ケーブル固定部材及びケーブル固定構造
【課題】ケーブルを強固に保持固定することができ、しかもケーブルに対する取付位置を容易に位置決めすることができるケーブル固定部材及びケーブル固定構造を提供する。
【解決手段】ケーブル固定部材は、ケーブル30に加締められて締結される中間部材3と、中間部材3が締結された1つ又は複数のケーブル30を中間部材3を介して挟み込んで把持する一対のブラケット部材1,1と、ケーブル30を挟み込む一対のブラケット部材1,1の対向面4に形成され、中間部材3を介してケーブル30を挟み込む1つ又は複数の溝5と、中間部材3に設けられた切欠き部11と、切欠き部11に挿入される、ブラケット部材1に設けられた突起部10と、を備える。
【解決手段】ケーブル固定部材は、ケーブル30に加締められて締結される中間部材3と、中間部材3が締結された1つ又は複数のケーブル30を中間部材3を介して挟み込んで把持する一対のブラケット部材1,1と、ケーブル30を挟み込む一対のブラケット部材1,1の対向面4に形成され、中間部材3を介してケーブル30を挟み込む1つ又は複数の溝5と、中間部材3に設けられた切欠き部11と、切欠き部11に挿入される、ブラケット部材1に設けられた突起部10と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを車体などに固定するためのケーブル固定部材及びケーブル固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブル・電線等(以下、単に「ケーブル」ともいう)を配線・敷設する際、例えば、自動車のサスペンション下方(以下、「車両バネ下」という)に配線する際には、タイヤやその他部品とケーブルとの接触を防止するために、配線するケーブルの中間部を保持して車体側に固定する。ケーブルの固定手段には、一般的に金属クランプが用いられる。金属クランプは、ケーブル外周を両側から金属部品で挟み込み、このケーブルを挟んだ金属部品をねじ等を用いて車体などに固定してケーブルを保持するものである。
【0003】
従来の金属クランプの一例として、車輪のホイール内に内蔵したインホイールモータに電力を供給するための電線を保持する電線保持装置において、電線の軸線方向の移動は規制するが、回転は許容するクランプが提案されている(特許文献1参照)。このクランプは、電線の外周に嵌められて接着剤などで取り付けられた緩衝筒部材をクランプ本体部品で両側から挟み込むと共に、緩衝筒部材とクランプ本体部品との間にベアリング構造を設けて、電線を回転自在に支持する構造となっている。このクランプでは、電線の回転を許容することによって、車輪の上下動に伴う電線の繰り返し曲げによる折れの抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−276738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の金属クランプでは、ケーブルを把持固定する力が小さいため、ケーブルが設計固定部から外れて断線等が発生する可能性がある。特に、車両バネ下などに用いられる場合には、ケーブルに泥や雪等の異物が付着した状態でケーブルが屈曲あるいは振動するため、ケーブルに過大な引張り力が加わり、ケーブルを固定するクランプ部分の固定把持力が小さいと、ケーブルが移動して周囲部品と接触し、ケーブルが傷ついて断線する可能性が大きくなる。
また、ケーブルを金属部品で挟んでクランプした際、ケーブルを挟み込む力が不均一になり易く、金属クランプとケーブルの位置関係が設計値と異なってくる。このため、ケーブルに局部的に想定外の大きな力が加わり、ケーブル設計レイアウト位置がずれてしまい、結果として断線等のトラブルが発生する可能性がある。
【0006】
上記特許文献1のクランプでも、電線の外周に接着剤などで緩衝筒部材を取り付けた構造なので、固定把持力が小さく、電線に大きな力が加わったときに電線を確実に固定するのは困難となる。また、特許文献1のクランプでは、ベアリング構造で電線の回転(捩れ)を許容しているが、電線の捩れは車輪上下動に伴って偶発的に予想不可能な態様で発生し、その結果、周囲部品と電線が接触したり、あるいは予想以上の歪が電線に発生したりして、断線に至る可能性がある。また、捩れを伴うケーブルの動きは非常に複雑となるため、ケーブルの捩れを加味したケーブルレイアウトを事前に予測して設計するのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、ケーブルを強固に保持固定することができ、しかもケーブルに対する取付位置を容易に位置決めすることができるケーブル固定部材及びケーブル固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、ケーブルに加締められて締結される中間部材と、前記中間部材が締結された1つ又は複数の前記ケーブルを前記中間部材を介して挟み込んで把持する一対のブラケット部材と、前記ケーブルを挟み込む一対の前記ブラケット部材の対向面に形成され、前記中間部材を介して前記ケーブルを挟み込む1つ又は複数の溝と、前記中間部材に設けられた切欠き部と、前記切欠き部に挿入される、前記ブラケット部材に設けられた突起部と、を備えるケーブル固定部材である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様のケーブル固定部材において、前記中間部材は、前記ケーブルが挿通され、加締められて前記ケーブルに締結される筒部と、前記筒部の両端部に前記ケーブルの径方向に突出して形成され、前記ケーブルを把持する一対の前記ブラケット部材の前記ケーブルの軸方向への移動を阻止するストッパー部とを有する。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様のケーブル固定部材において、前記溝の内面形状が、前記ケーブルに加締められて締結される前記中間部材の外面形状と噛み合う形状となっている。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様のケーブル固定部材において、1つ又は複数の前記ケーブルを挟み込んだ、一対の前記ブラケット部材を締め付ける締付部材を備える。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかのケーブル固定部材を用いて、外周部に補強編組を有するケーブルをケーブル取付固定部材に固定したケーブル固定構造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケーブルを強固に保持固定することができ、しかもケーブルに対する取付位置を容易に位置決めすることができるケーブル固定部材及びケーブル固定構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材を用いてケーブルを固定する手順の一つを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材を用いてケーブルを固定する手順の一つを示す図である。
【図5】図4の一部を拡大して示すもので、(a)は図4のA−A拡大断面図、(b)は図4のB−B拡大断面図、(c)は図4のC−C拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るケーブル固定構造で用いられるケーブルの横断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るケーブル固定部材を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブルに加締められて締結された状態を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材の対向面側をそれぞれ示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材がケーブルに固定された状態の断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブルに加締められて締結された状態を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材におけるブラケット部材の対向面側を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材がケーブルに固定された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るケーブル固定部材及びケーブル固定構造の一実施形態を説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。また、図2は、第1の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材を示す正面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の一対のブラケット部材1,1は、3本のケーブルを把持して車体等に固定するために用いられるもので、ブラケット部材1の対向面4には、ケーブルを挟んで把持する3列の溝5が形成されている。溝5の横断面は、円形状断面のケーブルに対応して、半円形状であり、ケーブルの外周を一対のブラケット部材1,1の溝5,5で両側から挟んで把持する。3列の溝5はブラケット部材1の幅方向に平行に形成されている。図1は、一対のブラケット部材1,1が嵌め合わされ、双方の対向面4,4が密接された状態を示しており、対向する溝5,5間には、ケーブル(実際には中間部材3(図2参照)が加締められて締結された部分のケーブル)を収容し把持固定する把持孔6が形成される。
【0018】
ブラケット部材1の溝5の方向とは直交する方向(ケーブル整列方向)の両端部は、車体等のケーブル取付固定部材にケーブルを取り付けるための取付部14,14となっている。取付部14には、一対のブラケット部材1,1の対向面4,4を密接させる方向に締め付けると共に、車体等のケーブル取付固定部材40にブラケット部材1,1を取付固定する締付部材としてのボルト7(図4、図5参照)が設けられる。取付部14にはボルト7を挿通するための挿通孔15が形成されている。挿通孔15は、ブラケット部材1,1の幅方向(溝5の方向)に2つ並んで設けられている。取付部14は平板状であり、溝5が形成されたブラケット部材1の中央部は、取付部14よりも肉厚に形成されている。
【0019】
一対のブラケット部材1,1のうち、一方のブラケット部材1には、突起部10が設けられている。突起部10は、例えば図示のような角柱状であって、ブラケット部材1の幅方向(溝5の方向)の一方の側面に、各溝5の外周側に且つ各溝5に臨むように形成されている。
【0020】
本実施形態における中間部材3は金属製であって、図2に示すように、ケーブルが挿入される挿入孔12を有し、加締められることによってケーブルに締結される筒部8と、筒部8の両端部にフランジ状に径方向に突出して形成されるストッパー部(突起部)9とを備える。ストッパー部9,9間の長さは、溝5方向のブラケット部材1,1の幅と同じに設定されている。従って、ケーブル30に締結された筒部8を一対のブラケット部材1,1で挟み込んだときに、ブラケット部材1,1の側面と中間部材3のストッパー部9とが
接する状態となる。
【0021】
ただし、突起部10は、ブラケット部材1の側面から溝5の方向に突出して形成されており、この突起部10が挿入される切欠き部(切欠き溝)11が、中間部材3のストッパー部9に形成されている。この突起部10と切欠き部11とが嵌合することによって、ケーブルに対するブラケット部材1の取付位置・固定位置、特にケーブルの周方向に対するブラケット部材1の取付角度・固定角度が定まることになる。
【0022】
次に、本実施形態のケーブル固定部材によって、ケーブル取付固定部材にケーブルを取付固定する手順を図3〜図5を用いて説明する。図3、図4は取付固定する手順を示す図であり、図5(a)は図4のA−A拡大断面図、図5(b)は図4のB−B拡大断面図、図5(c)は図4のC−C拡大断面図である。
【0023】
まず、図3に示すように、本実施形態のケーブル固定部材によって一括して把持固定する3本のケーブル30のそれぞれに、中間部材3を所定の位置に装着した後、加締工具(図示せず)を用いて、中間部材3の筒部8を加締め、ケーブル30に中間部材3を締結する。図示例では、筒部8の2箇所に窪んで形成された環状の加締め部8aが形成されている。
【0024】
次いで、図4に示すように、一対のブラケット部材1,1の3つの対向する溝5,5間に、3本のケーブル30外周にそれぞれ締結された中間部材3の筒部8を両側から挟み込む。このとき、ストッパー部9の切欠き部11にブラケット部材1の突起部10を合わせ、切欠き部11に突起部10を挿入することで、ケーブル30の周方向に対してブラケット部材1,1を設計した取付角度・固定角度で容易に設置することができる。
【0025】
その後、ケーブル30に位置決めされたブラケット部材1,1の対向する挿通孔15,15に、図4に示すように、ボルト7を挿入し、更に、図5(a)に示すように、ボルト7を車体等のケーブル取付固定部材40に締め付けて固定する。これにより、ブラケット部材1,1はケーブル取付固定部材40に固定されると共に、ブラケット部材1,1の対向面4,4は密接ないし近接した状態となり、ブラケット部材1,1の対向する溝5,5間にはそれぞれ中間部材3を介してケーブル30が把持固定される。このとき、図5(c)に示すように、ブラケット部材1,1の両側面は中間部材3のストッパー部9,9に接した状態にあり、ブラケット部材1,1のケーブル30の軸方向への移動は、筒部8の両端部のストッパー部9,9によって阻止されることになる。また、ブラケット部材1,1で筒部8を把持することにより、溝5と筒部8とが接触する面の摩擦によりケーブル30の回転(捩れ)が抑止されるが、更に、図5(b)、(c)に示すように、ブラケット部材1の突起部10がストッパー部9の切欠き部11に挿入され嵌合されることで、ケーブル30の回転(捩れ)を抑止ないし阻止することができる。
【0026】
図6に、車体等に保持固定されるケーブル30の一実施形態の横断面図を示す。図6に示すように、ケーブル30の断面は円形状であって、中心部に複数本の撚り合わされた導体31を有し、これら導体31の外周は、絶縁体32、シールド33、補強編組34、およびシース35で順次、同心円状に被覆されている。補強編組34は、樹脂、金属などの繊維状材料を編んだものである。ケーブル30の外周部に補強編組34を有するので、中間部材3の筒部8を加締めた時に、筒部8の加締め部8aがケーブル30内に効果的に入り込んで、中間部材3がケーブル30に強く固定されると共に、加締め等による補強編組34内部のケーブル構造(導体31、絶縁体32、シールド33)への悪影響を抑制できる。
【0027】
なお、本発明が適用されるケーブルは、上記実施形態の図6に示すケーブル30に限ら
れるものではなく、本発明のケーブルは、電線などを含むものである。具体的には、本発明のケーブルには、電力を供給する電力線を有するケーブル、信号を伝送する信号線を有するケーブル、電力線及び信号線を有するケーブルなどが含まれる。また、本発明は、自動車用のケーブルには限られず、激しい振動等を受ける環境下で使用されるケーブルに好適に用いることができる。
更に、上記実施形態のブラケット部材1は、3本のケーブル30を把持固定するものであるが、1本、或いは3本以外の複数本の溝を有するブラケット部材でも勿論構わない。但し、複数本のケーブルをレイアウトするような場合、複数本のケーブルを、複数本用のブラケット部材で一括して把持固定するのが、作業性、固定箇所の確保などの観点から好ましい。
【0028】
なお、上記実施形態では、図1,図3に示すように、ブラケット部材1の幅方向の一方の側面側に突起部10が設けられていたが、図7に示すように、ブラケット部材1の幅方向の両側に突起部10を設けるようにしてもよい。この場合、ブラケット部材1の幅方向の両側の突起部10に対応して、図7に示すように、中間部材3の両側のストッパー部9に切欠き部11を設けるようにする。また、上記実施形態では、一対のブラケット部材1,1のうち、一方のブラケット部材1に突起部10を形成し、もう一方のブラケット部材1には突起部10を形成しなかったが、一対のブラケット部材1,1の両方にそれぞれ突起部10を形成してもよい。この場合、ストッパー部9に、例えば、ケーブル周方向に180度の配置で複数の切欠き部11を設けるようにする。
【0029】
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
(1)ブラケット部材1の突起部10と中間部材3の切欠き部11との嵌合によって、ケーブル30の周方向に対するブラケット部材1,1の取付角度、並びにケーブル30の軸方向に対するブラケット部材1,1の取付位置を、容易に且つ確実に決定することができる(このような位置決め構造・機構がなく、目測でブラケット部材の取付位置を決めてケーブルを挟み込んだ場合には、取付位置が若干ずれてしまう可能性がある)。したがって、ケーブル30を車体等に組み付ける精度も向上し、設計通りのケーブルレイアウトが可能となる。また、ブラケット部材1の突起部10が中間部材3の切欠き部11に挿入されるため、捩れ(回転)を伴うケーブル30の動きを阻止ないし抑制でき、その結果、周囲部品とケーブルが接触したりなどして、断線に至る可能性を低減できる。
(2)ケーブル30に中間部材3を加締めて強固に取り付け、この中間部材3を介してケーブル30をブラケット部材1,1で挟み込んで把持する構造なので、十分な把持力でケーブル30を固定できる。特に、中間部材3の筒部8の両端部にストッパー部9,9を設けているため、ケーブル30に過大な引張の力が加わっても、ストッパー部9で受け止めることができ、ケーブル30がずれることを極力防止することができる。殊に、車両バネ下に設けられるケーブルには泥や雪などの異物が付着し、異物が付着した状態のケーブルが屈曲あるいは振動することがあり、このときケーブルには過大な引張り力が発生するが、このような場合にも十分にケーブルを固定保持することが可能である。
(3)ケーブル30を中間部材3を介してブラケット部材1,1で挟み込んで把持する構造であるため、ケーブル30に対するブラケット部材1,1の把持力が中間部材3によって均一化されるので、ケーブル30に大きな力が働いてもケーブル固定部のケーブル30に想定外の力が局部的に加わることがなく、ケーブルレイアウト位置がずれることなく、結果として断線等のトラブルが発生することを防ぐことが可能である。
(4)ケーブル30に加締めて締結された中間部材3をブラケット部材1,1で挟み込んでケーブル30を把持するという簡易な構造であるため、品質面の信頼性が高く、また、複数本のケーブル30を一括して固定可能でありコストも抑えることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブル
に加締められて締結された状態を示す図である。また、図9(a)、((b)は、本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材の対向面側をそれぞれ示す図である。この第2の実施形態に係るケーブル固定部材も、3本のケーブルを把持して車体等に固定するために用いられるものであり、以下には上述した第1の実施形態に係るケーブル固定部材との相違点について主に説明する。
【0031】
本実施形態の中間部材3は、図8に示すように、上記第1の実施形態と同様に、筒部8とその両端部にはストッパー部9とを有する。ストッパー部9には切欠き部11が形成されている。中間部材3の筒部8は3箇所で加締められてケーブル30に取り付けられている。
【0032】
この3箇所に環状に窪んで形成された加締め部8aを有する筒部8の外面形状に対応させて、本実施形態の一対のブラケット部材21,21の溝5の内面形状は、筒部8の外面形状に噛み合うように形成されている。すなわち、図9(a),(b)に示すように、ブラケット部材21,21の溝5の内面には、溝5の周方向に沿う凸状部27が、環状に窪んで形成された加締め部8aに対応させて、溝5の方向に3箇所に形成されている。また、一対のブラケット部材21,21のうち、一方のブラケット部材21の側面には、図9(a)に示すように、前記ストッパー部9の切欠き部11に対応させて、突起部10が形成されている。
【0033】
ケーブル30に加締められて締結された中間部材3の筒部8を、一対のブラケット部材21,21の溝5、5間で挟んで把持すると、図10に示すように、溝5の凸状部27が筒部8の加締め部8a外面の凹状部分に噛み合う。本実施形態では、ストッパー部9の構造に加えて、溝5の凸状部27と加締め部8a外面の凹状部分との噛み合い構造によって、更に強力にケーブル30の軸方向の位置ずれを阻止することが可能となる。
【0034】
また、一対のブラケット部材21,21の溝5、5間で筒部8を挟む際に、ブラケット部材1の突起部10をストッパー部9の切欠き部11にを挿入することで、ケーブル30の周方向に対するブラケット部材21,21の取付角度・固定角度を容易に決定することができる。更に、ブラケット部材1の突起部10がストッパー部9の切欠き部11に挿入されることで、ケーブル30の回転(捩れ)を規制ないし阻止することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブルに加締められて締結された状態を示す図であり、図12は、本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材におけるブラケット部材の対向面側を示す図である。
【0036】
第3の実施形態の中間部材3は、上記第1,第2の実施形態におけるストッパー部9を省略した構造である。つまり、本実施形態の中間部材3は、図11に示すように、筒部8からなり、筒部8の中央部分が3箇所で加締められてケーブル30に締結されている。筒部8の両端部には、矩形状の切欠き部22がそれぞれ設けられている。筒部8の一端部の切欠き部22と他端部の切欠き部22は、ケーブル周方向に180度の配置で設けられている。
また、本実施形態の一対のブラケット部材21,21の溝5には、上記第2の実施形態と同様に、図12に示すように、溝5の周方向に沿う凸状部27が、環状に窪んで形成された加締め部8aに対応させて、溝5の方向に3箇所に形成されている。更に、一対のブラケット部材21,21の各溝5の一方の端部には、上記筒部8の切欠き部22に対応させて、突起部23が形成されている。
【0037】
ケーブル30に加締められて締結された筒部8を、一対のブラケット部材21,21の
溝5、5間で挟んで把持すると、図12に示すように、溝5の凸状部27が筒部8の加締め部8a外面の凹状部分に噛み合うことになる。すなわち、本実施形態では、凸状部27と加締め部8aとの噛み合い構造によって、ケーブル30の軸方向の位置ずれを阻止している。
【0038】
また、一対のブラケット部材21,21で筒部8を挟む際に、図12に示すように、筒部8の切欠き部22にブラケット部材1の突起部23を挿入することで、ケーブル30の周方向に対するブラケット部材21,21の取付角度・固定角度が決定される。更に、ブラケット部材1の突起部23が筒部8の切欠き部22に挿入されることで、ケーブル30の回転(捩れ)を規制ないし抑制することができる。
【0039】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態の中間部材3の切欠き部11,22は、溝状ないし切欠き状であったが、中間部材の切欠き部は、孔や段差状などであってもよい。また、中間部材の切欠き部をブラケット部材の突起部よりも大きく形成し、ブラケット部材の突起部の側面を中間部材の切欠き部の内面に当接することで、中間部材に対するブラケット部材の取付位置・取付角度を決定するようにしてもよい。
また、上記実施形態のブラケット部材1及び21において、取付部14,14の少なくとも一方をケーブルを把持する中央部分に対して屈曲して形成してもよい。取付部を屈曲させると、狭隘な箇所にケーブルを設置固定する際に設置スペースや作業性の観点から好適な場合がある。また、取付部を屈曲させる場合、ブラケット部材の強度向上のために、取付部を肉厚にしたり、ブラケット部材の対向面とは反対側の面にリブを設けたりするのがよい。
また、上記第1の実施形態では、図5(a)に示すように、ブラケット部材1の両側の取付部14,14をボルト7によりケーブル取付固定部材40に締め付けて固定したが、一方の取付部14はケーブル取付固定部材40に固定するのではなく、一対のブラケット部材1,1相互間を締め付けるだけとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ブラケット部材
3 中間部材
4 対向面
5 溝
7 ボルト(締付部材)
8 筒部
8a 加締め部
9 ストッパー部
10 突起部
11 切欠き部
14 取付部
15 挿通孔
21 ブラケット部材
22 切欠き部
23 突起部
27 凸状部
30 ケーブル
34 補強編組
40 ケーブル取付固定部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを車体などに固定するためのケーブル固定部材及びケーブル固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブル・電線等(以下、単に「ケーブル」ともいう)を配線・敷設する際、例えば、自動車のサスペンション下方(以下、「車両バネ下」という)に配線する際には、タイヤやその他部品とケーブルとの接触を防止するために、配線するケーブルの中間部を保持して車体側に固定する。ケーブルの固定手段には、一般的に金属クランプが用いられる。金属クランプは、ケーブル外周を両側から金属部品で挟み込み、このケーブルを挟んだ金属部品をねじ等を用いて車体などに固定してケーブルを保持するものである。
【0003】
従来の金属クランプの一例として、車輪のホイール内に内蔵したインホイールモータに電力を供給するための電線を保持する電線保持装置において、電線の軸線方向の移動は規制するが、回転は許容するクランプが提案されている(特許文献1参照)。このクランプは、電線の外周に嵌められて接着剤などで取り付けられた緩衝筒部材をクランプ本体部品で両側から挟み込むと共に、緩衝筒部材とクランプ本体部品との間にベアリング構造を設けて、電線を回転自在に支持する構造となっている。このクランプでは、電線の回転を許容することによって、車輪の上下動に伴う電線の繰り返し曲げによる折れの抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−276738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の金属クランプでは、ケーブルを把持固定する力が小さいため、ケーブルが設計固定部から外れて断線等が発生する可能性がある。特に、車両バネ下などに用いられる場合には、ケーブルに泥や雪等の異物が付着した状態でケーブルが屈曲あるいは振動するため、ケーブルに過大な引張り力が加わり、ケーブルを固定するクランプ部分の固定把持力が小さいと、ケーブルが移動して周囲部品と接触し、ケーブルが傷ついて断線する可能性が大きくなる。
また、ケーブルを金属部品で挟んでクランプした際、ケーブルを挟み込む力が不均一になり易く、金属クランプとケーブルの位置関係が設計値と異なってくる。このため、ケーブルに局部的に想定外の大きな力が加わり、ケーブル設計レイアウト位置がずれてしまい、結果として断線等のトラブルが発生する可能性がある。
【0006】
上記特許文献1のクランプでも、電線の外周に接着剤などで緩衝筒部材を取り付けた構造なので、固定把持力が小さく、電線に大きな力が加わったときに電線を確実に固定するのは困難となる。また、特許文献1のクランプでは、ベアリング構造で電線の回転(捩れ)を許容しているが、電線の捩れは車輪上下動に伴って偶発的に予想不可能な態様で発生し、その結果、周囲部品と電線が接触したり、あるいは予想以上の歪が電線に発生したりして、断線に至る可能性がある。また、捩れを伴うケーブルの動きは非常に複雑となるため、ケーブルの捩れを加味したケーブルレイアウトを事前に予測して設計するのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、ケーブルを強固に保持固定することができ、しかもケーブルに対する取付位置を容易に位置決めすることができるケーブル固定部材及びケーブル固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、ケーブルに加締められて締結される中間部材と、前記中間部材が締結された1つ又は複数の前記ケーブルを前記中間部材を介して挟み込んで把持する一対のブラケット部材と、前記ケーブルを挟み込む一対の前記ブラケット部材の対向面に形成され、前記中間部材を介して前記ケーブルを挟み込む1つ又は複数の溝と、前記中間部材に設けられた切欠き部と、前記切欠き部に挿入される、前記ブラケット部材に設けられた突起部と、を備えるケーブル固定部材である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様のケーブル固定部材において、前記中間部材は、前記ケーブルが挿通され、加締められて前記ケーブルに締結される筒部と、前記筒部の両端部に前記ケーブルの径方向に突出して形成され、前記ケーブルを把持する一対の前記ブラケット部材の前記ケーブルの軸方向への移動を阻止するストッパー部とを有する。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様のケーブル固定部材において、前記溝の内面形状が、前記ケーブルに加締められて締結される前記中間部材の外面形状と噛み合う形状となっている。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様のケーブル固定部材において、1つ又は複数の前記ケーブルを挟み込んだ、一対の前記ブラケット部材を締め付ける締付部材を備える。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかのケーブル固定部材を用いて、外周部に補強編組を有するケーブルをケーブル取付固定部材に固定したケーブル固定構造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケーブルを強固に保持固定することができ、しかもケーブルに対する取付位置を容易に位置決めすることができるケーブル固定部材及びケーブル固定構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材を用いてケーブルを固定する手順の一つを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材を用いてケーブルを固定する手順の一つを示す図である。
【図5】図4の一部を拡大して示すもので、(a)は図4のA−A拡大断面図、(b)は図4のB−B拡大断面図、(c)は図4のC−C拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るケーブル固定構造で用いられるケーブルの横断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るケーブル固定部材を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブルに加締められて締結された状態を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材の対向面側をそれぞれ示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材がケーブルに固定された状態の断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブルに加締められて締結された状態を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材におけるブラケット部材の対向面側を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材がケーブルに固定された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るケーブル固定部材及びケーブル固定構造の一実施形態を説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。また、図2は、第1の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材を示す正面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の一対のブラケット部材1,1は、3本のケーブルを把持して車体等に固定するために用いられるもので、ブラケット部材1の対向面4には、ケーブルを挟んで把持する3列の溝5が形成されている。溝5の横断面は、円形状断面のケーブルに対応して、半円形状であり、ケーブルの外周を一対のブラケット部材1,1の溝5,5で両側から挟んで把持する。3列の溝5はブラケット部材1の幅方向に平行に形成されている。図1は、一対のブラケット部材1,1が嵌め合わされ、双方の対向面4,4が密接された状態を示しており、対向する溝5,5間には、ケーブル(実際には中間部材3(図2参照)が加締められて締結された部分のケーブル)を収容し把持固定する把持孔6が形成される。
【0018】
ブラケット部材1の溝5の方向とは直交する方向(ケーブル整列方向)の両端部は、車体等のケーブル取付固定部材にケーブルを取り付けるための取付部14,14となっている。取付部14には、一対のブラケット部材1,1の対向面4,4を密接させる方向に締め付けると共に、車体等のケーブル取付固定部材40にブラケット部材1,1を取付固定する締付部材としてのボルト7(図4、図5参照)が設けられる。取付部14にはボルト7を挿通するための挿通孔15が形成されている。挿通孔15は、ブラケット部材1,1の幅方向(溝5の方向)に2つ並んで設けられている。取付部14は平板状であり、溝5が形成されたブラケット部材1の中央部は、取付部14よりも肉厚に形成されている。
【0019】
一対のブラケット部材1,1のうち、一方のブラケット部材1には、突起部10が設けられている。突起部10は、例えば図示のような角柱状であって、ブラケット部材1の幅方向(溝5の方向)の一方の側面に、各溝5の外周側に且つ各溝5に臨むように形成されている。
【0020】
本実施形態における中間部材3は金属製であって、図2に示すように、ケーブルが挿入される挿入孔12を有し、加締められることによってケーブルに締結される筒部8と、筒部8の両端部にフランジ状に径方向に突出して形成されるストッパー部(突起部)9とを備える。ストッパー部9,9間の長さは、溝5方向のブラケット部材1,1の幅と同じに設定されている。従って、ケーブル30に締結された筒部8を一対のブラケット部材1,1で挟み込んだときに、ブラケット部材1,1の側面と中間部材3のストッパー部9とが
接する状態となる。
【0021】
ただし、突起部10は、ブラケット部材1の側面から溝5の方向に突出して形成されており、この突起部10が挿入される切欠き部(切欠き溝)11が、中間部材3のストッパー部9に形成されている。この突起部10と切欠き部11とが嵌合することによって、ケーブルに対するブラケット部材1の取付位置・固定位置、特にケーブルの周方向に対するブラケット部材1の取付角度・固定角度が定まることになる。
【0022】
次に、本実施形態のケーブル固定部材によって、ケーブル取付固定部材にケーブルを取付固定する手順を図3〜図5を用いて説明する。図3、図4は取付固定する手順を示す図であり、図5(a)は図4のA−A拡大断面図、図5(b)は図4のB−B拡大断面図、図5(c)は図4のC−C拡大断面図である。
【0023】
まず、図3に示すように、本実施形態のケーブル固定部材によって一括して把持固定する3本のケーブル30のそれぞれに、中間部材3を所定の位置に装着した後、加締工具(図示せず)を用いて、中間部材3の筒部8を加締め、ケーブル30に中間部材3を締結する。図示例では、筒部8の2箇所に窪んで形成された環状の加締め部8aが形成されている。
【0024】
次いで、図4に示すように、一対のブラケット部材1,1の3つの対向する溝5,5間に、3本のケーブル30外周にそれぞれ締結された中間部材3の筒部8を両側から挟み込む。このとき、ストッパー部9の切欠き部11にブラケット部材1の突起部10を合わせ、切欠き部11に突起部10を挿入することで、ケーブル30の周方向に対してブラケット部材1,1を設計した取付角度・固定角度で容易に設置することができる。
【0025】
その後、ケーブル30に位置決めされたブラケット部材1,1の対向する挿通孔15,15に、図4に示すように、ボルト7を挿入し、更に、図5(a)に示すように、ボルト7を車体等のケーブル取付固定部材40に締め付けて固定する。これにより、ブラケット部材1,1はケーブル取付固定部材40に固定されると共に、ブラケット部材1,1の対向面4,4は密接ないし近接した状態となり、ブラケット部材1,1の対向する溝5,5間にはそれぞれ中間部材3を介してケーブル30が把持固定される。このとき、図5(c)に示すように、ブラケット部材1,1の両側面は中間部材3のストッパー部9,9に接した状態にあり、ブラケット部材1,1のケーブル30の軸方向への移動は、筒部8の両端部のストッパー部9,9によって阻止されることになる。また、ブラケット部材1,1で筒部8を把持することにより、溝5と筒部8とが接触する面の摩擦によりケーブル30の回転(捩れ)が抑止されるが、更に、図5(b)、(c)に示すように、ブラケット部材1の突起部10がストッパー部9の切欠き部11に挿入され嵌合されることで、ケーブル30の回転(捩れ)を抑止ないし阻止することができる。
【0026】
図6に、車体等に保持固定されるケーブル30の一実施形態の横断面図を示す。図6に示すように、ケーブル30の断面は円形状であって、中心部に複数本の撚り合わされた導体31を有し、これら導体31の外周は、絶縁体32、シールド33、補強編組34、およびシース35で順次、同心円状に被覆されている。補強編組34は、樹脂、金属などの繊維状材料を編んだものである。ケーブル30の外周部に補強編組34を有するので、中間部材3の筒部8を加締めた時に、筒部8の加締め部8aがケーブル30内に効果的に入り込んで、中間部材3がケーブル30に強く固定されると共に、加締め等による補強編組34内部のケーブル構造(導体31、絶縁体32、シールド33)への悪影響を抑制できる。
【0027】
なお、本発明が適用されるケーブルは、上記実施形態の図6に示すケーブル30に限ら
れるものではなく、本発明のケーブルは、電線などを含むものである。具体的には、本発明のケーブルには、電力を供給する電力線を有するケーブル、信号を伝送する信号線を有するケーブル、電力線及び信号線を有するケーブルなどが含まれる。また、本発明は、自動車用のケーブルには限られず、激しい振動等を受ける環境下で使用されるケーブルに好適に用いることができる。
更に、上記実施形態のブラケット部材1は、3本のケーブル30を把持固定するものであるが、1本、或いは3本以外の複数本の溝を有するブラケット部材でも勿論構わない。但し、複数本のケーブルをレイアウトするような場合、複数本のケーブルを、複数本用のブラケット部材で一括して把持固定するのが、作業性、固定箇所の確保などの観点から好ましい。
【0028】
なお、上記実施形態では、図1,図3に示すように、ブラケット部材1の幅方向の一方の側面側に突起部10が設けられていたが、図7に示すように、ブラケット部材1の幅方向の両側に突起部10を設けるようにしてもよい。この場合、ブラケット部材1の幅方向の両側の突起部10に対応して、図7に示すように、中間部材3の両側のストッパー部9に切欠き部11を設けるようにする。また、上記実施形態では、一対のブラケット部材1,1のうち、一方のブラケット部材1に突起部10を形成し、もう一方のブラケット部材1には突起部10を形成しなかったが、一対のブラケット部材1,1の両方にそれぞれ突起部10を形成してもよい。この場合、ストッパー部9に、例えば、ケーブル周方向に180度の配置で複数の切欠き部11を設けるようにする。
【0029】
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
(1)ブラケット部材1の突起部10と中間部材3の切欠き部11との嵌合によって、ケーブル30の周方向に対するブラケット部材1,1の取付角度、並びにケーブル30の軸方向に対するブラケット部材1,1の取付位置を、容易に且つ確実に決定することができる(このような位置決め構造・機構がなく、目測でブラケット部材の取付位置を決めてケーブルを挟み込んだ場合には、取付位置が若干ずれてしまう可能性がある)。したがって、ケーブル30を車体等に組み付ける精度も向上し、設計通りのケーブルレイアウトが可能となる。また、ブラケット部材1の突起部10が中間部材3の切欠き部11に挿入されるため、捩れ(回転)を伴うケーブル30の動きを阻止ないし抑制でき、その結果、周囲部品とケーブルが接触したりなどして、断線に至る可能性を低減できる。
(2)ケーブル30に中間部材3を加締めて強固に取り付け、この中間部材3を介してケーブル30をブラケット部材1,1で挟み込んで把持する構造なので、十分な把持力でケーブル30を固定できる。特に、中間部材3の筒部8の両端部にストッパー部9,9を設けているため、ケーブル30に過大な引張の力が加わっても、ストッパー部9で受け止めることができ、ケーブル30がずれることを極力防止することができる。殊に、車両バネ下に設けられるケーブルには泥や雪などの異物が付着し、異物が付着した状態のケーブルが屈曲あるいは振動することがあり、このときケーブルには過大な引張り力が発生するが、このような場合にも十分にケーブルを固定保持することが可能である。
(3)ケーブル30を中間部材3を介してブラケット部材1,1で挟み込んで把持する構造であるため、ケーブル30に対するブラケット部材1,1の把持力が中間部材3によって均一化されるので、ケーブル30に大きな力が働いてもケーブル固定部のケーブル30に想定外の力が局部的に加わることがなく、ケーブルレイアウト位置がずれることなく、結果として断線等のトラブルが発生することを防ぐことが可能である。
(4)ケーブル30に加締めて締結された中間部材3をブラケット部材1,1で挟み込んでケーブル30を把持するという簡易な構造であるため、品質面の信頼性が高く、また、複数本のケーブル30を一括して固定可能でありコストも抑えることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブル
に加締められて締結された状態を示す図である。また、図9(a)、((b)は、本発明の第2の実施形態に係るケーブル固定部材における一対のブラケット部材の対向面側をそれぞれ示す図である。この第2の実施形態に係るケーブル固定部材も、3本のケーブルを把持して車体等に固定するために用いられるものであり、以下には上述した第1の実施形態に係るケーブル固定部材との相違点について主に説明する。
【0031】
本実施形態の中間部材3は、図8に示すように、上記第1の実施形態と同様に、筒部8とその両端部にはストッパー部9とを有する。ストッパー部9には切欠き部11が形成されている。中間部材3の筒部8は3箇所で加締められてケーブル30に取り付けられている。
【0032】
この3箇所に環状に窪んで形成された加締め部8aを有する筒部8の外面形状に対応させて、本実施形態の一対のブラケット部材21,21の溝5の内面形状は、筒部8の外面形状に噛み合うように形成されている。すなわち、図9(a),(b)に示すように、ブラケット部材21,21の溝5の内面には、溝5の周方向に沿う凸状部27が、環状に窪んで形成された加締め部8aに対応させて、溝5の方向に3箇所に形成されている。また、一対のブラケット部材21,21のうち、一方のブラケット部材21の側面には、図9(a)に示すように、前記ストッパー部9の切欠き部11に対応させて、突起部10が形成されている。
【0033】
ケーブル30に加締められて締結された中間部材3の筒部8を、一対のブラケット部材21,21の溝5、5間で挟んで把持すると、図10に示すように、溝5の凸状部27が筒部8の加締め部8a外面の凹状部分に噛み合う。本実施形態では、ストッパー部9の構造に加えて、溝5の凸状部27と加締め部8a外面の凹状部分との噛み合い構造によって、更に強力にケーブル30の軸方向の位置ずれを阻止することが可能となる。
【0034】
また、一対のブラケット部材21,21の溝5、5間で筒部8を挟む際に、ブラケット部材1の突起部10をストッパー部9の切欠き部11にを挿入することで、ケーブル30の周方向に対するブラケット部材21,21の取付角度・固定角度を容易に決定することができる。更に、ブラケット部材1の突起部10がストッパー部9の切欠き部11に挿入されることで、ケーブル30の回転(捩れ)を規制ないし阻止することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材における中間部材がケーブルに加締められて締結された状態を示す図であり、図12は、本発明の第3の実施形態に係るケーブル固定部材におけるブラケット部材の対向面側を示す図である。
【0036】
第3の実施形態の中間部材3は、上記第1,第2の実施形態におけるストッパー部9を省略した構造である。つまり、本実施形態の中間部材3は、図11に示すように、筒部8からなり、筒部8の中央部分が3箇所で加締められてケーブル30に締結されている。筒部8の両端部には、矩形状の切欠き部22がそれぞれ設けられている。筒部8の一端部の切欠き部22と他端部の切欠き部22は、ケーブル周方向に180度の配置で設けられている。
また、本実施形態の一対のブラケット部材21,21の溝5には、上記第2の実施形態と同様に、図12に示すように、溝5の周方向に沿う凸状部27が、環状に窪んで形成された加締め部8aに対応させて、溝5の方向に3箇所に形成されている。更に、一対のブラケット部材21,21の各溝5の一方の端部には、上記筒部8の切欠き部22に対応させて、突起部23が形成されている。
【0037】
ケーブル30に加締められて締結された筒部8を、一対のブラケット部材21,21の
溝5、5間で挟んで把持すると、図12に示すように、溝5の凸状部27が筒部8の加締め部8a外面の凹状部分に噛み合うことになる。すなわち、本実施形態では、凸状部27と加締め部8aとの噛み合い構造によって、ケーブル30の軸方向の位置ずれを阻止している。
【0038】
また、一対のブラケット部材21,21で筒部8を挟む際に、図12に示すように、筒部8の切欠き部22にブラケット部材1の突起部23を挿入することで、ケーブル30の周方向に対するブラケット部材21,21の取付角度・固定角度が決定される。更に、ブラケット部材1の突起部23が筒部8の切欠き部22に挿入されることで、ケーブル30の回転(捩れ)を規制ないし抑制することができる。
【0039】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態の中間部材3の切欠き部11,22は、溝状ないし切欠き状であったが、中間部材の切欠き部は、孔や段差状などであってもよい。また、中間部材の切欠き部をブラケット部材の突起部よりも大きく形成し、ブラケット部材の突起部の側面を中間部材の切欠き部の内面に当接することで、中間部材に対するブラケット部材の取付位置・取付角度を決定するようにしてもよい。
また、上記実施形態のブラケット部材1及び21において、取付部14,14の少なくとも一方をケーブルを把持する中央部分に対して屈曲して形成してもよい。取付部を屈曲させると、狭隘な箇所にケーブルを設置固定する際に設置スペースや作業性の観点から好適な場合がある。また、取付部を屈曲させる場合、ブラケット部材の強度向上のために、取付部を肉厚にしたり、ブラケット部材の対向面とは反対側の面にリブを設けたりするのがよい。
また、上記第1の実施形態では、図5(a)に示すように、ブラケット部材1の両側の取付部14,14をボルト7によりケーブル取付固定部材40に締め付けて固定したが、一方の取付部14はケーブル取付固定部材40に固定するのではなく、一対のブラケット部材1,1相互間を締め付けるだけとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ブラケット部材
3 中間部材
4 対向面
5 溝
7 ボルト(締付部材)
8 筒部
8a 加締め部
9 ストッパー部
10 突起部
11 切欠き部
14 取付部
15 挿通孔
21 ブラケット部材
22 切欠き部
23 突起部
27 凸状部
30 ケーブル
34 補強編組
40 ケーブル取付固定部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルに加締められて締結される中間部材と、
前記中間部材が締結された1つ又は複数の前記ケーブルを前記中間部材を介して挟み込んで把持する一対のブラケット部材と、
前記ケーブルを挟み込む一対の前記ブラケット部材の対向面に形成され、前記中間部材を介して前記ケーブルを挟み込む1つ又は複数の溝と、
前記中間部材に設けられた切欠き部と、
前記切欠き部に挿入される、前記ブラケット部材に設けられた突起部と、
を備えることを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル固定部材において、
前記中間部材は、前記ケーブルが挿通され、加締められて前記ケーブルに締結される筒部と、前記筒部の両端部に前記ケーブルの径方向に突出して形成され、前記ケーブルを把持する一対の前記ブラケット部材の前記ケーブルの軸方向への移動を阻止するストッパー部とを有することを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケーブル固定部材において、
前記溝の内面形状が、前記ケーブルに加締められて締結される前記中間部材の外面形状と噛み合う形状となっていることを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のケーブル固定部材において、
1つ又は複数の前記ケーブルを挟み込んだ、一対の前記ブラケット部材を締め付ける締付部材を備えることを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のケーブル固定部材を用いて、外周部に補強編組を有するケーブルをケーブル取付固定部材に固定したことを特徴とするケーブル固定構造。
【請求項1】
ケーブルに加締められて締結される中間部材と、
前記中間部材が締結された1つ又は複数の前記ケーブルを前記中間部材を介して挟み込んで把持する一対のブラケット部材と、
前記ケーブルを挟み込む一対の前記ブラケット部材の対向面に形成され、前記中間部材を介して前記ケーブルを挟み込む1つ又は複数の溝と、
前記中間部材に設けられた切欠き部と、
前記切欠き部に挿入される、前記ブラケット部材に設けられた突起部と、
を備えることを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル固定部材において、
前記中間部材は、前記ケーブルが挿通され、加締められて前記ケーブルに締結される筒部と、前記筒部の両端部に前記ケーブルの径方向に突出して形成され、前記ケーブルを把持する一対の前記ブラケット部材の前記ケーブルの軸方向への移動を阻止するストッパー部とを有することを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケーブル固定部材において、
前記溝の内面形状が、前記ケーブルに加締められて締結される前記中間部材の外面形状と噛み合う形状となっていることを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のケーブル固定部材において、
1つ又は複数の前記ケーブルを挟み込んだ、一対の前記ブラケット部材を締め付ける締付部材を備えることを特徴とするケーブル固定部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のケーブル固定部材を用いて、外周部に補強編組を有するケーブルをケーブル取付固定部材に固定したことを特徴とするケーブル固定構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−244601(P2011−244601A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114695(P2010−114695)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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