説明

ケーブル収容管路内径計測装置

【課題】小口径の地中埋設細径ケーブル収容管路や、ケーブルが設置済みの小口径の地中埋設細径ケーブル収容管路でも、管内部に発生した劣化状況を正確に計測することを可能とするケーブル収容管路内径計測装置を提供する。
【解決手段】レーザ照射装置40は、レーザ発光を利用し、ケーブル収容管路内に円心状の光リングを発光させ、細径カメラ20は、光リングを撮影する。レーザ照射装置設置部30および細径カメラ設置部10は、ケーブル収納管路の継手に生じた段差、隙間を通過するための管路干渉解消部50a、50bと、ケーブル収容管路に収容されたケーブルと計測装置本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部を備える。細径カメラ設置部10は、細径カメラ20が撮影する際に、光リングが撮影画面内に最適な大きさに収まるように調節する調整部60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射と細径カメラによる映像撮影により、地中埋設細径ケーブル収容管路の内径を測定することで、管路の劣化状況を計測するケーブル収容管路内径計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中埋設細径ケーブル収容管路を点検する方法としては、細径カメラを用いる方法がある。この方法は、点検する管路に対し、一方のマンホール口から細径カメラを挿入して、他方のマンホールに向けて人間の力を利用して押し込み、または、他方のマンホール口から牽引し、撮影画像を確認しながら、一方のマンホール口から他方のマンホール口までの管路内部に発生した凹凸、穴、扁平の劣化状況を人間の目視によって点検するものである。
【0003】
また、管路内径300mmの下水道用管路など比較的に管路内径が大きく、内部が空洞
の状態にある管内に対しては、自走式カメラと光リングを用いた画像撮影による点検を実施し、管路内部に発生した劣化状況を定量的に確認することは可能であった。また、三角測量式レーザ変位計を利用して、閾値処理により管路内形状の欠損測定を行うことは可能であった(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】水沼 守、小川茂樹、桑野博喜,「レーザビーム走査法を用いた管路内面形状測定における欠陥検出の試み」,社団法人精密工学会,精密工学会誌,Vol.60,No.9,1994,p.1335−1339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した細径カメラを利用した地中埋設細径ケーブル収容管路の点検方法は、人間の目視に頼る以上、点検者の技能によって、管路内部に発生した劣化状況の認識に対し、有意であるか否か等のばらつきが発生することから、厳密な品質管理には、不向きな点検方法である。
【0006】
一方、管路内の劣化状況を定量的に点検する技法として、自走式カメラと光リングを用いて画像撮影にて記録する方法もあるが、適用可能な管路は、内径300mm以上の下
水道用管路のような比較的に管路内径が大きく、かつ内部が空洞な状態の管路に限られる。地中埋設細径ケーブル収容管路のような小口径の管路において、さらにケーブルが設置済みの状態の管路に対して上記技術により点検を行う場合には、設置済みのケーブルを除去するという極めて非効率的な作業が伴う。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、小口径の地中埋設細径ケーブル収容管路や、ケーブルが設置済みの小口径の地中埋設細径ケーブル収容管路でも、管内部に発生した劣化状況を正確に計測することを可能とするケーブル収容管路内径計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、レーザ発光を利用し地中埋設細径ケーブル収容管路内に円心状の光リングを照射するレーザ照射装置と、前記レーザ照射装置と一定距離を保ったまま前記地中埋設細径ケーブル収容管路内を移動しながら管路内を撮影することを可能とする細径カメラと、を備えて前記地中埋設細径ケーブル収納管路を点検するケーブル収容管路内径計測装置であって、前記レーザ照射装置は、レーザ照射装置設置部に設置され、前記細径カメラは、細径カメラ設置部に設置され、前記レーザ照射装置設置部および前記細径カメラ設置部は、前記地中埋設細径ケーブル収納管路の継手に生じた段差、隙間を通過するための管路干渉解消部と、前記地中埋設細径ケーブル収容管路に収容されたケーブルとケーブル収容管路内径計測装置本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記細径カメラ設置部は、前記細径カメラが撮影する際に、前記光リングが撮影画面内に最適な大きさに収まるように調節する調整部を備えることが好ましい。
【0010】
前記ケーブル干渉解消部は、前記ケーブル干渉解消部の位置を前記地中埋設細径ケーブル収容管路に収容されたケーブルの外径に合わせて調整できることが好ましい。
【0011】
また、本発明のケーブル収容管路内径計測装置は、ケーブル収容管路内径計測装置本体の管路軸方向の少なくとも一方に、装置本体を牽引するための牽引ロープが設置可能な牽引用フックを備えることが好ましい。
【0012】
前記レーザ照射装置設置部は、前記レーザ照射装置がレーザを発光させるための電力およびレーザ光の出力を調節可能なレーザ照射装置制御部と、点検する管路区間の距離を測定可能な測距部と、前記測距部にて計測された距離を記憶する記憶部とを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、光リングが細径カメラの撮影画面内に最適な大きさに収まるようにして、細径カメラとレーザ照射装置との距離を一定に保ったままケーブル収容管路内を牽引することを可能にするとともに、ケーブル収容管路の継手に生じた段差、隙間を通過するための管路干渉解消部と、ケーブルと装置本体の接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部とを備え、ケーブル収容管路にケーブルが設置済みの場合は、収容されたケーブル外径に合わせてケーブル干渉解消部の位置を調整し、牽引と同時に細径カメラにより撮影された光リングの画像を記録し、記録した画像をレーザ光解析装置での解析を可能とすることにより、今まで定量化できなかった地中埋設細径ケーブル収容管路の小口径の管路や、該管路にケーブルが収容された状態の管路でも、管路内に発生した凹凸、穴、扁平、管厚などの劣化状況を定量的かつ、正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のケーブル収容管路内径計測装置の上面図である。
【図2】本発明のケーブル収容管路内径計測装置の側面図である。
【図3】本発明のケーブル収容管路内径計測装置が管路内を点検(測定)しているときの状態を示す図である。
【図4】細径カメラ設置部の前面図である。
【図5】レーザ照射部の前面図である。
【図6】内部が空洞な状態の管路を測定しているときの細径カメラ設置部の前面図である。
【図7】ケーブルが設置済み状態の管路を測定しているときの細径カメラ設置部の前面図である。
【図8】本発明のケーブル収容管路内径計測装置の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは、特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定するわけではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1は、本発明のケーブル収容管路内径計測装置の上面図であり、図2は、本発明のケーブル収容管路内径計測装置の側面図である。また、図3は、ケーブルが設置済みの地中埋設細径ケーブル収容管路内において、本発明のケーブル収容管路内径計測装置が、牽引されながら、管路内を点検(計測)しているときの状態を示す図である。
【0017】
本発明のケーブル収容管路内径計測装置(以下、内径計測装置という)1は、地中埋設細径ケーブル収容管路(以下、ケーブル収容管路という)100に合わせて設定した外形寸法および長さ寸法の形状を有する点検装置である。内径計測装置1は、細径カメラ設置部10とレーザ照射装置設置部30からなる。細径カメラ設置部10には、細径カメラ20が設置されており、レーザ照射装置設置部30には、レーザ照射装置40が設置されている。細径カメラ20は、細径ケーブル80で図示しないレーザ光解析装置に接続されており、また、内径計測装置本体の管路軸方向の少なくとも一方には、装置本体を牽引するための牽引ロープ400が設置可能な牽引用フック40が設けられている。
【0018】
レーザ照射装置40は、レーザ発光を利用し、図3に示すように、ケーブル収容管路100内に円心状の光リング200を発光させる。細径カメラ20は、光リング200を撮影する。
【0019】
レーザ照射装置40は、レーザ照射装置固定部30aに固定されている。レーザ照射装置固定部30aには、ケーブル300と内径計測装置1本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部30bが設けられており、ケーブル干渉解消部30bには、ケーブル収容管路100の継手に生じた段差、隙間をスムーズに通過させるための管路干渉解消部50aが設けられている。
【0020】
細径カメラ20は、細径カメラ固定部10aに固定されており、細径カメラ固定部10aは、細径カメラ20の外形形状に合わせて調節可能となっている。細径カメラ固定部10aには、ケーブル300と内径計測装置1本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部10bが設けられており、ケーブル干渉解消部10bには、細径カメラ20が光リング200を撮影する際に、光リング200が撮影画面内に最適な大きさに収まるようにカメラの位置を管路軸方向に前後に調節するための調整部60が設けられている。調整部60により位置が調節された後は、細径カメラ20とレーザ照射装置40は一定距離に保たれる。この調整部60は、レーザ照射装置設置部30側も設けるようにしてもよい。また、ケーブル干渉解消部10bには、ケーブル収容管路100の継手に生じた段差、隙間をスムーズに通過させるための管路干渉解消部50bが設けられている。
【0021】
また、レーザ照射装置設置部30は、更に、レーザを発光させるための電力およびレーザ光の出力を調節可能なレーザ照射装置制御部30cと、ケーブル収容管路100の点検区間の距離を測定可能な測距部30dと、測距部30dにて計測された距離を記憶する記憶部30eを密封して内蔵している。
【0022】
図4は、細径カメラ設置部10を、細径ケーブル80側から見たときの細径カメラ設置部の前面図である。図4に示すように、細径カメラ固定部10aには、ケーブル300と内径計測装置1本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部10bが設けられ、ケーブル干渉解消部10bには、ケーブル収容管路100の継手に生じた段差、隙間をスムーズに通過させるための管路干渉解消部50bが設けられている。
【0023】
図5は、レーザ照射装置設置部30を、レーザ照射装置40がレーザを照射する側から見たときのレーザ照射装置設置部の前面図である。図5に示すように、レーザ照射装置固定部30aには、ケーブル300と内径計測装置1本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部30bが設けられ、ケーブル干渉解消部30bには、ケーブル収容管路100の継手に生じた段差、隙間をスムーズに通過させるための管路干渉解消部50aが設けられている。
【0024】
図6は、内部が空洞な状態の管路を測定しているときの細径カメラ設置部の前面図である。内部が空洞な状態のケーブル収容管路100の測定の場合は、図6に示すように、ケーブル干渉解消部10bを下方に移動させ、管路干渉解消部50bを、ケーブル収容管路100の内面の円周部に接触させて、内径計測装置1が、ケーブル収容管路100の継手に生じた段差、隙間をスムーズに通過できるようにする。レーザ照射装置設置部30でも同様に、ケーブル干渉解消部30bを下方に移動(拡大)させ、管路干渉解消部50aを、ケーブル収容管路100の内面の円周部に接触させて、内径計測装置1本体が、ケーブル収容管路100の継手に生じた段差、隙間をスムーズに通過できるようにする。
【0025】
図7は、ケーブルが設置済み状態の管路を測定しているときの細径カメラ設置部の前面図である。ケーブルが設置済み状態のケーブル収容管路100の測定の場合は、図7に示すように、ケーブル干渉解消部10bをケーブル外径L5に合わせて上方に移動(収縮)させ、細径カメラ20およびレーザ照射装置40を管路中心部に合わせるように調節し、ケーブル干渉解消部10bに、ケーブル300の上部面が接触するようにして、ケーブル300と内径計測装置1本体との接触による摩擦を解消する。
【0026】
内径計測装置1の外形寸法L1、L2は、管路径L4を有するケーブル収容管路100において、細径カメラ設置部10に設置された細径カメラ20の画面内に光リング200が最適な大きさの円を描くよう、測定者にて調節部60にて細径カメラ20の位置を管路軸方向に前後に調節し、細径カメラ20とレーザ照射装置40とを一定距離の保ったまま、ケーブル収容管路100内を撮影するのに十分な寸法とする。
【0027】
即ち、内径計測装置1は、細径カメラ設置部10に設置された細径カメラ20で、レーザ照射装置40より照射された円心状の光リング200が画面内に収まるように撮影し、細径カメラ20とレーザ照射装置40とを一定距離の保ったままケーブル収容管路100内を牽引されることで、牽引と同時に細径カメラ20により撮影された光リング200の画像を記録し、図示しないレーザ光解析装置での解析を可能とすることにより、小口径の細径管路や、該管路にケーブルが収容された状態の管路でも、管路内に発生した凹凸や扁平量、穴の大きさ、管厚などの今まで定量化できなかった劣化状況を0.1mm単位で定量的かつ、正確に計測することができる。
【0028】
図8は、ケーブル収容管路内径計測装置の使用例を示す図である。マンホールM1とマンホールM2との間を結ぶケーブルK1が収容されているケーブル収容管路100を点検(計測)する際に、内径計測装置1に細径カメラ20を装着し、レーザ照射装置40を作動させて光リング200を生成させた状態で、点検者Hは、牽引ロープ400を用いて内径計測装置1を牽引する。図において、矢印は牽引方向を示している。内径計測装置1は、カメラ撮影画面にてレーザ光が画面内に収まるように調整を行い、細径カメラ20とレーザ照射装置40とを一定の距離に保ったまま、光リング200を撮影することで、ケーブル収容管路100内に発生した凹凸や扁平量、穴の大きさ、管厚などの劣化状況を定量的、かつ、正確に計測することができる。
【0029】
撮影し記録された光リング200の画像は、細径ケーブルに接続された画像記録装置S1に保存され、保存された画像をレーザ光解析装置で解析を行うことで、今まで定量化できなかったケーブル収容管路100の小口径管路内や、ケーブル収容管路100にケーブルK1が収容された状態の管路内に発生した凹凸や扁平量、穴の大きさ、管厚などの劣化状況を定量的かつ、正確に計測することができる。
【0030】
なお、図8では、点検者Hが牽引ロープ400を牽引しながら撮影する例を示しているが、牽引用フック40にリールR1から引き出されたロープを装着して、リールR1でロープを巻き上げながら撮影してもよい。また、細径カメラの画像を画像記録装置S1に保存する例を示しているが、内径計測装置1の記憶部30eに保存するとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ケーブル収容管路内径計測装置
10 細径カメラ設置部
10a 細径カメラ固定部
10b、30b ケーブル干渉解消部
20 細径カメラ
30 レーザ照射装置設置部
30a レーザ照射装置固定部
30c レーザ照射装置制御部
30d 測距部
30e 記憶部
40 レーザ照射装置
50a、50b 管路干渉解消部
60 調整部
70 牽引用フック
80 細径ケーブル
M1、M2 マンホール
H 点検者
S1 画像記憶装置
R1 リール
100 地中埋設細径ケーブル収容管路
200 光リング
300、K1 ケーブル
400 牽引ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発光を利用し地中埋設細径ケーブル収容管路内に円心状の光リングを照射するレーザ照射装置と、前記レーザ照射装置と一定距離を保ったまま前記地中埋設細径ケーブル収容管路内を移動しながら管路内を撮影することを可能とする細径カメラと、を備えて前記地中埋設細径ケーブル収納管路を点検するケーブル収容管路内径計測装置であって、
前記レーザ照射装置は、レーザ照射装置設置部に設置され、
前記細径カメラは、細径カメラ設置部に設置され、
前記レーザ照射装置設置部および前記細径カメラ設置部は、前記地中埋設細径ケーブル収納管路の継手に生じた段差、隙間を通過するための管路干渉解消部と、前記地中埋設細径ケーブル収容管路に収容されたケーブルとケーブル収容管路内径計測装置本体との接触による摩擦を解消するためのケーブル干渉解消部と、を備えることを特徴とするケーブル収容管路内径計測装置。
【請求項2】
前記細径カメラ設置部は、前記細径カメラが撮影する際に、前記光リングが撮影画面内に最適な大きさに収まるように調節する調整部を備えることを特徴とする請求項1に記載のケーブル収容管路内径計測装置。
【請求項3】
前記ケーブル干渉解消部は、前記ケーブル干渉解消部の位置を前記地中埋設細径ケーブル収容管路に収容されたケーブルの外径に合わせて調整できることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル収容管路内径計測装置。
【請求項4】
ケーブル収容管路内径計測装置本体の管路軸方向の少なくとも一方に、装置本体を牽引するための牽引ロープが設置可能な牽引用フックを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のケーブル収容管路内径計測装置。
【請求項5】
前記レーザ照射装置設置部は、
前記レーザ照射装置がレーザを発光させるための電力およびレーザ光の出力を調節可能なレーザ照射装置制御部と、
点検する管路区間の距離を測定可能な測距部と、
前記測距部にて計測された距離を記憶する記憶部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のケーブル収容管路内径計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36830(P2013−36830A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172679(P2011−172679)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591047866)株式会社カンツール (4)