説明

ケーブル、複合ケーブル、ケーブル接続構造体、およびケーブルを用いた電気機器

【課題】複数の信号線を有し、モジュール間を接続するケーブルにおいて、コモンモードノイズの伝搬を抑制しつつ、各信号の伝送特性を略均一にする。
【解決手段】ケーブル10は、互いに絶縁された複数の信号線12と、複数の信号線12と絶縁された状態で複数の信号線12を覆う筒状の外導体14とを有する。外導体14が、外導体14の少なくとも周方向に延び、信号線延在方向に間隔Tをあけて形成された複数のスリット14aを備える。複数のスリット14aの外導体周方向位置が信号線延在方向にしたがって周期的に変化するように、複数のスリット14aが外導体14に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路が実装された基板などのモジュールに電気的に接続されるケーブルに関し、特にコモンモードノイズの伝搬を抑制することができるケーブルに関する。また、本発明は、そのケーブルを含む、複合ケーブル、ケーブル接続構造体、および電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、信号の伝送速度の高速化、スイッチング速度の高速化にともない、電気機器から発生するノイズが問題となっており、様々な対処が行われている。
【0003】
例えば、電子部品を有するモジュール同士を接続するケーブルから輻射されるノイズの対処として、特許文献1に記載されたフレキシブルフラットケーブルが使用される。このフレキシブルフラットケーブルは、互いに平行な複数の信号線と、複数の信号線と平行に配置されたグランド層を有する。また、グランド層には、ケーブル(信号線)の延在方向に不等な間隔で配置され、且つケーブル幅方向に延びる複数のスリット(開口)が形成されている。これにより、フレキシブフラットケーブル表面から直接輻射されるコモンモードノイズが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−41454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モジュールから発生したコモンモードノイズがケーブルを介して他のモジュールに伝搬され、それにより、他のモジュールからノイズが発生することも問題となっている。例えば、パワーエレクトロニクス機器の普及に伴い、モーターなどのモジュールを大電流で駆動することが行われている。その際に、PWM(Pulse Width Modulation)方式などの信号が扱われる場合、変調信号の高調波ノイズがモジュール間を接続するケーブルを伝搬する。
【0006】
コモンモードノイズの周波数帯域が決まっている場合、コモンモードノイズの伝搬を抑制することができるケーブルを使用することが考えられる。すなわち、コモンモードノイズの周波数帯域の伝送性が低い周波数特性を有するケーブルを使用することが考えられる。例えば、特許文献1に記載されたフレキシブルフラットケーブルのように、グランド層に信号線延在方向に並んで形成された複数のスリットを有するフレキシブルフラットケーブルを使用することが考えられる。この場合、スリット間隔を、特定の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる、信号線のグランド層に対する特性インピーダンスを実現できる距離にする。
【0007】
しかしながら、このようなフレキシブルフラットケーブルの場合、複数の信号線それぞれの伝送特性が異なる。具体的に説明すると、複数のスリットのケーブル幅方向中央部分の上方に位置する信号線のグランド層に対する特性インピーダンスと、複数のスリットの端近傍部分の上方に位置する信号線のグランド層に対する特性インピーダンスとが異なる。それにより、信号線毎に伝送特性が異なる。その結果、一部の信号線に、信号の遅延が発生する可能性がある。
【0008】
また、フレキシブルフラットケーブルは、曲げに制限があるため、ケーブル配設の自由度が低い。
【0009】
そこで、本発明は、複数の信号線を有し、モジュール間で信号を伝送するケーブルにおいて、コモンモードノイズの伝搬を抑制し、複数の信号線の伝送特性を略均一にし、且つ高い配設の自由度を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、互いに絶縁された複数の信号線と、前記複数の信号線と絶縁された状態で前記複数の信号線を覆う筒状の外導体とを有し、前記外導体が、前記外導体の少なくとも周方向に延び、信号線延在方向に間隔をあけて形成された複数のスリットを備え、前記複数のスリットの外導体周方向位置が前記信号線延在方向にしたがって周期的に変化するように、前記複数のスリットが前記外導体に形成されている、ケーブルが提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、前記複数のスリットが、前記外導体の表面を前記信号線延在方向にらせん状に延びる仮想のらせん線上に間隔をあけて形成され、前記仮想のらせん線延在方向のスリットの間の部分の外導体周方向位置が、前記信号線延在方向にしたがって周期的に変化する、第1の態様に記載のケーブルが提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、前記仮想のらせん線が複数のピッチを備える、第2の態様に記載のケーブルが提供される。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、前記仮想のらせん線が、前記複数のピッチを順番に繰り返し備える、第3の態様に記載のケーブルが提供される。
【0014】
本発明の第5の態様によれば、前記複数の信号線がツイストペア線である、第2から第4の態様のいずれか一に記載のケーブルが提供される。
【0015】
本発明の第6の態様によれば、前記ツイストペア線のツイスト方向が、前記仮想のらせん線のらせん方向の逆方向である、第5の態様に記載のケーブルが提供される。
【0016】
本発明の第7の態様によれば、前記複数の信号線に、少なくとも1つの接地用信号線が含まれる、第1から第6の態様のいずれか一に記載のケーブルが提供される。
【0017】
本発明の第8の態様によれば、前記外導体と絶縁した状態で前記外導体を覆うシールド体を有する、第1から第7の態様のいずれか一に記載のケーブルが提供される。
【0018】
本発明の第9の態様によれば、第1から第7の態様のいずれか一に記載の複数のケーブルと、前記複数のケーブルと絶縁した状態で前記複数のケーブルを覆うシールド体とを有する、複合ケーブルが提供される。
【0019】
本発明の第10の態様によれば、第1から第8の態様のいずれか一に記載のケーブルと、前記ケーブルの両端に電気的に接続され、前記ケーブルを介して信号をやり取りする複数のモジュールとを有する、ケーブル接続構造体が提供される。
【0020】
本発明の第11の態様によれば、第10の態様に記載のケーブル接続構造体を有し、前記ケーブル接続構造体が金属製筐体内に設置されている、電気機器が提供される。
【0021】
本発明の第12の態様によれば、前記ケーブル接続構造体の前記モジュールの少なくとも一方を介して、前記ケーブル接続構造体のケーブルの外導体が前記金属製筐体に電気的に接続されている、第11の態様に記載の電気機器が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数のスリットが形成された外導体を各信号線越しに見た場合、各信号線が複数のスリットの異なる部分と交差する。これにより、コモンモードノイズの伝搬が抑制しつつ、複数の信号線の伝送特性が略均一にされる。また、外導体に形成されたスリットによってケーブルを自由に曲げることができるため、ケーブル配設の自由度が高い。
【0023】
また、このようなケーブルを用いる、複合ケーブル、ケーブル接続構造体、および電気器は、ノイズの外部への放射を抑制しつつ、モジュール間を安定して信号を伝送することによって安定動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係るケーブルの概略図
【図2】図1のケーブルの断面図
【図3】実施の形態1の改良形態のケーブルを説明するための図
【図4】図1のケーブルを備えるケーブル接続構造体を有する電気機器の一部を示す概略図
【図5】ケーブルのコモンモードノイズの伝搬抑制効果を説明するための図
【図6】実施の形態1の別の改良形態のケーブルの概略図
【図7】実施の形態1のさらに別の改良形態のケーブルの概略図
【図8】本発明の実施の形態2に係るケーブルの概略図
【図9】本発明の実施の形態3に係るケーブルの概略図
【図10】本発明の実施の形態4に係るケーブルの概略図
【図11】本発明の実施の形態5に係るケーブルの概略図
【図12】図11のケーブルの断面図
【図13】本発明の実施の形態6に係る複合ケーブルの概略図
【図14】別の実施の形態に係るケーブルの断面図
【図15】さらに別の実施の形態に係るケーブルの概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の複数の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1に係るケーブルを概略的に示している。また、図2は、図1におけるケーブルのA−A断面およびB−B断面を示している。
【0027】
図1に示すように、ケーブル10は、複数の信号線12と、複数の信号線12覆う筒状の外導体14とを有する。また、図2に示すように、信号線12は、信号が伝搬する(電流が流れる)導体12aと、導体12aを被覆する絶縁体12bとを備える。絶縁体12bにより、信号線12の導体12aは、互いに絶縁され、また外導体14とも絶縁されている。
【0028】
外導体14は、例えば、金属薄板、金属粉を含んだ樹脂などの導電性を備える材料から作製されている。なお、外導体14は、金属網で作製されてもよい。また、外導体14は、図3に示すように、複数の信号線12に巻回可能なテープ状であってもよい。外導体14がテープ状である場合、外導体14は、信号線12と接着する接着層を備えていてもよい。
【0029】
外導体14はまた、図1に示すように、複数のスリット14aを備える。複数のスリット14aそれぞれは、外導体14の少なくとも周方向に延びている。また、複数のスリット14aは、信号線12の延在方向(以下、「信号線延在方向」)に、周期的、すなわち一定の間隔Tをあけて外導体14に形成されている。
【0030】
さらに、複数のスリット14aの外導体14の周方向(以下、「外導体周方向」)の位置が信号線延在方向にしたがって周期的に変化するように、複数のスリット14aが外導体14に形成されている。すなわち、複数のスリット14aは、信号線延在方向の位置が変化すると、外導体周方向位置も変化する。なお、スリット14aの外導体14上の位置は、例えば、スリット14aの外導体周方向中心の位置で定義される。
【0031】
具体的に言えば、複数のスリット14aは、外導体14の表面を信号線延在方向にらせん状に延び、且つピッチTを備える仮想のらせん線S上に間隔をあけて形成されている。さらに具体的に言えば、図1に示すように、仮想のらせん線Sの延在方向(以下、「らせん線延在方向」)のスリット14aの間の部分Gの外導体周方向の位置が信号線延在方向にしたがって周期的に変化するように、複数のスリット14aが外導体14に形成されている。例えば、図3に示すように、らせん線延在方向のスリット14aの長さ(スリット幅)Wおよびスリット14aの間の距離Dとの合計が、らせん線Sの角度で外導体14の切断したときの外導体断面の輪郭長さと異なるように、複数のスリット14aが形成される。
【0032】
信号線延在方向のスリット間隔(仮想のらせん線のピッチ)Tは、特定の周波数帯域(例えば、コモンモードノイズの発生を抑制したい周波数帯域)のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる距離に設定されている。例えば、特定の周波数帯域のコモンモードノイズの半波長と略同一もしくはその整数倍高調波の半波長と略同一に、信号線延在方向のスリット間隔Tは設定されている。
【0033】
このようなケーブル10の構成によれば、複数の信号線12の伝送特性は略均一になる。説明すると、まず、各信号線12の導体12aが絶縁体12bを介して外導体14の内周面に接触しているため、各信号線12の導体12aと外導体14との距離は一定である。
【0034】
また、図1に示すように、複数のスリット14aは、各信号線12に対して、同様にらせん軌道で周回している。具体的に言えば、複数のスリット14aの外導体周方向位置が信号線延在方向にしたがって周期的に変化しているために、信号線12越しに外導体14を見たときに、信号線12が、複数のスリット14aの様々な部分と交差する。例えば、信号線12は、あるスリット14aのらせん線延在方向中央の部分と交差し、別のスリット14aのらせん線延在方向の一方の端近傍の部分と交差し、さらに別のスリット14aのらせん線延在方向の中央部分と交差する。
【0035】
より好ましくは、一方の信号線12越しに外導体14を見たときに一方の信号線12に交差される複数のスリット14aの位置(部分)の平均と、他方の信号線12越しに見たときに他方の信号線12に交差される複数のスリット14aの位置(部分)の平均とが略同一になるように、複数のスリット14aが配置されている。
【0036】
したがって、例えば、一方の信号線12が複数のスリット14aのらせん線延在方向中央の部分のみと交差し、他方の信号線12が複数の14aのらせん線延在方向の端近傍の部分のみと交差するようなことがない。
【0037】
以上の構成により、各信号線12を信号が伝搬するときに外導体14を流れるリターン電流が流れる経路の長さが略均一になり、各信号線12の外導体14に対する特性インピーダンスが略均一になる。その結果、複数の信号線12の伝送特性は、略均一にされる。
【0038】
図4は、図1に示すケーブル10を備えたケーブル接続構造体を有する電気機器の一部を概略的に示している。ケーブル接続構造体20は、ケーブル10と、ケーブル10の両端それぞれに接続されたモジュール22、24とを有する。ケーブル接続構造体20のモジュール22、24それぞれは、電気機器の金属製の筐体26に固定されている。
【0039】
モジュール22、24は、モジュール22、24間で信号をケーブル10を介してやり取りするための電子部品が実装された基板28、30を有する。例えば、基板28または30の一方にケーブル10を介して送信する信号(例えば画像信号)を生成する電子部品が実装され、他方の基板にケーブル10を介して受信した信号を処理する電子部品が実装される。
【0040】
ケーブル10は、その両端にプラグコネクタ32を備える。一方、モジュール22、24は、プラグコネクタ32と着脱可能に連結するレセプタクルコネクタ34を備える。ケーブル10の外導体14は、プラグコネクタ32およびレセプタクルコネクタ34を介して基板28および基板30それぞれに設けられたグランド端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0041】
また、基板28および基板30それぞれのグランド端子と筐体26とを電気的に接続することにより、ケーブル10の外導体14と金属製の筐体26とを電気的に接続されている。これにより、ケーブル10の複数の信号線12の特性インピーダンスが安定する。
【0042】
なお、ケーブル10は、筐体26との距離を略一定に維持した状態で、モジュール22、24間を延びるように配置するのが好ましい。ケーブル10の一部分が筐体26に対して相対的に近く、他の部分が筐体26に対して遠い場合、一部分と他の部分との間で特性インピーダンスの整合がとれない。
【0043】
図5は、図4に示す電気機器における、ケーブルのコモンモードノイズの伝搬抑制効果を示している。図5において、横軸はケーブルに入力されるコモンモードノイズの周波数を示し、縦軸はコモンモードノイズの減衰比を示している。具体的には、図5は、一方のケーブルの端における外導体と筐体との間にコモンモード電圧が印加され、それにより0〜2.4GHz範囲内の周波数のコモンモードノイズがケーブルに入力されたときの、ケーブルの周波数特性を示している。また、このケーブルの周波数特性は、他方のケーブルの端における外導体と筐体との間の電圧に対する比で示されている。
【0044】
さらに、図5(a)は、比較例として、スリットが形成されていない外導体を備えるケーブルの周波数特性を示している。一方、図5(b)は、実施例として、外導体上にピッチTが45mmで8回転する仮想のらせん線を定義し、その仮想のらせん線上に開口幅が5mm(らせん線延在方向の幅)の複数のスリットが形成されたケーブルの周波数特性を示している。
【0045】
図5(a)に示すように、スリットが外導体に形成されていない比較例のケーブルは、0〜2.4GHzの周波数帯域において、コモンモードノイズの減衰はほとんどみられない。一方、図5(b)に示すように、実施例のケーブルは、1.5GHz以上の周波数帯域において、コモンモードノイズの減数がみられた。すなわち、実施例のケーブルは、1.5GHz以上の周波数のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる。
【0046】
本実施の形態1によれば、ケーブル10の両端に接続されたモジュール22、24の一方からケーブル10の他端に接続された他方のモジュールへのコモンモードノイズの伝搬を抑制しつつ、複数の信号線12の伝送特性を均一にすることができる。また、外導体14に形成されたスリット14aによってケーブル10を自由に曲げることができるため、ケーブル配設の自由度が高い。
【0047】
なお、本発明は、図1に示すように、複数のスリットの信号線延在方向のスリット間隔Tは一定に限らない。異なる複数のスリット間隔で複数のスリットを外導体に配置してもよい。すなわち、複数のスリットが配置される仮想のらせん線が、異なる複数のピッチを備えていてもよい。
【0048】
例えば、図6に示すケーブル10’のように、複数のスリット14a’を、異なる複数の信号線延在方向のスリット間隔T1、T2で外導体14’に形成してもよい(すなわち、仮想のらせん線S’が、ピッチT1、T2を備える)。図6において、複数のスリット14a’の信号線延在方向のスリット間隔は、交互にT1、T2と変化する。これにより、スリット間隔T1に対応する周波数帯域のコモンモードノイズとスリット間隔T2に対応する周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる。
【0049】
例えば、ケーブル10’をある基本周波数のクロック信号が伝搬する場合、基本周波数の逓倍の周波数のコモンモードノイズも伝搬することがある。例えば、基本周波数の2逓倍および3逓倍のコモンモードノイズが伝搬することがある。この場合、スリット間隔T1をクロック信号の波長の1/2倍の距離にするとともに、スリット間隔T2をクロック信号の波長の1/3倍の距離に設定する。
【0050】
また、例えば、ケーブル10’をクロック信号に同期したデータ信号が伝搬する場合、クロック信号の基本周波数の1/2〜1/3の周波数のコモンモードノイズが発生する。この場合、クロック信号の波長の2〜3倍の範囲内の距離に、スリット間隔T1、T2を設定する。
【0051】
さらに、クロック信号がスペクトラム拡散されている場合、基本周波数が2〜3パーセント変調されることがあるため、スペクトラム拡散の周波数変調度に基づいて、スリット間隔T1、T2を設定する。
【0052】
異なる複数の信号線延在方向のスリット間隔で複数のスリットを外導体に形成する場合、図6に示すように交互にスリット間隔T1、T2が変化するように複数のスリット14’を形成することに限らない。図7に示すケーブル10’’のように、複数のスリット14a’’の一部をスリット間隔T1で形成した後に、残りをスリット間隔T2で形成してもよい。すなわち、仮想のらせん線S’’が、連続するピッチT1とその後に続く連続するピッチT2を備える。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、複数の信号線が撚り線(ツイスト線)であることである。したがって、この異なる点を中心に本実施の形態2のケーブルを説明する。
【0054】
図8に示すように、本実施の形態2のケーブル110は、互いに撚り合わされた複数の信号線112(ツイストペア線)と、複数の信号線112を覆う筒状の外導体114とを有する。実施の形態1の信号線12と同様に、信号線112も、導体112aと該導体112aを被覆する絶縁体112bとを備える。また、実施の形態1の複数のスリット14と同様に、複数のスリット114aが外導体114に形成されている。
【0055】
本実施の形態2においても、複数のスリット114aが、信号線延在方向に一定のスリット間隔T(特定の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる距離)で外導体114に形成されている(仮想のらせん線S上に形成されている)。また、実施の形態1の複数のスリット14aが各信号線12に対して同様に周回するように、複数のスリット114aが同様に各信号線112に対して周回している。
【0056】
本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、コモンモードノイズの伝搬を抑制することができるとともに、各信号線112の伝送特性(外導体114に対する特性インピーダンス)も略均一にされる。
【0057】
さらに、複数の信号線112が互いに寄り合わされたツイストペア線であるため、差動信号が伝送される場合、スリット114aを介して外部から伝搬したノイズに対して影響を受け難く、また外部にノイズを輻射しにくい。
【0058】
なお、複数の信号線112のツイスト方向は、仮想のらせん線Sのらせん方向の逆方向にするのが好ましい。これにより、外導体114の中心から見た場合、スリット114aに対して信号線112が交差する。すなわち、信号線112の一部が、スリット114aと交差せず、概ね平行に延びることが抑制される。これにより、ケーブル110は、コモンモードノイズの伝搬をより抑制できる。
【0059】
(実施の形態3)
本実施の形態3が実施の形態1と異なる点は、接地信号線を有することである。したがって、この異なる点を中心に本実施の形態3のケーブルを説明する。
【0060】
図9に示すように、本実施の形態3のケーブル210は、複数の信号線212と、接地された接地用信号線213と、複数の信号線212および接地用信号線213を覆う筒状の外導体214とを有する。複数の信号線212および接地用信号線213は、実施の形態1の信号線12と同様に、信号が伝搬する(電流が流れる)導体212a、213aを絶縁体212b、213bで被覆した構造を備える。接地用信号線213はまた、外導体214の内周面と信号線延在方向に接触している。
【0061】
本実施の形態3においても、複数のスリット214aが、信号線延在方向に一定のスリット間隔T(特定の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる距離)で外導体214に形成されている(仮想のらせん線S上に形成されている)。また、実施の形態1の複数のスリット14aが各信号線12に対して同様に周回するように、複数のスリット214aが同様に各信号線212に対して周回している。
【0062】
本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に、コモンモードノイズの伝搬を抑制することができるとともに、各信号線212の信号の伝送特性(外導体214に対する特性インピーダンス)も略均一にされる。
【0063】
また、外導体214と接地用信号線213(その導体213b)と間が一定の距離に維持されているため、各信号線212の外導体214に対する特性インピーダンスが安定する。
【0064】
なお、接地用信号線213は、絶縁体213bによって被覆されていなくてもよい。また、導体213aが絶縁体213bによって被覆されていない部分を接地用信号線213に信号線延在方向に周期的に設けることにより、各信号線212の特性インピーダンスを延在方向に周期的に変化させることが可能である。これにより、所望の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる。
【0065】
(実施の形態4)
本実施の形態4は、実施の形態2のケーブル110と同様に、複数の信号線が互いに撚り合わせされたケーブルである。ただし、接地用信号線と複数の信号線とが互いに撚り合わせされている点が異なる。したがって、この異なる点を中心に本実施の形態4を説明する。
【0066】
図10に示すように、本実施の形態4のケーブル310は、複数の信号線312と、接地された複数の接地用信号線313と、複数の信号線312および接地用信号線313を覆う筒状の外導体314とを有する。複数の信号線312および接地用信号線313は、実施の形態1の信号線12と同様に、信号が伝搬する(電流が流れる)導体312a、313aを絶縁体312b、313bで被覆した構造を備える。また、複数の信号線312および接地用信号線313は、信号線312同士の対向方向と接地用信号線313同士の対向方向とが直交した状態で、互いに撚り合わせされている。
【0067】
本実施の形態4においても、複数のスリット314aが、信号線延在方向に一定のスリット間隔T(特定の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる距離)で外導体214に形成されている(仮想のらせん線S上に形成されている)。また、実施の形態1の複数のスリット14aが各信号線12に対して同様に周回するように、複数のスリット314aが同様に各信号線312に対して周回している。
【0068】
本実施の形態4によれば、実施の形態1と同様に、コモンモードノイズの伝搬を抑制することができるとともに、各信号線312の信号の伝送特性(外導体314に対する特性インピーダンス)も略均一にされる。
【0069】
また、複数の信号線312が互いに寄り合わされたツイストペア線であるため、差動信号が伝送される場合、スリット314aを介して外部から伝搬したノイズに対して影響を受け難く、また外部にノイズを輻射しにくい。
【0070】
なお、複数の接地用信号線313を複数の信号線312と撚り合わせせずに、外導体314と接触した状態で延びるように設けてもよい。実施の形態4の接地用信号線213と同様に、接地用信号線313それぞれに導体313aが絶縁体313bによって被覆されていない部分を信号線延在方向に周期的に設けることにより、各信号線312の特性インピーダンスを延在方向に周期的に変化させることができる。これにより、所望の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することができる。また、接地用信号線313それぞれに、異なるように導体313aが絶縁体313bによって被覆されていない部分を設けることにより、一方の接地用信号線313によってある周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制し、他方の接地用信号線313によって別の周波数帯域のコモンモードノイズの伝搬を抑制することもできる。
【0071】
(実施の形態5)
本実施の形態5は、実施の形態1〜4のケーブルの改良形態である。ここでは、実施の形態1のケーブル10の改良形態を例に挙げて説明する。
【0072】
図11および図12に示すように、本実施の形態5のケーブル410は、実施の形態1のケーブル10と、ケーブル10を覆う筒状のシールド体415を有する。シールド体415は、金属などの導電材料から作製されている。また、シールド体415とケーブル10の外導体14との間には、絶縁体416が介在されている。この絶縁体416により、シールド体415とケーブル10の外導体14は絶縁されている。
【0073】
本実施の形態5によれば、実施の形態1と同様に、コモンモードノイズの伝搬を抑制することができるとともに、各信号線12の信号の伝送特性(外導体14に対する特性インピーダンス)も略均一にされる。
【0074】
また、ケーブル10がシールド体415に覆われているため、外部からスリット14aを介する信号線12へのノイズの伝搬を抑制することができる。また、ケーブル10から外部へのノイズの輻射を抑制することができる。
【0075】
(実施の形態6)
本実施の形態6は、実施の形態1〜4のケーブルをシールド体で覆って構成される複合ケーブルである。ここでは、実施の形態2のケーブル110を有する例を挙げて説明する。
【0076】
図13に示すように、本実施の形態6の複合ケーブル510は、実施の形態2のケーブル110を複数本有し、また、複数のケーブル110を覆う筒状のシールド体515を有する。シールド体515は、金属などの導電材料から作製されている。また、シールド体515とケーブル110の外導体114との間には、絶縁体が介在されている。この絶縁体により、シールド体515とケーブル110の外導体114は絶縁されている。
【0077】
本実施の形態6によれば、実施の形態1と同様に、コモンモードノイズの伝搬を抑制することができるとともに、各信号線112の信号の伝送特性(外導体114に対する特性インピーダンス)も略均一にされる。
【0078】
また、ケーブル110がシールド体515に覆われているため、外部からスリット114aを介する信号線112へのノイズの伝搬を抑制することができる。また、ケーブル110から外部へのノイズの輻射を抑制することができる。
【0079】
なお、図13に示すように、一方のケーブル110の複数のスリット114aと他方のケーブル110の複数のスリット114aとが対向しないようにするのが好ましい。これにより、一方のケーブル110のスリット114aから放射されたノイズが、他方のケーブル110のスリット114bを介して、他方のケーブル110の信号線112に伝搬しにくくなる。
【0080】
また、一方のケーブル110の複数のスリット114aのスリット間隔Tと他方のケーブル110の複数のスリット114aのスリット間隔Tは、それぞれの外導体114に伝搬するコモンモードノイズの周波数に応じて異なる間隔で設けることが好ましい。これにより、それぞれのケーブル110に伝搬するコモンモードノイズが別の周波数であった場合、それぞれのケーブル110自身に伝搬するコモンモードノイズの伝搬を個別に抑制することができ、さらに他方のケーブル110の信号線112に伝搬することを抑制できる。
【0081】
以上、上述の複数の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限らない。
【0082】
例えば、図14に示すケーブル610のように、信号が伝搬する複数の導体612aを平行に配置した状態で内含した絶縁体612bを、複数のスリット614aを備える外導体614が覆ってもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態の場合、例えば図1に示すように、らせん線延在方向のスリット14aの間の部分Gは、その外導体周方向位置が周期的に異なるように形成されているが、本発明はこれに限らない。
【0084】
さらに上述の実施の形態の場合、複数のスリットは、外導体の表面を延びる仮想のらせん線上に形成されているが、本発明はこれに限らない。
【0085】
例えば、図15に示すケーブル810のように、複数のスリット814aは、外導体414の周方向に延びている。また、各スリット814aは、両端の間が一定の距離になるように、また両端に挟まれた部分G’’の外導体周方向位置が周期的に異なるように、外導体814に形成されている。
【0086】
広義には、複数のスリットは、外導体の少なくとも周方向に延びて、信号線延在方向に間隔をあけて形成されていればよい。加えて、複数のスリットの外導体周方向位置が信号線延在方向にしたがって周期的に変化するように、複数のスリットが外導体に形成されていればよい。これにより、複数の信号線の外導体に対する特性インピーダンスは略均一にされる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、複数の信号線を有し、モジュール間で信号を伝送するケーブルにおいて、コモンモードノイズの伝搬を抑制しつつ、複数の信号線の伝送特性を均一にすることができる。そのため、本発明は、コモンモードノイズを発生しうるモジュールと、他のモジュールとを有し、これらのモジュール間で信号のやり取りを行う電気機器にとって有益である。これにより、本発明を適用した電気機器は、ノイズの外部への放射を抑制しつつ、モジュール間を安定して信号を伝送することによって安定動作することができる。
【符号の説明】
【0088】
10、110、210、310、410、610、810 ケーブル
12、112、212、312、412、812 信号線
12a、112a、212a、312a、612a 導体
12b、112b、212b、312b、612b 絶縁体
14、14’、14’’、114、214、314、614、814 外導体
14a、14a’、14a’’、114a、214a、314a、614a、814a スリット
20 電気機器
22、24 モジュール
26 筐体
28、30 基板
32 プラグコネクタ
34 レセプタクルコネクタ
213、313 接地用信号線
213a、313a 導体
213b、313b 絶縁体
415、515 シールド体
510 複合ケーブル
S、S’、S’’ 仮想のらせん線
T、T1、T2 信号線延在方向のスリット間隔(ピッチ)
W スリット幅
D らせん線延在方向のスリット間の距離
G、G’、G’’ スリットの間の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絶縁された複数の信号線と、
前記複数の信号線と絶縁された状態で前記複数の信号線を覆う筒状の外導体とを有し、
前記外導体が、前記外導体の少なくとも周方向に延び、信号線延在方向に間隔をあけて形成された複数のスリットを備え、
前記複数のスリットの外導体周方向位置が前記信号線延在方向にしたがって周期的に変化するように、前記複数のスリットが前記外導体に形成されている、ケーブル。
【請求項2】
前記複数のスリットが、前記外導体の表面を前記信号線延在方向にらせん状に延びる仮想のらせん線上に間隔をあけて形成され、
前記仮想のらせん線延在方向のスリットの間の部分の外導体周方向位置が、前記信号線延在方向にしたがって周期的に変化する、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記仮想のらせん線が複数のピッチを備える、請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記仮想のらせん線が、前記複数のピッチを順番に繰り返し備える、請求項3に記載のケーブル。
【請求項5】
前記複数の信号線がツイストペア線である、請求項2から4のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記ツイストペア線のツイスト方向が、前記仮想のらせん線のらせん方向の逆方向である、請求項5に記載のケーブル。
【請求項7】
前記複数の信号線に、少なくとも1つの接地用信号線が含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記外導体と絶縁した状態で前記外導体を覆うシールド体を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の複数のケーブルと、
前記複数のケーブルと絶縁した状態で前記複数のケーブルを覆うシールド体とを有する、複合ケーブル。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載のケーブルと、
前記ケーブルの両端に電気的に接続され、前記ケーブルを介して信号をやり取りする複数のモジュールとを有する、ケーブル接続構造体。
【請求項11】
請求項10に記載のケーブル接続構造体を有し、
前記ケーブル接続構造体が金属製筐体内に設置されている、電気機器。
【請求項12】
前記ケーブル接続構造体の前記モジュールの少なくとも一方を介して、前記ケーブル接続構造体のケーブルの外導体が前記金属製筐体に電気的に接続されている、請求項11に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−114985(P2013−114985A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262043(P2011−262043)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】