説明

ケーブル及びケーブルユニット

【課題】被覆部材において地面との摺動により生じる摩耗を軽減できるケーブル、及び、それを有するケーブルユニットを提供する。
【解決手段】ケーブル部10は、第1電源線11、第2電源線12及びシース20を有している。そして、シース20には、第1電源線11を内側に収容する円筒状の第1電源線被覆部21と、第2電源線12を内側に収容する、第1電源線被覆部21と同一形状の円筒状の第2電源線被覆部22と、第1電源線被覆部21の外径Dより厚みが小さく且つ第1電源線被覆部21と同一長さの帯板状に形成され、幅方向の一縁部23aが第1電源線被覆部21の外周面21aに第1電源線被覆部21の全長方向に沿って連接されるとともに幅方向の他縁部23bが第2電源線被覆部22の外周面22aに第2電源線被覆部22の全長方向に沿って連接された、連結部23と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車等の充電などに用いられる充電ケーブル等の大電流が流れる用途に用いられるケーブル及びそれを有するケーブルユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境やエネルギーなどにおける諸問題が顕在化するなか、環境負荷が低く且つエネルギー効率の高い電気自動車が注目されている。このような電気自動車の種類の1つとして、ニッケル水素充電池やリチウムイオン充電池などの二次電池を搭載し、該二次電池に蓄えられた電気エネルギーを利用して走行する電気自動車がある。
【0003】
このような二次電池を搭載した電気自動車においては、二次電池への充電が不可欠である。二次電池への充電は、該二次電池を、商用電源等から供給された電力を基に充電に適した電圧及び電流を生成し且つ充電時間等を制御する充電スタンド(充電器)に接続して行われる。そして、前記電気自動車本体には、二次電池に接続された二次電池側コネクタが設けられ、充電スタンドには、この二次電池側コネクタと接続される給電側コネクタをケーブルの末端に備えた充電ケーブルユニットが設けられていて、これらコネクタを互いに接続することにより、電気自動車の利用者が二次電池の充電を容易に行うことができるようにされていた(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような充電ケーブルユニットには、例えば、図7(a)、(b)に示すように、電源線911、912、複数の信号線913の間に介在914が詰め込まれ、これら周囲に押え巻きテープ915を巻き付けるとともにさらにその周囲を被覆部材としてのシース920で被覆した、断面円形のケーブル910が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−112348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような充電ケーブルユニット901に用いられるケーブル910は、図8(a)に示すように、電気自動車M(本体の一部のみ記載)の二次電池側コネクタCと充電スタンドPとの間を接続するために相応の長さが必要となり、また、その質量が1.0〜1.5kg/m程度あって重いので、充電作業時に引きずられてしまうことがあり、そのため、図8(b)に示すように、ケーブル910のシース920の外周面の一箇所が主に地面Eと接して摺動されて、当該箇所にケーブル910の荷重が集中してシース920の摩耗が進んでしまい、ケーブル910内の電源線911、912の導体等が露出して、感電事故などを引き起こしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、地面との摺動により被覆部材に生じる摩耗を軽減できるケーブル、及び、それを有するケーブルユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、導体と当該導体を被覆する絶縁体とを有する第1電源線及び第2電源線と、これら第1電源線及び第2電源線を内側に収容する被覆部材と、を有するケーブルにおいて、前記被覆部材には、前記第1電源線を内側に収容するように円筒状に形成された第1電源線被覆部と、前記第2電源線を内側に収容するように円筒状で且つ前記第1電源線被覆部と同一長さに形成された第2電源線被覆部と、前記第1電源線被覆部及び前記第2電源線被覆部のいずれの外径より厚みが小さく且つ前記第1電源線被覆部と同一長さの帯板状に形成され、幅方向の一縁部が前記第1電源線被覆部の外周面に前記第1電源線被覆部の全長方向に沿って連接されるとともに幅方向の他縁部が前記第2電源線被覆部の外周面に前記第2電源線被覆部の全長方向に沿って連接された、連結部と、が設けられていることを特徴とするケーブルである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記第1電源線と前記第2電源線との間隔が、前記第1電源線被覆部及び前記第2電源線被覆部の外径のうち大きい方の外径以上となるように、前記被覆部材が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記連結部の内側には、1又は複数の信号線が収容されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記被覆部材が、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする合成樹脂で構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、前記合成樹脂には、シリコーンパウダー20質量%が含有されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載された発明は、上記目的を達成するために、ケーブル部と、前記ケーブルの末端に設けられたコネクタ部と、を有するケーブルユニットにおいて、前記ケーブル部が、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブルで構成されていることを特徴とするケーブルユニットである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、6に記載された発明によれば、ケーブルの被覆部材が、第1電源線を内側に収容する円筒状の第1電源線被覆部と、第2電源線を内側に収容する円筒状で且つ第1電源線被覆部と同一長さの第2電源線被覆部とを、これら電源線被覆部のいずれの外径より厚みが小さく且つ第1電源線被覆部と同一長さの帯板状に形成された連結部によって、全長方向に沿って互いに連結して構成されているので、被覆部材の断面形状がめがね型となり、そのため、ケーブルが、第1電源線被覆部の外周面の一点と、第2電源線被覆部の外周面の一点との二箇所で地面と接し、これら二箇所に荷重が分散されて、これにより、一箇所当たりの荷重を小さくでき、地面との摺動により被覆部材に生じる摩耗を軽減できる。また、第1電源線被覆部と第2電源線被覆部とが帯板状の連結部によって全長方向に沿って互いに連続的に連結されているので、例えば、第1電源線被覆部と第2電源線被覆部とが全長方向に沿って互いに間欠的に連結されている構成などに比べて、第1電源線被覆部と第2電源線被覆部とを強固に連結することができ、ケーブルの耐久性を高めることができる。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、第1電源線と第2電源線との間隔が、第1電源線被覆部及び第2電源線被覆部の外径のうち大きい方の外径以上となるように、被覆部材が形成されているので、第1電源線及び第2電源線における許容電流値を向上させることができ、そのため、許容電流値を同一とした場合にこれら電源線の導体の径を小さくでき、ケーブルの質量を従来のケーブルと同等又はより低減して、ケーブルの被覆部材の摩耗をさらに軽減できる。
【0016】
請求項3に記載された発明によれば、連結部の内側には、1又は複数の信号線が収容されているので、第1電源線被覆部や第2電源線被覆部に信号線を収容することによるこれら電源線被覆部の大径化を防いで、ケーブルを小型にすることができる。
【0017】
請求項4に記載された発明によれば、被覆部材の材料となる合成樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする合成樹脂で構成されているので、滑り性を向上させることができ、被覆部材の摩耗をより軽減できる。
【0018】
請求項5に記載された発明によれば、被覆部材の材料となる合成樹脂には、シリコーンパウダーが20質量%が含有されているので、より滑り性を向上させることができ、被覆部材の摩耗を更に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のケーブルユニットの一実施形態である充電ケーブルユニットが設けられた充電スタンドの図である。
【図2】図1の充電ケーブルユニットの構成を示す図である。
【図3】(a)は、図1の充電ケーブルユニットのケーブル部の幅方向(図2のX−X線方向)の断面図であり、(b)は、このケーブル部の構成を説明する斜視図である。
【図4】(a)は、図1の充電ケーブルユニットのケーブルの製造装置の概略を示す図であり、(b)は、(a)の製造装置が備えるニップルを示す図である。
【図5】(a)は、図1の充電ケーブルユニットのコネクタ部が、電気自動車の二次電池側コネクタに接続されるときの状態を模式的に示す図であり、(b)は、(a)の状態におけるケーブル部と地面との接触状態を説明する図である。
【図6】(a)は、ケーブルの耐摩耗性の検証に用いた試験装置の上面図であり、(b)は、当該試験装置の側面図である。
【図7】(a)は、従来の充電ケーブルユニットのケーブルの径方向の断面図であり、(b)は、このケーブルの構成を説明する斜視図である。
【図8】(a)は、図7の充電ケーブルユニットの給電側コネクタが、電気自動車の二次電池側コネクタに接続されるときの状態を模式的に示す図であり、(b)は、(a)の状態におけるケーブルと地面との接触状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のケーブルユニットの一実施形態である電気自動車用の充電ケーブルユニットを、図1〜図6を参照して説明する。
【0021】
充電ケーブルユニットは、電気自動車と充電スタンドの間を接続して、電気自動車に搭載された二次電池への充電電力の供給に用いられる。充電ケーブルユニットのケーブルは、充電作業時に引きずられて地面と擦れてしまうことがあるので、充電ケーブルユニットに断面円形のケーブルを用いると、その外周面の一箇所が集中的に摩耗して感電などの事故につながる恐れがあり、このような断面円形のケーブルは、充電ケーブルユニットに用いるには不適当であった。そして、以下に説明する本発明のケーブルユニットは、電気自動車の充電に用いられる充電ケーブルユニットに適したものである。
【0022】
充電ケーブルユニット1は、図1、図2に示すように、充電スタンドPと電気自動車(図示なし)の間を接続して、電気自動車に搭載された二次電池への充電電力の供給に用いられる。充電ケーブルユニット1は、ケーブルとしてのケーブル部10と、給電側コネクタとしてのコネクタ部40と、を備えている。ケーブル部10の先端には、コネクタ部40が取り付けられ、ケーブル部10の基端には、充電スタンドPが接続されている。
【0023】
ケーブル部10は、図3(a)、(b)に示すように、第1電源線11と、第2電源線12と、複数の信号線13と、被覆部材としてのシース20と、を有している。
【0024】
第1電源線11は、充電電流が通電される電力供給線として用いられ、軟銅、銅などの導電材料からなる断面円形の導体11aと、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂や架橋ポリエチレン樹脂などの絶縁材料が導体11aの上に押出成形されてなる絶縁体11bと、を有している。第2電源線12についても、第1電源線と同様に、導体11aと絶縁体12bとを有している。本実施形態において、第1電源線11と第2電源線12とは、同一の構成であり、即ち、同一の材料を用いて同一の形状に形成されている。
【0025】
第1電源線11及び第2電源線12には、充電スタンドPから電気自動車への充電電流が通電され、例えば、充電スタンドPが急速充電対応のものなどである場合、この充電電流は、最大130A程度の直流電流となるので、このような大電流が通電可能なように第1電源線11及び第2電源線12は構成されている。
【0026】
複数の信号線13は、例えば、コントロールパイロット線などとして用いられ、上記第1電源線11、第2電源線12と同様に、導体13aと絶縁体13bとを有している。これら複数の信号線13に流れる電流は小さいので、上記第1電源線11、第2電源線12よりも小径に構成されている。複数の信号線13は、それぞれ同一の構成であり、即ち、同一の材料を用いて同一の形状に形成されている。
【0027】
シース20は、上述した第1電源線11、第2電源線12及び複数の信号線13を内側に収容して、それらを被覆して保護するための被覆部材である。シース20は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする合成樹脂からなり、それぞれ一体に形成された第1電源線被覆部21と、第2電源線被覆部22と、連結部23と、を有している。なお、本明細書において、主成分とは少なくとも70質量%以上含まれる成分のことをいう。勿論、シース20の材料として、ポリ塩化ビニル樹脂以外の合成樹脂を用いてもよい。
【0028】
第1電源線被覆部21は、内径が第1電源線11の径と同一の円筒状に形成されており、内周面が第1電源線11の外周面に密に重ねられて、第1電源線11を内側に収容している。
【0029】
第2電源線被覆部22は、第1電源線被覆部21と同様に、内径が第2電源線12の径と同一の円筒状に形成されており、内周面が第2電源線12の外周面に密に重ねられて、第2電源線12を内側に収容している。第1電源線被覆部21と第2電源線被覆部22とは、同一の構成であり、即ち、同一の材料を用いて同一の形状(外径、内径、長さ)に形成されている。
【0030】
連結部23は、第1電源線被覆部21及び前記第2電源線被覆部22の外径より厚みが小さく形成されているとともに、第1電源線被覆部21及び第2電源線被覆部22の全長と同一長さの帯板状に形成されている。
【0031】
連結部23の幅方向(図3(a)の左右方向)の一縁部23aには、第1電源線被覆部21の外周面21aが第1電源線被覆部21の全長方向(図3(a)の手前−奥方向)に沿って連接されている。また、連結部23の幅方向の他縁部23bには、第2電源線被覆部22の外周面22aが第2電源線被覆部22の全長方向(図3(a)の手前−奥方向)に沿って連接されている。また、第1電源線被覆部21の外周面21aの法線方向及び第2電源線被覆部22の外周面22aの法線方向と、連結部23の幅方向と、が一致するように、第1電源線被覆部21、第2電源線被覆部22及び連結部23が配置されている。これにより、シース20の断面形状は、めがね型に形成されている。
【0032】
また、連結部23の厚みは、上述した複数の信号線13の径より大きく形成されており、連結部23には、複数の信号線13の外径と同一径の円柱状空間が設けられて、当該円柱状空間に複数の信号線13が収容されている。即ち、連結部23の内側には、複数の信号線13が収容されている。また、連結部23の内側に収容された複数の信号線は、連結部23の幅方向の中央線Kについて線対称に配置されている。これにより、ケーブル部10が、中央線Kについて線対称に構成され、中央線Kの左右で質量が均等になる。
【0033】
シース20は、第1電源線被覆部21に収容された第1電源線11と、第2電源線被覆部22に収容された第2電源線12と、の間隔Lが、第1電源線被覆部21の外径D以上になるように形成されている。即ち、第1電源線被覆部21の厚みと、第2電源線被覆部22の厚みと、連結部23の幅と、を合計した長さが、第1電源線被覆部21の外径Dより大きくなるように形成されている。
【0034】
第1電源線11及び第2電源線12には、充電時に大電流が通電されるが、このとき、これら電源線11に存在する電気抵抗等によって、これら第1電源線11と第2電源線12とが発熱してしまい、この発熱による温度上昇によって通電可能な電流値、即ち、許容電流値が制限される。そして、本実施形態においては、第1電源線11と第2電源線12とが、第1電源線被覆部21の外径D以上の間隔をあけて配置されているので、これら第1電源線11と第2電源線12との間隔が外径D未満となるように近接して配置された構成に比べて、放熱を良好にして温度上昇を抑えることができ、その分、許容電流値を向上できる。
【0035】
シース20の材料となる合成樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂にシリコーンパウダーを20質量%程度(20±2質量%)含有したものであってもよい。これにより、シース20の滑り性をさらに向上させることができる。
【0036】
上述したケーブル部10は、次のように製造される。図4(a)に示すように、第1電源線11、第2電源線12、及び、複数の信号線13は、押出成形により予め作製されて、それぞれがボビン61〜65に巻き付けられている。そして、これらボビン61〜65から、第1電源線11、第2電源線12、及び、複数の信号線13が繰り出されて、押出ヘッド68に送られる。そして、第1電源線11、第2電源線12、及び、複数の信号線13は、図4(b)に示す押出ヘッド68内のニップル70にこれら電線のそれぞれに対応した設けられた通し孔71〜75に挿通される。ニップル70に設けられた第1電源線11に対応した通し孔71と第2電源線11に対応した通し孔72との間隔が、本製造により最終的に得られるケーブル部10の第1電源線被覆部21の外径D以上となるように設定されている。第1電源線11、第2電源線12、及び、複数の信号線13は、各通し孔71〜75に案内されつつ熱可塑性の合成樹脂Jでモールドされたのち、図3(a)に示すケーブル部10の断面形状に外形に合わせて形成されたダイから押し出され、その後冷却されて、ケーブル部10が完成する。
【0037】
コネクタ部40は、図2に示すように、利用者によって握られるグリップ部41を備えたケース42と、ケース42の先端に円筒状に突出して設けられた、ケーブル部10の第1電源線11、第2電源線12及び複数の信号線13等に電気的に接続された端子金具43を開口側44aに向けて収容する、コネクタハウジング44と、を備えている。コネクタ部40は、電気自動車に搭載された二次電池に電気的に接続された二次電池側コネクタCと、コネクタハウジング44とが嵌合されることにより、ケーブル部10の第1電源線11、第2電源線12及び複数の信号線13(即ち、充電スタンドP)と二次電池等との間を電気的に接続する。
【0038】
次に、上述した充電ケーブルユニット1の本発明に係る作用について、図5(a)、(b)を参照して説明する。
【0039】
充電ケーブルユニット1は、充電作業時に、コネクタ部40が電気自動車Mに設けられた二次電池側コネクタCに近づけられると、図5(a)に示すようにケーブル部10が地面E上を引きずられるようにして移動して、地面Eと摺動される。このとき、ケーブル部10は、図5(b)に示すように、シース20の第1電源線被覆部21の外周面21aの一点と、第2電源線被覆部22の外周面22aの一点との二箇所で地面Eと接し、これら二箇所に充電ケーブルユニット1の荷重が分散されて加わる。これにより、地面Eとの接地箇所当たり(即ち、単位面積当たり)の荷重を小さくすることができる。
【0040】
また、第1電源線11と第2電源線12とが、第1電源線被覆部21の径D以上の間隔をあけて配置されているので、放熱を良好にして温度上昇を抑えることができ、その分、許容電流値を向上できる。
【0041】
また、シリコーンパウダーを20質量%含有した合成樹脂をシース20の材料として用いることにより、滑り性を向上できる。
【0042】
以上より、本発明によれば、ケーブル部10のシース20が、第1電源線11を内側に収容する円筒状の第1電源線被覆部21と、第2電源線12を内側に収容する円筒状で且つ第1電源線被覆部21と同一長さの第2電源線被覆部22とを、これら電源線被覆部21、22のいずれの外径より厚みが小さく且つ第1電源線被覆部21と同一長さの帯板状に形成された連結部23によって、全長方向に沿って互いに連結して構成されているので、シース20(即ち、ケーブル部10)の断面形状がめがね型となり、そのため、ケーブル部10が、第1電源線被覆部21の外周面21aの一点と、第2電源線被覆部22の外周面22aの一点との二箇所で地面Eと接し、これら二箇所に荷重が分散されて、これにより、一箇所当たりの荷重を小さくでき、シース20における地面Eとの摺動により生じる摩耗を軽減できる。また、第1電源線被覆部21と第2電源線被覆部22とが連結部23によって全長方向に沿って互いに連続的に連結されているので、例えば、第1電源線被覆部21と第2電源線被覆部22とが全長方向に沿って互いに間欠的に連結されている構成に比べて、第1電源線被覆部21と第2電源線被覆部22とを強固に連結することができ、ケーブル部10の耐久性を高めることができる。また、第1電源線11、第2電源線12及び複数の信号線13とシース20とが密着しているので、それらの間に介在部材を設ける必要が無く、コストを低減できる。
【0043】
また、第1電源線11と第2電源線12との間隔Lが第1電源線被覆部21の外径D以上となるように、シース20が形成されているので、第1電源線11、第2電源線12における許容電流値を向上させることができ、そのため、許容電流値を同一とした場合にこれら電源線11、12の導体11a、12aの径を小さくでき、これにより、ケーブル部10の質量を従来のケーブルと同等に又はより低減して、ケーブル部10のシース20の摩耗をさらに軽減できる。
【0044】
また、連結部23の内側には、複数の信号線13が収容されているので、第1電源線被覆部21や第2電源線被覆部22にこれら複数の信号線13を収容することによるこれら電源線被覆部21、22の大径化を防いで、ケーブル部10を小型にすることができる。
【0045】
また、シース20の材料となる合成樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする合成樹脂で構成されているので、滑り性を向上させることができ、被覆部材の摩耗をより軽減できる。
【0046】
また、シース20の材料となる合成樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂にシリコーンパウダーを20質量%含有させたものを用いることで、滑り性を向上させることができ、ケーブル部10のシース20の摩耗を更に軽減できる。
【0047】
本実施形態において、第1電源線被覆部21と第2電源線被覆部22とは、同一の形状に形成されているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、一方の電源線被覆部の外径が、他方の電源線被覆部の外径より大きく形成されていても良い。この場合、連結部23は、第1電源線被覆部21及び前記第2電源線被覆部22のいずれの外径より厚みが小さく形成され、また、第1電源線11と第2電源線12との間隔Lが、第1電源線被覆部21及び第2電源線被覆部22の外径のうち大きい方の外径以上となるように、シース20を構成する。
【0048】
また、本実施形態において、連結部23に3本の信号線13が収容されているものであったが、例えば、2本以下又は4本以上の信号線13でもよく、又は、信号線13を収容しない構成でもよい。
【0049】
また、本実施形態は、充電ケーブルユニット1について説明するものであったが、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、移動型発電機と電力需要装置とを接続するケーブルユニットなどの大電流が通電されるケーブルユニットにも、本発明を適用することができる。
【0050】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0051】
次に、本発明者は、上述した充電ケーブルユニットのケーブル部について、構成が異なる複数のケーブル部(ケーブル)を作製するとともに、これら各ケーブルについて、許容電流値及び単位長さ当たりの質量について検証した。
【0052】
(実施例1)
上述したケーブル部10において、第1電源線11を、導体11aの外径が9.0mm、導体サイズが40mm2、導体質量が365kg/km、絶縁体11bの外径が11.4mm、となるように構成し、第2電源線12についても第1電源線と同一の構成とした。そして、シース20について、第1電源線被覆部21の外径が16.0mm、内径が11.4mm、となるように構成し、第2電源線被覆部22についても第1電源線被覆部21と同一の構成とし、連結部23の厚みが7.3mm、となるように構成し、そして、シース20の幅を48mmとするように、連結部23の幅を調整した。また、連結部23には、3本の信号線13を収容した。これにより、第1電源線11と第2電源線との線間距離(間隔L)が16.0mmとなる、断面めがね型のケーブル部10を得た。
【0053】
(実施例2)
上述したケーブル部10において、第1電源線11を、導体11aの外径が8.2mm、導体サイズが33mm2、導体質量が305kg/km、絶縁体11bの外径が10.6mm、となるように構成し、第2電源線12についても第1電源線と同一の構成とした。そして、シース20について、第1電源線被覆部21の外径が15.2mm、内径が10.6mm、となるように構成し、第2電源線被覆部22についても第1電源線被覆部21と同一の構成とし、連結部23の厚みが7.3mm、となるように構成し、そして、シース20の幅を45.6mmとするように、連結部23の幅を調整した。また、連結部23には、3本の信号線13を収容した。これにより、第1電源線11と第2電源線との線間距離(間隔L)が15.2mmとなる、断面めがね型のケーブル部10を得た。
【0054】
(比較例1)
図7(a)、(b)に示す従来のケーブル910において、電源線911を、導体の外径が9.0mm、導体サイズが40mm2、導体質量が365kg/km、絶縁体の外径が11.4mm、となるように構成し、電源線912につても電源線911と同一の構成とした。そして、シース920について、外径が32mmとなるように構成した。そして、電源線911、912を互いの外周面の一部を密着させるとともに、3本の信号線をこれらとともに束ねて、隙間に介在914を詰めこみ、これら周囲に押え巻きテープ915を巻き付けるとともにさらにその周囲をシース920で被覆して、断面円形のケーブル910を得た。比較例1においては、電源線911、912の線間距離(間隔L)が0mmとなる。
【0055】
上述した実施例1、2及び比較例1において、電源線、信号線、及び、シースに用いた材料は全て同一である。そして、上述した構成から算出した許容電流値及びケーブル質量を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、実施例1において、第1電源線11及び第2電源線12の構成が、比較例1における電源線911、912と同一であるにもかかわらず、許容電流値が133Aとなり、比較例1に対して15%程度向上できた。また、実施例2において、第1電源線11及び第2電源線12の構成が、比較例1における電源線911、912に比べ細径であるにも関わらず、許容電流値が116Aとなり、比較例1と同一の許容電流値を確保できた。また、このときのケーブル質量が、1528kg/kmとなり、比較例1の1540kg/kmに比べて、ケーブル質量を5%程度低減できた。
【0058】
これにより、第1電源線11と第2電源線12との間隔Lを、第1電源線被覆部21の外径D以上離すことにより、許容電流値を向上でき、これにより、電源線を細径にしてケーブルの質量を低減できることが明らかとなった。
【0059】
また、本発明者は、シリコーンパウダー非含有の合成樹脂及びシリコーンパウダー含有の合成樹脂を用いてシースを形成したときの耐摩耗性について検証した。
【0060】
(実施例3)
シリコーンパウダーを20質量%含有するポリ塩化ビニル樹脂を用いて、第1電源線被覆部21及び第2電源線被覆部22の厚みが3.1mmとなるようにシース20を形成して、上述のケーブル部10を得た。
【0061】
(比較例2)
シリコーンパウダー非含有のポリ塩化ビニル樹脂を用いてシース20を形成した以外は、実施例3と同様にして、上述のケーブル部10を得た。
【0062】
耐摩耗性の検証は、図6(a)、(b)に示す試験装置201を用いて、次のように行った。
【0063】
試験装置201は、長さ3mの摩耗台210と長さ1.5mで且つ質量500kgの重り220とを備えている。摩耗台210の上面210aには、表面粗さが0.8μmRaの滑り面211が二列設けられており、この滑り面211に、第1電源線被覆部21及び第2電源線被覆部22がそれぞれ載置される。重り220は、滑り面211に載置された第1電源線被覆部21及び第2電源線被覆部22に載せられて、摩耗台210の滑り面211との間にケーブル部10を挟み込み、ケーブル部10と滑り面211との接触面積を1.2m2、接触面の単位面積当たりの質量(荷重)を410kg/m2とした。そして、ケーブル部10を挟み込んだ状態で、引っ張り距離1.5m/回、引っ張り速度0.5m/秒、でケーブル部10を繰り返し引っ張り、第1電源線被覆部21又は第2電源線被覆部22が摩耗して、第1電源線11の絶縁体11b又は第2電源線12の絶縁体12bが露出するまで繰り返した。この結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示すように、実施例3では、絶縁体が露出するまでの回数が150回となり、比較例2の100回に比べて、耐摩耗性が1.5倍向上した。
【0066】
これにより、ケーブル部10において、シリコーンパウダーを含有する合成樹脂を用いてシース20を形成することにより、耐摩耗性を向上できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0067】
1 充電ケーブルユニット(ケーブルユニット)
10 ケーブル部(ケーブル)
11 第1電源線
12 第2電源線
13 信号線
20 シース(被覆部材)
21 第1電源線被覆部
22 第2電源線被覆部
23 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と当該導体を被覆する絶縁体とを有する第1電源線及び第2電源線と、これら第1電源線及び第2電源線を内側に収容する被覆部材と、を有するケーブルにおいて、
前記被覆部材には、
前記第1電源線を内側に収容するように円筒状に形成された第1電源線被覆部と、
前記第2電源線を内側に収容するように円筒状で且つ前記第1電源線被覆部と同一長さに形成された第2電源線被覆部と、
前記第1電源線被覆部及び前記第2電源線被覆部のいずれの外径より厚みが小さく且つ前記第1電源線被覆部と同一長さの帯板状に形成され、幅方向の一縁部が前記第1電源線被覆部の外周面に前記第1電源線被覆部の全長方向に沿って連接されるとともに幅方向の他縁部が前記第2電源線被覆部の外周面に前記第2電源線被覆部の全長方向に沿って連接された、連結部と、
が設けられていることを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記第1電源線と前記第2電源線との間隔が前記第1電源線被覆部及び前記第2電源線被覆部の外径のうち大きい方の外径以上となるように、前記被覆部材が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記連結部の内側には、1又は複数の信号線が収容されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記被覆部材が、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記合成樹脂には、シリコーンパウダー20質量%が含有されていることを特徴とする請求項4に記載のケーブル。
【請求項6】
ケーブル部と、前記ケーブルの末端に設けられたコネクタ部と、を有するケーブルユニットにおいて、
前記ケーブル部が、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブルで構成されていることを特徴とするケーブルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−89442(P2013−89442A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228608(P2011−228608)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】