ケーブル屈曲疲労寿命予測方法、及びケーブル屈曲疲労寿命予測装置
【課題】複数の導体素線を含むケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することが可能なケーブル屈曲疲労寿命予測方法、及びケーブル屈曲疲労寿命予測装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様においては、単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、歪振幅と断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲回数予測工程と、を含むケーブル屈曲疲労寿命予測方法が提供される。
【解決手段】本発明の一態様においては、単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、歪振幅と断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲回数予測工程と、を含むケーブル屈曲疲労寿命予測方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル屈曲疲労寿命予測方法、及びケーブル屈曲疲労寿命予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの屈曲条件から算出した歪み変化量を単線の導体素線の屈曲疲労寿命データベースと照合することにより、ケーブルの屈曲疲労寿命を予測する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された方法では、導体素線の歪み変化量と屈曲寿命との相関関係を示すマスターカーブを屈曲疲労寿命データベースとして用いる。
【0003】
また、従来、単線の導体素線の摩耗疲労を試験する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260459号公報
【特許文献2】特開2011−99829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブルが複数の導体素線を含む場合は、撚り合わされた導体素線間に接触荷重が掛かり、摩耗が生じる。この場合、ケーブルの屈曲疲労の原因として、導体素線の歪みの他に摩耗が考えられる。そのため、特許文献1に記載された方法のように、素線単線の歪み変化量と屈曲寿命との相関関係のみをデータとして含む屈曲疲労寿命データベースを用いる場合、ケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することができない場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、複数の導体素線を含むケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することが可能なケーブル屈曲疲労寿命予測方法、及びケーブル屈曲疲労寿命予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様においては、単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲疲労寿命予測工程と、を含むケーブル屈曲疲労寿命予測方法が提供される。
【0008】
上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記歪振幅と前記回数との前記関係を示す第1の点群データを得た後、前記第1の点群データにカーブフィッティングを実施して曲線を得ることにより、前記データベースを作成する。
【0009】
また、上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重と前記回数との関係を示す第2の点群データを得た後、前記引張荷重を前記歪振幅に変換することにより、前記第1の点群データを得る。
【0010】
また、上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、前記第1の導体素線を第3の導体素線で挟み込んで前記接触荷重を掛けた状態で、前記第1の導体素線に繰り返しの前記引張荷重を掛け、前記第2の点群データを得る。
【0011】
また、上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、単線の第4の導体素線に単線の第5の導体素線からの第2の接触荷重を掛けた状態で、前記第5の導体素線に対して繰り返し摺動させ、摺動距離ごとの前記第4の導体素線に掛かる前記第2の接触荷重と前記第4の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第1の関係を取得する工程と、前記第2の導体素線を含む前記ケーブルを繰り返し屈曲させ、前記ケーブルの曲げ半径と前記第2の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第2の関係、及び前記曲げ半径と前記第2の導体素線の摺動距離との関係である第3の関係を取得する工程と、前記第1の関係、前記第2の関係、及び前記第3の関係を用いて、前記ケーブルの前記屈曲条件に含まれる曲げ半径から前記第2の導体素線に生じる前記接触荷重の大きさを算出する。
【0012】
また、本発明の他の態様においては、単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係から屈曲疲労寿命データベースを作成するデータベース作成部と、複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から求められた、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを受け付ける寿命予測条件受付部と、前記寿命予測条件受付部により受け付けられた前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベース作成部により作成された前記屈曲疲労寿命データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する寿命予測部と、を含むケーブル屈曲疲労寿命予測装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の導体素線を含むケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る疲労試験に用いられる疲労試験装置の一例を示す。
【図3】図3は、試験線の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す点群データの一例を示す。
【図4】図4は、試験線の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す曲線の一例を示す。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係るケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の導出手順を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る摩耗試験に用いる摩耗試験装置の一例を示す。図7(b)は、摩耗試験により生じた試験線の摩耗痕を示す。
【図8】図8(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るケーブル屈曲試験の様子の一例を示す。図8(b)は、ケーブル屈曲試験により生じた試験線の摩耗痕を示す。
【図9】図9(a)は、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係を表すグラフの一例である。図9(b)は、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線の摺動距離との関係を表すグラフの一例である。
【図10】図10は、摺動距離ごとの導体素線に掛かる接触荷重と摩耗痕深さの関係を表すグラフの一例である。
【図11】図11は、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重との関係を表すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態は、複数の導体素線を含むケーブルの所定の屈曲条件の下での屈曲疲労寿命を予測するケーブル屈曲疲労寿命予測方法であって、単線の導体素線である試験線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、前記所定の屈曲条件から、前記ケーブル内の前記導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記ケーブル内の前記導体素線が断線に至るまでの前記所定の屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲疲労寿命予測工程と、を含む方法である。以下に、このケーブル屈曲疲労寿命予測方法の例を詳細に説明する。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態として、ケーブル屈曲疲労寿命の予測方法について説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
【0018】
ステップS1は、単線の第1の導体素線としての試験線2に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、この引張荷重を変換して得られる試験線2の歪振幅と試験線2が断線に至るまでに引張荷重が掛かる回数との関係を接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程である。まず、ステップS1において、任意の接触荷重を掛けた状態での導体素線の引張荷重と寿命の関係を求める疲労試験を行い、試験結果を用いて屈曲疲労寿命データベースを作成する。
【0019】
図2は、この試験に用いられる疲労試験装置1の一例を示す。疲労試験装置1は、単線の導体素線である試験線2と、試験線2の一端を保持するロードセル3と、試験線2の他端を保持して試験線2の長手方向にスライドさせ、試験線2に繰り返しの引張荷重を掛ける電動アクチュエータ(電動スライダ)4と、試験線2の上下にそれぞれ配置された上部滑車5及び下部滑車6と、上部滑車5及び下部滑車6に掛けられ、上部滑車5と下部滑車6との間で試験線2を両側から挟んで接触するように2カ所で交差する第3の導体素線としての接触線7と、下部滑車6の一方から下に伸びる接触線7の一端を固定する固定部8と、下部滑車6の他方から下に伸びる接触線7の他端に取り付けられた錘9とを備える。
【0020】
ロードセル3は、試験線2に掛かる引張荷重の大きさを検出する。この検出値に基づいて電動アクチュエータ4のスライド幅若しくは引張力が制御される。
【0021】
電動アクチュエータ4は、ロードセル3の検出値に基づいて試験線2の長手方向に所定のスライド幅、周波数(例えば5.0Hz)でスライド(反復運動)し、試験線2に繰り返しの引張荷重を掛ける。
【0022】
通常、ケーブル内の撚り線は同じ種類の導体素線を撚り合わせたものであるため、この撚り線を模擬して、試験線2と同じ種類の導体素線を接触線7として用いることが好ましい。しかし、これに限定されるものではなく、想定される実施環境に合わせて接触線7の種類を適宜選択することができる。
【0023】
固定部8及び錘9により、接触線7には所定の張力が加えられ、接触線7に挟んで接触された試験線2の接触線7との接触部分には所定の接触荷重が掛かる。錘9の重さを調節することにより、接触荷重の大きさを制御することができる。
【0024】
次に、疲労試験装置1を用いた疲労試験方法を説明する。
【0025】
まず、試験線2を用意し、その一端をロードセル3に、他端を電動アクチュエータ4に固定する。次に、試験線2を両側から挟んで接触させるように接触線7を上部滑車5と下部滑車6に巻き掛ける。
【0026】
次に、接触線7の一端を固定部8に固定し、他端に錘9を取り付ける。これにより、接触線7に所定の張力を加えて試験線2に所定の大きさの接触荷重を掛ける。
【0027】
この状態で電動アクチュエータ4を駆動させ、試験線2に繰り返しの引張荷重を掛ける。このとき、電動アクチュエータ4にはロードセル3の検出値が常にフィードバックされ、ロードセル3で所定の大きさの引張荷重が検出されるようにスライド幅若しくは引張力が調整される。
【0028】
そして、試験線2が破断するまでの引張荷重が掛かる回数、すなわちスライドの往復回数をカウントし、これを試験線2の寿命とする。ここで、ロードセル3に引張荷重が検出されなくなったときに試験線2が破断したと判断する。
【0029】
その後、試験線2に加わる接触荷重の大きさを上記所定の大きさに固定した状態で、引張荷重の大きさを変えながら上記の試験を繰り返し、上記所定の大きさの接触荷重が掛かった状態における試験線2の引張荷重と寿命との関係を示す点群データ(測定データ)を求める。
【0030】
さらに、上記の曲線を得るための手順を試験線2に加わる接触荷重の大きさを変えながら繰り返し、接触荷重の大きさごとに引張荷重と寿命との関係を示す点群データを求める。
【0031】
その後、予め求めておいた試験線2における引張荷重と歪振幅との関係を示すデータを用いて、引張荷重を歪振幅に変換し、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す点群データを得る。ここで、歪振幅とは、歪みの最大値と最小値の差の半分の値をいう。そして、この点群データに対して回帰分析等を用いたカーブフィッティングを実施することにより、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す複数の曲線を得る。この様にして得られた複数の曲線を屈曲疲労寿命データベースとして、以降のステップに用いる。
【0032】
図3は、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す点群データの一例を示す。図3の縦軸は試験線2の歪振幅、横軸は寿命を示す。図中の点群△が描く曲線は、接触荷重の大きさが0Nであるとき(接触線7を試験線2に接触させないとき)の歪振幅と寿命との関係を示す。図中の点群◇が描く曲線は、接触荷重の大きさが0.09Nであるときの歪振幅と寿命との関係を示す。また、図中の点群○が描く曲線は、接触荷重の大きさが0.15Nであるときの歪振幅と寿命との関係を示す。
【0033】
図3に示されるように、接触荷重がどのような大きさである場合でも、試験線2の歪振幅が大きいほど寿命が短くなる。また、歪振幅が同じであっても、接触荷重が大きいほど寿命が短くなる。
【0034】
次に、図1のステップS2において、屈曲疲労寿命の予測対象のケーブルの実施環境における屈曲条件から、ケーブル内の導体素線(第2の導体素線)に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する。
【0035】
以下に、ケーブル内の導体素線に生じる歪振幅を導出する具体例について説明する。導体素線に生じる歪、ケーブルの曲げ半径、ケーブルの外径、導体(撚り合わされた複数の導体素線)の外径、導体素線の外径をそれぞれε、R、a、b、cとすると、ε=(b−c)/(2R+a)という関係が成り立つ。そこで、曲げ半径Rごとに歪εを求め、そこから歪振幅を導出する。例えば、屈曲条件がR=500からR=50までの繰り返し屈曲である場合、R=500におけるε(500)とR=50におけるε(50)を求め、その差分の絶対値を2で除することで歪振幅が得られる。その他、数値解析により、導体素線に生じる歪を求める方法がある。ケーブル内の導体素線に生じる接触荷重は、例えば、数値解析により算出される。
【0036】
次に、図1のステップS3において、ステップS2において求めたケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを、ステップ1において作成した屈曲疲労寿命データベースと照合し、ケーブル内の導体素線が断線に至るまでの上記屈曲条件下でのケーブルの屈曲回数(屈曲疲労寿命)を予測する。
【0037】
図4は、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す曲線の一例を示す。この図4を用いて、ケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重を屈曲疲労寿命データベースと照合してケーブルの屈曲疲労寿命を予測する過程を説明する。ここで、図4中の上側の曲線、中間の曲線、及び下側の曲線は、それぞれ接触荷重の大きさがP1、P2、P3(P1<P2<P3)であるときの歪振幅と寿命との関係を示す。
【0038】
まず、図4中の複数の曲線の中から、ステップS2において算出したケーブル内の導体素線に生じる接触荷重の大きさの値に対応する曲線を選択する。例えば、算出したケーブル内の導体素線に生じる接触荷重の大きさの値がP3であった場合、接触荷重の大きさがP3であるときの歪振幅と寿命との関係を示す下側の曲線を選択する。
【0039】
次に、選択した曲線上の、ステップS2において算出したケーブル内の導体素線に生じる歪振幅をとる点を探し、その点における寿命の値を求める。例えば、ステップS2において算出した歪振幅の大きさをεとし、選択した図4の下側の曲線上の縦軸の値がεである点の横軸の値をNとすれば、予測されるケーブルの屈曲疲労寿命はN(回)となる。
【0040】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態として、ケーブル屈曲疲労寿命を予測する装置について説明する。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測装置10の構成の一例を示すブロック図である。ケーブル屈曲疲労寿命予測装置10は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命の予測方法を実施するために用いられる装置である。
【0042】
ケーブル屈曲疲労寿命予測装置10は、屈曲疲労寿命データベースを作成するデータベース作成部11と、屈曲疲労寿命の予測対象のケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさの値を寿命予測条件として受け付ける寿命予測条件受付部12と、寿命予測条件受付部12により受け付けられた歪振幅及び接触荷重の大きさの値をデータベース作成部11により作成された屈曲疲労寿命データベースと照合し、ケーブルの屈曲疲労寿命を予測する寿命予測部13と、寿命予測部13により予測されたケーブルの屈曲疲労寿命を外部に出力する予測結果出力部14とを含む。
【0043】
データベース作成部11は、第1の実施の形態に記載された導体素線の疲労試験の結果を点群データとして受け付ける試験結果受付部11aと、試験結果受付部11aにより受け付けられた点群データから、図3に示されるような試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す曲線を作成する曲線作成部11bと、曲線作成部11bにより作成された複数の曲線をデータベースとして記憶するデータベース記憶部11cとを含む。
【0044】
データベース作成部11は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命予測方法のステップS1を実施するために用いることができる。
【0045】
寿命予測条件受付部12は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命予測方法のステップS2において、ケーブルの実施環境における屈曲条件から算出された、ケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさの値を受け付ける。
【0046】
寿命予測部13は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命予測方法のステップS3を実施するために用いることができる。
【0047】
ケーブル屈曲疲労寿命予測装置10は、例えば、コンピュータにより実現することができる。この場合、例えば、曲線作成部11b及び寿命予測部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専門回路、又はプログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)である。また、データベース記憶部11cは、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶装置である。試験結果受付部11a及び寿命予測条件受付部12は、例えば、キーボード等の入力装置からの入力を受け付ける。また、予測結果出力部14は、出力先のモニタやプリンタ等の外部装置に応じたデータを出力する。
【0048】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態として、ケーブルの屈曲によりケーブル内の導体素線に生じる接触荷重の大きさの導出方法の具体例について説明する。
【0049】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の大きさの導出手順を示すフローチャートである。
【0050】
まず、導体素線の試験線を用いた摩耗試験により、摺動距離ごとの導体素線に掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕の深さとの関係を取得する(ステップS11)。
【0051】
図7(a)は、摩耗試験に用いる摩耗試験装置の一例を示す。摩耗試験装置20は、単線の導体素線である2本の試験線21a、21bと、試験線21aを保持し、試験線21aを介して試験線21bに接触荷重を加える試験線固定治具22aと、試験線21bを保持する試験線固定治具22bと、試験線固定治具22bを保持して試験線21bの長手方向にスライドさせ、試験線21aと試験線21bを繰り返し摩擦させる電動アクチュエータ(電動スライダ)24とを備える。
【0052】
試験線21aと試験線21bは、ケーブル内で撚り合わされるときと同程度の角度で交差するように重ねられることが好ましい。
【0053】
電動アクチュエータ24は、試験線21bの長手方向に所定のスライド幅、周波数(例えば5.0Hz)でスライド(反復運動)し、試験線21aと試験線21bを繰り返し摩擦させる。ここで、電動アクチュエータ24のスライド幅は、試験線21bの試験線21aに対する摺動距離に相当する。
【0054】
通常、ケーブル内の撚り線は同じ種類の導体素線を撚り合わせたものであるため、この撚り線を模擬して、同じ種類の導体素線を試験線21a及び試験線21bとして用いることが好ましい。
【0055】
次に、摩耗試験装置20を用いた摩耗試験方法を説明する。
【0056】
まず、試験線固定治具22aにより第5の導体素線としての試験線21aを介して第4の導体素線としての試験線21bに所定の大きさの接触荷重を加えた状態で、電動アクチュエータ24により試験線21bを試験線21aに対して摺動させる。そして、所定の回数(例えば、1000回)だけ摺動した後、図7(b)に示されるような試験線21bの摩耗痕25の深さ25dを測定する。
【0057】
その後、接触荷重の大きさを変えて同様の試験を繰り返し、試験線21bに掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕25の深さ25dとの関係を取得する。なお、この試験において、試験線21bに掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕25の深さ25dとの関係の代わりに、試験線21aに掛かる接触荷重の大きさと試験線21aの摩耗痕の深さとの関係を取得してもよい。
【0058】
次に、ケーブル屈曲試験により、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の第2の導体素線としての導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係を取得する(ステップS12)。
【0059】
図8(a)は、ケーブル屈曲試験の様子の一例を示す。円柱状の固定具31によりケーブル30を挟んで固定し、一方の固定具31に沿わせるようにケーブル30を曲げる。ここで、固定具31の半径がケーブル30の曲げ半径30Rとなる。
【0060】
そして、所定の回数だけケーブル30を屈曲させた後、図8(b)に示されるようなケーブル30内の導体素線32の摩耗痕33の深さ33dを測定する。ここで、ケーブル30内の複数の導体素線32に生じた摩耗痕33のうちの最も深いものの深さを深さ33dとする。また、ケーブル30を屈曲させる回数は、摩耗試験装置20を用いた摩耗試験における試験線21bの摺動回数と同数にする。
【0061】
その後、曲げ半径を変えて同様の試験を繰り返し、ケーブル30の曲げ半径30Rとケーブル30内の導体素線32の摩耗痕33の深さ33dとの関係を取得する。また、このとき、ケーブル30の曲げ半径30Rとケーブル30内の導体素線32の摺動距離との関係を実測又は計算により取得する。
【0062】
次に、ステップS11及びステップS12において取得したデータから、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を取得する(ステップS13)。
【0063】
図9(a)は、ステップS12において取得した、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係を表すグラフの一例である。図9(b)は、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線の摺動距離との関係を表すグラフの一例である。図10は、ステップS11において取得した、摺動距離ごとの導体素線に掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕深さの関係を表すグラフの一例である。図10のグラフは、一例として、摺動距離L1、L2、L3の各々における導体素線に掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕深さの関係を表す。
【0064】
まず、所定の大きさのケーブルの曲げ半径R1に対応する導体素線の摩耗痕の深さD1と摺動距離L1を図9(a)、(b)のグラフからそれぞれ求める。
【0065】
次に、図10のグラフにおいて、グラフ線L1上の摩耗痕の深さがD1である点の接触荷重の大きさP1を求める。これにより、ケーブルの曲げ半径R1に対応する導体素線に掛かる接触荷重の大きさP1が求まる。
【0066】
その後、同様に、異なるケーブルの曲げ半径R2、R3、R4、…に対応する導体素線に掛かる接触荷重の大きさP2、P3、P4、…を求め、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を取得する。
【0067】
本実施の形態において得られたケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を用いることにより、第1の実施の形態においてケーブル屈曲疲労寿命を予測する際に、ケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の大きさを導出することができる。具体的には、例えば、屈曲疲労寿命の予測対象のケーブルの実施環境における屈曲条件に含まれるケーブルの曲げ半径から、ケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の大きさを導出することができる。
【0068】
図11は、ステップS13において取得した、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を表すグラフの一例である。例えば、ケーブルの曲げ半径がRである場合は、図11のグラフから、ケーブルの曲げ半径がRであるときの接触荷重の大きさPを求めることができる。
【0069】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、導体素線の歪みの他に摩耗を屈曲疲労の原因として考慮し、ケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することができる。これにより、ケーブルの開発期間を短縮し、コストを低減することができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0072】
2 試験線(第1の導体素線)
7 接触線(第3の導体素線)
10 ケーブル屈曲疲労寿命予測装置
11 データベース作成部
12 寿命予測条件受付部
13 寿命予測部
20 摩耗試験装置
21a 試験線(第5の導体素線)
21b 試験線(第4の導体素線)
25、33 摩耗痕
25d、33d 摩耗痕の深さ
30 ケーブル
30R ケーブルの曲げ半径
32 導体素線(第2の導体素線)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル屈曲疲労寿命予測方法、及びケーブル屈曲疲労寿命予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの屈曲条件から算出した歪み変化量を単線の導体素線の屈曲疲労寿命データベースと照合することにより、ケーブルの屈曲疲労寿命を予測する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された方法では、導体素線の歪み変化量と屈曲寿命との相関関係を示すマスターカーブを屈曲疲労寿命データベースとして用いる。
【0003】
また、従来、単線の導体素線の摩耗疲労を試験する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260459号公報
【特許文献2】特開2011−99829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブルが複数の導体素線を含む場合は、撚り合わされた導体素線間に接触荷重が掛かり、摩耗が生じる。この場合、ケーブルの屈曲疲労の原因として、導体素線の歪みの他に摩耗が考えられる。そのため、特許文献1に記載された方法のように、素線単線の歪み変化量と屈曲寿命との相関関係のみをデータとして含む屈曲疲労寿命データベースを用いる場合、ケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することができない場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、複数の導体素線を含むケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することが可能なケーブル屈曲疲労寿命予測方法、及びケーブル屈曲疲労寿命予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様においては、単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲疲労寿命予測工程と、を含むケーブル屈曲疲労寿命予測方法が提供される。
【0008】
上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記歪振幅と前記回数との前記関係を示す第1の点群データを得た後、前記第1の点群データにカーブフィッティングを実施して曲線を得ることにより、前記データベースを作成する。
【0009】
また、上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重と前記回数との関係を示す第2の点群データを得た後、前記引張荷重を前記歪振幅に変換することにより、前記第1の点群データを得る。
【0010】
また、上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、前記第1の導体素線を第3の導体素線で挟み込んで前記接触荷重を掛けた状態で、前記第1の導体素線に繰り返しの前記引張荷重を掛け、前記第2の点群データを得る。
【0011】
また、上記ケーブル屈曲疲労寿命予測方法においては、例えば、単線の第4の導体素線に単線の第5の導体素線からの第2の接触荷重を掛けた状態で、前記第5の導体素線に対して繰り返し摺動させ、摺動距離ごとの前記第4の導体素線に掛かる前記第2の接触荷重と前記第4の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第1の関係を取得する工程と、前記第2の導体素線を含む前記ケーブルを繰り返し屈曲させ、前記ケーブルの曲げ半径と前記第2の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第2の関係、及び前記曲げ半径と前記第2の導体素線の摺動距離との関係である第3の関係を取得する工程と、前記第1の関係、前記第2の関係、及び前記第3の関係を用いて、前記ケーブルの前記屈曲条件に含まれる曲げ半径から前記第2の導体素線に生じる前記接触荷重の大きさを算出する。
【0012】
また、本発明の他の態様においては、単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係から屈曲疲労寿命データベースを作成するデータベース作成部と、複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から求められた、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを受け付ける寿命予測条件受付部と、前記寿命予測条件受付部により受け付けられた前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベース作成部により作成された前記屈曲疲労寿命データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する寿命予測部と、を含むケーブル屈曲疲労寿命予測装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の導体素線を含むケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る疲労試験に用いられる疲労試験装置の一例を示す。
【図3】図3は、試験線の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す点群データの一例を示す。
【図4】図4は、試験線の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す曲線の一例を示す。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係るケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の導出手順を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る摩耗試験に用いる摩耗試験装置の一例を示す。図7(b)は、摩耗試験により生じた試験線の摩耗痕を示す。
【図8】図8(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るケーブル屈曲試験の様子の一例を示す。図8(b)は、ケーブル屈曲試験により生じた試験線の摩耗痕を示す。
【図9】図9(a)は、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係を表すグラフの一例である。図9(b)は、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線の摺動距離との関係を表すグラフの一例である。
【図10】図10は、摺動距離ごとの導体素線に掛かる接触荷重と摩耗痕深さの関係を表すグラフの一例である。
【図11】図11は、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重との関係を表すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態は、複数の導体素線を含むケーブルの所定の屈曲条件の下での屈曲疲労寿命を予測するケーブル屈曲疲労寿命予測方法であって、単線の導体素線である試験線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、前記所定の屈曲条件から、前記ケーブル内の前記導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記ケーブル内の前記導体素線が断線に至るまでの前記所定の屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲疲労寿命予測工程と、を含む方法である。以下に、このケーブル屈曲疲労寿命予測方法の例を詳細に説明する。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態として、ケーブル屈曲疲労寿命の予測方法について説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
【0018】
ステップS1は、単線の第1の導体素線としての試験線2に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、この引張荷重を変換して得られる試験線2の歪振幅と試験線2が断線に至るまでに引張荷重が掛かる回数との関係を接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程である。まず、ステップS1において、任意の接触荷重を掛けた状態での導体素線の引張荷重と寿命の関係を求める疲労試験を行い、試験結果を用いて屈曲疲労寿命データベースを作成する。
【0019】
図2は、この試験に用いられる疲労試験装置1の一例を示す。疲労試験装置1は、単線の導体素線である試験線2と、試験線2の一端を保持するロードセル3と、試験線2の他端を保持して試験線2の長手方向にスライドさせ、試験線2に繰り返しの引張荷重を掛ける電動アクチュエータ(電動スライダ)4と、試験線2の上下にそれぞれ配置された上部滑車5及び下部滑車6と、上部滑車5及び下部滑車6に掛けられ、上部滑車5と下部滑車6との間で試験線2を両側から挟んで接触するように2カ所で交差する第3の導体素線としての接触線7と、下部滑車6の一方から下に伸びる接触線7の一端を固定する固定部8と、下部滑車6の他方から下に伸びる接触線7の他端に取り付けられた錘9とを備える。
【0020】
ロードセル3は、試験線2に掛かる引張荷重の大きさを検出する。この検出値に基づいて電動アクチュエータ4のスライド幅若しくは引張力が制御される。
【0021】
電動アクチュエータ4は、ロードセル3の検出値に基づいて試験線2の長手方向に所定のスライド幅、周波数(例えば5.0Hz)でスライド(反復運動)し、試験線2に繰り返しの引張荷重を掛ける。
【0022】
通常、ケーブル内の撚り線は同じ種類の導体素線を撚り合わせたものであるため、この撚り線を模擬して、試験線2と同じ種類の導体素線を接触線7として用いることが好ましい。しかし、これに限定されるものではなく、想定される実施環境に合わせて接触線7の種類を適宜選択することができる。
【0023】
固定部8及び錘9により、接触線7には所定の張力が加えられ、接触線7に挟んで接触された試験線2の接触線7との接触部分には所定の接触荷重が掛かる。錘9の重さを調節することにより、接触荷重の大きさを制御することができる。
【0024】
次に、疲労試験装置1を用いた疲労試験方法を説明する。
【0025】
まず、試験線2を用意し、その一端をロードセル3に、他端を電動アクチュエータ4に固定する。次に、試験線2を両側から挟んで接触させるように接触線7を上部滑車5と下部滑車6に巻き掛ける。
【0026】
次に、接触線7の一端を固定部8に固定し、他端に錘9を取り付ける。これにより、接触線7に所定の張力を加えて試験線2に所定の大きさの接触荷重を掛ける。
【0027】
この状態で電動アクチュエータ4を駆動させ、試験線2に繰り返しの引張荷重を掛ける。このとき、電動アクチュエータ4にはロードセル3の検出値が常にフィードバックされ、ロードセル3で所定の大きさの引張荷重が検出されるようにスライド幅若しくは引張力が調整される。
【0028】
そして、試験線2が破断するまでの引張荷重が掛かる回数、すなわちスライドの往復回数をカウントし、これを試験線2の寿命とする。ここで、ロードセル3に引張荷重が検出されなくなったときに試験線2が破断したと判断する。
【0029】
その後、試験線2に加わる接触荷重の大きさを上記所定の大きさに固定した状態で、引張荷重の大きさを変えながら上記の試験を繰り返し、上記所定の大きさの接触荷重が掛かった状態における試験線2の引張荷重と寿命との関係を示す点群データ(測定データ)を求める。
【0030】
さらに、上記の曲線を得るための手順を試験線2に加わる接触荷重の大きさを変えながら繰り返し、接触荷重の大きさごとに引張荷重と寿命との関係を示す点群データを求める。
【0031】
その後、予め求めておいた試験線2における引張荷重と歪振幅との関係を示すデータを用いて、引張荷重を歪振幅に変換し、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す点群データを得る。ここで、歪振幅とは、歪みの最大値と最小値の差の半分の値をいう。そして、この点群データに対して回帰分析等を用いたカーブフィッティングを実施することにより、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す複数の曲線を得る。この様にして得られた複数の曲線を屈曲疲労寿命データベースとして、以降のステップに用いる。
【0032】
図3は、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す点群データの一例を示す。図3の縦軸は試験線2の歪振幅、横軸は寿命を示す。図中の点群△が描く曲線は、接触荷重の大きさが0Nであるとき(接触線7を試験線2に接触させないとき)の歪振幅と寿命との関係を示す。図中の点群◇が描く曲線は、接触荷重の大きさが0.09Nであるときの歪振幅と寿命との関係を示す。また、図中の点群○が描く曲線は、接触荷重の大きさが0.15Nであるときの歪振幅と寿命との関係を示す。
【0033】
図3に示されるように、接触荷重がどのような大きさである場合でも、試験線2の歪振幅が大きいほど寿命が短くなる。また、歪振幅が同じであっても、接触荷重が大きいほど寿命が短くなる。
【0034】
次に、図1のステップS2において、屈曲疲労寿命の予測対象のケーブルの実施環境における屈曲条件から、ケーブル内の導体素線(第2の導体素線)に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する。
【0035】
以下に、ケーブル内の導体素線に生じる歪振幅を導出する具体例について説明する。導体素線に生じる歪、ケーブルの曲げ半径、ケーブルの外径、導体(撚り合わされた複数の導体素線)の外径、導体素線の外径をそれぞれε、R、a、b、cとすると、ε=(b−c)/(2R+a)という関係が成り立つ。そこで、曲げ半径Rごとに歪εを求め、そこから歪振幅を導出する。例えば、屈曲条件がR=500からR=50までの繰り返し屈曲である場合、R=500におけるε(500)とR=50におけるε(50)を求め、その差分の絶対値を2で除することで歪振幅が得られる。その他、数値解析により、導体素線に生じる歪を求める方法がある。ケーブル内の導体素線に生じる接触荷重は、例えば、数値解析により算出される。
【0036】
次に、図1のステップS3において、ステップS2において求めたケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを、ステップ1において作成した屈曲疲労寿命データベースと照合し、ケーブル内の導体素線が断線に至るまでの上記屈曲条件下でのケーブルの屈曲回数(屈曲疲労寿命)を予測する。
【0037】
図4は、試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す曲線の一例を示す。この図4を用いて、ケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重を屈曲疲労寿命データベースと照合してケーブルの屈曲疲労寿命を予測する過程を説明する。ここで、図4中の上側の曲線、中間の曲線、及び下側の曲線は、それぞれ接触荷重の大きさがP1、P2、P3(P1<P2<P3)であるときの歪振幅と寿命との関係を示す。
【0038】
まず、図4中の複数の曲線の中から、ステップS2において算出したケーブル内の導体素線に生じる接触荷重の大きさの値に対応する曲線を選択する。例えば、算出したケーブル内の導体素線に生じる接触荷重の大きさの値がP3であった場合、接触荷重の大きさがP3であるときの歪振幅と寿命との関係を示す下側の曲線を選択する。
【0039】
次に、選択した曲線上の、ステップS2において算出したケーブル内の導体素線に生じる歪振幅をとる点を探し、その点における寿命の値を求める。例えば、ステップS2において算出した歪振幅の大きさをεとし、選択した図4の下側の曲線上の縦軸の値がεである点の横軸の値をNとすれば、予測されるケーブルの屈曲疲労寿命はN(回)となる。
【0040】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態として、ケーブル屈曲疲労寿命を予測する装置について説明する。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るケーブル屈曲疲労寿命予測装置10の構成の一例を示すブロック図である。ケーブル屈曲疲労寿命予測装置10は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命の予測方法を実施するために用いられる装置である。
【0042】
ケーブル屈曲疲労寿命予測装置10は、屈曲疲労寿命データベースを作成するデータベース作成部11と、屈曲疲労寿命の予測対象のケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさの値を寿命予測条件として受け付ける寿命予測条件受付部12と、寿命予測条件受付部12により受け付けられた歪振幅及び接触荷重の大きさの値をデータベース作成部11により作成された屈曲疲労寿命データベースと照合し、ケーブルの屈曲疲労寿命を予測する寿命予測部13と、寿命予測部13により予測されたケーブルの屈曲疲労寿命を外部に出力する予測結果出力部14とを含む。
【0043】
データベース作成部11は、第1の実施の形態に記載された導体素線の疲労試験の結果を点群データとして受け付ける試験結果受付部11aと、試験結果受付部11aにより受け付けられた点群データから、図3に示されるような試験線2の接触荷重の大きさごとの歪振幅と寿命との関係を示す曲線を作成する曲線作成部11bと、曲線作成部11bにより作成された複数の曲線をデータベースとして記憶するデータベース記憶部11cとを含む。
【0044】
データベース作成部11は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命予測方法のステップS1を実施するために用いることができる。
【0045】
寿命予測条件受付部12は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命予測方法のステップS2において、ケーブルの実施環境における屈曲条件から算出された、ケーブル内の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさの値を受け付ける。
【0046】
寿命予測部13は、第1の実施の形態のケーブル屈曲疲労寿命予測方法のステップS3を実施するために用いることができる。
【0047】
ケーブル屈曲疲労寿命予測装置10は、例えば、コンピュータにより実現することができる。この場合、例えば、曲線作成部11b及び寿命予測部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専門回路、又はプログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)である。また、データベース記憶部11cは、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶装置である。試験結果受付部11a及び寿命予測条件受付部12は、例えば、キーボード等の入力装置からの入力を受け付ける。また、予測結果出力部14は、出力先のモニタやプリンタ等の外部装置に応じたデータを出力する。
【0048】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態として、ケーブルの屈曲によりケーブル内の導体素線に生じる接触荷重の大きさの導出方法の具体例について説明する。
【0049】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の大きさの導出手順を示すフローチャートである。
【0050】
まず、導体素線の試験線を用いた摩耗試験により、摺動距離ごとの導体素線に掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕の深さとの関係を取得する(ステップS11)。
【0051】
図7(a)は、摩耗試験に用いる摩耗試験装置の一例を示す。摩耗試験装置20は、単線の導体素線である2本の試験線21a、21bと、試験線21aを保持し、試験線21aを介して試験線21bに接触荷重を加える試験線固定治具22aと、試験線21bを保持する試験線固定治具22bと、試験線固定治具22bを保持して試験線21bの長手方向にスライドさせ、試験線21aと試験線21bを繰り返し摩擦させる電動アクチュエータ(電動スライダ)24とを備える。
【0052】
試験線21aと試験線21bは、ケーブル内で撚り合わされるときと同程度の角度で交差するように重ねられることが好ましい。
【0053】
電動アクチュエータ24は、試験線21bの長手方向に所定のスライド幅、周波数(例えば5.0Hz)でスライド(反復運動)し、試験線21aと試験線21bを繰り返し摩擦させる。ここで、電動アクチュエータ24のスライド幅は、試験線21bの試験線21aに対する摺動距離に相当する。
【0054】
通常、ケーブル内の撚り線は同じ種類の導体素線を撚り合わせたものであるため、この撚り線を模擬して、同じ種類の導体素線を試験線21a及び試験線21bとして用いることが好ましい。
【0055】
次に、摩耗試験装置20を用いた摩耗試験方法を説明する。
【0056】
まず、試験線固定治具22aにより第5の導体素線としての試験線21aを介して第4の導体素線としての試験線21bに所定の大きさの接触荷重を加えた状態で、電動アクチュエータ24により試験線21bを試験線21aに対して摺動させる。そして、所定の回数(例えば、1000回)だけ摺動した後、図7(b)に示されるような試験線21bの摩耗痕25の深さ25dを測定する。
【0057】
その後、接触荷重の大きさを変えて同様の試験を繰り返し、試験線21bに掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕25の深さ25dとの関係を取得する。なお、この試験において、試験線21bに掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕25の深さ25dとの関係の代わりに、試験線21aに掛かる接触荷重の大きさと試験線21aの摩耗痕の深さとの関係を取得してもよい。
【0058】
次に、ケーブル屈曲試験により、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の第2の導体素線としての導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係を取得する(ステップS12)。
【0059】
図8(a)は、ケーブル屈曲試験の様子の一例を示す。円柱状の固定具31によりケーブル30を挟んで固定し、一方の固定具31に沿わせるようにケーブル30を曲げる。ここで、固定具31の半径がケーブル30の曲げ半径30Rとなる。
【0060】
そして、所定の回数だけケーブル30を屈曲させた後、図8(b)に示されるようなケーブル30内の導体素線32の摩耗痕33の深さ33dを測定する。ここで、ケーブル30内の複数の導体素線32に生じた摩耗痕33のうちの最も深いものの深さを深さ33dとする。また、ケーブル30を屈曲させる回数は、摩耗試験装置20を用いた摩耗試験における試験線21bの摺動回数と同数にする。
【0061】
その後、曲げ半径を変えて同様の試験を繰り返し、ケーブル30の曲げ半径30Rとケーブル30内の導体素線32の摩耗痕33の深さ33dとの関係を取得する。また、このとき、ケーブル30の曲げ半径30Rとケーブル30内の導体素線32の摺動距離との関係を実測又は計算により取得する。
【0062】
次に、ステップS11及びステップS12において取得したデータから、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を取得する(ステップS13)。
【0063】
図9(a)は、ステップS12において取得した、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係を表すグラフの一例である。図9(b)は、ケーブルの曲げ半径とケーブル内の導体素線の摺動距離との関係を表すグラフの一例である。図10は、ステップS11において取得した、摺動距離ごとの導体素線に掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕深さの関係を表すグラフの一例である。図10のグラフは、一例として、摺動距離L1、L2、L3の各々における導体素線に掛かる接触荷重の大きさと摩耗痕深さの関係を表す。
【0064】
まず、所定の大きさのケーブルの曲げ半径R1に対応する導体素線の摩耗痕の深さD1と摺動距離L1を図9(a)、(b)のグラフからそれぞれ求める。
【0065】
次に、図10のグラフにおいて、グラフ線L1上の摩耗痕の深さがD1である点の接触荷重の大きさP1を求める。これにより、ケーブルの曲げ半径R1に対応する導体素線に掛かる接触荷重の大きさP1が求まる。
【0066】
その後、同様に、異なるケーブルの曲げ半径R2、R3、R4、…に対応する導体素線に掛かる接触荷重の大きさP2、P3、P4、…を求め、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を取得する。
【0067】
本実施の形態において得られたケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を用いることにより、第1の実施の形態においてケーブル屈曲疲労寿命を予測する際に、ケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の大きさを導出することができる。具体的には、例えば、屈曲疲労寿命の予測対象のケーブルの実施環境における屈曲条件に含まれるケーブルの曲げ半径から、ケーブル内の導体素線に掛かる接触荷重の大きさを導出することができる。
【0068】
図11は、ステップS13において取得した、ケーブルの曲げ半径と導体素線に掛かる接触荷重の大きさとの関係を表すグラフの一例である。例えば、ケーブルの曲げ半径がRである場合は、図11のグラフから、ケーブルの曲げ半径がRであるときの接触荷重の大きさPを求めることができる。
【0069】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、導体素線の歪みの他に摩耗を屈曲疲労の原因として考慮し、ケーブルの屈曲疲労寿命を精度よく予測することができる。これにより、ケーブルの開発期間を短縮し、コストを低減することができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0072】
2 試験線(第1の導体素線)
7 接触線(第3の導体素線)
10 ケーブル屈曲疲労寿命予測装置
11 データベース作成部
12 寿命予測条件受付部
13 寿命予測部
20 摩耗試験装置
21a 試験線(第5の導体素線)
21b 試験線(第4の導体素線)
25、33 摩耗痕
25d、33d 摩耗痕の深さ
30 ケーブル
30R ケーブルの曲げ半径
32 導体素線(第2の導体素線)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、
複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲疲労寿命予測工程と、
を含むケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項2】
前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記歪振幅と前記回数との前記関係を示す第1の点群データを得た後、前記第1の点群データにカーブフィッティングを実施して曲線を得ることにより、前記データベースを作成する、
請求項1に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項3】
前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重と前記回数との関係を示す第2の点群データを得た後、前記引張荷重を前記歪振幅に変換することにより、前記第1の点群データを得る、
請求項2に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項4】
前記第1の導体素線を第3の導体素線で挟み込んで前記接触荷重を掛けた状態で、前記第1の導体素線に繰り返しの前記引張荷重を掛け、前記第2の点群データを得る、
請求項3に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項5】
単線の第4の導体素線に単線の第5の導体素線からの第2の接触荷重を掛けた状態で、前記第5の導体素線に対して繰り返し摺動させ、摺動距離ごとの前記第4の導体素線に掛かる前記第2の接触荷重と前記第4の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第1の関係を取得する工程と、
前記第2の導体素線を含む前記ケーブルを繰り返し屈曲させ、前記ケーブルの曲げ半径と前記第2の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第2の関係、及び前記曲げ半径と前記第2の導体素線の摺動距離との関係である第3の関係を取得する工程と、
前記第1の関係、前記第2の関係、及び前記第3の関係を用いて、前記ケーブルの前記屈曲条件に含まれる曲げ半径から前記第2の導体素線に生じる前記接触荷重の大きさを算出する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項6】
単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係から屈曲疲労寿命データベースを作成するデータベース作成部と、
複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から求められた、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを受け付ける寿命予測条件受付部と、
前記寿命予測条件受付部により受け付けられた前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベース作成部により作成された前記屈曲疲労寿命データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する寿命予測部と、
を含むケーブル屈曲疲労寿命予測装置。
【請求項1】
単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係を前記接触荷重の大きさごとに求めてデータベースを作成するデータベース作成工程と、
複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを算出する算出工程と、
前記算出工程にて算出した前記第2の導体素線の前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する屈曲疲労寿命予測工程と、
を含むケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項2】
前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記歪振幅と前記回数との前記関係を示す第1の点群データを得た後、前記第1の点群データにカーブフィッティングを実施して曲線を得ることにより、前記データベースを作成する、
請求項1に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項3】
前記第1の導体素線の前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重と前記回数との関係を示す第2の点群データを得た後、前記引張荷重を前記歪振幅に変換することにより、前記第1の点群データを得る、
請求項2に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項4】
前記第1の導体素線を第3の導体素線で挟み込んで前記接触荷重を掛けた状態で、前記第1の導体素線に繰り返しの前記引張荷重を掛け、前記第2の点群データを得る、
請求項3に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項5】
単線の第4の導体素線に単線の第5の導体素線からの第2の接触荷重を掛けた状態で、前記第5の導体素線に対して繰り返し摺動させ、摺動距離ごとの前記第4の導体素線に掛かる前記第2の接触荷重と前記第4の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第1の関係を取得する工程と、
前記第2の導体素線を含む前記ケーブルを繰り返し屈曲させ、前記ケーブルの曲げ半径と前記第2の導体素線に生じる摩耗痕の深さとの関係である第2の関係、及び前記曲げ半径と前記第2の導体素線の摺動距離との関係である第3の関係を取得する工程と、
前記第1の関係、前記第2の関係、及び前記第3の関係を用いて、前記ケーブルの前記屈曲条件に含まれる曲げ半径から前記第2の導体素線に生じる前記接触荷重の大きさを算出する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブル屈曲疲労寿命予測方法。
【請求項6】
単線の第1の導体素線に接触荷重及び繰り返しの引張荷重を掛けたときの、前記接触荷重の大きさごとの前記引張荷重を変換して得られる前記第1の導体素線の歪振幅と前記第1の導体素線が断線に至るまでに前記引張荷重が掛かる回数との関係から屈曲疲労寿命データベースを作成するデータベース作成部と、
複数の第2の導体素線を含む予測対象のケーブルの屈曲条件から求められた、前記第2の導体素線に生じる歪振幅及び接触荷重の大きさを受け付ける寿命予測条件受付部と、
前記寿命予測条件受付部により受け付けられた前記歪振幅及び前記接触荷重の大きさを前記データベース作成部により作成された前記屈曲疲労寿命データベースと照合して、前記第2の導体素線が断線に至るまでの前記屈曲条件の下での前記ケーブルの屈曲回数を予測する寿命予測部と、
を含むケーブル屈曲疲労寿命予測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−64717(P2013−64717A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69354(P2012−69354)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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