説明

ケーソン据付け位置管理システムおよびケーソン据付方法

【課題】ケーソン据付け時の位置管理を低コストで行うことができるようにする。
【解決手段】法線34上において2本のレーザービーム50、52をそれぞれ異なる高さで照射するレーザー測量機40、42を既設ケーソン14に配備するとともに、法線34方向に距離をおいた2つのレーザーターゲット70、72を据付ケーソン18に配備する。レーザーターゲット70、72に入射したレーザービーム50、52の位置によって法線34に対する据付ケーソン18の出入りや据付け高を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソン据付け位置管理システムおよびケーソン据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーソン据付け時の法線に対する出入り、据付け高の確認およびケーソンの誘導には、ケーソンに取り付けられたターゲットに向けて投射した光波やレーザーの反射位置により確認した位置情報を起重機を操縦するオペレータに無線連絡する方法が広く用いられている。また最近ではGPS位置管理システムの導入により、オペレータ自身が画面上でケーソンの位置をリアルタイムで確認しながら起重機を操縦し、ケーソンを所定の設置箇所に据え付けることも行われている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−299020号公報
【特許文献2】特開2004−238914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPS位置管理システムでは、オペレータ自身がケーソンの位置を確認しながら起重機の操縦を行うため、連絡ミス等の人的ミスの排除や省力化が可能であるが、導入に要するコストが高いこととGPS固有の誤差の問題を指摘することができる。通常用いられているD−GPS位置管理システムでは最大約100cmの誤差が生じる。そこで近年、最大誤差が約2cmと非常に精度が高いRTK−GPS位置管理システムが推奨されているが、このシステムの構築には時間と費用を要し、導入コストがさらに増大することになる。
【0005】
このようにGPS位置管理システムには多くの利点があり、全国的な規模を持つ大手の企業では随時導入が進められているが、その導入コストの高さゆえ地場資本の小企業等においては必ずしも活用されていないという実態がある。
【0006】
本発明の目的とするところは、ケーソン据付け時の位置管理を低コストで行うことができるケーソン据付け位置管理システム、およびこのシステムを用いたケーソンの据付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ケーソンの据付け位置基準線となる法線上において少なくとも2本のレーザービームをそれぞれ異なる高さで照射するレーザー測量機を配備し、据付け対象となるケーソンに前記法線方向に距離をおいて少なくとも2つのレーザーターゲットを配備する。
【0008】
本発明のケーソン据付け位置管理システムは、ケーソンの据付け位置基準線となる法線上において少なくとも2本のレーザービームをそれぞれ異なる高さで照射するレーザー測量機と、据付け対象となるケーソンに前記法線方向に距離をおいて備えられた少なくとも2つのレーザーターゲットを含むものであり、このシステムを導入することにより、レーザーターゲットにレーザービームが当たる位置を確認するだけで法線に対するケーソンの出入りや据付け高を確認することができるようになる。
【0009】
ケーソンの据付けに際してはレーザー測量機に近い側から順に据付けを行い、据付けたばかりのケーソンにウィンチを移設し、次に据付けられるケーソンを牽引するようにすれば、据付け作業に要する機械装置や人員を削減することができるので、工期の短縮とコストの削減を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーソン据付け時の位置管理に係るコストを抑えることができるようになるため、特に資金力に乏しい小企業等が本発明を活用することで総工費の削減や収益率の改善等が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ケーソン据付工における施工状況を示す斜視図
【図2】ケーソン据付工における施工状況を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はケーソン据付工における施工状況図である。基礎捨石マウンド10の天端面12には2函のケーソン14、16(以下、既設ケーソンという。)が既に据付けられている。ケーソン18(以下、据付ケーソンという)は起重機船20によって水平に吊り下げられており、これから据付けられようとしている状況にある。
【0013】
既設ケーソン14、16は港湾外に面した側面30、32が法線34上に位置するように据付けられている。既設ケーソン14、16は隣接しており、一方の既設ケーソン14には2台のレーザー測量機40、42が備えられ、他方の既設ケーソン16には2台のウィンチ44、46が備えられている。
【0014】
レーザー測量機40、42は側面30寄りの位置にそれぞれ高さを違えて設置されている。上段のレーザー測量機40からは既設ケーソン16の方向に法線34上を水平に走査するレーザービーム50が照射され、下段のレーザー測量機42からは同方向に法線34上を水平に走査するレーザービーム52が照射される。これにより法線34上には高さの異なる上下2本のレーザービーム50、52が水平方向に走査することになる。
【0015】
ウィンチ44、46は側面32とその対面寄りにそれぞれ設置されている。ウィンチ44、46から延びる2本のワイヤ60.62は途中で交差して据付ケーソン18に連結されている。ウィンチ44、46を作動させることで据付ケーソン18を既設ケーソン16側に引き寄せることができる。このとき各ウィンチ44、46の牽引力の強弱を調節することで据付ケーソン18の法線34に対する出入りや傾きを調整することができる。
【0016】
既設ケーソン16には据付ケーソン18側の端面36に目地函38が備えられている。目地函38は、据付ケーソン18の法線34方向における位置決めをし、既設ケーソン16との間の目地間隔を調整する役割とともに、ウィンチ44、46によって引き寄せられる据付ケーソン18が既設ケーソン16と接触する際の衝撃を緩和する緩衝材としての役割を担っている。
【0017】
据付ケーソン18には高さの異なる2体のレーザーターゲット70、72が互いに距離をおいて備えられている。何れのレーザーターゲット70、72とも港湾外に面した側面74の鉛直上方に配置され、このうち高い方のレーザーターゲット70は既設ケーソン16から遠い端部に配置され、低い方のレーザーターゲット72は既設ケーソン16に近い端部に配置されている。レーザーターゲット70はレーザー測量機40と対応しており、レーザー測量機40から照射されるレーザービーム50が入射する。レーザーターゲット72はレーザー測量機42と対応しており、レーザー測量機42から照射されるレーザービーム52が入射する。
【0018】
ここからはケーソンの据付け方法について説明する。据付ケーソン18は図外のケーソン仮置き場から起重機船20によって据付予定箇所の近くまで運搬される。この後、据付ケーソン18の函内に注水し、基礎捨石マウンド10の天端面12に接触しない程度の深さまで沈める。図1および図2は据付ケーソン18を据付け予定箇所の近傍に沈めた状態を示している。
【0019】
次にウィンチ44、46から延びるワイヤ60、62を据付ケーソン18に連結する。これと前後してレーザー測量機40、42を作動させる。据付ケーソン18にはレーザーターゲット70、72の確認要員として2名の作業員を配備しておき、ウィンチ44、46の操作要員として既設ケーソン16に配備された2名の作業員と無線等を通じて連絡を取り合える体制にしておく。
【0020】
この後、ウィンチ44、46を作動させ、据付ケーソン18を既設ケーソン16側に引き寄せる。据付ケーソン18に配備された2名の作業員はそれぞれレーザーターゲット70、72を視認してレーザービーム50、52の入射位置を確認し、既設ケーソン16に配備された2名の作業員にウィンチ44、46の操作を指示する。
【0021】
据付ケーソン18を据付予定箇所に位置決めしたことが確認できたら、再度函内に注水し、基礎捨石マウンド10の天端面12に着底させる。その後、函内に中詰砂を充填し、これを均してから蓋コンクリートを打設する。
【0022】
新たなケーソンを据付ける場合にはウィンチ44、46を既設ケーソン16から据付ケーソン18に移設する。
【0023】
なおレーザー測量機40、42は必ずしも既設ケーソン14に配備しなくてもよく、例えば水上に仮設台などを設置し、これに配備することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 基礎捨石マウンド
14、16 既設ケーソン
18 据付ケーソン
20 起重機船
34 法線
40、42 レーザー測量機
44、46 ウィンチ
50、52 レーザービーム
70、72 レーザーターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの据付け位置基準線となる法線上において少なくとも2本のレーザービームをそれぞれ異なる高さで照射するレーザー測量機と、据付け対象となるケーソンに前記法線方向に距離をおいて備えられた少なくとも2つのレーザーターゲットを含む、ケーソン据付け位置管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のケーソン据付け時の位置管理システムを用いたケーソンの据付方法であって、
前記レーザー測量機に近い側に先に据付けられた既設ケーソンに設置したウィンチによって前記据付ケーソンを牽引して位置決めを行う、ケーソンの据付方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−144872(P2012−144872A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2525(P2011−2525)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【特許番号】特許第4854810号(P4854810)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(510290072)株式会社池間組 (4)