説明

ケーシングの防水構造

【課題】従来のものでは、発熱線ユニットは細径の針金状の金属線で構成されているため、発熱線ユニットが変形すると、溝に発熱線ユニットをセットしても発熱線ユニットが溝から上方に飛び出し、上型の凸部を溝に嵌める際に、発熱線ユニットが溝と凸部との間に噛み込む恐れが生じる。
【解決手段】発熱線ユニットを溝に収納させた状態で発熱線ユニットの両短尺部を各々溝内から逸脱しないように固定する固定部を下型に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴室の壁面に取り付けられるリモコンやテレビ等のケーシングの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上型と下型とから構成される樹脂製のケーシングであって、下型の合わせ面にケーシングの内部空間を囲む環状の溝を形成する。一方、上型の合わせ面にはこの溝に嵌まる突部が形成されている。下型の溝に発熱線を収納させた状態で上型を下型に合わせると、凸部の先端が発熱線を溝の底部に押し付けることになる。その状態で発熱線に通電して発熱線を加熱すると、凸部の先端部分と溝の底部とが溶融して相互に溶着する。その状態で発熱線への通電を停止して溶融した部分を冷却し再硬化させると、上型と下型とは合わせ面の全周にわたって切れ目無く密着し、ケーシングの内部が水密に密閉させることになる。上記発熱線はコ字状に形成された2本の発熱線ユニットから構成されており、一本ずつ溝にセットされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−350151号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものでは、発熱線ユニットは細径の針金状の金属線で構成されているため、溝にセットする前の段階で発熱線ユニットが変形しやすい。発熱線ユニットは本体は1個の平面を形成するように形成され、平坦な面に載置すると発熱線ユニットの全ての部分が平坦な面から浮き上がること無く面に接地する。ところが、発熱線ユニットが変形すると、平坦な面に載置した際に、一部が浮き上がることになる。このような変形をすると、溝に発熱線ユニットをセットしても発熱線ユニットの一部が溝から上方に飛び出し、上型の凸部を溝に嵌める際に、発熱線ユニットが溝と凸部との間に噛み込む恐れが生じる。
【0005】
このような場合に、溝に発熱線ユニットをセットすると発熱線ユニットが溝から飛び出さないように発熱線ユニットを押さえる何らかの構造を溝に設けることが考えられる。ところが、例えば溝の入り口に弾性変形する爪を設け、発熱線ユニットを溝にセットする際に発熱線ユニットがその爪を外側に拡げ、セット後は元の姿勢に戻るような構成を採用すると、爪にアンダーカット形状を設けなければならないので射出成型の工程が複雑になる。
【0006】
あるいは、溝に狭所を設けて発熱線ユニットをこの狭所に挟み込むことも考えられるが、狭所部分が塑性変形するため、割れなどが発生する恐れが生じる。
【0007】
さらに、発熱線ユニットが1カ所の長尺部とその両端に短尺部を備えたコ字状であるため、長尺部を拘束する際に長尺部を変形させてしまい撓ませた状態で発熱させると、固定部が溶融して長尺部の撓みが開放されて、溝の側壁を溶融してしまう恐れも生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上述のような不具合の生じないケーシングの防水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によるケーシングの防水構造は、上型と下型とを合わせたケーシングであって、下型の周囲に形成された溝に発熱線を収納させ、上型の周囲に形成した凸部をこの溝に嵌め込んで凸部で発熱線を発熱させることにより凸部および溝の底部を溶融させ、凸部と溝とを相互に溶着させることによりケーシングの内部を水密に封止したケーシングの防水構造において、上記溝を長方形に形成すると共に、発熱線を、溝の長辺部分に嵌め込まれる長尺部と、この長尺部の両端からほぼ直角に曲げられ、溝の短辺部分のほぼ中間位置までに嵌め込まれる短尺部とからなるコ字状に形成された2本の発熱線ユニットで構成し、発熱線ユニットを溝に収納させた状態で発熱線ユニットの両短尺部を各々溝内から逸脱しないように固定する固定部を下型に形成したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、短尺部を固定部により固定するので、長尺部は拘束されない。そのため、発熱線ユニットを溝にセットする際に長尺部を変形させてしまう恐れが少ない。
【0011】
また、上記固定部は、溝の1対の内壁面のうち、一方の内壁面から突出した、発熱線ユニットの短尺部の長さ方向に沿って所定距離離れた第1および第2の突起と、他方の内壁面から突出した、第1および第2の突起の間に位置する第3の突起とから構成され、発熱線ユニットを溝に収納させた状態で、これら第1から第3の突起によって発熱線ユニットの断片部が湾曲されることによって発熱線ユニットの短尺部が溝内から逸脱しないように固定すれば、固定部にアンダーカットを設ける必要が無く、かつ発熱線ユニットをセットする際に固定部を塑性変形させてしまう恐れも無い。
【0012】
さらに、溝の上部開口を両側から挟んで対峙する斜面であって、溝側に向かって下り傾斜することにより、発熱線ユニットを溝内に収納させる際に発熱線ユニットをガイドするガイド部を、少なくとも上記第1から第3の突起の上部に設けておけば、発熱線ユニットを手作業でセットする際に作業が容易になり、あるいはセット作業を自動化する際にロボットによるセット作業を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、発熱線ユニットを下型の溝にセットする際に、長尺部を変形させること無く発熱線ユニットの溝からの飛び出しを防止することができるので、上型の凸部を溝に確実に嵌合させることができ、かつ長尺部が溝の側壁を必要以上に溶融することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による浴室テレビ装置の設置状態を示す図
【図2】ケーシングの構造を示す分解図
【図3】下型と発熱線ユニットの形状を示す図
【図4】固定部の詳細を示す図
【図5】固定部による固定状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は本発明が適用されるケーシングを採用した浴室テレビである。この浴室テレビ1は浴室内の壁面に取り付けられるものであり、湯水がかかった場合、内部に湯水が浸入すると内部の電子装置がショートするなどして故障する。そのため、ケーシング内部に湯水が浸入しないように、ケーシングは防水構造を採用する必要がある。
【0016】
図2を参照して、この浴室テレビ1のケーシングは上型2と下型3とから構成されている。そして、そのケーシング内に電子装置12が収納される。なお、11は上型2の前面に着脱自在に装着される化粧用のカバーである。
【0017】
上型2と下型3とは上述のように湯水が浸入しないように全周にわたって接合されなければならない。そのためには上型2と下型3とを全周にわたって接着剤により接着することも考えられるが、接着剤が硬化するまでケーシングを保持しなければならず生産性が損なわれる。
【0018】
そこで、上型2と下型3との接合部分を一旦溶融させて融合させ、その後冷却させて再硬化させることにより上型2と下型3とを接合することとした。なお、このように上型2と下型3とを加熱することにより溶融する必要があるので、両者は共に熱可塑性の樹脂で射出成形されている。
【0019】
図3を参照して、下型3の接合部分に全周にわたって溝31を形成した。この溝31に互いに同一形状の1対の発熱線ユニット4をセットし、図示しないが上型2の接合面に全周にわたって形成した突部をこの溝31に嵌合させ、その状態で発熱線ユニット4に通電して発熱させることにより、溝31の底部と凸部の先端部分とを溶融するようにした。なお、発熱線ユニット4に通電するための電極が挿入される孔が溝31の左右部分に各1個ずつ設けられている。
【0020】
発熱線ユニット4は図示のように1個の長尺部41とその長尺部41の両端に略90度折れ曲がって連続する短尺部42とから構成されている。この発熱線ユニット4を溝31内にセットする必要があるが、発熱線ユニット4が細い線材で形成されているので、発熱線ユニット4が変形していると、発熱線ユニット4の一部が溝31内に収まらない場合が生じる。そこで、発熱線ユニット4を溝31内で保持する保持構造を溝31に設けた。
【0021】
図4および図5を参照して、保持構造として溝31の短尺部42が収納される部分に3個の突起32,32,33を設けた。これらのうち、2個の突起32,32は溝31の内壁のうちの一方に、所定の間隔を開けて形成されている。また、残りの突起33は内壁の他方に形成され、かつ他の2個の突起32,32に挟まれる位置に形成されている。
【0022】
このように3個の突起32,32,33が形成されていると、発熱線ユニット4を溝31にセットした場合に、図5に示すように、発熱線ユニット4の短尺部42が湾曲され、その湾曲が戻ろうとする弾性力によって短尺部42が各突起32,32,33に押し付けられることになる。そして、その押し付け力による摩擦力によって短尺部42が溝31内から浮き出ることが防止される。
【0023】
ところで、各突起32,32,33の上部に各々ガイド部32a,32a,33aを設けた。これらガイド部32a,32a,33aは溝31の上部開口を両側から挟んで対峙する斜面であって、溝31側に向かって下り傾斜することにより、発熱線ユニット4を溝31内に収納させる際に発熱線ユニット4をガイドするものである。また、これら ガイド部32a,32a,33aの他に、同様の機能を奏するガイド部34も合わせて設けた。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 浴室テレビ
2 上型
3 下型
4 発熱線ユニット
31 溝
32 突起
33 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを合わせたケーシングであって、下型の周囲に形成された溝に発熱線を収納させ、上型の周囲に形成した凸部をこの溝に嵌め込んで凸部で発熱線を発熱させることにより凸部および溝の底部を溶融させ、凸部と溝とを相互に溶着させることによりケーシングの内部を水密に封止したケーシングの防水構造において、上記溝を長方形に形成すると共に、発熱線を、溝の長辺部分に嵌め込まれる長尺部と、この長尺部の両端からほぼ直角に曲げられ、溝の短辺部分のほぼ中間位置までに嵌め込まれる短尺部とからなるコ字状に形成された2本の発熱線ユニットで構成し、発熱線ユニットを溝に収納させた状態で発熱線ユニットの両短尺部を各々溝内から逸脱しないように固定する固定部を下型に形成したことを特徴とするケーシングの防水構造。
【請求項2】
上記固定部は、溝の1対の内壁面のうち、一方の内壁面から突出した、発熱線ユニットの短尺部の長さ方向に沿って所定距離離れた第1および第2の突起と、他方の内壁面から突出した、第1および第2の突起の間に位置する第3の突起とから構成され、発熱線ユニットを溝に収納させた状態で、これら第1から第3の突起によって発熱線ユニットの断片部が湾曲されることによって発熱線ユニットの短尺部が溝内から逸脱しないように固定することを特徴とする請求項1に記載のケーシングの防水構造。
【請求項3】
溝の上部開口を両側から挟んで対峙する斜面であって、溝側に向かって下り傾斜することにより、発熱線ユニットを溝内に収納させる際に発熱線ユニットをガイドするガイド部を、少なくとも上記第1から第3の突起の上部に設けたことを特徴とする請求項2に記載のケーシングの防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−26258(P2013−26258A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156369(P2011−156369)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】