説明

ケーソンの目地部構造

【課題】 地震や地盤沈下により隣接するケーソン同士に位置ずれが生じた場合でも、遮水機能を損なうことなく、また、漏水が生じた場合でも迅速に検知して対処することができるケーソンの目地部構造を提供する。
【解決手段】 ケーソン2の端面に、遮水用凹部3と監視用凹部6を形成する。これら凹部3、6はケーソン3の下部側から上部側にかけて徐々に拡開されている。隣接するケーソン3を支持地盤10の設置した状態で、それぞれの遮水用凹部3と監視用凹部6とが対向して位置するようにし、遮水用凹部3で形成される遮水用空間部30にI形鋼4を収容させ、監視用凹部6で形成される監視用空間部60に二重管7a、7bからなる保護管7を収容させる。この遮水用空間部30にアスファルト系や土質系、コンクリート系の遮水材を注入して充填させる。保護管7には漏洩センサのケーブルを挿通させて、漏水の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海中等に設置する箱形構造物であるケーソンの遮水を施す目地部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物を建設する場合には、構造物の設置場所や作業場所の海水を排除すると共に、海水の浸入を防止するためにケーソンが設置される。あるいは、護岸を構築する場合などには土砂の流出を防止するためにケーソンが設置される。また、陸上であっても、ゴミ処分用の処分用区域を他の区域と遮断するためにケーソンが設置される場合があり、地下水の流入や処分用区域に降った雨水や土砂、ゴミ等の廃棄物から溶出した有害物質等が他の区域に流出することを遮断する。このケーソンは、工場やケーソンヤード等において、予め、ハイブリッド製や鉄筋コンクリート製等のケーソンを製作して、現場に搬入して設置される。このとき、廃棄物処分場などで漏れを防止する必要がある場合には、ケーソン同士の目地部には遮水構造を施す必要がある。
【0003】
ケーソンの目地部構造として、例えば、特許文献1に記載された目地ガスケットや、特許文献2に記載された目地の遮水構造などがある。
【0004】
特許文献1に開示された目地ガスケットは、対向する一対の外壁構成材間の目地に筒形の弾性変形体を設けて水密性・気密性を保持する目地ガスケットであって、該弾性変形体の一部を一の外壁構成材の対向端面に取り付けられる断面略角筒形の通気部に形成し、該弾性変形体の残部を他の外壁構成材の対向端面に接触する断面略U字形の止水保持部に形成し、これら通気部と止水保持部とを一体に並べ設け、該通気部の一側壁に上記一対の外壁構成材の外側に位置する複数の外気導入孔を設けるとともに、該通気部の他側壁には該一対の外壁構成材の内側に位置する複数の外気導出孔を設け、該通気部内を複数の封止材で間隔をおき遮断閉塞して通気部の長手方向に複数の独立流通空間を並べて区画形成し、各独立流通空間の開口端面及び又は上記外気導入孔から同独立流通空間の上記外気導出孔に外気を導くように構成されている。
【0005】
また、特許文献2に開示された目地の遮水構造は、連続配置したケーソンやL型ブロック等の構造物の目地を構成する対向する側壁に上下方向に溝を形成し、その溝の開口をスリット状に狭くし、両側の側壁に形成された溝内に納まる形状で、かつ開口から抜け出さない寸法を有する係止部を形成した目地幅より十分に広い幅を有する弾性材製の遮水膜を設け、その遮水膜の係止部を上記対向する構造物のそれぞれの溝に嵌めて目地を閉じた構成とされている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−192561
【特許文献2】特開2005−146659
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ゴム等の弾性変形体が用いられる場合には、材料が劣化することにより水密性・気密性が損なわれる場合が生じる。また、地震や地盤沈下により隣接するケーソン同士の位置関係がずれてしまうおそれがあり、目地の間隔が変化してしまって遮水機能が損なわれてしまうおそれがある。
【0008】
また、遮水シートや遮水矢板の併用により二重構造として遮水機能を高めた構造とすることもできるが、水深が大きくなると施工が困難となってしまい、ケーソンの設置条件が制限されてしまっている。
【0009】
そこで、この発明は、耐食性に優れて劣化することがほとんどなく、隣接するケーソン同士の位置関係にずれが生じた場合でも、遮水性を極力損なうことのないケーソンの目地部構造を提供することを主たる目的とし、さらに、目地部に浸水が生じたことを確実に検知して、速やかに処置を講じることができるようにしたケーソンの目地部構造を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るケーソンの目地部構造は、隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、隣接するケーソン同士の対向する面であって対向する位置に形成した遮水用凹部と、前記遮水用凹部に収容させた補強部材と、前記遮水用凹部に充填した遮水材とからなることを特徴としている。
【0011】
隣接したケーソンによって前記遮水用凹部同士でほぼ四角柱状の遮水用空間部が形成されているものである。この遮水用空間部に補強部材を収容させてある。この遮水用凹部とケーソン同士の間隙に、浸水を防止するための遮水材を充填する。このとき、補強部材にはジベルを設けて、遮水材との接合を確実にすることが好ましい。
【0012】
また、請求項2の発明に係るケーソンの目地部構造は、隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開してある遮水用凹部を形成し、前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴としている。
【0013】
すなわち、前記遮水用凹部で、ケーソンの厚さ方向に沿った面に逆台形が形成されているものであり、上部側が広くされている。地震等によってケーソンが変位する場合には、下部側よりも上部側が大きく変位するため、上部側を拡開した遮水用凹部としたものである。
【0014】
また、請求項3の発明に係るケーソンの目地部構造は、隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に遮水用凹部を形成し、前記遮水用凹部を、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々に深さを大きくし、前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴としている。
【0015】
すなわち、前記遮水用凹部で、ケーソンの厚さ方向と直交する方向の面で切断した断面形状が逆台形に形成されているものであり、上部側が広くされている。
【0016】
また、請求項4の発明に係るケーソンの目地部構造は、隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に遮水用凹部を形成し、 前記遮水用凹部を、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開すると共に、徐々に深さを大きくし、前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴としている。
【0017】
すなわち、前記遮水用凹部同士でほぼ逆四角錐台あるいは逆円錐台の遮水用空間部が形成されているものであり、上部側が広くされているものである。
【0018】
また、請求項5の発明に係るケーソンの目地部構造は、前記遮水用凹部に補強部材を収容させたことを特徴としている。
【0019】
すなわち、上部側が下部側よりも断面形状を広くした遮水用凹部に補強部材を収容させた構造とされたものである。
【0020】
また、請求項6の発明に係るケーソンの目地部構造は、前記遮水用凹部を挟む位置にシール材を位置させて、該シール材を隣接するケーソン同士で挟持することを特徴としている。
【0021】
ケーソンの対向面間に、ゴムや樹脂などの弾性や可撓性を有する材料によるシール材を設けて、シール材を挟んでの浸水を防止するものである。
【0022】
また、請求項7の発明に係るケーソンの目地部構造は、隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に形成した監視用凹部と、前記監視用凹部に収容させた保護管とからなり、前記保護管に目地部への浸水を検知する漏水センサのケーブルを挿通させてあることを特徴としている。
【0023】
ケーソンの目地部に漏水が生じた場合には、前記漏水センサが漏水を検知して、管理室等の表示装置にその旨を表示させたり、漏水の警報を発したりする。前記保護管は規格品の管を用いることができる。また、この保護管を二重管とすることもできる。
【0024】
また、請求項8の発明に係るケーソンの目地部構造は、隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、隣接するケーソン同士の対向する面であって該ケーソンの厚さ方向の両端部近傍の対向する位置に形成した遮水用凹部と、前記遮水用凹部に収容させた補強部材と、前記隣接するケーソン同士の対向する面であって該ケーソンの厚さ方向の中央部の対向する位置に形成した監視用凹部と、前記監視用凹部に収容させた保護管とからなり、前記保護管に漏水センサのケーブルを挿通させ前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴としている。
【0025】
すなわち、前記遮水用凹部を両端部近傍の2箇所に、監視用凹部を中央部に形成したものである。一方の遮水用凹部から漏水があると監視用凹部に設けられた漏水センサが検知して、その旨を通知するが、他方の遮水用凹部で遮水されるので、ケーソンの外部までの漏水は防止される。
【0026】
また、請求項9の発明に係るケーソンの目地部構造は、遮水用凹部と監視用凹部とを形成したケーソンの目地部構造であって、前記遮水用凹部を、前記ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開してあることを特徴としている。
【0027】
すなわち、監視用凹部を備えると共に、遮水用凹部を設ける構造とした場合に、該遮水用凹部で、ケーソンの厚さ方向に沿った面に逆台形が形成されているものであり、上部側が広くされている。
【0028】
また、請求項10の発明に係るケーソンの目地部構造は、遮水用凹部と監視用凹部とを形成たケーソンの目地部構造であって、前記遮水用凹部を、前記ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々に深さを大きくしてあることを特徴としている。
【0029】
すなわち、監視用凹部を備えると共に、遮水用凹部を設ける構造とした場合に、該遮水用凹部で、ケーソンの厚さ方向と直交する方向の面で切断した断面形状が逆台形に形成されているものであり、上部側が広くされている。
【0030】
また、請求項11の発明に係るケーソンの目地部構造は、遮水用凹部と監視用凹部とを形成したケーソンの目地部構造であって、前記遮水用凹部を、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開すると共に、徐々に深さを大きくしてあることを特徴としている。
【0031】
すなわち、監視用凹部を備えると共に、遮水用凹部を設ける構造とした場合に、該遮水用凹部同士でほぼ逆四角錐台あるいは逆円錐台の遮水用空間部が形成されているものであり、上部側が広くされているものである。
【0032】
また、請求項12の発明に係るケーソンの目地部構造は、遮水用凹部と監視用凹部とを形成したケーソンの目地部構造であって、前記遮水用凹部に補強部材を収容させたことを特徴としている。
【0033】
すなわち、監視用凹部を備えると共に、遮水用凹部を設ける構造とした場合に、該遮水用凹部に補強部材を収容させた構造とされたものである。
【0034】
また、請求項13の発明に係るケーソンの目地部構造は、遮水用凹部と監視用凹部とを形成したケーソンの目地部構造であって、前記遮水用凹部を挟む位置にシール材を位置させて、該シール材を隣接するケーソン同士で挟持することを特徴としている。
【0035】
監視用凹部を備えると共に、遮水用凹部を設ける構造とした場合に、ケーソンの対向面間に、ゴムや樹脂などの弾性や可撓性を有する材料によるシール材を設けて、シール材を挟んでの浸水を防止するものである。
【0036】
また、請求項14の発明に係るケーソンの目地部構造は、前記監視用凹部を、前記ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開してあることを特徴としている。
【0037】
すなわち、前記監視用凹部で、ケーソンの厚さ方向に沿った面に逆台形が形成されているものであり、上部側が広くされている。
【0038】
また、請求項15の発明に係るケーソンの目地部構造は、前記補強部材を鋼材により形成したことを特徴としている。
【0039】
前記補強部材としては、例えばI形鋼やH形鋼等の形鋼、その他の鋼材を用いることとしたものである。
【0040】
また、請求項16の発明に係るケーソンの目地部構造委は、前記遮水材を、アスファルト系遮水材または土質系遮水材、コンクリート系遮水材のいずれかとしたことを特徴としている。
【0041】
目地部に充填する遮水材としては種々の材質のものがあるが、特に、アスファルト系遮水材または土質系遮水材、コンクリート系遮水材のいずれかとしたものである。
【発明の効果】
【0042】
この発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震や地盤沈下でケーソンが傾いたりすることによって隣接するケーソン同士の位置関係がずれた場合でも、四角柱状に形成されている遮水用凹部がこのずれを吸収するから、遮水機能を低下させることがない。しかも、遮水用凹部に補強部材を挿入するには、設置したケーソンの上方から挿入することによるから、現場施工が簡便となり、工期の短縮を図ることができる。
【0043】
また、請求項2または請求項3の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震等の場合に生じるケーソンの変位は上部側の方が大きいから、遮水用凹部の上部側を下部側より拡開させてあることにより、変位がより確実に吸収される。
【0044】
また、請求項4の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震等によってケーソンがいずれの方向に変位した場合でも、この変位を確実に吸収することができる。
【0045】
また、請求項5の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震等によりケーソンに変位が生じる場合でも、補強部材が変位量を制限することになるため、大きな変位が生ぜず、ケーソンの機能を果たすことができる。
【0046】
また、請求項6の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、遮水用凹部を挟む位置にシール材を配したため、遮水用凹部への浸水が極力防止され、遮水機能をより確実なものとすることができる。
【0047】
また、請求項7の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、ケーソンの目地部に漏水があった場合には迅速に検知されるから、漏水に対して迅速な対処を施すことができる。しかも、漏水センサに接続されたケーブルが保護管に挿通させてあるから、漏水センサは確実に保護された状態にあり、検出精度を低下させずに確実に漏水の有無を検知できる。さらに、保護管を二重管として内側の管体に漏水センサの接続ケーブルを挿通させて、漏水センサの保護をより確実なものとすることができる。
【0048】
また、請求項8の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、隣接するケーソン同士の位置関係がずれた場合でも遮水機能が低下することがない。また、目地部に漏水があった場合には迅速に検知される。さらに、一方の遮水用凹部から漏水があった場合でも他方の遮水用凹部で遮水されるから、ケーソンの外部への漏水が極力防止されると共に、漏水に対処するために十分な時間を確保でき、確実な対応することができる。したがって、ケーソンの外部への漏水を確実に防止することができる。
【0049】
また、請求項9または請求項10の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震等によりケーソンに生じる変位を効率よく吸収することができると共に、浸水が生じた場合でも迅速に検知することができる。
【0050】
また、請求項11の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震等によりケーソンに生じる変位がいずれの方向のものであっても効率よく吸収することができると共に、浸水が生じた場合でも迅速に検知することができる。
【0051】
また、請求項12の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、補強部材によって、地震等により生じるケーソンの変位が制限されて、ケーソンの機能が損なわれることがほとんどない。
【0052】
また、請求項13の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、シール材によって遮水用凹部への浸水が極力防止される。
【0053】
また、請求項14の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震等による生じるケーソンの変位を効率よく吸収することができる。
【0054】
また、請求項15の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、補強部材を鋼材とすることにより、規格品の形鋼等を用いることができ、ケーソンの製作コストの低減化を図ることができる。
【0055】
また、請求項16の発明に係るケーソンの目地部構造によれば、遮水材を安価な材料とすることにより、ケーソンの製作コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るケーソンの目地部構造を具体的に説明する。
【0057】
図6はケーソン2により構成されるケーソン構造物1の概略の外観を示す斜視図であり、このケーソン構造物1は、板状に鉄筋コンクリートや鋼材等により形成された構成部材としての適宜枚数のケーソン2が組み合わされている。このケーソン2同士が隣接する部分は空間による目地部2aが形成される。
【0058】
図1は、前記目地部2aを示す平面図であり、図2におけるA−A線、B−B線、C−C線で切断した断面を、ぞれぞれ(a)、(b)、(c)に示している。なお、図1(b)、(c)は一部のみを示している。また、図2は目地部2aに臨むケーソン2の端面を示す図である。図1に示すように、それぞれのケーソン2の端面の両端部近傍には遮水用凹部3が形成されており、隣接するケーソン2同士で一の空間を形成して遮水用空間部30となるようにしてある。この遮水用凹部3は、図1及び図3に示すように、壁面3a、3bと底面3cの3面が、ケーソン2の下部側から上部側にかけて徐々に拡開される状態に傾斜面に形成されており、隣接するケーソン2同士の遮水用凹部3で形成される遮水用空間部30はほぼ逆四角錐台に形成されている。そして、この遮水用空間部30には補強部材としてI形鋼4を収容させてある。なお、補強部材としてはI形鋼4に限らず、H形鋼などの形鋼や板材その他の鋼材を用いることができる。特に、形鋼を用いる場合には規格品を用いることができて、コストを抑制できるので好ましい。また、遮水用空間部30の下部側はこの補強部材を収容するのに十分な大きさとしてあればよい。
【0059】
前記目地部2aを臨むケーソン2の端面の中央部には、監視用凹部6が形成されており、隣接するケーソン2同士で監視用空間部60が形成されるようにしてある。この監視用空間部60は、前記遮水用凹部3により形成される前記遮水用空間部30と同様に、壁面6a、6bと底面6cとが傾斜面で形成されて、ほぼ逆四角錐台に形成されている。そして、この監視用空間部60には保護管7が収容されている。この保護管7は、内側の管体7aと外側の管体7bとからなる二重管からなり、この内側の管体7aには図示しない漏水センサが接続されている接続ケーブルが挿通されている。図示しない漏水センサはケーソン2の下端部に配されて、目地部2aへの浸水を検知するものとしてあり、前記接続ケーブルはこのケーソン構造物1の管理室等へ導かれて、漏水が検知された場合には管理室等に設けられた表示装置等にその旨を表示したり、警報を発したりするようにしてある。
【0060】
また、前記遮水用空間部30を挟む位置にはシール材8が配されている。このシール材8はゴムや樹脂等で構成され、図1に示すように、管状として弾性や可撓性を具備させてある。このシール材8は隣接するケーソン2の端面で挟持された状態に取り付けられている。
【0061】
前記ケーソン2は、図2に示すように、支持地盤10に載置されて設置される。そして、遮水用空間部30にはコンクリートやアスファルト、モルタル等の遮水材が注入されて充填されている。なお、I形鋼4には適宜位置に適宜本数の棒材等によるジベル(図示せず)が溶接されており、遮水材との結合が確実となるようにしてある。
【0062】
以上により構成されたこの発明の実施形態に係るケーソンの目地部構造の作用を、以下に説明する。
【0063】
このケーソン構造物1を設置するには、工場やケーソンヤードで予め製作されたケーソン2が設置現場に搬入される。製作されたケーソン2には前記遮水用凹部3と監視用凹部6とが形成されており、支持地盤10に設置された状態の隣接するケーソン2同士で遮水用凹部3が対向して位置すると共に、監視用凹部6が対向して位置するようにしてある。所定の位置に設置されたケーソン2には隣接するケーソン2同士の遮水用凹部3で遮水用空間部30が形成されることになるから、この遮水用空間部30にI形鋼4を挿入して収容させる。なお、このI形鋼4には予め図示しないジベルが溶接されている。また、隣接するケーソン2同士の前記監視用凹部6により形成される空間部に、予め漏洩センサに接続したケーブルを挿通させて、該漏洩センサを下部側にして挿入する。さらに、遮水用凹部3を挟む位置に前記シール材8をケーソン2の端面間に挿入する。
【0064】
そして、遮水用空間部30にコンクリート系やアスファルト系、土質系等の遮水材を注入して充填する。このとき、I形鋼4にはジベルが溶接されているから、遮水材とI形鋼4とが確実に結合する。これにより、ケーソン2によって囲まれた内部と外部とはこのケーソン2によって遮断された状態となり、内外部は遮水された状態となる。遮水材は、内部と外部で材料の組み合わせを変えることや、鉛直方向で材料の組み合わせを変えることができる。
【0065】
例えば、地震の発生によりケーソン2が傾いてしまった場合には、隣接するケーソン2同士の位置関係がずれてしまうおそれがある。しかし、斯かる場合には、ケーソン2の上部側が下部側よりも変位量が大きく、前記遮水用空間部30は上部側が拡開された逆四角錐台に形成されており、この遮水用空間部30にはI形鋼4が収容されているから、ケーソン2の変位がこのI形鋼4により規制されて、大きな位置ずれは生じない。しかも、I形鋼4により浸水の通路が制限されているため、漏水量が多くなることがない。
【0066】
また、漏水が生じた場合には前記漏洩センサにより検知されるから、迅速に対処できる。しかも、一方の側の遮水用空間部30から漏水した場合でも、他方の遮水用空間部30で遮水された状態が維持されるから、漏水に対する対応を確実に行うことができる。
【0067】
以上説明した実施形態では、遮水用凹部3の3面3a、3b、3cを傾斜面として逆四角錐台が形成されるものとして説明したが、これら3面をいずれも共通の円弧の一部で形成して、隣接するケーソン2同士で形成される遮水用空間部30が逆円錐台形となるようにしたものでも構わない。また、図4に示すように、壁面3a、3bを傾斜面として、ケーソン2の厚さ方向において、上部側が下部側よりも拡開された形状としても構わない。さらに、図5に示すように、底面3cを傾斜面で形成して、下部側よりも上部側を深くしても構わない。すなわち、いずれの形状であっても、地震等によりケーソン2が変位する場合の大きく変位する上部側が下部側よりも広げられているから、この大きな変位に確実の対抗することができる。あるいは、ケーソン2の大きな変位が予想されない場所へ設置する場合には、壁面3a、3b、底面3cのいずれも傾斜面とすることなく、遮水用空間部30が四角柱状に形成されるものであっても構わない。
【0068】
なお、前記監視用凹部6の壁面6a、6b、底面6cについても、遮水用凹部3の壁面3a、3b、底面3cと同様に、3面6a、6b、6cとも傾斜面で形成する形状であっても、壁面6a、6bのみを傾斜面で、あるいは底面6cのみを傾斜面で、または3面6a、6b、6cのいずれも傾斜面としない形状の、いずれであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明に係るケーソンの目地部構造によれば、地震や地盤沈下によりケーソン同士の位置関係にずれが生じた場合でも大きなずれを生ぜず、遮水機能を十分に維持することができるから、目地を含めたケーソン断面構造の寿命が長くなり、しかも、施工が容易であるため、コストの低減化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明に係るケーソンの目地部構造のケーソンの目地部を示す平面図であり、隣接するケーソンの端部を示している。
【図2】この発明に係るケーソンの目地部構造を備えたケーソンの端面を示す図である。
【図3】この発明に係るケーソンの端面を示す概略斜視図であり、一の実施形態を示している。
【図4】この発明に係るケーソンの端面を示す概略斜視図であり、他の実施形態を示している。
【図5】この発明に係るケーソンの端面を示す概略斜視図であり、別の実施形態を示している。
【図6】この発明に係る目地部構造を備えるのに適した構造物としてのケーソンの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ケーソン構造物
2 ケーソン
2a 目地部(空間部)
3 遮水用凹部
3a 壁面
3b 壁面
3c 底面
4 I形鋼(補強部材)
6 監視用凹部
7 保護管
8 シール材
10 支持地盤
30 遮水用空間部
60 監視用空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、
隣接するケーソン同士の対向する面であって対向する位置に形成した遮水用凹部と、
前記遮水用凹部に収容させた補強部材と、
前記遮水用凹部に充填した遮水材とからなることを特徴とするケーソンの目地部構造。
【請求項2】
隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、
隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開してある遮水用凹部を形成し、
前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴とするケーソンの目地部構造。
【請求項3】
隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、
隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に遮水用凹部を形成し、
前記遮水用凹部を、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々に深さを大きくし、
前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴とするケーソンの目地部構造。
【請求項4】
隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、
隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に遮水用凹部を形成し、
前記遮水用凹部を、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開すると共に、徐々に深さを大きくし、
前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴とするケーソンの目地部構造。
【請求項5】
前記遮水用凹部に補強部材を収容させたことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。
【請求項6】
前記遮水用凹部を挟む位置にシール材を位置させて、該シール材を隣接するケーソン同士で挟持することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。
【請求項7】
隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、
隣接するケーソン同士の対向する面の対向する位置に形成した監視用凹部と、
前記監視用凹部に収容させた保護管とからなり、
前記保護管に目地部への浸水を検知する漏水センサのケーブルを挿通させてあることを特徴とするケーソンの目地部構造。
【請求項8】
隣接するケーソン同士の接合部となる目地部の構造において、
隣接するケーソン同士の対向する面であって該ケーソンの厚さ方向の両端部近傍の対向する位置に形成した遮水用凹部と、
前記遮水用凹部に収容させた補強部材と、
前記隣接するケーソン同士の対向する面であって該ケーソンの厚さ方向の中央部の対向する位置に形成した監視用凹部と、
前記監視用凹部に収容させた保護管とからなり、
前記保護管に漏水センサのケーブルを挿通させ
前記遮水用凹部に遮水材を充填してあることを特徴とするケーソンの目地部構造。
【請求項9】
前記遮水用凹部を、前記ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開してあることを特徴とする請求項8に記載のケーソンの目地部構造。
【請求項10】
前記遮水用凹部を、前記ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々に深さを大きくしてあることを特徴とする請求項8に記載のケーソンの目地部構造。
【請求項11】
前記遮水用凹部を、該ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開すると共に、徐々に深さを大きくしてあることを特徴とする請求項8に記載のケーソンの目地部構造。
【請求項12】
前記遮水用凹部に補強部材を収容させたことを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。
【請求項13】
前記遮水用凹部を挟む位置にシール材を位置させて、該シール材を隣接するケーソン同士で挟持することを特徴とする請求項8から請求項12までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。
【請求項14】
前記監視用凹部を、前記ケーソンの下端部から上端部にかけて徐々にケーソンの厚さ方向に拡開してあることを特徴とする請求項7から請求項13までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。
【請求項15】
前記補強部材を鋼材により形成したことを特徴とする請求項1または請求項5、請求項8、請求項12から請求項14までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。
【請求項16】
前記遮水材を、アスファルト系遮水材または土質系遮水材、コンクリート系遮水材のいずれかとしたことを特徴とする請求項1から請求項15までのいずれかに記載のケーソンの目地部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163721(P2008−163721A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−625(P2007−625)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(502437573)株式会社工研設計 (1)
【出願人】(594067368)ワールドエンジニアリング株式会社 (21)