説明

ケーブル接続用クロージャのシール構造

【課題】シールゴムの熱膨張や熱収縮によるシール効果の低下を防止できるケーブル接続用クロージャのシール構造を提供する。
【解決手段】ケーブル接続部の周囲を被包する筒状スリーブの両端面に、ケーブル挿通孔のある端面板が着脱自在に嵌合配備されるケーブル接続用クロージャのシール構造であって、ケーブル挿通孔に嵌合する2分割構造の外筒25を端面板に着脱自在に装着する。スリットを有しケーブル81に外挿される環状のシールゴム41を外筒25内に装着する。シールゴム41をケーブル軸心に沿う方向に圧接支持するシールキャップ43を締付部材にて外筒25に締結する。シールキャップ43のシールゴム押圧面61c,63cに複数の空孔71を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルやメタルケーブルの通信ケーブルを接続分岐配線するための接続部を保護収容するケーブル接続用クロージャのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケーブル接続用クロージャは、ケーブルの接続部を被包して保護する収容函体が用いられるが、この収容函体は縦割りの筒状スリーブと、該筒状スリーブ両端面を閉塞しケーブルを挿通する端面板とからなる。筒状スリーブは、分割面を突き合わせて取付固定手段で連結して密着一体化し、コネクタを含むケーブル接続部を気密又は水密状態に維持する。
地下・架空配線や幹線ケーブルの出入孔に使用される端面板においては、従来は予め準備された嵌挿孔(適用ケーブルの最大径)に細径ケーブルを取り付ける場合、端面部嵌挿孔とケーブル間の隙間をスペーサ乃至ブッシュ、又は一定厚さのゴムテープを巻回すると共に、気密性、水密性を確保するためにシーリングテープを合せて使用していた。その他に、テーパ状の筒体を持つ端面板を用い、ケーブル径に対応し現地にてテーパ部の所定位置を切断して使用されるタイプもある。いずれのタイプもケーブルとの接合部は、シール性を考慮してシーリングテープやPVCテープによって固定する方法がとられた(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−89072号公報
【特許文献2】特開2000−92688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大径から小径に至まで直径の異なる各種ケーブルの出入孔を水密性確保にシールするための従来方法であると、ケーブルとケーブル挿通孔との間を埋めてシールするためにケーブル外周に挿通孔に合致するように、ゴムテープ、シーリングテープを巻回するなどし、その作業が煩雑である。また、ケーブルの増設、保守時には特にシーリングテープの除去交換等がやっかいであり、端面板のケーブル挿通孔に挿入する際に、巻回テープの良否がシール性に支障を来たしクロージャ内での浸水の原因になることが多い。シーリングテープを巻きつけても隙間を埋めることが困難であり、バラツキをきれいにする作業が伴って作業性が悪いし、しかも作業者のスキルによって品質に差が生じやすい。
これに対し、シールゴムやブッシュを用いる場合には、作業が容易となり、品質に差が生じにくくなるが、ケーブルが大径化すると、設計上シールゴム厚が薄くなる。シールゴム厚が薄い場合、外気温等の変動により、シールゴムが熱膨張や熱収縮すると、シール効果の低減が顕著となる問題があった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、シールゴムの熱膨張や熱収縮によるシール効果の低下を防止できるケーブル接続用クロージャのシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ケーブル接続部の周囲を被包する筒状スリーブの両端面に、ケーブル挿通孔のある端面板が着脱自在に嵌合配備されるケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記ケーブル挿通孔に嵌合する2分割構造の外筒を前記端面板に着脱自在に装着し、
スリットを有してケーブルに外挿される環状のシールゴムを前記外筒内に装着し、
前記シールゴムをケーブル軸心に沿う方向に圧接支持するシールキャップを締付部材にて前記外筒に締結し、
前記シールキャップのシールゴム押圧面に複数の空孔を形成したことを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【0007】
このケーブル接続用クロージャのシール構造によれば、ケーブルに外挿されたシールゴムが外筒に装着され、外筒の内周とシールゴムの外周との間、及びシールゴムの内周とケーブルの外筒との間が、シールゴムの弾性復元力により密着して気密・水密シールされる。シールゴムは、シールキャップに押圧されていることで、シールゴム押圧面の空孔に一部分がはみ出す(膨出する)。空孔内に膨出したシールゴムの一部は、温度変化に伴う圧縮の変動に応じて空孔内から出入りする。
【0008】
(2) (1)のケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記シールゴムは、外周上の円周方向にV字溝を有していることを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【0009】
このケーブル接続用クロージャのシール構造によれば、シールゴムの中央部がV字溝で切除され、略鼓形状となり、軸線方向に圧縮されると、V字溝を挟む両端側の外周がほぼ平坦外周面のまま拡径する。このため、外筒の内壁面に対する接触が確実になるとともに、外筒の内周面に接触する円周シール部が二箇所となり、漏水の確率が減ってシール性が向上する。
【0010】
(3) (1)又は(2)のケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記端面板がゴム又はエラストマーからなることを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【0011】
このケーブル接続用クロージャのシール構造によれば、端面板自体が弾性体となるので、筒状スリーブへの弾性接触による水密構造が簡素となる。また、別部材のガスケット等を介装する場合に比べ、シール面を半減させて少ない部品で水密性を高めることができる。
【0012】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つのケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記端面板が前記ケーブル挿通孔を開放する2分割構造の分離面を有して突き合わされ、
前記端面板の分離面と、2分割構造に形成される前記筒状スリーブの分離面とが、円周方向の異なる位置に配置されていることを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【0013】
このケーブル接続用クロージャのシール構造によれば、筒状スリーブの内周面側から筒状スリーブの分離面を伝う水は、端面板の外周で堰き止められる。また、端面板の外周側から端面板の分離面を伝う水は、筒状スリーブの内周で堰き止められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るケーブル接続用クロージャのシール構造によれば、外筒内に装着したシールゴムを、シールキャップを外筒に締結することで押圧する構造において、シールキャップのシールゴム押圧面に空孔を設けたので、押圧により空孔内に膨出したシールゴムの一部が温度変化に伴う圧縮の変動に応じて空孔内から出入りする。この結果、外気温が変動してもシールゴムの熱膨張や熱収縮によるシール効果の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明に係るシール構造を備えたケーブル接続用クロージャの一部分を切り欠いた側面図、(b)は内部平面図、(c)は正面図である。
【図2】外筒の装着された端面板の斜視図である。
【図3】端面板の正面図である。
【図4】シールキャップの締結された外筒の斜視図である。
【図5】(a)は外筒の断面図、(b)は分離面で開かれた外筒をシールゴムと共に表した正面図である。
【図6】(a)はシールゴムの斜視図、(b)はシールゴムの側面図、(c)はシールゴムの正面図、(d)はシールゴムの断面図である。
【図7】(a)はシールキャップの正面図、(b)はシールキャップの上面図、(c)シールキャップの背面図、(d)はシールキャップの下面図、(e)はシールキャップの側面図である。
【図8】(a)は上側キャップの正面図、(b)は上側キャップの上面図、(c)上側キャップの背面図、(d)は上側キャップの下面図、(e)は上側キャップの側面図である。
【図9】(a)は下側キャップの正面図、(b)は下側キャップの上面図、(c)下側キャップの背面図、(d)は下側キャップの下面図、(e)は下側キャップの側面図である。
【図10】シールゴムを装着してケーブルとの間をシールした外筒の断面図である。
【図11】(a)は変形例に係るシールゴムの斜視図、(b)は変形例に係るシールゴムの側面図、(c)は変形例に係るシールゴムの正面図、(d)は変形例に係るシールゴムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明に係るシール構造を備えたケーブル接続用クロージャの一部分を切り欠いた側面図、(b)は内部平面図、(c)は正面図である。
本実施の形態に係るシール構造を備えたケーブル接続用クロージャ100は、主ケーブル等の光ケーブルに分岐ケーブルやドロップケーブルを接続する光ケーブル接続部11を収容し保護するもので、光ケーブル接続部11の外周を被包する筒状スリーブ13と、各ケーブルが出入りする筒状スリーブ13の開放部15を水密状態に塞ぐとともに、筒状スリーブ13内に導入されるケーブル毎にケーブル挿通孔17が形成された端面板19と、を備える。
【0017】
筒状スリーブ13は、円筒体または角筒体などの筒状のハウジングで、縦方向或いは水平方向の分離接合面で二つに分割できるようにしたもので、合成樹脂、例えばPP樹脂或いは難燃性のFRPPなどから構成される。筒状スリーブ13は、両端側を開放したスリーブ本体21と、このスリーブ本体21の両端に連接されるカバー23とで筒構造を形成する。スリーブ本体21内には、上記の光ケーブル接続部11や心線余長収納部のある心線トレイ(図示せず)が備えられる。
【0018】
端面板19は、カバー23に着脱自在に嵌合配備される。端面板19は、ゴム又はエラストマー(elastomer)からなる。本実施の形態による構成では、端面板19自体が弾性体となるので、端面板19のカバー23への弾性接触による水密構造が簡素となる。また、別部材のガスケット等を介装する場合に比べ、シール面を半減させて少ない部品で水密性を高めることができる。すなわち、ガスケットを介装する場合にはガスケットの内外周面の二箇所がシール面となるが、端面板19自体を弾性体とした場合には端面板19の外周の一箇所のみがシール面となる。なお、端面板19の外周には環状突条19aがケーブル軸心に沿う方向に複数形成され、カバー23との間で高い水密性が確保されるようになされている。
【0019】
図2は外筒の装着された端面板の斜視図、図3は端面板の正面図である。
端面板19には、それぞれのケーブル挿通孔17,17に嵌合する2分割構造の外筒25,25が着脱自在に装着される。端面板19は、連結部27で左右板体29,29を一体に接続した眼鏡形状に形成されている。それぞれの板体29にはケーブル挿通孔17をケーブル挿通時に開放するための分離面である斜めスリット31が形成される。斜めスリット31は、板体29をケーブル軸心直交方向で貫通した固定穴33に挿通するボルト等の締結手段で密着固定される。
【0020】
図4はシールキャップの締結された外筒の斜視図、図5(a)は外筒の断面図、(b)は分離面で開かれた外筒をシールゴムと共に表した正面図である。
外筒25は、大径筒部35と、大径筒部35の一端に同軸で連設し大径筒部35よりも小径の嵌合筒部である端面板嵌合部37と、を有する。大径筒部35と端面板嵌合部37との間には、内部に段部39(図5参照)が形成される。この段部39は、大径筒部35内に装着される後述のシールゴム41の座面となる。なお、外筒25は、大径筒部35の他端に、後述のシールキャップ43が締結される。
【0021】
端面板嵌合部37は、外周部37aがケーブル挿通孔17とのシール面となり、端部に抜け止めを規制するフランジ部37bが形成される。外筒25は、一体に連設された大径筒部35及び端面板嵌合部37が、ケーブル軸心に沿う方向の分離面45で二分割される。外筒25は、分離面45を境に二つのハーフ体25a,25bとなる。ハーフ体25a,25bは、一端側同士がヒンジ47を介して連結され、他端同士が開閉自在となる。ハーフ体25a,25bの他端同士には固定鍔部49a,49bが設けられ、固定鍔部49a,49bはボルト51で挟持固定される。大径筒部35の内部には、スリット53を有してケーブルに外挿される環状のシールゴム41が装着される。
【0022】
図6(a)はシールゴムの斜視図、(b)はシールゴムの側面図、(c)はシールゴムの正面図、(d)はシールゴムの断面図である。
本実施の形態において、シールゴム41は、スリット53を半径方向に有して内穴55を開放可能とした同一外径の筒体で形成されている。内穴55の内周面にはケーブルとのシール性を高めるための凸条57が円周方向に形成される。シールゴム41は、両端面41a,41aが、ケーブル軸心59に直交する平行面同士となって形成されている。
【0023】
シールゴム41の材質としては、EPDMゴム又は高分子弾性体であるエラストマーの硬度0〜40Hsのものを用いるのがよい。例えば、硬度Hs0〜30〔針入度40〜90(10−1mm)〕好ましくは硬度Hs5〜20で伸び500〜2000好ましくは800〜2000%及び引張強度10〜60kg/cmの加硫されたゴム組成物から構成されるものを選んで用いる。
【0024】
この場合、シールゴム41は、伸びが大きく引張応力(モジュラス)も大きい低硬度ゴム(ショアー硬度0〜40)を用い、すなわち、針入度40〜90、好ましくは50〜70(10−1mm・ JIS K2560)で、伸び500〜2000%好ましくは800〜2000%(JIS K6301)及び引張応力100%−0.5kgf/cm ,300%−1.0kgf/cm(JIS K6301)の加硫ゴム組成物、例えばEPR、EPDM、シリコーンゴム(Q)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジェンゴム(SBS)或いはフッソゴム(FKM)など低硬度(Hs)のものである。
【0025】
図7(a)はシールキャップの正面図、(b)はシールキャップの上面図、(c)シールキャップの背面図、(d)はシールキャップの下面図、(e)はシールキャップの側面図である。
図4に示すように、外筒25の大径筒部35には、端面板嵌合部37の設けられた側と反対側に、シールキャップ43が締結される。締結されたシールキャップ43は、シールゴム41をケーブル軸心59に沿う方向に圧接支持する。シールキャップ43は、図7(a)に示す上側キャップ61と、下側キャップ63とを重ね、ケーブル穴65を形成する。シールキャップ43の左右にはケーブル穴65を挟んで締付部材であるボルト67の挿通される締結穴69,69が穿設される。
【0026】
図8(a)は上側キャップの正面図、(b)は上側キャップの上面図、(c)上側キャップの背面図、(d)は上側キャップの下面図、(e)は上側キャップの側面図である。
図8(a)に示すように、上側キャップ61は、略菱形の上鍔部61aと、その背面に連設する半割筒形状の押圧筒部61bとを有する。押圧筒部61bの端面は、シールゴム押圧面61cとなる。このシールゴム押圧面61cには、端面の半円弧に沿って複数の空孔71が間隔を有して穿設されている。本実施の形態による空孔71は、円弧に沿う方向の長穴で形成される。上鍔部61aは、切欠部61dによってケーブル穴65が開放される。この切欠部61dは、重ね合わされる下側キャップ63によって塞がれる。
【0027】
図9(a)は下側キャップの正面図、(b)は下側キャップの上面図、(c)下側キャップの背面図、(d)は下側キャップの下面図、(e)は下側キャップの側面図である。
図9(a)に示すように、下側キャップ63は、略菱形の下鍔部63aと、その背面に連設する半割筒形状の押圧筒部63bとを有する。押圧筒部63bの端面は、シールゴム押圧面63cとなる。このシールゴム押圧面63cには、端面の半円弧に沿って複数の空孔71が間隔を有して穿設されている。本実施の形態による空孔71は、円弧に沿う方向の長穴で形成される。下鍔部63aは、切欠部63dによってケーブル穴65が開放される。この切欠部63dは、重ね合わされる上側キャップ61によって塞がれる。
【0028】
上側キャップ61と下側キャップ63は、上鍔部61aと下鍔部63aが重ね合わせることで、図7に示す閉じたケーブル穴65を形成する。押圧筒部61b及び押圧筒部63bは、円筒となる。その端面は、図7(c)に示すように、複数の空孔71を円周方向に配置したシールゴム押圧面61c及びシールゴム押圧面63cとなる。上側キャップ61と下側キャップ63を重ねて組み合わされたシールキャップ43は、締結穴69に挿通されたボルト67が、外筒25の締結突起73,73(図2参照)に螺合して外筒25に締結される。外筒25に締結されたシールキャップ43は、シールゴム押圧面61c,63cにてシールゴム41の一端面41aを押圧する。
【0029】
上記のように、端面板19は、ケーブル挿通孔17を開放する2分割構造の分離面であるスリット31を有して突き合わされている。一方、筒状スリーブ13は、図1(c)に示すように、筒状のハウジングがカバー23に形成した縦方向の分離接合面24で二つに分割される。端面板19のスリット31と分離接合面24とはケーブル挿通孔17の円周方向の異なる位置に配置されている。これにより、筒状スリーブ13の内周面側から筒状スリーブ13の分離接合面24を伝う水は、端面板19の外周で堰き止められる。また、端面板19の外周側から端面板19の分離面を伝う水は、筒状スリーブ13のカバー23の内周で堰き止められる。端面板19と外筒25との間でも同様なシール効果がなされている。つまり、端面板19に対し、2分割構造の外筒25は、ケーブル挿通孔17に嵌合する嵌合筒部(端面板嵌合部)37が分離面45にて突き合わされている。図2に示すように、これらのスリット31と分離面45は、ケーブル挿通孔17の円周方向の異なる位置に配置されている。これにより、端面板19の外周側から端面板19のスリット31を伝う水は、外筒25の外周で堰き止められる。また、外筒25の内周側から外筒25の分離面45を伝う水は、端面板19の内周で堰き止められるようになされている。
【0030】
上記構成を有するシール構造の作用を説明する。
図10はシールゴムを装着してケーブルとの間をシールした外筒の断面図である。
ケーブル81にはシールゴム41が外挿される。なお、シールゴム41の装着部よりも図10の右方の外筒25内には、ケーブル81が挿入されない場合には図示しないシールキャップや閉塞栓が適宜に装着される。シールゴム41を装着したケーブル81は、図5(b)に示したハーフ体25a,25bを開いた状態の外筒25によって挟持される。挟持は、シールゴム41を大径筒部35内に収容して行う。挟持後、ハーフ体25a,25bの固定鍔部49a,49bに挿通されたボルト51を閉めることで、シールゴム41は、半径方向の内側へと圧縮される。この圧縮による反発力にてシールゴム41は外周面が大径筒部35の内周面に密着されるとともに、内周面がケーブル81の外周面に密着され水密シールを形成する。
【0031】
シールゴム41、外筒25を装着したケーブル81には、シールキャップ43の上側キャップ61及び下側キャップ63が分離状態で組み付けられる。組み付けられたシールキャップ43は、締結穴69に挿通されたボルト67を、外筒25の締結突起73に締め付ける。ボルト67にて締め付けられたシールキャップ43は、シールゴム押圧面61c,63cがシールゴム41の端面を押圧することとなる。
【0032】
シールゴム41は、シールゴム押圧面61c,63cに押圧されることで、図10に示すように、空孔71に一部分83がはみ出す(膨出する)。シールゴム41は、外気温の上昇により熱膨張すると、内径外径が拡径し、シールゴム41の内周とケーブル81との間の密着力(押圧力)が低下する。つまり、圧縮率が低下する。すると、空孔71にはみ出していたシールゴム41の一部分83がシールゴム本体85側へ変位し、シールゴム内周側の圧縮率の低下が止まる。
【0033】
また、外気温の下降により熱収縮すると、内径外径が縮径し、外筒25の内周とシールゴム41の外周との間の密着力(押圧力)が低下する。つまり、圧縮率が低下する。すると、空孔71にはみ出していたシールゴム41の一部分83がシールゴム本体85側へ変位し、シールゴム外周側の圧縮率の低下が止まる。
【0034】
このように、本シール構造では、ケーブル81に外挿されたシールゴム41が外筒25に装着され、外筒25の内周とシールゴム41の外周との間、及びシールゴム41の内周とケーブル81との間が、シールゴム41の弾性復元力により密着して気密・水密シールされる。シールゴム41は、シールキャップ43に押圧されていることで、押圧により空孔71内に膨出したシールゴム41の一部分83が温度変化に伴う圧縮の変動に応じて空孔71内から出入りすることとなる。つまり、空孔71に膨出した一部分83が、熱膨張・熱収縮に伴うシール面に対する押圧力の変動を緩和するように作用する。
【0035】
次に、変形例に係るシールゴムについて説明する。
図11(a)は変形例に係るシールゴムの斜視図、(b)は変形例に係るシールゴムの側面図、(c)は変形例に係るシールゴムの正面図、(d)は変形例に係るシールゴムの断面図である。なお、図6に示した部位と同一の部位には同一の符号を付す。
この変形例に係るシールゴム41Aは、外周上の円周方向にV字溝91を有している。環状同径のシールゴム41は、シールキャップ43によってケーブル軸心59に沿う方向に圧縮されると、中央部の外周が拡径して略樽形に変形する。一方、この変形例に係るシールゴム41Aは、中央部がV字溝91で切除され、略鼓形状となることで、ケーブル軸心59に沿う方向に圧縮されると、V字溝91を挟む両端側の外周93、93がほぼ平坦外周面のまま拡径する。このため、外筒25の内壁面に対する接触が確実になるとともに、外筒25の内周面に接触する円周シール部(外周93、93)が二箇所となり、漏水の確率が減ってシール性が向上する。
【0036】
したがって、本実施の形態に係るケーブル接続用クロージャ100のシール構造によれば、外筒25内に装着したシールゴム41を、シールキャップ43を外筒25に締結することで押圧する構造において、シールキャップ43のシールゴム押圧面61c,63cに空孔71を設けたので、押圧により空孔71内に膨出したシールゴム41の一部分83が温度変化に伴う圧縮の変動に応じて空孔71内から出入りする。この結果、外気温が変動してもシールゴム41の熱膨張や熱収縮によるシール効果の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
11 ケーブル接続部
13 筒状スリーブ
17 ケーブル挿通孔
19 端面板
25 外筒
37 端面板嵌合部(外筒における嵌合筒部)
41 シールゴム
43 シールキャップ
45 嵌合筒部の分離面
53 スリット(端面板の分離面)
59 ケーブル軸心
61c,63c シールゴム押圧面
67 ボルト(締付部材)
71 空孔
81 ケーブル
91 V字溝
100 ケーブル接続用クロージャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル接続部の周囲を被包する筒状スリーブの両端面に、ケーブル挿通孔のある端面板が着脱自在に嵌合配備されるケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記ケーブル挿通孔に嵌合する2分割構造の外筒を前記端面板に着脱自在に装着し、
スリットを有してケーブルに外挿される環状のシールゴムを前記外筒内に装着し、
前記シールゴムをケーブル軸心に沿う方向に圧接支持するシールキャップを締付部材にて前記外筒に締結し、
前記シールキャップのシールゴム押圧面に複数の空孔を形成したことを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記シールゴムは、外周上の円周方向にV字溝を有していることを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記端面板がゴム又はエラストマーからなることを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のケーブル接続用クロージャのシール構造であって、
前記端面板が前記ケーブル挿通孔を開放する2分割構造の分離面を有して突き合わされ、
前記端面板の分離面と、2分割構造の前記外筒における前記ケーブル挿通孔に嵌合する嵌合筒部の分離面とが、円周方向の異なる位置に配置されていることを特徴とするケーブル接続用クロージャのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−112703(P2011−112703A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266382(P2009−266382)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(595083051)株式会社ジャパンリーコム (40)
【出願人】(591199590)株式会社正電社 (34)
【Fターム(参考)】