説明

ケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キット

【課題】検体導入口から導入された検体が判定窓側に向かって迅速に流下することができるケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットを提供すること。
【解決手段】ケーシング2は、検体液Qを分析するための検体採取キットを構成するものである。このケーシング2は、底体3と、底体3に嵌合する蓋体4とを備えている。そして、蓋体4は、検体が導入される、円筒状をなす円筒部46を有する検体導入口43と、検体液Q中の分析対象物質の有無を判定する判定窓44とを有し、円筒部46は、蓋体4の内側に突出する内側突出部463を有し、内側突出部463の周方向の一部に側部開口部464が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットに関する。
【背景技術】
【0002】
被験者に対して感染症検査を行なう際に、当該検査を簡便・迅速に行なうことができる検査キットを用いることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の検査キットは、被験者から採取された検体を含む液体が収納された収納容器と、容器内の液体を滴下して、当該液体中の検体中の抗原の有無を検出する検出器具とを備えている。この検出器具は、中空の板状をなし、その上面には、収納容器からの液体が導入される導入口が形成されている。この導入口は、検出器具の内側に向かって、すり鉢状または皿状に凹没し、その底部が開口した部分となっている。また、検出器具の内部には、検体中に抗原が存在している場合に、当該抗原と接触すると呈色反応を示す反応部を有する部材が設置されている。この反応部は、導入口と検出器具の長手方向の異なる位置に配置されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の検査キットでは、前述したような形状の導入口に液体を滴下すると、当該液体は、単に下方に向かって落下するのみであり、このため、落下後に毛管現象で反応部にまで到達するのに時間が掛かり過ぎるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−46959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、検体導入口から導入された検体が判定窓側に向かって迅速に流下することができるケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1) 検体を分析するための検体採取キットを構成するケーシングであって、
前記ケーシングは、底体と、該底体に嵌合する蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記検体が導入される、円筒状をなす円筒部を有する検体導入口と、前記検体中の分析対象物質の有無を判定する判定窓とを有し、
前記円筒部は、前記蓋体の内側に突出する突出部を有し、該突出部の周方向の一部に開口部が形成されていることを特徴とするケーシング。
【0008】
(2) 前記検体導入口は、前記円筒部内に突出する針体を有する上記(1)に記載のケーシング。
【0009】
(3) 前記開口部は、前記判定窓側に向かって開口しているものである上記(1)または(2)に記載のケーシング。
【0010】
(4) 前記開口部は、前記突出部の一部が欠損して形成された切り欠きである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のケーシング。
【0011】
(5) 前記針体は、前記突出部から延出する針体支持部材に保持されている上記(1ないし(4)のいずれかに記載のケーシング。
【0012】
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のケーシングと、
前記ケーシングを保持する保持部材を備えることを特徴とするケーシングキット。
【0013】
(7) 前記保持部材は、台座部と、前記ケーシングを搭載する搭載部とを有するものである上記(6)に記載のケーシングキット。
【0014】
(8) 前記台座部は、前記搭載部よりも幅が広いものである上記(6)または(7)に記載のケーシングキット。
【0015】
(9) 前記台座部には、長尺状をなし、前記検体が収納される検体導入容器を、起立状態で載置する載置部が設けられているものである上記(7)または(8)に記載のケーシングキット。
【0016】
(10) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のケーシングと、
前記検体導入口に挿入される挿入部を有し、前記検体が収納される検体導入容器とを備えることを特徴とする検体採取キット。
【0017】
(11) 前記ケーシングを保持する保持部材をさらに備える上記(10)に記載の検体採取キット。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検体導入口から導入された検体には、開口部を介して判定窓側に向かって優先的に流下する流れが形成される。これにより、検体が判定窓側に向かって迅速に流下することができ、よって、判定窓を介して、検体中の分析対象物質の有無を目視で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の検体採取キットの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す検体採取キットが有するケーシングの平面図である。
【図3】図2中のA−A線断面図である。
【図4】図1に示す検体採取キットが有する検体導入容器の部分縦断面図である。
【図5】図3中の矢印B方向から見た図である。
【図6】本発明の検体採取キット(第2実施形態)の蓋体の突出部を示す図である。
【図7】ケーシングに検体導入容器を接続した状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の検体採取キットの第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す検体採取キットが有するケーシングの平面図、図3は、図2中のA−A線断面図、図4は、図1に示す検体採取キットが有する検体導入容器の部分縦断面図、図5は、図3中の矢印B方向から見た図、図7は、ケーシングに検体導入容器を接続した状態を示す部分縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図3〜図7中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0022】
図1に示す検体検査キット(以下単に「検査キット」と言う)1は、検体を分析するためのものであり、ケーシング2と、検体導入容器8と、ケーシング2および検体導入容器8をそれぞれ保持する保持部材9と備えている。この検査キット1では、ケーシング2と、保持部材9とでケーシングキット10が構成されている。以下、各部の構成について説明する。
【0023】
図4、図7に示す検体導入容器8は、検体を収納することができ、当該収納された検体をケーシング2に導入する際に用いられるものである。なお、検体としては、特に限定されないが、例えば、唾液、喀痰、涙液、眼脂等、その他、口腔や鼻腔の粘膜等が挙げられる。
【0024】
図4に示すように、検体導入容器8は、長尺な容器本体81と、容器本体81に挿入される採取具82と、容器本体81の下端開口部を封止する封止部材83と、容器本体81の上端開口部を封止する封止部材84とを有している。
【0025】
容器本体81は、有底筒状をなす部材で構成され、その底部に突出した口部811が形成されている。この口部811は、ケーシング2の検体導入口43に挿入される挿入部であり、この挿入状態で検体液Qを吐出することができる。なお、容器本体81には、予め緩衝液(抽出液)が充填されており、この緩衝液に検体を混合することができる。そして、緩衝液に検体が混合した検体液Qを得る。緩衝液としては、特に限定されないが、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、Tris塩酸緩衝液を用いることができる。
【0026】
なお、容器本体81の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ビニル−アセテート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリメチルペンテン、シリコン樹脂、アミノ樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0027】
また、口部811には、膜状のフィルタ部材85が設置されている。例えば検体が唾液であり、当該唾液中に食べ物の破片(食べかす)等のような異物が存在している場合、検体液Qが口部811から吐出されるときに、その異物をフィルタ部材85で捕捉することができる。フィルタ部材85としては、例えば、樹脂材料からなる焼結体や不織布等を使用することができる。
【0028】
容器本体81の口部811、すなわち、下端開口部には、封止部材83が設置されている。この封止部材83は、破断可能な樹脂製のフィルムまたはアルミ蒸着樹脂フィルムで構成され、口部811を液密に封止している。
【0029】
容器本体81の上端開口部には、封止部材84が設置されている。この封止部材84は、貫通孔841を有するリング状の蓋で構成されている。そして、封止部材84は、貫通孔841に採取具82の把持部821を挿通した状態で、容器本体81の上端開口部に嵌合して、当該上端開口部を液密に封止している。
【0030】
採取具82は、棒状をなす把持部821と、把持部821の下端部に支持され、綿からなる採取部822とで構成された綿棒である。採取具82を使用する際には、採取具82が未だ容器本体81に挿入されていない状態で、把持部821を把持し、採取部822を検体に接触させて、当該検体を採取して使用することができる。そして、採取具82を封止部材84ごと容器本体81に挿入すると、採取部822に付着した検体が容器本体81内の緩衝液に溶け出して、検体液Qが得られる。
【0031】
図3に示すように、ケーシング2は、中空体を構成する一対の半割り体である、底体3と底体3に嵌合する蓋体4とを有している。そして、底体3と蓋体4とで画成された空間21内には、検体液Qを一旦吸収する第1の吸収体51と、検体と結合する第1の物質を担持する第1の担持体52と、検体と結合する第2の物質および第3の物質を担持する第2の担持体53と、余分な検体液Qを吸収する第2の吸収体54と、これらを支持する支持板55とが収納されている。また、第1の吸収体51、第1の担持体52、第2の担持体53、第2の吸収体54は、ケーシング2の長手方向に沿ってこの順に配置され、毛管現象により検体液Qが通過する流路を構成している。
【0032】
底体3は、平面視で長方形をなす板部材で構成されている。この底体3の上面31側から蓋体4が装着される。なお、底体3および蓋体4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した容器本体81の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0033】
底体3の上面31には、底体3よりも小さい板部材で構成された支持板55が例えば接着剤による接着で固定されている、もしくは溝や突起物によって接着すること無しに支持板55が保持されている。
この支持板55に、第1の吸収体51、第1の担持体52、第2の担持体53、第2の吸収体54が支持されている。
【0034】
第1の吸収体51は、蓋体4の検体導入口43の直下に配置されている。これにより、検体導入口43から導入された検体液Qを迅速に吸収することができる。第1の吸収体51は、シート状(リボン状)をなし、その下面に第1の担持体52や第2の担持体53が一部重なった状態で形成されている。
【0035】
第1の吸収体51の下部には、板状の第1の担持体52が配置されている。これにより、第1の吸収体51で吸収された検体液Qは、第1の担持体52に向かって流下する。この第1の担持体52が担持する第1の物質は、検体液Q中の抗原と反応する抗体である。例えば、抗原がウィルスである場合、第1の物質は、標識化抗ウィルス抗体とすることができる。
【0036】
第2の担持体53は、リボン状をなし、その一端部531(図3中の左端部)が第1の担持体52と支持板55との間に挿入されている。これにより、第1の担持体52中で第1の物質と結合した検体液Qは、その状態で、第2の担持体53に向かって流下する。
【0037】
図3に示すように、第2の担持体53の長手方向の途中には、第2の物質が担持された第2の物質担持部533と、第2の物質担持部533よりも下流側(図3中の右側)に、第3の物質が担持された第3の物質担持部534とが形成されている。第2の物質は、検体液Q中の第1の物質と抗原と結合した複合体と結合すると呈色反応を示す抗体である。また、第3の物質は、第1の物質と結合すると呈色反応を示す物質である。第3の物質担持部534が発色した場合、検体液Qが第2の物質担持部533を超えて第3の物質担持部534にまで確実に到達していることを、この発色した第3の物質担持部534で確認することができる。そして、これを前提として、第2の物質担持部533が発色した場合、検体液Q中には抗原が存在しているのを、発色した第2の物質担持部533で確認することができる。一方、第2の物質担持部533が発色しなかった場合は、検体液Q中には抗原が存在していないと考えることができる。例えば、抗原がウィルスである場合、第2の物質は、抗ウィルス抗体とすることができる。また、第1の物質が前記標識化抗ウィルス抗体である場合、第3の物質は、第1の抗体特異的に結合できる抗体、例えば抗イムノグロブリン抗体とすることができる。
【0038】
第2の担持体53の他端部532には、ブロック状をなす第2の吸収体54が設置されている。第2の吸収体54は、第2の担持体53を通過してきた検体液Qを吸収して、当該検体液Qが逆流するのを防止することができる。
【0039】
なお、第1の吸収体51、第1の担持体52、第2の担持体53、第2の吸収体54の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン等の非繊維性または繊維性の多孔質材が挙げられる。
【0040】
図3に示すように、蓋体4は、平面視で長方形をなす天板41と、天板41の縁部から下方に向かって突出形成された壁部42とを有している。
【0041】
天板41には、検体導入口43と、判定窓44と、排気口45とが形成されており、これらは、天板41の長手方向に沿ってこの順番に配置されている。
【0042】
検体導入口43は、検体液Qが導入される部分であり、円筒状をなす円筒部46と、円筒部46内に突出する針体47と、針体47を円筒部46に対し支持する(保持する)針体支持部材48とを有している。
【0043】
円筒部46は、その中心軸461が天板41に対し垂直となるように形成され、天板41から上方に、すなわち、蓋体4の外側に向かって突出した外側突出部462と、天板41から下方に、すなわち、蓋体4の内側に向かって突出した内側突出部(突出部)463とに分けることができる(図3参照)。また、内側突出部463は、その内径が外側突出部462の内径よりも小さく、外側突出部462との境界部付近がテーパ状(すり鉢状)をなしている。図7に示すように、検体導入口43に検体導入容器8を接続した際には、外側突出部462に、主に検体導入容器8の容器本体81の胴部812が挿入され、内側突出部463に、主に検体導入容器8の容器本体81の口部811が挿入される。
【0044】
内側突出部463の下端内周部には、その判定窓44と反対側の部分に、中心軸461側に向かって延出する針体支持部材48が一体的に形成されている。そして、この針体支持部材48の端部には、上端に鋭利な針先471を有する針体47が一体的に形成されている。図7に示すように、検体導入口43に検体導入容器8を接続した際には、針体47の針先471で、検体導入容器8の封止部材83を破断することができる。これにより、検体導入容器8内の検体液Qは、口部811から吐出され、検体導入口43を介して、ケーシング2内に導入される。
【0045】
また、図3、図5に示すように、内側突出部463の下端部には、中心軸461を介して針体支持部材48と反対側、すなわち、判定窓44側の部分に、当該判定窓44側に向かって開口した側部開口部464が形成されている。この側部開口部464は、内側突出部463の下端部の一部が欠損した部分であり、幅wが上下方向(中心軸461方向)に沿って一定となっている。このような構成の側部開口部464により、検体導入容器8の口部811から吐出された検体液Qは、第1の吸収体51に到達するまでの過程で、内側突出部463の下端開口部465を介して下方に流下するものの他に、側部開口部464を介して判定窓44側にも優先的に流下するものもある(図7参照)。これにより、検体液Qの判定窓44側に向かう流れが促進され、よって、検体液Qが第2の物質担持部533や第3の物質担持部534へ迅速に流下することができる。そして、第2の物質担持部533および第3の物質担持部534での呈色反応を判定窓44を介して視認することができる。
【0046】
また、図5、図7に示すように、検体導入口43に検体導入容器8を接続した際、側部開口部464の高さhの範囲内に、前記破断された封止部材83が位置する。これにより、当該破断された封止部材83から側部開口部464に向かう検体液Qの流れが確実に形成され、よって、検体液Qが判定窓44側により迅速に流下することができる。
【0047】
判定窓44は、前述したように第2の物質担持部533および第3の物質担持部534での呈色反応を視認する、すなわち、検体液Q中の抗原(分析対象物質)の有無を判定するための部分である。図2、図3に示すように、この判定窓44は、第2の物質担持部533および第3の物質担持部534に対応する位置に、天板41をその厚さ方向貫通する貫通孔で構成されている。
【0048】
排気口45は、ケーシング2の空間21内の空気を排出する部分である。これにより、空間21内を検体液Qが確実に流下することができる。なお、排気口45は、天板41をその厚さ方向貫通する少なくとも1つ(本実施形態では3つ)の貫通孔で構成されている(図2、図3参照)。
【0049】
図1に示すように、ケーシング2は、保持部材9に保持される。保持部材9は、板状の台座部91と、台座部91の上面911に設置され、ケーシング2が搭載される搭載部92と、検体導入容器8が載置される載置部93と有している。なお、保持部材9の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した容器本体81の説明で挙げたような材料を用いることができる。
【0050】
台座部91は、平面視で円形状をなす円形部912と、円形部912の外周部の一部に一体的に形成され、平面視で長方形をなす長方形部913とで構成されている。長方形部913は、その長さが円形部912の直径と同じかまたはそれより大きく、幅が円形部912の直径よりも小さい部分となっている。
【0051】
搭載部92は、台座部91の幅方向の中央部に位置している。搭載部92は、ケーシング2の一端部が当接する当接片921と、ケーシング2をその幅方向に挟持する一対の挟持片922、923とを有している。当接片921、挟持片922、923は、それぞれ、台座部91の円形部912に配置されている。
【0052】
当接片921は、台座部91から突出した突片または壁部であり、平面視で「コ」字状をなしている。この当接片921にケーシング2の一端部が当接することにより、ケーシング2は、保持部材9に対するその長手方向の位置決めがなされる。
【0053】
挟持片922、923は、台座部91から突出した突片であり、当接片921よりも台座部91の長方形部913側に位置している。挟持片922と挟持片923とは、ケーシング2の幅とほぼ同等またはそれよりも若干小さい離間距離をおいて互いに対向している。挟持片922と挟持片923とにケーシング2が挟持されることにより、ケーシング2は、保持部材9に対するその幅方向の位置決めがなされる。
【0054】
また、挟持片922の頂部には、ケーシング2の蓋体4に係合する係合部である爪924が形成されている。これにより、ケーシング2は、保持部材9に対するその厚さ方向、すなわち、上下方向の位置決めがなされる。なお、挟持片923にも、挟持片922と同様の爪924が形成されていてもよい。このように、「爪」は、挟持片922および挟持片923のうちの少なくとも一方に形成されているのが好ましい。
【0055】
このように位置決めされたケーシング2では、当該ケーシング2内を、後述するように検体液Qが流下する際、デバイスが安定し、検体検査を確実に行なうことができる。
【0056】
また、図1に示す構成では、台座部91は、その幅が搭載部92の幅よりも広くなっている。これにより、搭載部92にケーシング2を搭載する際、その操作を安定して容易に行なうことができる。また、下方に向かって部材が大きくなっていることから、検体導入容器8を搭載したときに全体を安定させると言う利点がある。
【0057】
台座部91の円形部912には、検体導入容器8を一時的に載置する載置部93が設けられている。載置部93は、搭載部92と異なる位置に配置され、リング状に突出している。このリング状をなす載置部93の内径は、検体導入容器8の容器本体81の外径とほぼ同等かまたはそれより若干大きく設定されている。また、載置部93の中心部には、円形部912を貫通する貫通孔914が形成されている。貫通孔914は、その内径が容器本体81の口部811の外径よりも大きく設定されている。
【0058】
載置部93に検体導入容器8を口部811側から挿入すると、検体導入容器8は、容器本体81が載置部93に嵌合することとなり、よって、起立状態で載置される。このとき、検体導入容器8の口部811は、貫通孔914に挿入される。このように検体導入容器8が起立状態で載置されることにより、検体導入容器8が傾倒して、検体液Qがこぼれてしまうのを確実に防止することができる。
【0059】
従来は、多数の検体導入容器8が試験管立てに立てられていた。このため、多数の検体導入容器8うちの1つの検体導入容器8を選択してケーシング2で検査する際、その選択した検体導入容器8と、検査後のケーシング2とを取り違えるおそれがあった。しかしながら、検査キット1では、搭載部92および載置部93が設けられていることにより、1つの保持部材9上で、1つの検体導入容器8と1つのケーシング2とが一括して保持され、よって、前記取り違えを確実に防止することができる。
【0060】
また、図1に示す構成では、保持部材9の搭載部92にケーシング2を搭載した際には、ケーシング2の検体導入口43が保持部材9の円形部912側に位置しているが、この位置関係には、限定されない。例えば、ケーシング2の検体導入口43が保持部材9の長方形部913側に位置してもよい。この場合、ケーシング2の検体導入口43と、載置部93とが、できるだけ離間した位置関係、すなわち、保持部材9の両端部側にそれぞれ位置することとなる。例えば、検体導入口43と載置部93とが互いに隣接している、すなわち、近接した位置関係にある場合、検体導入容器8を載置部93に載置しようとして、誤って検体導入口43に載置してしまう、または、載置してしまいそうになる。しかしながら、検体導入口43と載置部93とが前述したように離間した位置関係にあることにより、前記誤載置を確実に防止することができる。また、封止部材83を保護することで、不注意による封止部分の開封を防止することができ、不必要な感染を防ぐことが可能であると言う利点がある。
【0061】
<第2実施形態>
図6は、本発明の検体採取キット(第2実施形態)の蓋体の突出部を示す図である。
【0062】
以下、この図を参照して本発明のケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、開口部の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0063】
図6に示すように、蓋体4Aでは、内側突出部463の側部開口部464は、その幅wが下方に向かって徐々に広がった部分となっている。これにより、検体液Qの判定窓44側に向かう流れがさらに促進され、よって、検体液Qが第2の物質担持部533や第3の物質担持部534へ迅速に流下することができ、各担持部でのそれぞれの呈色反応を判定窓44を介して確認することができる。
【0064】
以上、本発明のケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ケーシング、ケーシングキットおよび検体採取キットを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0065】
また、針体は、検体導入口の円筒部から突出形成されたものに限定されず、例えば、底体の上面から上方に向かって突出形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 検体検査キット(検査キット)
10 ケーシングキット
2 ケーシング
21 空間
3 底体
31 上面
4、4A 蓋体
41 天板
42 壁部
43 検体導入口
44 判定窓
45 排気口
46 円筒部
461 中心軸
462 外側突出部
463 内側突出部(突出部)
464 側部開口部
465 下端開口部
47 針体
471 針先
48 針体支持部材
51 第1の吸収体
52 第1の担持体
53 第2の担持体
531 一端部
532 他端部
533 第2の物質担持部
534 第3の物質担持部
54 第2の吸収体
55 支持板
8 検体導入容器
81 容器本体
811 口部
812 胴部
82 採取具
821 把持部
822 採取部
83、84 封止部材
841 貫通孔
85 フィルタ部材
9 保持部材
91 台座部
911 上面
912 円形部
913 長方形部
914 貫通孔
92 搭載部
921 当接片
922、923 挟持片
924 爪
93 載置部
Q 検体液
w 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析するための検体採取キットを構成するケーシングであって、
前記ケーシングは、底体と、該底体に嵌合する蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記検体が導入される、円筒状をなす円筒部を有する検体導入口と、前記検体中の分析対象物質の有無を判定する判定窓とを有し、
前記円筒部は、前記蓋体の内側に突出する突出部を有し、該突出部の周方向の一部に開口部が形成されていることを特徴とするケーシング。
【請求項2】
前記検体導入口は、前記円筒部内に突出する針体を有する請求項1に記載のケーシング。
【請求項3】
前記開口部は、前記判定窓側に向かって開口しているものである請求項1または2に記載のケーシング。
【請求項4】
前記開口部は、前記突出部の一部が欠損して形成された切り欠きである請求項1ないし3のいずれかに記載のケーシング。
【請求項5】
前記針体は、前記突出部から延出する針体支持部材に保持されている請求項1ないし4のいずれかに記載のケーシング。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のケーシングと、
前記ケーシングを保持する保持部材を備えることを特徴とするケーシングキット。
【請求項7】
前記保持部材は、台座部と、前記ケーシングを搭載する搭載部とを有するものである請求項6に記載のケーシングキット。
【請求項8】
前記台座部は、前記搭載部よりも幅が広いものである請求項6または7に記載のケーシングキット。
【請求項9】
前記台座部には、長尺状をなし、前記検体が収納される検体導入容器を、起立状態で載置する載置部が設けられているものである請求項7または8に記載のケーシングキット。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれかに記載のケーシングと、
前記検体導入口に挿入される挿入部を有し、前記検体が収納される検体導入容器とを備えることを特徴とする検体採取キット。
【請求項11】
前記ケーシングを保持する保持部材をさらに備える請求項10に記載の検体採取キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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