説明

ケース

【課題】 本発明は、外力が加わっても、底部において隙間が生じ難く、ワンタッチで底部が起立し得るケースを提供する。
【解決手段】 厚み180μm以上のシート材で形成され、前面2と、後面3と、底面6と、を有し、前面2と後面3の両側辺部が、第1側部折り罫線71及び第2側部折り罫線72を介して連設され、前面2の下辺部と底面6の前辺部及び後面3の下辺部と底面6の後辺部が、前方折り罫線73及び後方折り罫線74を介して連設され、底面6の面内には、中間折り罫線76が形成され、前方折り罫線73及び後方折り罫線74において底面6を谷折りし、且つ間折り罫線76において底面6を山折りして、底面6が前面2と後面3の間に折り込まれており、中間折り罫線76と前方折り罫線73の間及び中間折り罫線76と後方折り罫線74の間における底面6の面内には、第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略扁平状に折り畳み可能で、且つワンタッチで起立させることができるケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製シートや厚紙などのシート材を組み立てたケースは、様々な形態のものが知られている。
かかるケースの1つの形態として、不使用時に略扁平状に折り畳むことができ、使用時(ケース内に物品を収納する時)に箱状に形成できるケースが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、両側部分が互いに接続される2つの側板で形成された本体と、本体の上方側に設けられる蓋片と、本体の下方側に設けられる底板と、を有し、側板に仕切板が折り返し可能に形成され、仕切板は、2つの側板間に配置され、仕切板に切目が形成され、切目の内側部分に底板及び接着片が形成され、接着片を側板に接着するとともに、底板を2つの側板間に配置することによって、本体の下端側の部分が袴状に形成されているワンタッチスタンドケースが開示されている。
また、特許文献2には、一対の壁部と、前記一対の壁部の端部間を閉塞する閉塞部と、を有し、前記閉塞部が、一対の壁部の端部から延設された一対の延出部で構成され、前記一対の延出部の延出量の合計が、一対の壁部の端縁同士の間隔よりも長く形成されており、前記一対の延出部の先端同士が接続され、且つその接続部位が一対の壁部間に位置しているケースが開示されている。
【特許文献1】特開2001−2066号公報
【特許文献2】特開2006−76645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のケースは、切目の内側部分で形成された底板と仕切板との間に、隙間を有するという問題点がある。さらに、特許文献2のケースは、2つの側板以外に仕切板が設けられており、この仕切板の接着片を側板の内面に接着しなければならないので、その構造や組み立て作業が複雑である。
一方、特許文献2のケースは、底部をワンタッチで起立させることが困難である。
さらに、特許文献2のケースは、常態において、底部に隙間を殆ど有しないが、ケースに外力が加わったときに、隙間が生じ得るという問題点がある。
具体的には、特許文献2のケースは、一対の壁部の両側端に、内側方向の外力が加わると、第1延出部と第2延出部(一対の壁部の端部間を閉塞する閉塞部を構成する一対の延出部)の間で隙間が生じ得る(この隙間は、特許文献2の図3の符号Cの部分に生じる)。
【0005】
上記のように底部に隙間を有する又は隙間を生じるケースは、該隙間からケース内にゴミなどが入り込むおそれがある。また、悪意者が、前記隙間を通じてケース内に異物を挿入する可能性も否定できない。
特に、収納される物品が医薬品や食品である場合には、その性質上、底部に隙間が生じ難いケースが求められる。
【0006】
本発明の目的は、外力が加わっても、底部において隙間が生じ難く、ワンタッチで底部が起立し得るケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のケースは、厚み180μm以上のシート材を組み立てた折り畳み可能なケースであって、前面と、前記前面に対向配置された後面と、前記前面及び前記後面の下方側に配置された底面と、を有し、前記前面の一方の側辺部と前記後面の一方の側辺部が、第1側部折り罫線を介して連設され、且つ前記前面の他方の側辺部と前記後面の他方の側辺部が、第2側部折り罫線を介して連設されており、前記前面の下辺部と前記底面の前辺部が、前方折り罫線を介して連設され、且つ前記後面の下辺部と前記底面の後辺部が、後方折り罫線を介して連設されており、前記底面の面内には、前記底面を2分するように中間折り罫線が形成されており、前記前方折り罫線及び後方折り罫線において前記底面を前面及び後面に対して谷折りし、且つ前記中間折り罫線において前記底面を山折りすることにより、前記底面が前面と後面の間に折り込まれており、前記中間折り罫線と前記前方折り罫線の間における前記底面の面内には、前記中間折り罫線の両端部又は該両端部の近傍から前方折り罫線側に向けて傾斜した部分を有する第1傾斜折り罫線が形成され、前記中間折り罫線と前記後方折り罫線の間における前記底面の面内には、前記中間折り罫線の両端部又は該両端部の近傍から後方折り罫線側に向けて傾斜した部分を有する第2傾斜折り罫線が形成されている。
【0008】
上記ケースは、使用に際して、前面及び後面の両側辺部を内側に押圧することによって、前面及び後面が円弧面状となって外側へ膨らむ。同時に、その押圧力と前面及び後面が外側へ膨らむ際に生じる引張り力とが、前面と後面の間に折り込まれていた底面に作用し、底面の一部分が、第1傾斜折り罫線及び第2傾斜折り罫線において略直角状に折れ曲がると共に、中間折り罫線において山折りされていた部分が略平坦状となる。
従って、上記底面のうち、第1傾斜折り罫線及び第2傾斜折り罫線で囲われた領域が、両傾斜折り罫線に従って略円弧面状に起立し、前記領域によってケースの底部が形成される。
このように、前面及び後面の両側辺部を押圧することによって上記底部を形成できるので、上記ケースは、ワンタッチで箱状に立ち上げることができる。
上記底部(略円弧面状に起立した領域)は、前面と後面を押し拡げて両者間に介在するので、前記底部の周縁が、前面と後面の内側にそれぞれ密着する。このため、底部において隙間が生じないケースが得られる。また、前面及び後面の両側辺部を押圧することによって上記底部を形成するので、前記両側辺部に外力が加わっても、底部において隙間が生じ難いケースを提供できる。
【0009】
本発明の好ましいケースは、上記前面の下辺部又は前記底面の前辺部には、下方に向かって突出した脚部が形成されている。
かかる脚部を有するケースは、自立安定性に優れている。更に、該ケースは、陳列棚の載置面に対して、僅かに傾斜した状態で自立させることができるので、陳列時、ケースが消費者の目に止まりやすくなる(所謂、アイキャッチ性に優れる)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るケースは、底部において隙間を生じにくい。このため、本発明のケースは、その内部にゴミなどの異物が入り込み難く、医薬品や食品の包装用ケースとして好適である。
また、本発明のケースは、略扁平状に折り畳むことができるので、保管・運搬に優れ、略扁平状の状態からワンタッチで箱状に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。なお、各部の用語の接頭語として、第1、第2などを付す場合があるが、該接頭語は、用語を区別するために付加されるものであり、各部の順序や優劣などを意味しない。また、方向を示す用語として「上下」や「前後」は、本発明のケースを、底面を下に向けて自立させた状態を基準にしている。
【0012】
図1〜図6に於いて、1は、シート材を組み立てて形成され、且つワンタッチで底部が形成されるケースを示す。
該ケース1は、前面2、後面3及び底面6で囲われた空間内に、物品を収納するための収納部が形成されている。
また、ケース1の上方には、物品を出し入れするための開口部が形成されている。該開口部は、蓋面5によって開閉される。
【0013】
該ケース1は、図9に示すような扁平状に折り畳むことができる。略扁平状に折り畳まれたケース1は、前面2と後面3の両側辺部から内側方向(両側辺部が互いに近づく方向)に押圧することにより、箱状に立ち上げることができる。
【0014】
ケース1を形成するシート材としては、特に限定されず、従来公知のシートを用いることができる。
シート材として余りに軟らかいものを用いると、略扁平状に折り畳まれたケース1の前面2及び後面3の両側辺部を押し込んでも、該ケース1が箱状に立ち上がり難い。これを考慮すると、シート材の厚みは、180μm以上であり、好ましくは200μm以上であり、より好ましくは250μm以上である。
一方、シート材として余りに硬いものを用いると、略扁平状に折り畳まれたケース1の前面2及び後面3の両側辺部を押し込んでも、該ケース1が箱状に立ち上がらない。これを考慮すると、シート材の厚みは、好ましくは1.5mm以下であり、より好ましくは1.0mm以下である。
【0015】
上記シート材は、その圧縮強度が100N以上のものが好ましく、180N以上がより好ましく、220N以上が特に好ましい。一方、上記シート材の圧縮強度は、1000N以下が好ましく、800N以下がより好ましい。
かかる圧縮強度を有するシート材は、略扁平状に折り畳まれたケース1の前面2及び後面3の両側辺部を押し込んだときに、該ケース1を簡単に箱状に立ち上げることができる。
【0016】
ただし、上記圧縮強度は、JIS P 8126(リングクラッシュ法)に準拠して測定された値である。
測定装置:島津製作所(株)製のオートグラフ(AGS−50G:ロードセルタイプ500N)
速度:10mm/min.
温度・湿度:24℃、64%
サンプルサイズ:12.5mm(TD方向)×152.5mm(MD方向)
サンプル数:6(6個のサンプルの平均値)
【0017】
該シート材としては、例えば、合成樹脂シート、金属蒸着層を有する合成樹脂シート、及び、合成樹脂シートと他の機能層との積層シートなどが挙げられる。好ましくは、シート材は、合成樹脂シートが用いられる。
合成樹脂シートとしては、異種又は同種の合成樹脂シートが2層以上積層された多層の合成樹脂シート、及び、単層の合成樹脂シートなどが挙げられる。より好ましくは、シート材は、単層の合成樹脂シートが用いられる。
合成樹脂シートの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系などが挙げられる。中でも、曲げ特性に優れているので、ポリプロピレン系の合成樹脂シートが好ましい。
【0018】
また、上記シート材は、透明性に優れていることが好ましい。透明性に優れたシート材は、その全光線透過率が70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。ただし、全光線透過率は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠した測定法によって測定される値をいう。
【0019】
上記透明性に優れたシート材は、無色であることが好ましいが、透明性を損なわない範囲で着色されていてもよい。また、シート材には、必要に応じて、所望の意匠印刷が施されていてもよい。
【0020】
本実施形態のケース1は、図1〜図6に示すように、前面2と、前面2に対向配置された後面3と、前面2と後面3の上方側に配置された蓋面5と、前面2と後面3の下方側に配置された底面6と、を有し、これら前面2、後面3、蓋面5及び底面6は、1枚のシート材から形成されている。
下方側に配置された底面6の中間領域は、略円弧面状となっており、前面2と後面3に対して略直角に起立している。この底面6の中間領域が、ケース1の底部を構成している。該ケース1は、前面2、後面3及び底部で囲われた空間内に、物品を収納できる。
【0021】
なお、ケース1の展開シートを、図7に示す。この展開シートを組み立てることにより、本発明のケース1が得られる。図7の展開シートに付された符号は、ケース1の各部に対応している。なお、図7の展開シートにおいて、ケース1の各折り罫線を一点鎖線で表す(他図の展開シートも同様)。また、図3において、折り曲げられていない折り罫線を一点鎖線で表す。
【0022】
より具体的に説明すると、前面2及び後面3は、実質的に同形同大の平面視略矩形状に形成されている。
また、底面6の幅(中間折り罫線の延びる方向)は、前面2及び後面3の幅と略同じ長さである。
底面6の奥行き(前記幅に対して直交する方向)は、適宜設定される。底面6の奥行きを長くすると、ケース1を箱状に立ち上げたときに形成される底部の位置が、ケース1の上方側へ近づいていき、物品の収納空間が狭くなる。この点を考慮して、底面6の奥行きの長さは設定される。
【0023】
上記前面2の一方の側辺部と後面3の一方の側辺部は、第1側部折り罫線71を介して連設され、且つ前面2の他方の側辺部と後面3の他方の側辺部は、第2側部折り罫線72を介して連設されている。
また、上記前面2の下辺部と底面6の前辺部は、前方折り罫線73を介して連設され、且つ後面3の下辺部と底面6の後辺部は、後方折り罫線74を介して連設されている。
さらに、上記前面2の上辺部と蓋面5の基辺部は、蓋折り罫線75を介して連設されている。
【0024】
なお、シート材からなるケース1は、前面2の両方の側辺部から延設された糊代片21,21をそれぞれ、後面3の両側部に接着することによって形成されている。
ここで、本発明において、第1側部折り罫線71などの各折り罫線は、特に限定されない。各折り罫線は、それぞれ独立して、例えば、シート材の厚み方向に断面略V字状に切り込んだVノッチ線(ハーフカット線とも呼ばれる)、ミシン目線などが挙げられる。好ましくは、各折り罫線は、Vノッチ線が用いられる。
【0025】
上記底面6の面内には、底面6を2分するように中間折り罫線76が形成されている。この中間折り罫線76は、前方折り罫線73及び後方折り罫線74の延びる方向と略平行な方向となるように形成されている。さらに、中間折り罫線76は、底面6を2等分するように、底面6の略中央に形成されていることが好ましい。すなわち、中間折り罫線76と前方折り罫線73との間隔と、中間折り罫線76と後方折り罫線74との間隔とが、略等しい。
【0026】
中間折り罫線76は、その一方の端部及び他方の端部が、底面6の一方の側辺部から他方の側辺部にまで(すなわち、底面6の幅全体にかけて)形成されている。
ただし、中間折り罫線76は、底面6の幅全体にかけて形成されている場合に限られない。例えば、中間折り罫線76の一方の端部(及び/又は他方の端部)が、底面6の一方の側辺部(及び/又は他方の側辺部)よりも少し内側へ寄った位置(近傍位置)であってもよい。
【0027】
さらに、底面6の面内であって、中間折り罫線76と前方折り罫線73の間には、前方折り罫線73側に向けて傾斜した部分を有する第1傾斜折り罫線77が形成されている。
この第1傾斜折り罫線77は、その一方の端部及び他方の端部が、中間折り罫線76の一方の端部及び他方の端部(両端部)に接続されている。
第1傾斜折り罫線77は、図7に示すように、その一方の端部から前方折り罫線73側に向けて内側傾斜状(中間折り罫線76に対して鋭角となる傾斜状)に延びる左傾斜部分771と、その他方の端部から前方折り罫線73側に向けて内側傾斜状(中間折り罫線76に対して鋭角となる傾斜状)に延びる右傾斜部分772と、左傾斜部分771及び右傾斜部分772の先端部間に形成された接続部分773と、からなる。
左傾斜部分771、右傾斜部分772及び接続部分773は、何れも、直線状に形成されている。
左傾斜部分771と右傾斜部分772の傾斜角度は、略同一であることが好ましいが、少しの差があってもよい。
また、接続部分773は、前方折り罫線73の延びる方向と略平行な方向に延びているが、接続部分773は、前方折り罫線73に対して少し傾斜状に延びていてもよい。
【0028】
また、底面6の面内であって、中間折り罫線76と後方折り罫線74の間には、後方折り罫線74側に向けて傾斜した部分を有する第2傾斜折り罫線78が形成されている。
この第2傾斜折り罫線78は、その一方の端部及び他方の端部が、中間折り罫線76の一方の端部及び他方の端部(両端部)に接続されている。
第2傾斜折り罫線78は、その一方の端部から後方折り罫線74側に向けて内側傾斜状(中間折り罫線76に対して鋭角となる傾斜状)に延びる左傾斜部分781と、その他方の端部から後方折り罫線74側に向けて内側傾斜状(中間折り罫線76に対して鋭角となる傾斜状)に延びる右傾斜部分782と、左傾斜部分781及び右傾斜部分782の先端部間に形成された接続部分783と、からなる。
左傾斜部分781、右傾斜部分782及び接続部分783は、何れも、直線状に形成されている。
左傾斜部分781と右傾斜部分782の傾斜角度は、略同一であることが好ましいが、少しの差があってもよい。
また、接続部分783は、後方折り罫線74の延びる方向と略平行な方向に延びているが、接続部分783は、後方折り罫線74に対して少し傾斜状に延びていてもよい。
【0029】
上記第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78は、中間折り罫線76を対称軸とする、線対称の関係に形成されていることが好ましい。
【0030】
第1傾斜折り罫線77の傾斜角度(左傾斜部分771及び/又は右傾斜部分772の傾斜角度)及び第2傾斜折り罫線78の傾斜角度(左傾斜部分781及び/又は右傾斜部分782の傾斜角度)は、それぞれ10度〜45度の範囲が好ましく、更に、15度〜35度の範囲がより好ましい。この傾斜角度が小さ過ぎると、ケース1を箱状に立ち上げた際に形成される底部の面積が小さくなり過ぎて好ましくない。一方、この傾斜角度が大き過ぎると、扁平状のケース1の前面2及び後面3の両側辺部を押圧しても、底部を形成すること(第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78で囲われた領域を起立させること)が困難となる。
【0031】
箱状に起立させたケース1は、図1〜図6に示すように、中央部が円弧面状に外側へ膨らんだ前面2及び後面3と、底面6の一部分が前面2及び後面3に対して略直角状に起立した底部と、を有する。
具体的には、底面6のうち、前方折り罫線73と第1傾斜折り罫線77で囲われた領域(図6の符号Aで示す領域)は、円弧面状に膨らんだ前面2の内側に面して接している。
底面6のうち、後方折り罫線74と第2傾斜折り罫線78で囲われた領域(図6の符号Bで示す領域)は、円弧面状に膨らんだ後面3の内側に面して接している。
底面6のうち、第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78に囲われた領域(図6の符号Cで示す領域)は、第1傾斜折り罫線77などの傾斜に従い、断面弓形の略円弧面状となっている。この略円弧面状に起立した領域C(底部)は、前面2及び後面3に対して略直交し、前面2及び外面3を外側へ押し拡げるように、両者間に介在している。
【0032】
この領域Cの周縁は、第1傾斜折り罫線77及び第2折り罫線78と一致するため、領域Cの周縁は、前面2及び後面3の内側に接している。特に、上記領域Cは、前面2及び外面3を外側へ押し拡げるように両者間に介在しているので、領域Cの周縁は、前面2及び後面3の内側に強く接している。
このため、例えば、箱状のケース1に外力が加わっても、上記領域C(底部)の周縁と前面2及び後面3との間に、隙間が生じ難い。
【0033】
一方、前面2の下辺部には、下方に向かって突出した脚部8が形成されている。この脚部8は、前面2の下辺部の略中央部から突設されている。前面2の下辺部の略中央部から底面6側へ膨らむ、平面視略コ字状の切り目81を形成することにより、この切り目81で切り抜かれた部分が、脚部8を構成する。
【0034】
ただし、脚部8は、底面6の前辺部から突出するように形成されていてもよい。この場合には、上記切り目81を、底面6の前辺部から前面2側へ膨らむように形成すればよい。
なお、脚部8は、上記のように前面2の下辺部及び/又は底面6の前辺部の中央部から突設されている場合に限られない。例えば、脚部8は、前面2の下辺部及び/又は底面6の前辺部から、所定間隔を開けて、2ヶ所以上形成されていてもよい。
【0035】
このように脚部8を形成することにより、自立安定性に優れたケース1を提供できる。具体的には、本発明のケース1は、物品を収納すべく箱状に起立させたとき、底部が舟形状になるため、前面2及び後面3の下辺部の中央部が僅かに湾曲する。このように湾曲すると、ケース1を載置面に置いたときに揺れやすいが、上記脚部8が突設されていると、ケース1を自立させたときに揺れ難くなる。
さらに、図4及び図6に示すように、脚部8によって、ケース1は、載置面Xに対して僅かに傾斜した状態で自立する。このため、陳列時、消費者の目に止まりやすいケース1を構成できる。
【0036】
なお、91は、後面3の面内に形成された差込み用切り目を示す。この差込み用切り目91に、蓋面5の先端部に形成された差込み部51を係入することにより、ケース1の上方開口部を塞ぐ蓋面5が係止される。
また、52は、吊下げ孔が穿設された吊下げ用片を示す。この吊下げ用片52は、蓋面5の面内に形成された、下側へ膨らむ略U字状の切り目で区画された領域で構成されている。
【0037】
上記ケース1は、不使用時には、図9に示すように、扁平状に形成されている。
ケース1は、略扁平状の状態で、保管・運搬に供される。
【0038】
かかる略扁平状のケース1は、下記のような構成からなる。
上記前面2の一方の側辺部と後面3の一方の側辺部が、第1側部折り罫線71を介して連設され、且つ前面2の他方の側辺部と後面3の他方の側辺部が、第2側部折り罫線72を介して連設されており、連設された前面2及び後面3は、平坦状で対向配置され(内面同士が重なるように)、第1側部折り罫線71及び第2側部折り罫線72において山折りされている。
【0039】
底面6は、前方折り罫線73及び後方折り罫線74において前面2及び後面3に対して谷折りし、且つ中間折り罫線76において底面6自体を山折りすることにより、重ね合わされた前面2と後面3の間に折り込まれている。
【0040】
かかる略扁平状のケース1は、例えば、次の方法によって製造できる。
1枚のシート材から、図7に示す形状の展開シートを形成する。
図8(a)に示すように、この展開シートの前方折り罫線73及び中間折り罫線76において、前面2上に重なるように底面6を折り曲げる。
次に、同図(b)に示すように、後方折り罫線74において、前面2及び底面6上に重なるように後面3を折り曲げる。
最後に、同図(c)に示すように、第1側部折り罫線71及び第2側部折り罫線72において、糊代片21,21をそれぞれ折り曲げ、糊代片21,21を後面3の両側部に接着する。
このようにして、図8(c)及び図9に示すように、略扁平状に折り畳まれたケース1を得ることができる。
【0041】
上記略扁平状のケース1は、使用時、箱状に立ち上げられる。
上記略扁平状のケース1の前面2及び後面3の両側辺部(換言すると、第1及び第2側部折り罫線71,72の一部分)を内側に押圧すると、その押圧力によって前面2及び後面3の中央部が円弧面状に起立する。同時に、その押圧力及び前面2及び後面3が外側へ膨らむ際に生じる引張り力が、前面2と後面3の間に折り込まれていた底面6に作用し、底面6の一部分が、第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78において略直角状に折れ曲がると共に、中間折り罫線76において山折りされていた部分が略平坦状となる。
よって、底面6のうち、第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78で囲われた領域が、両傾斜折り罫線77,78に従って略円弧面状に起立して底部が形成される。このようにして物品を収納可能な箱状のケース1を形成できる。
【0042】
上記ケース1は、略扁平状に折り畳むことができるので、保管・流通時、嵩張ることがない。
また、該ケース1は、上述のように、前面2及び後面3の両側辺部を押圧するだけで底部を形成できるので、略扁平状の状態からワンタッチで箱状に形成できる。
このようにワンタッチでケース1を箱状に形成できるのは、対向配置された前面2及び後面3が、連設部分である第1側部折り罫線71及び第2側部折り罫線72で山折りされているからである。
【0043】
例えば、前面と後面を重ね合わせ、両者の一方の側辺部の内面同士(重ね合わせ面)及び他方の側辺部の内面同士を所定幅帯状に接着することによって、前面と後面を連設させることも可能である。
しかしながら、この場合には、前面及び後面の両側辺部を押圧したときに、底面を良好に起立させることが困難である。すなわち、前面及び後面の両側辺部を押圧したときに、前記帯状の接着部分が折れ曲がるため、その押圧力が底面に作用し難い。このため、この場合には、略扁平状のケースをワンタッチで箱状に形成させることが困難である。
【0044】
この点、本発明のケース1は、上記のように、前面2及び後面3が第1側部折り罫線71及び第2側部折り罫線72で山折りされて連設されているので、押圧力によって前面2及び後面3が外側へ膨らむとと同時に、底面6の第1傾斜折り罫線77及び第2傾斜折り罫線78で囲われた領域が、略円弧面状に起立する。
【0045】
上記ケース1の底部(略円弧面状に起立した領域)は、前面2と後面3を押し拡げて両者間に介在するので、前記底部の周縁が、前面と後面の内側にそれぞれ密着している。このため、上記ケース1は、底部において隙間が生じない。さらに、このケース1は、前面2及び後面3の両側辺部を押圧することによって上記底部を形成するので、前記両側辺部に外力が加わっても、底部において隙間が生じ難い。
【0046】
上記ケース1内に収納される物品は、特に限定されず、ケース1内には様々な物品を収納可能である。特に、本発明のケース1は、底部に隙間が生じ難いことから、医薬品(分包タイプ、カプセルタイプなど)、菓子などの食品などを収納するケースとして好適である。
【0047】
次に、本発明のケース1の他の実施形態を示す。
上記実施形態では、第1傾斜折り罫線77の左傾斜部分771、右傾斜部分772及び接続部分773は、何れも直線状に形成されているが、例えば、図10(a)に示すように、これらが弧状に形成されていてもよい。この場合、第1傾斜折り罫線77は、全体として円弧状となる。第2傾斜折り罫線78の左傾斜部分781、右傾斜部分782及び接続部分783も同様に、弧状に形成されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、第1傾斜折り罫線77の左傾斜部分771及び右傾斜部分772の形成長さが、接続部分773の形成長さに比して長いが、例えば、図10(b)に示すように、接続部分773の方が長くてもよい。第2傾斜折り罫線78についても同様に、接続部分783の方が長くてもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では、第1傾斜折り罫線77は、左傾斜部分771、右傾斜部分772及び接続部分773からなるが、例えば、第1傾斜折り罫線77は、左傾斜部分771及び右傾斜部分772のみから構成されていてもよい。第2傾斜折り罫線78も同様に、左傾斜部分781及び右傾斜部分782のみから構成されていてもよい。
【0050】
上記実施形態では、第1傾斜折り罫線77の一方の端部及び他方の端部が、中間折り罫線76の一方の端部及び他方の端部(両端部)に接続されているが、これに限定されず、第1傾斜折り罫線77の一方の端部及び/又は他方の端部が、中間折り罫線76の一方の端部の近傍及び/又は他方の端部の近傍に位置していてもよい。
第2傾斜折り罫線78についても同様に、第2傾斜折り罫線78の一方の端部及び/又は他方の端部が、中間折り罫線76の一方の端部の近傍及び/又は他方の端部の近傍に位置していてもよい。
【0051】
また、ケースを構成する展開シートは、図7に示した態様に限られず、本発明の意図する範囲で、様々な態様に変形できる。例えば、図11に示す展開シートのように、前面2の一方の側辺部と後面3の一方の側辺部が繋がっており、前面2及び後面3の他方の側辺部を連設するため、前面2の他方の側辺部から糊代片21が延設されていてもよい。この展開シートの場合、底面6の後辺部と後面3の下辺部を連設させるため、例えば、後面3の下辺部又は底面6の後辺部から糊代片22が延設される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のケースの1つの実施形態を示す後面側から見た斜視図。
【図2】同ケースの前面側から見た斜視図。
【図3】同ケースの開蓋状態における後面側から見た斜視図。
【図4】同ケースの側面図。
【図5】同ケースの底面図。
【図6】図1のA−A線断面図。
【図7】同ケースを構成する展開シートの平面図。
【図8】同ケースの作製手順を示す平面図。
【図9】同ケースを略扁平状にした状態を示す底面図。
【図10】同ケースを構成する展開シートの他の実施形態を示す平面図。
【図11】他の実施形態のケースを構成する展開シートの平面図。
【符号の説明】
【0053】
1…ケース、2…前面、3…後面、35…蓋面、6…底面、71…第1側部折り罫線、72…第2側部折り罫線、73…前方折り罫線、74…後方折り罫線、76…中間折り罫線、77…第1傾斜折り罫線、78…第2傾斜折り罫線、8…脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み180μm以上のシート材を組み立てた折り畳み可能なケースであって、
前面と、前記前面に対向配置された後面と、前記前面及び前記後面の下方側に配置された底面と、を有し、
前記前面の一方の側辺部と前記後面の一方の側辺部が、第1側部折り罫線を介して連設され、且つ前記前面の他方の側辺部と前記後面の他方の側辺部が、第2側部折り罫線を介して連設されており、
前記前面の下辺部と前記底面の前辺部が、前方折り罫線を介して連設され、且つ前記後面の下辺部と前記底面の後辺部が、後方折り罫線を介して連設されており、
前記底面の面内には、前記底面を2分するように中間折り罫線が形成されており、前記前方折り罫線及び後方折り罫線において前記底面を前面及び後面に対して谷折りし、且つ前記中間折り罫線において前記底面を山折りすることにより、前記底面が前面と後面の間に折り込まれており、
前記中間折り罫線と前記前方折り罫線の間における前記底面の面内には、前記中間折り罫線の両端部又は該両端部の近傍から前方折り罫線側に向けて傾斜した部分を有する第1傾斜折り罫線が形成され、
前記中間折り罫線と前記後方折り罫線の間における前記底面の面内には、前記中間折り罫線の両端部又は該両端部の近傍から後方折り罫線側に向けて傾斜した部分を有する第2傾斜折り罫線が形成されていることを特徴とするケース。
【請求項2】
前記前面の下辺部又は前記底面の前辺部には、下方に向かって突出した脚部が形成されている請求項1に記載のケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−116183(P2010−116183A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290612(P2008−290612)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000202154)相互印刷紙器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】