説明

ケーシング圧入装置およびケーシング圧入方法

【課題】三角形の特に狭隘なコーナー地盤で、隣地から離れた箇所にケーシングを圧入できるケーシング圧入装置。
【解決手段】地盤に接地するベースフレーム1と、ベースフレーム1上に昇降シリンダ3にて昇降自在に支持された昇降フレーム2と、鋼管杭またはケーシングPを地盤に回転圧入させる回転駆動圧入機構Kとを備える。ベースフレーム1および昇降フレーム2のケーシング挿通口8の中心を掘削中心Cとする。一対の昇降油圧シリンダ3は、機体の重心Gより前方にあって、左右ラインE上の掘削中心Cを挟んで左右対称位置に設ける。機体の重心Gは、平面視前後ライン上であって掘削中心Cより機体後側に位置するように設定し、掘削中心Cに重心Gが一致するように補正する重心位置調整油圧シリンダ35を、重心Gよりも後側の前記ベースフレーム1と昇降フレーム2の間に設けたケーシング圧入装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鋼管杭あるいはケーシングを地盤に圧入させるケーシング圧入装置およびその方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平面視略矩形のベースフレームを地盤上に水平に接地させ、ベースフレームに対して昇降フレームを昇降シリンダにより昇降させ、ケーシングを地盤に圧入する方法は、公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−202370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例では、ベースフレームを平面視で矩形形状に形成しているので、建造物が建てこんだ空地等の、特に狭隘なコーナー地盤では、フレームを境界線近くに接近させても三角形のスペースが生じ、その分、隣地から離れた箇所にしかケーシングを圧入できないという課題がある。
本願は、狭隘なコーナー地盤等で隣地との境界線に可及的に接近させてケーシング圧入施工を可能にすると共に、ケーシング圧入精度を向上させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、
地盤に接地するベースフレーム1と、該ベースフレーム1上に昇降シリンダ3にて昇降自在に支持された昇降フレーム2と、鋼管杭またはケーシングPを地盤に回転圧入させる回転駆動圧入機構Kとを備え、
前記ベースフレーム1と昇降フレーム2は、ベースフレーム1および昇降フレーム2の夫々の後側部分を、平面視略矩形のベース基盤4と昇降基盤5に形成し、前記ベースフレーム1および昇降フレーム2の夫々の前側部分は、前記ベース基盤4および昇降基盤5から前方に至るに従い左右幅の狭くなって先端部Tを有した略三角形状となるベース三角盤6と昇降三角盤7とに形成して構成し、
前記ベースフレーム1および昇降フレーム2には、前記鋼管杭またはケーシングPを挿入する上下に貫通する円形のケーシング挿通口8を夫々設け、前記ケーシング挿通口8の中心となる掘削中心Cは、前記昇降三角盤7の先端である先端部Tを通る前後方向の前後ラインD上であって、ベース基盤4および昇降基盤5とベース三角盤6および昇降三角盤7との境目となる左右方向の左右ラインE上に位置する構成とし、
前記一対の昇降油圧シリンダ3は、前記ベースフレーム1上において、機体の重心Gより前方にあって、前記左右ラインE上の掘削中心Cを挟んで左右対称位置に設け、
前記機体の重心Gは、平面視前記前後ラインD上であって前記掘削中心Cより機体後側に位置するように設定し、前記掘削中心Cに前記重心Gが一致するように補正する重心位置調整油圧シリンダ35を、前記重心Gよりも後側の前記ベースフレーム1と昇降フレーム2の間に設けたケーシング圧入装置としたものである。
請求項2の発明は、
平面視略矩形のベース基盤4と昇降基盤5と、前記ベース基盤4および昇降基盤5から前方に至るに従い左右幅の狭くなって先端部Tを有した略三角形状のベース三角盤6と昇降三角盤7とを有する、ベースフレーム1および昇降フレーム2を、地盤上に水平に接地させ、このベースフレーム1と昇降フレーム2の挿通口8に上方からケーシングPを挿通し、前記ベースフレーム1に対して昇降フレーム2を昇降シリンダ3により昇降させ、ケーシングPを地盤に圧入する際に、前記挿通口8の掘削中心Cが通る前後方向の前後ラインD上であって、掘削中心Cに対して機体後側に位置するように予め設定している機体重心Gが、掘削中心Cに一致するように重心位置調整油圧シリンダ35により補正しながら昇降フレーム2を昇降させてケーシングPの圧入作業を行うケーシング圧入方法としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、狭隘なコーナー地盤にフレーム1の三角盤6の先端部Tを可及的に接近させた状態で接地でき、ケーシングを隣地との境界線に近い位置で容易に圧入作業を行うことができると共に、コーナー地盤に合わせた平面形状としたフレームの重心Gの位置を重心位置調整油圧シリンダ35により補正できるので、ケーシング圧入精度を向上させることができ、その結果、機体の摩耗や損傷を抑制でき、更に、装置全体の平面形状を非対称形状にする等の設計の自由度を向上させることができる。
請求項2の発明では、狭隘なコーナー地盤での作業を容易にする機体形状でありながら、ケーシング圧入精度を向上させることができ、圧入作業の容易化と作業精度の向上とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】圧入装置の平面図。
【図2】同側面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】本装置の重心を示す略線平面図。
【図5】昇降ガイドポストの縦断面図。
【図6】本装置の重心の補正状態を示す概略平面図。
【図7】圧入装置の概略側面図。
【図8】圧入装置の油圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例について図面により説明すると、1は本装置の地盤に接地すべき水平ベースフレームであり、該ベースフレーム1上に昇降フレーム2を設ける。昇降フレーム2はベースフレーム1に対して左右一対の昇降油圧シリンダ3により平行して昇降自在に取付ける。
前記ベースフレーム1および昇降フレーム2は、互に略同一形状の平面盤で形成する。ベースフレーム1および昇降フレーム2は、このベースフレーム1および昇降フレーム2の後側部分を、平面視矩形のベース基盤4と昇降基盤5に形成する。ベースフレーム1および昇降フレーム2の前側部分は、ベース基盤4と昇降基盤5から前方に至るに従い左右幅の狭くなる三角形状のベース三角盤6と昇降三角盤7に形成する。
ベース三角盤6と昇降三角盤7の先端は先端部Tとし、この先端部Tを通る前後方向の前後ラインD上に掘削中心Cが位置する円形の上下に貫通するケーシング挿通口8を、ベースフレーム1および昇降フレーム2に夫々設ける。
ケーシング挿通口8は、鋼管杭またはケーシングPを挿通させるものであり、ベース基盤4および昇降基盤5とベース三角盤6および昇降三角盤7との境目となる左右方向の左右ラインE上に掘削中心Cが位置するように配置する。
前記一対の昇降油圧シリンダ3は、ベースフレーム1側に各シリンダ3の一端を取付け、各シリンダ3の他端を昇降フレーム2側に取付ける。
【0009】
前記一対の昇降油圧シリンダ3は、後述する機体重心Gより前方にあって、前記左右ラインE上の掘削中心Cを挟んで左右対称位置の前記ベースフレーム1上に設ける。
前記ベースフレーム1および昇降フレーム2には、左右一対の昇降ガイドポスト10を設ける。各昇降ガイドポスト10は、ベースフレーム1に設けた内筒11に昇降フレーム2に設けた外筒12を摺動自在に嵌合させて構成する(図5)。
昇降ガイドポスト10は、平面視で前記昇降シリンダ3の後方であって前記前後ラインDを境にして左右対称位置に配置する。
【0010】
前記昇降フレーム2のケーシング挿通口8に対応する位置に、鋼管杭またはケーシングPを地盤に回転圧入させる回転駆動圧入機構Kの一部を構成する回転円筒15をベアリング16を介して回転自在に取付ける。
該回転円筒15の外周に固定された大歯車17にアイドル歯車18を噛み合わせる。各アイドル歯車18には一対の油圧モータ19の出力軸に固定された各駆動歯車20を噛み合わせ、油圧モータ19の回転により回転円筒15を回転させる。
【0011】
前記油圧モータ19は、昇降フレーム2の昇降基盤5の後部に前記前後ラインDを境とする左右対称位置に設ける。同様に、前記大歯車17と駆動歯車20とアイドル歯車18の夫々も、平面視で前記前後ラインDを境に左右対称位置に設置する。
前記昇降フレーム2の上方には、回転駆動圧入機構Kの一部を構成するケーシング挿通口25を有するチャック用スライドフレーム26を設ける。チャック用スライドフレーム26は、ケーシング挿通口25と昇降フレーム2のケーシング挿通口8とを合致させた状態で、複数のチャック駆動用油圧シリンダ27を介して昇降フレーム2に対して上下動自在に取付ける。
【0012】
チャック用スライドフレーム26の下面には、ベアリング28を介してチャック保持リング29を回転自在に設ける。チャック保持リング29の下面には、多数のクサビ状チャックシュー30をそれぞれリンクを介して連結して設ける。各チャックシュー30は、チャック駆動用油圧シリンダ27によりチャック用スライドフレーム26を昇降フレーム2に対して下降させ、ケーシング挿通口25に挿通したケーシングPと前記回転円筒15との間に差し入れられてケーシングPを固定状態に保持する。
【0013】
ケーシングPは各チャックシュー30により固定状態に支持するので、各チャックシュー30の移動スペースを考慮して、ベースフレーム1及び昇降フレーム2のケーシング挿通口8とチャック用スライドフレーム26のケーシング挿通口25の夫々はケーシングPの外径より大径に設定している。
【0014】
前記3本のチャック駆動用油圧シリンダ27は、前記掘削中心Cを中心とする同心円上に配置し、そのうち1本のチャック駆動用油圧シリンダ27は前記先端部Tに対応する位置に、他の2本は前記前後ラインDを境に左右対称位置に設置する。実施例では3本のチャック駆動用油圧シリンダ27を互に略120度の角度間隔をあけて3箇所に配置している。
【0015】
ベースフレーム1の下面側には4本のアウトリガー32を取付ける。その4本のうちの1本は先端部Tに取りつけられ、他の2本は、後述する機体重心Gよりも前方であって前記前後ラインDを境として左右対称位置に取付け、残りの1本は前記重心Gよりも後方の前記前後ラインD上に取付ける。実施例では、前記他の2本は、前記昇降シリンダ3の直下に取付けている。
【0016】
しかして、昇降シリンダ3と掘削中心Cの前後方向の位置は一致しているので、ケーシングPの重量および引き抜きの荷重によって機体重心Gの位置に影響しないが、ベースフレーム1および昇降フレーム2の前側部分は、前方に至るに従い左右幅の狭くなる三角形状のベース三角盤6と昇降三角盤7に形成し、フレーム形状から掘削中心Cと機体重心Gとを当初から一致させるのは難しいので、本願では、予め、機体重心Gは掘削中心Cの機体後側に位置するように設定し、ベースフレーム1と昇降フレーム2の間に掘削中心Cに機体重心Gを一致するように補正させる重心位置調整油圧シリンダ35を、機体重心Gよりも後側に設ける。重心位置調整油圧シリンダ35は一端をベースフレーム1側に取付け、他端を昇降フレーム2側に取付ける。
【0017】
この場合、昇降フレーム2は昇降シリンダ3により昇降させるので、重心位置調整油圧シリンダ35は重心Gの位置の補正のみを行うに相当する荷重を発生させればよく、重心位置調整油圧シリンダ35の設定荷重を「F」としたとき、
掘削中心Cから重心位置調整油圧シリンダ35の軸心までの距離を「M」とし、
掘削中心Cから機体重心Gまでの距離を「m」とし、
機体重量Wとしたとき、

と設定する。
【0018】
即ち、昇降フレーム2を上昇させるとき、昇降シリンダ3を伸長させて上昇させると共に、重心位置調整油圧シリンダ35に設定荷重Fに相当する油を送油して伸長させる。
また、昇降フレーム2を下降させるとき、昇降シリンダ3の縮小につれて、重心位置調整油圧シリンダ35を自由縮小させるが、設定荷重Fに相当する負荷を与える。
【0019】
図8は、昇降シリンダ3および重心位置調整油圧シリンダ35の油圧回路の一例を示し、37は油圧ポンプ、38はタンク、38、39は昇降シリンダ3の切替バルブ、40、41は切替バルブ39のソレノイド、42は重心位置調整油圧シリンダ35の切替バルブ、43、44はソレノイド、45は減圧弁、46はリリーフ弁、47はリリーフ弁46の油路を切り替える切替バルブ、48は切替バルブ47のソレノイドである。
【0020】
したがって、昇降フレーム2を上昇させるとき、ソレノイド40とソレノイド43をオンにして昇降シリンダ3を伸長させ、設定圧力に減圧された圧力で重心位置調整油圧シリンダ35を伸長させ、重心Gを掘削中心Cに一致するように、移動させる。
【0021】
また、昇降フレーム2を下降させるとき、ソレノイド41とソレノイド44とソレノイド48をオンにして、昇降シリンダ3を縮小させつつ、重心位置調整油圧シリンダ35を設定圧力の負荷(抵抗)を与えつつ縮小させて、重心Gと掘削中心Cとが一致した状態を保持する。
【0022】
前記のように、本装置ではケーシングPの回転、圧入機器が、前後ラインDを境に左右対称位置に配置され、掘削中心Cに対して重心Gを機体後側に位置させているので、例えば、機体全体の重心Gは、図4に示すように前後ラインD上のX印で示した点Gとなるように、掘削中心Cの後側に設定する。
この場合、理解を容易にするため、図4では、重心位置調整油圧シリンダ35を作動(伸縮)させる以前の機体重心Gと掘削中心Cとの位置関係の一例を示しており、実施例ではケーシング挿通口8の外側に機体重心Gを図示しているが、機体重心Gは掘削中心Cより後側であればよいので、ケーシング挿通口8内に機体重心Gが位置するように設定してもよい。
【0023】
なお、機体重心Gの位置は装置によって多少前後に誤差が生じることがあるので、実施例では、油圧モータ19やウエイト(図示省略)等の各部(各装置)を機体重心Gが掘削中心Cより後側に位置するように設計して、かつ、実測で重心Gの位置を確認して、前記掘削中心Cから機体重心Gまでの距離の「m」を求めている。
50はベースフレーム1と昇降フレーム2のベース基盤4と昇降基盤5の後辺、51は矩形ベース基盤4と昇降基盤5の左右辺、52はベース三角盤6と昇降三角盤7の斜辺部である。
【0024】
(実施例の作用)
本装置の使用においては、例えば、狭隘なコーナー地盤では、コーナー地盤にベース三角盤6と昇降三角盤7の各斜辺部52を対峙させつつ、ベースフレーム1と昇降フレーム2のベース三角盤6と昇降三角盤7の先端部Tを、コーナー地盤の角部に接近させる。
したがって、ベースフレーム1と昇降フレーム2の先端部Tと隣地との距離と、ベース三角盤6と昇降三角盤7の各斜辺部52と隣地との距離とが略同じなるほど境界線に接近させて設置でき、無駄なスペースを発生させない。
【0025】
ベースフレーム1の下面側に設けた4本のアウトリガー32の4本のうちの1本は先端部Tに取付けられ、他の2本は、前記重心Gよりも前方であって前記前後ラインDを境として左右対称位置に取付けられ、残りの1本は前記重心Gよりも後方の前記前後ラインD上に取付けているので、各アウトリガー32を傾斜に合わせて接地させると、ベースフレーム1と昇降フレーム2の前後左右方向において水平状態に接地させられる。
このとき、先端部Tのアウトリガー32がベース三角盤6と昇降三角盤7を安定状態に保持する。
【0026】
次に、ケーシングPをクレーンで吊り、ケーシング挿通口25と、各挿通口8と、回転円筒15とに、上方から挿通する。
【0027】
次に、チャック駆動用油圧シリンダ27によりチャック用スライドフレーム26を昇降フレーム2に対して下降させ、ケーシング挿通口25に挿通したケーシングPと前記回転円筒15との間に、各チャックシュー30を差し入れてケーシングPを回転円筒15に固定状態にする。
この状態で、油圧モータ19を回転させて回転円筒15を回転させると、ケーシングPの回転が開始する。
【0028】
次に、昇降油圧シリンダ3及び重心位置調整油圧シリンダ35の駆動によりケーシングPを地中に圧入する。
このように、狭隘なコーナー地盤の角部に、ベースフレーム1および昇降フレーム2のベース三角盤6および昇降三角盤7の先端部Tを差し入れて、ベース三角盤6と昇降三角盤7の斜辺部52、52を対峙させられるので、ケーシングPを狭隘なコーナーの隣地との境界線に近い位置であっても垂直圧入させられる。
【0029】
この場合、本装置は、昇降シリンダ3と掘削中心Cの前後方向の位置は一致しているので、ケーシングPの重量および引き抜きの荷重は重心Gの位置に影響しないが、製品の構造に起因して少なくとも、重心Gは掘削中心Cに対して機体後側に位置するように設定し、しかも、掘削中心Cと機体重心Gとが前後方向において一致するように補正する重心位置調整油圧シリンダ35を機体重心Gの後側に設けているので、昇降フレーム2の昇降の際に、昇降シリンダ3の伸縮に合わせて重心位置調整油圧シリンダ35を伸縮させ、機体重心Gと掘削中心Cとが一致するよう補正する。
【0030】
昇降フレーム2は昇降シリンダ3により昇降し、重心位置調整油圧シリンダ35も昇降フレーム2の昇降に伴い昇降シリンダ3と同量伸縮するが、昇降シリンダ3がケーシングPを圧入させる作動力で伸縮させるのに対し、重心位置調整油圧シリンダ35の伸縮は、重心Gの位置の補正のみを行うに相当する荷重を発生させればよく、重心位置調整油圧シリンダ35の設定荷重を「F」としたとき、

と設定しているので、昇降フレーム2を上昇させるとき、昇降シリンダ3を伸長させて上昇させると共に、重心位置調整油圧シリンダ35に設定荷重Fに相当する油を送油して伸長させる。
即ち、昇降フレーム2を上昇させるとき、重心位置調整油圧シリンダ35はベースフレーム1を下方に押すように作用して、重心位置調整油圧シリンダ35の設定荷重F分だけ昇降フレーム2の後部を持ち上げるように作用させることにより、後側の機体重心Gを前側に移動させて掘削中心Cと一致させる。
【0031】
また、昇降フレーム2を下降させるときは、昇降シリンダ3の縮小につれて、本来、重心位置調整油圧シリンダ35を自由縮小させるが、設定荷重Fに相当する負荷を与えて、機体重心Gと掘削中心Cとを一致させる。
即ち、重心位置調整油圧シリンダ35は昇降フレーム2の下降に抵抗を与えて昇降フレーム2の後部が必要以上に下がらないように作用させて、機体重心Gと掘削中心Cとの一致状態を保持したまま昇降フレーム2を下降させる。
そのため、本装置は、狭隘なコーナー地盤の角部であって、しかも、コーナー地盤の角部に適したフレーム形状としても、ケーシングPの圧入精度を低下させずに埋設作業を行える。
具体的には、昇降フレーム2を上昇させるときには、ソレノイド40とソレノイド43をオンにして昇降シリンダ3を伸長させ、減圧弁45により設定圧力にて重心位置調整油圧シリンダ35を伸長させて、重心Gを掘削中心Cに一致させる。
【0032】
また、昇降フレーム2を下降させるときには、ソレノイド41とソレノイド44とソレノイド48をオンにして、昇降シリンダ3を縮小させつつ、リリーフ弁46により設定圧力の負荷(抵抗)を与えつつ重心位置調整油圧シリンダ35を縮小させて、重心Gと掘削中心Cとを一致させた状態で昇降フレーム2を下降させる。
【0033】
なお、本願では、重心位置調整油圧シリンダ35を伸縮させて機体重心Gの位置を前後ラインDに沿って前方に移動させて掘削中心Cに一致させる補正を行うが、本来、左右一対の昇降ガイドポスト10により、ベースフレーム1に対して昇降フレーム2は平行状態を保持しつつ昇降するので、この昇降を案内する左右一対の昇降ガイドポスト10の内筒11と外筒12との間の当初より作動上不可欠なクリアランスの範囲で、重心位置調整油圧シリンダ35の伸縮により重心Gの位置を補正できるように、クリアランスと当初の重心Gの位置とを相対的に設定している。
【符号の説明】
【0034】
1…ベースフレーム、2…昇降フレーム、3…昇降油圧シリンダ、4…ベース基盤、5…昇降基盤、6…ベース三角盤、7…昇降三角盤、8…ケーシング挿通口、10…昇降ガイドポスト、11…内筒、12…外筒、15回転円筒、16…ベアリング、17…大歯車、18…アイドル歯車、19…油圧モータ、20…駆動歯車、25…ケーシング挿通口、26…チャック用スライドフレーム、27…チャック駆動用油圧シリンダ、28…ベアリング、29…チャック保持リング、30…チャックシュー、32…アウトリガー、35…重心位置調整油圧シリンダ、37…油圧ポンプ、38…タンク、39…切替バルブ、40、41…ソレノイド、42…切替バルブ、43、44…ソレノイド、45…減圧弁、46…リリーフ弁、47…切替バルブ、48…ソレノイド、50…後辺、51…左右辺、52…斜辺部、C…掘削中心、G…重心、M…掘削中心Cから重心位置調整油圧シリンダの軸心までの距離、m…掘削中心Cから機体重心Gまでの距離、P…ケーシング、T…先端部、W…機体重量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に接地するベースフレーム1と、該ベースフレーム1上に昇降シリンダ3にて昇降自在に支持された昇降フレーム2と、鋼管杭またはケーシングPを地盤に回転圧入させる回転駆動圧入機構Kとを備え、
前記ベースフレーム1と昇降フレーム2は、ベースフレーム1および昇降フレーム2の夫々の後側部分を、平面視略矩形のベース基盤4と昇降基盤5に形成し、前記ベースフレーム1および昇降フレーム2の夫々の前側部分は、前記ベース基盤4および昇降基盤5から前方に至るに従い左右幅の狭くなって先端部Tを有した略三角形状となるベース三角盤6と昇降三角盤7とに形成して構成し、
前記ベースフレーム1および昇降フレーム2には、前記鋼管杭またはケーシングPを挿入する上下に貫通するケーシング挿通口8を夫々設け、前記ケーシング挿通口8の中心となる掘削中心Cは、前記昇降三角盤7の先端である先端部Tを通る前後方向の前後ラインD上であって、ベース基盤4および昇降基盤5とベース三角盤6および昇降三角盤7との境目となる左右方向の左右ラインE上に位置する構成とし、
前記一対の昇降油圧シリンダ3は、前記ベースフレーム1上において、機体の重心Gより前方にあって、前記左右ラインE上の掘削中心Cを挟んで左右対称位置に設け、
前記機体の重心Gは、平面視前記前後ラインD上であって前記掘削中心Cより機体後側に位置するように設定し、前記掘削中心Cに前記重心Gが一致するように補正する重心位置調整油圧シリンダ35を、前記重心Gよりも後側の前記ベースフレーム1と昇降フレーム2の間に設けたケーシング圧入装置。
【請求項2】
平面視略矩形のベース基盤4と昇降基盤5と、前記ベース基盤4および昇降基盤5から前方に至るに従い左右幅の狭くなって先端部Tを有した略三角形状のベース三角盤6と昇降三角盤7とを有する、ベースフレーム1および昇降フレーム2を、地盤上に水平に接地させ、このベースフレーム1と昇降フレーム2の挿通口8に上方からケーシングPを挿通し、前記ベースフレーム1に対して昇降フレーム2を昇降シリンダ3により昇降させ、ケーシングPを地盤に圧入する際に、前記挿通口8の掘削中心Cが通る前後方向の前後ラインD上であって、掘削中心Cに対して機体後側に位置するように予め設定している機体重心Gが、掘削中心Cに一致するように重心位置調整油圧シリンダ35により補正しながら昇降フレーム2を昇降させてケーシングPの圧入作業を行うケーシング圧入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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