説明

ケーキ用プレミックス及びケーキの製造方法

【課題】ボリュームがあって見栄えが良く、ソフトで口どけの良い食感があるケーキを得ることが可能な、電子レンジ調理で用いるケーキ用プレミックス及びケーキの製造方法を提供する。
【解決手段】アミロース含量18%以上、かつ、澱粉損傷度が6%以下である米粉15〜30質量%と、油脂15〜25質量%と、糖類40〜68質量%と、膨張剤とを含有するケーキ用プレミックスに、卵と、水又は牛乳とを添加混合してケーキ生地を調製し、このケーキ生地を所定の容器に充填して電子レンジで加熱調理してケーキを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで調理可能なケーキ用生地を作成することのできるケーキ用プレミックス及び、該ケーキ用プレミックスを用いたケーキの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキ、パウンドケーキなどのいわゆるケーキ類は、小麦粉に、砂糖等の糖類、バター等の油脂、膨張剤、卵、水などを加え、必要に応じて生地成分の一部または全部を泡立ててケーキ生地を調製し、これをオーブンなどで焼成して調理される。
【0003】
このようなケーキ類は、パン類とは違って、グルテン含量が少ないいわゆる薄力粉を用い、グルテン組織をできるだけ生じないように生地を軽く混ぜ合わせ、膨張剤の反応による炭酸ガス発生、あるいは生地の泡立てによって生地中に気泡を含有させ、これを加熱して膨らませるようにしている。
【0004】
しかし、オーブンなどによる調理は、加熱調理に時間がかかるため、一般家庭向けのケーキ用プレミックスとして、電子レンジを用いて短時間調理するものが開発、販売されている。
【0005】
また、電子レンジ調理用の米粉を主体とするケーキ用プレミックスも開発され、市販されている。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、主成分として米粉を含んでなり、小麦粉及び小麦由来の成分を含まず、糖類、澱粉、食塩、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類及びビタミン類から選ばれた1種又は2種以上をさらに配合した菓子用米粉組成物が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、米粉、ベーキングパウダー及び水溶性食物繊維粉末を必須成分として含んでなる含泡食品粉体組成物が開示されている。
【0008】
一方、下記特許文献3には、米粒から米粉を製造する際に、洗米及び水漬けなどの加水操作を行って調製した浸漬米を、ロール製粉機で粗粉砕した後、更に気流粉砕機で微粉砕することを特徴とする米粉の製造方法が開示されている。そして、その方法により製造された米粉は、澱粉粒子が微細でしかも澱粉粒子の損傷の少ない高品質の米粉であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−199497号公報
【特許文献2】特開2005−13110号公報
【特許文献3】特開平4−63555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電子レンジによる加熱調理では、オーブン加熱等のような周囲から熱を与える加熱調理に比べて、澱粉質が変性し易く、糊状やゴム状の食感になり易かった。また、調理後の食感が経時劣化し易く、時間経過とともに食感が著しく硬くなる傾向にあった。更には、ボリューム感がなく、軽くふんわりとした性状で大きく膨化させることが難しかった。
【0011】
上記特許文献1、2に開示された方法であっても、食感を十分に改善できるものではなかった。特に、調理後の食感の経時劣化を十分に抑制できず、調理してから時間が経過すると共に、重く硬い食感になり易かった。
【0012】
また、特許文献3には、澱粉粒子の損傷の少ない高品質の米粉を得る方法が開示されているが、得られた米粉を電子レンジ加熱調理用のケーキ用プレミックスに用いることについては何ら開示されていない。また、アミロース含量を規定した米粉を電子レンジ加熱調理用のケーキ用プレミックスに用いることについても何ら開示されていない。
【0013】
よって、本発明の目的は、ボリュームがあって見栄えが良く、ソフトで口どけの良い食感を有するケーキを得ることが可能な、電子レンジ加熱調理用のケーキ用プレミックス及びケーキの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、電子レンジで加熱調理されるケーキ用生地を作成するためのプレミックスにおいて、アミロース含量18%以上、かつ、澱粉損傷度が6%以下である米粉15〜30質量%と、油脂15〜25質量%と、糖類40〜68質量%と、膨張剤とを含有することを特徴とする。
【0015】
上記発明によれば、アミロース含量18%以上、かつ、澱粉損傷度が6%以下である米粉と、油脂と、糖類とを、特定の配合で含有することにより、ケーキ用生地を作成して電子レンジで加熱調理したとき、膨らみが良好で、ふんわりとして柔らかく、しっとり感があって舌触りが良好であり、風味も良好で、電子レンジで加熱調理した後、時間が経過しても食感が硬くなりにくいケーキを提供することができる。
【0016】
本発明のケーキ用プレミックスにおいては、電子レンジで加熱調理して出来上がったケーキを容易に離型させることができる材質からなる、加熱調理用容器を兼ねた容器に収容されていることが好ましい。これによれば、上記容器に入れてケーキ用生地を作成し、そのまま電子レンジで加熱調理し、上記容器を逆さまにすることにより、容易に容器からケーキを離型させて、皿等に取出すことができる。
【0017】
一方、本発明のケーキの製造方法は、上記ケーキ用プレミックスに、卵と、水及び/又は牛乳とを添加混合して、ケーキ生地を調製し、このケーキ生地を所定の容器に充填して電子レンジで加熱調理することを特徴とする。
【0018】
上記発明によれば、家庭等で簡単な操作で手軽にケーキを作ることができ、しかも、膨らみが良好で、ふんわりとして柔らかく、しっとり感があって舌触りが良好であり、風味も良好で、電子レンジで加熱調理した後、時間が経過しても食感が硬くなりにくいケーキを得ることができる。
【0019】
上記発明においては、前記ケーキ生地を、電子レンジで加熱調理して出来上がったケーキを容易に離型させることができる材質からなる容器に充填して電子レンジで加熱調理することが好ましい。
【0020】
また、前記ケーキ生地を前記容器に充填した後、その上に所定形状の熱可塑性食品素材を載せて、電子レンジで加熱調理することが好ましい。これによれば、電子レンジで加熱調理している間に、熱可塑性食品素材がケーキ生地中に沈み込み、溶融した状態でケーキの内部に埋設される。その結果、食する際にケーキの内部からとろけた状態の熱可塑性食品素材が現れるので、風味をより良好にすることができる。
【0021】
また、別の態様として、前記ケーキ生地を前記容器に充填して電子レンジで加熱調理した後、その上に所定形状の熱可塑性食品素材を載せて、得られたケーキの温度が該熱可塑性食品素材の融点以下に低下しないうちに、該熱可塑性食品素材をケーキ内部に押し込むことが好ましい。これによれば、熱可塑性食品素材がケーキの内部に埋設されると共に、ケーキによって加熱されてとろけた状態になるので、上記同様に風味を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ケーキ用プレミックスに、卵と、水又は牛乳とを添加混合してケーキ生地を調製し、これを電子レンジで加熱調理することで、家庭等で簡単な操作で手軽にケーキを作ることができ、しかも、膨らみが良好で、ふんわりとして柔らかく、しっとり感があって舌触りが良好であり、風味も良好で、時間が経過しても食感が硬くなりにくいケーキを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(ケーキ用プレミックス)
本発明のケーキ用プレミックスは、電子レンジで加熱調理されるケーキ用生地を作成するために用いられるプレミックスである。本発明のケーキ用プレミックスを用いて調理されるケーキの種類としては、スポンジケーキ、パウンドケーキ等が好ましい一例として挙げられる。
本発明のケーキ用プレミックスは、米粉と、油脂と、糖類と、膨張剤とを少なくとも含有する。
【0024】
[米粉]
本発明のケーキ用プレミックスに用いる米粉(以下、「本米粉」という)は、アミロース含量が18%以上であることが必要であり、21%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。本米粉のアミロース含量が18%未満であると、もちもちとした食感になり易い。本米粉のアミロース含量は、米粉の原料となる米の品種を選択することによって、適宜調整することができる。この場合、複数の品種の米から得られた米粉を適当な割合でブレンドして調整することもできる。なお、本発明において、本米粉のアミロース含量は、後述する実施例に詳述するように、農林水産省告示第332号、標準計測方法に示されているアミロース含有率測定方法に準拠して測定した値を意味する。
【0025】
また、本米粉の澱粉損傷度は、6%以下であることが必要であり、3%以下が好ましい。本米粉の澱粉損傷度が6%を超えると、電子レンジによる加熱調理によって澱粉粒の崩壊が過剰となり、得られるケーキが十分に膨化できず、ボリューム感のあるケーキが得られ難い。また、べたつきのある食感になり易い。
【0026】
このような澱粉損傷率の少ない米粉は、例えば前述した特許文献3(特開平4−63555号公報)に記載された方法などによって製造することができる。また、そのような米粉は、市販されており、例えば「白兎白用粉」(商品名、株式会社淡路製粉製)などを利用することもできる。
【0027】
なお、本発明において、米粉の澱粉損傷度は、後述する実施例に詳述するように、AACC法 76−31に定められている澱粉損傷度測定方法に準拠して測定した値を意味する。澱粉損傷度を測定するための測定キットも市販されており、例えば「損傷澱粉測定キット/STARCH DAMAGE ASSAY KIT」(商品名、日本バイオコン株式会社製)を利用することができる。
【0028】
本発明のケーキ用プレミックスは、本米粉を15〜30質量%含有し、18〜25質量%含有することが好ましい。本米粉の含有量が15質量%未満であると、得られるケーキの食感が軟らかすぎ、更には、ボリューム感のあるケーキが得られ難くなる。また、本米粉の含有量が30質量%を超えると、得られるケーキの食感が、調理してから時間の経過と共に硬くなり易い。
【0029】
[油脂]
本発明のケーキ用プレミックスに用いる油脂は、常温(20℃)で液状の油脂(以下、「液状油脂」という)、常温で固形状の油脂(以下、「固形状油脂」という)のいずれも好ましく使用できる。
【0030】
一般に、液状油脂は粉末原料に分散させやすいが、酸化劣化し易いので、長期保存により品質低下が生じ易い。これに対し、固形状油脂は、粉末原料に分散させにくいが、酸化劣化し難いので、長期保存による品質低下が生じにくい。よって、目的とするケーキの製造工程や、保存期間に応じて適宜選択することができる。
【0031】
液状油脂としては、大豆、菜種、コーン、紅花、綿実などの油糧種子原料から圧搾あるいは抽出し精製した各種の植物油、これら植物油を液状の物性を失わない程度に水素添加処理あるいは後述の固形状油脂を加えてエステル交換処理したもの等が挙げられる。
【0032】
固形状油脂としては、パームなど比較的融点の高い油脂を含む油糧種子原料から抽出し精製した植物油脂、これら植物油脂を水素添加、分別、エステル交換のひとつあるいは複数を組合せ処理したもの、あるいはこれら植物油脂に前述の液状油脂を加えたものを水素添加、分別、エステル交換のひとつあるいは複数を組合せ処理したもの、バター、ラード、牛脂などの動物性油脂等が挙げられる。
【0033】
本発明のケーキ用プレミックスは、油脂を15〜25質量%含有し、18〜23質量%含有することが好ましい。油脂の含有量が15質量%未満であると、ぼそぼそとした硬い食感のケーキとなる。また、油脂の含有量が25質量%を超えると、油っぽく、食感が軟らかすぎるケーキとなる。
【0034】
油脂をプレミックスに添加する方法は、油脂そのものをプレミックス調製時に添加する方法、油脂に糖類等を加え粉末油脂としてからプレミックス調製時に添加する方法、油脂そのものあるいは粉末油脂をケーキ生地調製時に添加する方法のいずれも可能であり、ケーキ生地中に所定量の油脂が分散し含有されている状態となれば良い。
【0035】
[糖類]
本発明のケーキ用プレミックスに用いる糖類は、特に限定されないが、例えば、単糖類(ブドウ糖、果糖等)、二糖類(砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロースなど)、デキストリン等が挙げられ、目的とする製品の品質に応じて適宜選択できる。
【0036】
本発明のケーキ用プレミックスは、糖類を40〜68質量%含有し、45〜60質量%含有することが好ましい。糖類の含有量が40質量%未満であると、ぼそぼそとした硬い食感のケーキになる。また、糖類の含有量が68質量%を超えると、甘さが過剰で、食感が軟らかすぎるケーキとなる。
【0037】
[膨張剤]
本発明のケーキ用プレミックスに用いる膨張剤は、特に限定はない。従来公知の膨張剤を用いることできる。例えば、各種の市販ベーキングパウダー、あるいは、炭酸ガス発生源である重曹と、食品添加物一括名表記「膨張剤」が可能な各種の有機酸類を任意の比率で組合せたもの等が挙げられる。なお、炭酸ガス発生源としては、風味の点からアンモニア成分を含まないもの、例えば前述の重曹が好ましい。また、炭酸ガス源と有機酸類を任意の比率で組合せる場合、風味の点から、これら膨張剤成分のみを湯に分散、反応させた水溶液のpHが6〜8となることが好ましい。
【0038】
本発明のケーキ用プレミックスは、膨張剤を1〜3質量%含有することが好ましく、1〜1.5質量%含有することがより好ましい。膨張剤の含有量が1質量%未満であると、ボリューム感のあるケーキが得られ難くなる。また、膨張剤の含有量が3質量%を超えると、ケーキの形状がいびつになり、苦味や酸味が生じて風味に悪影響を生じる。
【0039】
[その他原料]
本発明のケーキ用プレミックスは、味付け剤、乳化剤、香料、着色料等の副原料を、必要に応じて含有させることができる。
【0040】
味付け剤としては、所望とするケーキの種類に応じて選択して用いることができる。例えば、チョコレートパウダー、ココアパウダー、チーズパウダー、キャラメルパウダー、紅茶パウダー、コーヒーパウダー、抹茶、野菜パウダー、果汁パウダー等が挙げられる。
【0041】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン等が挙げられる。
【0042】
香料としては、食品添加物として使用が認められているものが使用可能で、求めるケーキの風味に応じて選択すれば良い。
【0043】
着色料としては、香料と同様に食品添加物として使用が認められているものが使用可能で、求めるケーキの風味に応じて選択すれば良い。また、前述の味付け剤を用いることで、着色料と同様にケーキの色調を変えることも可能である。
【0044】
また、ケーキ用プレミックスは、アミロース含有量が18質量%未満及び/又は澱粉損傷度が6%を超える米粉、小麦粉等のその他の殻粉を含有してもよい。ただし、これらのその他の殻粉の含有量が多くなるに伴い、得られるケーキの食感が硬くなりやすいので、その他の殻粉の含量は、上記した本米粉100質量部に対し、33質量部以下が好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0045】
[容器]
本発明のケーキ用プレミックスは、電子レンジで加熱調理して出来上がったケーキを容易に離型させることができる材質からなる、加熱調理用容器を兼ねた容器に収容されていることが好ましい。このような容器のケーキ用プレミックスが収納されていれば、調理時に容器を別途用意する手間が省けるので、手軽にケーキを製造できる。
このような容器の材質としては、紙、プラスチック、プラスチックと紙、ガラス、セラミックス、金属、木材、布、皮いずれかの複合素材等が挙げられる。
【0046】
(ケーキの製造方法)
[第1の実施形態]
次に、本発明のケーキの製造方法の第1の実施形態について説明する。
【0047】
ボウル等の調理具内に上記ケーキ用プレミックスを入れ、卵と、水又は牛乳とを添加する。好ましくは、上記ケーキ用プレミックス100質量部に対し、卵を好ましくは50〜60質量部、水又は牛乳を好ましくは25〜35質量部添加する。そして、これらの原料を混合してケーキ生地を調製する。卵と水又は牛乳の配合量が少ないと、形状がいびつで硬い食感のケーキとなり、配合量が過剰であると軟らかすぎる食感のケーキとなる。また、卵と水又は牛乳の比率で、卵が不足すると膨らみが不十分なケーキとなり、卵が過剰であると硬い食感のケーキとなる。
【0048】
次に、このケーキ生地を所定の容器に充填する。ケーキ用プレミックスの収容容器が、加熱調理用容器を兼ねたものである場合は、当該容器に充填してもよい。
【0049】
そして、ケーキ生地を充填した容器を電子レンジに供して加熱調理することで、ケーキが得られる。加熱調理条件は、容器内に充填したケーキ生地の容量等により異なるので特に限定はない。
【0050】
このようにして得られるケーキは、ボリューム感があり、ソフトな食感を有するものである。更には、加熱調理してから時間が経過しても食感が硬くなりにくいものである。
【0051】
[第2の実施形態]
本発明のケーキの製造方法の第2の実施形態について説明する。
【0052】
この実施形態では、上記第1の実施形態において、ケーキ生地を所定の容器に充填した後、その上に所定形状の熱可塑性食品素材を載せて、電子レンジで加熱調理する。
【0053】
このようにしてケーキを製造することで、溶融した熱可塑性食品素材を内部に有するケーキを得ることができる。
【0054】
この実施形態に適した熱可塑性食品素材としては、ナチュラルチーズ、プロセスチーズなどの各種チーズ等が挙げられる。これらの熱可塑性食品素材は、比較的比重が軽いので、ケーキ生地が焼成し終わる前に熱可塑性食品素材がケーキ生地の底部まで沈み難く、溶融した熱可塑性食品素材を内部に有するケーキが得られ易い。
【0055】
[第3の実施形態]
本発明の本発明のケーキの製造方法の第3の実施形態について説明する。
【0056】
この実施形態では、上記第1の実施形態において、ケーキ生地を所定の容器に充填して電子レンジで加熱調理した後、その上に所定形状の熱可塑性食品素材を載せて、得られたケーキの温度が該熱可塑性食品素材の融点以下に低下しないうちに、該熱可塑性食品素材をケーキ内部に押し込んでケーキを製造する。
【0057】
このようにしてケーキを製造することで、溶融した熱可塑性食品素材を内部に有するケーキを得ることができる。
【0058】
この実施形態に適した熱可塑性食品素材としては、チョコレート、ゼラチンを用いたグミキャンディーやマシュマロ、バター等が挙げられる。これらの熱可塑性食品素材は、比較的融点が低いので、焼成後のケーキの余熱によって容易に溶融し、溶融した熱可塑性食品素材を内部に有するケーキが得られ易い。
【実施例】
【0059】
以下に例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
[測定条件]
・米粉のアミロース含量測定
農林水産省告示第332号、標準計測方法に示されているアミロース含有率測定方法に準拠して測定した。すなわち、測定検体(米粉)に、エタノールと水酸化ナトリウム試液を加え加熱した。ついで酢酸試液、ヨウ素・ヨウ化カリウム試液を加え、測定液を調製した。当測定液を吸光度測定(620nmにて)し、アミロース標準溶液を同様の手法により測定した値と比較して、測定検体中のアミロース含量を算出した。
【0061】
・米粉の澱粉損傷度測定
市販の「損傷澱粉測定キット/STARCH DAMAGE ASSAY KIT」(商品名、日本バイオコン株式会社製)を使用し、AACC法 76−31に定められている澱粉損傷度測定方法に準拠して測定した。すなわち、測定検体(米粉)に、損傷澱粉のみに作用するカビ由来 α−アミラーゼ試液を加え反応させ、損傷澱粉を分解した。損傷澱粉を分解した後、希硫酸試液を加えてカビ由来 α−アミラーゼ試液の反応を停止させた。次に、アミログルコシダーゼ試液を加え反応させ、損傷澱粉の分解物をグルコースに分解させて測定液を調製した。当測定液を吸光度測定(510nmにて)し、標準小麦粉(損傷澱粉含量の判っている小麦粉)を同様に測定した結果と比較して、澱粉損傷度を算出した。
【0062】
・ケーキの最大応力測定
電子レンジ調理したケーキを、室温にて放冷し、放冷開始から2分後、5分後、10分後、15分後、20分後のケーキを、テクスチャーアナライザー(製品名「Texture Analyzer TA−XT2i」、Stable Micro Systems製)を用い、直径20mmの円筒型のプランジャーにて、5mm/秒で20mm圧縮し、圧縮時の最大応力を測定した。
【0063】
・ケーキの官能評価
電子レンジ調理したケーキを、室温で2分放冷(表面温度 約70℃)したケーキ、10分放冷(表面温度 約25℃)したケーキのやわらかさ、しっとり感、舌触り、風味、総合評価を、5人のパネラーにより官能評価した。○:良好、△:許容範囲内、×:不可の3段階で評価した。
【0064】
・ケーキの膨らみ具合
電子レンジ調理した直後のケーキの中央部の高さを測定した。
【0065】
[製造例1]
下記表1に示す殻粉23質量部と、砂糖52.8質量部と、植物油脂20質量部と、乳化剤3質量部と、膨張剤1.2質量部とを、ミキサー(「ハイフレックスグラル HF−GS−2J」 深江パウテック製)に投入し、5分間混合して、試料1〜8のケーキ用プレミックスを調製した。
【0066】
【表1】

【0067】
次に、各試料のケーキ用プレミックス100gに、卵52g、牛乳30gを、プレミックスのダマがなくなるまで混ぜ合わせてケーキ生地を作成した。
このケーキ生地をプラスチック製容器に入れ、電子レンジ(高周波出力600W)にて、2分30秒間加熱したのちプラスチック製容器から取り出し、得られたケーキの最大応力、膨らみ具合、官能評価を行った。結果を表2に記す。
【0068】
【表2】

【0069】
上記結果より、米粉のアミロース含量が18質量%で、澱粉損傷度が6%以下である米粉1〜5を用いたケーキ用プレミックスは、電子レンジ調理後の膨らみが良いものであった。また、調理直後の最大応力が低く、ソフトな食感を有するものであり、また、調理から時間が経過しても最大応力が低く、食感が硬くなりにくかった。
【0070】
[製造例2]
下記表3上部に示す原料をミキサー(「ハイフレックスグラル HF−GS−2J」 深江パウテック製)に投入し、5分間混合して、試料9〜16のケーキ用プレミックスを調製し、各試料のケーキ用プレミックスを用い、試験例1と同様にしてケーキを製造した。得られたケーキの最大応力、膨らみ具合、官能評価を行った。結果を表3下部に併せて記す。また、試料1のケーキ用プレミックスを用いた場合の結果も併せて記す。
【0071】
【表3】

【0072】
上記結果より、試料1と、試料9及び12との比較より、米粉の配合量を増加させるに伴い、調理後の最大応力が大きくなる傾向にあった。
また、試料1と、試料10及び11との比較により、米粉の配合量を低減させるに伴い、硬い食感になる傾向にあった。また、ケーキの膨らみが小さくなり、ボリューム感が得られ難くなる傾向にあった。
また、米粉、油脂、糖類いずれかが不足あるいは過剰な試料13〜16では、品質評価上なんらかの点が劣るケーキしか得られなかった。
【0073】
[製造例3]
試料1のケーキ用プレミックス100gに、卵52g、牛乳30gを、プレミックスのダマがなくなるまで混ぜ合わせてケーキ生地を作成した。
このケーキ生地をプラスチック製容器に入れた後、1cm角にカットしたクリームチーズ(約10g/個)を加えた。そして、電子レンジ(高周波出力600W)にて、2分30秒間加熱したのちプラスチック製容器から取り出した。
加熱中にクリームチーズがケーキ生地内部に潜り込み、溶けた状態のクリームチーズを内部に有するケーキが得られた。
【0074】
[製造例4]
試料1のケーキ用プレミックス100gに、卵52g、牛乳30gを、プレミックスのダマがなくなるまで混ぜ合わせてケーキ生地を作成した。
このケーキ生地をプラスチック製容器に入れ、電子レンジ(高周波出力600W)にて、2分30秒間加熱した。その後、容器に入れた状態のまま、ケーキ上面から半分程度の高さまで直径数mm程度の穴をあけ、この穴にチョコレートを押し込み、1分間保持したのちプラスチック製容器から取り出した。
ケーキの熱によって、ケーキ内部に挿入されたチョコレートが溶けて、溶けた状態のチョコレートを内部に有するケーキが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジで加熱調理されるケーキ用生地を作成するためのプレミックスにおいて、
アミロース含量18%以上、かつ、澱粉損傷度が6%以下である米粉15〜30質量%と、油脂15〜25質量%と、糖類40〜68質量%と、膨張剤とを含有することを特徴とするケーキ用プレミックス。
【請求項2】
電子レンジで加熱調理して出来上がったケーキを容易に離型させることができる材質からなる、加熱調理用容器を兼ねた容器に収容されている請求項1記載のケーキ用プレミックス。
【請求項3】
請求項1記載のケーキ用プレミックスに、卵と、水及び/又は牛乳とを添加混合して、ケーキ生地を調製し、このケーキ生地を所定の容器に充填して電子レンジで加熱調理することを特徴とするケーキの製造方法。
【請求項4】
前記ケーキ生地を、請求項2記載の容器に充填して電子レンジで加熱調理する請求項3記載のケーキの製造方法。
【請求項5】
前記ケーキ生地を前記容器に充填した後、その上に所定形状の熱可塑性食品素材を載せて、電子レンジで加熱調理する請求項3又は4記載のケーキの製造方法。
【請求項6】
前記ケーキ生地を前記容器に充填して電子レンジで加熱調理した後、その上に所定形状の熱可塑性食品素材を載せて、得られたケーキの温度が該熱可塑性食品素材の融点以下に低下しないうちに、該熱可塑性食品素材をケーキ内部に押し込む請求項3又は4記載のケーキの製造方法。

【公開番号】特開2011−229478(P2011−229478A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104055(P2010−104055)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】