説明

ケーブルシールド

【課題】 難燃性(耐火性)および断熱性の高いケーブルシールドを提供する。
【解決手段】 電磁波を遮蔽する導電層と、前記導電織布外側に位置する第1絶縁体と、前記第1絶縁体の外側に位置する第2絶縁体とを備え、前記第1絶縁体は、シリコーン素材から構成されるケーブルシールドを提供する。また前記第1絶縁体は、発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルシールドに関し、耐熱性、難燃性を有するケーブルシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道用車両に用いられるケーブルには、火災等を考慮して難燃性を有することが求められる。
【0003】
特許文献1には、電子機器に用いられるケーブルが開示されており、電線を電磁波から遮蔽する帯状のシートと、シールド材を被膜保護するための帯状のシートと、シートに取り付けられた止め具と、シールド材にシールド材の長手方向に沿って取り付けられたスライドファスナとを備えたフレキシブルシールドチューブが記載されている。
特許文献2には、ケーブルの周囲にシールド部材を用いて、電磁的閉ループを形成するケーブル用シールドカバーが記載されている。
特許文献3には、導電面と絶縁面からなる導電性シートの一端を、導電面を外側にして折り返して接触面を形成し、導電シートを円筒状に固定する面ファスナを設けることにより、電磁波シールド材を形成することが記載されている。
【0004】
特許文献4には、絶縁チューブの外周に金属箔の導電体層を設けた始端部、絶縁チューブに繋がる絶縁波形シートの内面に金属箔の導電体層を設けた巻装部、絶縁波形シートが延伸する終端部を備えたケーブルシールド装置が記載されている。
特許文献5には、導電層と絶縁層とを積層した電磁波シートと、電磁波シートの一端側と他端側にそれぞれ設けられた着脱部を備えた電磁波シールド材が記載されている。
特許文献6には、導電層と絶縁層とを積層した電磁波シートと、電磁波シートの一端側と他端側にそれぞれ設けられた着脱部を備えた電磁波シールド材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−191696号公報
【特許文献2】実開平1−89422号公報
【特許文献3】特開平7−66583号公報
【特許文献4】特開平9−92043号公報
【特許文献5】特開平10−284871号公報
【特許文献6】特開平11−31895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば鉄道用車両に用いられるケーブルシールドには電磁波に対するシールド性だけでなく、難燃性、更には耐熱性も求められる。従来のケーブルシールドは、外皮層には難燃性素材を使用していたが、断熱効果等、耐熱性は考えられていなかった。また、従来は車輌下部や側面などにケーブルを設置していたが、近年の車両においては、客室上部空間にケーブルを設置する場合がある。この場合、火災により炎がケーブルへ延伸するため、耐熱性を考慮に入れなければならない。
【0007】
しかし、特許文献1−6には、電磁波シールドの構造が記載されているが、難燃性・耐熱性の火災対策については記載されていない。
本発明の目的は、効果的な電磁波シールドを行うとともに、火災等によるケーブルへの耐熱性を考慮したケーブルシールドの構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様にかかる発明は、(1)電磁波を遮蔽する導電層と、前記導電織布外側に位置する第1絶縁体と、前記第1絶縁体の外側に位置する第2絶縁体とを備え、前記第1絶縁体は、シリコーン素材から成るケーブルシールドを提供する。
【0009】
これによってシリコーン素材の耐熱性により、例えば火災等による炎の延伸によりケーブが高温にさらされるまでの時間を長くすることが出来る。
【0010】
また、前記シリコーン素材として、発泡体が用いられる(1)に記載のケーブルシールドを提供する。
更に、前記第2絶縁体の具体例として、難燃性ウレタン、PET、ガラスクロス繊維、アルミガラスクロス繊維の何れかから成る(1)に記載のケーブルシールドを提供する。
更にまた、前記導電層の具体例として導電織布または金属箔の何れかから成る(1)に記載のケーブルシールドを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケーブルシールドは、第2絶縁体により難燃性、耐火性が高く、さらに第1絶縁体により断熱性が高いケーブルシールドを構成できるので、火災等によるケーブルへの熱の到達時間を長くし、機器が制御できる時間を稼ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施例に係るケーブルシールドを使用例を示した全体図である。
【図2】本実施例に係るケーブルシールドの構成を示した斜視図である。
【図3】本実施例に係るケーブルシールドの電磁波シールド特性(KEC法)を一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示したように本発明の実施形態によるケーブルシールド2はケーブル16(図1では複数のケーブル16)を包むようにして保護する。図2に示すように、ケーブルシールド2は、ケーブル16側(内側)から順に導電層4(導電織布)、シリコーンスポンジ6(第1絶縁体)、難燃性の絶縁層8(第2絶縁体)により構成されている。また、シリコーンスポンジ6、絶縁層8は外皮層10を構成している。
【0014】
ケーブルシールド2は導電層4を内側、絶縁層8を外側として、テープ状に巻いて、両面端部に形成した面ファスナーで留めて固定する。面ファスナーの一例として本実施の形態ではマジックテープ(登録商標)が好適に使用される。
【0015】
導電層4としては、導電性を備える織布等のシート状物が使用される。更に、難燃性有するものが好ましく、例えばアルミ箔等の導電材料が挙げられる。この導電層4は、電磁波シールドとして機能するとともに、防火性能を有している。
【0016】
外皮層10の一方を構成するシリコーンスポンジ6は、素材的に耐熱性を備える。そして、その内部に気泡を多数備える構造であるため、当該気泡の断熱による耐熱効果を有する。
【0017】
外皮層10の他方を構成する絶縁層8は、難燃性のある素材または耐火性の高い素材をシート状または織布状として用いる。素材としては、例えば難燃性ウレタン、PET等を挙げることができる。
また素材として、難燃性のみならず、耐火性の高い素材を選択すると、更に好適である。例えば、ガラスクロス繊維やアルミガラスクロス繊維が挙げられる。アルミガラスクロス繊維は耐火性能が高いだけでなく、アルミ部分が面方向の熱伝導を促すため、耐熱性を向上させることができる。
【0018】
また、本実施例においては導電層4とシリコーンスポンジ6の間(つまり導電層4の外側)にはグランド線14が形成されている(図2参照)。これによって導電層4を接地することができ、電磁シールド効果をより高くすることができる。
【0019】
本実施の形態によるケーブルシールド2の電磁波シールド特性(KEC法)は図3に示したように1〜約150MHzまでは80dB以上のシールド効果を有している。また約160MHz〜約900MHzの間は60dB以上のシールド効果を有している。電磁波シールド特性については本実施の形態に限定されることは言うまでもない。
また、本実施の形態において、第1絶縁体としてシリコーンスポンジ6を用いたが、断熱性を有する構成であればシリコーンスポンジ6に限定されない。
【0020】
以上説明した本実施形態によるケーブルシールド2には、以下の効果がある。
ケーブルシールド2は、外皮層10を構成する第1絶縁体、第2絶縁体のうち、第2絶縁体には難燃性のある素材または耐火性の高い素材の少なくとも何れか1つを使用することができるので、火災等の炎によるケーブルの損傷を防ぐ効果を有する。
【0021】
さらに、第1絶縁体にはシリコーンスポンジ6を使用することができるので、当該シリコーンスポンジ6の耐熱性・断熱効果により熱がケーブル16に到達する時間を長くすることができる。
第1絶縁体、第2絶縁体のこのような効果により、火災等によるケーブルへの炎または熱の到達時間を長くし、火災が発生しても機器が制御できる時間を稼ぐことができる。
【0022】
したがって、例えば次世代車輌(リニアモーターカー)などは車輌下部に強力な電磁石を配置するためが、制御系ケーブルなどが客室上部空間に配置される。そのため、火災発生時の炎の延伸により制御系ケーブルが炎にさらされる危険性が高くなるが、この場合でも本発明により炎または熱からのケーブル16への影響がでる時間を延ばし、その間、機器を制御することが可能となる。よって、ケーブル保護目的で従来技術に比べてさらなる耐火、断熱要求に応えることができる。
【符号の説明】
【0023】
2 ケーブルシールド、4 導電層(導電織布)、6 シリコーンスポンジ、
8 絶縁層、10 外皮層、14 グランド線、16 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を遮蔽する導電層と、
前記導電層の外側に位置する第1絶縁体と、
前記第1絶縁体の外側に位置する第2絶縁体とを備え、
前記第1絶縁体は、シリコーン素材から成るケーブルシールド。
【請求項2】
前記シリコーン素材は、発泡体である請求項1に記載のケーブルシールド。
【請求項3】
前記第2絶縁体は、難燃性ウレタン、PET、ガラスクロス繊維、アルミガラスクロス繊維の何れかから構成される請求項1に記載のケーブルシールド。
【請求項4】
前記導電層は、導電織布または金属箔の何れかから構成される請求項1に記載のケーブルシールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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