説明

ケーブルクリーナー

【課題】洗浄力があり、臭気が少なく、ケーブル被覆材料への影響が少ないケーブル洗浄剤の提供。
【解決手段】3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと炭化水素からなることを特徴とするケーブル用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用や電力用などの絶縁ケーブルまたは光ケーブルを分解、接続するときに、ケーブルに充填されているジェリーや、塵埃、油汚れ、金属粉、カーボン粉、塩類等の導電性物質などの汚れを除去するのに効果的な洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ケーブルや光ケーブルを接続する際には、ケーブルに充填されているジェリーや、塵埃、油汚れ、金属粉、カーボン粉、塩類等の導電性物質などの汚れを除去することが必要である。この除去のための洗浄剤として、特許文献1〜5の洗浄剤が提案されている。
しかし、これらはシリコーンオイルからなるジェリーに対する洗浄力は有していても、塩類等の導電性物質などの汚れを除去する性能が劣っていたり、ケーブルの被覆材料である架橋ポリエチレンを劣化させる悪影響が大きく、臭気が強く、乾燥性が不十分である等、分解、接続作業に多大の支障をきたしたり、万一ケーブル内に残留した場合の電気絶縁性、ケーブル被覆材料への影響が懸念されるという問題がある。
【0003】
特許文献1には、炭化水素とリモネンを含む洗浄剤が提案されているが、ケーブルの被覆材料が硬化して脆くなる等の悪影響があり、ケーブル内に残留、あるいは被覆材料に付着した場合、被覆材料の絶縁性能が低下する懸念がある。また、リモネンは臭気が強く、ケーブルの接続作業は、主としてマンホール、洞道、ハンドホールのような小スペースでかつ換気の悪い場所で行われるので、労働作業環境上好ましくない。
特許文献2には、n−パラフィン、油溶性染料および香料の洗浄剤、特許文献3には、n−パラフィン、芳香族炭化水素、油溶性染料および香料の洗浄剤が提案されているが、塩類等の導電性物質などの汚れの除去性能に劣り、芳香族炭化水素は臭気が強く、労働作業環境上好ましくない。
【0004】
特許文献4には、グリコールエーテル系化合物と炭化水素の洗浄剤が提案されているが、ケーブルの被覆材料への悪影響があり、ケーブル内に残留、あるいは被覆材料に付着した場合、被覆材料の絶縁性能が低下する懸念がある。
特許文献5には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド系グリコールエーテル等の洗浄剤が提案されているが、シリコーンオイルからなるジェリーの除去性能は十分とは言えない。
【特許文献1】米国特許第3922674号公報
【特許文献2】特開平02−173096号公報
【特許文献3】特開平03−9999号公報
【特許文献4】特開平04−279700号公報
【特許文献5】特開2007−2159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来知られている特許文献1〜5の洗浄剤は、ケーブルの分解、接続用洗浄剤として用いたときに、シリコーンオイルの洗浄力、導電性物質の洗浄力、臭気、ケーブル被覆材質への影響の全ての面で充分に満足し得るものではない。本発明は、上記の問題を解決し、シリコーンオイル及び導電性物質に対する洗浄力が優れ、臭気が少なく、ケーブル被覆材質への影響が少ないという実用上の要求性能を充分に満足するケーブル用洗浄剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上記課題を達成するためには、以下の洗浄剤を用いることが最適であることを見出したものである。
すなわち、本願発明は、
(1)3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと炭化水素からなることを特徴とするケーブル用洗浄剤、
(2)炭化水素が、1013hPaにおける沸点が180℃から250℃である脂肪族炭化水素である(1)記載のケーブル用洗浄剤、
(3)3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと炭化水素の混合比が、重量比で、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール:炭化水素=1:99〜50:50である請求項1または2記載のケーブル用洗浄剤、
(4)(1)〜(3)いずれか記載の洗浄剤を不織布に含浸してなるケーブル洗浄用クリーナー、
(5)不織布がセルロース系及び/または再生セルロース系繊維からなる(4)記載のクリーナー、
(6)洗浄剤の含浸率が100〜400重量%である(4)または(5)記載のクリーナー、
に関する。
【0007】
本発明の洗浄剤に用いられる炭化水素は、単一でも混合物でも良いが、臭気、乾燥性から3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールの沸点(1013hPaで174℃)より高く、沸点範囲に幅を有する混合物の方が好ましい。また、不飽和よりも飽和炭化水素の方が好ましい。
臭気、洗浄作業性から、洗浄液の乾燥性は速すぎても遅過ぎても好ましくなく、この点から1013hPaにおける沸点が180℃から270℃の範囲にある脂肪族炭化水素が好ましく、1013hPaにおける沸点が180℃から240℃の範囲にある炭化水素がより好ましく、1013hPaにおける沸点が180℃から200℃の範囲にある脂肪族炭化水素がさらに好ましい。1013hPaにおける沸点が270℃を超えると乾燥性が悪く好ましくない。
【0008】
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと炭化水素の重量割合は、シリコーンオイルに対する洗浄性と導電性物質に対する洗浄性から、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール:炭化水素=1:99〜50:50が好ましく、さらに好ましくは、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール:炭化水素=5:95〜30:70が好ましく、さらに好ましくは、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール:炭化水素=10:90〜25:75である。
本発明の洗浄剤は、不織布に含浸したワイパー状で使用するのが好ましく、この場合、不織布の繊維としては、セルロース系あるいは再生セルロース系が好ましく、コットン、レーヨン等が挙げられる。ポリエステルなどの合繊は、拭き取り時の摩擦による静電気発生の懸念があり好ましくない。洗浄剤の含浸率としては、150〜400重量%が好ましく、200〜300重量%がさらに好ましい。含浸率が150%より少ないと拭き取り性が劣り、400重量%より多いと不織布から洗浄液が垂れるようになり好ましくない。
本発明の洗浄剤は、ケーブル被覆材質への影響が少ない特徴があるが、作業中にケーブル中への残留を抑える意味から、洗浄液成分としては粘度が高いものが好ましい。
なお、洗浄剤には、所望により洗浄度の確認のための染料,一層の臭気対策としての香料、帯電防止剤などの公知の添加剤を適宜配合してもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明で明らかなように、本発明の絶縁ケーブル用洗浄剤は、従来提案されているケーブル用洗浄剤に比べ、シリコーンオイルに対する洗浄力を有するとともに、ケーブル被覆材料への影響が少なく、臭気も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、実施例および参考例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール20重量部と0号ソルベントL(新日本石油株式会社製、n−パラフィン系炭化水素混合物、1013hPaにおける沸点185〜200℃)80重量部とを混合し、洗浄剤を作成し、下記のように洗浄試験、ケーブル被覆材料への影響試験、臭気試験を行い、結果を表1に示した。
洗浄試験:この洗浄剤を、レーヨン製不織布(目付け40g/m)に含浸率200重量%で含浸させたものを用いて、長さ50mm、幅20mm、 厚み2mm のポリエチレンテストピースの表面にシリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、商品名KF−96−100)を3滴滴下したポリエチレン試料の表面を拭き、洗浄剤が乾燥後、シリコーンオイルの残留がないか、目視で評価した。残留なし:○、残留有り:×
ケーブル被覆材料への影響試験:絶縁ケーブル(株式会社フジクラ・ダイヤケーブル製、6600V CV)より切り出したポリエチレン製絶縁体を洗浄剤に25℃で96時間浸漬し、浸漬後の変化を観察した。著しい変化なし:○、明らかな外観変化有り:△、外観変化および硬化有り:×
臭気試験:臭気が少ない:○、臭気が強い:×
【0012】
[比較例1]
特許文献4を参考に、1−ドデセン50重量部とジエチレングリコールジメチルエーテル50重量部を混合して洗浄剤を作成し、実施例1と同様に評価し、結果を表1に示した。
【0013】
[比較例2]
特許文献1を参考に、D−リモネン50重量部と0号ソルベント50重量部を混合して洗浄剤を作成し、実施例1と同様に評価し、結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明の洗浄剤は、従来提案されているケーブル用洗浄剤に比べて洗浄力を有しつつ、臭気が少なく、ケーブル材質への影響が少ない。
【0014】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、絶縁ケーブルまたは光ケーブル用洗浄剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと炭化水素からなることを特徴とするケーブル用洗浄剤。
【請求項2】
炭化水素が、1013hPaにおける沸点が180℃から250℃である脂肪族炭化水素である請求項1記載のケーブル用洗浄剤。
【請求項3】
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールと炭化水素の混合比が、重量比で、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール:炭化水素=1:99〜50:50である請求項1または2記載のケーブル用洗浄剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の洗浄剤を不織布に含浸してなるケーブル洗浄用クリーナー。
【請求項5】
不織布がセルロース系及び/または再生セルロース系繊維からなる請求項4記載のクリーナー。
【請求項6】
洗浄剤の含浸率が100〜400重量%である請求項4または5記載のクリーナー。

【公開番号】特開2008−303313(P2008−303313A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152591(P2007−152591)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】