説明

ケーキ呈味用水中油型乳化物及びケーキ

【課題】乳化状態が熱やpH変化に対して安定であり、熟練者でなくても簡便な作業で容易にケーキ生地を調製することができ、ボリューム感、風味、食感に優れたケーキを得ることのできるケーキ呈味用水中油型乳化物を提供する。
【解決手段】本発明のケーキ呈味用水中油型乳化物は、油脂20〜60重量%、デキストリン価が20〜50の澱粉糖を固形分換算で10〜50重量%、カゼインナトリウム0.5〜5.0重量%、大豆多糖類0.1〜2.0重量%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーキ呈味用水中油型乳化物及び、この乳化物を用いた生地を焼成して得られるケーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキを製造する方法としては、ケーキ生地調製法の違いにより、共立て法、別立て法、オールインミックス法等の方法が知られている。ケーキ生地中には、ケーキの呈味性と口溶け、シトリ、ソフトさ、コク等の食感を向上させる目的で油脂を配合しており、共立て法では砂糖と全卵を泡立て、これに小麦粉、油脂を添加して生地を調製し、別立て法では、全卵を卵黄と卵白に分けて別々に砂糖を加えて泡立てた後、双方を混合して最後に小麦粉、油脂を加えて生地を調製している。またオールインミックス法では、砂糖、全卵、小麦粉、多量の乳化剤を含む起泡性乳化油脂を混合して起泡させ、生地を調製している。共立て法、別立て法は、オールインミックス法のような乳化剤を含有した起泡性乳化油脂を使用しない為、乳化剤を使用せず油脂を添加することが可能であり、その結果、より食感、風味の優れたケーキを得ることができるが、卵によって起泡された泡が油脂の添加によって消泡され生地から脱泡する虞があるため、生地を安定に保つために油脂の添加のタイミング等に熟練を要するという問題がある。このような問題を解決するものとして、ポリグリセリン脂肪酸エステルやレシチン等の乳化剤、増粘剤を含む水中油型乳化物(特許文献1)や、ポリグリセリン脂肪酸エステルと加工澱粉を含む流動性の乳化油脂組成物(特許文献2)等の乳化した油脂として添加する方法が提案されている。一方、オールインミックス法は、起泡性乳化油脂中に乳化剤を含んでいるため、ケーキの食感、風味をより向上させるために起泡性乳化油脂組成物の添加量を多くすると、生地中の乳化剤量が多くなるためケーキの風味や食感が損なわれるという問題があった。このような問題を解決するため、油脂、カゼイン塩、糖質を特定の割合で含有する水中油型乳化油脂を用いてオールインミックス法によりケーキを製造する方法も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−16554号公報
【特許文献2】特開平8−140612号公報
【特許文献3】特開2000−93070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載の乳化物をケーキ生地の油脂供給源として用いると、共立て法や別立て法によっても安定な生地を調製することはできるが、乳化剤を必須成分として含むため、油脂を配合することによるケーキの風味や、食感向上効果が十分に発揮されないという問題があり、特許文献2記載の乳化物では、更に加工澱粉を含むため、ケーキの食感がねちゃ付いて、口溶けが悪いものとなり易いという問題がある。一方、特許文献3記載の水中油型乳化油脂は乳化剤を使用していないため、ケーキの風味、食感を高めるために乳化油脂を生地に多く添加しても、乳化剤による風味低下をきたすことがなく、呈味性の良いケーキを得ることができるが、カゼイン塩を含む特許文献3の水中油型乳化物は、乳化物の殺菌工程においてカゼイン塩の熱変性が生じやすく、熱変形が生じると乳化安定性が悪くなる。また、ケーキ生地では、ココア、コーヒー、カラメル等のpHに影響を及ぼす素材を添加することも多く、pHの変化によって乳化が不安定となり易く、安定的に製造ができないことや、生地比重が目標とするところまで下がらない等の問題が発生する。乳化物の安定性が悪いと、早い時期に乳化が破壊されて油脂が分離し、この結果、生地中で気泡が保持されなくなり、ボリュームがあって軽い食感のケーキを得ることができないという問題があった。
【0005】
本発明者らは、乳化剤を含まない水中油型乳化物の有する課題を解決すべく鋭意研究した結果、カゼインナトリウムとともに大豆多糖類を併用して用いた水中油型乳化物が、従来の課題を解決でき、共立て法や別立て法、オールインミックス法のいずれにおいても、風味、食感等に優れたケーキを得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、
(1)油脂20〜60重量%、デキストリン価が20〜50の澱粉糖を固形分換算で10〜50重量%、カゼインナトリウム0.5〜5.0重量%、大豆多糖類0.1〜2.0重量%含有することを特徴とするケーキ呈味用水中油型乳化物、
(2)カゼインナトリウムと大豆多糖類の割合が、重量比でカゼインナトリウム:大豆多糖類=95:5〜80:20である上記(1)のケーキ呈味用水中油型乳化物、
(3)乳化分散している油滴の平均粒径が0.4〜1.2μmである上記(1)又は(2)のケーキ呈味用水中油型乳化物、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかのケーキ呈味用水中油型乳化物を配合して起泡したケーキ生地を焼成したケーキ、
(5)ケーキ生地が、全卵と糖類とケーキ呈味用水中油型乳化物とを混合し、起泡後、穀粉を添加したものである上記(4)のケーキ、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のケーキ呈味用水中油型乳化物は、ケーキの風味や味を阻害する虞のある乳化剤を含まないため、生地中の乳化油脂組成物の配合量を増やすことができ、ケーキの風味、食感をより高めることができる。また常温で液状の乳化物であるため、生地への添加に際してバターのように加熱溶解する必要がなく、作業が容易であるとともに、生地に添加した際にケーキ生地中の気泡を損なう虞がないため、ボリューム感があり、風味、食感に優れたケーキを得ることができる。本発明のケーキ呈味用水中油型乳化物は、カゼインナトリウム、大豆多糖類、特定のデキストリン価の澱粉糖による乳化物であることにより、乳化物が安定であるため、共立て法や別立て法で生地を調製する場合でも、卵により起泡された泡が油脂によって消泡される虞がないため、添加のタイミングに熟練を要しないとともに、乳化剤を含んでいなくても乳化状態が安定であり、熱やpH変動によって乳化が不安定となる虞もないため、共立て法、別立て法、オールインミックス法等の方法に広く利用することができ、優れた風味、食感のケーキを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のケーキ呈味用水中油型乳化物に用いる油脂としては、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油等の動物油脂、これら動植物油脂に水素添加、分別、エステル交換等の処理の1種又は2種以上を施した加工油脂等が挙げられる。本発明の乳化物には、これらの油脂を単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。油脂中に乳脂を10重量%以上含有しているとケーキの風味をより向上できるため好ましく、2種以上の油脂を併用する場合、乳脂は油脂中に20〜60重量%含有することが好ましい。
【0009】
デキストリン価(DE)が20〜50の澱粉糖としては、澱粉を酸または酵素で加水分解した澱粉糖が挙げられ、澱粉糖としては水飴、粉飴、ブドウ糖、デキストリン、オリゴ糖、トレハロース、異性化糖等が挙げられる。
【0010】
澱粉糖のデキストリン価は、糖類試料中の還元糖量を測定してブドウ糖量に換算し、その還元糖量を試料の全固形分中の%として表示したものであり、下記(1)式より求められる値である。
【0011】
(数1)
デキストリン価=還元糖(ブドウ糖として算出)/固形分×100
【0012】
カゼインナトリウムとしては、塩酸、硫酸等の酸添加や、微生物により生成した乳酸により、乳又は脱脂乳等のpHを4.3〜5.0に調整して凝固沈殿させて得たもの、乳又は脱脂乳にレンネットを作用させて得た凝固沈殿物を、アルカリで処理して得たもの等が挙げられる。
【0013】
大豆多糖類は、大豆から得られる水溶性多糖類であり、主な成分としてヘミセルロースを含み、その他、ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、フコース、グルコース等の糖類から構成される。大豆多糖類は、大豆油や分離大豆蛋白質を製造する際に生成するオカラからの抽出物に、精製、殺菌等の処理を施して得ることができる。大豆多糖類としては市販のものを用いることができ、市販の大豆多糖類としては、三栄エフ・エフ・アイ製のSM−700(商品名)、SM−900(商品名)、SM−1200(商品名)や、不二製油株式会社製のソヤファイブ(商品名)等が挙げられる。
【0014】
本発明の水中油型乳化物は、油脂20〜60重量%、澱粉糖10〜50重量%(固形分換算値)、カゼインナトリウム0.5〜5.0重量%、大豆多糖類0.1〜2.0重量%の割合で含有することが必要であり、乳化物中の油脂の割合が20重量%未満の場合、風味、コク、しとり感が得られず、60重量%を超えると乳化が不安定となり安定したケーキが出来なくなる。澱粉糖が10重量%未満であると、乳化が不安定となり、安定したケーキが出来なくなり、50重量%を超えると乳化物が増粘し、ケーキ生地中で均一になるまでに時間を要し、安定したケーキが出来なくなる。またカゼインナトリウムの割合が0.5重量%未満であると乳化物の安定性に劣り、ケーキ生地作成の際に起泡が安定とならず、ボリュームのあるケーキを得ることができなくなり、5.0重量%を超えると乳化物が増粘し、ケーキ生地中で均一になるまでに時間を要し、安定したケーキが出来なくなる。大豆多糖類の割合が0.1重量%未満の場合乳化物の安定性に劣り、ケーキ生地作成の際に起泡が安定とならず、ボリュームのあるケーキを得ることができなくなり、2.0重量%を超えるとケーキの風味に悪影響を及ぼす虞がある。乳化物中の各成分の好ましい割合は、油脂25〜45、糖類20〜40重量%(固形分換算値)、カゼインナトリウム2.5〜4.5重量%、大豆多糖類0.3〜1.0重量%である。本発明において澱粉糖としてDEが20〜50のものを用いるが、澱粉糖のデキストリン価が20未満であるとケーキの呈味に悪影響を及ぼす虞があり、50超であると、乳化物を低温で保存されると澱粉糖が析出したり、焼成したケーキの焼き色が強くなる。
【0015】
本発明の乳化物は、カゼインナトリウムと大豆多糖類との割合が、重量比で、カゼインナトリウム:大豆多糖類=95:5〜80:20となるように上記の配合範囲においてカゼインナトリウムと大豆多糖類とを配合することが好ましい。乳化物中のカゼインナトリウム:大豆多糖類の比率が95:5〜80:20となるようにすると、ココアやフルーツケーキ等のpHの低いケーキ生地における安定性がさらに向上するので好ましい。
【0016】
本発明の乳化物を調製する方法としては、澱粉糖を添加した水に、カゼインナトリウムとともに大豆多糖類を添加、均一にして調製した水相に、加熱した油脂を添加、攪拌して乳化する方法あるいは澱粉糖を水に加えて攪拌し、これにカゼインナトリウムを添加、均一化して調製した水相に、加熱した油脂を添加、攪拌して乳化し、その後、大豆多糖類を添加、均一に攪拌混合し、殺菌後冷却して製品とする方法によっても得ることができるが、大豆多糖類を乳化後に添加する方が、乳化安定性が向上するので好ましい。またより好ましくは、大豆多糖類を添加する際に、大豆多糖類を予め水に分散させて添加することにより、大豆多糖類の乳化物中での分散性が良好となり、乳化安定性が向上し、ケーキ作成時に安定した生地を得ることが出来る。大豆多糖類の水分散液は5〜20%溶液になるように調製すると大豆多糖類の乳化物中での分散性もよく、安定した乳化物を得ることができる。
【0017】
本発明の乳化物は、乳化している油滴の平均粒径が0.4〜1.2μmであると、乳化物の長期保存安定性、ケーキ生地中での安定性が良好であり、また得られたケーキの風味が良好となるため好ましい。より乳化安定性を向上するためには、油滴の平均粒径が0.5μm〜0.8μmであることが好ましい。乳化している油滴の平均粒径が0.4〜1.2μmである乳化油は、カゼインナトリウムと澱粉糖を水に溶解させて水相とし、この水相に油脂を添加し、水中油型乳化物を得た後、大豆多糖類を添加することにより得ることができる。
【0018】
本発明のケーキ呈味用水中油型乳化物を配合して起泡したケーキ生地を焼成することによりケーキを得ることができる。穀粉に対する乳化物の添加量は、10〜30重量%が好ましい。生地の調製法としては、共立て法、別立て法、オールインミックス法のいずれの方法も採用できるが、まず全卵、砂糖などの糖類、乳化物を添加、混合して起泡させ、起泡が進んで混合物の比重が0.25〜0.30程度まで下がった時点で穀粉を添加して生地を調製する方法が好ましい。従来の共立て法では、全卵と砂糖などの糖類を混合して起泡させ、比重が0.25〜0.30程度まで下がった時点で穀粉を添加して攪拌し、その後、更に油脂を添加して攪拌して調製しているが、生地中に生成した気泡を損なわないように油脂を添加するには熟練した技術を要していた。本発明の乳化物を用いる場合には、上記のように全卵、砂糖などの糖類、乳化物を添加、混合して起泡させても、乳化物が、卵の起泡力を損なうことなく、油脂を付与することが出来、油脂を添加するのに熟練した技術を必要とせずに、作業工程が簡便であり、生地が安定に保たれボリューム感のあるケーキを容易に得ることができる。しかも従来の共立て法は全卵を起泡させ、比重を小さくさせた後、穀粉、油脂を添加するごとに攪拌するため、生地の比重は大きくなってしまうが、本発明の乳化物を用いてケーキを製造する場合には、油脂を乳化物として全卵を起泡させる段階で添加出来、起泡後は、穀粉を添加して攪拌するのみであるため、攪拌を重ねることによって生地比重が大きくなることはなく、よりボリューム感のある、ふわりとした柔らかいケーキを得ることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示す配合により(配合量は重量部)、実施例1、2では、まず水に澱粉糖、大豆多糖類(比較例1は配合せず)、カゼインナトリウム(比較例5はカゼインナトリウムの代わりに乳清蛋白を配合)を添加し、攪拌しながら80℃に加熱攪拌して水相とした。表1に示す油脂を80℃に加熱し、上記水相に添加し、70℃〜80℃に温度を保持しながらホモミキサーで攪拌して乳化し、水中油型乳化物を得た。また実施例3〜7、比較例2〜6では、まず水(大豆多糖類分散用の水を除いた残り)に澱粉糖、カゼインナトリウムを添加し、攪拌しながら80℃に加熱攪拌して得た水相に、80℃に加熱した油脂を添加し、ホモミキサーで攪拌し、乳化後、大豆多糖類15%溶液を添加攪拌して水中油型乳化物を得た。得られた乳化物の乳化直後の乳化状態の評価を表1に示す。
【0020】
実施例、比較例の乳化物を用いケーキ生地を調製した。ケーキ生地は下記配合中のケーキ用起泡剤と砂糖を5コートミキサー(ホバート社製、多羽根ホイッパー卓上ミキサー)ですり合わせた後、残りの材料を全て投入し、低速にて15秒間攪拌後、中高速で5分間攪拌し、ケーキ生地を得た。この生地の比重を表1に示す。ケーキ用丸型6号台にケーキ生地280gを入れ、170℃で25分間焼成してケーキを得た。得られたケーキのボリューム、風味の評価を表1にあわせて示す。
【0021】
ケーキ生地配合
薄力粉 87重量部
ココアパウダー 13重量部
全卵 150重量部
砂糖 115重量部
水 25重量部
水中油型乳化物 15重量部
ケーキ用起泡剤 8重量部
ベーキングパウダー 1重量部
【0022】
【表1】

【0023】
※1 日本コーンスターチ株式会社製:KDL−H70C(デキストリン価35、固形分70%)
※8 株式会社林原製:サンマルトS(デキストリン価50、固形分95%)
※9 松谷化学工業株式会社製:パインデックス#1(デキストリン価8、固形分95%)

※2 三栄源FFI社製:SM1200
※3 フォンテラジャパン株式会社製、アラネート180S
【0024】
※4 製造直後の乳化物中の油滴の平均粒径をレーザー光式粒度分布計(SALD2000)にて測定した。製造直後の乳化状態を、油滴の平均粒径より下記のように評価した。
◎:油滴の平均粒径が0.4μm以上、1.2μm未満
○:油滴の平均粒径が0.4μm未満、又は1.2μ〜2.0μm
△:油滴の平均粒径が2.0μm超
×:乳化が破壊され、測定不能
【0025】
※5 製造直後のケーキ生地の比重を測定し、以下のように評価した。
◎:0.45以下
○:0.45超、0.55以下
△:0.55超、0.65以下
×:0.65超
【0026】
※6 焼成したケーキのボリュームを菜種置換法により比容積(ml/g)を5回測定し、平均値で評価した。
【0027】
※7 10人のパネラーが焼成し、20℃で24時間経過後のケーキの食感、風味を以下のように評価した。
<ケーキの食感>
良好:食感が良好と評価した人数が7人以上。
良 :食感が良好と評価した人数が6人〜4人。
不良:食感が良好と評価した人数が3人以下。
<ケーキの風味>
良好:油脂の豊かなコク風味を感じると評価した人数が7人以上。
良 :油脂の豊かなコク風味を感じると評価した人数が6人〜4人。
不良:油脂の豊かなコク風味を感じると評価した人数が3人以下。
【0028】
実施例8、9、参考例1、2
上記実施例3のケーキ呈味用水中油型乳化物を用いケーキ生地を調製した。実施例8、参考例1は、全卵200g、グラニュー糖120g、実施例3のケーキ呈味用水中油型乳化物30g(参考例1は乳化物の代わりに溶かしバター30g)を5コートミキサー(ホバート社製、多羽根ホイッパー卓上ミキサー)に入れ、高速で5分間撹拌を行い、比重を0.25とした(参考例1では生地の比重が下がらず、生地が得られなかった。)。次に薄力粉100gを添加、攪拌してケーキ生地を得た。一方、実施例9、参考例2は、全卵200g、グラニュー糖120gを、5コートミキサー(ホバート社製、多羽根ホイッパー卓上ミキサー)に入れ、高速で5分間撹拌を行い、比重を0.25とした後に薄力粉100gを添加して攪拌後、実施例3のケーキ呈味用水中油型乳化物30g(参考例2は乳化物の代わりに溶かしバター30g)を添加、攪拌してケーキ生地を得た。焼成前の最終生地の比重を表2にあわせて示す。実施例9と参考例2は、ともに共立法により生地を調製したが、実施例9は、従来の溶かしバターを用いた参考例2と比べて最終比重の軽い生地が得られた。実施例8、9ともにバターを使用した参考例2より軽い食感のケーキを得ることができたが、本発明の請求項5の方法により生地を調製した実施例8は、同じ水中油型乳化物を用いても、従来の共立法による実施例9に比べ、簡便な方法で比重の変化が小さく、より比重の軽いケーキ生地を調製することができた。
【0029】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂20〜60重量%、デキストリン価が20〜50の澱粉糖を固形分換算で10〜50重量%、カゼインナトリウム0.5〜5.0重量%、大豆多糖類0.1〜2.0重量%含有することを特徴とするケーキ呈味用水中油型乳化物。
【請求項2】
カゼインナトリウムと大豆多糖類の割合が、重量比でカゼインナトリウム:大豆多糖類=95:5〜80:20である請求項1記載のケーキ呈味用水中油型乳化物。
【請求項3】
乳化分散している油滴の平均粒径が0.4〜1.2μmである請求項1又は2記載のケーキ呈味用水中油型乳化物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのケーキ呈味用水中油型乳化物を配合して起泡したケーキ生地を焼成したケーキ。
【請求項5】
ケーキ生地が、全卵と糖類とケーキ呈味用水中油型乳化物とを混合し、起泡後、穀粉を添加したものである請求項4記載のケーキ。

【公開番号】特開2012−135254(P2012−135254A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289747(P2010−289747)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】