説明

ケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法

【課題】水中での構成が容易な構築構造でカウンタウェイトブロックと捨石マウンドとの摩擦力を確実に増大させてケーソンの滑動・揺動を抑止し、また、カウンタウェイトブロックの施工断面をコンパクト化して船舶の喫水に影響することなく、さらにはコンクリートの使用量を節減して経済性とCO2排出削減とを図るケーソン防波堤の耐波安定性を向上させるカウンタウェイトブロック工法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は上記目的を達成するために、ケーソン3の周囲における捨石マウンド2上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重しもしくは方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しのいずれかからなる所要重量の重し4を配置したケーソン防波堤の耐波安定性を向上させるカウンタウェイトブロック工法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化による波高増大で安定性が低下する既存ケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法に関するものであり、特に、水中での構成が容易な構築構造で捨石マウンドとの摩擦力を確実に増大させてケーソンの滑動・揺動を抑止しうるケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、次のようなケーソン防波堤の安定性の向上を図る方法が知られている。この従来技術は、水中に築造した捨石マウンド上にケーソンを設置して構成する防波堤の構築方法であって、前記捨石マウンドは、水中にそだや合成繊維シートを格子状に形成した沈床を設置し、この沈床に浮力を有する結合材の一端をヒンジを介して軸支しておき、該結合材を、その浮力により直立させた状態で、沈床上及び結合材の周囲に捨石を充填して構築する。次いで、捨石マウンド上面から突出する結合材をケーソンの底板に開設した孔に貫通させて、ケーソンを捨石マウンド上面に設置し、結合材とケーソン底板とを結合することによってケーソン防波堤を構築している。
【0003】
前記浮力を有する結合材としては、両端を閉塞した鋼管、ヒューム管等の中空剛部材又は索部材が用いられ、該結合材の本数はケーソンの規模によって選択されている。前記ケーソンの底板に開設した孔は、予め蓋体で閉塞され、結合材を貫通させる際に該蓋体が破壊される。また、貫通させた結合材とケーソン底板との結合は、孔と結合材との間隙を砂利やマットで閉塞した後、底板上に水中コンクリートを打設し、ケーソン底板と結合材とを接合することにより行っている。そして、このような構築方法によれば、結合材を介してアンカー力を得ることができるため、滑動抵抗力が増すだけでなく、転倒モーメントに対する抵抗力も増大するとしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−147922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術においては、結合材を介してアンカー力を得ることで、滑動抵抗力を増すようにしている。該結合材は、両端を閉塞した鋼管、ヒューム管等の中空剛部材又は索部材など、水中で浮力を有する部材が用いられているので,このような水中で浮力を有する部材で滑動抵抗力を十分且つ確実に増すのは難しいと考える。また、この結合材の本数はケーソンの規模によって選択されるとしている。しかし、結合材の本数を多数本とした場合、該多数本の結合材を、ケーソンの底板に開設されて予め蓋体で閉塞された多数個の孔に、水中で一度に貫通させるのは、かなり作業が難しくなると考える。
【0006】
そこで、水中での構成が容易な構築構造でカウンタウェイトブロックと捨石マウンドとの摩擦力を確実に増大させてケーソンの滑動・揺動を抑止し、また、カウンタウェイトブロックの施工断面をコンパクト化して船舶の喫水に影響することなく、さらにはコンクリートの使用量を節減して経済性とCO2排出削減とを図る工法とするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とし、また自然石を活用することで海藻などの藻場形成を港内で図ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、水底に敷設した捨石マウンド上にケーソンを設置して構築するケーソン防波堤の耐波安定性向上を図るカウンタウェイトブロック工法であって、前記ケーソンの周囲における前記捨石マウンド上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し,もしくは方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しのいずれかからなる所要重量の重しを配置したケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法を提供する。
【0008】
この構成によれば、例えばケーソンの背後(港内側)における捨石マウンド上に所要重量の重しを配置することで、該所要重量の重しと捨石マウンドとの間に該重しの重量に応じた摩擦力(滑動抵抗力)が生じる。この摩擦力によりケーソンの滑動・揺動が抑止される。また、枠体コンクリートブロックの枠体内部の充填捨石もしくは方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔の充填捨石と捨石マウンドにおける捨石とが連続性を持つことで、該連続性を持つ充填捨石と捨石間に生じるせん断抵抗力により摩擦力がさらに高められる。したがって、このせん断抵抗力により高められる摩擦力に相当する分だけ重しをコンパクト化することが可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填しつつ、もしくは上記方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填しつつ、上記枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し,もしくは上記方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しのいずれかからなる重しを複数段積重したケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法を提供する。
【0010】
この構成によれば、ケーソンの規模が大型化した場合等には、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し,もしくは方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しを、該ケーソンの規模に応じて複数段積重した構築構造とすることで、ケーソンの規模が大型化した場合等においても、これに応じた所要重量の重しを容易に構築することが可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、最上段における上記枠体コンクリートブロックの枠体内部の上部開口もしくは最上段における上記方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔の上部開口のいずれかの上部開口に臨ませて上記充填捨石に荷重をかけるための所要重量の蓋ブロックを設けるともに該蓋ブロックは上下方向に貫通孔が設けられて波力による揚力を軽減するように構成されたケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法を提供する。
【0012】
この構成によれば、蓋ブロックは、充填捨石が沈下しても、これに追随して「落し蓋」のごとく沈下し、充填捨石に荷重をかけ続けて該充填捨石と捨石マウンドにおける捨石との間に生じるせん断抵抗力を増大させるように作用する。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明において、上記枠体コンクリートブロックは、複数のブロックを集合させて形成し該形成体を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成し、上記方塊コンクリートブロックは、周囲に切欠き部を有する方塊ブロックの複数個を前記切欠き部が正対するように隣接させて形成し該形成体を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成したケーソン防波堤の耐波安定性を向上させるカウンタウェイトブロック工法を提供する。
【0014】
この構成によれば、枠体コンクリートブロックは複数のブロックを集合させて形成した形成体を基礎とし、また方塊コンクリートブロックの場合は周囲に切欠き部を有する方塊ブロックの複数個を前記切欠き部が正対するように隣接させて形成した形成体を基礎とし
、該形成体の所要個数を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成し、該集合体を用いた重しによっても、ケーソンの規模が大型化した場合等における所要重量の重しを構築することが可能である。また、前記切欠き部が正対するように隣接させて形成される空隙部に捨石を充填してもよい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、所要重量の重しと捨石マウンドとの間に該重しの重量に応じた摩擦力が生じることで、この摩擦力によりケーソンの滑動・揺動を抑止することができる。また、充填捨石と捨石マウンドにおける捨石とが連続性を持つことで、該連続性を持つ充填捨石と捨石間に生じるせん断抵抗力により摩擦力をさらに高めることができる。したがって、このせん断抵抗力により高められる摩擦力に相当する分だけ重しをコンパクト化することができて、船舶の喫水に影響することがなくなる。さらには、充填捨石に所要重量の一部を受け持たせることでコンクリートの使用量が節減されて経済性を有し、且つCO2排出を削減する工法になるという利点がある。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、ケーソンの規模が大型化した場合等においては、重しを複数段積重するという水中での構成が容易な構築構造で該規模が大型化したケーソンに対応する所要重量の重しを容易に構築することができるという利点がある。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の効果に加えてさらに、最上段の枠体内部もしくは中央部貫通孔の上部開口に臨ませて所要重量の蓋ブロックを設けることで、充填捨石に荷重がかかり、せん断抵抗力をさらに増大させることができる。したがって、このせん断抵抗力がさらに増大した分だけ、重しをさらにコンパクト化することができるという利点がある。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明の効果に加えてさらに、ケーソンの規模が大型化した場合等においては、枠体コンクリートブロック構成用の形成体もしくは方塊コンクリートブロック構成用の形成体の所要個数を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成し、該集合体を用いた重しによっても、規模が大型化したケーソンに対応した所要重量の重しを構築することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図は本発明の実施例に係るケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法を示すものである。
【図1】カウンタウェイトブロック工法で構築されたケーソン防波堤の正面図。
【図2】図1のカウンタウェイトブロック工法に適用される枠体コンクリートブロックを拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図3】図1のカウンタウェイトブロック工法に適用される嵌合用凸部付きの枠体コンクリートブロックを拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図4】図1のカウンタウェイトブロック工法に適用される蓋ブロックを拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図5】枠体コンクリートブロック及び方塊コンクリートブロックを複数のブロック等の集合体として構成した例を示す図であり、(a)は4個の角形ブロックの集合により形成した枠体コンクリートブロックの平面図、(b)は平面視X状の方塊ブロックの集合により形成した方塊コンクリートブロックの平面図、(c)は立方形状方塊ブロックの側面に形成された切欠き部が正対するように隣接させて形成した方塊コンクリートブロックの平面図。
【図6】捨石を充填した最上段における図2の枠体コンクリートブロックの枠体内部の上部開口に臨ませて図4の蓋ブロックにおける嵌入用凸部を嵌入させた状態を示す正面図
【図7】摩擦力増大の第1の工法を説明するための図であり、(a)はケーソンの背後における捨石マウンド上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重しを配置した基本的構築例を説明するための正面図、(b)は捨石を充填した枠体コンクリートブロックの枠体内部の上部開口に臨ませて蓋ブロックを設け充填捨石と捨石マウンドにおける捨石間のせん断抵抗力を増大させた状態を説明するための正面図。
【図8】摩擦力増大の第2の工法を説明するための図であり、(a)は図7(b)と同様の状態を説明するための正面図、(b)は図(a)の枠体コンクリートブロックの背後に捨石を詰め、この背後に詰めた捨石に受働土圧が発生した状態を説明するための正面図、(c)は図(b)の枠体コンクリートブロックの背後に詰めた捨石上に押えブロックを載せて該捨石部分のせん断抵抗力を増大させた状態を説明するための正面図。
【図9】摩擦力増大の第3の工法を説明するための図であり、(a)はケーソンの背後における捨石マウンド上に配置した最下段の枠体コンクリートブロックを用いた重しを示す正面図、(b)は図(a)の枠体コンクリートブロックにおける複数の小径貫通孔及び枠体内部から捨石マウンドに硬化剤を注入しスパイク効果を生じさせて最下段の枠体コンクリートブロックを用いた重しと捨石マウンドとの一体性を高めた状態を説明するための正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、水中での構成が容易な構築構造でカウンタウェイトブロックと捨石マウンドとの摩擦力を確実に増大させてケーソンの滑動・揺動を抑止し、また、カウンタウェイトブロックの施工断面をコンパクト化して船舶の喫水に影響することなく、さらにはコンクリートの使用量を節減して経済性とCO2排出削減とを図る工法とするという目的を達成するために、水底に敷設した捨石マウンド上にケーソンを設置して構築するケーソン防波堤の耐波安定性を向上させるカウンタウェイトブロック工法であって、前記ケーソンの周囲における前記捨石マウンド上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重しもしくは方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しのいずれかからなる所要重量の重しを配置することにより実現した。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図9を参照して説明する。まず、本実施例に係るカウンタウェイトブロック工法で構築されるケーソン防波堤並びに該カウンタウェイトブロック工法に適用される枠体コンクリートブロック及び蓋ブロック等を図1乃至図6を用いて説明する。
【0022】
図1において、カウンタウェイトブロック工法で構築されるケーソン防波堤1は、基本的には、水底に敷設した捨石マウンド2上にケーソン3を設置し、該ケーソン3の主として背後(港内側)における捨石マウンド2上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重しをカウンタウェイトブロックとして配置することにより構築されている。
【0023】
該重しを構成している枠体コンクリートブロックは、外形が平面視で三角形、四角形、六角形、もしくは八角形のものを適用することができ、図1では、四角形(方形)のものが適用されている。該枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填している目的の一つは、充填捨石に所要重量の重しの一部を受け持たせてコンクリートの使用量を節減し、コストダウンを図り、且つCO2排出削減を図ることである。
【0024】
該枠体コンクリートブロック等を用いて構成されるカウンタウェイトブロックとしての重し4は、ケーソン3の大きさに対応した所要重量のものが用いられ、該所要重量の重し4と捨石マウンド2との間に該重し4の重量に応じた摩擦力(滑動抵抗力)を生じさせ、こ
の摩擦力によりケーソン3の滑動・揺動を抑止するようにしている。
【0025】
前記捨石マウンド2は、水底に敷きならされた200〜500kg/個程度の重量の石、砕石からなる捨石2aが、1t/個程度の重量の被覆石2bで被覆されることにより水底に敷設されている。このような捨石マウンド2上に設置されたケーソン3は、縦が10m、横が14m程度で、かなり大型のものが適用されており、その上部には上部工3aが形成され、該上部工3aの一端側(港外側)にはパラペット3bの上部が突出している。
【0026】
前記カウンタウェイトブロックとしての重し4は、上記のようにかなり大型のケーソン3に対応した所要重量でコンパクトとし、且つ水中で容易に構築することを可能とするため、図1の例では、次のように構成したものが用いられている。即ち、嵌合用凸部付きの枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し4Bと、前記嵌合用凸部に対応した嵌合用凹部が付いた枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し4Aとの2個の重し4A,4Bを積重し、さらに、上側の重し4Aにおける枠体コンクリートブロックの枠体内部の上部開口に臨ませて重し4A,4Bにおける充填捨石に荷重をかけるための蓋ブロック5を設けた構成となっている。
【0027】
前記重し4Aと4Bとは、ケーソン3の背後における捨石マウンド2上に嵌合用凸部付きの枠体コンクリートブロックを配置した後、その枠体内部に捨石を充填して重し4Bとし、次いで該重し4Bの上に嵌合用凹部が付いた枠体コンクリートブロックを該嵌合用凹部に前記嵌合用凸部が嵌合するように配置し、その枠体内部に捨石を充填して重し4Aとするというように、各枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填しつつ2段に積重されている。
【0028】
また、カウンタウェイトブロックとしての重し4の部分には、該重し4部分の摩擦力を増大させるため、積重した2個の重し4A,4Bの背後に捨石2cを詰め、この背後に詰めた捨石2cに受働土圧を発生させるともに、該捨石2c上に押えブロック6を載せて該捨石2c部分のせん断抵抗力を増大させるようにしている。この捨石2c部分のせん断抵抗力の増大により、重し4部分と捨石マウンド2間の摩擦力がさらに増大する。
【0029】
なお、重しは、外形が平面視で三角形、四角形、六角形、もしくは八角形の方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填することによっても、上記枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填して構成した重しと同様の機能を生じさせることができる。しかし、以下の本実施例の説明における重しは、主として、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填したものについて説明を進める。
【0030】
次いで、本カウンタウェイトブロック工法に適用される各枠体コンクリートブロック、方塊コンクリートブロック及び蓋ブロックを図2〜図5を用いて説明する。図2の(a)、(b)、(c)は、前記重し4Aの構成に適用された嵌合用凹部付きの枠体コンクリートブロック7を示している。該枠体コンクリートブロック7は、外形が平面視方形(四角形)で、大きさは縦2m、横4m、高さが1m程度で、重さは12t程度に形成されている。
【0031】
該枠体コンクリートブロック7の平面視中央部の枠体内部には、上部開口が下部開口よりもやや大きいテーパ付きの方形枠孔7aが開口されている。該方形枠孔7aにおける上部開口の寸法は、縦1.2m、横3.2m程度である。そして、枠体下面の横方向中央部の対向位置に、嵌合用凹部7bが凹設されている。枠体コンクリートブロック7の平面視四隅には、それぞれ適宜径のアンカー用兼注入用孔7cが開穿されている。
【0032】
図3の(a)、(b)、(c)は、前記重し4Bの構成に適用された嵌合用凸部及び嵌合用凹部付きの枠体コンクリートブロック8を示している。該枠体コンクリートブロック8は、その枠体上面の横方向中央部の対向位置に、前記該枠体コンクリートブロック7における嵌合用凹部7bに対応した嵌合用凸部8bが凸設され、枠体下面の横方向中央部の対向位置には嵌合用凹部8cが凹設されている。その他の、外形形状・寸法及び重量、方形枠孔8aの形状寸法並びにアンカー用孔8d等は前記該枠体コンクリートブロック7におけるものと同様である。
【0033】
図4の(a)、(b)、(c)は、前記蓋ブロック5を示している。蓋ブロック5は、その外形形状・寸法は、前記枠体コンクリートブロック7とほぼ同じであり、重さは20t程度に形成されている。該蓋ブロック5の底面には、縦約1m、横約3m、下方への凸出高さが20〜40cm程度の嵌入用凸部5aが凸出されている。なお、蓋ブロック5には上下方向に図示しない貫通孔を設けることで、波力による揚力が軽減されて蓋ブロック5としての機能が一層効果的に生じる。
【0034】
図5は、枠体コンクリートブロック及び方塊コンクリートブロックを複数のブロック等の集合により構成した例を示している。同図(a)では、4個の角形ブロック10a,…の集合により、方形枠孔10bを有する平面視方形(四角形)の単位の枠体コンクリートブロック10が形成されている。同図(b)では、平面視X状の2個の方塊ブロック11a,11aを、平面視三角形の各凹部11b,11bが正対するように隣接させることにより、方形貫通孔11cを有する単位の方塊コンクリートブロック11が形成されている。同図(c)では、各側面に切欠き部12bが形成された2個の立方形状方塊ブロック12a,12aを、前記各切欠き部12b,12bが正対するように隣接させることにより、方形貫通孔12cを有する単位の方塊コンクリートブロック12が形成されている。
【0035】
上記単位の枠体コンクリートブロック10及び各単位の方塊コンクリートブロック11,12は、それぞれ、その所要個数を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成し、該集合体を用いた重しにより、前記ケーソン3の規模が大型化した場合等における所要重量の重しを構築することが可能である。
【0036】
図6は、捨石2dを充填した前記図2の枠体コンクリートブロック7における方形枠孔7aの上部開口に臨ませて図4の蓋ブロック5を設けた状態を示している。蓋ブロック5における嵌入用凸部5aが枠体コンクリートブロック7における方形枠孔7aの上部開口に臨み、該蓋ブロック5は、枠体コンクリートブロック7の充填捨石2dが沈下しても、これに追随して「落し蓋」のごとく沈下し、充填捨石2dに荷重をかけ続ける。
【0037】
図6中、符合uは蓋ブロック5の沈下予測分であり、例えば、ほぼ10〜20cm程度である。また、図6中、符合s1は蓋ブロック無しの場合の充填捨石2dと捨石マウンドにおける捨石2aとの間に生じるせん断予想線、符合s2は、図示のように蓋ブロック5有りの場合の充填捨石2dと捨石マウンドにおける捨石2aとの間に生じるせん断予想線である。また、前記充填石の充填量(又は高さ)は限定されることなく適宜に選択される。
【0038】
せん断予想線s1で示すように、枠体コンクリートブロック7の方形枠孔7a内(枠体内部)に捨石2dを充填した重しを適用することで、充填捨石2dと捨石マウンド2における捨石2aとが連続し、この連続性を持つ充填捨石2dと捨石2a間にせん断抵抗力が生じて摩擦力が高められる。このように、枠体コンクリートブロック7の方形枠孔7a内に捨石2dを充填しているのは、前記コンクリートの使用量を節減するという目的に加えてさらに、充填捨石2dと捨石マウンド2における捨石2aに連続性を持たせ、これらの間に生じるせん断抵抗力により摩擦力を高めることが、さらに大きな目的である。
【0039】
そしてさらに、蓋ブロック5有りの場合のせん断予想線s2で示すように、蓋ブロック5で充填捨石2dに荷重をかけ続けることで、該充填捨石2dと捨石マウンド2における捨石2aとの間に生じるせん断抵抗力(内部摩擦力)が増大して摩擦力がさらに高められる。
【0040】
次に、カウンタウェイトブロック工法で構築されたケーソン防波堤における摩擦力増大の各工法を順に説明する。
<摩擦力増大の第1の工法>
図7の(a)、(b)は、摩擦力増大の第1の工法を示している。同図(a)はケーソン3の背後における捨石マウンド上に、枠体コンクリートブロック7の方形枠孔7a内(枠体内部)に捨石2dを充填した重しを配置した状態を示しており、前記図6において蓋ブロック無しの場合に相当する。このとき、ケーソン3の移動傾向を受けて受動状態の充填捨石2dは傾斜滑り面q1(せん断予想線s1に相当)に沿って斜め上方に滑り上がり傾向が生じる。
【0041】
これに対し、図7 (b)に示すように、枠体コンクリートブロック7における方形枠孔7aの上部開口に臨ませて蓋ブロック5を設け、充填捨石2dに荷重をかけ続けることで、充填捨石2dと捨石マウンドにおける捨石2aとが噛み合って傾斜滑り面q1は滑り面q2(せん断予想線s2に相当)のように変化し、充填捨石2dの滑り上がりが抑制される。この結果、該充填捨石2dと捨石マウンドにおける捨石2aとの間に生じるせん断抵抗力(内部摩擦力)が増して摩擦力が増大する。
<摩擦力増大の第2の工法>
図8の(a)、(b)、(c)は、摩擦力増大の第2の工法を示している。同図(a)は、前記図7 (b)と同様の状態を示している。即ち、同図(a)は、ケーソン3の背後における捨石マウンド上に、枠体コンクリートブロック7を用いた重しを配置し、この枠体コンクリートブロック7における方形枠孔7aの上部開口に臨ませて蓋ブロック5を設けることで、傾斜滑り面を滑り面q2のように変化させて充填捨石2dと捨石マウンドにおける捨石2aとの間に生じるせん断抵抗力(内部摩擦力)を増大させた状態を示している。
【0042】
図8(b)は、同図(a)の状態における枠体コンクリートブロック7を用いた重しの背後に捨石2cを詰め、この背後に詰めた捨石2cに受働土圧が発生した状態を示している。この受働土圧が発生した状態において捨石2cは傾斜滑り面q3に沿って斜め上方に滑り上がり傾向が生じる。
【0043】
これに対し、図8(c)に示すように、枠体コンクリートブロック7の背後に詰めた捨石2c上に押えブロック6を載せ、捨石2cに荷重をかけ続けることで、傾斜滑り面q3は滑り面q4のように変化し、捨石2cの滑り上がりが抑制される。この結果、捨石2cと捨石マウンドにおける捨石2aとの間に生じるせん断抵抗力(内部摩擦力)が増して摩擦力が増大する。
【0044】
<摩擦力増大の第3の工法>
図9の(a)、(b)は、摩擦力増大の第3の工法を示している。同図(a)はケーソンの背後における捨石マウンド2上に配置した最下段の枠体コンクリートブロック7を用いた重しを示している。本工法では、図9(b)に示すように、枠体コンクリートブロック7における複数のアンカー用孔(小径貫通孔)7c及び枠体内部から捨石マウンド2における捨石2aに硬化剤9を注入してスパイク効果を生じさせている。そして、このスパイク効果により最下段の枠体コンクリートブロック7を用いた重しと捨石マウンド2との一体性を高め、該最下段の枠体コンクリートブロック7を用いた重しと捨石マウンド2との間の摩擦力を増大させている。
【0045】
なお、摩擦力増大の工法としては、上記第1乃至第3の工法の他に、次のような各工法を適用することもできる。(1)最下段の枠体コンクリートブロックにおける複数のアンカー用孔を通して捨石マウンドにおける捨石にアンカーを打ち込み、最下段の枠体コンクリートブロックを用いた重しと捨石マウンドとの一体性を高め、該最下段の枠体コンクリートブロックを用いた重しと捨石マウンド間の摩擦力を増大させる。(2) 最下段の枠体コンクリートブロックの底面に突起を設け、該突起を捨石マウンドにおける捨石に貫入させて最下段の枠体コンクリートブロックを用いた重しと捨石マウンド間の摩擦力を増大させる。(3)せん断抵抗力の増大を期待する部分の捨石は、通常の捨石より硬度(強度)の高いものを用いて該捨石のせん断破壊を防止し、せん断抵抗力の増大状態を長期にわたって維持させる。(4) 枠体コンクリートブロックは、単一のブロックで枠体を形成しているが、複数のブロックを集合させた集合枠体コンクリートブロックとして充填捨石と捨石マウンドにおける捨石間のせん断抵抗力を増大させる。
【0046】
上述したように、本実施例に係るケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法においては、ケーソン3の背後における捨石マウンド2上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した所要重量の重しを配置したことで、該所要重量の重しと捨石マウンド2間に該重しの重量に応じた摩擦力が生じ、この摩擦力によりケーソン3の滑動・揺動を抑止することができる。
【0047】
充填捨石2dと捨石マウンド2における捨石2aとが連続性を持つことで、該連続性を持つ充填捨石2dと捨石2a間に生じるせん断抵抗力(内部摩擦力)により摩擦力をさらに高めることができる。この結果、せん断抵抗力により高められる摩擦力に相当する分だけ重しをコンパクト化することができて、船舶の喫水に影響することがなくなる。
【0048】
充填捨石2dに所要重量の一部を受け持たせることでコンクリートの使用量が節減されて経済性とCO2排出削減とを図りうる工法になる。
【0049】
ケーソン3の規模が大型化した場合等においては、重しを複数段積重するという水中での構成が容易な構築構造で該規模が大型化したケーソン3に対応した所要重量の重しを容易に構築することができる。
【0050】
最上段の枠体内部の上部開口に臨ませて所要重量の蓋ブロック5を設けることで、充填捨石2dに荷重がかかり、せん断抵抗力(内部摩擦力)をさらに増大させることができる。したがって、このせん断抵抗力がさらに増大した分だけ、重しをさらにコンパクト化することができる。
【0051】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【0052】
また、本発明は、充填石が、海草の着床・育成を助け、生態系を改善するために、該コンクリートブロック製作時にアミノ酸を混入し、敷設後アミノ酸を除放させることで環境を活性化することもできる。さらに、該コンクリートブロックが海面近くにある場合に、人工干潟的な役割を奏することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
水中での構成が容易な構築構造でカウンタウェイトブロックとマウンドとの摩擦力を確実に増大させて堤体の滑動・揺動を抑止し、また、カウンタウェイトブロックの施工断面をコンパクト化して船舶の喫水に影響することなく、さらにはコンクリートの使用量を節減して経済性を有する工法とすることが不可欠な捨石防波堤、直立防波堤及び混成防波堤等のケーソン防波堤以外の防波堤或いは突堤等の構築工法にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 ケーソン防波堤
2 捨石マウンド
2a 捨石マウンドにおける捨石
2d 充填捨石
3 ケーソン
4 重し(カウンタウェイトブロック)
5 蓋ブロック
6 押えブロック
7 嵌合用凹部付きの枠体コンクリートブロック
8 嵌合用凸部及び嵌合用凹部付きの枠体コンクリートブロック
9 硬化剤
10 枠体コンクリートブロック
11 方塊コンクリートブロック
12 方塊コンクリートブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に敷設した捨石マウンド上にケーソンを設置して構築するケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法であって、
前記ケーソンの周囲における前記捨石マウンド上に、枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し,もしくは方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しのいずれかからなる所要重量の重しを配置したことを特徴とするケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法。
【請求項2】
上記枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填しつつ、もしくは上記方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填しつつ、上記枠体コンクリートブロックの枠体内部に捨石を充填した重し,もしくは上記方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔に捨石を充填した重しのいずれかからなる重しを複数段積重したことを特徴とする請求項1記載のケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法。
【請求項3】
最上段における上記枠体コンクリートブロックの枠体内部の上部開口もしくは最上段における上記方塊コンクリートブロックの中央部貫通孔の上部開口のいずれかの上部開口に臨ませて上記充填捨石に荷重をかけるための所要重量の蓋ブロックを設けるともに該蓋ブロックは上下方向に貫通孔が設けられて波力による揚力を軽減するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載のケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法。
【請求項4】
上記枠体コンクリートブロックは、複数のブロックを集合させて形成し該形成体を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成し、上記方塊コンクリートブロックは、周囲に切欠き部を有する方塊ブロックの複数個を前記切欠き部が正対するように隣接させて形成し該形成体を左右前後に隣接させ及び/又は上下に重ねた集合体として構成したことを特徴とする請求項1,2又は3記載のケーソン防波堤のカウンタウェイトブロック工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82650(P2012−82650A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231356(P2010−231356)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】