説明

ケーブル固定装置とそれを用いた光ケーブル固定方法

【課題】光特性等を劣化させることなく、簡易な構造でより確実にケーブルを固定できるケーブル固定装置とそれを用いた光ケーブル固定方法と等を提供することを目的とする。
【解決手段】外形が略ひし形であって、略ひし形の対角線にケーブルを緩嵌するケーブル止めピースと、ケーブル止めピースを保持するとともに、ケーブルが引っ張られた場合に、ケーブル止めピースがケーブルを圧接挟持するように、ケーブル止めピースにおける引っ張られた側の一対の辺を押圧する台座とを備えるケーブル固定装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル固定装置とそれを用いた光ケーブル固定方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバー等の各種ケーブルを固定する装置として、ケーブルを載せる台座と、この台座上のケーブルを押さえ付ける押さえ金具と、押さえ金具を台座に対して締め付けるネジとを備えたケーブル引留装置が知られている。
【0003】
台座は、接続箱のケーブル導入口などに予め固定されている。また、押さえ金具は、ケーブル軸線方向の中間部に台座と対向する被締め付け部が、両端側にケーブル跨がり部ができるように金属板を折り曲げて形成される。
【0004】
また、被締め付け部と、ケーブル跨がり部と、の折り曲げ角度は直角であるか、または直角よりやや大きい角度である。また、ケーブル跨がり部にはケーブルが入る切り欠き部が形成されている。切り欠き部の形状は、開口部側が平行な直線で奥の方が半円形となる逆U字形であってもよいし、奥の方に向けて開口部が狭くなるテーパー状であってもよい。
【0005】
このような引留装置でケーブルを引き留める場合には、まずネジを弛めておいて、次に押さえ金具の切り欠き部と台座とによって形成される孔にケーブルを挿通した後、ボルトを締め付ける。
【0006】
また、押さえ金具のケーブル外皮に押し当てられる部分を、ケーブル軸線に対して斜めに形成して、ケーブルが軸線方向に移動しようとすると、押さえ金具がケーブル外皮に食い込むような構造とすることが提案されている。このような食い込み構造により、ケーブルをより確実に引き留めることができ、ケーブル引留装置としての信頼性を高めることができるものとされる。
【0007】
また押さえ金具のケーブル外皮に押し当てられる部分を、略ハの字状にすることにより、種々の外径のケーブルを引き留めることが可能となり、ケーブル外径の変化に対する融通性を高くするようなケーブル引留装置が提案されている。
【0008】
上述した従来のケーブル引留装置は、例えば下記特許文献1等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−157345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のケーブル引留装置においては、押さえ金具でケーブルを常に強く締め付けているので、ケーブルに歪みを生じさせて、その光特性等の種々の特性を劣化させる懸念があった。一方、ケーブルへの締め付けを緩和させると、ケーブルが引っ張られた場合にケーブルが容易に押さえ金具をすり抜けることとなり、ケーブルを充分に固定することができなくなる。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑み為されたものであり、特性等を劣化させることなく、簡易な構造でより確実にケーブルを固定できるケーブル固定装置とそれを用いた光ケーブル固定方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるケーブル固定装置は、外形が略ひし形であって、略ひし形の対角線にケーブルを緩嵌するケーブル止めピースと、ケーブル止めピースを保持するとともに、ケーブルが引っ張られた場合に、ケーブル止めピースがケーブルを圧接挟持するように、ケーブル止めピースにおける引っ張られた側の一対の辺を押圧する台座とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、好ましくはケーブルが引っ張られる力の強度に対応してケーブル止めピースがケーブルを圧接する力が変動するように、ケーブルが引っ張られる力の強度に対応して台座がケーブル止めピースを押圧する力が変動することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくはケーブルを緩嵌するケーブル止めピースの対角線が長手方向の対角線であり、ケーブルが引っ張られた場合に、ケーブル止めピースがケーブルとともに、引っ張られた方向へ移動しようとすることにより、固定された台座の内壁からケーブル止めピースの一対の辺が、各々押圧されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくはケーブルがいずれの方向に引っ張られた場合でも、ケーブル止めピースがケーブルを圧接挟持するように、台座は、ケーブル方向において対象な内壁を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは自然状態において、台座はケーブル止めピースを押圧しないことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくはケーブルが引っ張られた場合にケーブルを圧接挟持するケーブル止めピースの圧接挟持面は、鋸波形状であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは台座の内壁が凸状に湾曲しており、ケーブルが引っ張られた場合に、ケーブル止めピースの一対の辺は、台座の内壁と各々点または線で接触して押圧されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは台座の湾曲形状の内壁が、ケーブルが引っ張られる力の強度が変動した場合でもケーブルを圧接挟持するケーブル止めピースの一対の圧接挟持面が平行状態となるように、ケーブル止めピースの所望の箇所を押圧することを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくはケーブル止めピースが、平面視において、略ひし形の各辺を構成する四つの直線フレームと、ケーブルに垂直な対角線に位置する中央フレームと、を備えるフレーム形状であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは中央フレームが、ケーブルを配設する切り欠き溝を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは異なる径のケーブルに対応するように、切り欠き溝は弾性材で形成されることを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは弾性材がシリコーン樹脂であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくは異なる径のケーブルに対応するように、切り欠き溝はテーパー状に形成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明にかかるケーブル固定装置は、さらに好ましくはケーブル止めピースが、合成樹脂で形成されることを特徴とする。
【0026】
また、本発明にかかるG−PON装置は、上述のいずれかに記載のケーブル固定装置を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明にかかる光ケーブル固定方法は、光ケーブルをケーブル止めピースに緩嵌する工程と、ケーブル止めピースを台座に配置する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、光特性等を劣化させることなく、簡易な構造でより確実にケーブルを固定できるケーブル固定装置とそれを用いた光ケーブル固定方法と等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)がケーブル固定装置を説明する平面図であり、(b)がケーブル固定装置を説明する左側面図であり、(c)がケーブル固定装置を説明する右側面図であり、(d)がケーブル固定装置を説明する正面図である。
【図2】径が比較的太いケーブルに対して適用する場合のケーブル固定装置を説明する図である。
【図3】径が比較的細いケーブルに対して適用する場合のケーブル固定装置を説明する図である。
【図4】ケーブル止めピースの構造概要を説明する斜視図である。
【図5】ケーブル止めピースを説明する概念図である。
【図6】ケーブル止めピースの圧接挟持面を説明する概要図である。
【図7】台座を説明する斜視図である。
【図8】(a)が台座を説明する平面図であり、(b)が台座を説明する左側面図であり、(c)が台座を説明する右側面図であり、(d)が台座を説明する正面図である。
【図9】第二の実施形態にかかるケーブル止めピースのバリエーションを例示する説明図である。
【図10】第三の実施形態にかかるG−PON装置を概念的に説明する斜視図である。
【図11】第三の実施形態にかかるG−PON装置のカバーを外した状態を概念的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施形態で説明するケーブル固定装置は、自然状態においてケーブルを緩やかに挟み込むケーブル止めピースと、ケーブル止めピースを保持する台座とを備える。台座はケーブルが引っ張られた場合にケーブル止めピースを押圧し、押圧されたケーブル止めピースが、ケーブルをより強く挟み込んで、引っ張り方向にケーブルが抜けないように固定する。
【0031】
ケーブル止めピースは、平面視において略ひし形のフレーム形状であって、対角線(好ましくは長手方向)の端点に位置する二つの対角(好ましくは鋭角)において、各々不連続である。また、他方の対角線(好ましくは短手方向)の端点に位置する二つの対角(好ましくは鈍角)を結ぶように、中央フレームが設けられる。
【0032】
また、ケーブル止めピースは、対角線(好ましくは長手方向)上にケーブルを配置する。すなわち、ケーブル止めピースの好ましくは鋭角を形成する二つの辺縁部間に、鋭角を分割するように、ケーブルを緩嵌する。このため、好ましくは鋭角を形成する二つの辺は、辺縁部で不連続である。
【0033】
また、台座は、ケーブル止めピースを嵌め込むように内側に保持し、ひし形のケーブル止めピースの四辺の各々所望の位置を、押圧可能な凸状に湾曲した四つの内壁を有する。そして、凸状に湾曲した内壁は、ケーブルが引っ張られた場合に、引っ張られた側のケーブル止めピースの二つの辺を外側から内側に押圧する。
【0034】
これにより、ケーブル止めピースの押圧された二つの辺の間に緩嵌されるケーブルは、より強く圧接挟持されることとなり、引き抜かれないように固定されることとなる。実施形態で例示するケーブル固定装置は、自然状態においてはケーブルに対して過度な締め付けを生じず、ケーブルが引っ張られた場合に引っ張る力に対応してケーブルを圧接挟持する。
【0035】
このため、実施形態で例示するケーブル固定装置は、ケーブルに対して歪みや屈曲を生じさせる懸念が低減され、ケーブルの特性劣化を引き起こすことなく光や電気等の伝送品質を向上させるとともに、ケーブルの耐久性を向上させることができる。
【0036】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態にかかるケーブル固定装置1000を説明する概念図である。図1(a)がケーブル固定装置1000を説明する平面図であり、図1(b)がケーブル固定装置1000を説明する左側面図であり、図1(c)がケーブル固定装置1000を説明する右側面図であり、図1(d)がケーブル固定装置1000を説明する正面図である。ケーブル固定装置1000の背面図は、正面図と同一であるので記載を省略する。また、左側面図と右側面図とは、平面図に対応させた向きで記載している。
【0037】
図1に示すように、ケーブル固定装置1000は、平面視において略ひし形のケーブル止めピース100と、ケーブル止めピース100を内部に保持する台座200と、台座200の蓋体400とを備える。蓋体400は、ネジ等の締結部材410で台座200に固定される。
【0038】
図1においては蓋体400を備えるケーブル固定装置1000を示しているが、蓋体400に替えて台座200がケーブル止めピース100が飛び出ないように押さえる不図示の押さえピン等を備えてもよく、蓋体400は備えなくてもよい。また、ケーブル固定装置1000は、比較的軽くて高い強度を有する合成樹脂等で形成されてもよい。
【0039】
図1において、ケーブル300は、ケーブル止めピース100の好ましくは長手対角上に緩く挟み込むように配設される。このような自然状態においては、ケーブル300は、軸方向への引き抜く力に抗するような圧接保持力は付与されておらず、ケーブルの歪みや屈曲等は実質的に生じない。
【0040】
また、図1においては、ケーブル300が、ケーブル止めピース100の長手対角上に配設される例を示したが、これに限定されることはなく、ケーブル300が、ケーブル止めピース100の短手対角上に配設される構成としてもよい。ケーブル300が、ケーブル止めピース100の長手対角上に配設されたほうが、ケーブル300の保持固定機能がスムースに発揮されるのでより好ましい。
【0041】
図2は、径が比較的太いケーブル300を配設する場合のケーブル固定装置1000を説明する図である。図2から理解されるように、径が比較的太いケーブル300に対応して、ケーブル止めピース100のケーブル300を挟む一対の辺の間隔がやや広がり、ケーブル止めピース100がケーブル300を緩嵌する。また、台座200には、締結部材410に対応する締結孔420が設けられる。
【0042】
また、図3は、径が比較的細いケーブル300を配設する場合のケーブル固定装置1000を説明する図である。図3から理解されるように、径が比較的細いケーブル300に対応して、ケーブル止めピース100のケーブル300を挟む一対の辺の間隔がやや狭まり、ケーブル止めピース100がケーブル300を緩嵌する。図2と図3とにおいては、図1に対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に、図4乃至図6を用いてケーブル止めピース100について詳細に説明する。図4は、ケーブル止めピース100の構造概要を説明する斜視図である。図4(a)がケーブル300を配設しない状態のケーブル止めピース100を説明する斜視図であり、図4(b)がケーブル300を配設した状態のケーブル止めピース100を説明する斜視図である。
【0044】
また、図5は、ケーブル止めピース100を説明する概念図である。また、図6は、ケーブル止めピース100の圧接挟持面115を説明する概要図である。図4乃至図6においても、図1乃至図3と同一の部位には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、ケーブル止めピース100は、略ひし形を形成する四つの辺110(1),110(2),110(3),110(4)(以下、適宜四辺110と総称する)と、ケーブル300に直角方向の対角線に位置する中央フレーム120とを備える。
【0046】
図4に示すような空間部分を多く有するフレーム形状のケーブル止めピース100とすることで、放熱特性に優れたケーブル固定装置1000とできる。すなわち、ケーブル固定装置1000が回路基板等他の電子部品等が複数備えられるような電子機器等に用いられる場合においても、ケーブル固定装置1000の空隙により冷却空気の流れを確保できるので、他の電子部品等の放熱を阻害することがない。
【0047】
また、四辺110は、ケーブル300の配置位置に対応して不連続に形成される。すなわち図4において、辺110(1)と辺110(2)との間は不連続であって、辺110(3)と辺110(4)との間は不連続である。また、不連続とされた四辺110の各端面には、ケーブル300に対して所定の面積で当接可能な圧接挟持面115を備える。
【0048】
また、図6において詳細に示すように、ケーブル300を緩嵌する辺110(1)の圧接挟持面115(1)は、ケーブル300との間で滑りを防止するように、鋸波形状とされることが好ましい。同様に、ケーブル300を緩嵌する辺110(3)の圧接挟持面115(3)も、ケーブル300との間で滑りを防止するように、鋸波形状とされることが好ましい。また、図6において、辺110(2),110(4)の圧接挟持面115(2),115(4)も、鋸波形状であることが好ましい。
【0049】
四辺110の各圧接挟持面115(1),115(2),115(3),115(4)(適宜圧接挟持面115と総称する)を鋸波形状とすることで、ケーブル300が引っ張られた場合の保持固定力をより増大させることが可能となる。一方、中央フレーム120の略中央部分には、ケーブル300が配置される切り欠き溝125が設けられる。
【0050】
切り欠き溝125の内壁は、種々の太さのケーブル300に対応可能なように、シリコーンゴムを典型例とする柔軟な弾性材で形成されてもよい。切り欠き溝125の内壁を柔軟な弾性材で形成すると、ケーブル300の太さに対応して溝径を比較的小さな力で増大させることができるので、ケーブル300を不要に圧迫することがなく好ましい。また、切り欠き溝125は、深さに応じて径が細くなるすり鉢状のテーパー形状としてもよい。
【0051】
いずれの場合においても、中央フレーム120の切り欠き溝125は、ケーブル300を比較的緩く容易に配設できれば充分であって、不要にまたは過度にケーブル300を圧接することは好ましくない。すなわち、切り欠き溝125は、ケーブル300が引っ張られた場合に、これに抗して固定保持する力をケーブル300に対して付与する必要はない。
【0052】
ケーブル300を比較的緩く配設する典型例としては、例えば切り欠き溝125に配設されたケーブル300を軸方向に動かした場合に、自然状態のケーブル止めピース100がケーブル300と共に軸方向に動く程度で充分であるといえる。
【0053】
また、ケーブル止めピース100にケーブル300を配設した自然状態で、四辺110の各圧接挟持面115がケーブル300を緩く保持し、ケーブル300を軸方向に動かした場合にケーブル止めピース100がケーブル300と共に軸方向に動く程度である場合には、切り欠き溝125はケーブル300の配置をガイドするだけでもよい。
【0054】
換言すれば、ケーブル300をケーブル止めピース100に配置した自然状態においては、ケーブル300とケーブル止めピース100とは、ケーブル止めピース100がケーブル300の軸方向の動きに対応して共に動く程度の係合関係を両者の間に有すれば充分であり、それ以上の固定保持関係を自然状態で有していなくてよい。
【0055】
また、ケーブル300が例えば図6における左方向に引っ張られた場合には、辺110(1),110(2)が、台座200の内壁から押圧され、圧接挟持面115(1)と圧接挟持面115(2)とが、ケーブル300を押圧力に対応する力で圧接挟持する。
【0056】
この場合に例えば、ケーブル300が比較的強い力で引っ張られた場合には、辺110(1),110(2)が、台座200の内壁から比較的強い力で押圧され、圧接挟持面115(1)と圧接挟持面115(2)とが、ケーブル300を比較的強い力で圧接挟持する。
【0057】
また、ケーブル300が比較的弱い力で引っ張られた場合には、辺110(1),110(2)が、台座200の内壁から比較的弱い力で押圧され、圧接挟持面115(1)と圧接挟持面115(2)とが、ケーブル300を比較的弱い力で圧接挟持する。
【0058】
一方、ケーブル300が例えば図6における右方向に引っ張られた場合には、辺110(3),110(4)が、台座200の内壁から押圧され、圧接挟持面115(3)と圧接挟持面115(4)とが、ケーブル300を押圧力に対応する力で圧接挟持する。
【0059】
この場合に例えば、ケーブル300が比較的強い力で引っ張られた場合には、辺110(3),110(4)が、台座200の内壁から比較的強い力で押圧され、圧接挟持面115(3)と圧接挟持面115(4)とが、ケーブル300を比較的強い力で圧接挟持する。
【0060】
また、ケーブル300が比較的弱い力で引っ張られた場合には、辺110(3),110(4)が、台座200の内壁から比較的弱い力で押圧され、圧接挟持面115(3)と圧接挟持面115(4)とが、ケーブル300を比較的弱い力で圧接挟持する。
【0061】
そして、ケーブル300が引っ張られていない自然状態においては、各圧接挟持面115は、ケーブル300に対して引っ張り力に抗する程度の実質的な固定保持力を何ら付与しない。
【0062】
また、ケーブル300が引っ張られていない自然状態においては、ケーブル止めピース100が台座の内壁200から押圧開始されて圧接挟持面115がケーブル300の圧接挟持を増大させケーブル300を固定開始することが可能な程度の係合関係を、ケーブル止めピース100とケーブル300との間に有することが好ましい。
【0063】
ケーブル300が引っ張られていない自然状態において、ケーブル止めピース100とケーブル300との間の係合関係が弱すぎると、ケーブル止めピース100が台座200の内壁から、ケーブル300を固定保持できる程度に押圧される前に、ケーブル300が引き抜かれてしまうことが懸念される。
【0064】
従って、ケーブル300が引っ張られていない自然状態において、ケーブル止めピース100とケーブル300との間の係合関係は、ケーブル300が引き抜かれない程度に、ケーブル止めピース100が台座200の内壁から押圧開始されることが可能な程度とする。
【0065】
ケーブル止めピース100が台座200の内壁から充分に押圧されている状態においては、圧接挟持面115がケーブル300を充分に圧接挟持しているので、自然状態におけるケーブル止めピース100とケーブル300との間の係合関係は実質的に無視できる程度であるとも考えられる。
【0066】
このように、ケーブル固定装置1000は、ケーブル300が引っ張られた時に、引っ張り力に応じた必要な固定保持力をケーブル300に付与し、自然状態においては、ケーブル300に不要な締め付け等を付与しないので、ケーブル300の伝送品質が向上し耐久性も向上する。
【0067】
図7は、台座200を説明する斜視図である。また、図8は、台座200を説明する概念図である。図8(a)が台座を説明する平面図であり、図8(b)が台座を説明する左側面図であり、図8(c)が台座を説明する右側面図であり、図8(d)が台座を説明する正面図である。図7と図8とにおいては、図1乃至図3と同一の部位には同一の符号を付している。また、背面図は、正面図と同一であるので記載を省略する。
【0068】
図7と図8とに示すように、台座200は、その中央部分にケーブル止めピース100が配置されるスペース280を備える。スペース280は、凸状に湾曲した四つの内壁210(1),210(2),210(3),210(4)(以下、適宜内壁210と総称する)を備える。これにより、内壁210とケーブル止めピース100の四辺110とは、ケーブル300が引っ張られた場合に、各々点または線で当接することとなる。
【0069】
各内壁210は、四辺110に各々対応して形成されており、ケーブル300が引っ張られた場合に、四辺110のうち引っ張り方向に対応する二つの辺を押圧する。また、内壁210(1)と内壁210(2)とは、ケーブル止めピース100が台座200から抜脱しない程度に、ケーブル300の出入口が狭められている。同様に、内壁210(3)と内壁210(4)とは、ケーブル止めピース100が台座200から抜脱しない程度に、ケーブル300の出入口が狭められている。
【0070】
凸状に湾曲した四つの内壁210の湾曲形状を適宜調整することで、四辺110に対する押圧箇所を調整することが可能である。また、四辺110に対する押圧箇所が、好ましくはケーブル300を引っ張る力に拘わらず、対向する一対の圧接挟持面115(圧接挟持面115(1)と圧接挟持面115(2)、または圧接挟持面115(3)と圧接挟持面115(4))が平行となるように、内壁210の湾曲形状を適宜調整する。
【0071】
これにより、ケーブル300に対して局所的に大きな固定保持応力が加わることを抑制でき、一定の面積を有するケーブル300の外皮に対して、圧接挟持面115に対応して比較的広範囲に固定保持力が加えられることとなる。従って、ケーブル300の局所的な損傷を抑止できるとともに、特性劣化が生じる懸念を低減できる。
【0072】
また、強い引っ張り力がケーブル300に加えられた場合には、四辺110のうちの対応する一対の二辺に加えられる押圧力も大きくなるので、ケーブル止めピース100が多少変形することも想定される。このような場合においても、凸状に湾曲した四つの内壁210によって、ケーブル止めピース100の四辺110の適切な箇所に適切な押圧力が適切な向きに加えられることとなるので、ケーブル300を適切に固定保持するケーブル固定装置1000とできる。
【0073】
このように、ケーブル300を引っ張る力の強弱に拘わらず、対向する一対の圧接挟持面115が平行であれば、ケーブル300は、各圧接挟持面115全体で固定されることとなるので、より強い固定保持が可能となるとともに、ケーブル300の局所的な損傷や劣化等を低減可能となるので好ましい。
【0074】
なお、四辺110に対する適切な押圧箇所については、ケーブル止めピース100の材質の強度や形状、しなり変形具合等に応じて、内壁210の湾曲形状を適宜調整することで、適宜調整してもよい。
【0075】
ケーブル固定装置1000は、典型的には光ケーブルの引き抜き防止に用いることができ、自然状態では光の伝送品質を劣化させることなく、かつ光ケーブルの外皮等を損傷することがない高い耐久性、高い信頼性の引き抜き防止状態を提供する。また、ケーブル固定装置1000は、光ケーブルに何らかの引っ張り力が加えられた場合にのみ、光ケーブルの引き抜き防止に必要な程度の固定保持力を光ケーブルに付与することができる。
【0076】
(第二の実施形態)
図9は、第二の実施形態にかかるケーブル止めピース8100,9100のバリエーションを例示する説明図である。図9に示すケーブル止めピース8100,9100においては、第一の実施形態と同一の台座200等を用いることができる。
【0077】
図9(a)においては、ケーブル止めピース8100は、辺8110(1)、辺8110(2)、辺8110(3)、辺8110(4)が、各々板状に形成されている。これにより、ケーブル止めピース8100は強度が増大するので、台座200から押圧された場合でも、撓みが少なく、確実かつ強固にケーブル300を固定することができるので好ましい。
【0078】
また、図9(b)においては、ケーブル止めピース9100は、辺9110(1)、辺9110(2)、辺9110(3)、辺9110(4)が、各々中抜き板状に形成されている。これにより、ケーブル止めピース9100は強度の増大と放熱特性の向上とを高次元で両立できるので、台座200から押圧された場合でも、撓みが少なく確実かつ強固にケーブル300を固定するとともに、周辺の電子機器等の放熱性を高く保つことができるので好ましい。
【0079】
その余の点については、上述した第一の実施形態と同じであるので、説明の重複を避けるためにここでは説明を省略する。
【0080】
(第三の実施形態)
図10は、第三の実施形態にかかるG−PON装置2000を概念的に説明する斜視図である。また、図11は、第三の実施形態にかかるG−PON装置2000のカバー2400を外した状態を概念的に説明する平面図である。
【0081】
図10と図11とにおいて、G−PON装置2000は、本体2200とカバー2400とを備える。また、G−PON装置2000は、上述した各実施形態で説明したケーブル固定装置1000を備える。また、図11には、外部電源ケーブル2300を示す。
【0082】
また、図10と図11とに示すように、電気信号と光信号とを媒介するG−PON装置2000は、多数の他の電子部品等が高密度に実装されている。このため、G−PON装置2000に搭載されるケーブル固定装置1000は、可能な限り空間部を多く有して高い放熱特性を有することが好ましい。
【0083】
G−PON装置2000は、光を伝送するケーブル300が外部から引っ張られた場合でも、ケーブル固定装置1000が効果的かつ安全・確実にケーブル300を固定保持するので、G−PON装置2000内部に引っ張り応力が伝達されて、他の部品や特性に悪影響を与える懸念を低減することができる。
【0084】
また、図10と図11とにおいてケーブル固定装置1000は、自然状態においては、光を伝送するケーブル300に締め付け力を付与することがないので、ケーブル300の湾曲や屈曲や圧迫等が生じず、光の伝送等を劣化させることがなく、高信頼性なG−PON装置2000を実現して製品寿命を延ばすことができる。
【0085】
また、ケーブル固定装置1000は、光を伝達するケーブル300の径が異なる場合においても、柔軟に対応することが可能である。
【0086】
また、ケーブル固定装置1000は、軽量かつ安価、簡単な構造で少ない部品点数で容易に作成できるので、G−PON装置2000のコスト低減に資するとともに汎用性にも優れている。
【0087】
また、ケーブル300にケーブル止めピース100を仮止めした後に、ケーブル止めピース100を台座200に嵌め込みながら位置調整することができるので、G−PON装置2000の本体2200の外部での作業とすることで、取り付け作業が容易かつ簡単である。例えば、本体2200内でのネジ止め作業等は不要である。
【0088】
また、上述した各実施形態において、ケーブル固定装置1000は、ケーブル300(典型的には光ファイバーケーブル)の外皮に対して対称かつ比較的均一に保持固定応力をかけることができるので、安定した保持固定が可能となる。
【0089】
また、ケーブル固定装置1000は、ケーブル300を引けば引くほどケーブル300を締め付けるので、経年変化や振動等により締結部材が緩むこと等引き抜き防止効果の低減要因が少ない。このため、ケーブル固定装置1000は、厳しい環境下や設置後の年数が経過した場合でも、ケーブル300が引き抜かれる懸念が低減されるので好ましい。
【0090】
上述した各実施形態で説明したケーブル固定装置1000等は、各実施形態での説明に限定されることはなく、自明な範囲で任意にその構成や材質、形状・構造・組み合わせ等を変更して用いることができる。また、ケーブル固定装置1000は、いずれか一方からの引き抜きにのみ対応し、その引き抜きを抑止するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、G−PON装置や光ケーブルコネクタや外部ケーブルを有する電子機器等一般に幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0092】
100・・ケーブル止めピース、115・・圧接挟持面、120・・中央フレーム、125・・切り欠き溝、200・・台座、300・・ケーブル、1000・・ケーブル固定装置、2000・・G−PON装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が略ひし形であって、前記略ひし形の対角線にケーブルを緩嵌するケーブル止めピースと、
前記ケーブル止めピースを保持するとともに、前記ケーブルが引っ張られた場合に、前記ケーブル止めピースが前記ケーブルを圧接挟持するように、前記ケーブル止めピースにおける前記引っ張られた側の一対の辺を押圧する台座と、を備える
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル固定装置において、
前記ケーブルが引っ張られる力の強度に対応して前記ケーブル止めピースが前記ケーブルを圧接する力が変動するように、
前記ケーブルが引っ張られる力の強度に対応して前記台座が前記ケーブル止めピースを押圧する力が変動する
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のケーブル固定装置において、
前記ケーブルを緩嵌する前記ケーブル止めピースの対角線は長手方向の対角線であり、
前記ケーブルが引っ張られた場合に、
前記ケーブル止めピースが前記ケーブルとともに、引っ張られた方向へ移動しようとすることにより、固定された前記台座の内壁から前記ケーブル止めピースの前記一対の辺が、各々押圧される
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
前記ケーブルがいずれの方向に引っ張られた場合でも、前記ケーブル止めピースが前記ケーブルを圧接挟持するように、前記台座は、前記ケーブル方向において対象な内壁を備える
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
自然状態において、前記台座は前記ケーブル止めピースを押圧しない
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
前記ケーブルが引っ張られた場合に前記ケーブルを圧接挟持する前記ケーブル止めピースの圧接挟持面は、鋸波形状である
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
前記台座の内壁は凸状に湾曲しており、
前記ケーブルが引っ張られた場合に、前記ケーブル止めピースの前記一対の辺は、前記台座の内壁と各々点または線で接触して押圧される
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のケーブル固定装置において、
前記台座の湾曲形状の内壁は、
前記ケーブルが引っ張られる力の強度が変動した場合でも前記ケーブルを圧接挟持する前記ケーブル止めピースの一対の圧接挟持面が平行状態となるように、前記ケーブル止めピースの所望の箇所を押圧する
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
前記ケーブル止めピースは、平面視において、略ひし形の各辺を構成する四つの直線フレームと、前記ケーブルに垂直な対角線に位置する中央フレームと、を備えるフレーム形状である
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項10】
請求項9に記載のケーブル固定装置において、
前記中央フレームは、前記ケーブルを配設する切り欠き溝を備える
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項11】
請求項10に記載のケーブル固定装置において、
異なる径の前記ケーブルに対応するように、前記切り欠き溝は弾性材で形成される
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項12】
請求項11に記載のケーブル固定装置において、
前記弾性材はシリコーン樹脂である
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
異なる径の前記ケーブルに対応するように、前記切り欠き溝はテーパー状に形成される
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のケーブル固定装置において、
前記ケーブル止めピースは、合成樹脂で形成される
ことを特徴とするケーブル固定装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載のケーブル固定装置を備える
ことを特徴とするG−PON装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載のケーブル固定装置を用いた光ケーブル固定方法であって、
光ケーブルを前記ケーブル止めピースに緩嵌する工程と、
前記ケーブル止めピースを前記台座に配置する工程と、を有する
ことを特徴とする光ケーブル固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−166997(P2011−166997A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28854(P2010−28854)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】