説明

ケラチン繊維の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの損失を予防するための薬剤としての4−アミノピペリジン誘導体の使用

【課題】脱毛症を排除又は低減させることを可能にする組成物、特に毛髪の成長を誘導又は刺激し、かつ脱毛を減少させることを可能にする組成物の提供。
【解決手段】ヒトケラチン繊維の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの損失を予防するため、並びに/あるいはそれらの密度を増加させるための薬剤としての、下記式(I):


[式中、− Alk1及びAlk2は、直鎖状の飽和又は不飽和C2〜C10、又は分枝状の飽和又は不飽和C3〜C10アルキレン基;− Ph1及びPh2は、フェニル基を意味する]の4−アミノピペリジン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維の成長を誘導及び/又は刺激すること、並びに/あるいはそれらの損失を予防することを目的とする、局所適用のための、ヒトケラチン繊維用ケア又はメークアップ組成物における特定の式(I)の4−アミノピペリジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、ケラチン繊維の成長を刺激及び/又はそれらの損失を予防することを目的とする、美容処理方法にも関する。
【0002】
さらに特に、本発明は、毛髪又は睫毛の密度を増加及び/又はそれらの外観を高めることを目的とする、毛髪又は睫毛用ケア又はメークアップ組成物における特定の式(I)の4−アミノピペリジン誘導体の有効量の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
毛髪の成長及び毛髪の再生は、毛包の活性及びそれらのマトリックス環境により主に決定される。それらの活性は周期的であり、本質的には、3つの期、すなわちアナゲン期(anagenic phase)、カタゲン期(catagenic phase)、及びテロゲン期(telogenic phase)を含む。
【0004】
アナゲン期(活性期又は成長期)は、数年間続き、その間に毛髪が伸長するが、それに続いて、非常に短く一過性のカタゲン期が数週間続く。この期の間に、毛髪は変化し、毛包は退行し、真皮中のその埋め込み(implantation)はどんどん高くなるようである。
【0005】
最終期又はテロゲン期は、数ヶ月続くが、これは、毛包の休止期に相当し、最後には毛髪が抜け落ちる。この休止期の最後に、新たな毛包が適所で再生され、別の周期が再度始まる。
【0006】
従って、頭髪(head of hair)は、常に再生しており、頭髪を構成するおよそ150,000本の毛髪のうち、およそ10%が休息期であり、数ヶ月以内に抜け変わるだろう。
【0007】
自然な脱毛は、平均して、通常の生理状態で一日当たり数百本の毛髪で生じると概算できる。この恒常的な身体の再生方法は、加齢の間に自然に変化し、毛髪はより細くなり、それらの周期はより短くなる。
【0008】
成人では、皮膚の脈管系が完成しており、もはや変化しないが、毛包は別であり、各毛髪周期で著しく変化する。具体的には、毛包は、豊富に神経支配され、高度に血管新生された皮膚構造である。毛包における毛細血管循環の発達現象は、血管形成(angiogenesis)として知られる。各アナゲン期の開始においては、毛包周囲の毛細血管網を再発達させるために、血管形成の高い活性化を発達させることが必要である。この毛細血管網の退行、及び真皮乳頭の血管の消失は、期の変化及びカタゲン期への移行と関連して進む。このステージでは、毛細血管は崩壊及び消失する。
【0009】
平行して、脱毛領域では、毛包周囲の線維症が確立され、周期を重ねるにつれて、毛包サイズは減少し、毛球の特異的な血管新生(vascularization)は徐々に減少する。
【0010】
アナゲン期の間に観察される血管形成現象は、多くの栄養素、サイトカイン、あるいは血流により提供されるか、又は、特に真皮乳頭の線維芽細胞若しくは毛球のケラチノサイトにより、局所的に産生される他の生物学的に活性な分子によって決まる。これらの栄養素のうち、内皮細胞成長因子(血管内皮細胞増殖因子(VEGF)としても知られる)を挙げてよい。この因子は血管形成に必須であり、血管の透過性を増大させる。複数の研究により、この因子の発現は、毛髪周期のアナゲン期の間に増加することが示された。従って、この因子は、毛包周囲、特に毛球及び真皮乳頭の基部における、機能的な毛細血管の血管新生の維持、及び毛髪の良好な成長に必要な栄養の供給に寄与する。
【0011】
従って、毛包周囲の毛細血管循環は、この毛包の成長に必要な因子及び栄養を供給することにより、毛髪の成長プロセスにおいて基本的な役割を果たす。
【0012】
炎症性の成分による頭皮のある種の皮膚病、例えば乾癬又は脂漏性の皮膚炎において、脱毛は大いに強調され、毛包の再生周期が非常に崩壊されている可能性がある。
【0013】
他の原因が、結果として、実質的な、一時的又は永久的脱毛をもたらすかもしれない。これは、妊娠の終局段階(産後)、脱栄養若しくは栄養失調状態の間、生理学的ストレス状態の間、食事のアンバランス状態の間、又は他に、更年期の間若しくは更年期の最後の段階においてみられ得る虚弱状態若しくはホルモンの機能障害状態の間に、脱毛又は毛髪の機能障害(impairment)を伴い得る。これはまた、季節的な現象と関連する脱毛又は毛髪の機能障害も伴い得る。
【0014】
これはまた、脱毛症の問題でもあり得、脱毛症は、基本的に、毛髪の再生の障害に起因しており、第一段階において、毛髪の質の低下(detriment)、ついでその量の低下へと周期の頻度の加速をもたらす。ついで、これは、毛包周囲のコラーゲンマトリックス及び外側の連結する鞘の進行性の密集化(thickening)に起因する毛球の孤立と共に、頭髪の緩慢な窮乏化、及び毛髪の緩慢な減少をもたらす。従って、血管再生は、周期を重ねるごとにより困難なものとなる。連続的な成長周期は、結果としてますます細く、ますます短い毛髪をもたらし、無着色の柔らかい毛髪へと次第に変形する。ある領域、特に男性の側頭葉又は前頭葉が優先的に影響を受け、頭頂のびまん性脱毛症(diffuse alopecia)が女性で観察される。
【0015】
上述の毛包周囲の毛細血管循環の重要な役割により、後者のいずれの欠陥も、結果として、毛髪の成長に必要な栄養及び気体(特に、酸素)の供給の減少をもたらし、毛髪の成長の障害及び脱毛症の緩慢な確立をもたらす。
【0016】
「脱毛症」という用語はまた、最終的な結果が、永久的な、部分的又は全体的脱毛である毛包の病気のすべてのファミリーを包含する。これは、より詳細には、男性ホルモン性脱毛症(androgenic alopecia)と呼ばれる。多くの症例において、早期の脱毛は、遺伝的にその傾向がある個人で生じ;従って、これは、男性型−経時性−遺伝性脱毛症(androchronogenetic alopecia)と呼ばれる。この形態の脱毛症は、特に男性に影響を及ぼす。
【0017】
炎症性の成分による頭皮のある種の皮膚病、例えば乾癬又は脂漏性の皮膚炎においては、脱毛が大いに強調され得るか、又は結果として非常に乱された毛包周期をもたらし得る。
【0018】
一般的に、血管形成を活性化するか、又はその退行を妨害することにより、あるいは他に毛細血管に作用してその収縮(constriction)を制限することのいずれかにより、毛包中の血液供給の増加をもたらすいかなる因子も、この同一の毛包の良好な成長に必要なエネルギー供給に対して有利な効果を有する。
【特許文献1】米国特許出願第2004/0006011号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
脱毛症を排除又は低減させることを可能にする組成物、特に毛髪の成長を誘導又は刺激し、かつ脱毛を減少させることを可能にする組成物は、化粧品又は医薬品業界で長年に渡り求められてきた。探索された経路の1つは、実際には、毛包の周りの血管新生の維持である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本出願人は、驚くべきことに、以下に定義する特定の式(I)の4−アミノピペリジン誘導体が、とりわけ、線維芽細胞収縮度に対して特異的な局所活性を示すことを発見した。線維芽細胞の張力、ひいては結合組織の静止(等尺性)張力に対するそれらの効果により、特に各成長周期後の毛包の再埋め込みプロセスにおいて、毛包の血管新生に対する有利な効果が保証される。これらの4−アミノピペリジン誘導体は、驚くべきことに、ヒトケラチン繊維の密度の向上を促進する活性を有する。従って、これらの化合物は、ヒト毛髪の成長に対して有利な効果を有するが、さらに、睫毛及びある種のヒト体毛の成長に対しても有利な効果を有する。
【0021】
従って、本発明の対象は、ヒトケラチン繊維、特に睫毛及び毛髪の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの損失を予防するため、並びに/あるいはそれらの密度を増加させるための薬剤としての、特定の式(I)の4−アミノピペリジン誘導体の使用、特に美容的使用である。
【0022】
「ケラチン繊維の密度、特に毛髪密度を増加させる」という表現は、頭皮などの前記繊維が出現する皮膚1 cm2当たりのケラチン繊維数、特に毛髪数の増加を意味することを目的としている。
【0023】
従って、本発明の対象は、ヒトケラチン繊維、特に睫毛及び毛髪の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの損失を予防するため、並びに/あるいはそれらの密度を増加させるための薬剤としての、下記式(I):
【0024】
【化1】

[式中、
− Alk1及びAlk2は、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C10若しくは不飽和C2〜C10、又は分枝状の飽和若しくは不飽和C3〜C10アルキレン基(二価の基)を意味し;
− Ph1及びPh2は、互いに独立に、フェニル基を意味し、前記フェニル基は、−F、−CF3、−R1、−OR1、及び−NR1R2から選択される、同一又は異なっていてもよい1つ以上の基で任意選択で置換されていてもよく;
− R1、R2、及びR3は、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C7若しくは不飽和C2〜C7、又は分枝状若しくは環状のC3〜C7アルキル基を意味する]
の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1種の有効量の使用、特に美容的使用である。
【0025】
式(I)において、アルキル基は、必要に応じて、以下の基から特に選択され得る:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル。同様に、二価のアルキレン基は、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、tert−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、及びデシレン基から選択され得る。
【0026】
式(I)の化合物のために、Ph1及びPh2が、(非置換)フェニル基を意味するものが好ましい。
【0027】
好ましくは、前記式(I)の式中、
− Alk1及びAlk2が、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C10又は不飽和C2〜C10アルキレン基を意味し;
− Ph1及びPh2が、フェニル基を意味し;
− R3が、直鎖状の飽和C1〜C7アルキル基を意味する、
化合物が使用される。
【0028】
より好ましくは、前記式(I)の式中、
− Alk1及びAlk2が、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C4又は不飽和C2〜C4アルキレン基を意味し;
− Ph1及びPh2が、フェニル基を意味し;
− R3が、直鎖状の飽和C1〜C3アルキル基を意味する、
化合物が使用される。
【0029】
本発明に記載の化合物の許容可能な塩には、前記化合物の一般的な非毒性の塩、例えば、有機又は無機酸から形成されるものなどが含まれる。一例として、無機酸、例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、又はホウ酸の塩を挙げてよい。さらに、1つ以上のカルボン酸基、スルホン酸基、又はリン酸基を含んでいてよい、有機酸の塩も挙げてよい。それらは、直鎖状、分枝状、又は環状の脂肪酸、あるいはまた芳香族酸であってよい。これらの酸には、O及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子が、例えばヒドロキシル基の形態などで含まれていてもよい。特に、プロピオン酸、酢酸、テレフタル酸、クエン酸、及び酒石酸を挙げてよい。
【0030】
好ましい塩は、塩酸、硫酸、酢酸、酒石酸、又はクエン酸から得られるものである。
【0031】
本発明に記載の化合物の許容可能な溶媒和物には、一般的な溶媒和物、例えば、前記化合物の製造の最終工程の間に、溶媒の存在により形成されるものなどが含まれる。一例として、水、又は直鎖状若しくは分枝状アルコール、例えば、エタノール若しくはイソプロパノールなどの存在に起因する溶媒和物を挙げてよい。
【0032】
式(I)の化合物のうち、下記化合物1〜3:
【0033】
【表1】

を挙げてよい。
【0034】
化合物3は、医薬組成物中の細胞接着モジュレーターとして、米国特許出願第2004/0006011号に記載されている。
【0035】
化合物1は、CAS番号が394653−86−2である公知化合物である。
【0036】
一般に、式(I)の化合物は、特に、水/エタノール混合物中、無機塩基(例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムなど)の存在下、特に40〜100℃の温度で、1,1−ジメチル−4−オキソピペリジニウムヨード(1,1−dimethyl−4−oxopiperidinium iodide;A)をアルキルアミン(B)でアルキル化し、例えばシリカゲルクロマトグラフィーなどにより、単離され、ついで精製されるピペリドン(C)を形成することにより、下記スキームI及びIIに従って製造できる。
【0037】
ついで、特に酢酸(1モル当量)及びNaBH(OAc)3(sodium triacetoxy borohydride;トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)(2モル当量)の存在下、特にジクロロメタン中、特に常温(25℃)で、先に得られたピペリドン(C)でイオドリン化合物(D)を還元的アルキル化する。
【0038】
当業者に公知の技術に従った、前記反応混合物の処理により、化合物(E)を得る。
【0039】
ついで、好ましくは1〜2モル当量で、特に有機塩基(例えば、ピリジン)(1〜2モル当量)の存在下、20〜80℃の温度で、1〜12時間、得られた化合物(Ia)を酸塩化物Ph2−Alk2−COClと反応させることができる。
【0040】
【化2】

【0041】
化合物1〜3を、上述の合成方法に従って合成した。
【0042】
本発明はまた、ケラチン繊維の損失を低減及び/又はそれらの密度を増加させるための、ヒトケラチン繊維用美容ケア及び/又はメークアップ組成物における、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの美容的使用に関する。
【0043】
本発明はまた、ケラチン繊維の成長を誘導及び/又は刺激すること、並びに/あるいはそれらの損失を予防すること、並びに/あるいはそれらの密度を増加させることを目的とする、ヒトケラチン繊維用ケア及び/又は処理組成物を調製するための、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの使用にも関する。
【0044】
本発明により適用されるヒトケラチン繊維は、特に、毛髪、眉毛、睫毛、顎鬚、口髭、及び陰毛である。とりわけ、ヒト毛髪及び/又は睫毛に本発明を適用する。
【0045】
従って、本発明はまた、脱毛を処理(低減)するため、及び/又は毛髪密度を増加させるため、及び/又は男性型−経時性−遺伝性脱毛症を治療するための、ヒト用美容ヘアケア組成物における、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの美容的使用にも関する。
【0046】
本発明の対象はまた、ヒト毛髪の成長を誘導及び/又は刺激すること、並びに/あるいはその損失を予防すること、並びに/あるいはその密度を増加させること、並びに/あるいは男性型脱毛症を治療することを目的とする毛髪用組成物を調製するための、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの使用でもある。特に、この組成物は、とりわけ男性において、頭髪を良好な状態に維持すること、及び/又は自然な脱毛に対抗することを可能にする。
【0047】
本発明はまた、特に男性型脱毛症における、天然起源の脱毛症を治療するための、ヒト用美容ヘアケア組成物における、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの美容的使用にも関する。
【0048】
本発明はまた、特に男性型脱毛症における、天然起源の脱毛症の治療に使用するためのヘアケア組成物を調製するための、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの使用にも関する。
【0049】
本発明の対象また、睫毛の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの密度を増加させるための、ヒトの睫毛用美容ケア及び/又はメークアップ組成物における、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの使用にも関し、かつ睫毛の成長を誘導及び/又は刺激すること、並びに/あるいはそれらの密度を増加させることを目的とする、ヒトの睫毛用ケア及び/又は処理組成物を調製するための、式(I)の化合物、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの使用にも関する。従って、この組成物は、睫毛を良好な状態に維持すること、並びに/あるいはそれらの状態及び/又はそれらの外観を高めることを可能にする。
【0050】
本発明の対象はまた、ヒトにおける、特に毛包の、皮膚毛細血管循環又は血管新生の低減と関連する疾患の治療に使用するための組成物を製造するための、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又は酸との、その塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの使用にも関する。
【0051】
式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の有効量は、所望の結果(特に、すなわち、ケラチン繊維の密度を増加させるか、又はそれらの成長を促進するため)を得るために必要とされる量に相当する。従って、当業者ならば、用いられるアミンの性質、それが適用される個体、及びこの適用の期間によって決まる、この有効量を評価することができる。
【0052】
以下の記載において、特記のない限り、組成物の様々な成分の量は、組成物の総重量に対する重量パーセンテージとして示される。
【0053】
規模を示すと(give an order of magnitude)、本発明に従って、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物を、組成物の総重量の10−3〜10%を示す量、好ましくは組成物の総量の10−2〜5%を示す量、例えば0.5〜2%で用いることができる。
【0054】
本発明の組成物は、美容的又は医薬的(特に、皮膚用医薬)使用のためであってよい。好ましくは、本発明の組成物は、美容的使用のためである。従って、組成物には、頭皮及び眼瞼を含む皮膚、並びに毛髪及び睫毛などのケラチン繊維に適用できる、非毒性の生理学的に許容可能な媒体が含まれるべきである。本発明の目的のために、「美容」という用語は、好ましい外観、香り、及び感覚を有する組成物を意味することを目的とする。
【0055】
式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、及び溶媒和物は、皮膚又はケラチン繊維に摂取、注入、又は適用されるべき(処理されるべき皮膚又は繊維のいずれの領域に対しても)組成物で使用できる。
【0056】
式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、及び溶媒和物は、一日当たり0.1〜300 mg、5〜10 mg/dの量で、経口的に用いることができる。
【0057】
本発明の好ましい組成物は、美容的使用のため、特に皮膚及びケラチン繊維への、とりわけ頭皮、毛髪、及び睫毛への局所適用のための組成物である。
【0058】
この組成物は、使用方法に適した、公知のガレニック(galenic)形態のいずれであってもよい。
【0059】
頭皮を含む、皮膚及びケラチン繊維への局所適用のために、組成物は、水性、アルコール性、水性−アルコール性、若しくは油性の溶液又は懸濁液、水相に脂肪相(O/W)を分散させることによって得られるか、又はその逆(W/O)によって得られる、実質的に流動的な、特に液体又は半液体の粘稠度を有するエマルション又はディスパーション、固体のディスパーション又は(O/W)若しくは(W/O)のエマルション、実質的に流動的又は固体の水性、水性−アルコール性、又は油性のゲル、そのまま使用されるか、又は生理学的に許容可能な媒体に組み込まれる、ルース又は圧縮粉末、あるいは他に、イオン性及び/又は非イオン性タイプのマイクロカプセル、微粒子、又は小胞状のディスパーションの形態であってよい。
【0060】
加圧プロペラント(pressurized propellant)を含む、泡の形態、あるいはまたスプレー又はエアゾールの形態の組成物が意図されることも可能である。
【0061】
従って、組成物は、ローション、セラム、ミルク、O/W若しくはW/Oクリーム、ゲル、膏薬(salve)、オイントメント、粉末、バルム、パッチ、含浸パッド、ソープ、バー、又はムースの形態であってよい。
【0062】
特に、頭皮又は毛髪に適用されるべき組成物は、ヘアケアローション、例えば、毎日若しくは1週間に2回適用するためのヘアケアローション、シャンプー若しくはヘアコンディショナー、特に、1週間に2回若しくは1週間に1回適用するためのシャンプー若しくはヘアコンディショナー、毎日適用のための液体若しくは固体の頭皮クレンジングソープ、ヘアスタイルを整える製品(ラッカー、ヘアセッティング製品、若しくはスタイリングジェル)、トリートメントマスク、フォーミングゲル、又は毛髪のクレンジングクリームの形態であってよい。ブラシ又はコームで適用される、毛髪染料又はマスカラの形態であってもよい。
【0063】
さらに、睫毛又は体毛への適用のために、本発明により適用される組成物は、睫毛、あるいはまた顎鬚又は口髭にブラシで適用されるべき、着色された又は無着色のマスカラの形態であってよい。
【0064】
注入による使用のための組成物のために、組成物は、水性ローション又は油性懸濁液の形態、例えば、セラムの形態などであってよい。経口的な使用のために、組成物は、カプセル、顆粒、飲用シロップ、又は錠剤の形態であってよい。
【0065】
特定の実施態様によれば、本発明の組成物は、ヘアクリーム若しくはヘアローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、又は毛髪用若しくは睫毛用のマスカラの形態である。
【0066】
本発明の組成物の生理学的媒体の様々な成分の量は、検討中の当分野において一般的に使用されている量である。さらに、これらの組成物は常法によって調製される。
【0067】
組成物がエマルションである場合には、脂肪相の割合は、組成物の総重量に対して、2〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲であってよい。水相は、100重量%を得るために、脂肪相及び1種以上の化合物(I)の含有量、並びに任意のさらなる成分の含有量の関数として調整される。実際には、水相は、5〜99.9重量%を示す。
【0068】
脂肪相には、一般的に油として知られる、常温(25℃)及び大気圧(760 mmHg)で液体である脂肪性又は油性の化合物が含まれてよい。これらの油は、相互に、適合性又は非適合性であってよく、かつ肉眼的に均一な液体脂肪相、又は2相若しくは3相系を形成してよい。これらの油に加えて、脂肪相には、ワックス、ガム、親油性ポリマー、又は固体部分及び液体部分を含む、「ペースト状」若しくは粘性を有する産物が含まれてよい。
【0069】
水相には、水、及び任意選択で、水とあらゆる割合において混和性の成分、例えば、エタノール又はイソプロパノールなどのC1〜C8の低級アルコール、プロピレングリコール、グリセロール、又はソルビトールなどのポリオール、あるいはまたアセトン又はエーテルなどが含まれる。
【0070】
エマルション形態の組成物を得るために使用される乳化剤及び共乳化剤は、化粧品及び医薬品分野において一般的に使用されているものである。それらの性質は、エマルションの向き(sense)によっても決まる。実際には、乳化剤、及び任意選択で共乳化剤は、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜8%の範囲の割合において組成物中に存在する。エマルションにはまた、脂質小胞、特にリポソームを含めることもできる。
【0071】
組成物が、油性の溶液又はゲルの形態である場合には、脂肪相は、組成物の総重量の90%超を示してよい。
【0072】
有利には、毛髪への適用のために、組成物は、水性、アルコール性、又は水性−アルコール性の溶液又は懸濁液、好ましくは水/エタノール溶液又は懸濁液である。アルコール画分は、5〜99.9%、好ましくは8〜80%を示してよい。
【0073】
マスカラ適用のために、組成物は、特に、水中ワックス型(wax−in−water)若しくは油中ワックス型(wax−in−oil)のディスパーション、ゲル化油、又は水性ゲルである。これは、着色されているか、又は無着色であってよい。
【0074】
本発明の組成物にはまた、水相又は油相の溶媒、増粘剤又はゲル化剤、組成物の媒体に溶解する染料、フィラー又は顔料タイプの固体粒子、抗酸化剤、保存剤、香料、電解質、中和剤、UV遮断剤、例えばサンスクリーン剤、皮膜形成ポリマー、式(I)の化合物以外の、皮膚又はケラチン繊維に対して有利な効果を有する美容的及び医薬的活性剤(例えば、ビタミン)、及びこれらの混合物から選択される、検討中の分野で通常使用される他の成分が含まれてもよい。これらの添加物は、化粧品及び皮膚科学分野において一般的に使用される量、特に、組成物の総重量の0.01〜50%、好ましくは0.1〜20%、例えば0.1〜10%の割合において、組成物中に存在してよい。それらの性質に応じて、これらの添加物を、脂肪相、水相、及び/又は脂質小胞、特にリポソームに組み込んでよい。
【0075】
言うまでもなく、当業者ならば、本発明の組成物の有利な特性、特に、すなわち、ケラチン繊維の密度の増加が、意図される添加によって悪影響を受けないか、又は実質的に悪影響を受けないように、注意深く、任意選択のさらなる成分、及び/又はその量を選択するだろう。
【0076】
本発明で使用され得る溶媒として、C2〜C8の低級アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、及び特定の美容用軽質油(light cosmetic oil)、例えば、C6〜C16のアルカンなどを挙げてよい。
【0077】
本発明で使用され得る油として、鉱物油(液体石油ゼリー又は水素化イソパラフィン)、植物油(シアバターの液体画分、ヒマワリ油、アプリコット油、大豆油、脂肪アルコール、又は脂肪酸)、動物油(ペルヒドロスクアレン)、合成油(脂肪酸エステル、ピュアセリンオイル)、シリコーン油(直鎖状又は環状のポリジメチルシロキサン、フェニルトリメチコン(trimethicone))、及びフルオロ油(ペルフルオロポリエーテル)を挙げてよい。ワックスとして、シリコーンワックス、ミツロウ、カンデリラワックス、ライスワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、又はポリエチレンワックスを挙げてよい。
【0078】
本発明で使用され得る乳化剤として、例えば、W/Oエマルションのためには、グリセロールステアラート、グリセロールラウレート、ソルビトールステアラート、ソルビトールオレアート、アルキルジメチコーンコポリオール(アルキル≧8を有する)、及びそれらの混合物を挙げてよい。O/Wエマルションのために、ポリエチレングリコールモノステアラート又はモノラウレート、ポリオキシエチレン化ソルビトールステアラート又はオレアート、及びジメチコーンコポリオール、並びにそれらの混合物が使用されてもよい。乳化剤及び共乳化剤は、組成物の総重量に対して、0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の割合で組成物中に存在する。
【0079】
本発明で使用され得る親水性ゲル化剤として、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマーなどのアクリルコポリマー、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロースなどのポリサッカリド、天然ガム及びクレーを挙げてよく、親油性ゲル化剤として、ベントンなどの改質クレー(modified clay)、脂肪酸の金属塩、例えば、ステアリン酸アルミニウム、疎水処理したシリカ及びエチルセルロース、並びにそれらの混合物を挙げてよい。
【0080】
式(I)のアミン以外の美容的又は医薬的な活性剤として、組成物には、タンパク質若しくはタンパク質加水分解物、アミノ酸、ポリオール、尿素、アラントイン、糖及び糖誘導体、水溶性ビタミン、植物抽出物(アヤメ科植物若しくは大豆由来のもの)、並びにヒドロキシ酸(フルーツ酸若しくはサリチル酸)から選択される、さらなる親水性活性剤;かつ/あるいは、レチノール(ビタミンA)及びその誘導体、特にエステル(レチニルパルミテート)、トコフェロール(ビタミンE)及びその誘導体、特にエステル(トコフェリルアセテート又はパルミテート)、必須脂肪酸、セラミド、エッセンシャルオイル、5−n−オクタノイルサリチル酸などのサリチル酸誘導体、ヒドロキシ酸エステル、並びにレシチンなどのリン脂質から選択される、さらなる親油性活性剤、並びにそれらの混合物が含まれてよい。
【0081】
本発明の特定の実施態様によれば、式(I)の((ジアルキルアミノ)アルコキシ)エタノールエステル又はその塩は、ケラチン繊維(毛髪又は睫毛)の再成長を促進及び/又はその損失を制限する、少なくとも1つのさらなる化合物と組み合わせてよい。これらのさらなる化合物は、EP 0648488に記載のリポオキシゲナーゼ阻害剤、EP 0845700に特に記載されるブラジキニン阻害剤、特にWO 98/33497、WO 95/11003、JP 97−100091、及びJP 96−134 242に記載されるプロスタグランジン及びその誘導体、プロスタグランジンレセプターアゴニスト及びアンタゴニスト、非プロスタン(non−prostanoic)のプロスタグランジンアナログであって、EP 1175891、EP 1175890、WO 01/74307、WO 01/74313、WO 01/74314、WO 01/74315、又はWO 01/72268に記載されるもの、並びにそれらの混合物から特に選択される。
【0082】
本発明の組成物中に存在してよい、毛髪の成長を促進する他のさらなる活性化合物として、15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ阻害剤、例えば、WO 03/090699、WO 04/028441、WO 04/039306、WO 04/047776、WO 04/069213、又はEP 1505576に記載されるものなどを挙げてよい。
【0083】
本発明の組成物中に存在してよい、毛髪の成長を促進する他のさらなる活性化合物として、単独又は混合物において、血管拡張剤、抗アンドロゲン、シクロスポリン及びそのアナログ、抗菌及び抗真菌剤、抗炎症剤、並びにレチノイドを挙げてよい。
【0084】
使用され得る血管拡張剤は、特に、単独又は組み合わせて、ミノキシジル、及びさらに特許US 3 382247、US 5 756092、US 5 772990、US 5 760043、US 5 466694、US 5 438058、及びUS 4 973474に記載される化合物、クロマカリム、ニコランジル、及びジアクソザイド(diaxozide)を含むカリウムチャネルアゴニストである。
【0085】
使用され得る抗アンドロゲンには、特に、ステロイド性又は非ステロイド性の5α−レダクターゼ阻害剤、例えば、フィナステライド及びUS 5 516779に記載の化合物、シプロテロンアセテート、アゼライン酸並びにその塩及び誘導体、US 5 480913に記載の化合物、フルタミド、オキセンドロン、スピロノラクトン、ジエチルスチルベストロール、並びに特許US 5 411981、US 5 565467、及びUS 4 910226に記載の化合物が含まれる。
【0086】
抗菌又は抗真菌化合物は、セレン誘導体、オクトピロックス、トリクロカルバン、トリクロサン、亜鉛ピリチオン、イトラコナゾール、アシアチン酸、ヒノキチオール、ミピロシン(mipirocine)、テトラサイクリン、特にエリスロマイシン及びEP 0680745に記載の化合物、クリニシン(clinycin)ヒドロクロリド、ベンゾイルペルオキシド又はベンジルペルオキシド、ミノサイクリン、及びイミダゾールクラスに属する化合物、例えば、エコナゾール、ケトコナゾール、若しくはミコナゾール、又はその塩、トコフェリルニコチネート、ベンジルニコチネート、及びC1〜C6のアルキルニコチネート(例えばメチルニコチネート又はヘキシルニコチネート)を特に含むニコチン酸エステルから選択され得る。
【0087】
抗炎症剤は、ステロイド性抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド、コルチコステロイド(例えば:ヒドロコルチゾン)、及び非ステロイド性抗炎症剤、例えば、グリチルレチン酸(glycyrrhetinic)及びα−ビサボロール、ベンジダミン、サリチル酸、並びにEP 0770399、WO 94/06434、及びFR 2268523に記載の化合物から選択され得る。
【0088】
レチノイドは、イソトレチノイン、アシトレチン、及びタザロテンから選択され得る。
【0089】
塩化されているか又はされていなくてよい、式(I)の化合物と組み合わせて使用され得る、毛髪の成長を促進及び/又はその損失を制限するための他のさらなる活性化合物として、アミネクシル、6−0−[(9Z,12Z)オクタデカ−9,12−ジエノイル]ヘキサピラノース、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、エストラジオール、マレイン酸クロロフェニラミン、クロロフィリン誘導体、コレステロール、システイン、メチオニン、メントール、ペパーミント油、パントテン酸カルシウム、パンテノール、レソルシノール、プロテインキナーゼCアクチベーター、グリコシダーゼ阻害剤、グリコサミノグリカナーゼ阻害剤、ピログルタミン酸エステル、ヘキソサッカリジック(hexosaccharidic)又はアシルヘキソサッカリジック(acylhexosaccharidic)アシッド、置換アリールエチレン、N−アシルアミノ酸、フラボノイド、アスコマイシン誘導体及びアナログ、ヒスタミンアンタゴニスト、サポニン、プロテオグリカナーゼ阻害剤、エストロゲンアゴニスト及びアンタゴニスト、シュードテリン(pseudoterine)、サイトカイン及び増殖因子プロモーター、IL−1又はIL−6阻害剤、IL−10プロモーター、TNF阻害剤、ベンゾフェノン及びヒダントイン、レチノイン酸;ビタミン、例えば、ビタミンD、ビタミンB12アナログ、及びパントテノール;トリテルペン、例えば、ウルソル酸、並びにUS 5 529769、US 5 468888、及びUS 5 631282に記載の化合物;止痒剤、例えば、テナルジン、トリメプラジン、又はシプロヘプタジン;駆虫剤(antiparasitic agent)、特に、メトロニダゾール、クロタミトン、又はピレスリノイド;カルシウムアンタゴニスト、例えば、シンナリジン、ジルチアゼム、ニモジピン、ベラパミル、アルベリン、及びニフェジピン;ホルモン、例えば、エストリオール又はそのアナログ、チロキシン及びその塩、及びプロゲステロン;FPレセプター(タイプFプロスタグランジンレセプター)アンタゴニスト、例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロプト、又はウノプロストン;並びにこれらの混合物を挙げてよい。
【0090】
塩化された形態であるか又はその形態でなくてよい、式(I)の((ジアルキルアミノ)アルコキシ)エタノールエーテルの少なくとも1つを含む組成物が、文献WO 94/22468に特に記載されるとおりの、リポソームの形態であることを意図することも可能である。従って、リポソームに包まれた(encapsulate)化合物を、毛包へ選択的にデリバリーしてよい。
【0091】
本発明により適用される組成物は、個体の頭皮及び毛髪の脱毛領域に適用され得、任意選択で、数時間接触した状態であってもよく、任意選択ですすがれてもよい。
【0092】
塩化された形態であるか又はその形態でなくてよい、式(I)の((ジアルキルアミノ)アルコキシ)エタノールエーテルの有効量を含む組成物は、例えば、夕方に適用されて、一晩中接触した状態にしてよく、任意選択で朝にすすがれてもよい。個体によって、一ヶ月以上毎日、これらの適用を繰り返してよい。
【0093】
従って、本発明の対象はまた、ヒトの毛髪及び睫毛などのヒトケラチン繊維の成長を刺激すること、及び/又はそれらの損失を予防することを目的とする、ヒトケラチン繊維並びに/又はこれらの繊維が出現している、頭皮及び眼瞼を含む皮膚のための美容処理方法であって、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つの有効量を含む化粧品組成物を、ヒトケラチン繊維及び/又は前記繊維が出現している皮膚に適用する工程と、前記組成物を前記ケラチン繊維及び/又は皮膚と接触させたままにする工程と、任意選択で前記ケラチン繊維及び/又は皮膚をすすぐ工程とが存在することを特徴とする、美容処理方法である。
【0094】
この処理方法は、ケラチン繊維、特に毛髪及び睫毛に、より大きな成長力(vigour)と高められた外観を与えることにより、それらの美観を高めることを可能にする範囲で、美容的方法の特徴を有する。さらに、この処理方法は、処方箋なしに、数ヶ月間、毎日用いることができる。
【0095】
とりわけ、本発明の対象は、ヒト毛髪及び/又はヒト頭皮の状態並びに/あるいはその外観を高めることを目的とする、ヒト毛髪及び/又はヒト頭皮のための美容ケア方法であって、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つを含む化粧品組成物を、前記毛髪及び/又は頭皮に適用する工程と、前記組成物を前記毛髪及び/又は頭皮と接触させたままにする工程と、任意選択で前記毛髪及び/又は頭皮をすすぐ工程とが存在することを特徴とする、美容ケア方法である。
【0096】
本発明の対象はまた、ヒト睫毛の状態及び/又はその外観を高めることを目的とする、ヒト睫毛のための美容ケア及び/又はメークアップ方法であって、式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1つを含むマスカラ組成物を適用する工程と、前記組成物を前記睫毛と接触させたままにする工程とが存在することを特徴とする、美容ケア及び/又はメークアップ方法である。このマスカラ組成物は、単独で、又は通常の着色マスカラ用のアンダーコートとして適用され得、かつ通常の着色マスカラのように除去され得る。
【0097】
有利には、本発明の方法において、0.001〜5%の式(I)の化合物を含む、5〜500μLの先に定義したとおりの溶液又は組成物を、治療されるべき頭皮領域に適用する。
【0098】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例からより明らかになるが、この実施例は、非限定的な説明手段にすぎない。以下の記載において、特記のない限り、割合は質量パーセンテージとして示す。
【0099】
[実施例]
[実施例1:本発明の4−アミノピペリジン誘導体の皮膚脱収縮(dermodecontracting)効果の実証]
a)試験の原理
この試験の原理は、ヒト正常線維芽細胞で播種されたコラーゲンマトリックスからなる皮膚等価物(dermal equivalent)のモデルに対する試験生成物の効果を研究することからなる。
【0100】
これらの条件は、表情の間に生じる皮膚の収縮現象を、in vitroで模倣することを目的とする。これらの条件下、実際には、細胞は、コラーゲンゲルの収縮を誘導する張力を自発的に発現する。これは、結果として、時間とともに、皮膚等価物の全表面積の減少をもたらす。この表面積の測定により、予め皮膚等価物と接触させた物質の弛緩効果を評価することが可能になる。
【0101】
b)プロトコル
ヒト正常線維芽細胞を含む、2組の付着(attached)皮膚等価物を調製する:1組は、いずれの処理も施さないコントロールであり、もう1組は、試験化合物(1μM)で処理する。実験を3回繰り返す。
【0102】
皮膚等価物を、Asselineau et al., Exp. Cell. Res., 1985, 159, 536−539;Models in dermatology, 1987, vol 3 pp 1−7に記載のとおり、以下の割合で調製する:
【0103】
【表2】

【0104】
処理した皮膚等価物は、1μMの試験化合物をそこに添加するという点において、コントロール皮膚等価物と異なる。
【0105】
用いたコラーゲンは、コラーゲンタイプI(市販溶液)である。酸加水分解により、ラットの尾又は仔牛の皮膚(calf skin)から抽出し、酸性媒体中、4℃で保存する;37℃で加熱し、酸性度を低下させることにより、自然に重合する。水+酢酸の連続浴に対して、コラーゲンを予め透析する。
【0106】
プロトコルは以下のとおりである:添加物(1%グルタミン、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム、1%ファンギゾン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン)、ウシ胎仔血清、及び0.1 N水酸化ナトリウムNaOHの存在下、1.76×MEM媒体を、クラッシュアイス中で保持する50 mLの遠心分離管に導入する。ついで、ヒト皮膚移植片から単離した線維芽細胞を、培養媒体1 mL当たり1.5×105細胞の濃度で添加する。
【0107】
ついで、1/1000での、酢酸中のコラーゲンの体積/体積混合物を、遠心分離管の壁に対して徐々に添加し、白っぽい曇りの出現を観察する。
【0108】
ついで、全体を注意深く混合し、1ウェル当たり、混合物2 mLの割合で、12ウェルの培養プレート(Costarタイプ;リファレンス3512)のウェルへと分注する。最終的な細胞濃度は、3×104細胞/皮膚等価物であり、最終的なコラーゲン濃度は、1 mg/mLである。ついで、培養プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーター中に置く。
【0109】
コラーゲンの重合後に形成されたら、皮膚等価物を、3日間、培養支持体(culture support)に接着させたままにし、ついで、収縮が開始され得るように、支持体から引き離す。これらの付着皮膚等価物を、インキュベーターから出し、それらの表面積を測定する目的で画像を取り込み、これは、収縮動態(contraction kinetics)の各タイムポイント(0、4、8、及び24時間)で実施する。各測定ポイントの間、これらをすぐにインキュベーターに戻す。
【0110】
処理(試験化合物とともに)された皮膚等価物及びコントロール(試験化合物なし)皮膚等価物の自発性収縮(spontaneous contraction)の評価は、自発性収縮の開始後、様々な時点でそれらの表面積を測定することにより実施する。
【0111】
このために、カメラ(CCDカメラ−Iris Sony DXC−107P)を用いて、処理又は非処理の皮膚等価物のそれぞれに対するデジタル画像を取得し、ついで、画像分析システム(Zeiss Axiovision 3.0)を用いて、各画像に対して、その表面積を計算する。各表面積測定に対応するものは、下記式:
%収縮=(Sp−Si)/Sp×100
(式中、
−「Sp」は、培養プレートのウェルの表面積を表す;これは、収縮前の皮膚等価物の全表面積に相当する;
−「Si」は、収縮動態のiの時点での皮膚等価物の表面積を表す)
の表面積割合と等しい収縮パーセンテージである。
【0112】
c)結果
N−(1−アセチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イル)−N−[(2E)−3−フェニルプロプ−2−エノイル]−1−(2−フェニルエチル)−4−アミノピペリジン(化合物番号1)は、コントロールと比較して、実験(1μM及び0.1μMで試験)期間にわたって、平均20%及び9%、線維芽細胞収縮を低減させる。
【0113】
従って、この化合物は、顕著な皮膚脱収縮効果を有しており、それ故、毛包の血管新生に対して、有利な効果を提供し得る。
【0114】
[実施例2:ヘアローション]
【0115】
【表3】

【0116】
数ヶ月間、1日に1回又は2回、一回の適用当たり1 mLの量で、このローションを頭皮に適用し、頭皮を若干マッサージして活性剤を浸透させる。ついで、頭髪を外気で(open−air)乾燥させる。このローションは、脱毛を減少させること、及び/又はその再成長を促進すること、及び/又は毛髪の外観を高めることを可能にする。
【0117】
この組成物において、化合物番号1を、化合物番号2又は3に置き変えることができる。
【0118】
[実施例3:ワックス/ウォーターマスカラ]
【0119】
【表4】

【0120】
マスカラブラシを使用して、通常のマスカラのように、このマスカラを睫毛に適用する。このマスカラは、睫毛の外観を高めることを可能にする。
【0121】
この組成物において、化合物番号1を、化合物番号2又は3に置き変えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトケラチン繊維の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの損失を予防するため、並びに/あるいはそれらの密度を増加させるための薬剤としての、下記式(I):
【化1】

[式中、
− Alk1及びAlk2は、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C10若しくは不飽和C2〜C10、又は分枝状の飽和若しくは不飽和C3〜C10アルキレン基(二価の基)を意味し;
− Ph1及びPh2は、互いに独立に、フェニル基を意味し、前記フェニル基は、−F、−CF3、−R1、−OR1、及び−NR1R2から選択される、同一又は異なっていてもよい1つ以上の基で任意選択で置換されていてもよく;
− R1、R2、及びR3は、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C7若しくは不飽和C2〜C7、又は分枝状若しくは環状のC3〜C7アルキル基を意味する]
の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1種の美容的使用。
【請求項2】
前記ケラチン繊維が、毛髪、眉毛、睫毛、顎鬚、口髭、及び陰毛であることを特徴とする、請求項1記載の美容的使用。
【請求項3】
自然な脱毛を低減するため、及び/又は毛髪密度を増加させるため、及び/又は男性型−経時性−遺伝性脱毛症を治療するための薬剤としての、ヒト用ヘアケア組成物における、請求項1又は2記載の美容的使用。
【請求項4】
ヒト睫毛の成長を誘導及び/又は刺激するため、並びに/あるいはそれらの密度を増加させるための、ヒト睫毛用美容ケア及び/又はメークアップ組成物における、請求項1乃至3のいずれか一項記載の美容的使用。
【請求項5】
ヒトにおける、特に毛包の、皮膚毛細血管循環又は血管新生の低減と関連する疾患の治療に使用するための組成物を製造するための、請求項1中に規定される式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又はその塩、光学異性体、若しくは溶媒和物の少なくとも1種の使用。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、式中、
− Alk1及びAlk2が、互いに独立に、直鎖状の飽和C1〜C4又は不飽和C2〜C4アルキレン基を意味し;
− Ph1及びPh2が、フェニル基を意味し;
− R3が、直鎖状の飽和C1〜C3アルキル基を意味する、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、
− N−(1−アセチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イル)−N−[(2E)−3−フェニルプロプ−2−エノイル]−1−(2−フェニルエチル)−4−アミノピペリジン;
− N−(1−アセチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イル)−N−(3−フェニルプロパノイル)−1−(2−フェニルエチル)−4−アミノピペリジン;
− N−(1−アセチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イル)−N−[(2E)−3−フェニルプロプ−2−エノイル]−1−ベンジル−4−アミノピペリジン、
から選択されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
前記式(I)の4−アミノピペリジン誘導体、又は式(I)の4−アミノピペリジン誘導体の混合物が、前記組成物の総重量に対して、10−3%〜10%、好ましくは10−2%〜5%の範囲の濃度で用いられることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
前記組成物が、局所適用のための組成物であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、ヘアクリーム若しくはローション、シャンプー、コンディショナー、又は毛髪用若しくは睫毛用マスカラの形態であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、水性、アルコール性、若しくは水性−アルコール性溶液又は懸濁液の形態であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、ケラチン繊維の再成長を促進及び/又はその損失を制限する、少なくとも1種のさらなる活性化合物を含むことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項記載の使用。

【公開番号】特開2007−291107(P2007−291107A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−114561(P2007−114561)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】