説明

ケーブル保護案内部材の取付構造

【課題】互いに交差する二方向に沿って設けられるケーブル保護案内部材を可動部材に取り付ける取付構造において、保護案内部材の取付工数を減らす。
【解決手段】ケーブル保護案内部材30の取付構造10であって、保護案内部材30は、樹脂により長尺状に一体で形成され、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状である。保護案内部材30には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられている。保護案内部材30は、Y軸方向に沿ってX軸方向との交差部26を越えた第1折り返し位置31まで延ばされ、第1折り返し位置31において所定の1面を内周側にして折り返されて、Y軸方向に沿って交差部26まで延ばされ、交差部26において所定の1面を内周側にしてX軸方向へ向かうように捻られて、X軸方向に沿って延ばされてアクチュエータ25に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを保護及び案内するケーブル保護案内部材を、可動部材に取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搭載ヘッドを移動させるXYテーブルにおいて、搭載ヘッドに接続されるケーブルを収容するケーブルベア(登録商標)を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。XYテーブルは、搭載ヘッドを第1方向(X方向)に移動させる第1直動機構を移動ビームに保持させ、この移動ビームを第2方向(Y方向)に第2直動機構によって移動させることにより、搭載ヘッドを水平面内で任意位置に移動させる。そして、X方向のケーブルベアはケーブルをX方向に沿って案内し、Y方向のケーブルベアはケーブルをY方向に沿って案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−151898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のものでは、ケーブルベアをX方向とY方向とにそれぞれ設ける必要がある。このため、ケーブルを保護及び案内する部材の数が増え、それらの部材を取り付ける工数も増えることとなる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、互いに交差する二方向に沿って設けられるケーブル保護案内部材を可動部材に取り付ける取付構造において、保護案内部材の取付工数を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
第1の手段は、互いに交差する第1方向及び第2方向に沿って設けられるケーブル保護案内部材を可動部材に取り付ける取付構造であって、前記保護案内部材は、樹脂により長尺状に一体で形成され、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、前記保護案内部材には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられており、前記保護案内部材は、前記第1方向に沿って前記第2方向との交差部を越えた第1折り返し位置まで延ばされ、前記第1折り返し位置において前記所定の1面を内周側にして折り返されて、前記第1方向に沿って前記交差部まで延ばされ、前記交差部において前記所定の1面を内周側にして前記第2方向へ向かうように捻られて、前記第2方向に沿って延ばされて前記可動部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、互いに交差する第1方向及び第2方向に沿ってケーブル保護案内部材が設けられ、保護案内部材が可動部材に取り付けられる。ここで、保護案内部材は、樹脂により長尺状に一体で形成されているため、従来のリンク部材などを多数連結して組み立てる保護案内部材と比較して、保護案内部材自体の構成を簡素化することができるとともに、その組み立て作業を省くことができる。
【0009】
詳しくは、保護案内部材は、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、保護案内部材には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられている。このため、保護案内部材は、スリットの設けられていない所定の1面を内周側にして、外周側のスリットの間隔を広げるように、曲げたり捻ったりすることができる。このとき、スリットの設けられていない所定の1面と、スリットの設けられた3面のスリット以外の部分によって、保護案内部材の断面形状を維持する作用が生じる。したがって、保護案内部材の自重や、保護案内部材内に収容されるケーブルの重量に対して、保護案内部材の変形を抑制して形状を安定させることができる。
【0010】
そして、保護案内部材は、第1方向に沿って第2方向との交差部を越えた第1折り返し位置まで延ばされ、第1折り返し位置において所定の1面を内周側にして折り返されて、第1方向に沿って交差部まで延ばされている。すなわち、スリットの設けられていない所定の1面を内周側にして、外周側のスリットの間隔を広げるように曲げることで、保護案内部材を折り返すことができる。
【0011】
さらに、保護案内部材は、交差部において所定の1面を内周側にして第2方向へ向かうように捻られて、第2方向に沿って延ばされて可動部材に取り付けられている。すなわち、所定の1面を内周側にして、外周側のスリットの間隔を広げるように捻ることで、保護案内部材を第1方向から第2方向へ向かわせることができる。そして、可動部材が第1方向に沿って移動した場合には、第1折り返し位置が第1方向に沿って移動して保護案内部材が送り出されることで、保護案内部材によりケーブルを案内することができる。その結果、互いに交差する二方向に沿って設けられる保護案内部材を可動部材に取り付ける取付構造を、長尺状に一体で形成された保護案内部材により実現することが可能となるため、その取付工数を減らすことができる。
【0012】
すなわち、上記保護案内部材の構造と、上記取付構造(スリットの設けられていない所定の1面を内周側にした曲げ及び捻り)とを採用することで、1つの保護案内部材でも交差する2つの方向へ配置することが可能となる。このため、可動部材の第1方向に沿った移動に対する曲げと、保護案内部材の第1方向から第2方向への方向転換に対する捻りとを両立することができる。
【0013】
第2の手段では、前記保護案内部材は、前記第2方向へ向かうように捻られてから、前記第2方向に沿って前記可動部材を越えた第2折り返し位置まで延ばされ、前記第2折り返し位置において前記所定の1面を内周側にして折り返されて、前記第2方向に沿って延ばされて前記可動部材に取り付けられている。
【0014】
上記構成によれば、保護案内部材は、第2方向へ向かうように捻られてから、第2方向に沿って可動部材を越えた第2折り返し位置まで延ばされ、第2折り返し位置において所定の1面を内周側にして折り返されている。このため、可動部材が第2方向に沿って移動した場合には、第2折り返し位置が第2方向に沿って移動して保護案内部材が送り出されることで、ケーブル保護案内部材によりケーブルを案内することができる。その結果、可動部材が第1方向及び第2方向の二方向へ移動する場合であっても、長尺状に一体で形成された保護案内部材により、ケーブルを保護及び案内することができる。
【0015】
第3の手段では、前記保護案内部材は、前記交差部において前記第2方向に沿った移動が規制されている。
【0016】
上記構成によれば、保護案内部材は、交差部において第2方向に沿った移動が規制されているため、所定の1面を内周側にして第2方向へ向かうように捻られた部分が、揺動することを抑制することができる。なお、交差部において保護案内部材の第2方向に沿った移動を規制したとしても、第1折り返し位置及び第2折り返し位置の移動が妨げられることはない。したがって、保護案内部材において、可動部材の移動に伴うケーブルの案内に支障をきたすことはない。
【0017】
第4の手段では、前記保護案内部材の長手方向に垂直な断面において、前記所定の1面は内側へ湾曲しており、前記保護案内部材において前記所定の1面と対向する面は、前記保護案内部材の長手方向に沿って二分割されている。
【0018】
上記構成によれば、保護案内部材の長手方向に垂直な断面において、所定の1面は内側へ湾曲しているため、所定の1面を内周側とした保護案内部材の曲げに対する剛性を向上させることができる。したがって、保護案内部材の自重や、保護案内部材内に収容されるケーブルの重量に対して、保護案内部材の変形を効果的に抑制することができる。その結果、保護案内部材の形状を更に安定させることができる。
【0019】
また、保護案内部材において所定の1面と対向する面は、保護案内部材の長手方向に沿って二分割されているため、その割れ目から保護案内部材内へケーブルを容易に挿入することができる。
【0020】
そして、所定の1面を内周側にして保護案内部材を曲げた場合には、所定の1面の湾曲が伸ばされるように変形する。このため、所定の1面に接続された両側の面は、所定の1面側へ倒れるように傾き、その両側の面に接続された面(所定の1面と対向する面)の分割部分が、所定の1面側へ近付くこととなる。このため、保護案内部材の割れ目が閉じられることとなり、保護案内部材内からケーブルがはみ出すことを抑制することができる。したがって、保護案内部材が曲げられる部分においても、保護案内部材内に収容されるケーブルを強固に保持することができる。
【0021】
第5の手段では、前記スリットにおいて、前記所定の1面側の端部が丸くされている。
【0022】
上記構成によれば、スリットにおいて、所定の1面側の端部が丸くされているため、所定の1面を内周側にして外周側のスリットの間隔を広げるように曲げる際に、スリットの端部に亀裂が生じることを抑制することができる。その結果、保護案内部材の耐久性を向上させることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ケーブル保護案内部材の取付構造を示す斜視図。
【図2】ケーブル保護案内部材及びケーブルを示す斜視図。
【図3】直線部分におけるケーブル保護案内部材及びケーブルの断面図。
【図4】折り返し部分におけるケーブル保護案内部材及びケーブルの断面図。
【図5】折り返し部分付近におけるケーブル保護案内部材を示す斜視図。
【図6】ケーブル保護案内部材によるケーブルの案内態様を示す斜視図。
【図7】ケーブル保護案内部材の変形例を示す斜視図。
【図8】ケーブル保護案内部材の取付構造の変形例を示す斜視図。
【図9】ケーブル保護案内部材の取付構造の他の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、XYテーブルにより移動させられるアクチュエータに、ケーブル保護案内部材を取り付ける取付構造として具体化している。
【0025】
図1は、ケーブル保護案内部材30の取付構造10を示す斜視図である。同図に示すように、取付構造10は、XYテーブル20、アクチュエータ25、ケーブル41、及びケーブル保護案内部材30を備えている。XYテーブル20は水平に配置されている。なお、XYテーブル20の配置は必ずしも水平でなくてもよく、傾斜していたり、垂直であったりしてもよい。
【0026】
XYテーブル20は、Y軸テーブル21及びX軸テーブル22を備えている。Y軸テーブル21は、駆動モータ、駆動機構、及び取付台23を備えている。そして、Y軸テーブル21は、駆動モータの駆動に基づいて、駆動機構により取付台23をY方向(第1方向)に移動させる。また、X軸テーブル22は、駆動モータ、駆動機構、及び取付台24を備えている。そして、X軸テーブル22は、駆動モータの駆動に基づいて、駆動機構により取付台24をX方向(第2方向)に移動させる。Y軸方向とX軸方向とは直交している。なお、Y軸方向とX軸方向とは、必ずしも直交していなくてもよく、互いに交差する方向であればよい。
【0027】
Y軸テーブル21の取付台23には、X軸テーブル22が取り付けられている。一方、X軸テーブル22の取付台24には、アクチュエータ25が取り付けられている。そして、Y軸テーブル21の駆動により、X軸テーブル22全体と、取付台23に取り付けられたアクチュエータ25とが、Y軸方向に移動させられる。一方、X軸テーブル22の駆動により、取付台24に取り付けられたアクチュエータ25が、X軸方向に移動させられる。したがって、XYテーブル20により、アクチュエータ25(可動部材)がY軸方向及X軸方向の任意の位置に移動させられる。
【0028】
アクチュエータ25には、ケーブル41が接続されている。ケーブル41は、外部からの電力をアクチュエータ25に供給するとともに、駆動信号をアクチュエータ25に送信する電気配線である。アクチュエータ25は、ケーブル41を通じて供給される電力により駆動され、ケーブル41を通じて送信される駆動信号に基づいて動作させられる。アクチュエータ25としては、例えば電子部品をピックアップする装置等を採用することができる。
【0029】
ケーブル41には、ケーブル保護案内部材30が取り付けられている。保護案内部材30は、Y軸方向及びX軸方向に沿って設けられている。そして、保護案内部材30は、XYテーブル20が駆動される際に、ケーブル41を保護するとともに、ケーブル41をY軸方向及びX軸方向へ案内する。
【0030】
次に、ケーブル保護案内部材30の構造について詳細に説明する。図2は、保護案内部材30及びケーブル41を示す斜視図である。
【0031】
同図に示すように、保護案内部材30は、長尺状に一体で形成されている。保護案内部材30の長手方向に垂直な断面は、中空の矩形状となっている。保護案内部材30は、湾曲面33、2つの側面34、及び分割面35を備えている。保護案内部材30には、長手方向に垂直なスリット36が、長手方向に所定間隔で設けられている。スリット36は、湾曲面33(所定の1面)を残して分割面35及び2つの側面34を切り込んでおり、分割面35から湾曲面33近傍まで切り込んでいる。スリット36において、湾曲面33側の端部36aは丸く加工されている。
【0032】
湾曲面33と対向する分割面35は、保護案内部材30の長手方向に沿って二分割されている。すなわち、分割面35には、保護案内部材30の長手方向に延びる隙間37が形成されている。隙間37の幅は、ケーブル41の直径よりも狭く設定されている。側面34同士の間隔は、2本のケーブル41の直径の合計よりも広く設定されている。湾曲面33と分割面35との間隔は、ケーブル41の直径よりも広く設定されている。
【0033】
保護案内部材30は、合成樹脂を押し出し成形した後に、上記スリット36及び隙間37を形成する加工が施される。このため、保護案内部材30の長さを任意に調整することができる。合成樹脂としては、機械的強度や成形精度の高いものを採用することが望ましい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などを採用することができる。ここでは、押し出し成形性及び形態安定性が高く、弾性変形が可能なポリプロピレンを採用している。そして、上記隙間37を広げるように保護案内部材30を弾性変形させて、保護案内部材30の内部へケーブル41が挿入されている。
【0034】
保護案内部材30は、XYテーブル20に取り付けられた状態において、直線状に配置される直線部分、折り返して配置される折り返し部分、及び捻られて配置される捻り部分を形成する。
【0035】
図3は、直線部分におけるケーブル保護案内部材30及びケーブル41の断面図である。同図に示すように、直線部分(自然状態の部分)では、保護案内部材30の湾曲面33は、内側(分割面35側)へ湾曲している。この状態において、2つの側面34は互いに略平行となっている。湾曲面33と側面34とは厚さが略等しくなっており、分割面35は湾曲面33よりも厚くなっている。分割面35は、隙間37側の端部が湾曲面33側へ近付くように傾斜している。このため、ケーブル41から分割面35へ作用する力に対する抵抗力を増大させることができ、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。
【0036】
図4は、折り返し部分におけるケーブル保護案内部材30及びケーブル41の断面図である。折り返し部分では、保護案内部材30が湾曲面33を内周側にして折り返されている。なお、同図では、上記直線部分における保護案内部材30及びケーブル41を二点鎖線で示している。
【0037】
同図に示すように、湾曲面33を内周側にして保護案内部材30を折り返すように変形させると、湾曲面33が伸ばされるように変形する。このため、湾曲面33が平面状に変形し、湾曲面33の幅方向の両端に接続された2つの側面34が、湾曲面33側へ倒れるように傾く。これにより、側面34に接続された分割面35も、隙間37側の端部が湾曲面33側へ近付くように傾くこととなる。その結果、分割面35に形成された隙間37の幅が狭くなり、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。また、分割面35は湾曲面33よりも厚くなっているため、ケーブル41から分割面35へ作用する力に対する抵抗力を増大させることができる。したがって、保護案内部材30からケーブル41が外れることを効果的に抑制することができる。
【0038】
なお、捻り部分におけるケーブル保護案内部材30及びケーブル41は、図4に示す断面を捻るように変形する。この場合も、折り返し部分と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
図5は、折り返し部分付近におけるケーブル保護案内部材30を示す斜視図である。なお、同図では、保護案内部材30内に収容されたケーブル41を省略して示している。
【0040】
同図に示すように、折り返し部分では、スリット36の間隔が広げられることにより、保護案内部材30が曲げられている。ここで、スリット36において湾曲面33側の端部36aが丸くされているため、スリット36の間隔を広げる際にスリット36の先端に応力が集中することを抑制することができる。このため、スリット36の端部36aに亀裂が生じることを抑制することができ、保護案内部材30の耐久性を向上させることができる。
【0041】
スリット36の設けられていない湾曲面33と、スリット36の設けられた側面34及び分割面35のスリット36以外の部分によって、保護案内部材30の断面形状を維持する作用が生じる。さらに、保護案内部材30の湾曲面33は内側へ湾曲しているため、湾曲面33を内周側とした保護案内部材30の曲げに対する剛性が向上している。このため、保護案内部材30は、保護案内部材30の自重及びケーブル41の重量を支えることができ、保護案内部材30の形状を安定させることができる。
【0042】
分割面35に形成された隙間37の幅は、直線部分から折り返し部分へ向かうにしたがって徐々に狭くなっている。このため、保護案内部材30と共にケーブル41が折り返される部分においても、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。また、直線部分から折り返し部分へ向かうにしたがって、湾曲面33が伸ばされるように変形し、分割面35の隙間37側の端部が湾曲面33側へ近付くように傾斜している。このため、ケーブル41から分割面35へ力が作用したとしても、保護案内部材30からケーブル41が外れることを抑制することができる。
【0043】
なお、捻り部分におけるケーブル保護案内部材30は、図5に示す保護案内部材30を捻った形状となる。すなわち、同図において、保護案内部材30の上部と下部との水平位置をずらした形状となる。この場合も、折り返し部分と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
次に、図1に戻り、こうした構成を備える保護案内部材30を、XYテーブル20及びアクチュエータ25に取り付ける構造について説明する。
【0045】
保護案内部材30は、湾曲面33を上側にして配置されており、第1端部30aがY軸テーブル21の端部に固定されている。保護案内部材30は、Y軸方向に沿って、Y軸テーブル21とX軸テーブル22との交差部26を越えた第1折り返し位置31まで、直線状に延ばされている。
【0046】
保護案内部材30は、第1折り返し位置31において、湾曲面33を内周側にして、すなわちX軸テーブル22側へ、外周側のスリット36の間隔を広げるように曲げることで折り返されている。折り返された保護案内部材30は、Y軸方向に沿って交差部26まで延ばされている。このとき、第1折り返し位置31と交差部26との距離が長い場合には、保護案内部材30は直線状に延ばされることとなり、第1折り返し位置31と交差部26との距離が短い場合には、保護案内部材30は曲線状に延ばされることとなる。
【0047】
保護案内部材30は、交差部26において、湾曲面33を内周側にしてX軸方向へ向かうように捻られている。このとき、保護案内部材30は、外周側のスリット36の間隔を広げるように曲げられつつ、延ばされる方向がY軸方向からX軸方向へ転換されている。保護案内部材30の中間部30bは、X軸テーブル22において端部付近の交差部26に固定されている。このため、保護案内部材30の中間部30bは、交差部26においてX軸方向に沿った移動が規制されている。なお、中間部30bは、Y軸テーブル21の駆動に伴って、X軸テーブル22と共にY軸方向へ移動させられる。
【0048】
保護案内部材30は、X軸方向に沿って、中間部30bからアクチュエータ25を越えた第2折り返し位置32まで、直線状に延ばされている。保護案内部材30は、第2折り返し位置32において、湾曲面33を内周側にして、すなわちアクチュエータ25側へ、外周側のスリット36の間隔を広げるように曲げることで折り返されている。折り返された保護案内部材30は、X軸方向に沿ってアクチュエータ25まで延ばされている。そして、保護案内部材30の第2端部30cが、アクチュエータ25に固定されている。このため、第2端部30cは、X軸テーブル22の駆動に伴って、アクチュエータ25と共にX軸方向へ移動させられる。
【0049】
次に、図6を参照して、XYテーブル20を駆動させた際に、ケーブル保護案内部材30によりケーブル41が案内される態様について説明する。
【0050】
X軸テーブル22及びアクチュエータ25が矢印Y1の方向へ移動した場合には、第1折り返し位置31が矢印Y1の方向へ移動して、保護案内部材30と共にケーブル41が送り出される。一方、アクチュエータ25が矢印X1の方向へ移動した場合には、第2折り返し位置32が矢印X1の方向へ移動して、保護案内部材30と共にケーブル41が送り出される。したがって、保護案内部材30により、ケーブル41をY軸方向及びX軸方向に沿って案内することができる。ここで、保護案内部材30の中間部30bが交差部26に固定されているため、中間部30bのX軸方向に沿った移動が規制され、保護案内部材30の捻り部分が揺動することを抑制することができる。
【0051】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0052】
・Y軸テーブル21及びX軸テーブル22に沿ってケーブル保護案内部材30が設けられ、保護案内部材30の第2端部30cがアクチュエータ25に取り付けられている。ここで、保護案内部材30は、樹脂により長尺状に一体で形成されているため、従来のリンク部材などを多数連結して組み立てる保護案内部材と比較して、保護案内部材30自体の構成を簡素化することができるとともに、その組み立て作業を省くことができる。
【0053】
・保護案内部材30は、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、保護案内部材30には、湾曲面33を残して3面(2つの側面34及び分割面35)を切り込む長手方向に垂直なスリット36が、長手方向に所定間隔で設けられている。このため、保護案内部材30は、スリット36の設けられていない湾曲面33を内周側にして、外周側のスリット36の間隔を広げるように、曲げたり捻ったりすることができる。このとき、スリット36の設けられていない湾曲面33と、スリット36の設けられた3面のスリット36以外の部分によって、保護案内部材30の断面形状を維持する作用が生じる。したがって、保護案内部材30の自重や、保護案内部材30内に収容されたケーブル41の重量に対して、保護案内部材30の変形を抑制して形状を安定させることができる。
【0054】
・保護案内部材30は、Y軸方向に沿ってX軸方向との交差部26を越えた第1折り返し位置31まで延ばされ、第1折り返し位置31において湾曲面33を内周側にして折り返されて、Y軸方向に沿って交差部26まで延ばされている。すなわち、スリット36の設けられていない湾曲面33を内周側にして、外周側のスリット36の間隔を広げるように曲げることで、保護案内部材30を折り返すことができる。
【0055】
・保護案内部材30は、交差部26において湾曲面33を内周側にしてX軸方向へ向かうように捻られて、X軸方向に沿って延ばされてアクチュエータ25に取り付けられている。すなわち、湾曲面33を内周側にして、外周側のスリット36の間隔を広げるように捻ることで、保護案内部材30をY軸方向からX軸方向へ向かわせることができる。
【0056】
・アクチュエータ25がY軸方向に沿って移動した場合には、第1折り返し位置31がY軸方向に沿って移動して保護案内部材30が送り出されることで、保護案内部材30によりケーブル41を案内することができる。その結果、互いに交差する二方向に沿って設けられる保護案内部材30をアクチュエータ25に取り付ける取付構造10を、長尺状に一体で形成された保護案内部材30により実現することが可能となるため、その取付工数を減らすことができる。
【0057】
すなわち、上記保護案内部材30の構造と、上記取付構造10(スリット36の設けられていない湾曲面33を内周側にした曲げ及び捻り)とを採用することで、1つの保護案内部材30でも交差する2つの方向へ配置することが可能となる。このため、アクチュエータ25のY軸方向に沿った移動に対する曲げと、保護案内部材30のY軸方向からX軸方向への方向転換に対する捻りとを両立することができる。
【0058】
・保護案内部材30は、X軸方向へ向かうように捻られてから、X軸方向に沿ってアクチュエータ25を越えた第2折り返し位置32まで延ばされ、第2折り返し位置32において湾曲面33を内周側にして折り返されている。このため、アクチュエータ25がX軸方向に沿って移動した場合には、第2折り返し位置32がX軸方向に沿って移動して保護案内部材30が送り出されることで、ケーブル保護案内部材30によりケーブル41を案内することができる。その結果、アクチュエータ25がY軸方向及びX軸方向の二方向へ移動する場合であっても、長尺状に一体で形成された保護案内部材30により、ケーブル41を保護及び案内することができる。
【0059】
・保護案内部材30は、交差部26においてX軸方向に沿った移動が規制されているため、湾曲面33を内周側にしてX軸方向へ向かうように捻られた部分が、揺動することを抑制することができる。なお、交差部26において保護案内部材30のX軸方向に沿った移動を規制したとしても、第1折り返し位置31及び第2折り返し位置32の移動が妨げられることはない。したがって、保護案内部材30において、アクチュエータ25の移動に伴うケーブル41の案内に支障をきたすことはない。
【0060】
・保護案内部材30の長手方向に垂直な断面において、湾曲面33は内側へ湾曲しているため、湾曲面33を内周側とした保護案内部材30の曲げに対する剛性を向上させることができる。したがって、保護案内部材30の自重や、保護案内部材30内に収容されたケーブル41の重量に対して、保護案内部材30の変形を効果的に抑制することができる。その結果、保護案内部材30の形状を更に安定させることができる。
【0061】
・保護案内部材30において湾曲面33と対向する分割面35は、保護案内部材30の長手方向に沿って二分割されているため、その割れ目から保護案内部材30内へケーブル41を容易に挿入することができる。
【0062】
・湾曲面33を内周側にして保護案内部材30を曲げた場合には、湾曲面33の湾曲が伸ばされるように変形する。このため、湾曲面33に接続された2つの側面34は、湾曲面33側へ倒れるように傾き、その2つの側面34に接続された分割面35の分割部分(隙間37の部分)が、湾曲面33側へ近付くこととなる。このため、保護案内部材30の割れ目が閉じられることとなり、保護案内部材30内からケーブル41がはみ出すことを抑制することができる。したがって、保護案内部材30が曲げられる部分においても、保護案内部材30内に収容されるケーブル41を強固に保持することができる。
【0063】
・スリット36において、湾曲面33側の端部36aが丸くされているため、湾曲面33を内周側にして外周側のスリット36の間隔を広げるように曲げる際に、スリット36の端部36aに亀裂が生じることを抑制することができる。その結果、保護案内部材30の耐久性を向上させることかできる。
【0064】
なお、上記実施形態を、以下のように変形して実施することもできる。上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付することにより説明を省略する。
【0065】
・Y軸テーブル21の駆動及びX軸テーブル22の駆動に支障がなければ、XYテーブル20をカバー等で覆ってもよい。すなわち、ケーブル保護案内部材30をカバー等の内部に設けることもできる。
【0066】
・スリット36の端部36aを丸く加工することを省略することもできる。
【0067】
・上記実施形態では、スリット36は分割面35から湾曲面33近傍まで切り込むようにしたが、保護案内部材30の折り返し部分や捻り部分の曲率半径が大きければ、スリット36が湾曲面33側へ切り込む長さを短くしてもよい。
【0068】
・図7に示すように、湾曲面33に対向する対向面135が分割されていないケーブル保護案内部材130を採用することもできる。この場合には、保護案内部材130の端部の開口から、ケーブル41を内部に挿入することとなる。こうした保護案内部材130によれば、保護案内部材130からケーブル41が外れることを確実に防ぐことができる。
【0069】
・ケーブル保護案内部材30,130において、湾曲面33を平面に形成することもできる。
【0070】
・上記実施形態では、保護案内部材30の中間部30bをX軸テーブル22の交差部26に固定したが、中間部30bを自由に移動可能にすることもできる。この場合であっても、保護案内部材30自体の形状安定性により、ケーブル41をY軸方向及びX軸方向へ案内することができる。
【0071】
・図8に示すように、Y軸方向において、X軸テーブル22の手前側に保護案内部材30を取り付けることもできる。この場合には、保護案内部材30の中間部30bを、X軸テーブル22の交差部26においてY軸方向の手前側に固定し、保護案内部材30の第2端部30cを、アクチュエータ25においてY軸方向の手前側に固定すればよい。こうした構成によっても、XYテーブル20が駆動された際に、保護案内部材30によりケーブル41を案内することができる。また、Y軸テーブル21において、X軸方向の手前側に保護案内部材30を取り付けることもできる。
【0072】
・上記実施形態では、X軸テーブル22によりアクチュエータ25をX軸方向に移動可能としたが、図9に示すように、アクチュエータ25がX軸テーブル22の端部付近に固定されている構成を採用することもできる。この場合には、保護案内部材30に第2折り返し位置32を設ける必要がなく、保護案内部材30の第2端部30cをX軸テーブル22の端部付近に固定すればよい。
【符号の説明】
【0073】
10…取付構造、20…XYテーブル、21…Y軸テーブル、22…X軸テーブル、25…アクチュエータ(可動部材)、26…交差部、30…ケーブル保護案内部材、31…第1折り返し位置、32…第2折り返し位置、33…湾曲面(所定の1面)、34…側面、35…分割面(対向する面)、36…スリット、37…隙間、41…ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する第1方向及び第2方向に沿って設けられるケーブル保護案内部材を可動部材に取り付ける取付構造であって、
前記保護案内部材は、樹脂により長尺状に一体で形成され、長手方向に垂直な断面が中空の矩形状であり、前記保護案内部材には、所定の1面を残して3面を切り込む長手方向に垂直なスリットが、長手方向に所定間隔で設けられており、
前記保護案内部材は、前記第1方向に沿って前記第2方向との交差部を越えた第1折り返し位置まで延ばされ、前記第1折り返し位置において前記所定の1面を内周側にして折り返されて、前記第1方向に沿って前記交差部まで延ばされ、前記交差部において前記所定の1面を内周側にして前記第2方向へ向かうように捻られて、前記第2方向に沿って延ばされて前記可動部材に取り付けられていることを特徴とするケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項2】
前記保護案内部材は、前記第2方向へ向かうように捻られてから、前記第2方向に沿って前記可動部材を越えた第2折り返し位置まで延ばされ、前記第2折り返し位置において前記所定の1面を内周側にして折り返されて、前記第2方向に沿って延ばされて前記可動部材に取り付けられている請求項1に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項3】
前記保護案内部材は、前記交差部において前記第2方向に沿った移動が規制されている請求項1又は2に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項4】
前記保護案内部材の長手方向に垂直な断面において、前記所定の1面は内側へ湾曲しており、
前記保護案内部材において前記所定の1面と対向する面は、前記保護案内部材の長手方向に沿って二分割されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。
【請求項5】
前記スリットにおいて、前記所定の1面側の端部が丸くされている請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブル保護案内部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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