説明

ケーブル保護案内部材の取付構造、及びその取付構造を備える生産機器

【課題】共通の軸線を中心として相対回転する部材にケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造において、保護案内部材自体の構成及びその取付構造を簡素化する。
【解決手段】保護案内部材30は、樹脂により長尺状に一体で形成され、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状である。保護案内部材30には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられている。保護案内部材30は、所定の1面を軸線R側へ向けるようにして、第1端部30aが第1部材21に取り付けられるとともに、第1端部30aから長手方向に離間した第2端部30cが第2部材22に取り付けられており、第1端部30aから軸線Rの周方向へ捻り折り返し位置31まで延ばされ、捻り折り返し位置31において第2部材22へ向かうように捻られつつ折り返されて、軸線Rの周方向へ第2端部30cまで延ばされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを保護及び案内するケーブル保護案内部材を、可動部材に取り付ける取付構造、及びその取付構造を備える生産機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット据付ベースの内部外縁にベースU溝を形成し、ロボット胴基部の内部外縁に胴基部U溝をベースU溝に対向して形成し、ロボット駆動用のケーブル群を挿通した直線状のスプリングコンジットを、ベースU溝と胴基部U溝とにわたって折返して上下2層形態に設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のものによれば、スプリングコンジットが上下2層形態で屈曲伸縮するので、据付ベース内部でケーブル保護案内部材を水平方向に折り返すものと比較して、ケーブル群の水平面上の占有スペースを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2648184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のものでは、スプリングコンジットが、ばね鋼線を隙間なくコイル状に巻いたコイルばねに合成樹脂コーテイングを施して形成されている。そして、自然状態では直線状であるスプリングコンジットを折り返して、ばねの反力により上下のU溝に押し当てるようにしている。
【0005】
このため、特許文献1に記載のものでは、折り返されたスプリングコンジットの形状を維持するために、U溝を形成することが必須であり、ケーブル保護案内部材を取り付ける構造を簡素化することができない。
【0006】
なお、ケーブル保護案内部材が、自由に曲げ可能に形成されている場合には、その自重や内部に収容するケーブルの重量により垂れ下がるため、保護案内部材を支持するガイド等が必要となる。また、保護案内部材が、特殊なリンク部材などを多数連結して組み立てられている場合には、保護案内部材の垂れ下がりを抑制することができたとしても、保護案内部材自体の構成が複雑となることが避けられない。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、共通の軸線を中心として相対回転する部材にケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造において、保護案内部材自体の構成及びその取付構造を簡素化することにある。また、本発明の従たる目的は、その取付構造を備える生産機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
第1の手段は、共通の軸線を中心として相対回転するとともに前記軸線方向に並んで配置された第1部材及び第2部材に、ケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造であって、前記保護案内部材は、樹脂により長尺状に一体で形成され、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、前記保護案内部材には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられており、前記保護案内部材は、前記所定の1面を前記軸線側へ向けるようにして、第1部分が前記第1部材に取り付けられるとともに、前記第1部分から長手方向に離間した第2部分が前記第2部材に取り付けられており、前記第1部分から前記軸線の周方向へ折り返し位置まで延ばされ、前記折り返し位置において前記第2部材へ向かうように捻られつつ折り返されて、前記軸線の周方向へ前記第2部分まで延ばされていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、共通の軸線を中心として相対回転するとともに前記軸線方向に並んで配置された第1部材及び第2部材に、ケーブル保護案内部材が取り付けられる。ここで、保護案内部材は、樹脂により長尺状に一体で形成されているため、従来のリンク部材などを多数連結して組み立てる保護案内部材と比較して、保護案内部材自体の構成を簡素化することができるとともに、その組み立て作業を省くことができる。
【0011】
詳しくは、保護案内部材は、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、保護案内部材には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられている。このため、保護案内部材は、スリットの設けられていない所定の1面を内周側にして、外周側のスリットの間隔を広げるように、曲げたり捻ったりすることができる。そして、保護案内部材は、その一部分である第1部分及び第2部分を有し、所定の1面を軸線側へ向けるようにして、第1部分が第1部材に取り付けられるとともに、第1部分から長手方向に離間した第2部分が第2部材に取り付けられている。このため、スリットが広がろうとする作用により、保護案内部材は所定の1面を内周側にして湾曲するようになる。したがって、保護案内部材は、湾曲方向に対して垂直な方向へ曲がりにくくなり、保護案内部材の自重や、保護案内部材内に収容されるケーブルの重量に対して、保護案内部材の変形を抑制することができる。その結果、保護案内部材の形状を安定させることができるため、保護案内部材を支持するガイド等を省略又は簡略化することが可能となり、保護案内部材の取付構造を簡素化することができる。
【0012】
ここで、保護案内部材は、第1部分から軸線の周方向へ折り返し位置まで延ばされ、折り返し位置において第2部材へ向かうように捻られつつ折り返されて、軸線の周方向へ第2部分まで延ばされている。すなわち、スリットの設けられていない所定の1面を軸線側へ向けるようにして、外周側のスリットの間隔を広げるように捻りつつ曲げることで、保護案内部材を折り返すことができる。そして、第1部材及び第2部材が共通の軸線を中心として相対回転した場合には、折り返し位置が軸線の周方向に沿って移動して保護案内部材が送り出されることで、保護案内部材によりケーブルを案内することができる。その結果、共通の軸線を中心として相対回転する第1部材及び第2部材に、ケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造を、長尺状に一体で形成された保護案内部材により実現することが可能となるため、保護案内部材自体の構成を簡素化することができる。さらに、保護案内部材の形状を安定させることができるため、第1部材及び第2部材の高速相対回転に対して追従性を高めることができる。
【0013】
第2の手段では、前記保護案内部材の長手方向に垂直な断面において、前記所定の1面は内側へ湾曲しており、前記保護案内部材において前記所定の1面と対向する面は、前記保護案内部材の長手方向に沿って二分割されている。
【0014】
上記構成によれば、保護案内部材の長手方向に垂直な断面において、所定の1面は内側へ湾曲しているため、所定の1面を内周側とした保護案内部材の曲げに対する剛性を向上させることができる。したがって、保護案内部材の自重や、保護案内部材内に収容されるケーブルの重量に対して、保護案内部材の変形を効果的に抑制することができる。その結果、保護案内部材の形状を更に安定させることができる。
【0015】
また、保護案内部材において所定の1面と対向する面は、保護案内部材の長手方向に沿って二分割されているため、その割れ目から保護案内部材内へケーブルを容易に挿入することができる。
【0016】
そして、所定の1面を内周側にして保護案内部材を曲げた場合には、所定の1面の湾曲が伸ばされるように変形する。このため、所定の1面に接続された両側の面は、所定の1面側へ倒れるように傾き、その両側の面に接続された面(所定の一面と対向する面)の分割部分が、所定の1面側へ近付くこととなる。したがって、保護案内部材が曲げられる部分においても、保護案内部材内に収容されるケーブルを強固に保持することができる。
【0017】
第3の手段では、前記スリットにおいて、前記所定の1面側の端部が丸くされている。
【0018】
上記構成によれば、スリットにおいて、所定の1面側の端部が丸くされているため、所定の1面を内周側にして外周側のスリットの間隔を広げるように曲げる際に、スリットの端部に亀裂が生じることを抑制することができる。その結果、保護案内部材の耐久性を向上させることかできる。
【0019】
具体的には、第4の手段のように、前記第1部材及び前記第2部材は、円筒状に形成されるとともに前記軸線の方向へ延びており、前記第1部分から前記折り返し位置まで、前記保護案内部材において前記所定の1面に対向する面が前記第1部材の内周面に沿うように配置され、前記折り返し位置から前記第2部分まで、前記保護案内部材において前記所定の1面に対向する面が前記第2部材の内周面に沿うように配置されているといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、所定の1面を内周側にして湾曲する保護案内部材を、円筒状に形成された第1部材及び前記第2部材の内部において、その内周面に沿わせて効率的且つ安定した状態で配置することができる。
【0020】
また、具体的には、第5の手段のように、前記第1部材及び前記第2部材は、円筒状に形成されるとともに前記軸線の方向へ延びており、前記第1部分から前記折り返し位置まで、前記保護案内部材において前記所定の1面が前記第1部材の外周面に沿うように配置され、前記折り返し位置から前記第2部分まで、前記保護案内部材において前記所定の1面が前記第2部材の外周面に沿うように配置されているといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、所定の1面を内周側にして湾曲する保護案内部材を、円筒状に形成された第1部材及び前記第2部材の外周において、その外周面に沿わせて効率的且つ安定した状態で配置することができる。
【0021】
具体的には、第6の手段のように、ケーブル保護案内部材の取付構造を生産機器に適用して、前記第2部材は、前記軸線の方向へ延びるとともに、前記第1部材により前記軸線を中心として回転可能に支持されているといった構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ケーブル保護案内部材の取付構造を示す斜視図。
【図2】ケーブル保護案内部材及びケーブルを示す斜視図。
【図3】周方向部分におけるケーブル保護案内部材及びケーブルの断面図。
【図4】捻り折り返し部分におけるケーブル保護案内部材及びケーブルの断面図。
【図5】捻り折り返し部分付近におけるケーブル保護案内部材を示す斜視図。
【図6】ケーブル保護案内部材によるケーブルの案内態様を示す斜視図。
【図7】ケーブル保護案内部材の変形例を示す斜視図。
【図8】ケーブル保護案内部材の取付構造の変形例を示す斜視図。
【図9】ケーブル保護案内部材の取付構造の他の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、ロボットや工作機械等の生産機器において、相対回転する2つの部材にケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造として具体化している。
【0024】
図1は、ケーブル保護案内部材30の取付構造10を示す斜視図である。同図に示すように、取付構造10は、第1部材21、第2部材22、ケーブル41、ケーブル保護案内部材30、第1ガイド部材23、及び第2ガイド部材24を備えている。
【0025】
第1部材21及び第2部材22は、それぞれ円筒状に形成されており、軸線Rを中心軸線として軸線R方向へ延びている。第1部材21と第2部材22とは、軸線R方向に並んで配置されている。第1部材21及び第2部材22は垂直に配置されており、軸線Rが鉛直方向に一致している。なお、第1部材21及び第2部材22の配置は必ずしも垂直でなくてもよく、傾斜していたり、水平であったりしてもよい。
【0026】
第1部材21及び第2部材22の内部には、駆動モータ、回転軸、軸受け、減速機構等が設けられている。第2部材22は、軸受け及び減速機構を介して、第1部材21により軸線Rを中心として回転可能に支持されている。そして、第1部材21及び第2部材22は、駆動モータの駆動に基づいて、共通の軸線Rを中心に相対回転させられる。ここでは、第1部材21に対して、第2部材22が回転させられる。
【0027】
上記駆動モータ等には、ケーブル41が接続されている。ケーブル41は、外部からの電力を駆動モータに供給するとともに、駆動信号を駆動モータの駆動回路に送信する電気配線である。駆動モータは、ケーブル41を通じて供給される電力により駆動され、ケーブル41を通じて駆動回路に送信される駆動信号に基づいて動作させられる。
【0028】
ケーブル41には、ケーブル保護案内部材30が取り付けられている。保護案内部材30は、第1部材21の内周面及び第2部材22の内周面に沿って設けられている。第1部材21の内周側には、第1部材21よりも径の小さい円筒状の第1ガイド部材23が設けられている。第2部材22の内周側には、第2部材22よりも径の小さい円筒状の第2ガイド部材24が設けられている。第1ガイド部材23及び第2ガイド部材24は、それぞれ第1部材21及び第2部材22と一体に回転する。保護案内部材30は、第1部材21と第1ガイド部材23との間、及び第2部材22と第2ガイド部材24との間に配置されている。すなわち、保護案内部材30は、第1ガイド部材23の外周面及び第2ガイド部材24の外周面に沿って設けられている。そして、保護案内部材30は、第2部材22が第1部材21に対して回転させられる際に、ケーブル41を保護するとともに、ケーブル41を軸線Rの周方向へ案内する。
【0029】
次に、ケーブル保護案内部材30の構造について詳細に説明する。図2は、保護案内部材30及びケーブル41を示す斜視図である。
【0030】
同図に示すように、保護案内部材30は、長尺状に一体で形成されている。保護案内部材30の長手方向に垂直な断面は、中空の矩形状となっている。保護案内部材30は、湾曲面33、2つの側面34、及び分割面35を備えている。保護案内部材30には、長手方向に垂直なスリット36が、長手方向に所定間隔で設けられている。スリット36は、湾曲面33(所定の1面)を残して分割面35及び2つの側面34を切り込んでおり、分割面35から湾曲面33近傍まで切り込んでいる。スリット36において、湾曲面33側の端部36aは丸く加工されている。
【0031】
湾曲面33と対向する分割面35は、保護案内部材30の長手方向に沿って二分割されている。すなわち、分割面35には、保護案内部材30の長手方向に延びる隙間37が形成されている。隙間37の幅は、ケーブル41の直径よりも狭く設定されている。側面34同士の間隔は、2本のケーブル41の直径の合計よりも広く設定されている。湾曲面33と分割面35との間隔は、ケーブル41の直径よりも広く設定されている。
【0032】
保護案内部材30は、合成樹脂を押し出し成形した後に、上記スリット36及び隙間37を形成する加工が施される。このため、保護案内部材30の長さを任意に調整することができる。合成樹脂としては、機械的強度や成形精度の高いものを採用することが望ましい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などを採用することができる。ここでは、押し出し成形性及び形態安定性が高く、弾性変形が可能なポリプロピレンを採用している。そして、上記隙間37を広げるように保護案内部材30を弾性変形させて、保護案内部材30の内部へケーブル41が挿入されている。
【0033】
保護案内部材30は、第1部材21及び第2部材22に取り付けられた状態において、軸線Rの周方向に延びるように配置される周方向部分、及び捻られつつ折り返されて配置される捻り折り返し部分を形成する。
【0034】
図3は、周方向部分におけるケーブル保護案内部材30及びケーブル41の断面図である。同図に示すように、周方向部分(若干湾曲しているが自然状態に近い状態の部分)では、保護案内部材30の湾曲面33は、内側(分割面35側)へ湾曲している。この状態において、2つの側面34は互いに略平行となっている。湾曲面33と側面34とは厚さが略等しくなっており、分割面35は湾曲面33よりも厚くなっている。分割面35は、隙間37側の端部が湾曲面33側へ近付くように傾斜している。このため、ケーブル41から分割面35へ作用する力に対する抵抗力を増大させることができ、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。
【0035】
図4は、捻り折り返し部分におけるケーブル保護案内部材30及びケーブル41の断面図である。捻り折り返し部分では、保護案内部材30が、湾曲面33を軸線R側へ向けるようにして、第1部材21から第2部材22へ向かうように捻られつつ折り返されている。なお、同図では、上記周方向部分における保護案内部材30及びケーブル41を二点鎖線で示している。
【0036】
同図に示すように、湾曲面33を軸線R側へ向けるようにして、保護案内部材30を捻りつつ折り返すように変形させると、湾曲面33が伸ばされるように変形する。このため、湾曲面33が平面状に変形し、湾曲面33の幅方向の両端に接続された2つの側面34が、湾曲面33側へ倒れるように傾く。これにより、側面34に接続された分割面35も、隙間37側の端部が湾曲面33側へ近付くように傾くこととなる。その結果、分割面35に形成された隙間37の幅が狭くなり、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。また、分割面35は湾曲面33よりも厚くなっているため、ケーブル41から分割面35へ作用する力に対する抵抗力を増大させることができる。したがって、保護案内部材30からケーブル41が外れることを効果的に抑制することができる。なお、捻り折り返し部分では、ケーブル保護案内部材30及びケーブル41が捻られているため、図4に示す断面において保護案内部材30は非対称に変形している。
【0037】
図5は、捻り折り返し部分付近におけるケーブル保護案内部材30を示す斜視図である。なお、同図では、保護案内部材30内に収容されたケーブル41を省略して示している。
【0038】
同図に示すように、捻り折り返し部分では、スリット36の間隔が広げられることにより、保護案内部材30が捻られつつ折り返されている。保護案内部材30の断面形状が非対称に変形することにより、保護案内部材30は無理なく変形している。また、捻り折り返し部分の曲率半径方向において、外側ほどスリット36の間隔が広くなっている。ここで、スリット36において湾曲面33側の端部36aが丸くされているため、スリット36の間隔を広げる際にスリット36の先端に応力が集中することを抑制することができる。このため、スリット36の端部36aに亀裂が生じることを抑制することができ、保護案内部材30の耐久性を向上させることができる。
【0039】
スリット36の設けられていない湾曲面33と、スリット36の設けられた側面34及び分割面35のスリット36以外の部分によって、保護案内部材30の断面形状を維持する作用が生じる。また、スリット36が広がろうとする作用により、保護案内部材30は湾曲面33を内周側にして湾曲するようになる。このため、保護案内部材30は、湾曲方向に対して垂直な方向へ曲がりにくくなる。さらに、保護案内部材30の湾曲面33は内側へ湾曲しているため、湾曲面33を内周側とした保護案内部材30の曲げに対する剛性が向上している。したがって、保護案内部材30は、保護案内部材30の自重及びケーブル41の重量を支えることができ、保護案内部材30の形状を安定させることができる。また、保護案内部材30が、湾曲面33を内側にして曲がり過ぎることを抑制することができる。
【0040】
分割面35に形成された隙間37の幅は、周方向部分から捻り折り返し部分へ向かうにしたがって徐々に狭くなっている。このため、保護案内部材30と共にケーブル41が捻られつつ折り返される部分においても、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。また、周方向部分から捻り折り返し部分へ向かうにしたがって、湾曲面33が伸ばされるように変形し、分割面35の隙間37側の端部が湾曲面33側へ近付くように傾斜している。このため、ケーブル41から分割面35へ力が作用したとしても、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。
【0041】
次に、図1に戻り、こうした構成を備える保護案内部材30を、第1部材21及び第2部材22に取り付ける構造について説明する。
【0042】
保護案内部材30は、湾曲面33を軸線R側へ向けるように配置されており、第1端部30a(第1部分)が第1部材21の内周面に固定されている。保護案内部材30は、上記分割面35が第1部材21の内周面に沿うように配置されており、軸線Rの周方向に沿って捻り折り返し位置31(折り返し位置)まで延ばされている。
【0043】
保護案内部材30は、捻り折り返し位置31において、第1部材21から第2部材22へ向かうように捻られつつ折り返されている。詳しくは、保護案内部材30は、捻り折り返し位置31において、湾曲面33を軸線R側へ向けるようにして(湾曲面33を内周側にして)、外周側のスリット36の間隔を広げるように捻りつつ曲げることで折り返されている。
【0044】
折り返された保護案内部材30は、湾曲面33を軸線R側へ向けるように配置されており、軸線Rの周方向に沿って第2端部30c(第2部分)まで延ばされている。そして、第2端部30cが第2部材22の内周面に固定されている。
【0045】
保護案内部材30の軸線R側(第1部材21及び第2部材22の内径方向)には、第1ガイド部材23及び第2ガイド部材24が配置されている。第1部材21と第1ガイド部材23との間隔、及び第2部材22と第2ガイド部材24との間隔は、保護案内部材30が軸線Rの周方向に沿って移動可能に設定されている。また、保護案内部材30が軸線R側へ変形した場合に、保護案内部材30の湾曲面33が第1ガイド部材23及び第2ガイド部材24の外周面に当たるように、それらの間隔が設定されている。
【0046】
次に、図6を参照して、第1部材21に対して第2部材22を回転させた際に、ケーブル保護案内部材30によりケーブル41が案内される態様について説明する。
【0047】
第2部材22が矢印R1の方向へ回転した場合には、捻り折り返し位置31が第1部材21及び第2部材22の内周面(軸線Rの周方向)に沿って矢印R1の方向へ移動して、保護案内部材30と共にケーブル41が送り出される。一方、第2部材22が矢印R1と反対の方向へ回転した場合には、捻り折り返し位置31が第1部材21及び第2部材22の内周面に沿って矢印R1と反対の方向へ移動して、保護案内部材30と共にケーブル41が送り出される。したがって、保護案内部材30により、ケーブル41を軸線Rの周方向に沿って案内することができる。また、保護案内部材30が軸線R側へ変形した場合には、保護案内部材30の湾曲面33が第1ガイド部材23及び第2ガイド部材24の外周面に当たって補助的に支持される。
【0048】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0049】
・共通の軸線Rを中心として相対回転するとともに軸線R方向に並んで配置された第1部材21及び第2部材22に、ケーブル保護案内部材30が取り付けられている。ここで、保護案内部材30は、樹脂により長尺状に一体で形成されているため、従来のリンク部材などを多数連結して組み立てる保護案内部材と比較して、保護案内部材30自体の構成を簡素化することができるとともに、その組み立て作業を省くことができる。
【0050】
・保護案内部材30は、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、保護案内部材30には、湾曲面33を残して3面(2つの側面34及び分割面35)を切り込む長手方向に垂直なスリット36が、長手方向に所定間隔で設けられている。このため、保護案内部材30は、スリット36の設けられていない湾曲面33を内周側にして、外周側のスリット36の間隔を広げるように、曲げたり捻ったりすることができる。そして、保護案内部材30は、その一部分である第1端部30a及び第2端部30cを有し、湾曲面33を軸線R側へ向けるようにして、第1端部30aが第1部材21に取り付けられるとともに、第1端部30aから長手方向に離間した第2端部30cが第2部材22に取り付けられている。このため、スリット36が広がろうとする作用により、保護案内部材30は湾曲面33を内周側にして湾曲するようになる。したがって、保護案内部材30は、湾曲方向に対して垂直な方向へ曲がりにくくなり、保護案内部材30の自重や、保護案内部材30内に収容されたケーブル41の重量に対して、保護案内部材30の変形を抑制することができる。その結果、保護案内部材30の形状を安定させることができるため、保護案内部材30を支持するガイド部材23,24を簡略化することが可能となり、保護案内部材30の取付構造10を簡素化することができる。
【0051】
・保護案内部材30は、第1端部30aから軸線Rの周方向へ捻り折り返し位置31まで延ばされ、捻り折り返し位置31において第2部材22へ向かうように捻られつつ折り返されて、軸線Rの周方向へ第2端部30cまで延ばされている。すなわち、スリット36の設けられていない湾曲面33を軸線R側へ向けるようにして、外周側のスリット36の間隔を広げるように捻りつつ曲げることで、保護案内部材30を折り返すことができる。そして、第1部材21及び第2部材22が共通の軸線Rを中心として相対回転した場合には、捻り折り返し位置31が軸線Rの周方向に沿って移動して保護案内部材30が送り出されることで、保護案内部材30によりケーブル41を案内することができる。その結果、共通の軸線Rを中心として相対回転する第1部材21及び第2部材22に、ケーブル保護案内部材30を取り付ける取付構造10を、長尺状に一体で形成された保護案内部材30により実現することが可能となるため、保護案内部材30自体の構成を簡素化することができる。さらに、保護案内部材30の形状を安定させることができるため、第1部材21及び第2部材22の高速相対回転に対して追従性を高めることができる。
【0052】
・保護案内部材30の長手方向に垂直な断面において、湾曲面33は内側へ湾曲しているため、湾曲面33を内周側とした保護案内部材30の曲げに対する剛性を向上させることができる。したがって、保護案内部材30の自重や、保護案内部材30内に収容されたケーブル41の重量に対して、保護案内部材30の変形を効果的に抑制することができる。その結果、保護案内部材30の形状を更に安定させることができる。
【0053】
・保護案内部材30において湾曲面33と対向する分割面35は、保護案内部材30の長手方向に沿って二分割されているため、その割れ目から保護案内部材30内へケーブル41を容易に挿入することができる。
【0054】
・湾曲面33を内周側にして保護案内部材30を曲げた場合には、湾曲面33の湾曲が伸ばされるように変形する。このため、湾曲面33に接続された2つの側面34は、湾曲面33側へ倒れるように傾き、側面34に接続された分割面35の分割部分(隙間37の部分)が、湾曲面33側へ近付くこととなる。したがって、保護案内部材30が曲げられる部分においても、保護案内部材30内に収容されるケーブル41を強固に保持することができる。
【0055】
・スリット36において、湾曲面33側の端部36aが丸くされているため、湾曲面33を内周側にして外周側のスリット36の間隔を広げるように曲げる際に、スリット36の端部36aに亀裂が生じることを抑制することができる。その結果、保護案内部材30の耐久性を向上させることかできる。
【0056】
・第1部材21及び第2部材22は、円筒状に形成されるとともに軸線Rの方向へ延びており、第1端部30aから捻り折り返し位置31まで、保護案内部材30において湾曲面33に対向する分割面35が第1部材21の内周面に沿うように配置され、捻り折り返し位置31から第2端部30cまで、保護案内部材30において分割面35が第2部材22の内周面に沿うように配置されている。こうした構成によれば、湾曲面33を内周側にして湾曲する保護案内部材30を、円筒状に形成された第1部材21及び第2部材22の内部において、その内周面に沿わせて効率的且つ安定した状態で配置することができる。
【0057】
なお、上記実施形態を、以下のように変形して実施することもできる。上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付することにより説明を省略する。
【0058】
・スリット36の端部36aを丸く加工することを省略することもできる。
【0059】
・上記実施形態では、スリット36は分割面35から湾曲面33近傍まで切り込むようにしたが、保護案内部材30の捻り折り返し部分の曲率半径が大きければ、スリット36が湾曲面33側へ切り込む長さを短くしてもよい。
【0060】
・図7に示すように、湾曲面33に対向する対向面135が分割されていないケーブル保護案内部材130を採用することもできる。この場合には、保護案内部材130の端部の開口から、ケーブル41を内部に挿入することとなる。こうした保護案内部材130によれば、保護案内部材130からケーブル41が外れることを確実に防ぐことができる。
【0061】
・ケーブル保護案内部材30,130において、湾曲面33を平面に形成することもできる。
【0062】
・図8に示すように、ケーブル保護案内部材30の必ずしも端部を第1部材21及び第2部材22に固定しなくてもよく、保護案内部材30の端部付近の第1部分130a及び第2部分130cを、それぞれ第1部材21及び第2部材22に固定してもよい。
【0063】
また、同図に示すように、第1部材21及び第2部材22は円筒状の形状に限定されず、例えば第2部材22が軸線Rに垂直な方向へ筒状あるいは棒状に延びる形状であってもよい。
【0064】
・上記実施形態では、ガイド部材23,24を設けるようにしたが、保護案内部材30が十分な強度を有しており、その形状の安定性が高い場合には、ガイド部材23,24を省略することもできる。
【0065】
・図9に示すように、第1部材121及び第2部材122は、円筒状に形成されるとともに軸線Rの方向へ延びており、第1端部30aから捻り折り返し位置31まで、保護案内部材30において湾曲面33が第1部材121の外周面に沿うように配置され、捻り折り返し位置31から第2端部30cまで、保護案内部材30において湾曲面33が第2部材122の外周面に沿うように配置されている構成を採用することもできる。すなわち、第1部材121及び第2部材122は、保護案内部材30が取り付けられるとともに、ガイド部材の役割も果たしている。こうした構成によれば、湾曲面33を内周側にして湾曲する保護案内部材30を、円筒状に形成された第1部材21及び第2部材22の外周において、その外周面に沿わせて効率的且つ安定した状態で配置することができる。そして、上記実施形態に準じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…取付構造、21…第1部材、22…第2部材、30…ケーブル保護案内部材、30a…第1端部(第1部分)、30c…第2端部(第2部分)、31…捻り折り返し位置(折り返し位置)、33…湾曲面(所定の1面)、34…側面、35…分割面(対向する面)、36…スリット、37…隙間、41…ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の軸線を中心として相対回転するとともに前記軸線方向に並んで配置された第1部材及び第2部材に、ケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造であって、
前記保護案内部材は、樹脂により長尺状に一体で形成され、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、前記保護案内部材には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられており、
前記保護案内部材は、前記所定の1面を前記軸線側へ向けるようにして、第1部分が前記第1部材に取り付けられるとともに、前記第1部分から長手方向に離間した第2部分が前記第2部材に取り付けられており、前記第1部分から前記軸線の周方向へ折り返し位置まで延ばされ、前記折り返し位置において前記第2部材へ向かうように捻られつつ折り返されて、前記軸線の周方向へ前記第2部分まで延ばされていることを特徴とするケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項2】
前記保護案内部材の長手方向に垂直な断面において、前記所定の1面は内側へ湾曲しており、
前記保護案内部材において前記所定の1面と対向する面は、前記保護案内部材の長手方向に沿って二分割されている請求項1に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項3】
前記スリットにおいて、前記所定の1面側の端部が丸くされている請求項1又は2に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材は、円筒状に形成されるとともに前記軸線の方向へ延びており、
前記第1部分から前記折り返し位置まで、前記保護案内部材において前記所定の1面に対向する面が前記第1部材の内周面に沿うように配置され、前記折り返し位置から前記第2部分まで、前記保護案内部材において前記所定の1面に対向する面が前記第2部材の内周面に沿うように配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項5】
前記第1部材及び前記第2部材は、円筒状に形成されるとともに前記軸線の方向へ延びており、
前記第1部分から前記折り返し位置まで、前記保護案内部材において前記所定の1面が前記第1部材の外周面に沿うように配置され、前記折り返し位置から前記第2部分まで、前記保護案内部材において前記所定の1面が前記第2部材の外周面に沿うように配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のケーブル保護案内部材の取付構造を備える生産機器であって、
前記第2部材は、前記軸線の方向へ延びるとともに、前記第1部材により前記軸線を中心として回転可能に支持されていることを特徴とする生産機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66985(P2013−66985A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208537(P2011−208537)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】