説明

ケーブル布設用平面型電路

【課題】配電盤・制御盤が設置される電気室などに設備することにより、大量のケーブルを狭い空間に設置するのに好適なケーブル布設用平面型電路を提供すること。
【解決手段】電気室内に設置された配電盤・制御盤に電気ケーブルを接続するのに好適な電路である。高圧動力ケーブル、低圧動力ケーブル、制御計測ケーブルなどを同一面で分離して布設する構造とし、このケーブル布設面と同じ面に保守管理用の足場を同時に組み込んだ構成とすることで、高さ方向の制約がある場所での多量のケーブル布設を可能とし、同時に作業用足場としての利用性を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブル布設用平面型電路に係り、特に、配電盤・制御盤が設置されている電気室において配線される電気ケーブルを布設するのに好適な平面型電路に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤・制御盤が設置されている電気室内には、配電盤・制御盤と接続される多数のケーブルが布設されており、電気ケーブルの種類も高圧動力ケーブル、低圧動力ケーブル、制御・計測ケーブルなど数種類にも及んでいる。このような電気ケーブルが導入される電気室内での配線路は、電気室の造営材の下面または側面を利用して吊下げ支持されたケーブルトレイにより構成され、延線方向の支持点間距離も2m以内と定められている(電気設備基準187条)。一般的には、ダクトやケーブルトレイ(別名ケーブルラック)にケーブルを布設する場合が多いが、布設に際しては、高圧、低圧、制御・計測用の回路区分ごとに、上下方向に多段設置することが行なわれている。図5は従来の多段ケーブルトレイ1の部分構成を示している。図示のように、支柱2に横梁3を上下方向に多段に設け、各段の横梁3にケーブル布設方向に沿って側板4を形成することによってトレイを形成している。通常は最上位トレイを高圧動力ケーブルトレイ5とし、次いで中段トレイを低圧動力ケーブルトレイ6、下段トレイを制御・計測ケーブルトレイ7として構成される。このような多段ケーブルトレイ1は造営材の梁より低く、かつ、配電盤・制御盤の扉の開閉に支障を与えないように配電盤・制御盤より高く設置するように計画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−151655号公報
【特許文献2】特開平11−264886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数種のケーブルを種別に多段ケーブルトレイに布設するには、トレイ段数分だけの高さ寸法が必要となる。特に、電力系の高圧・低圧動力ケーブルが制御・計測ケーブルに近いと制御・計測信号に影響を与えるので、ケーブル種に応じて十分に離間して布設する必要が生じる。したがって、この種の多段ケーブルトレイを施工する天井部のスペースがない場合には、大量のケーブルが必要であっても、ケーブルが布設できなくなってしまう問題がある。通常では、初期の建屋の設計段階で電気室高さ寸法を確保しているが、建設途中で天井スラブを低くしたり、天井梁の縦寸法サイズを大きくするなどの設計変更が生じる場合には、多段ケーブルトレイの設置高さスペースを確保できなくなるので、大きな問題となる。
【0005】
更に、電気室に設備される空調ダクトや配管、バスダクトなどの設備機器の設置工事や保守管理のために、作業用足場が電気室内に設置される。この作業用足場は、設置工事期間だけ仮設する場合もあるが、保守管理のために恒久的な作業用スペースを必要とする。このような恒久的な足場の設置スペースの確保も必要であるため、上述のような設計変更により、多段ケーブルトレイの設置スペースが小さくなる要因となってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に着目し、配電盤・制御盤が設置される電気室などに設備することにより、大量のケーブルを狭い空間に設置するのに好適なケーブル布設用平面型電路を提供することを目的とする。
【0007】
また、ケーブル布設室の空調ダクトなどの天井設備機器のための作業用足場を併用できるケーブル布設用平面型電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に、電気室内に設置された配電盤・制御盤に電気ケーブルを接続するのに好適な電路であって、高圧動力ケーブル、低圧動力ケーブル、制御計測ケーブルなどを同一面で分離して布設する構造とし、このケーブル布設面と同じ面に保守管理用の足場を同時に組み込んだ構成とすることで、高さ方向の制約がある場所での多量のケーブル布設を可能とし、同時に作業用足場としての利用性を持たせたものである。
【0009】
本発明に係るケーブル布設用平面型電路は、ケーブル布設室の上部であって、ケーブル接続機器と天井設備機器との中間高さ領域に平面領域を形成する中間梁を設け、前記中間梁にケーブル延線方向の幅方向にケーブル布設経路を分離するセパレータを配置することによって少なくとも電力ケーブル布設ルートと制御・計測ケーブル布設ルートとを分離配置し、前記電力ケーブル布設ルートと制御・計測ケーブル布設ルートとの間に作業足場を配置してなる、ことを特徴としている。
【0010】
前記電力ケーブル布設ルートは高圧動力ケーブル布設ルートと低圧動力ケーブル布設ルートとからなり、両ルート間に延線作業足場を配置する構成とすることができる。
前記ケーブル布設ルートには布設される複数のケーブルの整線ガイドを設けるとよい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、高さスペースのない天井空間であっても、大量のケーブルを狭い空間に設置することができ、ケーブル布設室の空調ダクトなどの天井設備機器のための作業用足場を併用できるという効果を発揮することができる。
【0012】
また、同時に、ケーブルトレイなどの電路材物量の削減、共通足場による足場材の削減、他構造物との干渉回避をすることができる。更に、ケーブル布設エリアの拡大を図ることができ、ケーブル布設作業性の向上(足場撤去作業を含む)、安全性の向上を図ることができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るケーブル布設用平面型電路を設けた電気室の模式断面構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るケーブル布設用平面型電路の部分斜視図である。
【図3】ケーブル布設ルートに設けられる整線ガイドの部分斜視図である。
【図4】配電盤・制御盤へのケーブル取合い要領を示す平面図である。
【図5】従来のケーブルラックの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るケーブル布設用平面型電路の実施形態につき、図面を参照して、詳細に説明する。
図1〜2には、実施形態に係るケーブル布設用平面型電路の電気室への配置状態を示す電気室の模式断面構成図(図1)、ケーブル布設用平面型電路の部分斜視図(図2)を示している。
【0015】
実施形態に係るケーブル布設用平面型電路10は、プラント設備の機器を制御するために配備されている複数の大型配電盤・制御盤12が収容される電気室14に設置されるようになっている。実施形態の場合、配電盤・制御盤12は2列に配列され(配電盤・制御盤12A、12B)、配電盤・制御盤12A、12Bの同士の間や背面部には作業通路16が形成されている。また、電気室14の配電盤・制御盤12に対する作業性に影響を与えないように、電気室14の天井部にはバスダクト18や空調ダクト20などの設備機器が配設されている。
【0016】
このような電気室14に対して外部の電源設備やプラント機器との接続のためのケーブルが導入され、内部に設置されている配電盤・制御盤12に対してケーブル接続が行われる。ケーブルには6kV程度の高圧動力ケーブル22や、230〜440V程度の低圧動力ケーブル24、あるいは100V程度の制御・計測ケーブル26などの種類があり、合計本数が100本程度、電気室14に導入される。
【0017】
ケーブルを種別に分けて複数の配電盤・制御盤12に配電するために、ケーブル布設室である電気室14の上部であって、ケーブル接続機器としての配電盤・制御盤12とバスダクト18や空調ダクト20といった天井設備機器との中間高さ領域に、ケーブル布設用平面型電路10を構築している。このため、まず、前記中間高さ領域に、建屋側壁に渡しかけられて平面領域を形成する中間梁28が設けられる。この中間梁28は、実施形態ではH型鋼を、所定間隔にケーブル延線方向と直交する方向に、平行に配列して構成される。中間梁28の間隔はケーブル支持点間距離となるので、電気設備基準にしたがって2m以内にすればよい。もちろん、面格子状に縦横に梁材を組み付けてラダー状の構成としてもよい。これによりケーブル布設用平面型電路10の基礎面が構築される。
【0018】
中間梁28によって平面領域が形成されるが、この上面部に、少なくとも電力ケーブル布設ルートと制御・計測ケーブル布設ルートとを分離配置するためのセパレータを取り付けるようにしている。このセパレータは、実施形態の場合、高圧動力ケーブル22の布設ルート32を区画する一対の高圧分離セパレータ30A、低圧動力ケーブル24の布設ルート34を区画するセパレータ30B、制御・計測ケーブル26の布設ルート36を区画するセパレータ30Cとからなっている。これらは布設ルート32,34,36の両サイドを他と区画するためにそれぞれ一対設けられている。これらセパレータ30(30A、30B、30C)は布設するケーブルの嵩高に応じて高さを設定すればよく、実施形態の場合、ケーブル延線方向に沿って所定間隔で分離ガイド板38をセパレータ30の天板部に取り付けている。セパレータ材としては、H型鋼、L型鋼、箱型鋼、あるいは鉄板などを適宜用いることができる。このようなセパレータ30は前記中間梁28にボルト締めあるいは溶接などによって固定され、同時に天井造営材から吊下げ具40を用いて吊下げ支持しており、ケーブル重量により撓まないように構成されている。
【0019】
なお、高圧動力ケーブル布設ルート32の床面となっている中間梁28上面には、布設されるケーブル同士が絡み合わないように、図3に示される整線ガイド42が設けられている。これはU型鋼を間隔を置いて溶着したもので、U型鋼の溝、およびU型鋼同士の間にケーブル素線を通すことによって、高圧動力ケーブル22を整列させるようにしている。この整線ガイド42は他のケーブルの布設ルートにも適用できる。
【0020】
ところで、上記のように、各ケーブルの布設ルート32,34,36が形成されているが、各々のルートは直接隣接するのではなく、ルート間に一定の幅スペースを設けるとともに、ここに作業用足場を配置構成するようにしている。
【0021】
これは、まず、制御・計測ケーブル26に、高低圧動力ケーブル22,24からの電磁波によって制御信号や計測信号にノイズが加わることを回避するために、ルートの配列順は高圧動力ケーブル22と制御・計測ケーブル26とが最大分離距離をもつように、高圧動力ケーブル布設ルート32、低圧動力ケーブル布設ルート34、制御・計測ケーブル布施ルート36の順に並べ、かつ、高圧動力ケーブル布設ルート32と低圧動力ケーブル布設ルート34との間の距離よりも、低圧動力ケーブル布設ルート34と制御・計測ケーブル布設ルート36との間の距離が大きくなるように設定されている。そして、この実施形態では、電気室14には2列の配電盤・制御盤12A、12Bが設置されているので、1列の配電盤・制御盤12Aに接続されるケーブル群を、それらの間の中央作業通路に向けて、電気室14の一方の側壁から、高圧動力ケーブル布設ルート32、低圧動力ケーブル布設ルート34、制御・計測ケーブル布施ルート36の順に並べ、他の配電盤・制御盤12Bに接続されるケーブル群を、中央作業通路から他方の電気室側壁に向けて、制御・計測ケーブル布施ルート36、低圧動力ケーブル布設ルート34、高圧動力ケーブル布設ルート32となるように配列している。これにより、中央作業通路上には制御・計測ケーブル26が、電気室14の壁際には高圧動力ケーブル22が延線されるようになる。
【0022】
そして、各布設ルート間には、作業用足場を構築するようになっているが、特に、高圧動力ケーブル布設ルート32と低圧動力ケーブル布設ルート34の間には、延線作業用足場44が設けられている。この延線作業用足場44はパンチングメタル材などからなる建築作業用足場板材料を用いればよい。そして、この延線作業用足場44に隣接して、特に高圧動力ケーブル布設ルート32側に、ケーブル延線器46を設置しておき、ケーブル布設作業に用いるようにしている。
【0023】
また、低圧動力ケーブル布設ルート34と制御・計測ケーブル布設ルート36の間のスペースを利用して、空調ダクトなどの天井設備機器のための保守管理作業用足場48を設けている。この足場も延線作業用足場44と同一の材料を用いればよい。この保守管理作業用足場48を設けることにより、制御・計測ケーブル26と動力ケーブル22、24との間を電気的に回路区分することができ、同時に電気室14の天井設備機器の設置作業や、保守管理作業に応用することができる。
【0024】
このように構成されたケーブル布設用平面型電路10によれば、多段ケーブルトレイ設置のための高さスペースを確保できない場合であっても回路区分を平面で実施することができる。また、高低圧動力ケーブルの布設ルートが交差しないように、布設分離用セパレータを設置しているので、ケーブルの引き回しが容易になっている。図4は配電盤・制御盤へのケーブル取合い要領を示す平面図であり、延線されているケーブルの外側から順に取合い開口50を通じて下部の配電盤・制御盤12に向けて引き回し、配電盤・制御盤12との接続を容易に図ることができる。
【0025】
なお、配電盤・制御盤12に接続する際に異なる回路区分を横断するための布設経路の立体交差を設置すればよい。また、上記実施形態では、ケーブル延線器46を延線作業用足場44に設置する構成としたが、ケーブルの動力延線装置用の取り付け台を別途に設置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明はプラント電機室に導入されるケーブルを配電盤・制御盤上に引き回すのに好適な電路を構成することができる。
【符号の説明】
【0027】
10………ケーブル布設用平面型電路、12A、12B………配電盤・制御盤、14………電気室、16………作業通路、18………バスダクト、20………空調ダクト、22………高圧動力ケーブル、24………低圧動力ケーブル、26………制御・計測ケーブル、28………中間梁、30A………高圧分離セパレータ、30B………低圧分離セパレータ、30C………制御・計測分離セパレータ、32………高圧動力ケーブル布設ルート、34………低圧動力ケーブル布設ルート、36………制御・計測ケーブル布設ルート、38………分離ガイド板、40………吊下げ具、42………整線ガイド、44………延線作業用足場、46………ケーブル延線器、48………保守管理作業用足場、50………取合い開口。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル布設室の上部であって、ケーブル接続機器と天井設備機器との中間高さ領域に平面領域を形成する中間梁を設け、
前記中間梁にケーブル延線方向の幅方向にケーブル布設経路を分離するセパレータを配置することによって少なくとも電力ケーブル布設ルートと制御・計測ケーブル布設ルートとを分離配置し、
前記電力ケーブル布設ルートと制御・計測ケーブル布設ルートとの間に作業足場を配置してなる、
ことを特徴とするケーブル布設用平面型電路。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル布設用平面型電路において、
前記電力ケーブル布設ルートは高圧動力ケーブル布設ルートと低圧動力ケーブル布設ルートとからなり、両ルート間に延線作業足場を配置してなることを特徴とするケーブル布設用平面型電路。
【請求項3】
請求項1に記載のケーブル布設用平面型電路において、
前記ケーブル布設ルートには布設されるケーブルの整線ガイドを設けていることを特徴とするケーブル布設用平面型電路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−249474(P2012−249474A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120884(P2011−120884)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】