説明

ケーブルサポート及びその製造方法

【課題】セメント系の材料で構成されているにもかかわらず高い真円度を有し、しかもその表面にクラックが生じた場合であっても材料の剥離を防止して機械的強度が低下するのを抑制することができる耐久性の高いケーブルサポートとその製造方法とを提供する。
【解決手段】洞道又は人孔T内にてその底面及び天面を押圧して突っ張るように立設され、ケーブルCを支持するケーブル受け具12がその周面に取り付けられる柱状のケーブルサポート10であって、断面真円形状で且つ硬質の樹脂管14aからなる外殻層14と、前記樹脂管14aの内部に配筋された複数本の鉄筋20及びその内部の隙間に充填された無収縮セメント材料からなる充填層16とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洞道及び人孔内に立設され、電力線等のケーブルを支持するケーブル受け具が取り付けられるケーブルサポートとその製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、洞道及び人孔内に架設される電力線等のケーブルは、ケーブル受け具が取り付けられた柱状の複数のケーブルサポートで支持されているのが一般的である。このようにケーブル受け具を介してケーブルを支持するケーブルサポートとして、金属管からなるもの(例えば、「特許文献1」参照。)や、内部に鉄筋が埋設されたコンクリート或いはモルタルからなるセメント系のもの等が知られている。
【0003】
このうち中空の金属管からなるものは、中実のセメント系のものに比べて軽量にできることから、高さがある洞道内に立設するのに好適であるが、地中に埋設され比較的湿度が高くなる洞道内の環境では錆が発生し易く耐用年数が短くなると云った問題の生じる虞がある。
【0004】
一方、セメント系のものは、金属管からなるものと異なり錆による影響は小さいが、金属管からなるもののように立設時の水平断面形状が真円のもの(真円度が高いもの)を製造するのが困難である。以下この点について説明すると、セメント系のケーブルサポートは、半割れ分割金型で構成された型枠内に鉄筋を配筋した後、コンクリート或いはモルタルを流し込んで成形されるが、型枠は合わせ面近傍の円精度が低いため、全体の真円度が出なくなる。そして、このようにケーブルサポートの真円度が低い場合、Uボルト等を使用してケーブルサポートの周面にケーブル受け具を取り付ける際に、Uボルトがケーブルサポートの外周面に沿わないため、該ケーブル受け具を緩みやガタつきなく強固に取り付けるのが困難になると云った問題が生じる。
【0005】
また、一般的に、ケーブルサポートは、その長手方向端部に設けられた高さ調整部を伸長させて洞道の床面及び天面を押圧して突っ張るように立設されるが、特にセメント系のケーブルサポート20を洞道の不陸部分などに据付けた場合、該ケーブルサポートに偏荷重が与えられるようになる。そうすると、ケーブルサポートの特定の部分に応力が集中してクラックが発生し、該クラックが発生した部分の材料がケーブルサポートから剥離してケーブルサポートに欠落が生じるようになる。その結果、当該欠落部分から内部の鉄筋が剥き出しとなり、表面に露出した鉄筋が錆びることによってケーブルサポートの機械的強度や耐久性が低下するようになると云った問題の生じる虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3024285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえに、本発明の主たる課題は、セメント系の材料で構成されているにもかかわらず高い真円度を有し、クラックが生じた場合であっても材料の剥離を防止して機械的強度が低下するのを抑制することができる耐久性の高いケーブルサポートとその製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
「請求項1」に記載した発明は、
(a)洞道又は人孔T内にてその底面及び天面を押圧して突っ張るように立設され、ケーブルCを支持するケーブル受け具12がその周面に取り付けられる柱状のケーブルサポート10であって、
(b)断面真円形状で且つ硬質の樹脂管14aからなる外殻層14と、
(c)前記樹脂管14aの内部に配筋された複数本の鉄筋20及びその内部の隙間に充填された無収縮セメント材料からなる充填層16とを具備する
(d)ことを特徴とするケーブルサポート10、である。
【0009】
「請求項2」に記載した発明は、請求項1に記載のケーブルサポート10において、「前記樹脂管14aが硬質ポリ塩化ビニルからなるVU管である」ことを特徴とする。
【0010】
また、「請求項3」に記載した発明は、請求項1記載のケーブルサポート10の製造方法に関するもので、
(イ)断面真円形状で且つ硬質の樹脂管14aの内部に、複数本の鉄筋20を配筋した後、水に溶解させた無収縮セメント系材料を流し込んで充填し、
(ロ)然る後、前記無収縮セメント材料を硬化させて前記樹脂管14aからなる外殻層14と前記無収縮セメント材料からなる充填層16とを一体化させる
(ハ)ことを特徴とするケーブルサポート10の製造方法である。
【0011】
これらの発明では、断面真円形状で且つ硬質の樹脂管14aの内部に無収縮セメント材料を充填して充填層16が形成されている。つまり、外殻層14となる樹脂管14aがケーブルサポート10の製造時には型枠として機能しているので、得られたケーブルサポート10の立設時の水平断面形状は外殻層14を形成する樹脂管14aと同じ真円形状のものとなる。
【0012】
ここで、「硬質の樹脂管14a」とは、無収縮セメント材料を充填する際や充填した無収縮セメント材料が硬化する際に管の真円度が変化しない硬さの樹脂管を意味し、樹脂管14aを構成する樹脂自体に硬質の物を使用する場合のみならず、樹脂管14aの肉厚を厚くして構造的に管を曲がりにくくする場合をも包含する概念である。
【0013】
なお、外殻層14を形成する硬質の樹脂管14aとしては、「請求項2」に記載したように、「硬質ポリ塩化ビニルからなるVU管」を用いるのが、後述するように材料入手の容易性やケーブルサポート10製造時における加工性等の観点から好適である。
【0014】
また、本発明全体を通して「断面真円形状」とは、Uボルトのような締結具の内周面が沿うような程度の真円度を有する断面形状を云う。
【0015】
そして、本発明のケーブルサポート10では、鉄筋20及び無収縮セメント材料からなる充填層16の表面が硬質の樹脂管14aからなる外殻層14で隙間なく被覆されているので、充填層16にクラックが生じた場合であっても、当該クラックが生じた部分がケーブルサポート10から簡単に剥離するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セメント系の材料で構成されているにもかかわらず高い真円度を有しているので、Uボルトの内周面がケーブルサポートの外周面に沿うようになり、該ケーブルサポートの周面にUボルト等を使用してケーブル受け具を緩みやガタつきなく強固に取り付けることができる。
【0017】
また、鉄筋及び無収縮セメント材料からなる充填層の表面が硬質の樹脂管からなる外殻層で隙間なく被覆されているので、充填層を構成する無収縮セメント材料にクラックが生じた場合であっても当該材料が剥離して鉄筋が剥き出しとなるのを防止することができる。それゆえ、剥き出しとなった鉄筋が錆びてケーブルサポートの機械的強度や耐久性が低下するのを防止することができる。
【0018】
以上のように、本発明によれば、セメント系の材料で構成されているにもかかわらず高い真円度を有し、クラックが生じた場合であっても材料の剥離を防止して機械的強度が低下するのを抑制することができる耐久性の高いケーブルサポートとその製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における一実施例のケーブルサポートの使用態様を示す説明図である。
【図2】本発明における一実施例のケーブルサポートを示す部分拡大断面図を併記した正面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】本発明における一実施例のケーブルサポートを構成する部品の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明における一実施例のケーブルサポート10の使用態様を示す説明図である。この図が示すように、本発明のケーブルサポート10は、人孔T内に立設され、その本体に取り付けられるケーブル受け具12を介して電力線等のケーブルCを支持する柱状の部材である。なお、図1中の符号12aは、ケーブル受け具12をケーブルサポート10の周面に固定するためのUボルトである。
【0021】
このケーブルサポート10は、図2に示すように、外殻層14、充填層16、高さ調整部18で大略構成されている。
【0022】
外殻層14は、充填層16の表面(周面)を被覆する鞘状の部材で、硬質の樹脂管14aによって構成されている。
【0023】
ここで、硬質の樹脂管14aの「硬質」とは、後述するように樹脂管14a内に無収縮セメント材料を充填する際や充填した無収縮セメント材料によって樹脂管14aの真円度が変化しない硬さを有することを意味し、樹脂管14aを構成する樹脂自体に硬質の物を使用する場合のみならず、樹脂管14aの肉厚を厚くして構造的に管を曲がりにくくする場合をも包含する概念である。
【0024】
この外殻層14を構成する樹脂管14aとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、或いはABS樹脂などから成るものを挙げることができるが、このうち、ポリ塩化ビニル樹脂から成るもの、より具体的には硬質ポリ塩化ビニルからなり、JIS K 6741で規格されたVU管を(この樹脂管14aとして)使用するのが特に好適である。係るVU管は、安価で非常に簡単に入手でき、切断などの加工がし易く、しかも内面が平滑で摩擦抵抗が小さいため、後述する無収縮セメント材料を充填する際の充填作業が容易である。更には、係るVU管は、弾性に富み、機械的強度に優れていることから、ケーブルサポート10の耐久性を向上させることができる。また、ポリ塩化ビニル樹脂は電力線などのケーブルを被覆する被覆材としても使用されており、電気絶縁性や自己消化性を具備している。なお、硬質ポリ塩化ビニルとは、塩化ビニル(CH2=CHCl)の単量体を重合したポリ塩化ビニル(PVC)のうち、可塑剤を全く含まないか僅かに含む物のことを云う。
【0025】
充填層16とは、外殻層14となる樹脂管14aの内部に、複数本(図3に示すように本例の場合は6本)の鉄筋20を配筋した後、水に溶解させた無収縮セメント材料を樹脂管14a内部の隙間に流し込んで充填し、これを硬化させて外殻層14と隙間なく一体化するように形成した層で、ケーブルサポート10における機械的強度の主体をなす層である。
【0026】
この充填層16を構成する無収縮セメント材料として、ブリーディング性が低く無収縮性に優れた無収縮モルタル或いはセメント系高流動無収縮グラウト材などを挙げることができるが、硬化過程で水和熱による温度上昇が80℃近くにまで達する無収縮モルタルよりも、このような温度上昇が生じない低発熱型のセメント系高流動無収縮グラウト材を用いるのが好ましい。このようなセメント系高流動無収縮グラウト材としては、株式会社豊運から上市されている商品名「ビルモルグラウト」や新日鉄高炉セメント株式会社から上市されている商品名「エスセイバー[登録商標](袋タイプ)」、或いは宇部興産株式会社から上市されている商品名「U−グラウトM」などを例示することができる。
【0027】
ここで、図示実施例のケーブルサポート10では、図3及び図4に示すように、6本の鉄筋20が、一般構造用炭素鋼(SS)などからなる金属板をスプロケット状に打抜き若しくは切断して形成した、最大外径が樹脂管14aの内径よりやや小さな寸法の鉄筋スペーサ22の周縁凹部に、溶接等の接合手段を用いて接合されている。このため、この鉄筋スペーサ22に溶接された6本の鉄筋20は、同一円周上に配設されるようになり、これらを樹脂管14a内に挿入して配筋すると、各鉄筋20は樹脂管14aの内周面近傍の同一円周上にて等間隔に配筋されるようになる。
【0028】
また、本例の場合、図4に示すように、鉄筋スペーサ22が、鉄筋20の長手方向に複数(具体的には3箇所)取り付けられており、各鉄筋20の上端部は、円筒部材24の外周面に溶接されている。ここで、円筒部材24とは、後述する高さ調整部18(図2参照)の構成部材の一つである寸切ボルト28が収容され、且つ、上端部に同じく高さ調整部18の構成部材の一つであり前記寸切ボルト28に螺合する雌ネジ26が設けられると共に、下端部が閉じられたSSなどの金属からなる円筒状の部材である。
【0029】
更に、鉄筋20の上端面には、前記雌ネジ26に対応する部分が開口すると共に、樹脂管14aの内部に鉄筋20を配筋した際に樹脂管14aの上端部に嵌合してこれを閉塞する、ステンレス鋼(SUS)などの金属からなるキャップ部材30が溶接されている。
【0030】
高さ調整部18は、ケーブルサポート10を洞道T内に立設する際、当該ケーブルサポート10が転倒しないように天井面に押し当てられる部材であり、本実施例では、前述のように円筒部材24の上端部に取り付けられた雌ネジ26と、該雌ネジ26に螺合する寸切ボルト28と、前記寸切ボルト28の上端部に六角ナット32a及び丸短パイプ32bを介して該寸切ボルト28の軸方向にて進退可能に螺着され、洞道Tの天井面に当接する皿部材32と、前記雌ネジ26と寸切りボルト28との螺合位置を固定する固定ナット34とで構成されている。
【0031】
なお、図1及び図2中の符号36は、樹脂管14aの内部に無収縮セメント材料を充填して充填層16を形成する際或いは形成した後に樹脂管14aの下端部を閉塞するポリエチレンなどの樹脂からなる下部キャップである。
【0032】
また、皿部材32の洞道Tの天井面に当接する側の表面には、ローレット加工による凹凸模様が刻設されており、皿部材32と洞道T天井面との間の摩擦を大きくするよう形成されている。
【0033】
以上のように構成されたケーブルサポート10を製造する際には、上述のように鉄筋20、円筒部材24、キャップ部材30及び高さ調整部18が一体化されて一つのユニットを構成する部材の鉄筋20を外殻層14となる樹脂管14aの内部に挿入し(図4参照)、キャップ部材30を樹脂管14aの上端部に嵌合させて当該上端部を閉塞する。ここで、高さ調整部18(雌ネジ26は除く)については、図4に示すように、鉄筋20配筋時には上記ユニットから取り外しておくようにしてもよい。
【0034】
続いて、内部に鉄筋20が配筋された樹脂管14aの天地を入れ替えて開口している下端部を上方に向け、ここから水/セメント比(重量比)が15〜17%の範囲内となるように水で溶解した無収縮セメント材料を樹脂管14aの内部に隙間なく流し込み、これを硬化させて無収縮セメント材料からなる充填層16を形成させる。ここで、水/セメント比が15%より小さい場合には、無収縮セメント材料が硬化した際の機械的強度の立ち上がりを早くすることはできるものの、流動性が悪化するために樹脂管14aへの充填作業に時間がかかると共に樹脂管14a内に隙間なく充填するのが困難になり、逆に、水/セメント比が17%より多くなると、流動性が向上して樹脂管14a内への充填作業は容易になるものの、無収縮セメント材料の硬化に時間が掛かって機械的強度の立ち上がりが遅くなると共にその強度自体も低下するようになる。つまり、樹脂管14a内に充填する無収縮セメント材料の水/セメント比(重量比)が15〜17%の範囲内となるように調整することによって、機械的強度に優れた充填層16を効率よく製造することができるようになる。
【0035】
そして、樹脂管14a内部に充填した無収縮セメント材料が硬化した後、樹脂管14aからなる外殻層14の下端部に下部キャップ36を取り付け(図4参照)、樹脂管14a内部の無収縮セメント材料が完全に硬化することによってケーブルサポート10が完成する。なお、鉄筋20配筋時及びその後の無収縮セメント材料充填時に高さ調整部18を取り外していた場合には、この段階で取り付けるようにすればよい。
【0036】
このように本発明によれば、断面真円形状で且つ硬質の樹脂管14aの内部に無収縮セメント材料を充填して充填層16が形成されている。つまり、外殻層14となる樹脂管14aがケーブルサポート10の製造時には型枠として機能しているので、得られたケーブルサポート10の立設時の水平断面形状は外殻層14を形成する樹脂管14aと同じ真円形状のものとなり、Uボルト12aの内周面がケーブルサポート10の外周面に沿うようになる結果、ケーブルサポート10の周面にUボルト12a等を使用してケーブル受け具12を緩みやガタつきなく強固に取り付けることができるようになる。
【0037】
また、鉄筋20及び無収縮セメント材料からなる充填層16の表面が硬質の樹脂管14aからなる外殻層14で隙間なく被覆されているので、充填層16を構成する無収縮セメント材料にクラックが生じた場合であっても当該材料が剥離して内部の鉄筋20が剥き出しとなるのを防止することができる。それゆえ、剥き出しとなった鉄筋20が錆びてケーブルサポート10の機械的強度や耐久性が低下するのを防止することができる。
【0038】
したがって、セメント系の材料で構成されているにもかかわらず高い真円度を有し、クラックが生じた場合であっても材料の剥離を防止して機械的強度が低下するのを抑制することができる耐久性の高いケーブルサポート10とその簡便で効率的な製造方法とを提供することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明についてより具体的な実施例を示して説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0040】
[ケーブルサポートの製造]
樹脂管14aとしてJIS K 6741にて規格された呼び径65mm(外径76mm)×長さ1890mmのVU管を用意すると共に、鉄筋20として異形鉄筋SD296A D13mm×長さ1890mmを6本用意した。また、無収縮セメント材料として株式会社豊運から上市されている商品名「ビルモルグラウト」を用意した。さらに、寸切ボルト28、六角ナット32a、固定ナット34及び雌ネジ26となる丸型ナットとしてM30のものをそれぞれ用意した。
【0041】
そして用意した各資材と上述した製造方法とを用いて全長2000mm(−13mm〜+60mmの範囲で可変)のケーブルサポート10を製造し、以下に詳述するように「長期支持適応試験」、「ケーブル受け具支持適応試験」、「本体曲げ試験」、「不燃性確認試験」及び「不陸部据付確認試験」の各試験を行った。
【0042】
[長期支持適応試験]
人孔(中間ブロック)T内にケーブルサポート10を1本立設して本体部分にケーブル受け具12を取り付け、このケーブル受け具12に20kgの砂袋を8袋ぶら下げた。そして、2週間毎にケーブル受け具12のズレや外殻層14への喰い込みがないか等の外観の変化について経過観察を行った。その結果、試験開始から10週以上経過した75日目の段階において外観に異状は見られず、本実施例のケーブルサポート10は長期支持適応性を有することが明らかとなった。
【0043】
[ケーブル受け具支持適応試験]
ケーブルサポート10の本体部分に取り付けたケーブル受け具12の先端にワイヤーを取り付け、このワイヤーを設計荷重の1,568N(160kgf)で引っ張り、ケーブル受け具12の固定点の状況を確認した。その結果、ケーブル受け具12の固定点に異状は認められず、本実施例のケーブルサポート10はケーブル受け具支持適応性を有することが明らかとなった。
【0044】
[本体曲げ試験]
ケーブルサポート10の載荷点のスパンを上端側(高さ調整部18を含む)の1mとし、中央部に0〜6,000Nの荷重を1,000N単位で載荷して変位量(撓み量)を計測すると共に、6,000N載荷後に0Nまで戻して残留変位量を計測した。その結果、設計荷重である5,880Nまでほぼ弾性範囲内であり、6,000N載荷後に0Nまで戻した残留変位量は0.56mmであった。なお、本試験後において高さ調整部18に異状は見られなかった。
【0045】
[不燃性確認試験]
ケーブルサポート10の外殻層14をガスバーナーの火炎で炙って着火させ、その後30秒間そのままの状態で外殻層14を燃焼させた後、火炎を遠ざけて燃焼状態を確認した。その結果、ガスバーナーの火炎を遠ざけると直ちに消火し、燃焼部分の残煙時間も5秒程度であった。つまり、本実施例のケーブルサポート10は自己消火性を有することが明らかとなった。
【0046】
[不陸部据付確認試験]
試料となるケーブルサポート10の下端面が当接する人孔Tの底面の位置に3°の勾配をつけた楔をセットした後、ケーブルサポート10上部の高さ調整部18に設けられている六角ナット32aを上方にトルクレンチで300N・mの力で締め上げ、ケーブルサポート10の上下両端面が人孔Tの天面及び底面を押圧するようにして人孔T内にケーブルサポート10を立設させた。そして、このようにして立設させた試料に異状がないかを目視により確認した。その結果、試料に異状は認められず、本実施例のケーブルサポート10は不陸部据付適応性を有することが明らかとなった。なお、係る試験により、ケーブルサポート10の充填層16下端部にクラックが発生したが、その周囲を外殻層14が隙間なく被覆しているため、当該クラック部分のケーブルサポート10からの脱落が効果的に防止されていた。
【符号の説明】
【0047】
10…ケーブルサポート
12…ケーブル受け具
12a…Uボルト
14…外殻層
14a…樹脂管
16…充填層
18…高さ調整部
20…鉄筋
22…鉄筋スペーサ
24…円筒部材
26…雌ネジ
28…寸切ボルト
30…キャップ部材
32…皿部材
32a…六角ナット
32b…丸短パイプ
34…固定ナット
36…下部キャップ
T…洞道(人孔)
C…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洞道又は人孔内にてその底面及び天面を押圧して突っ張るように立設され、ケーブルを支持するケーブル受け具がその周面に取り付けられる柱状のケーブルサポートであって、
断面真円形状で且つ硬質の樹脂管からなる外殻層と、
前記樹脂管の内部に配筋された複数本の鉄筋及びその内部の隙間に充填された無収縮セメント材料からなる充填層とを具備することを特徴とするケーブルサポート。
【請求項2】
前記樹脂管が硬質ポリ塩化ビニルからなるVU管であることを特徴とする請求項1に記載のケーブルサポート。
【請求項3】
断面真円形状で且つ硬質の樹脂管の内部に、複数本の鉄筋を配筋した後、水に溶解させた無収縮セメント系材料を流し込んで充填し、
然る後、前記無収縮セメント材料を硬化させて前記樹脂管からなる外殻層と前記無収縮セメント材料からなる充填層とを一体化させることを特徴とするケーブルサポートの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170220(P2012−170220A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28998(P2011−28998)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】