説明

ケーブル保護管の補修部材

【課題】内部にケーブルが挿通された既設のケーブル保護管の劣化部分を補修するために、その劣化部分を除去した後、その除去した部分に固定されるケーブル保護管の補修部材において、既設のケーブル保護管に差込まれる補修用ソケットが、そのケーブル保護管から抜け出ることを確実に防止する。
【解決手段】既設のケーブル保護管10の除去した劣化部分を挟んで一方側の既設のケーブル保護管10の端部10aからそのケーブル保護管10内に補修用ソケット12の一端を差し込み、その補修用ソケット12の他端には、接続管30を介して他方側の既設のケーブル保護管10の端部10bを接続できるようにし、一方側の既設のケーブル保護管10と補修用ソケット12との間に、その補修用ソケット12が一方側の既設のケーブル保護管10から抜け出る方向へ移動しようとした際にその補修用ソケット12に押圧されて拡径し、抜け止め機能を発揮する保持部材20を備えたケーブル保護管の補修部材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部にケーブルを配設した保護管が劣化した際に、その劣化した部分を補修するために用いられるケーブル保護管の補修部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電話線等の各種ケーブルは、施設への引き込み上の制約や、その他、地形的な制約等により空中に敷設される場合がある。例えば、ケーブルが、河川や道路等を横断するように、その上空に跨って敷設される場合が挙げられる。
【0003】
空中に敷設されるケーブルは、地盤や構造物等に支持された金属製や樹脂製等のケーブル保護管内に挿通され、損傷しないように保護される。例えば、ケーブルが河川等を跨って敷設される場合は、ケーブル保護管は、その両端がそれぞれ橋台に支持される。また、橋梁等に添架される場合は、ケーブル保護管は、その両端以外の部分で、長さ方向に沿って何カ所かで橋桁に支持される場合もある。
【0004】
この種のケーブル保護管は、風雨に曝されるとともに、外気の温度変化の影響を強く受ける。このため、地中埋設のケーブル保護管と比較して、腐食がより早く進行する傾向がある。そこで、その腐食箇所を補修するために、腐食箇所を除去するとともに、その除去した部分を補修部材に置き換える手法が採用される。
【0005】
ケーブル保護管が、橋台等の構造物の壁面から引き出されている場合、この壁面に近い部分のケーブル保護管には、ケーブルやそのケーブル保護管自身の重量や外力による応力が集中し易い。このため、ケーブル保護管は、構造物への支持点、すなわち、この壁面に近い部分が、比較的、腐食や劣化が進行しやすい。
【0006】
ケーブル保護管の補修部材として、例えば、図18に示すものがある。この補修部材1は、円筒を周方向に二つ割りにした断面半円状の一対の半割管からなる補修用ソケット2、接続管3,4の各部材を採用している。部材を二つ割りとするのは、ケーブルを切断することなく、補修を行うためである。
【0007】
まず、ケーブル保護管10のうち、支持点である構造物(橋台A)の壁面近くの腐食・劣化箇所を切断し除去する。そして、図18に示すように、一対の半割管からなる補修用ソケット2の一端を、橋台内に埋め込まれている既設のケーブル保護管10内に差し込む。そして、補修用ソケット2の他端には、同じく二つ割りにした断面半円状の一対の半割管からなる接続管3,4を介して、橋台Aとは反対側の既設のケーブル保護管10に接続する。最後に、補修部材1の外周を、軸方向に離れた数箇所でステンレスバンド等で締め付けて、補修部材1と既設のケーブル保護管10とを一体化している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−191717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図18に示す従来のケーブル保護管の補修部材1では、既設のケーブル保護管10と補修部材1とは、接着剤によって固定されている。すなわち、既設のケーブル保護管10に対する補修用ソケット2の抜け止めは、主として接着剤の接着力に依存している。
【0010】
このため、地震時等において、想定されるよりも大きな外力が作用した際には、補修用ソケット2が既設のケーブル保護管10から抜け出てしまう恐れがある。このため、さらに強固に抜け止めが成される構造が望まれる。
【0011】
そこで、この発明は、内部にケーブルが挿通された既設のケーブル保護管の劣化部分を補修するために、その劣化部分を除去した後、その除去した部分に固定されるケーブル保護管の補修部材において、既設のケーブル保護管に差込まれる補修用ソケットが、そのケーブル保護管から抜け出ることをさらに確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、内部にケーブルが挿通された既設のケーブル保護管の劣化部分を補修するために、その劣化部分を除去した後、その除去した部分を挟んで両側の既設のケーブル保護管の端部間を結ぶように接続されるケーブル保護管の補修部材において、前記除去した部分を挟んで一方側の既設のケーブル保護管の端部からそのケーブル保護管内に補修用ソケットの一端を差し込み、その補修用ソケットの他端には、接続管を介して前記除去した部分を挟んで他方側の既設のケーブル保護管の端部を接続できるようにし、前記一方側の既設のケーブル保護管と前記補修用ソケットとの間に、その補修用ソケットが前記一方側の既設のケーブル保護管から抜け出る方向へ移動しようとした際にその補修用ソケットに押圧されて拡径する保持部材を備えたことを特徴とするケーブル保護管の補修部材を採用した。
【0013】
この構成によれば、地震時等において、ケーブル保護管に大きな外力が作用し、補修用ソケットが既設のケーブル保護管から抜け出る方向へ移動しようとした際に、保持部材は、その補修用ソケットに押圧されて拡径し、既設のケーブル保護管の内面に強い力で密着する。このため、補修用ソケットの抜け止めをより強固とし得る。
【0014】
この構成において、前記接続管は、前記既設のケーブル保護管の管軸方向に沿って一方側と他方側との屈曲を許容する屈曲部及び管軸方向に沿って伸縮を許容する伸縮部、又はそのいずれかを備える構成を採用することができる。
【0015】
この構成によれば、屈曲部や伸縮部の作用によって、ケーブル保護管へ加わる外力を低減し、補修用ソケットに加わる既設のケーブル保護管からの引き抜き方向への力を低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、既設のケーブル保護管と前記補修用ソケットとの間に、その補修用ソケットが前記一方側の既設のケーブル保護管から抜け出る方向へ移動しようとした際にその補修用ソケットに押圧されて拡径する保持部材を備えたので、補修用ソケットの抜け止めをより強固とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態を示す断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】保持部材の詳細を示し、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は一部切断正面図、(e)は断面図、(f)はテーパ部材の斜視図
【図4】補修用ソケットの詳細を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は一部切断正面図、(e)は断面図
【図5】接続管の第一接続部材の詳細を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は一部切断正面図
【図6】接続管の第二接続部材の詳細を示し、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は一部切断正面図
【図7】接続管の第三接続部材の詳細を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は一部切断正面図
【図8】止め具の使用形態の詳細を示し、(a)は分解図、(b)は止め具を接続管の外周に嵌めて固定した状態を示す断面図、(c)(d)は、要部拡大断面図
【図9】保持部材の変形例を示し、(a)は図中左側が(b)のA−A断面図、図中右側が(b)のB−B断面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は一部切断正面図、(e)は断面図
【図10】この発明の他の実施形態を示す断面図
【図11】接続管の第四接続部材の詳細を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のC−C断面図、(d)は一部切断正面図
【図12】(a)〜(e)は、図10の実施形態の作用を示す説明図
【図13】この発明のさらに他の実施形態を示す断面図
【図14】この発明のさらに他の実施形態を示す断面図
【図15】この発明のさらに他の実施形態を示す断面図
【図16】図15の実施形態の要部拡大図
【図17】図15の実施形態の要部を示し、(a)は平面図、(b)は断面図
【図18】従来のケーブル保護管の補修部材を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、河川等を跨る橋梁に添架されるケーブル保護管に用いられ、そのケーブル保護管の劣化した部分を除去した後、その除去した部分に置き換えられるケーブル保護管の補修部材11(以下、単に「補修部材11」と称する。)、及び、その補修部材11を用いたケーブル保護管の補修方法である。
【0019】
既設のケーブル保護管10は、従来例の説明で使用した図18に示すように、その両端がそれぞれ構造物(橋台A)のコンクリートに埋め込まれた状態に支持されている。この実施形態では、ケーブル保護管10のうち、一方の橋台Aの壁面近くに生じた腐食・劣化箇所を切断し除去し、その除去した部分を挟んで両側の既設のケーブル保護管10の端部10a,10b間を結ぶように補修部材11が接続されるようになっている。
【0020】
補修部材11の構成は、図1に示すように、補修用ソケット12、保持部材20、接続管30等からなる。
【0021】
それぞれの部材は、ケーブルCを切断することなくケーブル保護管10の補修ができるよう、周方向に沿って複数に分割された部材となっている。この実施形態では、それぞれの部材が断面半円状の一対の半割管部材で構成されているが、ケーブルCを切断することなくその補修ができる限り、分割の態様は自由である。このため、例えば、これらを、周方向に沿って三つ以上の部材に分割した構成としてもよい。
【0022】
補修用ソケット12は、前記除去した部分を挟んで一方側の既設のケーブル保護管10の端部10a、すなわち、橋台Aの壁面側の端部10aからそのケーブル保護管10内にその一端を差し込む。そして、補修用ソケット12の他端には、接続管30を介して前記除去した部分を挟んで他方側の既設のケーブル保護管10の端部10bを接続できるようになっている。
【0023】
補修用ソケット12は、図2及び図4に示すように、全体として筒状を成し、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。また、その一端には、周方向に沿って4箇所の突部12bを備えている。突部12bの数は自由であるが、各突部12bが、後述の保持部材20に設けられる孔部21bに入り込むことができるよう、両者の数は同数とする必要がある。また、補修用ソケット12の他端の外周には、ネジ部12dが設けられている。なお、一端と他端との間の中間部12aは、円筒状となっている。
【0024】
保持部材20は、一方側の既設のケーブル保護管10と補修用ソケット12との間に配置される。保持部材20は、図2及び図3に示すように、全体として筒状を成し、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している本体部21と、その本体部21とは別体のテーパ部材22とからなる。本体部21は、その一端に、周方向に沿って4箇所の前記孔部21bを備えている。孔部21bの数は、前述の通り、突部12bの数及び位置に対応している限り自由である。また、本体部21の他端には、外径側に突出するフランジ21eが設けられている。なお、一端と他端との間の中間部21aは、円筒状となっている。
【0025】
保持部材20は、補修用ソケット12と同様、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状を成すように配置された状態で、図3(c)で示すように、凹部35内に止め具36を嵌め込んで一体化されるようになっている。なお、二つ割りの一対の半割管部材である補修用ソケット12についても、同様な止め具を用いて、円筒状に一体化することもできるが、この実施形態では、止め具による一体化を省略している。
【0026】
また、孔部21bは、その他端側の縁に、図3(e)に示すように、一端側から他端側に向かうにつれて徐々に外径側に近づく外径側向きのテーパ面21cを備えている。
テーパ部材22は、図3(f)に示すように、一端側、他端側の縁にそれぞれテーパ面22a,22bを備えている。テーパ部材22が、図2に示すように、孔部21b内に収容されると、テーパ部材22の他端側のテーパ面22bと、本体部21のテーパ面21cとが面接触するようになっている。
【0027】
補修部材11を既設のケーブル保護管10に固定する手順は、まず、既設のケーブル保護管10の切断した端部10aから、そのケーブル保護管10内に保持部材20の一端を差し込む。このとき、テーパ部材22を孔部21b内に収容した状態で、保持部材20を差し込んでいく。テーパ部材22の幅(保持部材20の周方向への幅)は、孔部21bの幅(同周方向への幅)と同様に、外径側から内径側に向かうに連れて徐々に狭まっているので、テーパ部材22は、孔部21b内から脱落しないようになっている。
【0028】
つぎに、その保持部材20の内側に補修用ソケット12の一端を差し込む。そして、補修用ソケット12の一端に設けた突部12bが、保持部材20の孔部21bに入り込んだ状態になる。
【0029】
そして、図2に示すように、補修用ソケット12の他端に接続管30を接続する。ここで、接続管30を構成する複数の部材のうち、最も一端側に位置する第一接続部材41には、その一端側の内周にネジ部41dが設けられている。その第一接続部材41のネジ部41dを、補修用ソケット12のネジ部12dにねじ込んでいくと、補修用ソケット12は他端側、すなわち、ケーブル保護管10から抜け出る方向へ僅かずつ移動していく。
【0030】
そして、第一接続部材41の一端に設けられたフランジ41eの端面が、保持部材20の他端に設けられたフランジ21eの端面に当接すると、同時に、補修用ソケット12の一端に設けられた突部12bのテーパ面12cが、保持部材20(テーパ部材22)のテーパ面22aと面接触するようになっている。これにより、補修用ソケット12はそれ以上他端側へ移動できない状態となり、補修用ソケット12と接続管30とが接続された状態となる。
【0031】
なお、接続管30は、最も一端側の部材である第一接続部材41からさらに他端側に向かって別の部材が連結されることで、既設のケーブル保護管10の他方側の端部10bに結ぶように接続される。なお、可能であれば、第一接続部材41を直接、ケーブル保護管10の他方側の端部10bに接続する構成も採用してもよい。
【0032】
この実施形態では、接続管30は、第一接続部材41、第二接続部材42、第三接続部材43からなる三つの部材を用いている。この三つの部材により、既設のケーブル保護管10の管軸方向に沿って一方側と他方側との屈曲を許容する屈曲部31、及び管軸方向に沿って伸縮を許容する伸縮部32が構成されている。
【0033】
なお、接続管30の構成としては、このように、屈曲部31及び伸縮部32の両方を備えていてもよいし、そのいずれかを備えた構成、すなわち、屈曲部31のみを備えた構成、あるいは、伸縮部32のみを備えた構成とすることもできる。もちろん、地震等の影響を考慮しなくてもよい場合等は、屈曲部31と伸縮部32の両方を備えない構成とすることもできる。
【0034】
以下、屈曲部31及び伸縮部32の構成について説明する。
【0035】
この実施形態では、屈曲部31は、図1に示すように、第一接続部材41と第二接続部材42とで構成されている。また、伸縮部32は、第二接続部材42と第三接続部材43とで構成されている。
【0036】
第一接続部材41は、図5に示すように、全体として筒状を成し、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。その筒軸方向一端には、外径側に突出するフランジ41eが設けられている。また、その一端側の内周には、前述のように、補修用ソケット12のネジ部12dにねじ合うネジ部41dが設けられている。
中間部41aを挟んで、第一接続部材41の筒軸方向他端には、球状部41bが設けられている。球状部41bの外面は、球面41cとなっている。
【0037】
この第一接続部材41は、補修用ソケット12や保持部材20と同様、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状を成すように配置された状態で、図5(a)で示すように、凹部35内に止め具36を嵌め込んで一体化されるようになっている。
【0038】
第二接続部材42は、図6に示すように、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。その筒軸方向一端には、球状部42bが設けられている。球状部42bの内面は、第一接続部材41の球面41cに面接触可能な球面42cとなっている。また、その他端側の内周には、内径側に突出する突部42dが、外周には、全周に亘る周溝34が設けられている。突部42dは、周方向に沿って全周に連続する突条である。
【0039】
この第二接続部材42も、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状を成すように配置された状態で、図8で示すように、周溝34内に止め具33を嵌め込んで一体化されるようになっている。止め具33は、1対の半円状の部材で構成され、その両端に設けられた突部33aが、周溝34の周方向2箇所に設けられたやや深めの凹部34aそれぞれに入り込むことで、二つ割りの一対の半割管部材同士を締め付けて固定する。
【0040】
第三接続部材43は、図7に示すように、全体として筒状を成し、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。その筒軸方向他端には、外径側に突出するフランジ43eが設けられている。また、その他端側の内周には、補修用ソケット12のネジ部12dにねじ合うネジ部43dが設けられている。
中間部43aを挟んで、第三接続部材43の一端側の外周には、外径側に突出する突部43bが設けられている。突部43bは、周方向に沿って全周に連続する突条である。
【0041】
この第三接続部材43も、二つ割りの一対の半割管部材であり、第一接続部材41と同様、凹部35内に止め具36を嵌め込んで一体化されるようになっている。
【0042】
屈曲部31は、図1に示すように、第一接続部材41の球面41cと、第二接続部材42の球面42cとが面接触し、互いに摺接しながらケーブル保護管10の管軸方向に沿って一方側と他方側との屈曲を許容し、いわゆる自在継手として機能する。このため、ケーブル保護管10に作用する主として曲げ方向の応力に対して、その屈曲によって部材の損傷を防止する。
【0043】
伸縮部32は、同じく、図1に示すように、第二接続部材42の他端内に第三接続部材43の一端が入り込み、両者が互いに摺接しながらケーブル保護管10の管軸方向に沿って伸縮を許容し、いわゆる伸縮継手として機能する。このため、ケーブル保護管10に作用する主として管軸方向の応力に対して、その伸縮によって部材の損傷を防止する。このとき、内径側に突出する突部42d及び外径側へ突出する突部43bとは、その伸縮部32の抜け止めの機能を発揮している。突部42dと突部43bとが当接すると、伸縮部32は、それ以上伸長することはできない。
【0044】
なお、接続管30を構成する部材のうち、最も他端側に位置する第三接続部材43は、
最も一端側に位置する第一接続部材41と同様の構造で、保持部材20、補修用ソケット12を介して、既設のケーブル保護管10の他方側の端部10bに接続されている。この発明の保持部材20、補修用ソケット12を介した既設のケーブル保護管10への接続管30の接続構造は、その接続する対象となるケーブル保護管10が、橋台A等の構造物に埋設された部分以外にも使用することができる。
【0045】
このように、補修部材11が、既設のケーブル保護管10の端部10a,10b間を結ぶように接続された状態で、仮に、地震等によってケーブル保護管10に外力が作用した場合を想定する。
例えば、ケーブル保護管10に、図2に示す右方向への引っ張り応力が作用したとする。補修用ソケット12は、一方側の既設のケーブル保護管10から抜け出る方向、すなわち、橋台Aから抜け出る方向(その補修用ソケット12の一端側から他端側に向かって)へ移動しようとする。このとき、保持部材20は、その補修用ソケット12の突部12bによって、同じくその抜け出る方向に押圧される。
【0046】
この押圧は、保持部材20を構成するテーパ部材22のテーパ面22aと、補修用ソケット12のテーパ面12cとが互いに面接触していることから、そのテーパ面22a,12c同士の面接触箇所を通じて行われる。このため、テーパ部材22は、そのテーパ面22a,12cを介して外径側へ押圧されて拡径し、既設のケーブル保護管10の内面に強い力で密着する。このため、補修用ソケット12の抜け止めが成される。
【0047】
なお、図9は、保持部材20の変形例を示す。この変形例は、テーパ部材22と本体部21とを一体化した構造である。このように、保持部材20の本体部21に、補修用ソケット12のテーパ面12cに面接触するテーパ面22aを形成することもできる。
【0048】
この変形例では、孔部21bの他端から筒軸方向に沿って2本のスリット21gを設けているので、テーパ面22aが押圧された際の外径側への変形性能が高められている。スリット21gの他端は、止め孔21hによって応力の集中が防止されている。
【0049】
他の実施形態を、図10に示す。この実施形態は、既設のケーブル保護管10の管軸方向に沿って、屈曲部31、伸縮部32、屈曲部31を順に配置したものである。
【0050】
接続管30を構成する部材としては、前述の実施形態の第三接続部材43に代えて第四接続部材44を配置し、その第四接続部材44の他端側には第一接続部材41を配置している。最も他端側に位置する第一接続部材41は、橋台A側と同様の構造で、保持部材20、補修用ソケット12を介して、既設のケーブル保護管10の他方側の端部10bに接続されている。
【0051】
第四接続部材44は、図11に示すように、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。中間部44aを挟んで筒軸方向他端には、球状部44bが設けられている。球状部44bの内面は、第一接続部材41の球面41cに面接触可能な球面44cとなっている。また、その一端側の外周には、外径側に突出する突部44dが設けられている。突部44dは、周方向に沿って全周に連続する突条である。
【0052】
この第四接続部材44も、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状を成すように配置された状態で、図8で示すように、周溝34内に止め具33を嵌め込んで一体化されるようになっている。
【0053】
第二接続部材42と第四接続部材44とによる伸縮部32、第四接続部材44と第一接続部材41とによる屈曲部31の構成、作用は、前述の実施形態と同様であり、各部の作用を図12に示す。
【0054】
図12(a)は、補修部材11の接続管30が、管軸方向に一直線上に並んだ通常の状態である。図12(b)は、ケーブル保護管10に対して管軸方向の引っ張り応力が作用し、伸縮部32が伸長した状態である。図12(c)は、図12(b)の状態から、さらに曲げ方向の応力が作用して、図中左側の屈曲部31と右側の屈曲部31とが共に屈曲した状態である。図12(d)は、図12(c)の状態から、さらに管軸方向の圧縮応力が作用して、伸縮部32の長さがやや短縮した状態である。屈曲部31は、一方が屈曲状態、他方が通常の状態である。図12(e)は、図12(d)の状態から、再度、管軸方向の引っ張り応力が作用し、伸縮部32が伸長した状態である。
【0055】
さらに他の実施形態を、図13に示す。この実施形態は、図10〜12の実施形態における第四接続部材44と他端側の第一接続部材41との間に、第五接続部材45、第六接続部材46、第四接続部材44を順に介在させたものである。
【0056】
第五接続部材45は、図13に示すように、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。中間部45aを挟んで筒軸方向一端と他端には、それぞれ球状部45bが設けられている。球状部45bの外面は、第四接続部材44の球面44c及び、後述の第六接続部材46の球面46cに面接触可能な球面45cとなっている。
【0057】
この第五接続部材45も、二つ割りの一対の半割管部材であるが、この実施形態では、止め具等による一体化は省略されている。ただし、同様な止め具を用いて、円筒状に一体化することも可能である。
【0058】
第六接続部材46は、図13に示すように、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。中間部46aを挟んで筒軸方向一端には、球状部46bが設けられている。球状部46bの内面は、第五接続部材45の球面45cに面接触可能な球面46cとなっている。また、その他端側の内周には、内径側に突出する突部46dと、全周に亘る周溝34とが設けられている。突部46dは、周方向に沿って全周に連続する突条である。
【0059】
この第六接続部材46も、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状に配置された状態で、図8で示すように、周溝34内に止め具33を嵌め込んで一体化されるようになっている。
【0060】
第四接続部材44と第五接続部材45とによる屈曲部31、第五接続部材45と第六接続部材46との屈曲部31、及び、第六接続部材46と第四接続部材44とによる伸縮部32の構成、作用は、前述の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
さらに他の実施形態を、図14に示す。この実施形態は、既設のケーブル保護管10の管軸方向に沿って、屈曲部31、伸縮部32、伸縮部32、屈曲部31を順に配置したものである。
【0062】
図10に示す構成との差異点は、伸縮部32を二つ連続して配置するために、接続管30を構成する部材として、既設のケーブル保護管10の管軸方向に沿って、第一接続部材41、第四接続部材44、第七接続部材47、第四接続部材44、第一接続部材41を順に配置している点である。
【0063】
第七接続部材47は、図14に示すように、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。中間部47aの筒軸方向一端と他端には、それぞれその内周に、内径側に突出する突部47dが、外周には、全周に亘る周溝34が設けられている。突部47dは、周方向に沿って全周に連続する突条である。
【0064】
この第七接続部材47も、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状に配置された状態で、図8で示すように、周溝34内に止め具33を嵌め込んで一体化されるようになっている。
【0065】
第七接続部材47とその両側に配置された各第四接続部材44とで、それぞれ伸縮部32が構成されている。伸縮部32の構成、作用は、前述の実施形態と同様である。
【0066】
さらに他の実施形態を、図15〜17に示す。この実施形態は、既設のケーブル保護管10の管軸方向に沿って、多数の屈曲部31を連続して配置したものである。
【0067】
接続管30を構成する部材としては、管軸方向両端の対の第一接続部材41,41間に、第九接続部材49、第八接続部材48を交互に配置している。管軸方向両端の第一接続部材41には、それぞれ第九接続部材49が接続される。
【0068】
この実施形態では、第一接続部材41は、図16に示すように、その他端の内面に球面41fを備えている。第一接続部材41の一端側の構成は、前述の実施形態と同様である。
また、保持部材20の構成は、本体部21の一端の端面にテーパ部材22の他端側端面が当接している状態である。
【0069】
第八接続部材48は、図17に示すように、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。中間部48aを挟んで筒軸方向一端と他端には、それぞれその球状部48bが設けられている。球状部48bの内面は、球面48cとなっている。
【0070】
第九接続部材49は、全体として筒状を成し、同じく、筒軸方向一端から他端に向かってケーブル挿通用の孔が貫通している。中間部49aを挟んで筒軸方向一端と他端には、それぞれその球状部49bが設けられている。球状部49bの外面は、第八接続部材48の球面48cに面接触する球面49cである。
【0071】
この第八接続部材48、第九接続部材49はいずれも、二つ割りの一対の半割管部材であり、ケーブルCの外周に円筒状を成すように配置された状態で、図17で示すように、ボルト、ナット等で一体化されるようになっている。
【0072】
第一接続部材41と第九接続部材49、第八接続部材48と第九接続部材49とは、互いに面接触する球面41f,49c;48c、49c同士が摺接しながらケーブル保護管10の管軸方向に沿って一方側と他方側との屈曲を許容し、いわゆる自在継手として機能する。伸縮部32の構成、作用は、前述の実施形態と同様である。
【0073】
これらの各実施形態では、屈曲部31は、互いに面接触する球面同士が摺接しながらケーブル保護管10の屈曲を許容する構成としたが、屈曲部31の構成としては、この実施形態に限定されず、管軸周りの任意の方位に首振り可能な継手構造、いわゆる自在継手として機能する周知の構成を採用し得る。
【0074】
また、伸縮部32は、互いに摺接しながら管軸方向に沿ってケーブル保護管10の伸縮を許容する構成としたが、伸縮部32の構成としては、この実施形態に限定されず、いわゆる伸縮継手として機能する周知の構成を採用し得る。
【符号の説明】
【0075】
1,11 ケーブル保護管の補修部材(補修部材)
2,12 補修用ソケット
3,4 接続管
10 既設のケーブル保護管(ケーブル保護管)
12a 中間部
12b 突部
12c テーパ面
12d ネジ部
20 保持部材
21 本体部
21a 中間部
21b 孔部
21c テーパ面
21d 突部
21e フランジ
21g スリット
21h 止め孔
22 テーパ部材
22a,22b テーパ面
30 接続管
31 屈曲部
32 伸縮部
33 止め具
33a 突部
34 周溝
34a 凹部
35 凹部
36 止め具
41 第一接続部材
41a 中間部
41b 球状部
41c 球面
41d ネジ部
41e フランジ
41f 球面
42 第二接続部材
42a 中間部
42b 球状部
42c 球面
42d 突部
43 第三接続部材
43a 中間部
43b 突部
43d ネジ部
43e フランジ
44 第四接続部材
44a 中間部
44b 球状部
44c 球面
44d 突部
45 第五接続部材
45a 中間部
45b 球状部
45c 球面
46 第六接続部材
46a 中間部
46b 球状部
46c 球面
46d 突部
47 第七接続部材
47a 中間部
47d 突部
48 第八接続部材
48a 中間部
48b 球状部
48c 球面
49 第九接続部材
49a 中間部
49b 球状部
49c 球面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にケーブルが挿通された既設のケーブル保護管(10)の劣化部分を補修するために、その劣化部分を除去した後、その除去した部分を挟んで両側の既設のケーブル保護管(10)の端部(10a,10b)間を結ぶように接続されるケーブル保護管の補修部材(11)において、
前記除去した部分を挟んで一方側の既設のケーブル保護管(10)の端部(10a)からそのケーブル保護管(10)内に補修用ソケット(12)の一端を差し込み、その補修用ソケット(12)の他端には、接続管(30)を介して前記除去した部分を挟んで他方側の既設のケーブル保護管(10)の端部(10b)を接続できるようにし、前記一方側の既設のケーブル保護管(10)と前記補修用ソケット(12)との間に、その補修用ソケット(12)が前記一方側の既設のケーブル保護管(10)から抜け出る方向へ移動しようとした際にその補修用ソケット(12)に押圧されて拡径する保持部材(20)を備えたことを特徴とするケーブル保護管の補修部材。
【請求項2】
前記接続管(30)は、前記既設のケーブル保護管(10)の管軸方向に沿って一方側と他方側との屈曲を許容する屈曲部(31)及び管軸方向に沿って伸縮を許容する伸縮部(32)、又はそのいずれかを備えることを特徴とする請求項1に記載のケーブル保護管の補修部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−106431(P2013−106431A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248603(P2011−248603)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】