時に又は逐次的に投与するための医薬があげられる。
ここで、組み合わせてなる医薬とは、CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体およびその抗体断片と少なくとも1種類の薬剤とを別々に調製し、これらの薬剤を組み合わせて同時にまたは逐次的に投与する医薬であってもよいし、それぞれの薬剤成分を混合させた合剤であってもよい。それぞれの薬剤成分を混合させた合剤には、CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体およびその抗体断片に少なくとも1種類の薬剤を結合させた融合抗体なども包含する。
本発明におけるCCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体およびその抗体断片(以下、両者を総称して本発明における抗体と表記することもある)としては、ヒトCCR4の細胞外領域に特異的に反応する遺伝子組換え抗体およびその抗体断片があげられるが、ヒト血小板に反応性を示さない遺伝子組換え抗体またはその抗体断片、高いADCC活性を有する遺伝子組換え抗体またはその抗体断片などが好ましい。
ここで抗体がヒト血小板に反応性を示さないとは、抗体がヒト血小板と実質的に反応しないことをいい、具体的には、フローサイトメーターによる測定で反応性を示さないことをいう。
また、本発明における抗体として、好ましくは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の1〜39、98〜112、176〜206または271〜284番目を含む領域、より好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列の2〜29番目(配列番号2)、さらに好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列の12〜29番目(配列番号3)、特に好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列の13〜25番目(配列番号4)に、特異的に反応する抗体があげられる。また、ハイブリドーマKM2160(FERM BP−10090)が生産するCCR4に結合するモノクローナル抗体が認識するエピトープに特異的に反応する抗体もあげられる。ハイブリドーマKM2160は平成16年8月12日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にFERM BP−10090として寄託されている。
本発明における抗体は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目を含むペプチドに対する結合性が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目を含むペプチドのうち、16、19、20および22番目の少なくとも1以上のチロシン残基が硫酸化されたペプチドに対する結合性が低い抗体が好ましい。
また、本発明における抗体は、N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチン耐性を有する細胞(WO02/31140、WO03/85118、WO03/85107)で生産された抗体も包含される。
本発明における遺伝子組換え抗体としては、ヒト化抗体、ヒト抗体等があげられる。
ヒト化抗体としては、ヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体などがあげられる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体H鎖V領域(以下、HVまたはVHとも称す)および抗体L鎖V領域(以下、LVまたはVLとも称す)とヒト抗体のCHおよびヒト抗体のL鎖C領域(以下、CLとも称す)とからなる抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
本発明におけるヒト型キメラ抗体は、CCR4に特異的に反応するヒト以外の動物のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、IgGクラスのものが好適であり、更にIgGクラスに属するγ1、γ2、γ3、γ4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明におけるヒト型キメラ抗体としては、VHのCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号5、配列番号6および配列番号7、VLのCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号8、配列番号9および配列番号10で表されたアミノ酸配列を含むヒト型キメラ抗体、より具体的にはVHおよびVLのアミノ酸配列が、それぞれ配列番号11および配列番号12で表されたアミノ酸配列であるヒト型キメラ抗体、さらに具体的には、VHのアミノ酸配列が配列番号11、H鎖C領域がヒト抗体IgG1サブクラスのアミノ酸配列、L鎖V領域が配列番号12で表されたアミノ酸配列、L鎖C領域がヒト抗体κクラスのアミノ酸配列からなるヒト型キメラ抗体があげられる。例えばWO01/64754に開示された抗CCR4ヒト型キメラ抗体KM2760があげられる。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいう。
本発明におけるヒト型CDR移植抗体は、CCR4に特異的に結合するヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびH鎖C領域(以下、CLと表記する)をコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト抗体のVHおよびVLのフレームワーク(以下、FRと表記する)のアミノ酸配列を選択方法としては、ヒト抗体由来のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)などがあげられる。
本発明における抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、IgGクラスのものが好適であり、さらにIgGクラスに属するγ1、γ2、γ3、γ4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明におけるヒト型CDR移植抗体としては、それぞれ配列番号5、6、7で表されるアミノ酸配列からなる抗体VHのCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号8、9、10で表されるアミノ酸配列からなるVLのCDR1、CDR2、CDR3を含むヒト型CDR移植抗体または該抗体断片などがあげられる。
好ましくは、抗体のVHが配列番号13または14、および/またはVLが配列番号15で示されるアミノ酸配列を含む、ヒト型CDR移植抗体などがあげられる。
より好ましくは、
抗体のVHが、配列番号13で示されるアミノ酸配列のうち、40番目のAla、42番目のGly、43番目のLys、44番目のGly、76番目のLys、および97番目のAlaから選ばれる少なくとも1つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、
抗体のVHが、配列番号14で示されるアミノ酸配列のうち、28番目のThrおよび97番目のAlaのうち少なくとも1つ以上のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、
抗体のVLが、配列番号15で示されるアミノ酸配列のうち、2番目のIle,3番目のVal、50番目のGln、および88番目のValから選ばれる少なくとも1つ以上のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を含む、ヒト型CDR移植抗体、
抗体のVHが、配列番号13で示されるアミノ酸配列のうち、40番目のAla、42番目のGly、43番目のLys、44番目のGly、76番目のLys、および97番目のAla、ならびに抗体のVLが、配列番号15で示されるアミノ酸配列のうち、2番目のIle、3番目のVal、50番目のGln、および88番目のValから選ばれる少なくとも1つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、ヒト型CDR移植抗体、
抗体のVHが、配列番号14で示されるアミノ酸配列のうち、28番目のThrおよび97番目のAla、ならびに抗体のVLが、配列番号15で示されるアミノ酸配列のうち、2番目のIle、3番目のVal、50番目のGln、および88番目のValから選ばれる少なくとも1つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、ヒト型CDR移植抗体、
さらに好ましくは、抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号16または17で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、などがあげられる。
これらのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、置換または挿入され、かつCCR4と特異的に反応する抗体または抗体断片も本発明の範囲に包含される。
本発明におけるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入または付加があることを意味し、欠失、置換、挿入または付加が同時に生じてもよく、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸残基としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、0−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
本発明におけるヒト型CDR移植抗体の具体例としては、WO03/18635に記載のヒト型CDR移植抗体、WO00/42074に記載のモノクローナル抗体1G1、2B10または10E4から作製されるヒト型CDR移植抗体、WO99/15666に記載のヒト化抗体またはモノクローナル抗体252Yまたは252Zから作製されるヒト型CDR移植抗体、US6245332に記載のモノクローナル抗体から作製されるヒト型CDR移植抗体などがあげられる。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体を意味するが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。
ヒト体内に天然に存在する抗体は、例えばヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養物中より、該抗体を精製することができる。
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することにより、Fab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーはレパートリーを増やすために、人為的に変異を導入したライブラリーを用いることもできる。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有するファージを回収できる。該抗体断片は、さらに蛋白質工学的手法により、二本の完全なH鎖および二本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へ変換することもできる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組み込まれた動物を意味する。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚に移植後、発生させることにより作製されたヒト抗体産生トランスジェニックマウスなどがあげられる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常の細胞融合法によるハイブリドーマ作製方法により、ヒト抗体産生ハイブリドーマを得、培養することで培養物中にヒト抗体を産生蓄積させることができる。
トランスジェニック非ヒト動物は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ニワトリ、サル又はウサギ等があげられる。
本発明における抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Diabody、dsFv、CDRを含むペプチドなどがあげられる。
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合(S−S結合)で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明におけるFabは、本発明のCCR4に特異的に反応するヒト型CDR移植抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
F(ab’)は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のS−S結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明におけるF(ab’)は、本発明のCCR4に特異的に反応するヒト型CDR移植抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはS−S結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のS−S結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明におけるFab’は、本発明のCCR4に特異的に結合するF(ab’)を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、CCR4に特異的に反応するヒト型CDR移植抗体のFab’をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを12残基以上の適当なペプチドリンカー(P)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明におけるscFvは、CCR4に特異的に結合するヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
Diabodyは、抗原結合特異性の同じまたは異なるscFvが2量体を形成した抗体断片で、同じ抗原に対する2価の抗原結合活性または異なる抗原に対する2特異的な抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明におけるDiabodyは、例えば、CCR4に特異的に結合する2価のDiabodyは、本発明のCCR4に特異的に結合するヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、3〜10残基のポリペプチドリンカーを有するscFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することによりDiabodyを発現させ、製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のS−S結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering,,697(1994))に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
本発明におけるdsFvは、CCR4に特異的に結合するヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることにより製造することができる。
本発明におけるCDRを含むペプチドは、CCR4に特異的に結合するヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのCDRをコードするcDNAを構築し、該cDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明に用いられる薬剤としては、蛋白質、低分子の薬剤などがあげられる。
蛋白質としては、サイトカイン、抗体などがあげられる。
サイトカインとしては、免疫担当細胞であるNK細胞、マクロファージ、単球、顆粒球などのエフェクター細胞を活性化するサイトカイン、または当該サイトカインの誘導体などがあげられる。具体的なサイトカインとしては、インターロイキン−2(IL−2)、IFN−α、IFN−γ、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21、fractalkine、M−CSF、GM−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、IL−1α、IL−1β等があげられる。
抗体としては、T細胞表面マーカーに特異的に反応する抗体、抗体断片または融合抗体などがあげられる。具体的な抗体としては、抗CD3抗体(Orthoclone社)、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD8抗体、抗CD30抗体、抗CD2抗体、抗CD25抗体(Zenapax,Hoffmann La Roche社)、抗CD52抗体(Campath,Ilex Oncology社)などがあげられる。
本発明に用いられる低分子の薬剤としては、アミフォスチン(エチオール)[amifostine(ethyol)]、シスプラチン(cisplatin)、ダカルバジン(DTIC)[dacarbazine(DTIC)]、ダクチノマイシン(dactinomycin)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)[mechlorethamine(nitrogen mustard)]、ストレプトゾシン(streptozocin)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、カルムスチン(BCNU)[carmustine(BCNU)]、ロムスチン(CCNU)[lomustine(CCNU)]、ドキソルビシン(アドリアマイシン)[doxorubicin(adriamycin)]、ドキソルビシンリポ(ドキシル)[doxorubicin lipo(doxil)]、ゲムシタビン(ゲムザール)[gemcitabine(gemzar)]、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダウノルビシンリポ(ダウノゾーム)[daunorubicin lipo(daunoxome)]、プロカルバジン(procarbazine)、マイトマイシン(mitomycin)、シタラビン(cytarabine)、エトポシド(etoposide)、メトトレキセート(methotrexate)、5−フルオロウラシル(5−fluorouracil)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ブレオマイシン(bleomycin)、パクリタキセル(タキソール)[paclitaxel(taxol)]、ドセタキセル(タキソテア)[docetaxel(taxotere)]、アルデスロイキン(aldesleukin)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、クラドリビン(cladribine)、カンプトテシン(camptothecin)、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトテシン(SN38)[10−hydroxy−7−ethyl−camptothecin(SN38)]、フロクスウリジン(floxuridine)、フルダラビン(fludarabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、イホスファミド(ifosfamide)、イダルビシン(idarubicin)、メスナ(mesna)、イリノテカン(irinotecan)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、トポテカン(topotecan)、ロイプロリド(leuprolide)、メゲストロール(megestrol)、メルファラン(melpharan)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトタン(mitotane)、ペガスパラガーゼ(pegaspargase)、ペントスタチン(pentostatin)、ピポブロマン(pipobroman)、ストレプトゾシン(streptozocin)、タモキシフェン(tamoxifen)、テニポシド(teniposide)、テストラクトン(testolactone)、チオグアニン(thioguanine)、チオテパ(thiotepa)、ウラシルマスタード(uracilmustard)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、プレドニゾロン(prednisolone)、ビンデシン(vindesine)、ニムスチン(nimstine)、セムスチン(semustin)、カペシタビン(capecitabine)、トムデックス(tomudex)、アザシチジン(azacytidine)、UFT、オキザロプラチン(oxaloplatin)、ゲフィチニブ(イレッサ)[gefitinib(Iressa)]、イマチニブ(STI571)[imatinib(STI571)]、アムサクリン(amsacrine)、オール−トランスレチノイン酸(all−trans retinoic acid)、サリドマイド(thalidomide)、ベキサロテン(ターグレチン)[bexarotene(targretin)]、デキサメタゾン(dexamethasone)、アナストロゾール(アリミデックス)[anastrozole(Alimidex)]、ロイプリン(leuplin)あるいはこれらの組み合わせがあげられる。望ましくは、ビンクリスチン、シクロフォスファミド、エトポシド、メトトレキセートあるいはこれらの組み合わせがあげられる。
上記の薬剤は、単独で高用量を生体内に投与した場合には副作用が懸念される。しかしながら、本発明においてはCCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体およびその抗体断片と組み合わせることにより、上述の薬剤を低用量で用いることができる。したがって、十分な治療効果に加えて、副作用を軽減することができる。
本発明の医薬は、CCR4を発現している細胞に対して用いることができるが腫瘍細胞が好ましい。腫瘍の具体例としては、造血器腫瘍があげられる。
造血器腫瘍としては、急性白血病、慢性白血病、ホジキン病、非ホジキン病などがあげられる。
急性白血病としては、急性リンパ性白血病などがあげられ、急性リンパ性白血病には前駆T細胞系急性リンパ性白血病などがあげられる。
慢性白血病としては、慢性リンパ性白血病があげられ、慢性リンパ性白血病には、T細胞型慢性リンパ性白血病、T細胞型前リンパ性白血病、成人T細胞性白血病リンパ腫(ATL)、セザリー症候群などがあげられる。
非ホジキン病としては、T/NK細胞性リンパ腫があげられ、T/NK細胞性リンパ腫には前駆Tリンパ芽球型リンパ腫/白血病、成熟T細胞腫瘍などがあげられる。
成熟T細胞腫瘍としては、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、セザリー症候群、菌状息肉腫、原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫、皮下蜂窩織炎様T細胞リンパ腫、腸管症型腸T細胞リンパ腫、肝脾γδT細胞リンパ腫、血管免疫芽球型T細胞リンパ腫、末梢性T細胞性リンパ腫、未分化型大細胞型リンパ腫、成人T細胞性白血病/リンパ腫などがあげられる。
本発明の医薬の効果は、in vitroの細胞障害活性測定系によって調べることができる。in vitroの細胞障害活性測定系の例としては、ADCC活性の測定系が挙げられる。ADCC活性は、抗体の存在下で、抗原であるCCR4を発現する標的細胞と、ヒトあるいはその他の動物より採取した末梢血単核球、単球、マクロファージ、顆粒球等のエフェクター細胞を接触させ、障害された標的細胞の度合いを検出し、これを定量することにより測定することができる。障害された標的細胞の度合いは、51Cr遊離法、標的細胞の酵素活性を検出する方法、フローサイトメーターによる検出法などによって検出することができる。ADCC活性測定系における本発明の医薬の効果は、ADCC活性測定系中に薬剤を添加するか、あるいは標的細胞、またはエフェクター細胞、またはその両者にあらかじめこれらの薬剤を一定期間曝露してADCC活性に与える影響を観察することにより、測定することができる。
また本発明の医薬の効果は、動物モデルを用いたin vivo抗腫瘍活性を測定することによっても調べることができる。
動物モデルとしては、ヌードマウス等の免疫不全マウスにヒト癌組織由来の培養細胞株を移植した異種移植モデル、培養マウス癌細胞株を正常な免疫系を有する野生型マウスへ移植した同系移植モデルなどがあげられる。
異種移植モデルはヌードマウス等の免疫不全マウスの皮下、皮内、腹腔内、静脈内等様々な部位にヒト癌細胞株を移植することにより作製することができる。
本発明の医薬の評価用の同系移植モデルは、EL4細胞などのマウス培養細胞株に、CCR4遺伝子を導入することにより、CCR4陽性の形質転換株を作製し、該形質転換株を正常な免疫系を有する野生型マウスの様々な部位へ移植することにより作製することができる。
上記動物モデルを用いて抗体の単独投与、薬剤の単独投与の効果と、本発明の医薬の効果とを比較することにより、本発明の医薬の効果を評価することができる。
本発明の医薬は、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげることができ、蛋白質製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製される。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。
また、噴霧剤は該医薬そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該医薬を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。
担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該医薬および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1回当たり抗体量として0.1〜20mg/kgである。抗体と併用する薬剤は、単独で臨床に用いられる場合の投与量と同用量またはそれより少ない用量である。
【図面の簡単な説明】
第1図は抗CCR4抗体の細胞障害活性に対するサイトカインの増強効果を示す。縦軸は細胞障害活性を表す。■はサイトカイン非添加時、□はIL−2添加時、斜線はIL−15添加時の細胞障害活性をそれぞれ示す。バーは標準偏差を示す。
第2図はヌードマウスに移植したCCRF−CEM細胞に対する抗CCR4抗体とビンクリスチンの併用効果を示す。縦軸はV/VOの値を表す。□は陰性対照群、斜線はKM2760投与群、灰色はビンクリスチン投与群、■はKM2760とビンクリスチンの併用投与群のV/VOの値をそれぞれ示す。バーは標準偏差を示す。
第3図はヌードマウスに移植したCCRF−CEM細胞に対する抗CCR4抗体とシクロフォスファミドの併用効果を示す。縦軸はV/VOの値を表す。□は陰性対照群、斜線はKM2760投与群、灰色はシクロフォスファミド投与群、■はKM2760とシクロフォスファミドの併用投与群のV/VOの値をそれぞれ示す。バーは標準偏差を示す。
第4図はヌードマウスに移植したCCRF−CEM細胞に対する抗CCR4抗体とエトポシドの併用効果を示す。縦軸はV/VOの値を表す。□は陰性対照群、斜線はKM2760投与群、灰色はエトポシド投与群、■はKM2760とエトポシドの併用投与群のV/VOの値をそれぞれ示す。バーは標準偏差を示す。
第5図はヌードマウスに移植したCCRF−CEM細胞に対する抗CCR4抗体とメトトレキセートの併用効果を示す。縦軸はV/VOの値を表す。□は陰性対照群、斜線はKM2760投与群、灰色はメトトレキセート投与群、■はKM2760とメトトレキセートの併用投与群のV/VOの値をそれぞれ示す。バーは標準偏差を示す。
第6図はC57BL/6マウスに移植したCCR4/EL4細胞に対する抗CCR4抗体とG−CSFの併用効果を示す。横軸は腫瘍移植後の日数、縦軸は腫瘍体積をそれぞれ表す。×は陰性対照群、▲はKM2760単独群、●はG−CSF単独群、□は併用群をそれぞれ示す。バーは標準偏差を示す。
第7図はC57BL/6マウスに移植したCCR4/EL4細胞に対する抗CCR4抗体とIFN−αの併用効果を示す。縦軸は肝臓重量比率を表す。バーは標準偏差を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2003年12月4日および2004年5月25日に出願された日本国特許出願2003−406590号および2004−155141の優先権を主張するものであり、当該特許出願の明細書及び/または図面に記載される内容を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
in vitro細胞障害活性における抗CCR4抗体とサイトカインとの併用効果
in vitro細胞障害活性における抗CCR4ヒト型キメラ抗体KM2760(FERM BP−7054、WO01/64754)とサイトカインとの併用効果を以下の方法により測定した。
(a)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mLを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)0.5mLを加え穏やかに混合した。これをMONO−POLY分離溶液(大日本製薬株式会社製)を用いて添付の説明書に従って、単核球層を分離した。RPMI1640−FCS(5)培地[FCSを5%含むRPMI1640培地(GIBCO BRL社)]で3回遠心分離して洗浄後、同培地を用いて3×10細胞/mLの濃度になるように再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
(b)エフェクター細胞のサイトカインによる刺激
上記(a)で得られたエフェクター細胞溶液を50μLずつ、96穴U底プレート(Falcon社製)に分注した。さらにRPMI1640−FCS(5)培地で希釈した2ng/mLのIL−2(ペプロテック社製)溶液、2ng/mLのIL−15(ペプロテック社製)溶液およびサイトカイン非添加の陰性対照であるRPMI1640−FCS(5)を各々50μLずつ別のサンプルに添加し、5%COインキュベーター内にて3日間静置した。
(c)標的細胞溶液の調製
G418(ナカライテスク社製)を0.5mg/mLで含むRPMI1640−FCS(10)培地[FCSを10%含むRPMI1640培地(GIBCO BRL社製)]で培養した、マウス胸腺腫細胞株EL4にヒトCCR4遺伝子を導入した形質転換株である腫瘍細胞であるCCR4/EL4細胞(WO01/64754)を遠心分離操作及び懸濁によりRPMI1640−FCS(5)培地で洗浄した後、RPMI1640−FCS(5)培地で2×10細胞/mLの濃度に調整し、標的細胞溶液とした。
(d)細胞障害活性の測定
上記(b)でサイトカインによる刺激を与えたエフェクター細胞を含む96ウェルU字底プレートの各ウェルに(c)で調製した標的細胞溶液を1×10細胞/ウェルになるように50μLを添加した。このときエフェクター細胞と標的細胞の比は15:1となる。更に、KM2760を最終濃度がそれぞれ1あるいは100ng/mLとなるように添加して、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(以下、LDHと称す)活性を、CytoTox96 Non−Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega社製)を用いて、添付の説明書に従って吸光度データを取得することで測定した。標的細胞自然遊離の吸光度データは、エフェクター細胞溶液および抗体溶液の代わりにそれぞれ同容量のRPMI1640−FCS(5)培地を用いて、また、エフェクター細胞自然遊離の吸光度データは、標的細胞溶液および抗体溶液の代わりにそれぞれ同容量のRPMI1640−FCS(5)培地を用いて、上記と同様の操作を行うことで取得した。標的細胞全遊離の吸光度データは、抗体溶液およびエフェクター細胞溶液の代わりにそれぞれ同容量のRPMI1640−FCS(5)培地を用いて反応を行い、反応終了45分前に15μLの9%Triton X−100溶液を添加し、上記と同様の操作を行うことで、上清のLDH活性を測定した。ADCC活性は次式により求めた。
(式1)
細胞障害活性(%)=[(検体の吸光度)−(エフェクター細胞自然遊離の吸光度)−(標的細胞自然遊離の吸光度)]/[(標的細胞全遊離の吸光度)−(標的細胞自然遊離の吸光度)]×100
第1図に結果を示した。KM2760の細胞障害活性は濃度依存的に増加していた。また、サイトカインの添加により、より増加した。この結果は、抗CCR4抗体の細胞障害活性が、エフェクター細胞を活性化するサイトカインによって増強されることを示している。
【実施例2】
抗CCR4抗体とビンクリスチンとの併用投与による抗腫瘍効果
CCRF−CEM細胞(ヒトT細胞白血病細胞株)を2×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL)に懸濁し、該懸濁液100μLをBalb/cヌードマウス(日本クレア、雄)の腹側部皮内に移植した。細胞移植後15日目にノギスによる腫瘍径の測定を行い、次式より腫瘍体積を算出した。
(式2)
腫瘍体積=短径×短径×長径×0.5
腫瘍体積が140〜342mm(平均260mm)の範囲内の腫瘍を有する個体を選抜し、平均腫瘍体積が均一になるように群分けした後に、下記のA〜Dの各薬剤をマウスへ投与した。なお、群分けした日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.KM2760単独群:Day0とDay4に1匹あたり800μg投与した。
C.ビンクリスチン(以下VCR;オンコビン注射用、日本イーライリリー株式会社)単独群:Day0に1匹あたり0.55mg/kg投与した。
D.KM2760+VCR併用群:VCRを、Day0に1匹あたり0.55mg/kg、KM2760を、Day0とDay4に1匹あたり800μgそれぞれ投与した。
実験は各群5匹で行った。各薬剤は生理食塩水(大塚製薬)で希釈調製し、尾静脈内より投与した。Day10に腫瘍体積の測定を行い、抗腫瘍効果の判定は、各群のDay0の腫瘍体積をVOとしたときのDay10の腫瘍体積変化(V/VO)の平均値の比較で行った。
各群のV/VOの平均値を第2図に示す。第2図に示したように、KM2760とVCRとの併用投与は、VCR単独あるいは抗体単独よりも高い増殖抑制効果を示した。
各群のV/VOを陰性対照群のV/VOで除した値(T/C)を第1表に示す。KM2760、VCR両薬剤の薬効が単純に加算された時のT/Cの理論値、すなわち各薬剤単独群のT/Cを掛け合わせた値と比べると、実際の併用群のT/C(表中のC)は、Day10において理論値である0.21よりも低い値(0.11)を示した。

以上より、KM2760とVCRの併用投与は、それぞれ単独投与より、高い抗腫瘍効果を有し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【実施例3】
抗CCR4抗体とシクロフォスファミドとの併用投与による抗腫瘍効果
CCRF−CEM細胞(ヒトT細胞白血病細胞株)を2×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL)に懸濁し、該懸濁液100μLをBalb/cヌードマウス(日本クレア、雄)の腹側部皮内に移植した。細胞移植後18日目にノギスによる腫瘍径の測定を行い、実施例2の式2により腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積が116〜349mm(平均219mm)の範囲内の個体を選抜し、平均腫瘍体積が均一になるように群分けした後に、下記のA〜Dの各薬剤をマウスへ投与した。群分けした日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.KM2760単独群:Day0とDay4に1匹あたり800μg投与した。
C.シクロフォスファミド(以下CPA;注射用エンドキサン、バクスター社)
単独群:Day0に1匹あたり65mg/kg投与した。
D.KM2760+CPA併用:CPAを、Day0に1匹あたり65mg/kg、KM2760を、Day0とDay4に1匹あたり800μgそれぞれ投与した。
実験は各群5匹で行った。各薬剤は生理食塩水(大塚製薬)で希釈調製し、尾静脈内より投与した。Day4に腫瘍体積の測定を行い、抗腫瘍効果の判定は、各群のDay0の腫瘍体積をVOとしたときの各測定日の腫瘍体積変化(V/VO)の平均値の比較で行った。
各群のV/VOの平均値の経日的推移を第3図に示す。第3図に示したように、KM2760とCPAとの併用投与は、CPA単独あるいは抗体単独よりも高い増殖抑制効果を示した。
各群のV/VOを陰性対照群のV/VOで除した値(T/C)を第2表に示す。KM2760、CPA両薬剤の薬効が単純に加算された時のT/Cの理論値、すなわち各薬剤単独群のT/Cを掛け合わせた値と比べると、実際の併用群のT/C(表中のDの値)は理論値である0.39よりも低い値(0.35)を示した。

以上より、KM2760とCPAとの併用投与は、それぞれ単独投与より、高い抗腫瘍効果を有し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【実施例4】
抗CCR4抗体とエトポシドの併用投与による抗腫瘍効果
CCRF−CEM細胞(ヒトT細胞白血病細胞株)を2×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL)に懸濁し、該懸濁液100μLをBalb/cヌードマウス(日本クレア、雄)の腹側部皮内に移植した。細胞移植後17日目にノギスによる腫瘍径の測定を行い、実施例2の式2により腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積が121〜348mm(平均195mm)の範囲内の個体を選抜し、平均腫瘍体積が均一になるように群分けした後、下記のA〜Dの各薬剤をマウスへ投与した。なお、群分けした日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.KM2760単独群:Day0とDay4に1匹あたり800μg投与した。
C.エトポシド(以下VP−16;ラステット注、日本化薬株式会社)単独群:Day0からDay4の5日間、1匹あたり10mg/kg投与した。
D.KM2760+VP−16併用群:VP−16を、Day0からDay4の5日間、1匹あたり10mg/kg、KM2760を、Day0とDay4に1匹あたり800μg投与した。
実験は各群5匹で行った。各薬剤は生理食塩水(大塚製薬)で希釈調製し、尾静脈内より投与した。Day7に腫瘍体積の測定を行い、抗腫瘍効果の判定は、各群のDay0の腫瘍体積をVOとしたときのDay7の腫瘍体積変化(V/VO)の平均値の比較で行った。
各群のV/VOの平均値を第4図に示す。第4図に示したように、KM2760とVP−16との併用投与は、VP−16単独あるいは抗体単独よりも高い増殖抑制効果を示した。
各群のV/VOを陰性対照群のV/VOで除した値(T/C)を第3表に示す。KM2760、VP−16両薬剤の薬効が単純に加算された時のT/Cの理論値、すなわち各薬剤単独群のT/Cを掛け合わせた値と比べると、実際の併用群のT/C(表中のDの値)は理論値である0.46よりも低い値(0.38)を示した。

以上より、KM2760とVP−16との併用投与は、それぞれ単独投与より、高い抗腫瘍効果を有し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【実施例5】
抗CCR4抗体とメトトレキセートの併用投与による抗腫瘍効果
CCRF−CEM細胞(ヒトT細胞白血病細胞株)を2×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL)に懸濁し、該懸濁液100μLをBalb/cヌードマウス(日本クレア、雄)の腹側部皮内に移植した。細胞移植後17日目にノギスによる腫瘍径の測定を行い、式2により腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積が121〜348mm(平均195mm)の範囲内の個体を選抜し、平均腫瘍体積が均一になるように群分けした後に、下記のA〜Dの各薬剤をマウスヘ投与した。群分けした日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.KM2760単独群:Day0とDay4に1匹あたり800μg投与した。
C.methotrexate(以下MTX;メソトレキセート注射液、日本ワイスレダリー株式会社)単独群:Day0からDay4の5日間、1匹あたり15mg/kg投与した。
D.KM2760+MTX併用群:MTXを、Day0からDay4の5日間、1匹あたり15mg/kg、KM2760を、Day0とDay4に1匹あたり800μgそれぞれ投与した。
実験は各群5匹で行った。各薬剤は生理食塩水(大塚製薬)で希釈調製し、尾静脈内より投与した。Day7に腫瘍体積の測定を行い、抗腫瘍効果の判定は、各群のDay0の腫瘍体積をVOとしたときの腫瘍体積変化(V/VO)の平均値の比較で行った。
各群のV/VOの平均値の経日的推移を第5図に示す。第5図に示したように、KM2760とMTXとの併用投与は、MTX単独あるいは抗体単独よりも高い増殖抑制効果を示した。
各群のV/VOを陰性対照群のV/VOで除した値(T/C)を第4表に示す。KM2760、MTX両薬剤の薬効が単純に加算された時のT/Cの理論値、すなわち各薬剤単独群のT/Cを掛け合わせた値と比べると、実際の併用群のT/C(第4表中のDの値)は理論値0.04よりも低い値(0.01)を示した。

以上より、KM2760とMTXとの併用投与は、それぞれ単独投与より、高い抗腫瘍効果を有し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【実施例6】
抗CCR4ヒト型キメラ抗体KM2760とG−CSFの併用投与による抗腫瘍効果
CCR4/EL4細胞(WO01/64754)を1×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL)に懸濁し、該懸濁液100μlをC57BL/6マウス(日本クレア、雄、8週齢)の右側腹側部皮内に移植した。さらにA〜Dまで群分けした後、各マウスにA〜Dの各薬剤を投与した。なお、腫瘍を移植した日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.KM2760単独群:Day0とDay4に1匹あたり100μgを静脈内投与した。
C.G−CSF単独群:腫瘍移植日4日前(以下、Day−4と記す)からDay5までの10日間、G−CSF(ノイアップ注100、協和発酵工業社製)を1日1回、1匹あたり10μgを皮下投与した。投与部位は腫瘍移植部位と重ならない右側腹側部の後肢付近である。
D.KM2760+G−CSF併用群:KM2760をDay0とDay4に1日1回、1匹あたり100μgで静脈内投与し、G−CSFをDay−4からDay5までの10日間、1日1回、1匹あたり10μgを皮下投与した。投与部位は腫瘍移植部位と重ならない右側腹側部の後肢付近である。
実験はA群10匹、B、C、D群は各7匹で行った。KM2760はクエン酸緩衝液(10mMクエン酸、150mM塩化ナトリウム、pH6)、G−CSFは生理食塩水(大塚製薬)で希釈調製し、それぞれ100μLずつ投与した。各群のDay0より経日的にノギスによる腫瘍径の測定を行い、実施例2の式2に示す式により、腫瘍体積を算出した。
Day17以降にA群ではマウスの腫瘍死が始まったため、腫瘍体積の評価はDay14で終了した。
各群の腫瘍体積の平均値の経日的推移を第6図に示す。第6図に示したように、B群およびC群においては未処理のA群に対して弱い抗腫瘍効果しか見られないものの、D群においては顕著な抗腫瘍効果が観察された。
さらに評価最終日におけるT/C値を第5表に示す。各群における抗腫瘍効果の判定(T/C値)は、評価最終日(Day14)におけるA群の腫瘍体積の平均値に対する各群の腫瘍体積の平均値の比(T/C値)の比較を行うため、以下の式3に従い算出した。
(式3)
(T/C値)=(Day14の各群の腫瘍体積の平均値)/(Day14のA群の腫瘍体積の平均値)
KM2760、G−CSF両薬剤の薬効が単純に加算された時のT/C値の理論値、すなわち各薬剤単独群のT/C値を掛け合わせと比べると、実際の併用群のT/C値(表中のC)は、理論値である0.30よりも低い値(0.10)を示した。

以上より、KM2760とG−CSFとの併用投与は、それぞれの単独投与より、高い抗腫瘍効果を示し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【実施例7】
抗CCR4ヒト型キメラ抗体KM2760とIFN−αの併用投与による抗腫瘍効果
CCR4/EL4細胞を5×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL社製)に懸濁し、該懸濁液100μlをC57BL/6マウス(日本クレア、雄、8週齢)の尾静脈内に移植した。さらにマウスを下記A〜Dまで群分けした後、各マウスにA〜Dの各薬剤を投与した。なお、腫瘍を移植した日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.IFN−α単独群:IFN−α(Universal type I interferon、PBLバイオメディカルラボラトリーズ社製)をDay1からDay5の5日間、1日1回、1匹あたり5×10unitsを静脈内投与した。
C.KM2760単独群:KM2760をDay1とDay5に1日1回、1匹あたり0.5μgで静脈内投与した。
D.KM2760+IFN−α併用群:KM2760をDay1とDay5に1日1回、1匹あたり0.5μgで静脈内投与し、IFN−αをDay1からDay5の5日間、1日1回、1匹あたり5×10unitsで静脈内投与した。
実験はA群7匹、B、C、D群は各6匹で行った。KM2760はクエン酸緩衝液(10mMクエン酸、150mM塩化ナトリウム、pH6)、IFN−αは0.1%ウシ血清アルブミンを含むPBSで希釈調製し、それぞれ100μLずつ投与した。Day14に全てのマウスの体重を測定し、エーテル麻酔と放血を行った後に頚椎脱臼して安楽死させて、肝臓を摘出したのち肝臓重量を測定し、各個体の体重に対する肝臓重量の割合(以降、肝臓重量比率と称する)を百分率で算出した。
抗腫瘍効果の評価は、同時に測定した未処理の健康なマウスの肝臓重量比率(6匹の平均値)に対し、腫瘍細胞の転移によって増加した各群の肝臓重量比率を比較することにより行った。
各群の肝臓重量比率を第7図に示す。第7図に示したように、B群およびC群においては未処理のA群に対して弱い抗腫瘍効果しか見られないものの、D群においては顕著な抗腫瘍効果が観察された。
さらに各群における肝臓中の腫瘍細胞の残存の程度を、T/C値として下式に従い算出した。
(式4)
T/C=(各群の肝臓重量比率の平均値−未処理マウス肝臓重量比率の平均値)/(陰性対照群の肝臓重量比率の平均値−未処理マウス肝臓重量比率の平均値)
得られたT/C値を表6に示す。KM2760、IFN−α両薬剤の薬効が単純に加算された時のT/C値の理論値、すなわち各薬剤単独群のT/C値を掛け合わせた値と比べると、実際の併用群のT/C値(表中のC)は、理論値である0.25よりも低い値(0.088)を示した。

以上より、KM2760とIFN−αの併用投与は、それぞれの単独投与より、高い抗腫瘍効果を有し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【実施例8】
抗CCR4ヒト型キメラ抗体KM2760とM−CSFの併用投与による抗腫瘍効果
CCR4/EL4細胞(WO01/64754)を1×10個/mLでRPMI1640培地(Gibco BRL社製)に懸濁し、該懸濁液200μLをC57BL/6マウス(日本クレア、雄、8週齡)の腹腔内に移植した。さらに下記のA〜Dに群分けした後、各マウスにA〜Dの各薬剤を投与した。腫瘍を移植した日をDay0とした。
A.陰性対照群:非投与
B.M−CSF単独群:M−CSF(ロイコプロール、協和醗酵工業社製)をDay−3からDay−1まで1日2回、Day0は1日1回、計7回、1匹あたり100μgで腹腔内投与した。
C.KM2760単独群:KM2760をDay0に1日1回、1匹あたり50μgで腹腔内投与した。
D.KM2760+M−CSF併用群:KM2760をDay0に1日1回、1匹あたり50μgで腹腔内投与し、Day−3からDay−1まで1日2回、Day0は1日1回、計7回、1匹あたり100μgで腹腔内投与した。
実験は各群8匹で行った。各薬剤はKM2760はクエン酸緩衝液(10mMクエン酸、150mM塩化ナトリウム、pH6)、M−CSFは生理食塩水(大塚製薬)で希釈調製し、100μLずつ投与した。抗腫瘍効果の評価は、各群におけるマウスの生存日数の平均値の、陰性対照群の生存日数の平均値に対する割合(以降、延命率と称する)で行った。各マウスの生存日数および各群の延命率を第7表に示す。

第7表に示したとおり、B群では未処理のA群と比較して抗腫瘍効果が現れず、C群では弱い抗腫瘍効果しか見られないものの、D群においては顕著な抗腫瘍効果が観察された。KM2760、M−CSF両薬剤の薬効が単純に加算された時の延命率の理論値、すなわち各薬剤単独群の延命率を掛け合わせた値と比べると、実際の併用群の延命率(表中のD)は理論値である1.16より高い値(>1.49)を示した。なお、D群中の1匹は、観察期間(Day50)を超えてもなお生存していた。
以上より、KM2760とM−CSFの併用投与は、それぞれの単独投与により、高い抗腫瘍効果を有し、相乗効果を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
ヒトCCケモカイン受容体4(CCR4)に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを組み合わせてなる医薬が提供される。
配列番号13−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号14−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号15−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号16−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号17−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号18−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCCケモカイン受容体4(CCR4)に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを組み合わせてなる医薬。
【請求項2】
CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを併用して投与するための医薬。
【請求項3】
CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片と、少なくとも1種類の薬剤とを同時に又は逐次的に投与するための医薬。
【請求項4】
医薬が、抗腫瘍剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
腫瘍がCCR4を発現している腫瘍である請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
CCR4が発現している腫瘍が造血器腫瘍である請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、CCR4の細胞外領域に特異的に結合し、ヒト血小板に反応性を示さない抗体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項8】
CCR4の細胞外領域に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、CCR4リガンドであるTARC(thymus and activation−regulated chemokine)またはMDC(macrophage−derived chemokine)のCCR4への結合を阻害する活性を有さない請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の1〜39、98〜112、176〜206および271〜284番目からなる群から選ばれる細胞外領域である請求項7または8に記載の医薬。
【請求項10】
細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の2〜29番目に存在するエピトープである請求項7〜9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜29番目に存在するエピトープである請求項7〜10のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項12】
細胞外領域が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目に存在するエピトープである請求項7〜11のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項13】
CCR4に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目を含むペプチドのうち、16、19、20および22番目の少なくとも1つのチロシン残基が硫酸化されたペプチドへの結合性が配列番号1で示されるアミノ酸配列の13〜25番目を含むペプチドへの結合性よりも低いことを特徴とする請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
CCR4の細胞外領域に特異的に結合する遺伝子組換え抗体または該抗体断片が、ハイブリドーマKM2160(FERM BP−10090)が生産するモノクローナル抗体が認識するエピトープに特異的に反応する抗体または該抗体断片である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項15】
ヒト型遺伝子組換え抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト型CDR移植抗体である請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項16】
ヒト型キメラ抗体がCCR4に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
ヒト型キメラ抗体が配列番号5、6、7で表されるアミノ酸配列からなる抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)のCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号8、9、10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖(L鎖)V領域のCDR1、CDR2、CDR3を含む請求項15または16に記載の医薬。
【請求項18】
ヒト型キメラ抗体が配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる抗体分子の重鎖(H鎮)可変領域(V領域)および/または配列番号12で表される抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域を含む請求項15〜17のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項19】
ヒト型CDR移植抗体がCCR4に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、請求項15に記載の医薬。
【請求項20】
ヒト型CDR移植抗体が配列番号5、6、7で表されるアミノ酸配列からなる抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)のCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号8、9、10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖(L鎖)V領域のCDR1、CDR2、CDR3を含む請求項15または19に記載の医薬。
【請求項21】
ヒト型CDR移植抗体が配列番号16または17で示されるアミノ酸配列で表されるアミノ酸配列からなる抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および/または配列番号18で表される抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域を含む、請求項15、18および20のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項22】
薬剤が、蛋白質または低分子の薬剤である請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項23】
蛋白質が、サイトカインまたは抗体である、請求項22記載の医薬。
【請求項24】
サイトカインが、G−CSF、M−CSF、インターフェロン−α、IL−2およびIL−15から選ばれるサイトカインである請求項23記載の医薬。
【請求項25】
低分子の薬剤が、化学療法剤またはホルモン療法剤である請求項1〜24のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項26】
化学療法剤が、ビンクリスチン、シクロフォスファミド、エトポシドおよびメトトレキセートから選ばれる薬剤である請求項25に記載の薬剤。

【国際公開番号】WO2005/053741
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516040(P2005−516040)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018430
【国際出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】