説明

ケーソンの目地シール材

【課題】 地震等による目地の急激な開きにも対応して遮水状態を維持することができ、装着作業性も良いケーソンの目地シール材を提供する。
【解決手段】 目地シール材10は、上端部が開放し下端部がゴムシートからなる底壁11Aによって閉じられた筒状本体11に、碇着部12と連結止水板部13とを備えている。連結止水板部13は、板状の固定板部13Aと筒状本体11の外面に沿って一方側方に所定の幅で折り畳まれた伸縮部13Bとから成り、筒状本体11の中心を挟んで碇着部12とは対称位置の外面に伸縮部13Bを介して固着されている。目地シール材10は、ケーソン1の端面1Aに碇着部12で水密的に締着固定されると共に、連結止水板部13の固定板部13Aがケーソン1′の端面1A′に形成された固定溝1B′内にコンクリートモルタルによって連結固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海や湖等の埋め立てのためにケーソンによって護岸壁を構築する際に、隣接するケーソンの間隙を密封して水の流通や土砂の流出を防ぐ目地シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
海等を埋め立てる際、埋め立てるべき海面を囲んで複数のケーソンを直列に連続して沈設して護岸壁を構築し、この護岸壁に囲まれた海域に土砂等を搬入して埋め立てる工法がある。
【0003】
この工法のように、埋め立て地の護岸壁をケーソンによって構築する場合には、隣接するケーソンの間隙を介した土砂等の流出を防ぐためにケーソン間の目地をシール材等によって完全にシールする必要がある。
【0004】
その際に用いられるシール材としては、特許文献1に開示のごとく、柔軟性を有する材料によって上端部が開口し下端部が閉じた中空長筒状に形成され、隣接するケーソンの一方の端面に装着されて、内部に砂,アスファルト,コンクリートモルタル等の中詰材が注入充填されることによって膨出してその外表面が他方のケーソンの対向する端面に圧着するものがある。
【0005】
また、このようなシール材を用いたシール部構造として、ケーソンの内外面近傍の目地にそれぞれシール材を配設すると共に、そのシール材の間の目地にアスファルトマスチック等の間詰材を充填したものがある。(特許文献2,3参照)
【特許文献1】特公平5−7486号公報
【特許文献2】特許第2622892号公報
【特許文献3】特開2002−167772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、廃棄物の埋め立て処分場の護岸を上記のごときケーソンによって構築する場合には、廃棄物の有害成分の流出を完全に防ぐことのできる管理型護岸としなければならない。
【0007】
しかしながら、上記従来のシール材及びシール部構造では、地震等によって隣接するケーソンが離間する側に相対変位してその目地が急激に開くと、それに対応することができずに隙間を生じ、遮水が不十分となる虞があるという問題があった。
【0008】
そこで、シール材に止水板部を一体形成(又はシール材の取り付け部に止水板を介装)し、その止水板の外縁を対向するケーソンに締着することが考えられるが、その場合、止水板部(止水板)のケーソンへの締着作業をダイバーが水中で行わなければならず、極めて面倒なものとなってしまう。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、地震等による目地の急激な開きにも対応して遮水状態を維持することができ、装着作業性も良いケーソンの目地シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のケーソンの目地シール材は、隣接するケーソンの端面間に配設され、内部に中詰材が充填されることで膨出して前記端面間をシールするものであって、柔軟性を有する材料から成る下端部が閉じた中空長筒状の筒状本体に、一方のケーソンの端面に締着される碇着部と、他方のケーソンの外面に水密的に連結固定される連結止水板部とが、それぞれ長手方向に沿って設けられており、
前記碇着部は、前記筒状本体の左右両側に所定の幅の板状に張り出して前記筒状本体の左右両側で一方のケーソンの端面に締着されるように形成され、前記連結止水板部は、先端に大径の係合部を備え前記他方のケーソンの固定溝にコンクリートモルタルによって打ち込まれて連結固定される結合板部と、該結合板部の基端と連続し前記筒状本体の外面に沿って折り畳み形成されて前記筒状本体に繋がる伸縮部とから成り、前記筒状本体の前記碇着部と対称位置に前記結合部を突出させて設けられていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された目地シール材は、先に設置される一方のケーソンの端面にその碇着部で設置前に装着される。そのケーソンの設置後に設置される隣接する他方のケーソンには、当該他方のケーソンに予め形成された固定溝に連結止水板部の結合部を位置させてコンクリートモルタル等の充填材を打設することで水密的に連結固定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーソンの目地シール材によれば、碇着部で一方のケーソンに固定されて内部に中詰材が充填されて膨出した筒状本体が目地をシールし、地震等による目地の急激な開きに対しては連結止水板部の伸縮部が伸展することで対応してシール状態を保ち、遮水状態を維持することができる。また、連結止水板部はその結合板部を隣接する他方のケーソンの対向面に予め形成された固定溝に位置させてコンクリートモルタル等の充填材を打設することで水密的に連結固定されるため、連結止水板部のケーソンへの固定に面倒な水中作業は必要なく、極めて装着作業性が良ものである。更に、結合板部はその長手方向に連続して充填材に埋め込まれるために固定が確実で水密性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明に係るケーソンの目地シール材の一構成例の斜視図,図2(A)はその平面図,図2(B)は装着過程の平面図である。
目地シール材10は、装着されるケーソンの高さと対応する長さで、筒状本体11に、碇着部12と連結止水板部13とを備えている。筒状本体11及び碇着部12は、何れも、耐老化性、耐海水性、耐候性、耐熱性を有する合成ゴムの板厚中央部分に合成繊維を介装した所定厚さの補強繊維入りゴム板によって形成されている。
【0014】
筒状本体11は、断面形状楕円形の筒状体で、上端部は開放し下端部はゴムシートからなる底壁11Aで閉じられている。
【0015】
底壁11Aは、図1中想像線で示すように、紡錘状に下側に突出して形成されており、それが破線で示すように筒状本体11の内部に折り込まれた状態でケーソンに装着され、後述するように筒状本体11の内部に中詰材4が充填されるとこの底壁11Aが地盤の凹凸に対応して密着するようになっているものである。
【0016】
碇着部12は、筒状本体11の長手方向全域に亘って、筒状本体11の左右両側に所定幅で突出しており、これは、筒状本体11の長径より幅広のゴム板が、筒状本体11に一体加硫によって所定の幅で固着されることで形成されている。
【0017】
連結止水板部13は、結合板部としての板状の固定板部13Aとその基端縁の伸縮部13Bとから成り、筒状本体11及び碇着部12と同様な合成ゴム等の弾性素材によって形成されている。
【0018】
固定板部13Aは、所定厚さで所定幅の板状でその先端縁に板厚より大きな径の断面円形の係合部13Cを備えている。
【0019】
伸縮部13Bは、所定の板厚で固定板部13Aと直角に連続し、筒状本体11の外面に沿って一方側方に所定の幅で折り畳まれた(本構成例は二つ折り)形状に予め形成されており、先端縁が筒状本体11の外面に一体加硫によって固着されている。
【0020】
そして、この連結止水板部13は、筒状本体11の中心を挟んで碇着部12とは対称位置の外面に、伸縮部13Bを介して連続一体化して固定板部13Aが筒状本体11の外面から略直立した状態で筒状本体11の長手方向に沿って設けられている。
【0021】
上記のごとく構成された目地シール材10は、図2(B)及び装着状態の平面図である図3に示すように、先に設置されるケーソン1の外面に近い端面1Aに、その稜線に沿って鉛直に碇着部12で水密的に締着固定されると共に、連結止水板部13の固定板部13Aが後で設置されるケーソン1′の端面1A′に水密的に固着されて目地部2に装着される。
【0022】
即ち、ケーソン1には、その端面1Aに植設されたアンカーボルト21を碇着部12に貫通させ、アンカーボルト21に螺合したナット22によって押さえ板23を介して碇着部12をケーソン1の端面1Aに締着することによって固定される。この装着作業は、ケーソン1の沈設前に行うことができる。
【0023】
ケーソン1′には、図2(B)及び図3に示すように、その目地シール材10が装着される部位に固定溝1B′が形成され、この固定溝1B′の内部に、目地シール材10の連結止水板部13の固定板部13Aが位置し、固定溝1B′に打設されたコンクリートモルタル3(図3に示す)によって離脱不能に固定される。
【0024】
固定溝1B′は、底面より開口部の幅が狭いアリ溝状断面で、ケーソン1に対してケーソン1′を所定の位置関係で設置するとその内部にケーソン1に装着された目地シール材10の連結止水板部13の固定板部13Aを収容するように目地シール材10の装着部位に形成されているものである。
【0025】
このような固定溝1B′に固定板部13Aが位置した状態でコンクリートモルタル3が充填されると、コンクリートモルタル3は固定溝1B′の形状によって脱落不能にケーソン1′と固化一体化すると共に、固定板部13Aはコンクリートモルタル3に埋没してその先端縁の係合部13Cによって抜け落ち不能に固定される。つまり、連結止水板部13がケーソン1′に脱落不能に連結固定されるものである。尚、図中30は、後述する施工時において筒状本体11の固定溝1B′への没入を防ぐ支え枠である。
【0026】
ケーソン1とケーソン1′の間に配設された目地シール材10の筒状本体11には中詰材4が充填され、その圧力の作用で筒状本体11が断面円形状に膨出しようとして外面がケーソン1,1′の端面1A,1A′にそれぞれ圧着して目地部2を水密的にシールする。
【0027】
このような目地シール材10は、ケーソン1とケーソン1′の間の目地部2の内外両外面近傍にそれぞれ固定され、それら二本の目地シール材10(一方は図示せず)の間にアスファルトマスチック等の間詰材5が充填されて不透水層が形成されるものである。
【0028】
当該目地シール材10の設置施工は、施工前に陸上でケーソン1に予め目地シール材10を装着しておき、そのケーソン1を所定位置に沈設した後、隣接するケーソン1′をケーソン1に対して所定の位置関係(隙間)に位置合わせして沈設し、筒状本体11に中詰材4を充填すると共にケーソン1′の固定溝1B′内にその上部開口部からコンクリートモルタル3を充填することで行うことができる。つまり、ケーソン1への目地シール材10の装着は陸上で容易に行うことができ、設置されたケーソン1に対してケーソン1′を所定の位置関係で沈設することで筒状本体11がケーソン1とケーソン1′の隙間(目地部2)を塞ぐように位置すると共に連結止水板部13の固定板部13Aがケーソン1′の固定溝1B′内に位置し、その後、筒状本体11の内部への中詰材4の充填と、ケーソン1′の固定溝1B′へのコンクリートモルタル3の充填によって連結止水板部13をケーソン1′に容易に連結固定することができるものである。つまり、連結止水板部13をケーソン1′に連結固定するためにダイバーによる水中作業等は必要なく、極めて作業性良く短時間で容易に行えるものである。
【0029】
ここで、ケーソン1′の固定溝1B′の開口部に、前述のごとき支え枠30を設けることで、中詰材4の充填時における筒状本体11の固定溝1B′内への膨出を防ぐことができる。
【0030】
支え枠30は、図4に斜視図を示すように、固定溝1B′の開口部を塞ぐ左右の閉塞板31が、連結止水板部13を跨ぐ形状の連結部32で連結されて形成されている。連結部32は固定溝1B′の長手方向に間欠的に設けられており、この連結部32の配設部位以外の部分では左右の閉塞板31の間が開口して固定溝1′へのコンクリートモルタル3の充填を阻害しないようになっている。そして、ケーソン1′の固定溝1B′にその開口部を覆うように設けられ、連結止水板部13を固定溝1B′に固定するコンクリートモルタル3の打設によって固定溝1B′に一体に打ち込まれる。この支え枠30はケーソン1′に予め固定されている必要はなく、筒状本体11への中詰材4の充填前に目地シール材10とケーソン1′の間に上側からスライドさせて挿置すれば良いものである。
【0031】
上記のごとく構成された目地シール材10では、連結止水板部13によってケーソン1,1′の間(目地部2)が結合されている(目地部2が閉塞されている)ため、地震等によってケーソン1,1′が急激に相対変位した場合でも、この連結止水板部13によって遮水状態を維持することができる。
【0032】
即ち、ケーソン1,1′が離間する変位(目地部2が開く変位)には、図5に示すように連結止水板部13の伸縮部13Bが展開して伸び、遮水状態を維持する。この時、連結止水板部13は筒状本体11を引っ張って目地部2の開きに追従させるようにも作用する。これは、ケーソン1,1′がその延設方向と直交する方向に相対変位しても同様で、遮水状態を維持することができる。
【0033】
このように、連結止水板部13によって遮水状態を維持している間に、筒状本体11を膨出させて当該筒状本体11による本来の遮水状態を回復させることができるものである。連結止水板部13は碇着部12と対称位置にあり、ケーソン1,1′の離間変位に対する伸縮部13Bの伸長量は最短で良く、従って間詰材5の増加体積が少なくて済むものである。
【0034】
尚、本願発明は上記構成例に限るものではなく適宜変更可能なものである。例えば、連結止水板部13の伸縮部13Bを二回以上折り畳んだ形状としたり、一方側方のみでなく左右均等に折り畳むように構成しても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るケーソンの目地シール材の一構成例のである。
【図2】(A)は目地シール材の平面図,(B)はその装着過程の平面図である。
【図3】目地シール材の装着状態の平面図である。
【図4】支え枠の斜視図である。
【図5】目地シール材の作用説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ケーソン(一方のケーソン)
1′ ケーソン(他方のケーソン)
1B′ 固定溝
2 目地部
3 コンクリートモルタル
4 中詰材
1A,1A′ 端面
10 目地シール材
11 筒状本体
12 碇着部
13 連結止水板部
13A 固定板部(結合板部)
13B 伸縮部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するケーソンの端面間に配設され、内部に中詰材が充填されることで膨出して前記端面間をシールするものであって、
柔軟性を有する材料から成る下端部が閉じた中空長筒状の筒状本体に、一方のケーソンの端面に締着される碇着部と、他方のケーソンの外面に水密的に連結固定される連結止水板部とが、それぞれ長手方向に沿って設けられており、
前記碇着部は、前記筒状本体の左右両側に所定の幅の板状に張り出して前記筒状本体の左右両側で一方のケーソンの端面に締着されるように形成され、
前記連結止水板部は、先端に大径の係合部を備え前記他方のケーソンの固定溝にコンクリートモルタルによって打ち込まれて連結固定される結合板部と、該結合板部の基端と連続し前記筒状本体の外面に沿って折り畳み形成されて前記筒状本体に繋がる伸縮部とから成り、前記筒状本体の前記碇着部と対称位置に前記結合部を突出させて設けられていることを特徴とするケーソンの目地シール材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−9341(P2006−9341A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186193(P2004−186193)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)