説明

ケモカインCCR5受容体の調節剤としてのピロリジン誘導体

本発明は、下記式(I):
【化1】


で表される化合物を提供する。R〜R及びmは上記定義のとおりである。本発明の化合物はケモカインCCR5受容体の活性の調節剤(特に拮抗剤)である。CCR5受容体調節剤は、様々な炎症性疾患、自己免疫疾患、疼痛や、HIV感染症、及び遺伝学的にそれに関連するレトロウイルス感染症の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロリジンピペリジン誘導体、それを調製するための方法及び中間体、それを含有する組成物、並びにその使用に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ケモカインCCR5受容体の調節が関与する疾患等、様々な疾患の治療におけるピロリジンピペリジン誘導体の使用に関する。即ち、式(I)の化合物は、HIV(HIV−1等)や遺伝学的にそれに関連するレトロウイルスの感染(及びその結果としての後天性免疫不全症候群AIDS)、炎症性疾患、自己免疫疾患、並びに疼痛の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
「ケモカイン(chemokine)」は「走化性サイトカイン(chemotactic cytokines)」の縮約形である。ケモカインとしては、共通の重要な構造的特徴を有し、白血球誘引能を示すタンパク質群が挙げられる。白血球が体内の様々な組織へ誘引される際、ケモカインは白血球走化性因子として不可欠な役割を果たす。このような誘引は、感染に対する身体の応答と炎症の両方において極めて重要である。ケモカイン及びその受容体は炎症性疾患及び感染性疾患の病態生理の中心をなすため、それらの活性を調節する作用、好ましくはそれらの活性に拮抗する作用を示す薬剤は当該疾患の治療に有用である。
【0004】
炎症性疾患及び感染性疾患の治療において、ケモカイン受容体CCR5は非常に重要である。CCR5はケモカイン、特にMIP−1αやMIP−1βと呼ばれるマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)及びランテス(protein which is regulated upon activation and is normal T−cell expressed and
secreted、RANTES)の受容体である。
【0005】
HIV感染症やその他の適応症の治療に用いる化合物は、選択的である、速やかに作用を発現する、効能がある、安定である、代謝に対する耐性を有する、他の望ましい薬様作用を有するといった特性のうち、1以上を有するのが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、CCR5受容体の調節剤(特に拮抗剤)として作用する化合物群を発見した。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rはアリール又はHetであり、前記アリール及びHetはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、CN、フェニル、及びイミダゾリルから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されており;
はH又はC1−3アルキルであり;
はC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールC1−3アルキル、又はHet1−3アルキルであり、前記アリール及びHetはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、及びCNから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されており;
はCOR又はSOであり;
はH、アリール、アリールC1−3アルキル、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C0−6アルキルアミノC0−6アルキル、或いはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員の飽和ヘテロ環(テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等)であり、前記C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、及びC0−6アルキルアミノC0−6アルキルはハロゲン、C1−6アルコキシ、及びOHから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されており;
はH又はCHであり;
mは0、1、2、又は3であり;
「−−−−−」はアルキレン架橋構造を形成する任意のC−C結合を表し;
HetはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5〜10員の芳香族ヘテロ環であり、Hetが含窒素ヘテロ環であるとき、該窒素はN−オキシドを形成していてもよく;
HetはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員の芳香族ヘテロ環であり、Hetが含窒素ヘテロ環であるとき、該窒素はN−オキシドを形成していてもよい。]で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体溶媒和物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記定義において、アリールはフェニル又はナフチルを意味する。ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。必要数の炭素原子を含むアルキル部分は直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル等が挙げられる。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
【0011】
本発明の一実施形態においては、Rはフェニル又はHetであり、ここでHetはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員の芳香族ヘテロ環であり、Hetが含窒素ヘテロ環であるとき、該窒素はN−オキシドを形成していてもよく、前記フェニル及びHetはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、CN、フェニル、及びイミダゾリルから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されている。
【0012】
他の実施形態においては、RはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、CN、フェニル、及びイミダゾリルから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジルN−オキシド、ピリミジルN−オキシド、ピラゾリル、オキサゾリル、又はイソオキサゾリルである。
【0013】
更に他の実施形態においては、RはC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、及びハロゲンから選ばれる0〜2個の原子又は基で置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジルN−オキシド、又はピリミジルN−オキシドである。
【0014】
更に他の実施形態においては、Rはフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジルN−オキシド、又はピリミジルN−オキシドであり、式(I)中のカルボニルに結合する炭素のオルト位がC1−3アルキル及びハロゲンから選ばれる置換基により一置換又は二置換されている。従って、フェニルがメチルにより二置換される場合は、例として後述するように、2,6−ジメチル置換されることになる。
【0015】
更に他の実施形態においては、Rは上記実施形態のいずれかと同様に置換されたフェニルである。
【0016】
更に他の実施形態においては、Rは2,6−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルピリジン−3−イル、又は4,6−ジメチルピリミジン−5−イルである。
【0017】
更に他の実施形態においては、RはHである。
【0018】
更に他の実施形態においては、RはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、及びCNから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されたベンジル、ピリジルメチル、又はピリミジルメチルである。
【0019】
更に他の実施形態においては、RはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、及びCNから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されたベンジルである。
【0020】
更に他の実施形態においては、RはC1−3アルキル、ハロゲン、C1−3アルコキシ、及びC1−3ハロアルキルから選ばれる0〜2個の原子又は基で置換されたベンジルである。
【0021】
更に他の実施形態においては、Rはフッ素及び塩素から選ばれる0〜2個の原子で置換されたベンジルである。
【0022】
更に他の実施形態においては、RはCOR又はSOであり、RはH、フェニル、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルメチル、C1−3アルコキシ、C1−3アルコキシC1−3アルキル、又はC1−6アルキルアミノであり、前記C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルメチル、C1−3アルコキシ、C1−3アルコキシC1−6アルキル、及びC1−6アルキルアミノはハロゲン、C1−6アルコキシ、及びOHから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されている。
【0023】
更に他の実施形態においては、RはCOR又はSOであり、RはH、フェニル、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルメチル、C1−3アルコキシ、C1−3アルコキシC1−3アルキル、又はC1−6アルキルアミノであり、前記C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルメチル、C1−3アルコキシ、C1−3アルコキシC1−6アルキル、及びC1−6アルキルアミノは0〜3個のハロゲン原子で置換されている。
【0024】
更に他の実施形態においては、RはCOR又はSOであり、RはC3−7シクロアルキル、C1−3アルコキシC1−3アルキル、又はC1−4アルキルアミノであり、前記シクロアルキルは0〜2個のフッ素原子で置換されている。
【0025】
更に他の実施形態においては、RはCOR又はSOであり、Rは1つの環炭素が二フッ素置換されたC3−7シクロアルキル(3,3−ジフルオロシクロブチル等)である。
【0026】
更に他の実施形態においては、RはCORであり、Rは上記実施形態のいずれかと同様に定義され任意に置換される。
【0027】
更に他の実施形態においては、RはHである。
【0028】
更に他の実施形態においては、mは0又は2である。
【0029】
更に他の実施形態においては、mは2であり、アルキレン架橋構造を形成する。
【0030】
更に他の実施形態においては、mは0である。
【0031】
勿論、本発明は、式(I)の化合物の定義に従う上記特定の実施形態の組み合わせ全てを包含する。
【0032】
本発明は式(I)の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体を含み、式(I)の化合物についての記載はそれに従って解釈されるべきである。ここで誘導体としては、複合体(錯体)、プロドラッグ、多形体、結晶体、同位体、並びにその塩及び溶媒和物等が挙げられる。
【0033】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩としては、酸付加塩や塩基塩が挙げられる。
【0034】
好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成可能な酸を用いて得られる。その例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、キシノホ酸塩等が挙げられる。
【0035】
好適な塩基塩は、非毒性塩を形成可能な塩基を用いて得られる。その例としては、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオールアミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、亜鉛塩等が挙げられる。
【0036】
式(I)の化合物は酸又は塩基のヘミ塩を形成してもよく、その例としてはヘミ硫酸塩やヘミカルシウム塩が挙げられる。
【0037】
好適な塩の総説としては、スタール(Stahl)及びウェルムース(Wermuth)、「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」、ワイリーVCH(Wiley-VCH)、2002年があり、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0038】
式(I)の化合物は、完全な非晶質から完全な結晶質まで、様々な連続固体状態で存在してよい。「非晶質」は、広範囲に渡って分子レベルでの秩序が保たれておらず、温度に応じて固体や液体の物性を示し得る状態を意味する。通常、非晶質材料は特徴的なX線回折パターンを示すことは無く、固体の特性を示している場合であっても外見上は液体である。非晶質材料を加熱すると、典型的には二次的な状態変化(ガラス転移)によって、特性が固体から液体へと変化する。「結晶質」は、分子レベルで一定の秩序が保たれた内部構造を有し、複数の同定ピークを含む特徴的なX線回折パターンを示す固体相を意味する。結晶質材料も十分に加熱すると液体の特性を示すが、この固体から液体への特性変化は典型的には一次的な相変化(融点)によるものである。
【0039】
また、式(I)の化合物は、非溶媒和物又は溶媒和物の状態で存在してよい。ここで「溶媒和物」は、本発明の化合物及び1種以上の薬学的に許容される溶媒分子(エタノール等)を含む分子複合体を表す。該溶媒が水である場合、この溶媒和物は「水和物」と称される。
【0040】
現在認められている有機水和物の分類体系として、モリス(K. R. Morris)、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、ブリテイン(H. G. Brittain)編、マーセルデッカー(Marcel Dekker)、1995年に記載のものがあり、該文献はこの参照により開示に含まれる。この文献では、単独サイト水和物(isolated site hydrate)、チャネル水和物(channel hydrate)、及び金属イオン配位水和物(metal-ion coordinated hydrate)を定義している。単独サイト水和物は、有機分子が介在することによって、水分子が互いに直接接触しない状態にあるものである。チャネル水和物では、水分子が格子状チャネル内に位置し互いに隣接する。金属イオン配位水和物では、水分子が金属イオンに結合する。
【0041】
溶媒や水が強く結合する場合、得られる複合体は化学量論的に湿度とは明らかに無関係である。しかしながら、溶媒や水が弱く結合する場合は、チャネル溶媒和物(channel solvate)や吸湿性化合物等において、水/溶媒の含量が湿度及び乾燥状態に依存する。この場合、得られる複合体は非化学量論的な組成を有することが多い。
【0042】
また、式(I)の化合物は、塩及び溶媒和物以外の多成分複合体の状態で存在してもよく、該多成分複合体中には、薬物と1種以上の他の成分とが化学量論比又は非化学量論比で存在する。このような複合体としては、包接化合物(薬物−ホスト包接複合体)や共結晶が挙げられる。後者は通常、複数の中性分子成分が非共有結合性相互作用により結合して形成される結晶質複合体と定義されるが、中性分子と塩との複合体であってもよい。共結晶は溶融結晶化、溶媒中での再結晶、又は成分を物理的粉砕することによって調製できる(アルマソン(O. Almarsson)及びサウォロッコ(M. J. Zaworotko)、ケミカル・コミュニケーションズ(Chem. Commun.)、17、1889−1896、2004年参照、該文献はこの参照により開示に含まれる)。多成分複合体の総説としては、ハルブリアン(Haleblian)、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(J. Pharm. Sci.)、64(8)、1269−1288、1975年8月があり、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0043】
また、式(I)の化合物は、適当な条件下で中間状態(mesomorphic state、中間相状態又は液晶状態)で存在してもよい。中間状態は、完全な結晶状態と完全な液体状態(溶融状態又は溶液状態)の中間である。温度変化の結果として生じる液晶性(中間性)はサーモトロピック液晶性と称され、第2の成分(水、溶媒等)を添加した結果生じる液晶性はリオトロピック液晶性と称される。リオトロピック中間相を形成できる化合物は両親媒性であり、イオン性極性頭部基(−COONa、−COO、−SONa等)又は非イオン性極性頭部基(−N(CH等)を持つ分子である。より詳細には、ハーツホーン(N. H. Hartshorne)及びスチュアート(A. Stuart)、「Crystals and the Polarizing Microscope」、第4版、エドワード・アーノルド(Edward Arnold)、1970年に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0044】
上述のとおり、本発明は式(I)の化合物の所謂プロドラッグも包含する。即ち、それ自体はほとんど又は全く薬理活性を示さない誘導体であっても、体内又は体上に投与すると加水分解等により式(I)の化合物に変換され、望ましい活性を示すものがある。このような誘導体はプロドラッグと称される。プロドラッグの使用については、ヒグチ(T. Higuchi)及びステラ(W. Stella)、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、アメリカン・ケミカル・ソサエテイ・シンポジウム・シリーズ(ACS Symposium
Series)、第14巻、及びロシュ(E. B. Roche)編、「Bioreversible Carriers in Drug Design」、米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)、パーガモン・プレス社(Pergamon Press)、1987年に詳細に記載されており、これら文献はこの参照により開示に含まれる。
【0045】
本発明によるプロドラッグは、例えば、式(I)の化合物の適当な官能基をプロモエティ(pro-moiety)として当業者に公知の基に置き換えることにより製造できる。このような技術はバンガード(H. Bundgaard)、「Design of Prodrugs」、エルゼビア(Elsevier)、1985年等に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0046】
更に、式(I)の化合物は、それ自体が他の式(I)の化合物のプロドラッグとして作用する場合もある。
【0047】
本発明は、式(I)の化合物の代謝体、即ち該薬物を投与した後に生体内で形成される化合物も包含する。本発明の代謝体の例を以下に示す。
(i)式(I)の化合物がメチル基を有する場合、そのヒドロキシメチル誘導体(−CH→−CHOH)。
(ii)式(I)の化合物がアルコキシ基を有する場合、そのヒドロキシ誘導体(−OR→−OH)。
(iii)式(I)の化合物が三級アミノ基を有する場合、その二級アミノ誘導体(−NR→−NHR又は−NHR);
(iv)式(I)の化合物が二級アミノ基を有する場合、その一級誘導体(−NHR→−NH)。
(v)式(I)の化合物がフェニル部分を有する場合、そのフェノール誘導体(−Ph→−PhOH)。
(vi)式(I)の化合物がアミド基を有する場合、そのカルボン酸誘導体(−CONH→COOH)。
【0048】
式(I)の化合物は1個以上の不斉炭素原子を有し、そのため2以上の立体異性体が存在する。式(I)中、ピロリジン環中の不斉炭素はRの立体配置を有する。実施例60のようにRがC1−4アルキルである場合、更にRに結合する位置に不斉炭素が存在する。mが0ではない場合、即ち式(I)の化合物が架橋ピペリジン環構造を有する場合は、該環はエンド配置であってもエキソ配置であってもよく、そのためシス/トランス(又はZ/E)幾何異性体が存在し得る。構造異性体間の相互変換のエネルギー障壁が低い場合、互変異性化が起こりやすい。このような互変異性としては、ケト基、オキシム基等を有する式(I)の化合物におけるプロトン互変異性、芳香族性部分を有する化合物における所謂原子価互変異性等が挙げられる。
【0049】
式(I)の化合物はアトロプ異性体であってもよく、また軸性キラリティーを有していてもよい。軸性キラリティーは不斉中心ではなく分子の全体形状に由来して生じるものである。このようなキラル分子では、1又は複数の結合周りの回転が制限され、その結果、三次元形状が維持される。即ち、単共有結合周りでの自由回転が十分に妨げられ、立体配座間(アトロプ異性体間)の相互変換が十分に遅く、所定条件下でそれらを分離又は単離できる。熱ラセミ化のエネルギー障壁は、キラル軸を形成する1又は複数の結合の自由回転に対する立体障害から求められる。当然ながら、単一の化合物が複数の形態の異性体を生じ得る。
【0050】
本発明は、式(I)の化合物の全ての立体異性体(光学異性体、幾何異性体、アトロプ異性体、互変異性体等)を包含し、また複数の形態の異性体を生じ得る化合物、及びその混合物も包含する。また、式(I)の化合物の酸付加塩及び塩基塩において、D−乳酸塩やL−リジン塩のように対イオンが光学活性であってもよく、DL−酒石酸塩やDL−アルギニン塩のように対イオンがラセミ体であってもよい。
【0051】
エンド/エキソ異性体及びシス/トランス異性体は、当業者に公知の従来技術(クロマトグラフィー、部分的結晶化等)を用いて分離できる。
【0052】
個々のエナンチオマーを調製/単離するための従来技術としては、光学的に純粋な前駆体を用いたキラル合成や、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)等を用いたラセミ化合物(又は塩又は誘導体のラセミ体)の分割が挙げられる。
【0053】
本発明では、薬学的に許容される式(I)の化合物を同位体標識してもよい。このような同位体標識では、1個以上の原子を、原子番号は同じで、原子質量又は質量数が天然物のそれらと異なる原子で置き換える。
【0054】
好ましい式(I)の化合物としては、後述の実施例の化合物、特に実施例1〜55及び58〜72の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体が挙げられる。
【0055】
以下の一般的方法及びスキームにおいて、R、R、R、R、R、及びRは特に明記しない限り上記定義のとおりであり;Xはハロであり;ZはOH又はカルボン酸活性化基(ハロ(好ましくはクロロ)、1H−イミダゾール−1−イル等)であり;Pgはアミノ保護基であり;BOCはtert−ブトキシカルボニルであり;CBzはベンジルオキシカルボニルであり;Bnはベンジルであり;Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニルであり;MeOHはメタノールであり;EtOHはエタノールであり;EtOAcは酢酸エチルであり;EtOはジエチルエーテルであり;THFはテトラヒドロフランであり;DMSOはジメチルスルホキシドであり;DCMはジクロロメタンであり;AcOHは酢酸であり;TFAはトリフルオロ酢酸であり;STABはトリアセトキシホウ化水素ナトリウムであり;DMAはN,N−ジメチルアセトアミドであり;DMSOはジメチルスルホキシドであり;NMMはN−メチルモルホリンであり;WSCDIは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩であり;DCCはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドであり;HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物であり;PyBOP(登録商標)はベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェートであり;PyBrOP(登録商標)はブロモトリスピロリジノホスホニウムであり;ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)はN−エチルジイソプロピルアミンであり;EtNはトリエチルアミンであり;HBTUはO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェートであり;Ti(OPR)はチタンテトライソプロポキシドである。
【0056】
式(I)の化合物は、後に詳述する一般的方法及び実施例の手順を用いて調製できる。当然ながら、本発明は式(I)の化合物を調製するための該方法、及びそれに用いる新規中間体を包含する。
【0057】
がHであり、mが0である場合、式(I)の化合物は、下記式(III):
【0058】
【化2】

【0059】
で表される化合物を、
(a)式(II):RCOZ(式中、ZはOH、カルボン酸活性化基、又は1H−イミダゾール−1−イルである。)で表される化合物、
(b)式(XII):RSOX(式中、Xはハロゲンである。)で表される化合物、或いは
(c)式(XIII):C0−6アルキルNCOで表される化合物と、
反応させることにより得られる。
【0060】
ステップ(c)では、C0−6アルキルN部分が、Rとして式(III)のアミノ基(NHR)を置換する。
【0061】
本形態はスキーム1〜3に更に示す。
【0062】
がC1−3アルキルであり、mが0である場合、式(I)の化合物は、下記式(XIV):
【0063】
【化3】

【0064】
で表される化合物を、式(XV):RMgX(式中、Xはハロゲンである。)で表される化合物と反応させることにより得られる。
【0065】
本方法はスキーム4のステップ(j)に更に示す。
【0066】
架橋した式(I)の化合物は、スキーム5に従って調製できる。
【0067】
式(I)の化合物を調製するための一般的方法及び中間体を、下記スキーム1〜5に更に示す。
【0068】
下記スキームに示すように、式(I)の化合物を合成する際、どの段階においても、好ましくない副反応を防ぐために活性基の保護が必要であるか或いは望ましいことは当業者には明らかであろう。特にアミノ基を保護することが必要或いは望ましいと考えられる。式(I)の化合物の調製において、保護基は従来の手法に従って使用してよい。保護基については、例えば、グリーン(Theodora W Green)及びワッツ(Peter G M Wuts)、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、1999年、特に第7章第494−653頁「Protection
for the Amino Group」に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。該文献には、脱保護方法についても記載されている。
【0069】
式(I)の化合物及びその中間体の調製においては、特にt−ブトキシカルボニル(Boc)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ギ酸メチル、ベンジル、アセチル等のアミノ保護基を使用する。
【0070】
式(I)の化合物又はその中間体の調製において、スキームに示す幾つかの手順が特定の置換基には適用できないことは当業者には自明であろう。
【0071】
勿論、所望の化合物を得るために、スキームとは異なる順序で変換を行ったり、1以上の変換を改良したりすることが必要であるか或いは望ましい場合もある。
【0072】
がHである場合の式(I)の化合物の調製をスキーム1に示す。
【0073】
【化4】

【0074】
具体的には、スキーム1に示す各変換は以下のとおり行ってよい。
【0075】
ステップ(a)では、従来の酸アミンカップリング条件下、式(X)の化合物を式(XI)の化合物と反応させて、式(IX)の化合物が得られる。この酸アミンカップリングは、式(X)のアミン、式(XI)のRCOZ(ZはOH、カルボン酸活性化基、又は1H−イミダゾール−1−イルであり、カルボン酸活性化基は例えばハロゲン、好ましくは塩素である)、並びに過剰量の酸受容体(トリエチルアミン、ヒューニッヒ塩基、炭酸カリウムのような無機塩基等)を用いて、ハロアルカン(例えばDCM)等の溶媒中で簡便に行うことができる。
【0076】
或いは、この酸アミンカップリングは、式(XI)の酸を活性化剤(WSCDI、DCC、HOBt、HOAt等)で活性化し、過剰量の酸受容体(トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン等)を用いて、溶媒(NMM、DCM等)中で行ってもよい。また、PYBOP(登録商標)、PyBrOP(登録商標)、又は向山試薬を、通常の条件下で使用してもよい。
【0077】
ステップ(b)では、従来の酸加水分解条件下、式(IX)の化合物から式(VIII)の化合物を調製できる。
【0078】
ステップ(c)では、従来の還元的アミノ化条件下で式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物と反応させることによって、式(VI)の化合物が得られる。還元的アミノ化は、還元剤(NaBH、Na(OAc)BH、NaCNBH等)の存在下、溶媒(DCM、メタノール、DCE等)中で、式(VIII)の化合物を式(VII)のアミンと反応させることで簡便に行うことができる。また、任意にNaOAcやAcOH、添加剤(チタンテトライソプロポキシド等)、乾燥剤(MgSO、モレキュラーシーブ等)等を系に加えてもよい。
【0079】
ステップ(d)では、通常の方法により式(VI)の化合物を脱保護してよい。好ましい保護基としてはBOCが挙げられ、BOCは、エーテル(ジエチルエーテル等)、ハロアルカン(DCM等)、酢酸エチル等の溶媒中、TFAやHClを用いて脱保護できる。この反応は0℃〜RTの温度で簡便に行える。また、Bn、CBz、及びFmocも保護基として好ましく使用でき、これらは当業者に公知の方法で脱保護できる。
【0080】
ステップ(e)では、式(V)の化合物を式(IV)の化合物と反応させることで、式(III)の化合物が得られる。式(IV)中のR3AC部分が、Rとして式(III)中に組み込まれる。この反応は、ステップ(c)で述べた還元的アミノ化条件下で行ってよい。
【0081】
ステップ(f)では、式(III)の化合物を式(II)の化合物(Zはステップ(a)で定義したとおり)と反応させることで、式(I)の化合物が得られる。この酸アミンカップリングは、上記ステップ(a)と同様の条件下で行ってよい。
【0082】
ステップ(e)及び(f)は二つの別々のステップとして記載したが、1ポットで簡便に行ってもよい。
【0083】
がSOである式(I)の化合物も、RがCORである場合と類似の方法により調製できる。RがSOの場合、スキーム1中の酸アミンカップリングステップ(f)を当業者に公知の通常のスルホニル化に置き換えることで、式(I)の化合物が得られる。このスルホニル化はスキーム2に従って簡便に行うことができる。
【0084】
【化5】

【0085】
ステップ(g)では、式(III)の化合物を、式(XII):RSOXで表される化合物(Xはハロゲンであり、好適には塩素又はフッ素である)のようなスルホニル化剤と反応させることで、RがSOである式(I)の化合物が得られる。
【0086】
【化6】

【0087】
ステップ(h)では、式(III)の化合物を、式(XIII):C0−6アルキルNCOで表される化合物のようなイソシアネートと反応させることで、RがCONHC0−6アルキルである式(I)の化合物が得られる。
【0088】
【化7】

【0089】
がC1−3アルキルである場合の式(I)の化合物の調製をスキーム4に示す。
【0090】
スキーム1のステップ(e)で述べた従来の還元的アミノ化条件下で、式(XVIIII)の化合物から式(XVIII)のアミンが得られる。式(IV)のR3AC部分は、Rとして式(XVIII)に組み込まれる。
【0091】
スキーム1のステップ(f)で述べた従来のカップリング条件下で、式(XVIII)のアミンと酸RCOZとをカップリングすることにより、式(XVII)のアミドが得られる。
【0092】
スキーム1のステップ(d)で述べた通常の方法を用いて式(XVII)の化合物を脱保護することによって、式(XVI)の化合物が得られる。
【0093】
ステップ(i)では、適当なシアネート化剤(ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)、94(13)、4635、1972に記載のEtAlCN等)、アセトンシアノヒドリン、又は酸(酢酸、硫酸、NaHSO、KHSO、Na等)とシアニド源(NaCN、KCN、シアン化トリメチルシリル、グリコロニトリル、ジメチルアミノアセトニトリル等)との組み合わせの存在下、任意にTi(OPr)を加え、ハロアルカン(DCM、ジクロロエタン等)やTHFといった溶媒中、0℃〜100℃の温度(例えば0℃〜50℃、簡便には常温)で、式(VI)の化合物を式(XVI)の化合物と反応させることによって、式(XIV)の化合物が得られる。
【0094】
或いは、対応するイミンにHCNを作用させることによって式(XIV)の化合物が得られる。このイミンは事前に調製してよく、また溶媒中での式(VI)の化合物と式(XVI)の化合物の反応によって系中で調製してもよい。
【0095】
ステップ(j)では、アガミ(C. Agami)、コーティ(F. Couty)、エバノ(G. Evano)、オーガニック・レターズ(Organic Letters)、2000、14(2)、2085−2088等に記載のブライランツ反応(Bruylants Reaction)によって、式(XIV)の化合物を式(I)の化合物へと変換できる。THFやEtO等の溶媒中、任意にトリメチルアルミニウムを加え、0℃〜常温で、式(XIV)の化合物を、式(XV)RMgBrで表されるグリニヤ試薬や式RLiで表される有機リチウム試薬等の有機金属試薬と反応させることによって、式(I)の化合物が得られる。過剰量のグリニヤ試薬を使用するのが簡便で好ましい。
【0096】
【化8】

【0097】
スキーム1のステップ(c)で述べた従来の還元アミノ化条件下、式(XVI)の化合物及び(XXIII)の化合物から、式(XXII)の化合物が得られる。
【0098】
スキーム1のステップ(d)で述べた通常の方法を用いて式(XXII)の化合物を脱保護することにより、式(XXI)の化合物が得られる。
【0099】
式(VI)、(X)、(XVII)、及び(XXIII)の化合物は市販されており、また従来の化学的手法により調製してもよい。
【0100】
式(I)の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体は、人間等の動物において薬理活性を示し、有用である。より詳細には、これらはCCR5受容体の調節(特に拮抗)が関与する疾患の治療に有用である。このような疾患の中でも、HIV感染症、遺伝学的にHIVに関連するレトロウイルス感染症、及びAIDSが特に興味深い。
【0101】
また、上記疾患のうち、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び疼痛も興味深い。
【0102】
本発明の化合物を呼吸器疾患の治療に使用してもよい。呼吸器疾患としては、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、喘息、肺気腫、鼻炎、慢性副鼻腔炎、類肉腫症、農夫肺、鼻茸、肺線維症、特発性間質性肺炎等が挙げられる。
【0103】
また、本発明の化合物は、異なる器官間のT細胞移動によって発症又は作用する疾患、或いは該移動に関与する疾患の治療にも有用であると考えられる。特に、本発明の化合物はCCR5又はCCR5ケモカインとの関係が立証された疾患の治療に有用であると考えられ、その例としては、多発性硬化症;ベーチェット病、シェーグレン症候群、及び全身性硬化症;関節炎(関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、若年性関節炎等);移植片拒絶及び移植片対宿主拒絶、特に心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓といった固形臓器(例えば腎臓や肺の同種移植片)の移植に対する拒絶;炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎等);炎症性肺疾患;子宮内膜症;腎疾患(糸球体腎炎のような糸球体疾患等);線維症(肝臓、肺、腎臓の線維症等);脳炎(HIV脳炎等);慢性心不全;心筋梗塞;高血圧;脳卒中;虚血性心疾患;動脈硬化性プラーク;再狭窄;肥満;乾癬;アトピー性皮膚炎;CNS疾患(AIDSが関与する痴呆症、アルツハイマー病等);貧血;慢性膵炎;橋本甲状腺炎;I型糖尿病;癌(非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫、乳癌等);疼痛(侵害受容性疼痛、末梢性神経因性疼痛等の神経因性疼痛等);外科手術、感染、負傷、又は他の外傷によるストレス反応等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
CCR5受容体の調節が関与する感染性疾患としては、急性及び慢性のB型肝炎ウイルス(HBV)感染症及びC型肝炎ウイルス(HCV)感染症;腺ペスト、敗血症性ペスト、及び肺ペスト;ポックスウイルス感染症(天然痘等);トキソプラズマ感染症;マイコバクテリウム感染症;トリパノソーマ感染症(シャーガス病等);肺炎;クリプトスポリジウム症等が挙げられる。
【0105】
ケモカイン及びケモカイン受容体遮断薬の適用可能性に関する最近の総説としては、ロベイロ(Robeiro)及びホルーク(Horuk)、「The Clinical Potential of Chemokine Receptor Antagonists」、ファーマコロジー・アンド・セラピューティックス(Pharmacology
and Therapeutics)、107、2005、p44−58がある。
【0106】
本発明の他の態様においては、薬剤として用いられる式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体を提供する。
【0107】
本発明の更に他の態様においては、CCR5受容体の調節が関与する疾患の治療に用いられる式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体を提供する。
【0108】
本発明の更に他の態様においては、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体を、CCR5受容体の調節が関与する疾患の治療に用いられる薬剤の製造に使用する方法を提供する。
【0109】
本発明の更に他の態様においては、CCR5受容体の調節が関与する疾患を治療する方法であって、治療を要する患者(人間、動物等)に、治療有効量の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体を投与する治療方法を提供する。
【0110】
式(I)の化合物は、上記疾病、障害、及び疾患の治療に有用である。中でもHIV感染症、遺伝学的にHIVに関連するレトロウイルス感染症、及びAIDSが特に興味深い。
【0111】
また、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び疼痛も興味深い。
【0112】
更に、関節リウマチ、移植片拒絶、線維症、及び疼痛も興味深い。
【0113】
誤解を避けるために説明すると、本発明で用いる「治療」という語は、治癒的治療、待機的(緩和的)治療、及び予防的治療も包含する。
【0114】
薬学的使用を目的とした式(I)の化合物は、結晶質又は非晶質の製品として投与してよい。このような製品は、例えば沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は蒸発乾燥といった方法により、固体の栓子(plug)、粉末、又はフィルムとして得られる。この目的でマイクロ波乾燥又は高周波乾燥を利用してもよい。
【0115】
式(I)の化合物は、単独で、或いは1種以上の他の式(I)の化合物や他の薬物と組み合わせて投与してよく、組み合わせは特に限定されない。通常、式(I)の化合物は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と共に製剤として投与する。ここで「賦形剤」は、本発明の化合物以外のどのような成分であってもよい。賦形剤は、主に投与形態、溶解性及び安定性に対する影響、剤形の特性等の要素に応じて選択される。
【0116】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物、及びその調製方法については、当業者には明らかであろう。このような組成物及びその調製方法は、例えば「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版、マック出版社(Mack Publishing Company)、1995年に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0117】
適当な投与形態としては、経口投与、非経口投与、局所投与、吸入/鼻腔内投与、直腸/膣内投与、及び眼内/耳内投与が挙げられる。
【0118】
式(I)の化合物を経口投与してよい。経口投与では、嚥下により該化合物を胃腸管に挿入してよく、且つ/或いは口腔、舌側、又は舌下投与により該化合物を口から直接血流内に挿入してもよい。
【0119】
経口投与に適した製剤としては、錠剤;多粒子、ナノ粒子、液体、又は粉末を含有するソフトカプセル及びハードカプセル;ロゼンジ(液体入りのものも含む);チュアブル錠(chew);ゲル;速分散性剤形;フィルム;腔坐剤(ovule);噴射剤(spray);口腔/粘膜付着性パッチ等の固体状、半固体状、又は液体状の系が挙げられる。
【0120】
液体製剤としては、懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤等が挙げられる。これらは、例えばゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロースからなるソフトカプセル又はハードカプセルの充てん剤として使用でき、通常は担体(水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、油等)並びに1種以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含有する。液体製剤は包みに入った固体等から再調製してもよい。
【0121】
式(I)の化合物は、速溶性又は速崩壊性の剤形で使用してもよい。このような剤形については、リャン(Liang)及びチェン(Chen)、「Expert Opinion in Therapeutic Patents」、11(6)、981−986(2001)に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0122】
錠剤の場合、服用形態に応じて、薬物の含量を1〜80重量%、より典型的には5〜60重量%としてよい。通常、錠剤は薬物に加えて崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微晶質セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、糊化デンプン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。剤形中の崩壊剤の含量は、通常1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%である。
【0123】
通常、錠剤に結合力を付与するために結合剤を使用する。適当な結合剤としては、微晶質セルロース、ゼラチン、糖類、ポリエチレングリコール、天然ゴム、合成ゴム、ポリビニルピロリドン、糊化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微晶質セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物等の希釈剤も含有してよい。
【0124】
錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80等の界面活性剤、及び二酸化ケイ素やタルク等の流動促進剤を含有してもよい。これらを用いる場合、界面活性剤の量は錠剤の0.2〜5重量%であってよく、流動促進剤の量は錠剤の0.2〜1重量%であってよい。
【0125】
また、通常、錠剤はステアリン塩マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン塩マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物等の滑剤を含有する。滑剤の量は、通常錠剤の0.25〜10重量%、好ましくは錠剤の0.5〜3重量%である。
【0126】
他の使用可能な成分としては、酸化防止剤、着色剤、香味剤、防腐剤、味マスキング剤(taste-masking agent)等が挙げられる。
【0127】
典型的には、錠剤は、約80%以下の薬物、約10〜約90重量%の結合剤、約0〜約85重量%の希釈剤、約2〜約10重量%の崩壊剤、及び約0.25〜約10重量%の滑剤を含有する。
【0128】
錠剤用の混合物を直接又はローラーを用いて圧縮することにより、錠剤を形成してよい。錠剤形成前に、錠剤用の混合物又はその一部を、湿式粒状化、乾式粒状化、溶融粒状化、溶融凝固、又は押出し成形してもよい。最終製品としての製剤は、1以上の層を有してよく、またコーティングされていてもされていなくてもよく、更にカプセル化されていてもよい。
【0129】
錠剤の製剤については、リーバーマン(H. Lieberman)及びラクマン(L. Lachman)、「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets」、第1巻、マーセルデッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、1980年で論じられており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0130】
人間への使用又は獣医学的使用が可能な経口フィルムは、一般に、柔軟で、水溶性又は水膨潤性であり、且つ速溶解性又は粘膜付着性の薄膜である。通常、該フィルムは式(I)の化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、保湿剤、可塑剤、安定剤又は乳化剤、粘度調整剤、及び溶媒を含有する。この製剤中、ある成分が複数の機能を有していてもよい。
【0131】
式(I)の化合物は水溶性であっても水不溶性であってもよい。水溶性の場合、溶質に対する該化合物の比率は、通常1〜80重量%であり、より典型的には20〜50重量%である。溶解性が低い場合は、組成物中の該化合物の比率はより高く、溶質に対して通常88重量%以下である。或いは、式(I)の化合物は多粒子ビーズの形態であってもよい。
【0132】
フィルム形成ポリマーは天然多糖類、タンパク質、又は合成親水コロイドであってよく、その量は通常0.01〜99重量%、より典型的には30〜80重量%である。
【0133】
他の利用可能な成分としては、酸化防止剤、着色剤、香味剤、香味向上剤、防腐剤、唾液腺刺激剤、清涼剤、共溶媒(油等)、皮膚軟化剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤、味マスキング剤等が挙げられる。
【0134】
通常、本発明に係るフィルムは、剥離可能な支持体又は紙に形成した水性薄膜を蒸発乾燥することによって得られる。蒸発乾燥は、凍結乾燥又は真空乾燥により、乾燥炉又はトンネル乾燥機を用いて行ってよく、通常は複合塗装乾燥機を用いて行う。
【0135】
経口投与用の固体製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0136】
本発明の目的に適した放出調節製剤については、米国特許第6,106,864号に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。高エネルギー分散や浸透性被覆粒子等、他の好適な放出技術の詳細は、フェルマ(Verma)ら、「Pharmaceutical Technology On-line」、25(2)、1−14、2001年に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。放出を制御するためのチューインガムの利用については、WO00/35298に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0137】
式(I)の化合物を血流、筋肉、又は内部器官中に直接投与してもよい。適当な非経口投与手段としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、くも膜下投与、脳室内投与、尿道投与、胸骨投与、頭蓋内投与、筋内投与、滑液嚢内投与、及び皮下投与が挙げられる。非経口投与に適する道具としては、針注射器(極微針注射器等)、無針注射器、及び注入技術が挙げられる。
【0138】
通常、非経口製剤は水溶液であり、塩、炭水化物、緩衝剤等の賦形剤を含有してよく、そのpHは好ましくは3〜9である。しかしながら、用途によっては、滅菌非水溶液を使用したり、乾燥体を適当な媒体(ピロゲンを含まない滅菌水等)と組み合わせて使用するのがより好適である。
【0139】
非経口製剤は、滅菌条件下、当業者に公知の通常の薬学的技術を用いて、凍結乾燥等により容易に調製できる。
【0140】
非経口製剤溶液の調製において、適当な製剤技術(溶解性向上剤の添加等)により、式(I)の化合物の溶解性を改善してよい。
【0141】
非経口投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。従って、式(I)の化合物は、懸濁液の形態で、或いは活性化合物の放出を調節できる固体、半固体、又はチキソトロピー液体等の持続性薬剤の形態で製剤化してもよい。このような製剤の例としては、薬剤被覆ステント、半固体、dl−乳酸/グリコール酸共重合体(PGLA)の薬物添加ミクロスフェアの懸濁液等が挙げられる。
【0142】
式(I)の化合物を、皮膚又は粘膜に局所投与、皮膚(皮内)投与、或いは経皮投与してもよい。このような目的に適する製剤の典型例としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、粉剤、包帯剤、泡剤、フィルム、皮膚パッチ、ウエハ(wafer)、インプラント、スポンジ、繊維、帯具、マイクロエマルジョン等が挙げられる。リポソームを用いてもよい。担体の典型例としては、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、浸透促進剤を添加してもよく、これについては例えばフィニン(Finnin)及びモーガン(Morgan)、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(J. Pharm. Sci.)、88(10)、955−958、1999年10月に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0143】
他の局所投与手段としては、電気穿孔、イオン導入、音声導入(phonophoresis)、音波導入(sonophoresis)、極微針注射、無針注射(パウダージェクト(Powderject、商標)、バイオジェクト(Bioject、商標)等)が挙げられる。
【0144】
局所投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0145】
式(I)の化合物を鼻腔内投与又は吸入投与してもよい。この場合、通常は、吸入器から乾燥粉末の形態で投与したり、エアロゾルスプレーや点鼻剤として投与する。乾燥粉末を用いる場合は、粉末単独で、ラクトースとの乾燥混合物等の混合物として、又はリン脂質(ホスファチジルコリン等)等との混合粒子として、投与してよい。エアロゾルスプレーの場合は、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは電気流体力学的に微細な霧を生成するアトマイザー)、又はネブライザーから、必要に応じて噴射剤(1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン等)を用いて投与してよい。鼻腔内に用いる粉末は生体接着剤(キトサン、シクロデキストリン等)を含有していてもよい。
【0146】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、及びネブライザーには、本発明の化合物の溶液又は懸濁液が収容され、該溶液又は懸濁液は、溶媒としてエタノール、水性エタノール、活性物質の分散、可溶化、又は放出延長に適する代替薬剤、又は噴射剤を含有し、更に任意に界面活性剤(ソルビタントリオレエート、オレイン酸、オリゴ乳酸等)を含有する。
【0147】
乾燥粉末や懸濁液の製剤に使用する前に、薬物を吸入による送達に適する大きさ(通常5ミクロン未満)まで微粉化する。微粉化は、スパイラルジェットミル、流動床ジェットミル、ナノ粒子形成超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、噴霧乾燥等の適当な粉砕手段を用いて行うことができる。
【0148】
吸入器(inhaler又はinsufflator)に用いるカプセル(ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等からなる)、ブリスター、及びカートリッジの製剤は、本発明の化合物、適当な粉末基剤(ラクトース、デンプン等)、及び機能調整剤(l−ロイシン、マンニトール、ステアリン塩マグネシウム等)の混合粉末を含有してよい。ラクトースは無水物又は一水和物であってよく、好ましくは後者である。他の適当な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、トレハロース等が挙げられる。
【0149】
電気流体力学的に微細な霧を生成するアトマイザーアトマイザーに適する溶液製剤は、1回の使用あたり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有してよく、その1回の使用量は1μl〜100μlであってよい。典型的には、該製剤は式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、及び塩化ナトリウムを含有してよい。プロピレングリコールの代わりにグリセロール、ポリエチレングリコール等を使用してもよい。
【0150】
吸入/鼻腔内投与用の本発明の製剤に、適当な香味料(メントール、レボメントール等)や甘味料(サッカリン、サッカリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0151】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、例えばPGLAを用いた、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0152】
乾燥粉末吸入剤及びエアロゾルの場合、用量単位は測定量を送るバルブにより定まる。本発明においては、通常、1μg〜10mgの本発明の化合物を含む測定量又は「一吹き(puff)」が投与されるように用量単位を調整する。1日用量は通常1μg〜200mgであり、これを単回投与してよく、またより一般的には1日を通して分割投与してもよい。
【0153】
式(I)の化合物を、坐剤、ペッサリー、膣リング、かん腸剤等の形態で直腸内投与又は膣内投与してもよい。通常、坐剤の基剤としてはココアバターが用いられるが、必要に応じて様々な代替物を用いてよい。
【0154】
直腸/膣内投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0155】
また、式(I)の化合物を、通常pH調節した等張滅菌生理食塩水を用いた微粉懸濁液又は溶液の滴剤の形態で、眼や耳に直接投与してもよい。眼内又は耳内投与に適する他の製剤としては、軟膏、ゲル、生分解性インプラント(吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン等)、非生分解性インプラント(シリコーン等)、ウエハ、レンズ、微粒子状又は小胞状の系(ニオソーム、リポソーム等)等が挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等)、ヘテロ多糖ポリマー(ゲランゴム等)等のポリマーを、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤と共に添加してもよい。このような製剤は、イオン導入法により送達してよい。
【0156】
眼内/耳内投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0157】
上記投与形態のいずれかにおいて溶解性、溶解速度、味マスキング、バイオアベイラビリティ、及び/又は安定性を改善するために、式(I)の化合物を可溶性巨大分子(シクロデキストリン、その適当な誘導体等)やポリエチレングリコール含有ポリマーと組み合わせて使用してもよい。
【0158】
例えば、薬剤−シクロデキストリン複合体は多くの剤形及び投与経路に一般的に有用であると認められる。該複合体は包接複合体であっても非包接複合体であってもよい。薬物の複合体化のための代替物として、シクロデキストリンを補助添加剤、即ち担体、希釈剤、又は可溶化剤として使用してよい。アルファ−、ベータ−、及びガンマ−シクロデキストリンがこのような目的に最も広く用いられており、その例は国際特許出願WO91/11172、WO94/02518、及びWO98/55148に記載されており、該文献はこの参照により開示に含まれる。
【0159】
特定の疾病や疾患を治療するために活性化合物を組み合わせて投与するのが望ましい場合があるため、本発明では、2種以上の医薬組成物(少なくとも1つの組成物が本発明の化合物を含む)を組み合わせて、共投与に適したキットの形態で使用してよい。
【0160】
従って、本発明のキットは、2種以上の別個の医薬組成物(少なくとも1つは本発明の式(I)の化合物を含有する)、及び組成物を別々に保持する手段(容器、分割ボトル、分割金属箔パケット等)を含む。このようなキットの一例として、錠剤やカプセル等を包むブリスターパックが一般的である。
【0161】
本発明のキットは、異なる複数の製剤(経口製剤と非経口製剤等)を投与する際、各組成物を異なる間隔で投与する際、又は各組成物の用量を別々に漸増する際に、特に好適に使用できる。コンプライアンスの助けとなるよう、キットには通常投与指針が付され、また所謂記憶補助を添付してもよい。
【0162】
体重約65〜70kgの人間の患者に投与する場合、本発明の化合物の1日総投与量は、通常1〜10000mg(10〜1000mg等)であり、例えば25〜500mgである。当然ながら、この1日総投与量は投与形態、年齢、疾患、及び体重に応じて決定すればよく、いずれの場合も医師が最終的に判断する。1日総投与量を単回投与してもよく、また分割投与してもよい。
【0163】
本発明の他の態様においては、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体とを含有する医薬組成物を提供する。
【0164】
式(I)の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体は、単独で投与してもよく、また併用療法の一部として投与してもよい。即ち、本発明は、本発明の化合物と1種以上の更なる治療薬の共投与、及び本発明の化合物に加えて1種以上の更なる治療薬を含有する組成物も包含する。
【0165】
CCR5ケモカイン受容体の調節が媒介する疾病や疾患、或いは該調節に関連する疾病や疾患(特にヒト免疫不全ウイルスHIV感染症)の治療又は予防に、このような併用療法とも呼ばれる多剤投薬を使用することができる。併用療法は、ヒト免疫不全ウイルスHIVやそれに関連する病原性レトロウイルスの感染や増殖を治療又は予防する際に特に好適に用いられ、治療を要する患者又は発症の危険性がある対象に対して行われる。レトロウイルス病原体が比較的短時間で菌株へと成長でき、この菌株が患者への単剤投与に対して耐性を示すことは、文献公知である。HIVに対しては、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)と呼ばれる併用薬物治療が推奨される。HAARTでは3種以上のHIV薬を使用する。即ち、本発明の治療方法及び医薬組成物においては、本発明の化合物を単剤療法の形態で使用してよく、また、1種以上の式(I)の化合物を1種以上の他の治療薬(後に更に詳述する)と組み合わせて共投与する併用療法の形態で使用してもよい。
【0166】
本発明の化合物と併用できる治療薬としては、HIVプロテアーゼ阻害剤(PI)として有用な薬剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、CCR5拮抗剤、gp120とCD4の相互作用を阻害する薬剤、HIVの標的細胞への侵入を阻害する薬剤、HIVインテグラーゼ阻害剤、リボヌクレアーゼH阻害剤、プレニル化阻害剤、HIVカプシドタンパク質の産生に干渉して作用する成熟阻害剤、抗感染薬として有用な化合物、後述する他の薬剤等が挙げられ、これらに限定されない。
【0167】
上記のような併用薬物治療では、作用メカニズムが同じか異なる2種以上の化合物を使用し得ることは当業者には自明であろう。即ち、例えば、本発明の化合物を、1種以上のNRTI;1種以上のNRTI及びPI;1種以上のNRTI及び他のCCR5拮抗剤;PI;PI及びNNRTI;NNRTI;等と組み合わせて使用できる。
【0168】
PIの例としては、アンプレナビル(141W94)、CGP−73547、CGP−61755、DMP−450(モゼナビル)、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル(インビラーゼ)、ロピナビル、TMC−126、アタザナビル、パリナビル、GS−3333、KNI−413、KNI−272、LG−71350、CGP−61755、PD173606、PD177298、PD178390、PD178392、U−140690、ABT−378、DMP−450、AG−1776、MK−944、VX−478、インジナビル、チプラナビル、TMC−114、DPC−681、DPC−684、ホスアンプレナビルカルシウム(レクシヴァ)、WO03/053435に開示のベンゼンスルホンアミド誘導体、R−944、Ro−03−34649、VX−385、GS−224338、OPT−TL3、PL−100、PPL−100、SM−309515、AG−148、DG−35−VIII、DMP−850、GW−5950X、KNI−1039、L−756423、LB−71262、LP−130、RS−344、SE−063、UIC−94−003、Vb−19038、A−77003、BMS−182193、BMS−186318、SM−309515、JE−2147、GS−9005等が挙げられ、これらに限定されない。
【0169】
NRTIの例としては、アバカビル、GS−840、ラミブジン、アデフォビル・ジピボキシル、β−フルオロ−ddA、ザルシタビン、ディダノシン、スタブジン、ジドブジン、フマル酸テノホビルジソプロキシル、アムドキソビル(DAPD)、SPD−754、SPD−756、ラシビル、リバーセット(DPC−817)、MIV−210(FLG)、β−L−Fd4C(ACH−126443)、MIV−310(アロブジン、FLT)、dOTC、DAPD、エンテカビル、GS−7340、エムトリシタビン(FTC)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0170】
NNRTIの例としては、エファビレンツ、HBY−097、ネビラピン、TMC−120(ダピビリン)、TMC−125、エトラビリン、デラビルジン、DPC−083、DPC−961、カプラビリン、リルピビリン、5−{[3,5−ジエチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}イソフタロニトリル並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体、GW−678248、GW−695634、MIV−150、カラノリド、WO03/062238に開示の三環式ピリミジノン誘導体等が挙げられ、これらに限定されない。
【0171】
CCR5拮抗剤の例としては、TAK−77;SC−351125;アンクリビロック(SCH−Cとして知られていたもの);ビクリビロック(SCH−Dとして知られていたもの);PRO−140;マラビロック;アプラビロック(GW−873140、Ono−4128、AK−602として知られていたもの);AMD−887;CMPD−167;1−エンド−{8−[(3S)−3−(アセチルアミノ)−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル}−2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−5−カルボン酸メチル、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体;3−エンド−{8−[(3S)−3−(アセトアミド)−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル}−2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−5−カルボン酸メチル、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体;1−エンド−{8−[(3S)−3−(アセチルアミノ)−3−(3−フルオロフェニル)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル}−2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−5−カルボン酸エチル、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体;N−{(1S)−3−[3−エンド−(5−イソブチリル−2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−8−イル]−1−(3−フルオロフェニル)プロピル}アセトアミド)、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体;等が挙げられ、これらに限定されない。
【0172】
侵入阻害剤及び融合阻害剤の例としては、BMS−806、BMS−488043、5−{(1S)−2−[(2R)−4−ベンゾイル−2−メチル−ピペラジン−1−イル]−1−メチル−2−オキソ−エトキシ}−4−メトキシ−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド、4−{(1S)−2−[(2R)−4−ベンゾイル−2−メチル−ピペラジン−1−イル]−1−メチル−2−オキソ−エトキシ}−3−メトキシ−N−メチル−ベンズアミド、エンフュービルタイド(T−20)、シフュービルタイド、P−01A、T1249、PRO542、AMD−3100、可溶性CD4、日本特許第2003171381号に開示の化合物、日本特許第2003119137号に開示の化合物等が挙げられ、これらに限定されない。
【0173】
HIVインテグラーゼ阻害剤の例としては、L−000870810、GW−810781、WO03/062204に開示の1,5−ナフチリジン−3−カルボキサミド誘導体、WO03/047564に開示の化合物、WO03/049690に開示の化合物、WO03/035076に開示の5−ヒドロキシピリミジン−4−カルボキサミド誘導体、GS−9137(JTK−303)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0174】
プレニル化阻害剤の例としては、スタチン(アトルバスタチン等)のようなHMG−CoAレダクターゼ阻害剤が挙げられ、これらに限定されない。
【0175】
成熟阻害剤の例としては、3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸(PA−457としても公知)、α−HGA等が挙げられる。
【0176】
本発明の化合物と併用できる抗感染薬は抗菌性又は抗真菌性の薬剤であってよい。抗菌薬剤の例としては、アトバクオン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、トリメトプリム、トロバフロキサシン、ピリメタミン、ダウノルビシン、クリンダマイシン及びプリマキン、フルコナゾール、芳香錠(pastill)、オルニジル、エフロルニチン、ペンタミジン、リファブチン、スピラマイシン、イントラコナゾール−R51211、トリメトレキサート、ダウノルビシン、組み換えヒトエリスロポエチン、組み換えヒト成長ホルモン、酢酸メゲストロール、テステロン、経腸栄養製剤等が挙げられ、これらに限定されない。抗真菌薬剤の例としては、アニデュラフンギン(anidulafungin)、C31G、カスポフンギン(caspofungin)、DB−289、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミカフンギン(micafungin)、ポサコナゾール、ボリコナゾール等が挙げられ、これらに限定されない。
【0177】
また、本発明は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と、1種以上の他の治療薬との組み合わせも包含し、他の治療薬は以下のものからそれぞれ選択される。
・増殖阻害剤(ヒドロキシウレア等)。
・免疫調節剤(AD−439、AD−519、αインターフェロン、AS−101、ブロピリミン、アセマンナン、CL246,738、EL10、FP−21399、γインターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(例えばサルグラモスチン)、IL−2、静脈内免疫グロブリン、IMREG−1、IMREG−2、イムチオールジエチルジチオカルバメート、α−2インターフェロン、メチオニン−エンケファリン、MTP−PE、レムン(remune)、rCD4、可溶性組み換えヒトCD4、インターフェロンα−2、SK&F106528、可溶性T4チモペンチン、腫瘍壊死因子(TNF)、ツカレソール(tucaresol)、組み換えヒトインターフェロンβ、インターフェロンαn−3等)。
・タキキニン受容体調節剤(NK1拮抗剤等)、並びに種々の形態のインターフェロン及びインターフェロン誘導体。
・他のケモカイン受容体作動剤/拮抗剤(CXCR4拮抗剤(例えばAMD070、AMD3100)、CD4拮抗剤(例えばTNX−355)等)。
・ウイルス転写又はRNA複製を実質的に阻害、破壊、又は低減する薬剤(tat阻害剤(転写活性化阻害剤)、nef阻害剤(ネガティブ制限因子阻害剤)等)。
・逆転写酵素以外の、ウイルスが発現する1種以上のタンパク質の翻訳(タンパク質発現の下方制御、1以上のタンパク質の拮抗作用を含み、これに限定されない)を実質的に阻害、破壊、又は低減する薬剤(Tat、Nef等)。
・CCR5受容体の発現を支配する(特に下方制御する)薬剤;CCR5受容体の内在化を誘発するケモカイン(MIP−1α、MIP−1β、RANTES、それらの誘導体等、例えばカルシニューリン阻害剤(タクロリムス、シクロスポリンA等)のような免疫抑制剤が挙げられ、これらに限定されない);ステロイド;サイトカインの産生又はシグナル伝達に干渉する薬剤(3−{(3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル}−3−オキソ−プロピオニトリル)、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体を含むJAK−3阻害剤のようなヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤等;サイトカイン抗体(バシリキシマブやダクリズマブのようなインターロイキン−2(IL−2)受容体を阻害する抗体等)。
・細胞活性化又は細胞周期に干渉する薬剤(ラパマイシン等)。
【0178】
治療効果の観点から式(I)の化合物と他の治療薬の併用が必要とされる場合があり、また更に、CCR5ケモカイン受容体の調節に直接関与する疾病又は疾患、或いは間接的ではあるが基本的にはCCR5ケモカイン受容体の調節に付随して生じる疾病又は疾患の治療においては、本発明の化合物と他の治療薬の併用が必要であるか強く推奨される場合がある。例えば、CCR5ケモカイン受容体の調節による疾病又は疾患がHIVの感染及び増殖である場合、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、腫瘍(neoplasm)、及び治療対象の患者の免疫が低下した結果として発症するその他の疾患を治療することが必要であるか、少なくとも望ましい。例えば免疫を刺激するため、又はHIVの初感染や基礎感染に付随する疼痛や炎症を治療するために、他の治療薬を式(I)の化合物と併用してよい。
【0179】
従って、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と併用可能な治療薬としては、以下のものも挙げられる。
・肝炎の治療に有用な薬剤(インターフェロン、ペグインターフェロン(例えばペグインターフェロンα−2a、ペグインターフェロンα−2b)、持続性インターフェロン(例えばアルブミンインターフェロンα)等);TLR7阻害剤;逆転写酵素阻害剤(ラミブジン、エムトリシタビン等);IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(リバビリン、ビラミジン等);NS5Bポリメラーゼ阻害剤を含むポリメラーゼ阻害剤(バロピシタビン、HCV−086、HCV−796、WO05/009418に開示のプリンヌクレオシド類似体、WO05/012288に開示のイミダゾール誘導体等);αグルコシダーゼ阻害剤(セルゴシビル等);インターフェロンエンハンサー(EMZ−702等);セリンプロテアーゼ阻害剤(BILN−2061、SCH−6、VX−950、WO05/010029に開示の大環状アザペプチド誘導体、WO05/007681に開示のもの等);カスパーゼ阻害剤(IDN−6566等);HCVレプリコン阻害剤(WO05/007601に開示のアリールチオウレア誘導体等)。
・AIDSが関与するカポジ肉腫の治療に有用な薬剤(インターフェロン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、メタロマトリクスプロテアーゼ、A−007、ベバシズマブ、BMS−275291、ハロフンギノン(halofuginone)、インターロイキン−12、リツキシマブ、ポルフィマーナトリウム、レビマスタット、COL−3等)。
・サイトメガロウイルス(CMV)感染症の治療に有用な薬剤(ホミビルセン、オキセタノシンG、シドホビル、サイトメガロウイルス免疫グロビン、ホスカネットナトリウム、Isis2922、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ガンシクロビル等)。
・単純ヘルペスウイルス(HSV)の治療に有用な薬剤(アシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ME−609等)。
【0180】
本発明において、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と併用可能な治療薬としては、更にCCR1拮抗剤(BX−471等);βアドレナリン受容体作動剤(サルメテロール等);コルチコステロイド作動剤(プロピオン酸フルチカゾン等);LTD4拮抗剤(モンテルカスト等);ムスカリン拮抗剤(臭化チオトロピウム等);PDE4阻害剤(シロミラスト、ロフルミラスト等);COX−2阻害剤(セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ等);アルファ−2−デルタリガンド(ガバペンチン、プレガバリン等);β−インターフェロン(REBIF等);TNF受容体調節剤(TNF−α阻害剤(例えばアダリムマブ)等);等が挙げられる。
【0181】
本発明は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と、該化合物の代謝速度を低減し患者への暴露を増加させるための1種以上の他の治療薬との組み合わせも包含する。このような暴露の増加はブースティング(boosting)として公知である。この組み合わせは、本発明の化合物の効能を増加可能な点、又はブースティングしていない場合と比較して一定の効能を得るために必要な用量を低減可能な点で、有益である。式(I)の化合物の代謝においては、P450(CYP450)酵素(特にCYP3A4)及びUDPグルクロノシルトランスフェラーゼと硫化酵素の抱合酵素により酸化過程が進行する。従って、本発明の化合物の患者への暴露を増進するために用いる薬剤は、少なくとも1種のシトクロムP450(CYP450)酵素アイソフォームの阻害剤として作用するものであってよい。好ましく阻害されうるCYP450アイソフォームとしては、CYP1A2、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A4等が挙げられ、これらに限定されない。CYP3A4の阻害に適した薬剤としては、リトナビル、サキナビル、ケトコナゾール等が挙げられ、これらに限定されない。
【0182】
上記組み合わせにおいて、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と他の治療薬は、剤形については別々に又は併せて投与してよく、また投与時間については同時又は連続的に投与してよい。即ち、ある成分を投与する前、投与した時と同時、或いは投与した後に、他の成分を用途してよい。
【0183】
従って、本発明の更に他の態様においては、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体と、1種以上の他の治療薬とを含有する医薬組成物が提供される。
【実施例】
【0184】
以下、調製例及び実施例により本発明を説明する。調製例及び実施例では、下記略語を使用する場合がある。
0.88アンモニア=濃水酸化アンモニウム溶液
APCI=大気圧化学イオン化
DMSO=ジメチルスルホキシド
ES=エレクトロスプレーイオン化
HRMS=高分解能マススペクトル
LCMS=液体クロマトグラフィー質量分析
LRMS=低分解能マススペクトル
MS=マススペクトル
NMR=核磁気共鳴
eq.=当量
RT=室温
h=時間
min=分
m.p.=融点
【0185】
実施例1
N−(3−クロロベンジル)−N−{(3R)−1−[1−(2,6−ジメチルベンゾイル)ピペリジン−4−イル]ピロリジン−3−イル}シクロプロパンカルボキサミド
【0186】
【化9】

【0187】
調製例4の化合物(200mg、0.66mmol)及び塩化メチレン(3ml)からなる溶液を攪拌し、これに3−クロロベンズアルデヒド(83μl、0.7mmol)、トリアセトキシホウ化水素ナトリウム(211mg)、及び酢酸(38μl)を加えた。得られた反応混合物をRTで4時間攪拌し、1NのNaOH溶液(4ml)で処理し、更に10分間攪拌した。反応混合物をジクロロメタンで洗浄しながら相分離カートリッジでろ過した。
【0188】
溶媒を除去し、残渣を再度DCM(3ml)に溶解し、EtN(110μl)及びシクロプロパンカルボニルクロライド(64μl)で処理した。反応混合物をRTで一晩攪拌した後、1NのNaOH溶液(3ml)でクエンチし、その10分後にジクロロメタンで洗浄しながら相分離カートリッジでろ過した。有機相を濃縮し、DCM及び0〜20%MeOHの勾配溶離液を用いてジョーンズ(Jones、登録商標)パラレルクロマトグラフィーシステムにより精製し、白色泡状の標記化合物を得た(137mg)。
H NMR(400MHz,CDOD):δ0.68−0.75(1H,m),0.86−0.95(2H,m),1.19−2.06(6H,8 x m),2.17(3H,s),2.27(3H,s),2.10−2.35(1H,2 x m),2.39−3.13(7H,5H x m),4.42−5.11(6H,5 x m),7.05−7.09(2H,m),7.13−7.22(3H,m),7.24−7.40(2H,2 x m)。
元素分析:測定値C(69.86%),H(7.39%),N(8.43%);C2936ClN・0.04CHClの計算値C(70.11%),H(7.31%),N(8.45%)。
LRMS:m/z APCI+494[MH]。
【0189】
下記表に示すR、X、及びRを用いた実施例2〜57の化合物も、実施例1及びスキーム1に従って調製できる。即ち、実施例1の3−クロロベンズアルデヒドに替えて、任意にXで置換された対応するベンズアルデヒド(スキーム1中のR3ACHO)を用いる。例えば実施例16では、3−クロロベンズアルデヒドに替えて2−ピリジルベンズアルデヒドを用いる。同様に、実施例1のシクロプロパンカルボニルクロライドに替えて、対応するRCOCl化合物を用いる。
【0190】
【表1】

【0191】
【表2】

【0192】
【表3】

【0193】
【表4】

【0194】
【表5】

【0195】
実施例58
N−ベンジル−N−{(3R)−1−[1−(2,6−ジメチルベンゾイル)ピペリジン−4−イル]ピロリジン−3−イル}メタンスルホンアミド
【0196】
【化10】

【0197】
シクロプロパンカルボニルクロライドに替えてCHSOClを用いた(スキーム2のステップg)以外は実施例1に従い、黄色泡状の標記化合物を調製した(60mg、85%)。
H NMR(400MHz,CDOD):δ1.2−1.5(3H,m),1.7−2.0(3H,m),2.18(4H,m),2.28(4H,m),2.4(1H,q),2.6−2.8(4H,m),2.9(3H,s),3.0(2H,m),4.4−4.6(4H,m),7.1(2H,m),7.2(2H,m),7.3(2H,m),7.4(2H,m)。
LRMS:m/z APCI+470[MH]。
元素分析:測定値64.23(C%),7.41(H%),8.46(N%);計算値(0.2DCM)64.58(C%),7.32(H%),8.62(N%)。
【0198】
実施例59
N−{(3R)−1−[1−(2,6−ジメチルベンゾイル)ピペリジン−4−イル]ピロリジン−3−イル}−N−(2−フルオロベンジル)−N’−プロピルウレア
【0199】
【化11】

【0200】
シクロプロパンカルボニルクロライドに替えてイソシアネートCH(CH)NCOを用いた(スキーム1のステップf)以外は実施例1に従い、無色油状の標記化合物を調製した(277mg、96%)。これに10mlのHCl溶液(1MのEtO溶液)を加え、油分を取り除き、白色固体状のHCl塩を得た。
H NMR(400MHz,CDOD):δ0.86(3H,t),1.21−1.76(6H,3 x m),1.86−2.33(6H,3 x m),2.15(3H,s),2.24(3H,s),2.87−3.35(6H,4 x m),4.04(1H,m),4.52−4.66(3H,m),6.92−7.37(8H,m)。
LRMS:m/z APCI+495[MH]。
元素分析:測定値64.86(C%),7.66(H%),10.28(N%);計算値(1.0HCl)65.58(C%),7.59(H%),10.55(N%)。
【0201】
実施例60
N−ベンジル−N−((3R)−1−{1−[(2,4−ジメチルピリジン−3−イル)カルボニル]−3−メチルピペリジン−4−イル}ピロリジン−3−イル)シクロプロパンカルボキサミド
【0202】
【化12】

【0203】
調製例1の1,4−ジオキサ−8−アザスピロ(4.5)デカンをメチル置換した以外は実施例1に従い、白色泡状の標記化合物を調製した(143mg、64%)。
H NMR(400MHz,CDCl):δ0.61−1.05(8H,5 x m),1.17−3.33(9H,7 x m),1.59(3H,s),2.17&2.39(3H,2 x s),2.33&2.55(3H,2 x s),4.62−4.90(4H,m),5.13−5.25(1H,m),6.91−7.36(6H,3 x m),8.32(1H,m)。
LRMS:m/z APCI+475[MH]。
【0204】
実施例61
N−ベンジル−N−{(3R)−1−[1−(2,6−ジメチルベンゾイル)−4−メチルピペリジン−4−イル]ピロリジン−3−イル}シクロプロパンカルボキサミド
【0205】
【化13】

【0206】
調製例7の標記化合物(200mg、0.8)及び調製例2の標記化合物(200mg、0.9mmol)の溶液を攪拌し、これに0℃でチランテトライソプロポキシド(360μl、1.2mmol)を加え、一晩攪拌した。当初は懸濁していた溶液が透明橙色溶液へと変化し、これを真空濃縮し、トルエン(7ml)中に取り出し、EtAlCN(1.1ml、1Mのトルエン溶液、1.1mmol)を加えて、RTで一晩攪拌した。この混合物をEtOAc(10ml)及び水(0.4ml)[注]で希釈し、RTで1時間攪拌し、アーボセル(Arbocel、登録商標)でろ過し、濃縮して、不純物を含む油を得た。
【0207】
この未精製油(360mg、0.7mmol)のTHF(6ml)溶液に、MeMgBr(3MのEtO溶液、0.75ml、2.25mmol)をゆっくり加えた。反応混合物をRTで1時間保持し、飽和NHCl水溶液で注意深くクエンチし、EtOAcで処理した。水相を分離し、EtOAcで抽出した。有機相を併せて食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濃縮して、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製した(まずDCM/MeOH=95/5の溶離液を用いたシリカ上、次いでDCM/MeOH/NHOH=96/4/0.4の溶離液を用いたシリカ上で精製)。得られた生成物をEtOAc及び水性HClで分離し、水相を塩基性化し、EtOAcで抽出した。抽出物を併せて有機相を乾燥(MgSO)し、濃縮して、ガラス状の標記化合物を得た(150mg、45%)。
H NMR(400MHz,CDCl):δ0.66(2H,m),0.92(3H,s),1.00(2H,m),1.20−1.87(7H,5 x m),2.09(1H,m),2.26(6H,m),2.44−2.81(3H、4 x m),2.96−3.53(3H,m),4.20(1H,m),4.86(2H,m),5.20(1H,m),7.02(2H,m),7.10−7.35(6H,3 x m)。
LRMS:m/z APCI+474[MH]。
【0208】
下記表に示すR、X、及びRを用いた実施例62〜69の化合物も、実施例62と同様に調製できる。
【0209】
即ち、調製例6でシクロプロパンカルボニルクロライドに替えてRCOClを用い、調製例1で2,6−ジメチル安息香酸に替えてRCOOHを用いる。例えば実施例63、65、及び68では、調製例5においてベンズアルデヒドに替えて2−F置換ベンズアルデヒドを用いる。
【0210】
【表6】

【0211】
実施例70
N−ベンジル−N−((3R)−1−{(3−エキソ)−8−[(2,4−ジメチルピリジン−3−イル)カルボニル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル}ピロリジン−3−イル)シクロプロパンカルボキサミド
【0212】
【化14】

【0213】
調製例9の生成物(150mg、0.42mmol)、2,4−ジメチル−3−ピリジンカルボン酸(158mg、0.84mmol)、WSCDI(161mg、0.84mmol)、HOBT(113mg、0.84mmol)、N−メチルモルホリン(234μl、1.68mmol)、及びDCM(10ml)からなる溶液をRTで16時間攪拌し、減圧下でエバポレート濃縮してゴム状とし、NaHCO(3%水溶液、3ml)及びEtOAc(5ml)で分離した。水相をEtOAc(5ml)で抽出し、有機相を併せてNaSOで乾燥し、エバポレート濃縮して油状混合物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(0〜8%のMeOHを含むDCM溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、油状の実施例69の化合物(エキソ異性体)を得た(45mg、22%)。
H NMR(400MHz,CDCl):δ0.56−0.90(2H,m),0.91−1.08(2H,m),1.12−3.01(15H、7 x m),2.20&2.42(3H,2 x s),2.36&2.59(3H,2 x s),3.55−3.64(1H,m),4.58−5.17(4H,4 x m),6.95−7.01(1H,m),7.13−7.37(6H,3 x m),8.35(1H,m)。
LRMS:m/z APCI+487[MH]。
【0214】
下記表に示すR、X、及びRを用いた71及び72の化合物も、実施例70と同様に調製できる。
【0215】
【表7】

【0216】
調製例1
8−(2,6−ジメチルベンゾイル)−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン
【0217】
【化15】

【0218】
2,6−ジメチル安息香酸(2.50g、16.6mmol)及びDCM(90ml)からなる溶液を攪拌し、これにHOBT(2.29g、16.6mmol)、WSCDI(3.80g、19.9mmol)、N−メチルモルホリン(3.66ml、33mmol)、及び1,4−ジオキサ−8−アザスピロ(4.5)デカン(2.38g、16.6mmol)を加えた。これをRTで16時間攪拌し、1M水酸化ナトリウム水溶液(20ml)を加えて反応を停止した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いでエバポレート濃縮して橙色油を得た。これをカラムクロマトグラフィー(0〜2%のMeOHを含むDCM溶離液を用いたシリカカラム)で精製し、無色油状の標記化合物を得た(3.60g、79%)。
LRMS:m/z APCI+276[MH]。
【0219】
調製例2
1−(2,6−ジメチルベンゾイル)ピペリジン−4−オン
【0220】
【化16】

【0221】
調製例1の生成物(3.60g、13.1mmol)、THF(35ml)、及び4NのHCl(水溶液、35ml)からなる溶液を、60℃で6時間加熱し、真空下でTHFを除去し、水性の残渣をEtOAc(3×30ml)で抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、次いでエバポレート濃縮して、油を得た。これをカラムクロマトグラフィー(30〜50%のEtOAcを含むペンタン溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、無色油状の標記化合物を得た(1.0g、33%)。
LRMS:m/z APCI+232[MH]。
【0222】
調製例3
{(3R)−1−[1−(2,6−ジメチルベンゾイル)ピペリジン−4−イル]ピロリジン−3−イル}カルバミン酸tert−ブチル
【0223】
【化17】

【0224】
市販の(R)−ピロリジン−3−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(3.0g、12mmol)、調製例2の標記化合物(2.77g、12mmol)、AcOH(0.69ml、12mmol)、及びDCM(75ml)からなる溶液を、トリアセトキシホウ化水素ナトリウム(3.82g、18mmol)で処理した。反応混合物をRTで16時間置いた後、1MのNaOH水溶液を加えてクエンチした。有機相を分離してMgSOで乾燥し、次いでエバポレート濃縮して、白色泡状の残渣を得た。これをカラムクロマトグラフィー(5〜10%のMeOHを含むDCM溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、白色固体状の標記化合物を得た(5.0g、77%)。
LRMS:m/z APCI+402[MH]。
【0225】
調製例4
(3R)−1−[1−(2,6−ジメチルベンゾイル)ピペリジン−4−イル]ピロリジン−3−アミン
【0226】
【化18】

【0227】
調製例3の標記化合物(4.82g、12mmol)をHClの4Mジオキサン溶液(24ml)に溶解し、RTで3時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、1MのNaOH水溶液(20ml)で塩基性化し、次いでDCM(3×50ml)で抽出した。有機相を併せてMgSOで乾燥し、濃縮して、橙色油を得た。これをカラムクロマトグラフィー(5〜10%のMeOHを含むDCM溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、淡黄色油状の標記化合物を得た(3.5g、96%)。
LRMS:m/z APCI+302[MH]。
【0228】
調製例5
(3R)−N,1−ジベンジルピロリジン−3−アミン
【0229】
【化19】

【0230】
(R)−1−ベンジル−ピロリジン−3−イルアミン(1.0ml、5.7mmol)、ベンズアルデヒド(0.65ml、6.4mmol)、及びトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(1.84g、8.6mmol)を、酢酸(0.33ml、5.7mmol)及びDCM(20ml)中に加え、窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。この混合物を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)し、エバポレート濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(5%のメタノール及び0.5%アンモニアを含むDCM溶離液を用いたシリカゲルカラム)で精製して、透明油状の標記化合物を得た(1.20g、80%)。
LRMS:m/z APCI+267[MH]。
【0231】
調製例6
N−ベンジル−N−[(3R)−1−ベンジルピロリジン−3−イル]シクロプロパンカルボキサミド
【0232】
【化20】

【0233】
調製例5の標記化合物(1.1g、4.1mmol)、EtN(0.7ml、5mmol)、及びDCMからなる溶液に、シクロプロパンカルボニルクロライド(0.4ml、4.4mmol)をRTで滴下した。2時間後、NaHCO(飽和水溶液)で反応を停止し、得られた混合物をMgSOで乾燥し、濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NHOH=99/1/0.1〜98/2/0.2の溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、油状の標記化合物を得た(1.37g、99%)。
LRMS:m/z APCI+335[MH]。
【0234】
調製例7
N−ベンジル−N−[(3R)−ピロリジン−3−イル]シクロプロパンカルボキサミド
【0235】
【化21】

【0236】
窒素雰囲気下、調製例6の生成物(1.58g、4.73mmol)をEtOH(50ml)に加え、これにギ酸アンモニウム(1.75g、27.8mmol)及び20%Pd(OH)担持炭(0.15g)を加え、得られた混合物を75℃で2時間加熱した。RTまで冷却した後、該混合物をアーボセルのショートプラグでろ過し、EtOH(50ml)で洗浄した。ろ液をエバポレートして乾燥し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NH=90/10/1の溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、透明油状の標記化合物を得た(986mg、85%)。
LRMS:m/z APCI+245[MH]。
【0237】
調製例8
3−{(3R)−3−[ベンジル(シクロプロピルカルボニル)アミノ]ピロリジン−1−イル}−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチル
【0238】
【化22】

【0239】
調製例7の標記化合物(461mg、1.64mmol)、市販のBoc−ノルトロピノン(369mg、1.64mmol)、AcOH(0.28ml、4.92mmol)、及びDCM(20ml)からなる溶液を、トリアセトキシホウ化水素ナトリウム(521mg、2.46mmol)で処理した。RTで3時間処理した後、反応混合物に飽和NaHCO水溶液を加えてクエンチした。有機相を分離し、MgSOで乾燥し、エバポレート濃縮し、得られた油状の残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NHOH=99/1/0.1〜98/2/0.2の溶離液を用いたシリカカラム)で精製して、油状の標記化合物を得た(0.586g、79%)。
LRMS:m/z APCI+455[MH]。
【0240】
調製例9
N−[(3R)−1−(8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)ピロリジン−3−イル]−N−ベンジルシクロプロパンカルボキサミド
【0241】
【化23】

【0242】
調製例8の生成物(586mg、1.3mmol)をDCM(20ml)に溶解し、HClのエーテル溶液(2M、10ml)を加えてRTで一晩攪拌した。溶媒を留去した後、残渣をDCM(10ml)に溶解し、飽和NaHCO水溶液(10ml)で洗浄し、水相をDCM(5×10ml)で抽出した。有機相を併せてMgSOで乾燥し、カラムクロマトグラフィー(100%水〜100%MeCNの勾配溶離液を用いた逆相シリカカラム)で精製して、透明油状の標記化合物を得た(301mg、66%)。
LRMS:m/z APCI+355[MH]。
【0243】
生物学的データ
式(I)の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体の、ケモカイン受容体の活性を調節する能力を、当該分野で公知の方法により示す。例えば、コンバディエール(Combadiere)ら、ジャーナル・オブ・ロイコサイト・バイオロジー(J. Leukoc. Biol.)、60、147−52(1996年)に開示されている以下のCCR5結合分析、同著者による細胞内カルシウム動員分析、及び/又はブラッドリー(Bradley)ら、ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・スクリーニング(J. Biomol. Screen.)、9、516−24(2004年)に開示されている以下の細胞融合阻害を使用する。
【0244】
上記の注目されている受容体を発現する細胞系として、生来該受容体を発現するもの(PM−1等)、IL−2により刺激した末梢血リンパ球(PBL)、組み換え受容体を発現するよう調整した細胞(CHO、300.19、L1.2、HEK−293等)等が挙げられる。
【0245】
実施例の化合物を上記コンバディエールらの細胞内動員分析により評価したところ、これら化合物は、10μM未満のIC50値でCCR5拮抗剤として作用した。
【0246】
更に、式(I)の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び誘導体の薬理活性を、HIV−1融合に対するIC50値を求めるgp160誘発細胞−細胞融合分析を用いて示す。このgp160誘発細胞−細胞融合分析では、HeLaP4細胞株及びCHO−Tat10細胞株を使用する。
【0247】
HeLaP4細胞株は、CCR5及びCD4を発現し、HIV−1のLTR−β−ガラクトシダーゼが導入される。この細胞株には、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mLペニシリン+10mg/mLストレプトマイシン)、及び1μg/mlのピューロマイシンを含有するダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM)を、L−グルタミン無しで用いる。
【0248】
CHO細胞株は、pTatピューロプラスミドを導入したCHO・JRR17.1細胞株から得られるTat(転写活性化)発現クローンである。この細胞株には、10%のFCS、2mMのL−グルタミン、0.5mg/mlのハイグロマイシンB、及び12μg/mlのピューロマイシンを含有する、ロズウェルパーク癌研究所(Roswell Park Memorial Institute)が開発した哺乳動物細胞用富栄養培地RPMI1640を、L−グルタミン無しで用いる。CHO・JRR17.1細胞株はgp160(JRFL)を発現し、CCR5/CD4発現細胞株と融合可能であるために選ばれたクローンである。
【0249】
細胞融合により、CHO細胞中のTatは、HeLa細胞中のHIV−1の末端反復配列(LTR)を転写活性化し、β−ガラクトシダーゼを発現することができる。β−ガラクトシダーゼレポーター分析キット「フルーアエース(Fluor Ace、商標)」を用いて、この発現を測定する(バイオラッド(Bio-Rad)カタログ番号170−3150)。このキットを用いて、4−メチルウンベリフェリル−ガラクトピラノシド(MUG)を基質として、β−ガラクトシダーゼの発現レベルを決定するための定量的蛍光分析を行う。β−ガラクトシダーゼはこの蛍光性基質を加水分解し、その結果、4−メチルウンベリフェロン(4MU)の蛍光性分子を放出する。4−メチルウンベリフェロンによる蛍光を、励起波長360nm、発光波長460nmの条件で蛍光光度計により測定する。
【0250】
融合を阻害する化合物においては信号が低下する。適当な溶媒への可溶化及び培地内での希釈を行った後、各化合物の用量反応曲線を用いてIC50値を計算する。
【0251】
実施例の化合物は、HIV細胞融合分析において以下のとおり活性を示した。
【0252】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、Rはアリール又はHetであり、前記アリール及びHetはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、CN、フェニル、及びイミダゾリルから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されており;
はH又はC1−3アルキルであり;
はC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールC1−3アルキル、又はHet1−3アルキルであり、前記アリール及びHetはC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、ハロゲン、C1−6ハロアルキル、OH、及びCNから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されており;
はCOR又はSOであり;
はH、アリール、アリールC1−3アルキル、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C0−6アルキルアミノC0−6アルキル、或いはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員の飽和ヘテロ環であり、前記C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシC1−6アルキル、及びC0−6アルキルアミノC0−6アルキルはハロゲン、C1−6アルコキシ、及びOHから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されており;
はH又はC1−4アルキルであり;
mは0、1、2、又は3であり;
mが1、2、又は3のとき、RはHであり;
「−−−−−」は任意に存在するC−C結合を表し、mが1、2、又は3のとき、ピペリジン環中のいずれの2原子もアルキレン架橋構造を形成していてもよく;
HetはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5〜10員の芳香族ヘテロ環であり、Hetが含窒素ヘテロ環であるとき、該窒素はN−オキシドを形成していてもよく;
HetはN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員の芳香族ヘテロ環であり、Hetが含窒素ヘテロ環であるとき、該窒素はN−オキシドを形成していてもよい。]で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体溶媒和物。
【請求項2】
HetがN、O、及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含む5又は6員の芳香族ヘテロ環であり、請求項1に記載のとおり置換されており、Hetが含窒素ヘテロ環であるとき、該窒素はN−オキシドを形成していてもよい請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が請求項1に記載のとおり置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジルN−オキシド、ピリミジルN−オキシド、イミダゾリル、オキサゾール、又はイソオキサゾールである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
がC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、及びハロゲンから選ばれる0〜2個の原子又は基で置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジルN−オキシド、又はピリミジルN−オキシドである請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
がC1−3アルキル、C1−6アルコキシ、及びハロゲンから選ばれる1又は2個の原子又は基で置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジルN−オキシド、又はピリミジルN−オキシドである請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
が2,6−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルピリジン−3−イル、又は4,6−ジメチルピリミジン−5−イルである請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
がHであること請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
が請求項1に記載のとおり置換されたベンジル、ピリジルメチル、又はピリミジルメチルである請求項1から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
がC1−3アルキル、ハロゲン、C1−3アルコキシ、及びC1−3ハロアルキルから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されたベンジルである請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
前記ベンジルが0〜2個のフッ素又は塩素原子で置換されている請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
がCOR又はSOであり、RがH、フェニル、C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルメチル、C1−3アルコキシ、C1−3アルコキシC1−3アルキル、又はC1−6アルキルアミノであり、前記C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキルメチル、C1−3アルコキシ、C1−3アルコキシC1−3アルキル、及びC1−6アルキルアミノがハロゲン、C1−6アルコキシ、及びOHから選ばれる0〜3個の原子又は基で置換されている請求項1から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
前記置換が0〜3個のハロゲンによってなされる請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
がC3−7シクロアルキル、C1−3アルコキシC1−3アルキル、又はC1−4アルキルアミノであり、前記シクロアルキルが0〜2個のフッ素原子で置換されている請求項12又は11に記載の化合物。
【請求項14】
がCORである請求項1から13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
がHである請求項1から14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
mが0又は2である請求項1から15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
mが0である請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体とを含有する医薬組成物。
【請求項19】
更に1種以上の治療薬を含有する請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
薬剤として用いられる請求項1から17のいずれかに記載の式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項21】
CCR5受容体の調節が関与する疾患の治療に用いられる1から17のいずれかに記載の式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項22】
前記疾患がHIV感染症、遺伝学的にHIVに関連するレトロウイルス感染症、又はAIDSである請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記疾患が炎症性疾患、自己免疫疾患、又は疼痛である21に記載の化合物。
【請求項24】
前記疾患が関節リウマチ、移植片拒絶、線維症、又は疼痛である請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1から15のいずれかに記載の式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体を薬剤の製造に使用する方法であって、前記薬剤はCCR5受容体の調節が関与する疾患の治療に用いられる使用方法。
【請求項26】
CCR5受容体の調節が関与する疾患を患う哺乳動物を治療する方法であって、有効量の請求項1から17のいずれかに記載の式(I)で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは誘導体を用いて前記哺乳動物を処置する治療方法。

【公表番号】特表2009−533416(P2009−533416A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504850(P2009−504850)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000978
【国際公開番号】WO2007/116313
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】