説明

ケーブル支持金具

【課題】アングル材のフランジにクリップで固定する支持金具において、フランジの向きに係らずにケーブルの配線方向を任意に選択することができるケーブル支持金具を提供する。
【解決手段】被固定部材Pの一側面に配設される圧接体11を形成する。被固定部材Pの他側面に配設され、該他側面に係止する係止爪13を形成する。圧接体11と圧着体12とでクリップ状の台座金具10を設ける。該台座金具10の圧接体11と被固定部材Pとの間に差し込み固定せしめる差込板21を形成する。該差込板21から連設される係止板22を形成する。差込板21と係止板22とでクリップ状の係止金具20を設ける。異なった方向から差込板21を差し込み固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池モジュールなどに配線するケーブルを架台等に支持するのに好適なケーブル支持金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池モジュールを設置する場合、太陽電池モジュールを太陽電池アレイ用架台に固定した後、ケーブルの配線作業が行われる。この配線作業は、各太陽電池モジュール間にケーブルを配線する作業となり、太陽電池モジュールのフレームや太陽電池アレイ用架台の主材に、クリップ状の支持金具をケーブルと共に挟み付けたり、あるいはナイロンバンドで括り付けたりしてケーブルを固定している。
【0003】
特に、太陽電池アレイ用架台の主材として使用されている等辺山形鋼のフランジや太陽電池モジュールのフレームのフランジにクリップ状の支持金具を取付けてケーブルを接続する場合、主材に沿った配線や主材に直交する方向に配線が行われる。その際、フランジに沿ってケーブルを挟み付けるクリップ状の支持金具では、主材に沿ってケーブルを固定することはできるが、主材に直交するケーブルをフランジに固定することは困難になっている。
【0004】
したがって、クリップ状の支持金具を使用して主材に直交するケーブルを支持する際には、一旦、直近の主材に支持し、太陽電池モジュールのフレームまでケーブルを迂回配線してからこのフレームに沿って主材に直交するように配線することになる。そのため、配線工事に手間を要し、迂回したケーブルは主材等に固定されていないので、弛みや撓みが生じるおそれがあった。しかも、ケーブルを迂回させるために最短距離に配線することもできない。
【0005】
一方、アングル材等のフランジにケーブルを支持する従来の支持金具として、特許文献1に記載された支持器具や、特許文献2に記載された支持金具などが提案されている。
【0006】
特許文献1の支持器具は、フランジに装着する支持器具に各種方向を向いたネジ孔を設け、このネジ孔を利用して支持器具をフランジに固定したり、固定した支持器具にケーブルを連結したりするものである。この支持器具によると、アングル材のフランジに対して、ケーブルの取り付け箇所を選択することで、ケーブルの支持方向を変更できるというものである。
【0007】
特許文献2に記載の支持金具によると、アングル材のフランジに挟着するクリップを設け、このクリップにケーブルを連結する二股片を装着したものである。特に、この二股片をクリップに対して回転自在に設けることで、ケーブルの支持方向を任意に変更できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2930200号公報
【特許文献2】実公昭41−3718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の支持器具では、フランジに支持器具を固定する際にボルトで固定する必要がある。また、この固定した支持器具にケーブルを支持するために、ケーブル保持部材と支持器具とを更にボルトで連結するものである。そのため、この支持器具でケーブルを支持するには、少なくとも2個以上のボルトを使用することになり多くの手間を要するものになる。したがって、特許文献1の支持器具を、太陽電池モジュールの配線工事のごとく、多数の支持金具を効率良く装着して配線する工事に使用した場合、支持金具を装着する作業時間が増大するおそれがある。
【0010】
特許文献2に記載の支持金具によると、クリップ状の支持金具を使用しているので特許文献1の支持器具よりも支持金具の装着作業は容易になる。ところが、この支持金具は、電線管を支持することは可能でも、太陽電池モジュールなどに配線するケーブルを架台等に固定するようには構成されていない。
【0011】
すなわち、太陽電池モジュールなどに配線するケーブルは主に電線管を使用しないで配線されるが、屋外での配線になるので、外気の風圧の影響を逃れるためにできるだけ架台に沿った配線が求められる。ところが、特許文献2に記載の支持金具は、クリップに回転自在に装着した二股片に電線管を支持する構造になっている。このため、この二股片に、電線管を使用せず直にケーブルを支持すると、架台から大きく離れて直接風圧の影響を受ける位置でケーブルが支持されるので、このケーブルが風圧で揺れて断線するおそれも生じる。
【0012】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、アングル材のフランジのような板状の被固定部材にクリップで固定する支持金具において、フランジに沿った配線やフランジに直交する配線などに使用することができ、フランジの向きに係らずにケーブルの配線方向を選択して固定することができるケーブル支持金具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、板状の被固定部材Pに挟着するクリップ状の支持金具において、
被固定部材Pの一側面に配設される圧接体11と、被固定部材Pの他側面に配設され、該他側面に係止する圧着体12とでクリップ状の台座金具10を設け、
該台座金具10の圧接体11と被固定部材Pとの間に差し込み固定せしめる差込板21と、該差込板21から連設され、台座金具10の圧接体11の上面に配置するケーブルQを押圧係止せしめる係止板22とでクリップ状の係止金具20を設け、
被固定部材Pに固定する台座金具10の圧接体11と被固定部材Pとの間に、異なった方向から係止金具20の差込板21を差し込み固定するように構成したことにある。
【0014】
第2の手段は、前記台座金具10において、前記圧接体11の被固定部材Pがわに、前記差込板21を誘導せしめるスライド突起11Aを設け、該スライド突起11Aで向きが異なるように複数の導入口11Bを形成し、これらの導入口11Bを選択して前記差込板21を差込むように構成している。
【0015】
第3の手段において、前記スライド突起11Aは、対向する一対の断面L字形状に形成され、前記導入口11Bは、該一対のスライド突起11Aの間隙と各スライド突起11Aの側面に開穿された開口部とで向きが異なるように形成されている。
【0016】
第4の手段は、前記係止金具20において、前記差込板21の板面に該差込板21の差込み位置を固定せしめる固定片23を設けたものである。
【0017】
第5の手段は、前記圧接体11の被固定部材Pがわに係止突起11Cを突設すると共に、該係止突起11Cに係合せしめる係合長孔23Aを前記固定片23に形成し、前記導入口11Bに前記差込板21と共に固定片23が差し込まれたときに、該固定片23の係合長孔23Aが係止突起11Cに係止するように構成したことにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1によると、被固定部材Pに固定した台座金具10の圧接体11と被固定部材Pとの間に、異なった方向から係止金具20の差込板21を差し込み固定できるように構成したことにより、例えばフランジに沿った配線とフランジに直交する配線とを選択してケーブルを支持することができるものである。
【0019】
請求項2のごとく、差込板21を誘導せしめるスライド突起11Aを設け、該スライド突起11Aで向きが異なるように形成された複数の導入口11Bから差込板21を差込むように構成したことにより、係止金具20の差込み固定を容易に行うことができる。
【0020】
請求項3により、スライド突起11Aは、対向する一対の断面L字形状に形成され、導入口11Bは、該一対のスライド突起11Aの間隙と各スライド突起11Aの側面に開穿された開口部とで向きが異なるように形成しているので、差込方向を90度ごとに変更した三方向から差込板21を差込むことができるようになる。
【0021】
請求項4、5のように、導入口11Bに差込板21と共に固定片23が差し込まれたときに、該固定片23の係合長孔23Aが係止突起11Cに係止するように構成したことにより、台座金具10に対して係止金具20を確実に固定することができるものである。この結果、いずれの方向から差込板21を差込んでも台座金具10と係止金具20との連結力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の使用例を示す概略平面図である。
【図3】本発明の台座金具を示す斜視図である。
【図4】本発明の台座金具を示す断面図である。
【図5】本発明の台座金具を示す背面図である。
【図6】本発明の係止金具の一実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明の係止金具の一実施例を示す背面図である。
【図8】本発明の使用例を示す側面図である。
【図9】本発明の導入口に差込板と固定片とを差し込む例を示す側面図である。
【図10】本発明の台座金具に係止金具を固定した状態を示す側面図である。
【図11】本発明の配線例を示す概略平面図である。
【図12】本発明の係止金具の他の実施例を示す斜視図である。
【図13】本発明の台座金具の他の実施例を示し、(イ)、(ロ)は側面図、(ロ)はは正面図である。
【図14】(イ)乃至(ニ)は本発明の係止金具の他の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によると、アングル材のフランジのような板状の被固定部材にクリップで固定する支持金具において、フランジに沿った配線とフランジに直交する配線とに使用することができ、フランジの向きに係らずにケーブルの配線方向を任意に選択することができるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明支持金具は、アングル材のフランジ等のごとき板状の被固定部材Pに挟着するクリップ状の支持金具を改良したものであり、被固定部材Pに挟着固定する台座金具10と、この台座金具10と被固定部材Pとの間に固定してケーブルQを係止する係止金具20とで構成されている(図1参照)。
【0025】
台座金具10は、弾性を有する金属材にて側面略U字形状を成したクリップ状に設けられており、板状の被固定部材Pの一側面に配設される圧接体11と、被固定部材Pの他側面に配設される圧着体12とが設けられている(図4参照)。この圧着体12は、側面山形状に屈曲されると共に、先端に被固定部材Pに係止する係止爪13を備えている。そして、圧接体11と圧着体12との間に被固定部材Pを挟み付け、フランジ等の開放端部に沿ってこの台座金具10を固定する(図2、図10参照)。また、図5に示すような補強リブ12Aを形成して圧着体12の強度を高めている。
【0026】
一方、圧接体11には、後述する差込板21を誘導せしめるスライド突起11Aを被固定部材Pがわに突設している。図示例のスライド突起11Aは、対向する一対の断面L字形状に形成されている(図4参照)。そして、これら一対のスライド突起11Aの間隙と各スライド突起11Aの側面に開穿された開口部とで向きが異なる導入口11Bが形成されたものである。また、図3に示すような圧接体11に形成した一対の補強リブ11Dを形成して圧接体11の強度を高めている。
【0027】
一方、係止金具20も台座金具10と同様に、弾性を有する金属材にて側面略U字形状を成したクリップ状に設けられている(図6参照)。この係止金具20には、台座金具10の圧接体11と被固定部材Pとの間に差し込み固定せしめる差込板21が設けられており、台座金具10に対して係止金具20の差込板21を差し込み固定できるように構成している(図8参照)。実施例の差込板21は、台座金具10に設けられたスライド突起11Aで形成される導入口11Bにより、複数の方向から差し込み固定することができる。また、差込板21の固定手段は図示例に限られるものではなく、圧接体11と被固定部材Pとの間に強制的に差し込んで固定するように構成することも可能である。
【0028】
更に、差込板21の板面に固定片23を設けている(図7参照)。この固定片23は、差込板21の差込み位置を固定せしめる部材である(図8参照)。図示例では、差込板21から台座金具10の圧接体11に圧着せしめる固定片23を形成している。更に、この固定片23に係合長孔23Aを開穿したものである(図7参照)。一方、圧接体11の被固定部材Pがわ、すなわち、固定片23と重合する面に係止突起11Cを突設している(図9参照)。そして、導入口11Bに差込板21と共に固定片23が差し込まれたときに、該固定片23の係合長孔23Aが係止突起11Cに係止するように構成している(図10参照)。図示例の係止突起11Cはバーリングにて形成しているが、この係止突起11Cの形状は図示例に限られるものではなく、係合長孔23Aに係止できるものならどのような形状でもよい。また、差込板21の差込み位置を固定せしめる手段も図示例に限られない。
【0029】
更に、差込板21から係止板22が連設されている(図6参照)。この係止板22は、台座金具10の圧接体11の上面に配置するケーブルQを押圧係止する部材である。図示の係止板22は、先端に折返し片22Aを形成してケーブルQの挿入を容易にしている。更に、係止板22の長手方向に沿って補強ビード22Bを形成すると共に、この補強ビード22Bに直交しケーブルQの側面を押さえ付ける波形状22Cを形成している。これらの補強ビード22Bや波形状22Cは、圧接体11の上に配設されるケーブルQを係止板22にて確実に係止できるように構成したものである。図1に示す係止金具20では、4本のケーブルQを平行に押さえる波形状22Cを形成しているが、このほか、図12に示す係止金具20のように、2本のケーブルQを平行に押さえる波形状22Cを形成することも可能であり、係止板22の長さや形状は任意に変更することができる。
【0030】
本発明支持金具の使用例を図11に示している。すなわち、本発明の台座金具10は、被固定部材Pのフランジに挟着固定するものであるが、本発明の係止金具20は、この台座金具10に対して連結する向きを変更することができる。そこで、複数の被固定部材Pに直交するようにケーブルQを配線する場合において、同図(イ)に示すごとく、係止金具20の係止板22の先端部、すなわち折返し片22Aを同一方向に揃えた状態で台座金具10に連結する。このように係止金具20を設置すると、係止金具20の同一方向から係止板22の内部にケーブルQを係止することが可能になり、作業能率を上げることができる。
【0031】
一方、図11(ロ)に示すごとく、折返し片22Aを交互に異ならせた方向で台座金具10に連結することも可能である。このように係止金具20を設置すると、係止板22の開放端部が交互になるので、各係止金具20からケーブルQが連続して外れることがない。したがって、ケーブルQの係止状態を確実に維持することができる。
【0032】
尚、本発明支持金具の各構成は図示例に限られるものではない。例えば、図13(イ)乃至(ハ)は、本発明の台座金具10の他の実施例を示している。同図(イ)は、圧接体11を切り起こして係止突起11C形成した例を示している。また同図(ロ)は、スライド突起11Aの形状を断面L字状から断面I字状に変更した例を示す。更に、同図(ハ)は、スライド突起11Aの位置を変更した例を示している。
【0033】
また、図14(イ)乃至(ニ)は、本発明の係止金具20の他の実施例を示している。同図(イ)は、固定片23の向きを変更した例を示す。同図(ロ)は、係止板22に形成した波形状22Cをなくしてフラット形状にした例を示す。同図(ハ)は、係止板22に形成した波形状22Cを増やした例を示す。同図(ニ)は、多数のケーブルQや配管を係止する係止板22に変更した例を示している。このように、本発明支持金具の台座金具10や係止金具20の形状や寸法、材質などは実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において自由に設計変更できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、太陽電池モジュールなどに配線するケーブルを架台等に支持するのに好適なケーブル支持金具として説明しているが、このような利用に限られるものではなく、板状の被固定部材Pに挟着するクリップ状の支持金具としてあらゆる配線工事に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
P 被固定部材
Q ケーブル
10 台座金具
11 圧接体
11A スライド突起
11B 導入口
11C 係止突起
11D 補強リブ
12 圧着体
12A 補強リブ
13 係止爪
20 係止金具
21 差込板
22 係止板
22A 折返し片
22B 補強ビード
22C 波形状
23 固定片
23A 係合長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被固定部材に挟着するクリップ状の支持金具において、被固定部材の一側面に配設される圧接体と、被固定部材の他側面に配設され、該他側面に係止する圧着体とでクリップ状の台座金具を設け、
該台座金具の圧接体と被固定部材との間に差し込み固定せしめる差込板と、該差込板から連設され、台座金具の圧接体の上面に配置するケーブルを押圧係止せしめる係止板とでクリップ状の係止金具を設け、
被固定部材に固定する台座金具の圧接体と被固定部材との間に、異なった方向から係止金具の差込板を差し込み固定するように構成したことを特徴とするケーブル支持金具。
【請求項2】
前記台座金具において、前記圧接体の被固定部材がわに、前記差込板を誘導せしめるスライド突起を設け、該スライド突起で向きが異なるように複数の導入口を形成し、これらの導入口を選択して前記差込板を差込むように構成した請求項1記載のケーブル支持金具。
【請求項3】
前記スライド突起は、対向する一対の断面L字形状に形成され、前記導入口は、該一対のスライド突起の間隙と各スライド突起の側面に開穿された開口部とで向きが異なるように形成された請求項2記載のケーブル支持金具。
【請求項4】
前記係止金具において、前記差込板の板面に該差込板の差込み位置を固定せしめる固定片を設けた請求項1記載のケーブル支持金具。
【請求項5】
前記圧接体の被固定部材がわに係止突起を突設すると共に、該係止突起に係合せしめる係合長孔を前記固定片に形成し、前記導入口に前記差込板と共に固定片が差し込まれたときに、該固定片の係合長孔が係止突起に係止するように構成された請求項3又は4記載のケーブル支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−244841(P2012−244841A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114580(P2011−114580)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】