説明

ケーソン沈設方法およびケーソン用水位計

【課題】簡易かつ高精度にニューマチックケーソン工法の施工を行うことを可能としたケーソン沈設方法およびケーソン用水位計を提供することを課題とする。
【解決手段】ケーソン1の刃口2に設置されたケーソン用水位計10により作業室3内の水位を計測し、水位の計測結果に応じて作業室3内の気圧を調節しつつケーソン1を沈設するケーソン沈設方法であって、ケーソン用水位計10は、第一電極棒12aと、第一電極棒12aよりも短い長さの第二電極棒12bと、第一電極棒12aおよび第二電極棒12bを収容する保護カバー11と、を備えており、第一電極棒12aが水を検知し、第二電極棒12bが水を検知しない状態となるように、作業室3内の気圧を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法におけるケーソン沈設方法およびケーソン用水位計に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソン工法は、ケーソン下部の作業室内の気圧を一定に保ち、作業室内への水の流入を制御しながら、掘削作業を行うものである。
【0003】
ニューマチックケーソン工法において、エアブローやケーソンの過沈下を防止するためには、函内の水位を適正に保つことで作業室内の気圧を適正に保つことが重要である。
【0004】
従来、作業室内の水位を測定する方法として、例えば特許文献1に示すように、作業室内に設置された水位計により、掘削地盤に形成された釜場の水面の水位を測定する場合がある。
【0005】
また、この他の従来の水位の測定方法としては、ケーソンの周辺地盤にボーリング孔を形成し、ボーリング孔内の水位を測定する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−348482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、作業室内に設置された水位計による測定は、水位計が掘削作業の支障となる場合があり、作業休止中に測定するのが一般的であった。そのため、急激な水位(気圧)の変化に対応することができない場合があった。
また、釜場を設置する場合には、複数の釜場をケーソン掘削に先行して設ける必要があり、その作業に手間を要していた。
【0008】
また、ボーリング孔を利用する測定方法は、ボーリング削孔、計測器の設置、水位測定に、手間と費用が掛かるという問題を有していた。
また、エアブロー発生時には、エアブローの気圧と地下水の水圧との区分ができないため、正確な測定ができない場合があった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、簡易かつ高精度に施工を行うことを可能としたケーソン沈設方法およびケーソン用水位計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のケーソン沈設方法は、ケーソン刃口に沿って形成された貯水部内の水位を前記ケーソン刃口に設置された水検知手段により計測し、前記貯水部内の水位の計測結果に応じて作業室内の気圧を調節しつつケーソンを沈設することを特徴としている。
【0011】
前記ケーソン沈設方法は、前記水検知手段が、前記貯水部内に挿入された第一電極棒と前記第一電極棒よりも短い長さの第二電極棒とを備えており、前記第一電極棒が水を検知し、前記第二電極棒が水を検知しない状態となるように前記作業室内の気圧を調節してもよい。
【0012】
かかるケーソン沈設方法によれば、ケーソン刃口に沿って形成された貯水部を使用しているため、掘削作業の妨げとなることがない。また、釜場やボーリング孔等を形成する必要もなく、簡易に測定することが可能である。また、測定は、ケーソン刃口において行うため、水位計がエアブローによる気圧の影響を受けることもない。
【0013】
また、本発明のケーソン用水位計は、ケーソン刃口に固定される保護カバーと、前記保護カバー内に収容された水検知手段と、前記保護カバーの下端に固定されて当該保護カバーと連通された先端防護材と、前記先端防護材内に充填されたフィルター材と、を備えるものであって、前記先端防護材には、水流入口が形成されており、前記水流入口から流入した水は、前記先端防護材の内部を通って前記保護カバー内に流入することを特徴としている。
【0014】
かかるケーソン用水位計は、保護カバー内に浸透した水の水位を水検知手段により計測する。
かかるケーソン用水位計によれば、先端防護材および保護カバーにより、水検知手段が土砂に接触することが防止されているため、水位計測を高精度に行うことができる。
また、先端防護材内のフィルター材によって、保護カバー内への土粒子浸入が防止される。
【0015】
また、前記ケーソン用水位計の前記水検知手段が、前記保護カバーの上部から差し込まれた長さの異なる複数本の電極棒から構成されていれば、電極棒間の抵抗値により水位を測定することが可能となる。また、必要に応じて電極棒を着脱することが可能なため、水位の調整や保護カバー内の清掃等を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のケーソン沈設方法およびケーソン用水位計によれば、簡易かつ高精度に作業室内の水位管理を行うことを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係るケーソン用水位計の設置状況を模式的に示す図であって、(a)は断面図、(b)は(a)を下方から望む平面図である。
【図2】ケーソン用水位計を示す図であって、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【図3】ケーソン用水位計の詳細を示す図であって、(a)は拡大正断面図、(b)は(a)のA−A矢視図、(c)は(a)のB−B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、図1(a)に示すように、ケーソン1の刃口(ケーソン刃口)2に固定されたケーソン用水位計10により作業室3内の水位を計測しつつ、ケーソン1を沈設する場合について説明する。本実施形態では、図1(b)に示すように、ケーソン用水位計10を、刃口2の内面の4箇所に設置している。
【0019】
ケーソン用水位計10は、図2(a)および(b)に示すように、刃口2に固定された保護カバー11と、保護カバー11内に収容された水検知手段(電極棒12,12)と、保護カバー11の下端に固定され先端防護材13と、先端防護材13内に充填されたフィルター材14と、水検知手段に接続されたケーブル16を保護するケーブル防護材15と、を備えている。
【0020】
保護カバー11は、図2(a)および図3(a)に示すように、2本の電極棒12,12からなる水検知手段を内部に収容し、電極棒12,12に土圧が作用することを防止する。
【0021】
本実施形態では、保護カバー11を断面矩形の鋼管により構成する(図3(c)参照)。なお、保護カバー11を構成する材料は、ケーソン1沈設時の土圧により変形することのない強度を有しているものであれば限定されるものではない。
【0022】
本実施形態では、溶接により保護カバー11を刃口2に固定するが、保護カバー11の固定方法は限定されるものではない。
【0023】
図2(a)に示すように、保護カバー11の上端は上蓋材11aにより遮蔽されている。上蓋材11aには、水検知手段を設置するための貫通孔が形成されている。電極棒12は、上蓋材11aの貫通孔に設置された治具17を介して、保護カバー11に固定されている。
【0024】
保護カバー11の下端には、図3(a)に示すように、下蓋材11bが設置されている。下蓋材11bの中央には、貫通孔が形成されていて、保護カバー11と先端防護材13とが連通されている。
先端防護材13に流入した水は、下蓋材11bの貫通孔から保護カバー11内に浸入する。これにより、保護カバー11内に水が貯留されて、ケーソン用水位計10内に貯水部が構成される。貯水部内は、先端防護材13を介して作業室の水が浸透することで作業室と同じ水位が維持されている。
【0025】
下蓋材11bの貫通孔には、図3(c)に示すように、ろ過材11cが設置されている。
ろ過材11cの構成する材料は限定されるものではないが、本実施形態では、多孔質のフィルター材を使用する。
【0026】
水検知手段は、図3(c)に示すように、第一電極棒12aと、第一電極棒12aよりも長さの短い第二電極棒12bとにより構成されている。
第一電極棒12aおよび第二電極棒12bは、図3(a)に示すように、先端(下端)の高さ位置をずらした状態で保護カバー11内に配置されている。
【0027】
本実施形態では、2本の電極棒12,12の基端部を、治具17を介して保護カバー11の上蓋材11bに固定している(図2(a)参照)。なお、電極棒12の固定方法は限定されるものではない。
【0028】
本実施形態では、水検知手段として長さの異なる2本の電極棒12,12を使用するが、水検知手段の構成は限定されるものではなく、例えば抵抗線、レーザー光、電磁式等の検知手段を利用してもよい。また、水検知手段として、複数種の検知手段を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
先端防護材13は、図2(a)および(b)に示すように、保護カバー11の先端に固定された鋼製部材である。
先端防護材13は、断面視台形に形成されており、先端(下端)が刃口2の形状に対応して鋭角に形成されている。これにより、先端防護材13の先端面は、刃口2の先端面と面一になっている。
【0030】
先端防護材13は、図2(b)に示すように、正面視で保護カバー11よりも幅が広く形成されており、保護カバー11の下端において、左右に突出した状態で保護カバー11と連結されている。
【0031】
先端防護材13の上端は、蓋材13aにより遮蔽されている。保護カバー11の下蓋材11bと先端防護材13の蓋材13aとを、重ね合わせた状態で保護カバー11と先端防護材13とが連結されている。
なお、先端防護材13は、予め保護カバー11と一体に形成されていてもよいし、異なる部材を保護カバー11の先端に固定することで形成されていてもよい。
【0032】
蓋材13aには、図3(a)および(b)に示すように、保護カバー11の下蓋材11bの貫通孔(ろ過材11c)に対応して水流出孔13bが形成されているとともに、保護カバー11の外周側に位置する複数の水流入孔13c,13c,…(水流入口)が形成されている。これにより、水流入孔13c,13c,…から先端防護材13内に流入した水は、水流出孔13bを通って保護カバー11内に浸透する。
【0033】
また、先端防護材13の内部には、フィルター材14が充填されている。フィルター材14は、先端防護材13に流入した泥水の土粒子を排除する。本実施形態では、フィルター材14としてスポンジ状の多孔質材を使用するが、フィルター材14を構成する材料は限定されるものではない。例えば、先端防護材13に砂などの粒状材を充填してもよい。また、フィルター材14として、強度を有するものを利用することで、ケーソン用水位計10の先端部分(先端防護材13)の耐力を増強し、ケーソン沈設時の圧力により破損することを防止するものとしてもよい。
【0034】
ケーブル防護材15は、図2(a)および(b)に示すように、保護カバー11の上部を覆うように設置された鋼製部材である。
【0035】
ケーブル防護材15は、ケーソン1の側面から延設されて電極棒12に接続するケーブル16を覆うことで、ケーブル16を保護している。
【0036】
ケーブル防護材15は、下端が開口し、上端が遮蔽された管材により構成されており、下端の開口部に保護カバー11の上部を内挿した状態で、設置されている。
ケーブル防護材15は、側方に張り出す取付部15a,15a,…を介してボルトにより、刃口2の表面に固定されている。また、ケーブル防護材15には、ケーソン1の側面から延設されたケーブル16の位置に対応してケーブル孔15bが形成されている。
【0037】
ケーブル16は、ケーソン1の側壁内に埋設されて、電極棒12と地上部のリレー回路やコンピュータとを接続する。電極棒12による計測結果は、ケーブル16を介して地上部へ出力される。なお、ケーブル16は、必ずしもケーソン1の側壁内に埋設されている必要はなく、ケーソン1の内空に配線されていてもよい。
【0038】
ケーソン1の沈設は、刃口2付近の水位を安定的、正確に測定管理することで、作業室3内の気圧を調節しつつ行う。
【0039】
本実施形態においては、保護カバー11内の水位が第一電極棒12aの下端と第二電極棒12b下端との間となるように気圧を調節する。すなわち、第一電極棒12aが水を検知し、第二電極棒12bが水を検知しない状態となるよう気圧を調節する。
【0040】
ケーソン用水位計10は、第一電極棒12aが水を検知しない場合、作業室3内の気圧が高すぎること等により水位低下している可能性があるため、操作室に異常を知らせる。異常を知らされた作業員は、圧気の気圧を下げて、水位を適正な位置に調節する。
また、第二電極棒12bが水を検知した場合には、水位上昇による異常が作業室に知らされる。これにより作業員は、作業室3内の気圧を上げることで、水位を低下させる。
【0041】
水流入孔(水流入口)13cが、先端防護材13の上端に形成されているため、刃口2先端および側面の土圧がケーソン用水位計10内に作用することを防止する。
また、水流入孔13cが先端防護財13の上端に形成されているため、土圧により水流入孔13cが遮蔽されることが防止される。
【0042】
水流入孔口13cから流入した水は、先端防護材13内に充填されたフィルター材14を挿通し、さらにろ過材11cを挿通するため、保護カバー11内に土粒子が進入することが防止されている。そのため、土粒子が水の抵抗値を変化させるなど、電極棒12による水位の検知に悪影響を及ぼすことが防止されている。
【0043】
電極棒12は、治具12bを介して保護カバー11に着脱可能に固定されているため、保護カバー11内への泥水の浸入による堆積物の排除など、不具合のメンテナンスが可能である。なお、電極棒12の着脱は、ケーブル防護材15を取り外した状態で行えばよい。
【0044】
検知棒12のケーブル16は、ケーブル防護材15により保護されているため、作業室3内での作業により破損が生じることが防止されている。
ケーブル16は、ケーソン1内に予め埋設されていることで、地上部のリレー回路やコンピュータと接続され、圧気の過不足のコントロールにケーソン用水位計10の計測結果を即座に利用することができる。
【0045】
作業室3内の圧気管理を適切に行うことで、周辺地盤へのエアブロー等の傷害を防ぐことが可能となる。
また、四方に設置されたケーソン用水位計10,10,…の水位計測結果により、ケーソン1の傾きを把握することも可能である。
【0046】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0047】
例えば、ケーソン用水位計10の設置箇所や設置数は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
また、貯水部の形成方法は前記のものに限定されるものではない。
【0048】
また、前記実施形態では、2本の電極棒12,12により水位を測定するものとしたが、電極棒12の本数は限定されるものではなく、3本以上設置することで、段階的に水位の変化を測定するものとしてもよい。
【0049】
また、ケーソン用水位計10による作業室内の水位計測を行うとともに、周辺地域のエアブロー計測を行う等、適宜他の計測方法や計測装置と組み合わせることで、より安全性を高めるものとしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、保護カバー11の下端と先端防護材13の上端とをつき合わせた状態で、保護カバー11と先端防護材13とを連結するものとしたが、保護カバー11の下端を先端防護材13の上部に挿入した状態で連結する等、保護カバー11と先端防護材13との連結方法は、限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 ケーソン
2 刃口(ケーソン刃口)
3 作業室
10 ケーソン用水位計
11 保護カバー
12 電極棒(水検知手段)
13 先端防護材
13c 水流入孔(水流入口)
14 フィルター材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソン刃口に沿って形成された貯水部内の水位を前記ケーソン刃口に設置された水検知手段により計測し、
前記貯水部内の水位の計測結果に応じて作業室内の気圧を調節しつつケーソンを沈設することを特徴とする、ケーソン沈設方法。
【請求項2】
前記水検知手段が、前記貯水部内に挿入された第一電極棒と前記第一電極棒よりも短い長さの第二電極棒とを備えており、
前記第一電極棒が水を検知し、前記第二電極棒が水を検知しない状態となるように前記作業室内の気圧を調節することを特徴とする、請求項1に記載のケーソン沈設方法。
【請求項3】
ケーソン刃口に固定された保護カバーと、
前記保護カバー内に収容された水検知手段と、
前記保護カバーの下端に固定されて当該保護カバーと連通された先端防護材と、
前記先端防護材内に充填されたフィルター材と、を備えるケーソン用水位計であって、
前記先端防護材には、水流入口が形成されており、前記水流入口から流入した水は、前記先端防護材の内部を通って前記保護カバー内に流入することを特徴とする、ケーソン用水位計。
【請求項4】
前記水検知手段が、前記保護カバーの上部から差し込まれた長さの異なる複数本の電極棒からなることを特徴とする、請求項3に記載のケーソン用水位計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−281149(P2010−281149A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136529(P2009−136529)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(500105078)シーアイテック株式会社 (3)