説明

ケラチン含有医療デバイスのための生物活性コーティング

【課題】ケラチンを含有する保護コーティングを含む医療デバイス(およびこの医療デバイスを作製する方法)を提供する。
【解決手段】この保護コーティングは、結合領域および生物活性領域を含む。この結合領域は、基材表面に結合したシラン成分を含む少なくとも1つの有機シラン化合物を含み、この生物活性領域は、ケラチンの反応性ペンダント基に結合した有機成分を含む。医療デバイスは、好ましくは、組織工学構成、整形外科移植片、歯科移植片および心室補助デバイスからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、係属中の米国仮出願番号60/339,039(2002年7月25日出願)
に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本願は、医療デバイスのためのコーティングに関し、好ましくは、医療移植片のための
コーティングに関する。より具体的には、本願は、生物活性コーティングに関し、好まし
くは、骨誘導(osteoinductive)特性を有するケラチンを含む生物活性コ
ーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
医療デバイス表面を保護する目的で、多くの異なる型のコーティングが開発されている
。コラーゲン、ヒドロキシアパタイトおよびより最近には、いわゆるRGDペプチドの全
てが、整形外科移植片適用におけるコーティングとして研究されている。これらの物質全
ては、少なくとも骨伝導性(osteoconductive)であると示されているが
、骨誘導性であるとは示されていない。骨誘導特性を有し、ヒト免疫系から移植片をマス
クし得る保護コーティングが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(簡単な要旨)
本願は、ケラチンを含有する保護コーティングを含む医療移植片を提供する。この保護
コーティングは、結合領域および生物活性領域を含む。前記結合領域は、前記基材表面に
結合したシラン成分を含む少なくとも1つの有機シラン化合物を含む。この生物活性領域
は、ケラチンの反応性ペンダント基(reactive pendant group)
に結合した前記有機シランの有機成分を含む。
【0005】
(詳細な要旨)
本願は、ケラチンを含有する保護コーティングを含む基材を提供する。好ましい実施形
態において、この保護コーティングは、骨誘導特性を含む。さらに好ましい実施形態にお
いて、この保護コーティングは、骨伝導特性と骨誘導特性の両方を含む。
【0006】
この基材は、好ましくは、医療デバイス上に存在し、さらに好ましくは、医療移植片上
に存在する。この医療デバイスは、好ましくは、組織工学構造物、整形外科移植片、歯科
移植片および心室補助デバイスからなる群から選択される。
【0007】
この基材は、生体適合性物質を含む。この生体適合性物質は、好ましくは、シリコン、
金属、合金およびセラミックからなる群から選択される。好ましい金属は、チタンを含み
、そして、チタン金属またはその合金であり得る。好ましいセラミックは、ヒドロキシア
パタイトを含む。
【0008】
好ましい実施形態において、保護コーティングは、ケラチンならびに骨形成タンパク質
(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択さ
れる1つ以上の生物活性因子を含む。このケラチンは、毛髪、毛皮、羽毛、角、蹄、嘴ま
たは足からなる群から選択される物質由来である。ケラチンは、好ましくは、毛髪由来で
あり、より好ましくはヒト毛髪由来であり、これは、「ヒト毛髪ケラチン」と呼ばれ得る
。ケラチンはまた、好ましくは、還元ケラチンを含む。
【0009】
好ましくは、この保護コーティングは、結合領域および生物活性領域を含む。この結合
領域は、移植片表面の結合とケラチン上の反応性ペンダント基の結合の両方に適合される
物質を含む。好ましくは、この結合領域は、少なくとも1つのシラン化合物を含み、さら
に好ましくは、有機シランを含む。
【0010】
好ましくは、この有機シランは、シラン成分および有機成分を含む。この結合領域は、
医療デバイス表面に結合したシラン成分を含み、そしてこの生物活性領域は、有機シラン
の有機成分に結合したケラチンを含む。この有機シランについて適切な有機成分は、ケラ
チン上の反応性ペンダント基との反応に適合される。好ましくは、この有機シランは、
エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル
基からなる群から選択される部分を含む有機成分を含む。好ましい有機成分は、エポキシ
基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む。さら
に好ましい有機成分は、エポキシ基、アクリレート基、アルコキシ基、ビニル基およびア
ルキルアミン基からなる群から選択される。最も好ましい有機部分は、ビニル基およびエ
ポキシ基からなる群から選択される。好ましくは、この有機シランは、約1個〜3個のハ
ロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む。好ま
しいハロゲンは、塩素である。
【0011】
また、基材を保護基材でコーティングする方法を、提供する。この方法は、以下:前記
基材とカップリング物質を結合して結合領域を生成する工程;および前記結合領域とケラ
チンを結合する工程を包含する。さらに好ましくは、この方法は、前記基材とカップリン
グ物質を結合する前に、この基材表面を酸化する工程を包含する。
【0012】
好ましい実施形態において、この基材とカップリング物質を結合する前に、この基材を
洗浄する。さらに好ましくは、この洗浄工程は、無水溶媒中での超音波処理および水中で
の超音波処理を包含する。適切な無水溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロピル
アルコール、ジメチルスルホキシド、アセトンまたはテトラヒドロフランが挙げられるが
、必ずしもこれらに限定されない。好ましい無水溶媒は、ジクロロメタンである。好まし
くは、水は、脱イオン水である。
【0013】
前記結合領域にケラチンを結合させる工程は、適切な溶媒にケラチンを溶解して、無水
溶媒を添加してケラチン混合物を生成する工程、前記ケラチン混合物に前記結合領域を曝
露する工程;そして前記生物活性領域を生成するのに有効な条件下で硬化させる工程を包
含する。
【0014】
還元/還元ケラチンについて、適切な溶媒は、水である。酸化/還元ケラチンについて
、適切な溶媒は、塩基含有水溶液を含む。適切な塩基には、水酸化アンモニウム、水酸化
ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されな
い。好ましい塩基は、水酸化アンモニウムである。
【0015】
適切な無水溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルス
ルホキシド、アセトンまたはテトラヒドロフランが挙げられるが、必ずしもこれらに限定
されない。好ましい無水溶媒は、ジメチルスルホキシドである。
【0016】
この方法は、触媒および開始剤からなる群から選択される試薬とケラチン混合物とを混
合する工程を包含する。ビニル官能化シランカップリング剤を使用する場合、適切な開始
剤または触媒は、フリーラジカルを生成する。好ましいフリーラジカル開始剤は、アント
ラキノン−2−スルホン酸またはアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物
(Aldrich;Milwaukee,WI)からなる群から選択される。
【0017】
硬化は、このケラチン混合物に曝露される基材を、このコーティングを硬化させるのに
十分な期間にわたって有効なエネルギー供給源に曝露する工程を包含する。好ましくは、
この硬化は、前記触媒または前記開始剤の存在下で生じる。この硬化期間は、代表的には
、約1時間〜約24時間であり、好ましくは約24時間である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
医療デバイスであって、以下:
ケラチンを含む保護コーティングを含む基材であって、該保護コーティングは、結合領
域および生物活性領域を含む、基材;
該基材の表面に結合したシラン成分を含む少なくとも1つの有機シラン化合物を含む該
結合領域;および
該ケラチンの反応性ペンダント基に結合した該有機シランの有機成分を含む該生物活性
領域
を含む、医療デバイス。
(項目2)
項目1に記載の医療デバイスであって、前記有機シラン化合物の前記シラン成分が、前記基材の表面と共有結合している、医療デバイス。
(項目3)
項目2に記載の医療デバイスであって、前記生物活性領域が、前記有機シラン化合物の前記シラン成分に共有結合した前記ケラチンの反応性ペンダント基を含む、医療デバイス。
(項目4)
項目1に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、培養2T3マウス骨芽細胞によって示される骨マトリクス形成を増加させるのに有効である、医療デバイス。
(項目5)
組織工学構築物、整形外科移植片、歯科移植片および心室補助デバイスからなる群から選択される、項目3に記載の医療デバイス。
(項目6)
組織工学構築物、整形外科移植片、歯科移植片および心室補助デバイスからなる群から選択される、項目4に記載の医療デバイス。
(項目7)
医療移植片を含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目8)
医療移植片を含む、項目3に記載の医療デバイス。
(項目9)
医療移植片を含む、項目4に記載の医療デバイス。
(項目10)
医療移植片を含む、項目5に記載の医療デバイス。
(項目11)
医療移植片を含む、項目6に記載の医療デバイス。
(項目12)
項目1に記載の医療デバイスであって、前記基材が、生体適合性物質を含む、医療デバイス。
(項目13)
項目7に記載の医療デバイスであって、前記基材が、生体適合性物質を含む、医療デバイス。
(項目14)
項目8に記載の医療デバイスであって、前記基材が、生体適合性物質を含む、医療デバイス。
(項目15)
項目9に記載の医療デバイスであって、前記基材が、生体適合性物質を含む、医療デバイス。
(項目16)
項目10に記載の医療デバイスであって、前記基材が、生体適合性物質を含む、医療デバイス。
(項目17)
項目11に記載の医療デバイスであって、前記基材が、生体適合性物質を含む、医療デバイス。
(項目18)
項目12に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコン、金属、合金およびセラミックからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目19)
項目12に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、
チタンおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目20)
項目12に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコンを含む、医療デバイス。
(項目21)
項目14に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコン、金属、合金およびセラミックからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目22)
項目14に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、
チタンおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目23)
項目14に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコンを含む、医療デバイス。
(項目24)
項目15に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコン、金属、合金およびセラミックからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目25)
項目15に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、
チタンおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目26)
項目15に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコンを含む、医療デバイス。
(項目27)
項目16に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコン、金属、合金およびセラミックからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目28)
項目16に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、
チタンおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目29)
項目16に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコンを含む、医療デバイス。
(項目30)
項目17に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコン、金属、合金およびセラミックからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目31)
項目17に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、
チタンおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、医療デバイス。
(項目32)
項目17に記載の医療デバイスであって、前記生体適合性物質が、シリコンを含む、医療デバイス。
(項目33)
項目12に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、ケラチンならびに骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択される1つ以上の生物活性因子を含む、医療デバイス。
(項目34)
項目17に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、ケラチンならびに骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択される1つ以上の生物活性因子を含む、医療デバイス。
(項目35)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、毛髪、毛皮、羽毛、角、蹄、嘴および足からなる群から選択される物質由来である、医療デバイス。
(項目36)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、毛髪由来である、医療デバイス。
(項目37)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、ヒトの毛髪ケラチンである、医療デバイス。
(項目38)
項目35に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、還元ケラチンを含む、医療デバイス。
(項目39)
項目36に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、還元ケラチンを含む、医療デバイス。
(項目40)
項目37に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、還元ケラチンを含む、医療デバイス。
(項目41)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、約50kDa〜約85kDaの分子量を有する高分子量ケラチン(HMWK)を含む、医療デバイス。
(項目42)
項目35のいずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、約50kDa〜約85kDaの分子量を有する高分子量ケラチン(HMWK)を含む、医療デバイス。
(項目43)
項目36いずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、約50kDa〜約85kDaの分子量を有する高分子量ケラチン(HMWK)を含む、医療デバイス。
(項目44)
項目39に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、約50kDa〜約85kDaの分子量を有する高分子量ケラチン(HMWK)を含む、医療デバイス。
(項目45)
項目40に記載の医療デバイスであって、前記ケラチンが、約50kDa〜約85kDaの分子量を有する高分子量ケラチン(HMWK)を含む、医療デバイス。
(項目46)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、培養2T3マウス骨芽細胞による骨マトリクス形成を促進するのに有効である、医療デバイス。
(項目47)
項目41に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、培養2T3マウス骨芽細胞による骨マトリクス形成を促進するのに有効である、医療デバイス。
(項目48)
項目44に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、培養2T3マウス骨芽細胞による骨マトリクス形成を促進するのに有効である、医療デバイス。
(項目49)
項目43に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、培養2T3マウス骨芽細胞による骨マトリクス形成を促進するのに有効である、医療デバイス。
(項目50)
項目45に記載の医療デバイスであって、前記保護コーティングが、培養2T3マウス骨芽細胞による骨マトリクス形成を促進するのに有効である、医療デバイス。
(項目51)
医療移植片を含む、項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療デバイス。
(項目52)
医療移植片を含む、項目41に記載の医療デバイス。
(項目53)
医療移植片を含む、項目43に記載の医療デバイス。
(項目54)
医療移植片を含む、項目44に記載の医療デバイス。
(項目55)
医療移植片を含む、項目45に記載の医療デバイス。
(項目56)
医療移植片を含む、項目46に記載の医療デバイス。
(項目57)
項目52に記載の医療移植片であって、前記保護コーティングが、ケラチンならびに骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択される1つ以上の生物活性因子を含む、医療移植片。
(項目58)
項目53に記載の医療移植片であって、前記保護コーティングが、ケラチンならびに骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択される1つ以上の生物活性因子を含む、医療移植片。
(項目59)
項目55に記載の医療移植片であって、前記保護コーティングが、ケラチンならびに骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択される1つ以上の生物活性因子を含む、医療移植片。
(項目60)
項目56に記載の医療移植片であって、前記保護コーティングが、ケラチンおよび骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)からなる群から選択される1つ以上の生物活性因子を含む、医療移植片。
(項目61)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目62)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目63)
項目62に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目64)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目65)
項目52に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目66)
項目52に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目67)
項目66に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目68)
項目52に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目69)
項目53に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目70)
項目34に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目71)
項目53に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目72)
項目53に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目73)
項目54に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目74)
項目54に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目75)
項目74に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目76)
項目54に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目77)
項目55に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目78)
項目54に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目79)
項目78に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目80)
項目55に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目81)
項目56に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目82)
項目56に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目83)
項目82に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目84)
項目56に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目85)
項目60に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基およびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目86)
項目60に記載の医療移植片であって、前記有機シランの前記有機成分が、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目87)
項目86に記載の医療移植片であって、前記アミン基が、アルキルアミン基である、医療移植片。
(項目88)
項目60に記載の医療移植片であって、前記有機成分が、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される部分を含む、医療移植片。
(項目89)
項目1〜33および項目34のいずれか1項に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目90)
項目52に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目91)
項目53に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目92)
項目54に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目93)
項目55に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目94)
項目56に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目95)
項目60に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目96)
項目88に記載の医療移植片であって、前記有機シランが、約1個〜3個のハロゲンおよび約1個〜3個のアルコキシ基からなる群から選択される置換基を含む、医療移植片。
(項目97)
保護コーティングを用いて医療デバイスをコーティングする方法であって、該方法が、以下:
結合領域を生成する該医療デバイスの1つ以上の表面にカップリング剤を結合させる工程;および
該結合領域にケラチンを結合させる工程
を包含する、方法。
(項目98)
項目97に記載の方法であって、前記結合領域にケラチンを結合させる工程が、以下:
溶媒にケラチンを溶解する工程;および
ケラチン混合物を生成するために、第2の無水溶媒を添加する工程;
該ケラチン混合物に該結合領域を曝露し、ケラチンコーティング結合領域を生成する工程;および
前記生物活性領域を生成するのに有効な条件下で、該ケラチンコーティング結合領域を硬化する工程を包含する、方法。
(項目99)
前記1つ以上の表面に前記カップリング剤を結合させる前に、該1つ以上の表面を洗浄する工程をさらに包含する、項目98に記載の方法。
(項目100)
前記1つ以上の表面に前記カップリング剤を結合させる前に、該1つ以上の表面を酸化する工程をさらに包含する、項目98に記載の方法。
(項目101)
前記1つ以上の表面に前記カップリング剤を結合させる前に、該1つ以上の表面を酸化する工程をさらに包含する、項目99に記載の方法。
(項目102)
項目99に記載の方法であって、前記洗浄工程が、最初に無水溶媒中で、前記1つ以上の表面に超音波処理し、そして該1つ以上の表面を水中で超音波処理する工程を包含する、方法。
(項目103)
項目102に記載の方法であって、前記第1の無水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、アセトンまたはテトラヒドロフランからなる群から選択される、方法。
(項目104)
項目102に記載の方法であって、前記最初の無粋溶媒が、ジクロロメタンである、方法。
(項目105)
項目101に記載の方法であって、前記洗浄が、最初に無水溶媒で、前記1つ以上の表面に超音波をあて、そして前記1つ以上の表面を水で超音波処理する工程を包含する、方法。
(項目106)
項目105に記載の方法であって、前記第1の無水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、アセトンまたはテトラヒドロフランからなる群から選択される、方法。
(項目107)
項目106に記載の方法であって、前記最初の無粋溶媒が、ジクロロメタンである、方法。
(項目108)
項目105に記載の方法であって、前記水が、脱イオン水である、方法。
(項目109)
項目107に記載の方法であって、前記水が、脱イオン水である、方法。
(項目110)
項目109に記載の方法であって、前記ケラチンが、還元/還元ケラチンである場合、前記溶媒が水である、方法。
(項目111)
項目109に記載の方法であって、前記ケラチンが、酸化/還元ケラチンである場合、前記溶媒が塩基含有水溶液を含む、方法。
(項目112)
項目111に記載の方法であって、前記塩基が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
(項目113)
項目111に記載の方法であって、前記塩基が、水酸化アンモニウムである、方法。(項目114)
項目98に記載の方法であって、前記第2の無水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、アセトンおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される、方法。
(項目115)
項目98に記載の方法であって、前記第2の無水溶媒が、ジメチルスルホキシドである、方法。
(項目116)
項目105に記載の方法であって、前記第2の無水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、アセトンおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される、方法。
(項目117)
項目105に記載の方法であって、前記第2の無水溶媒が、ジメチルスルホキシドである、方法。
(項目118)
項目107に記載の方法であって、前記第2の無水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、アセトンおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される、方法。
(項目119)
項目118に記載の方法であって、前記第2の無水溶媒が、ジメチルスルホキシドである、方法。
(項目120)
触媒およびインヒビターからなる群から選択される活性化剤と前記ケラチン混合物を混合する工程をさらに包含する、項目99〜118および項目119のいずれか1項に記載の方法。
(項目121)
項目120に記載の方法であって、前記活性化剤が、ビニル官能化シランであり、そして該活性化剤が、フリーラジカルを生成するのに有効である、方法。
(項目122)
項目121に記載の方法であって、前記活性化剤が、アントラキノン−2−スルホン酸を含む、方法。
(項目123)
項目98に記載の方法であって、前記条件が、前記生物活性領域を生成するのに有効な期間、前記ケラチンコーティング結合領域をエネルギー源に曝露する工程を包含する、方法。
(項目124)
項目120に記載の方法であって、前記条件が、前記生物活性領域を生成するのに有効な期間、前記ケラチンコーティング結合領域をエネルギー源に曝露する工程を包含する、方法。
(項目125)
項目121に記載の方法であって、前記条件が、前記生物活性領域を生成するのに有効な期間、前記ケラチンコーティング結合領域をエネルギー源に曝露する工程を包含する、方法。
(項目126)
項目122に記載の方法であって、前記条件が、前記生物活性領域を生成するのに有効な期間、前記ケラチンコーティング結合領域をエネルギー源に曝露する工程を包含する、方法。
(項目127)
項目123に記載の方法であって、前記条件が、前記活性化剤の存在を包含する、方法。
(項目128)
項目124に記載の方法であって、前記条件が、前記活性化剤の方法を包含する、方法。
(項目129)
項目125に記載の方法であって、前記条件が、前記活性化剤の存在を包含する、方法。
(項目130)
項目126に記載の方法であって、前記条件が、前記活性化剤の存在を包含する、方法。
(項目131)
項目123に記載の方法であって、前記期間が、約1時間〜約24時間である、方法。
(項目132)
項目126に記載の方法であって、前記期間が、約1時間〜約24時間である、方法。
(項目133)
項目127に記載の方法であって、前記期間が、約1時間〜約24時間である、方法。
(項目134)
項目130に記載の方法であって、前記期間が、約1時間〜約24時間である、方法。
(項目135)
項目126に記載の方法であって、前記期間が、約24時間である、方法。
(項目136)
項目130に記載の方法であって、前記期間が、約24時間である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ケラチンコーティングされたチタンディスクの水接触角を示すグラフであり、これは、本願の工程に供されたディスク(シランコーティングに続いてケラチンを接合させたディスク)が、得られる最も低い接触角を有したことを説明する。
【図2】図2は、チタンとガラスの両方が、浸漬プロセスを使用して効率的にコーティングされることを示すケラチンコーティングされた基材の水接触角を示すグラフである。
【図3A】図3Aは、非処理のチタンディスクとシランコーティングディスクとの間のXPSスペクトル(Si2p スペクトル)を比較するチャートである。
【図3B】図3Bは、非処理のチタンディスクと生理食塩水、触媒およびケラチンで処理されたディスクとの間のXPSスペクトル(N1s スペクトル)を比較するチャートである。
【図4】図4は、ケラチンコーティングされたチタンディスクのSiおよびN XPS原子濃度を示すグラフである。
【図5】図5は、推定されたチタンディスク上コーティングの厚さであり、ここで、括弧内の数字は、シランコーティング上フィルムの厚さを示す。
【図6】図6は、2T3細胞が、ケラチンコーティングされたチタンディスクに付着し、そして分化することを示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
ケラチンは、傷害または損傷なしで容易に提供され得るヒトタンパク質の、唯一ではな
いにしても数少ないファミリーの1つである。この独特の構造タンパク質のファミリーは
、非常に多くの脊椎動物組織において見出され得、最も著しくは毛髪および毛皮において
見出され得る。何百トンというヒト毛髪が、毎日破棄されている。100以上の相同体を
有するファミリーのように、ケラチンの生体適合性は、その構造改変体によって予め決定
される。どのヒトタンパク質も、この程度の構造および組成の多様性を示さず、それゆえ
、免疫系による耐性を示さない。
【0020】
本願は、ヒト毛髪繊維からケラチンを選択的に抽出し、医療デバイス物質(例えば、金
属およびセラミック)表面上に分子コーティングを生成する浸漬プロセスにおいて、この
ケラチンを使用する。この方法は、この移植片表面とケラチン上の反応性ペンダント基の
両方に結合するのに適合したカップリング剤を使用する。好ましくは、この結合領域は、
少なくとも1つのシラン化合物を含み、さらに好ましくは、有機シランを含む。好ましく
は、この有機シランは、シラン成分および有機成分を含み、ここでこの結合領域は、医療
デバイス表面に結合したシラン成分およびケラチン上の反応性部分と結合した有機成分を
含む。好ましい実施形態において、この有機シランのシラン成分は、医療デバイス表面と
共有結合しており、この有機シランの有機成分はケラチン上の反応性部分と共有結合して
いる。
【0021】
水接触角およびX線光電子分光法(XPS)によるこれらのコーティングの特性決定か
ら、非常に異なった表面特性が示された。このオングストロームの薄さのケラチンコーテ
ィングは、頑強であり、そしてグリットブラストされたチタンディスクの標準形態の妨げ
にはならなかった。これらの表面特性は、培養中のケラチンコーティングされたチタンデ
ィスク上の2T3マウス骨芽細胞の付着、増殖および分化につながることが示された。
【0022】
一般的に、このコーティング方法は、代表的には、金属およびセラミック表面を有する
医療デバイス物質に、適用可能である。このコーティング方法は、宿主の受容性を促進し
て、そして/または組織増殖を加速する、より生体適合性の界面を生成して、最終的には
、生物学的に活性な表面を生成する能力を有する。
【0023】
(ケラチン)
ヒト毛髪は、角質として知られる鱗状の重なった形に配置される扁平細胞からなる剛健
な管状外層から構成される。この毛髪の内部バルクは、皮質として知られており、繊維状
ケラチンにより高密度に充填された細長い細胞から構成されている。α−ヘリカルケラチ
ンのミクロフィブリルコイルドコイルを含む、この繊維状ケラチンは、束状に配置され、
マクロフィブリルと呼ばれる。この構造の中間フィラメント(IF)は、非晶質ケラチン
マトリックス物質と一緒に結合している。このマトリックスおよびIFは、機能および組
成において異なる。このマトリックスは、IFを一緒に維持する「接着剤」である。この
接着剤は、硫黄含量が高く、低分子量ケラチン(LMWK)(代表的には、10〜15k
Da未満)からなる。このIFは、相対的に低い硫黄含量ではあるが、高分子量のケラチ
ン(高分子量ケラチンすなわちHMWK)を含み、ほぼ50〜85kDaである。
【0024】
ケラチンの1つの際立った特徴は、ポリペプチド鎖の3次元ネットワークを形成するジ
スルフィド架橋の存在により、ケラチンに、大部分において構造の完全性を与える。この
ネットワーク構造は、ケラチンが不溶性であることを示す。しかしながら、ケラチンは、
ジスルフィド結合切断を介する3次元構造の破壊により、可溶性になり得る。ジスルフィ
ド結合切断は、酸化的、還元的に行なわれるか、またはこの2つの組み合わせによって行
なわれ得る。
【0025】
制御された条件下でのジスルフィド結合切断および選択的抽出により、HMWKからL
MWKが単離される。このプロセスは、角質をばらばらにすることなく皮質タンパク質を
取り外すのに用いる。毛髪繊維の内部構造を、角質に対して実質的な障害を与えずに取り
外す。この抽出プロセスによるHMWKは、ゲル電気泳動により、分子量66kDaおよ
び43kDaで2つの広いタンパク質バンドを生じる。これらのケラチンは、構造的生体
適合性物質(セラミックおよび金属表面のコーティングを含む)として有用である。
【0026】
成長因子(例えば、骨形成タンパク質(BMP)およびトランスフォーミング成長因子
β(TGF−β))は、毛髪濾胞に存在し、コーティングにより送達可能であり、このコ
ーティングに骨誘導性および骨伝導性の特性を提供する。
【0027】
ケラチンは、一般的に、式:
【0028】
【化1】


を有するアミノ酸を含む。表1は、例えば、ヒト毛髪に見出されるアミノ酸残基を要約し
、各残基に対応する「R」基を示す。
【0029】
【表1−1】

【0030】
【表1−2】


ヒト毛髪における最も多いアミノ酸は、システインであり、これは、ジスルフィド架橋
されたシステイン基の形態で見出される。上に議論したように、この基は、他の硫黄含有
部分(最も著しくは、チオール)に変換され得る。チオールは、以下に記載されるような
多くの化学技術を使用してカップリング物質の反応性末端と反応し得る:S.Patai
(Ed.),the Chemistry of the Thiol Group,P
arts 1 and 2,John Wiley&Sons,New York,NY
(1974)(これは、本明細書中で参考として援用される)。他の反応シナリオ(例え
ば、ポリマー合成に関するもの)はまた、チオールを利用して所望の架橋の組み合わせを
形成するのに役立つ(例えば、これは、Rempp,P.およびMerrill,E.W
.,Polymer Synthesis,Huething&Wepf Verlag
Basel,Heidelberg,Germany(1986);Young,R.
J.and Lovell,P.A.,Introduction to Polyme
rs,Chapman&Hall,London(1991);Odian,G.,Pr
inciples of Polymerization,John Wiley&So
ns,New York,NY(1991)に記載され、本明細書中で参考として援用さ
れる)。
【0031】
システインに加えて、以下のアミノ酸は、反応性ペンダント基として有用であり得る、
窒素または酸素を含むペンダント基を有する;アルギニン、セリン、グルタミン酸、スレ
オニン、アスパラギン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トリプトファ
ンおよびヒスチジン。タンパク質が、α−ケラチンである場合、架橋のための反応性ペン
ダント基を含む好ましいアミノ酸残基は、システイン、アルギニン、セリンおよびグルタ
ミン酸であり、最も好ましくは、シスチンおよびアルギニンである。
【0032】
(ジスルフィド結合切断およびケラチン抽出)
ケラチンは、多くの方法でプロセシングされ得、および/または単離され得る。好まし
くは、このプロセシングは、得られるタンパク質を水溶性にするのに十分である。適切な
プロセシング技術としては、プロセシングが、ペプチド結合の有意な加水分解なしにタン
パク質を水溶性にする限り、公知の酸化技術、還元技術、および/またはそれらの組み合
わせが挙げられる。
【0033】
多くの還元化学は、ケラチンのジスルフィド結合切断について公知である:Warde
ll,J.L.,「Preparation of Thiols」the Chemi
stry of the Thiol Group,Patai,S.(Editor)
,pp.163−353,John Wiley & Sons,New York,N
Y(1974)を参照のこと。これは、本明細書中で参考として援用される。HMWKは
、少なくとも2つの還元性抽出を使用して毛髪から抽出され得る(例えば、Crewth
er,W.G.,Fraser,R.D.B.,Lennox,F.G.,and Li
ndley,H.,「The Chemistry of Keratins」Adva
nces in Protein Chemistry,Anfinsen,C.B.,
Jr.,Anson,M.L.,Edsall,J.T.,およびRichards,F
.M.(Editors),Academic Press,New York,pp.
191−346(1995)に記載され、本明細書中に参考として援用される)。
【0034】
以下の方法は、コーティングを作製する際に使用するため、ケラチンをプロセシングす
るのに適している:
(−酸化/還元)
ケラチンを供給源物質(例えば、ヒト毛髪)として使用する好ましい実施形態において
、毛髪を、適切な酸化剤により酸化する。適切な酸化剤としては、過酸化水素、過酢酸、
過カルボン酸、過硫酸、二酸化塩素、ナトリウム過酸化物およびカルシウム過酸化物、過
ホウ酸塩ならびに次亜塩素酸塩が、挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。最も
好ましい酸化剤は、過酸化水素である。このオキシダントを、約35%までの濃度で、好
ましくは、約0.1%〜約10%の濃度で使用する。この酸化は好ましくは、還流温度で
生じる。
【0035】
好ましい実施形態において、角質をばらばらにして、ケラチン供給源物質を増やすため
に、毛髪は、約0.1%〜約10%の濃度の過酸化水素(H)を用いて処理される
。このプロセスはまた、幾つかのシスチン残基の分画を硫酸基に変換する。他の酸化反応
条件を一定に保持したままで、酸化時間を変えることにより、好ましくは、約0時間〜約
4時間で、酸化量を制御し得る。これらの条件としては、オキシダントの濃度および型、
温度、ならびに抽出培地とケラチン供給源物質との比が挙げられる。反応が完了した後、
酸化した毛髪を濾過して、好ましくは脱イオン水を用いてリンスする。この濾液を破棄し
、毛髪を乾燥させた。
【0036】
他の酸化の条件が一定に維持される場合、シスチンの硫酸残基への変換速度は、酸化に
使用された時間量に大まかに比例している。得られる酸化ケラチン固体中の残留シスチン
を、還元技術を使用して硫黄を含む他の部分に変換する。好ましくは、ジスルフィド架橋
されるシスチン基を、それ自体で有用であるか、または種々の化学技術を使用して改変さ
れ得るチオール基に変換する。
【0037】
酸化された毛髪を、好ましくは還元剤で処理する。適切な還元剤としては、チオグリコ
ール酸およびその塩、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオグリセロール、
チオ乳酸、グルタチオン、システイン、硫化ナトリウムならびに硫化水素ナトリウムが挙
げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい還元剤は、チオグリコール酸およ
びメルカプトエタノールであり、最も好ましくは、チオグリコール酸である。
【0038】
酸化した毛髪を、還元剤で処理するために、予め酸化した毛髪を、代表的には約10N
までの濃度、好ましくは、約0.1N〜1Nの濃度の還元剤;約7より大きいpH、好ま
しくは、pH9以上、最も好ましくは、pH9で;約25℃〜約80℃の温度、好ましく
は、約60℃の温度にて、好ましくは、約1時間〜約72時間かけて、最も好ましくは、
約24時間かけて懸濁する。この反応は、不活性雰囲気、好ましくは窒素下で生じる。こ
の液体分画を、公知の方法(例えば、濾過もしくはカニュレーションおよび/または遠心
分離が挙げられ、必ずしもこれらに限定はされず、好ましくは、不活性雰囲気下である)
を使用して、残りの固体から分離する。好ましい分離方法は、濾過である。一旦、この固
体を除去すると、可溶性ケラチンタンパク質は、水混和性非溶媒の添加またはスプレー乾
燥により、この溶液から分離される。水混和性非溶媒には、エタノール、メタノール、イ
ソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン等が挙げられるが、
必ずしもこれらに限定されず、この場合も不活性雰囲気下である。好ましい非溶媒は、エ
タノールである。沈殿物を、公知の技術を使用して、好ましくは、濾過および非溶媒のさ
らなるアリコートを使用するリンスによって、非溶媒から分離する。得られたケラチンタ
ンパク質を、公知の技術を使用して、好ましくは、室温にて一晩減圧下で乾燥させる。こ
のプロセスは、スルホン酸基およびチオール基の両方を有するケラチンを生じる。
【0039】
最も好ましい反応において、清浄な乾燥したヒト毛髪を、過酸化水素を用いて、加熱し
ながら、好ましくは還流で、ジスルフィド結合を切断するのに有効な期間、代表的には、
約180分間かけて処理する。この毛髪を、好ましくは、濾過によって液体から分離し、
溶液を廃棄した。毛髪を、好ましくは、大量の水でリンスし、風乾させた。次いで、この
乾燥させた酸化毛髪を、還元剤、好ましくは、pH9(水酸化アンモニウムで調整する)
の1M チオグリコール酸を用いてで処理し、この混合物を、不活性ガス、好ましくは、
窒素雰囲気下で、一定の時間、好ましくは24時間かけて、好ましくは約60℃まで加熱
する。還元性抽出後、この固体を、好ましくは、遠心分離により溶液から分離する。この
濾過した液体を、過剰のエタノール、好ましくは、約8倍量過剰のエタノールに、添加、
好ましくは滴下し、それによりケラチン沈殿物を形成させる。この沈殿したケラチンを、
濾過により分離し、減圧下で乾燥する。乳鉢および乳棒を使用して、ケラチンを微粉末に
挽く。
【0040】
(還元/還元抽出)
別の実施形態において、選択的にマトリックスケラチンを抽出するのに有効な第1の条
件下で、第1の還元剤を用いて毛髪を処理して、可溶性の還元マトリックスケラチン(L
MWK)を含む第1の溶液を生成し、そして毛髪固体(HMWK)を維持することにより
、第1の還元性抽出を行う。LMWKを本明細書中に記載の技術に供して、コーティング
を生成し得るが、本明細書中の技術における用途に好ましいタンパク質は、HMWKであ
り、これは、好ましくは、2回目の抽出の間に単離される。残りの毛髪固体および第1の
溶液を分離して、この残りの毛髪固体を、α−ケラチンを可溶化するのに有効な第2の条
件下で、可溶性の還元α−ケラチン(HMWK)および固体角質を含む第2の溶液を生成
して、2回目の抽出溶液に曝露する。
【0041】
適切な還元剤としては、この場合も、チオグリコール酸およびその塩、メルカプトエタ
ノール、ジチオスレイトール、チオグリセロール、チオ乳酸、グルタチオン、システイン
、硫化ナトリウムならびに水硫化ナトリウムが挙げられるが、必ずしもこれらに限定され
ない。好ましい還元剤は、チオグリコール酸およびメルカプトエタノールであり、最も好
ましくは、チオグリコール酸である。
【0042】
所望のタンパク質を、選択的に還元および抽出するために、毛髪(または他のタンパク
質源)を、約0.1M〜約10Mの濃度、好ましくは約1.0Mの還元剤に、懸濁する。
毛髪繊維を穏やかに膨張させて、pHを約9以上(好ましくは、pHを約9〜約10.5
)にする。従って、最初の還元は、約20℃〜約100℃の温度で、好ましくは、約25
℃で生じる。最初の還元を達成するのに必要とされる時間は、約8時間〜約36時間、最
も好ましくは、約24時間である。この反応は、不活性雰囲気、好ましくは窒素下で生じ
る。この液体分画を、公知の方法(例えば、濾過、カニュレーションおよび/または遠心
分離が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されず、好ましくは、不活性雰囲気下)を使
用して、残りの固体から分離する。好ましい分離方法は、濾過である。
【0043】
2回目の抽出を、適切な膨張剤、好ましくは、尿素および/または塩基(例えば、水酸
化アンモニウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を使用して行う。この2回目
の抽出のための最も好ましい膨張剤は、濃尿素である。2回目の抽出は、約1M〜約10
M尿素、好ましくは、約7M尿素で、少なくとも約1時間、好ましくは約1時間〜約72
時間、より好ましくは20時間以上、最も好ましくは約24時間の時間で生じる。2回目
の抽出は、室温で生じるが、約20℃〜約100℃の温度、好ましくは25℃で行われ得
る。液体分画を、公知の方法を使用して空のインタクトな角質から分離する。適切な方法
としては、濾過、カニュレーションおよび/または遠心分離が挙げられるが、必ずしもこ
れらに限定されず、好ましくは、不活性雰囲気下である。好ましい分離方法は濾過である

【0044】
一旦、角質を取り除くと、この水溶性ケラチンタンパク質を、さらなる使用のために溶
液中に保持し得、あるいはこれを、水混和性非溶媒への添加またはスプレー乾燥によって
、この溶液から単離し得る。水混和性非溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプ
ロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン等が挙げられるが、必ず
しもこれらに限定されず、この場合も不活性雰囲気下である。好ましい非溶媒は、エタノ
ールである。沈殿物を、公知の方法を使用し、好ましくは、濾過および非溶媒のさらなる
アリコートを使用するリンスによって、非溶媒から分離する。沈殿したタンパク質を、公
知の方法を使用し、好ましくは、室温にて一晩、減圧下で乾燥する。抽出された水溶性ケ
ラチンタンパク質(本明細書中において、集合的に「水溶性タンパク質」という)は、チ
オールまたはチオール基を含む。
【0045】
(コーティングプロセス)
(表面を洗浄する工程)
基材をコーティングする前に、任意の適切な手順を使用して、表面を洗浄する。適切な
手順の例は、無水溶媒および水中の連続した超音波処理である。適切な無水溶媒としては
、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、アセトン
またはテトラヒドロフランが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい無
水溶媒は、ジクロロメタンである。水は、好ましくは、脱イオン水であり、その後、乾燥
し、好ましくは風乾する。
【0046】
(結合領域を形成する工程)
洗浄後、移植片を、カップリング物質、好ましくは有機シランの溶液に浸す。表面コー
ティングにおけるシラン化合物の使用は、公知の工業プロセスである。Arkels B
.「Tailoring surfaces with silanes」.Chemt
ech 1977;766−778(本明細書中に、参考として援用される)。有機シラ
ンは、表面化学を保護し、変化させ得るだけでなく、カップリング剤として使用されて、
さらに別の化合物と基材の外側表面との結合を容易にさせ得る。
【0047】
種々の化学官能基を有する市販の有機シランには、多くの異なる型がある。有機シラン
は、好ましくは、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、アミン基、イソシアネート基お
よびカルボキシル基からなる群から選択される部分を含む有機成分を含む。好ましい有機
成分は、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基およびアミン基からなる群から選択される
部分を含む。さらに好ましい有機成分は、エポキシ基、メタクリレート基、アルコキシ基
、ビニル基およびアルキルアミン基からなる群から選択される。最も好ましい有機部分は
、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される。
【0048】
有機シランは、好ましくは、約1〜3個のハロゲンおよび約1〜3個のアルコキシ基か
らなる群から選択される置換基を含む。好ましいハロゲンは、塩素である。
【0049】
好ましい有機シランは、特に表面がチタンの場合、ビニルメチルジクロロシラン(Ge
lest Inc.,Tullytown,PA)である。有機シランは、有機溶媒中で
ある。有機溶媒は、実質的に、結合プロセスに負の影響を与えることなしに、溶液中の有
機シランを維持するのに有効な、任意の有機溶媒である。有機溶媒は、好ましくは、酸素
および/または窒素以外の元素を含む。適切な有機溶媒の例としては、アルカン、アルキ
レンクロライド、クロロホルム、キシレンおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、必
ずしもこれらに限定されない。好ましいアルカンはヘキサンであり、好ましいアルキレン
クロライドは、メチレンクロライドである。最も好ましい有機溶媒は、ヘキサンである。
有機溶媒中の有機シランのパーセンテージは、約1〜約10重量パーセンテージまで変動
し得、好ましくは、約1重量パーセントである。
【0050】
基材を、コーティングを形成するのに十分な時間、適切には約1〜約30分間、代表的
には約10分間、溶媒中に維持する。次いで、この基材を溶液から取り出し、大量の新た
な有機溶媒でリンスして、風乾させた。
【0051】
(生物活性領域を形成する工程)
生物活性領域を形成するために、上記のように得られたケラチン粉末を、適切な溶媒に
溶解する。還元/還元ケラチンについて、適切な溶媒は水である。酸化/還元ケラチンに
ついて、適切な溶媒は、塩基を含む水溶液を含む。適切な塩基としては、水酸化アンモニ
ウム、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限定さ
れない。好ましい塩基は、水酸化アンモニウムである。好ましい実施形態において、約1
5グラムのケラチン粉末を、約30mLの3N水酸化アンモニウムに溶解する。
【0052】
無水溶媒を加える。適切な無水溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピル
アルコール、ジメチルスルホキシド、アセトン、またはテトラヒドロフランが挙げられる
が、必ずしもこれらに限定されない。好ましい無水溶媒は、ジメチルスルホキシドである
。ケラチンおよび塩基の前記の重量および容積に、約270mLのジメチルスルホキシド
を加える。この混合物を、穏やかに加熱しながら、ケラチンが溶解するまで攪拌する。
【0053】
好ましくは、適切な触媒または開始剤を使用する。例えば、ビニル官能化シランカップ
リング剤を使用する場合、フリーラジカルを生成するために適切な開始剤または触媒を使
用する。そのような開始剤の例は、UV活性化された光開始剤(例えば、アントラキノン
−2−スルホン酸またはアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物(Ald
rich;Milwaukee,WI)である。前記の重量および容積に、約1.5グラ
ムのアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物を加える。得られる溶液を、
シランコーティング移植片に、これを完全に浸すように注ぐ。次いで、効果的なエネルギ
ー源(例えば、加熱ランプ、オートクレーブ、マイクロ波、またはUVランプ)を使用し
て、浸した基材のコーティングを硬化する。好ましいエネルギー源は、UVランプ(λ=
365nm、1.05amps)である。硬化は、コーティングを硬化するのに十分な時
間(代表的には、約1時間〜約24時間、好ましくは、約24時間)継続される。硬化後
、基材を溶液から取り出して、好ましくは、多量の脱イオン水を用いてリンスし、乾燥し
、好ましくは風乾する。
【0054】
当業者は、前記のパラメータ(例えば、重量、容積、および時間)が、移植片の表面領
域、使用される特定の結合材料および他の因子に依存して変化し得ることを認知する。
【0055】
本願は、以下の実施例(これは、単に説明であり、特許請求の範囲を特定の実施形態に
制限するものとして構成されるべきではない)を参照してよりよく理解される。以下の材
料と方法を、以下に記載する実施例において使用した:
(材料と方法)
(ケラチンの調製)
代表的な反応において、500gの清浄な乾燥したヒト毛髪を、12L丸底フラスコに
入れた。1重量パーセント/体積の過酸化水素8,350mLを加え、この反応物を加熱
して180分間還流した。この毛髪を、濾過により液体から分離し、この液体を廃棄した
。毛髪を多量の水でリンスして、風乾させた。100gの乾燥した、酸化した毛髪を、2
000ml丸底フラスコに入れた。pH9にて(水酸化アンモニウムで調節する)、10
00mLの1Mチオグリコール酸を加え、この混合物を窒素雰囲気下、24時間にわたっ
て60℃まで加熱した。還元抽出後、固体を遠心分離により液体から分離した。濾過した
液体を、8倍の容量過剰のエタノールに滴下し、それによってケラチンの沈殿を形成させ
た。形成したケラチンを濾過によって分離し、減圧下で乾燥した。ケラチンを乳鉢と乳棒
を使用して微粉末に挽いた。
【0056】
細胞応答に使用するために非常に制御され、かつ十分に特性化された表面を有するグリ
ットブラストチタン試験ディスクを、調製した。選択された材料は、医療等級で市販され
ている純粋なチタンである(C.P.Ti)。この材料を、大きなシート(約5フィート
×4フィート×0.050インチ、全てのサンプルセットについて金属同質性を確保する
ため)として、Timet(O’Fallon,MO,USA)から購入した。
【0057】
1フィート×1フィートシートを、元の大きな単一シートから切り取った。各ディスク
について、一貫した表面の仕上がりを確保するために、これらのシートにおいて表面調製
を行なった。各1フィート×1フィートシートを、#20グリット酸化アルミニウム(A
)粉末を粗い表面の仕上がりのために使用し、圧縮空気を用いた酸化アルミニウ
ムグリットブラストプロセスに供した;グリッドブラストは、Southwest Re
search Institute(San Antonio,TX,USA)によって
行なわれた。
【0058】
表面の仕上がり操作の品質制御を行い、これを、表面の粗さの均一性測定により評価し
た。ダイヤモンド針接触側面計を使用して、表面の粗さを、各1フィート×1フィートの
プレート上の異なる10個の位置で測定した。この粗さ測定を、あらゆる方向で行なった
。平均Rは、9.56μmであり、標準偏差は1.63μmであった。
【0059】
直径14.75mmおよび厚さ0.80mmを有するディスクを、細胞アッセイのため
に調製した。ディスクを、洗浄剤溶液で3回洗浄し、各洗浄の間にDI水で2回リンスし
た。最後のリンスの後、エタノールをディスクに注ぎ、過剰な水を除去した。ディスクを
風乾した。
【0060】
(チタンディスクのコーティング)
代表的な手順において、チタンディスクを、ジクロロメタンおよび脱イオン水中での連
続した超音波処理により洗浄した後、風乾した。ディスクを、ヘキサン中1重量%のビニ
ルメチルジクロロシラン(Gelest Inc.,Tullytown,PA)溶液に
10分間浸した。各ディスクを、個別に溶液から取り出して、多量の新たなヘキサンでリ
ンスし、風乾させた。
【0061】
代表的なケラチンコーティング工程において、15グラムのケラチン粉末を、30mL
の3N水酸化アンモニウムに溶解した。270mLのジメチルスルホキシドを加えて、こ
の混合物を穏やかに加熱しながら、ケラチンが溶解するまで攪拌した。1.5グラムのア
ントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩一水和物(Aldrich;Milwauk
ee,WI)を加えて、この溶液を、シランコーティングされたチタンディスクサンプル
に注ぎ、ディスクサンプルを、浅いガラス皿に完全に浸した。このガラス皿を、UVラン
プ(λ=365nm、1.05amps)下に24時間、置いた。UV曝露後、各ディス
クを溶液から取り出して、多量の脱イオン水でリンスし、風乾させた。
【0062】
(水接触角)
水平な表面に1滴の超純水100μLを置くことによって、接触角を、光学コンパレー
タ上で測定した。測定値を得る前に、界面エネルギーを30秒間平衡化させた。
【0063】
(X線光電子分光法(XPS))
Al単色源(1486.6eVにてAl Kα放射)を備える物理電子工学PHI57
00ESCAシステムを使用して、XPSデータを得た。分析の間、XPS超高真空チャ
ンバ中の基本圧力は、2×10−10トールであった。0.1eVの工程サイズおよび1
1.75eVのパスエネルギーを用いて、高解像スキャンを得た。シランおよびケラチン
コーティングの存在を、これらの各コーティングのみに存在する元素の原子濃度を探知す
ることによってモニターした。シランコーティングには、シリコンを使用し、ケラチンコ
ーティングには、窒素を使用した。硫黄がまた、ケラチン中に存在し、XPSにより検出
されるが、硫黄のシグナルとノイズの比が、ほぼ1.5であり;それゆえ、硫黄シグナル
について計算される原子の濃度は、エラーバーと同じオーダーにあったので、本研究では
硫黄を使用しなかった。
【0064】
XPSはまた、フィルム厚さを測定するために使用した。清浄な基材のシグナルが公知
である場合、フィルムを上に有するこの基材由来のXPSシグナルは、以下の標準減衰式
を使用して、計算され得る:
N=N・exp[−t/(λ・sinθ)]
ここで、Nは、フィルムを上に有する基材のXPSシグナル(ピーク下の領域)であり、
は、清浄な基材のXPSシグナルであり、tは、フィルムの厚さであり、λは、フィ
ルム中の光電子の平均自由光路(本研究において、20Åであると想定される)であり、
θは、XPS検出器と表面の間の角度であり、この場合、45°に等しい。C.S.Fa
dley,Progress in Surface Science 1984;16
:275−388(本明細書中で参考として援用される)。
【0065】
(骨芽細胞培養アッセイ)
α−最小基本培地(α−MEM)をGibco BRL(Grand Island,
NY,USA)から、胎児ウシ血清(FBS)をSummit Biotechnolo
gy(Fort Collins,CO,USA)から購入した。ホルマリンをElec
tron Microscopy Sciences(Fort Washington
,PA,USA)から得た。全ての他の試薬を、Sigma Chemical Co.
(St.Louis,MO,USA)から購入した。
【0066】
骨形成タンパク質2(BMP−2)プロモータにより駆動された2T3細胞株は、トラ
ンスジェニックマウスから単離され、クローン化されている。Ghosh−Choudh
ury N,Windle JJ,Koop BA,Harris MA,Guerre
ro,DL,Wozney JM,Mundy GR,およびHarris SE.「I
mmortalized murine osteoblasts derived f
rom BMP2−T−anigen expressing transgenic
mice」Endocrinology 1996;137:331−339(本明細書
中に参考として援用される)。
【0067】
これらの細胞は、インビトロで骨マトリックス形成を起こす。2T3細胞を、1群あた
り1プレートの12−ウェルプレートにおいて、各チタンディスク上にプレートした。1
0%FBSで補充したα−MEMを用いて、細胞が90%コンフルーエンスに達するまで
(約5日)培養した。培地を、1日おきに変えた。一旦、細胞がコンフルーエンスに達す
ると、培地を、処理群について5%FBS、100μg/mLアスコルビン酸(AsA)
および5mM β−グリセロリン酸(β−GP)含有α−MEMに変え、コントロール群
についてAsAおよびβGP無しの5%FBSα−MEMに変えた。この培地を、3日お
きに変えて、処理期間の最終日である14日までに新たな試薬を加えた。細胞を37℃、
5%COで培養した。
【0068】
(Von Kossa染色)
Von Kossa細胞染色を、以前に出版された手順から改変した。Beresfo
rd JN,Graves SE,およびSmoothy CA、「Formation
of mineralized nodules by bone derived
cells in vitro:a model of bone formation
?」。Am.J.Med.Genet.1993;45:163−78。
【0069】
2T3細胞を、チタンディスク上に固定するために、最初に細胞を、PBS出洗浄して
、10%リン酸緩衝ホルマリン中で10分間固定した。このホルマリン溶液を吸引し、細
胞を、脱イオン水(dHO)でリンスした。新たな2%硝酸銀(AgNO)を、細胞
に加え、次いで、細胞を有するチタンディスクを、10分間直射日光下に置いた。10分
後、AgNOを取り除いて、2T3細胞を、dHOの安定な気流下でリンスした。5
%チオ硫酸ナトリウム(Na)溶液を、細胞に3分間にわたって添加した。N
を取り除いて、細胞をdHOで再びリンスした。以下のエタノール(Et
OH)シリーズを、細胞に適用した:30秒間の95%EtOH、もう一度これを繰り返
した後、各30秒間の100%EtOH適用を2回行なう。次いで、細胞を風乾させた。
【0070】
(走査型電子顕微鏡検査)
表面形態学の画像を得るために、細胞を有するチタンディスクを、10秒間スパッタコ
ータ−で、金/パラジウム(Au/Pd)コーティングした。チタン表面の画像を、Am
ray走査型電子顕微鏡(SEM)(Amray,Bedford,MA,USA)上に
、15kVにて得た。画像を、3つの倍率:100×、500×および1,000×
で得た。
【0071】
(統計的方法)
示される場合、サンプル群間の違いを、不均等分散で生徒の両側スチューデントt−検
定を使用して決定した。統計的有意差を、0.05未満のp値に設定した。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
本研究において、フリーラジカル付加化学を使用して、ケラチンを、コーティングされ
たガラスおよびチタン基材上に移植するために、ビニル官能化シランカップリング剤を使
用した。UV活性化光開始剤(アントラキノン−2−スルホン酸)を、フリーラジカル生
成のために使用したが、別の触媒による熱開始反応もまた、使用され得る。このプロセス
の最初の工程において、基材の優れたコーティングを、シランのヘキサン溶液に浸漬する
ことによって達成した。図1に示されるように、チタンディスクの水接触角において得ら
れた増加は、平均して38°だった。処理群としては、光開始剤(図1において「cat
.(触媒)」と示される)の存在下、および非存在下の両方において、シランカップリン
グを有するケラチンコーティングおよびシランカップリングを有さないケラチンコーティ
ングの種々の組み合わせが挙げられる。これは、2工程コーティングアプローチの有効性
を確かめるために行なわれた。全てのサンプル群は、コントロールチタン群の接触角(p
≦0.05の統計的有意差)と異なる接触角を生じたが、シランコーティングの全処理後
のケラチンの共有結合接合により、非処理のコントロールと比べて、接触角の最も効果的
な減少を生じた。完全に処理したチタンディスクサンプルは、7.6°の平均接触角を有
した。ガラス基材についての結果は、非処理のコントロールと完全に処理されたサンプル
との間の接触角の16.5°の減少と同様である。ケラチン処理されたガラスは、9.0
°の平均接触角を有した。これらのデータを、図2に示す。一旦、チタンディスクおよび
ガラス顕微鏡スライドの両方が、コーティングされ得ることが決定されると、チタンディ
スクのみを、さらなる評価に使用した。
【0073】
前に述べたように、チタンディスクを、シランのヘキサン溶液に浸漬することによって
、首尾よいコーティングを得た。非処理のチタンディスクおよびシランコーティングされ
たチタンディスク由来のXPS Si2pシグナルを、図3Aに示す。約20%の原子濃
度に相当するコーティングされたディスク由来のSiシグナルは、非処理のディスクの3
%未満の原子濃度と比べると、明かに、シランコーティングの存在を示している。非処理
のディスク上の少量のSiは、おそらく表面汚染のためであった。ケラチンの添加により
、約3%(非処理ディスクにおけるバックグランドレベル)から8.5%までの窒素原子
濃度が増加した。図3Bは、非処理チタンディスク由来の代表的なN1s XPSシグナ
ルならびにシラン、触媒およびケラチンでコーティングされたサンプルの代表的なN1s
XPSシグナルを示す。異なる処理群において測定されたSiおよびNの原子濃度を、
図4に示す。これら2つの元素の濃度は、有機シランおよびケラチンの存在と非常によく
相関していた。
【0074】
シランコーティングにおける触媒およびケラチンの添加により、Siの原子濃度が減少
した。これは、異なったさらなるコーティングによるシリコンシグナルの減衰に起因する
。チタンXPSシグナルを、上記の減衰式に使用して、全フィルムの厚さを計算した。結
果を、図5に示す。シラン+「触媒」またはケラチンを有するフィルムの厚さの変化は、
おそらく、シランフィルム自体の厚さの変化のためである。それにもかかわらず、触媒+
ケラチンフィルムおよびケラチンのみのフィルムから、シランコーティング存在下で、ケ
ラチンフィルムはより頑丈であることが明らかである。
【0075】
シランフィルムの変化をなくして、ケラチンコーティングの厚さをさらに正確に決定す
るために、基材としてシランを処理して、シランコーティングされたディスク由来のシリ
コンシグナルを使用した減衰式を使用して、シランフィルム表面のケラチンコーティング
の厚さを計算した。シランのみでコーティングされたディスク由来のSi2p XPSシ
グナルを、この場合において、清浄な基材のシグナルとして使用した。幾つかの異なるサ
ンプルの結果を、図5の括弧内に示す。このデータは、ケラチンコーティングの平均の厚
さが、約8.5Åであることを示す。
【0076】
ケラチンコーティングされたチタンディスク上の骨芽細胞の分化および石灰化を、ディ
スク表面のvon Kossa分析によって実証した。小結節形成が、インビトロでの石
灰化に重要な工程であると考えられる。
【0077】
100μg/mlアスコルビン酸および5mM β−グリセロリン酸の存在(+)下ま
たは非存在(−)下で、細胞を、5%FBSを含むα−MEM中で培養した。AsAおよ
びβ−GP無し(−)のvon Kossa分析により実証されたように(パネルAおよ
びC)、骨芽細胞の分化および石灰化は、より小さく僅かな小結節を示した。2週間後、
2T3細胞は、100μg/ml AsAおよび5mM β−GPの存在(+)下で、移
植片表面上に大きな小結節を石灰化することが観察された(パネルBおよびD)。画像A
およびBは、100×倍率(スケールバー=100μm)で得られ、画像CおよびDは、
1,000×倍率(スケールバー=10μm)で得られた。
【0078】
インビトロでの小結節の石灰化は、インビボで生成される線維性骨に似ているように見
える。2週間後、2T3細胞は、AsAおよびβ−GPを有する、または有さない移植片
表面上の培養において、石灰化することが観察された。2週目におけるAsAおよびβ−
GPなしの細胞のvon Kossa染色は、より小さくわずかな小結節を示した(図6
Aおよび6C)。対照的に、AsAおよびβ−GPで処理したディスクには、より多くの
大きな小結節が存在した(図6Bおよび6D)。コラーゲンコーティング基材上の2T3
骨芽細胞における小結節形成を誘導するAsAおよびβ−GPの能力は、以前に報告され
ている。本研究において、本発明者らは、ケラチンコーティング基材について類似の結果
を見出し、従って、これは、生体適合性を示す。
【0079】
チタン基材上にケラチンコーティングを適用するための2工程の浸漬プロセスは、それ
ぞれ水接触角およびXPSスペクトルデータにより実証されるように、親水性かつ頑強な
フィルムを生じた。このプロセスは、ケラチンが表面に共有結合するために、より生体安
定なコーティングを生じるはずである。このコーティングプロセスは、シランおよびケラ
チンの両方の非常に薄い層を生じ、表面の粗いチタン移植片表面への細胞の接着を促進す
るために、移植片の製造業者によりしばしば使用される表面形態学と干渉しないと予測さ
れる。2T3骨芽細胞アッセイは、コーティングが、接着、増殖および分化を促進したこ
とを示した。これらの細胞の、骨マトリックスを生成する能力は、ケラチンコーティング
骨伝導性特性を示す。さらなる研究において、本発明者らは、これらのケラチンコーティ
ングが骨の増殖速度を加速し得ることを示すことを意図している。
【0080】
当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記の本発明に対して多く
の改変がなされ得ることを理解する。本明細書中に記載される実施形態は、例示のみを意
味し、添付の特許請求の範囲において規定される本発明を制限するものとして理解される
べきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11233(P2012−11233A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−227392(P2011−227392)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2004−524789(P2004−524789)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(503345514)ケラプラスト テクノロジーズ, リミテッド (3)
【Fターム(参考)】