説明

ケーブル支持金具

【課題】既設のケーブル等の上に新たなケーブル等を重ねて固定することができるケーブル支持金具を提供する。
【解決手段】ケーブルPを被固定部材Qに固定せしめる固定基体10を設ける。該固定基体10に重ねたケーブルPを固定基体10に固定せしめる重合固定体20を設ける。固定基体10は、板状の被固定部材Qの端部を挟着するクリップ状を成す。重合固定体20は、係止片21と、圧着帯22と、連結部23とから成る。この重合固定体20で、固定基体10にて固定した既設のケーブルPの上に追加のケーブルPを重合して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばケーブルや配管等をパネルに固定する際に使用するケーブル支持金具に係り、特に、既設のケーブルの上に新たなケーブルを重ねて固定することができるケーブル支持金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルや配管等の長尺体をパネルに固定する際に使用するクランプとして、例えば特許文献1に記載された長尺体保持具が提案されている。この保持体は、異なる外径のケーブルを揺動することなく保持することができるようにした保持具で、略平板状に形成された基板と、該基板と一体に形成されたロック部と保持帯を形成し、該保持帯には1箇所もしくは複数箇所の薄肉に形成されたヒンジを形成し、また、該ロック部には1箇所または複数箇所の係止凸部を形成し、かつ、該保持帯とロック部の間には略平板状の受け部を形成し、該受け部はその長手方向に、ロック部側の端からヒンジ側の端に向けて下方に傾斜をつけて形成したものである。
【0003】
一方、太陽電池モジュールを支持する架台などでは、図7乃至図9に示すようなケーブル支持金具100、200が使用されている。これらの支持金具は、形鋼フランジなどのプレート端部を挟着する金属製の支持金具にケーブルを挟み込んで固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐19409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の長尺体保持具では、径の異なるケーブルや配管を同時に固定できるように構成されているが、ケーブルを固定した後は、同じ位置に新たなケーブルを追加して固定することは困難になる。例えば、形鋼フランジのプレート端部に配線する場合のように、限られたスペースに配線や配管を設置する場合、特許文献1のケーブル保持具で設置すると、構造上、同じスペースに追加の配線や配管を重ねて設置することができなくなる。そのため、追加の配線等は、予め設置した保持具に隣接するように設置することになるが、隣接位置に配線用のスペースがない場合は追加の配線等を設置することはできない。しかも、特許文献1の保持具は、合成樹脂にて成形する必要があるため、屋外や紫外線の当る場所での使用は、耐久性に問題が生じる。
【0006】
一方、図7乃至図9に示す従来の支持金具では、プレート端部に沿ってケーブルを固定するものである。このタイプの支持金具もケーブルを固定した後は、同じ位置に新たなケーブルを追加して強固に固定することは困難であった。これら従来の支持金具が特許文献1の保持具と異なるのは、支持金具の上に追加のケーブルを重ねて設置できる平坦な構造にある。そのため、例えば太陽電池モジュールを支持する架台などのように、多くのケーブルを同じ位置に固定する場合、従来の支持金具で固定したケーブルに追加のケーブルを重ね、当該ケーブルと追加のケーブルとをナイロンバンド等の紐状部材にて括り付ける手段が採られている。
【0007】
ところが、既設のケーブルに追加のケーブルをナイロンバンド等で括り付けると、既設のケーブルに追加ケーブルの負荷が加わることになるので、ナイロンバンドの接触部分などに損傷が生じるおそれがあった。しかも、ナイロンバンド等は、経年変化や紫外線による劣化で、使用時に破断する可能性もある。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、固定位置が制限されている場所でも追加ケーブル等を重ねて設置し強固に固定することが可能なケーブル支持金具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、ケーブルPを被固定部材Qに固定するケーブル支持金具において、ケーブルPを被固定部材Qに固定せしめる固定基体10と、該固定基体10上に重ねたケーブルPを固定基体10に固定せしめる重合固定体20とを構成し、固定基体10にて固定した既設のケーブルPの上に追加のケーブルPを重合して固定するように構成したことにある。
【0010】
第2の手段において、前記固定基体10は、板状の被固定部材Qの端部を挟着する挟着固定部11と、該挟着固定部11上面に配置した前記ケーブルPを押圧係止せしめる係止板12とを備えたクリップ状を成すものである。
【0011】
第3の手段において、前記重合固定体20は、前記固定基体10の一端部に開穿された係止孔13に係脱自在に形成された係止片21と、該係止片21に連設され前記固定基体10にて固定した既設のケーブルP上の追加のケーブルPを上から圧着せしめる圧着帯22と、前記固定基体10の他端部に連結係止せしめる連結部23とを備えている。
【0012】
第4の手段は、前記重合固定体20の前記連結部23側端部に解除用係止部24を設け、該解除用係止部24に工具の先端を係止して前記連結部23の連結係止状態を解除するように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によると、ケーブルPを被固定部材Qに固定せしめる固定基体10と、該固定基体10に重ねたケーブルPを固定基体10に固定せしめる重合固定体20とを構成し、固定基体10にて固定した既設のケーブルPの上に追加のケーブルPを重合して固定するように構成したことにより、固定位置が制限されている場所でもケーブル等を追加して確実に固定することができる。
【0014】
請求項2のごとく、固定基体10は、板状の被固定部材Qの端部を挟着する挟着固定部11と、該挟着固定部11上面に配置した前記ケーブルPを押圧係止せしめる係止板12とを備えたクリップ状を成しているので、例えば形鋼のリブなどに沿った固定やパネル状の被固定部材Qへの固定をワンタッチで行うことができる。しかも、この形状の固定基体10は、市販の支持金具として流通しており、これら市販の支持金具を固定基体10として使用することも可能である。
【0015】
請求項3のように、重合固定体20は、前記固定基体10の一端部に開穿された係止孔13に係脱自在に形成された係止片21と、該係止片21に連設され前記固定基体10にて固定した既設のケーブルP上の追加のケーブルPを上から圧着せしめる圧着帯22と、前記固定基体10の他端部に連結係止せしめる連結部23とを備えているので、係止片21を係止孔13に係止した状態でケーブルPを圧着帯22で圧着し、連結部23をアンカー構成体10の他端部に連結係止するだけの操作で追加のケーブルPを固定することができる。したがって、ケーブルPの固定作業がきわめて容易になり、ケーブルPに沿った多数の固定作業も合理的に行うことができる。
【0016】
請求項4のごとく、重合固定体20の前記連結部23側端部に解除用係止部24を設け、該解除用係止部24に工具の先端を係止して前記連結部23の連結係止状態を解除するように構成したことで、追加のケーブルPを架け替えることも可能になる。この結果、より多彩な工事に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の使用状態を示す側断面図である。
【図3】本発明の重合固定体の一実施例を示す側面図である。
【図4】本発明の重合固定体の一実施例を示す平面図である。
【図5】本発明の重合固定体の一実施例を示す底面図である。
【図6】(イ)〜(ハ)は本発明の重合固定体の他の実施例を示す側面図である。
【図7】従来の支持金具を示す使用斜視図である。
【図8】従来の支持金具を示す分解斜視図である。
【図9】従来の支持金具を示す使用斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によると、既設のケーブルの上に新たな追加ケーブルを重ねて固定することで、固定位置が制限されている場所でもケーブルを追加して固定することが可能になるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明クランプは、配線用のケーブルPを、アングル材のフランジ等のごとき板状の被固定部材Qに固定するもので、固定基体10と重合固定体20とで構成されている(図1参照)。
【0020】
固定基体10は、ケーブルPを被固定部材Qに固定せしめる部材で、この固定基体10にて、被固定部材QにケーブルPを直接固定する(図1参照)。図示例の固定基体10は、金属製のクリップ状を成したもので、挟着固定部11と係止板12とで構成されている(図2参照)。
【0021】
挟着固定部11は、板状の被固定部材Qの端部を挟着する帯状の部材であり、側面略U字形状に屈曲されている(図2参照)。そして、この挟着固定部11を被固定部材Qの板面に強固に固定するため、挟着固定部11の先端部を折り返して係止突片14を形成している。一方、係止板12は、この挟着固定部11の端部から延長形成された帯状の部材であり、挟着固定部11と反対向きの側面略U字形状に屈曲されている。そして、被固定部材Qに固定した挟着固定部11上面に、ケーブルPを配置し、このケーブルPを係止板12が押圧係止せしめるものである。
【0022】
この固定基体10は、既に市販されている支持金具を利用することができる。例えば、図7乃至図9に示す従来の支持金具を本発明の固定基体10として利用することが可能である。本発明の図示例では、図7に示すタイプの支持金具100を本発明の固定基体10として利用したものである。
【0023】
また、図8、図9に示すタイプの支持金具200を本発明の固定基体10として利用した場合は、被固定部材Pに固定する台座金具210の圧接体211と被固定部材Qとの間に、異なった方向から係止金具220の差込板221を差し込み固定することができる(図8参照)。この結果、固定するケーブルPの向きを変更可能な支持金具200を固定基体10として使用することができる。
【0024】
このように、挟着固定部11の構成は図示例に限られるものではなく、例えば、被固定部材Qに開穿した連結孔に差込固定するタイプの固定部に変更することも可能である(図示せず)。
【0025】
重合固定体20は、固定基体10に重ねるケーブルPを固定基体10に固定せしめる部材である(図1参照)。すなわち、この重合固定体20は、固定基体10にて固定した既設のケーブルPの上に、追加のケーブルPを重合して固定するものである。図示例では、金属製の帯板を屈曲成形した係止片21と圧着帯22と連結部23とで構成されている(図2参照)。重合固定体20に金属材を使用することにより、合成樹脂材に比べて格段に高い耐久性、耐候性、耐磨耗性などが得られるので、例えば太陽電池モジュールを支持する架台などのように、屋外等の使用も可能になる。
【0026】
係止片21は、固定基体10の一端部に開穿されている係止孔13に係脱自在に係止せしめる部材である(図2参照)。この係止片21は略矩形状に突出して上向きに屈曲され、係止孔13の上から下に向けて挿入係止するものである(図2参照)。圧着帯22は、係止片21に連設された帯状の部材であり、固定基体10にて固定した既設のケーブルP上に重ねた追加のケーブルPを上から圧着するように構成している(図2参照)。そして、係止片21を係止孔13に係止した状態で圧着帯22の弾性力を利用してケーブルPを押さえ付けている。
【0027】
図示の圧着帯22には、ケーブルPの長手方向に沿って各ケーブルPの側面に沿った密着凹部22Aや(図3参照)、圧着帯22の強度を高める補強リブ22Bを形成している(図4参照)。この圧着帯22を固定基体10の他端部に連結係止するのが連結部23である。図示の連結部23は、固定基体10の挟着固定部11と係止板12との境界部分の端部に嵌合係止する側面略円弧形状に屈曲されている(図2参照)。また、連結部23の係止力を高めるために、連結部23の先端左右に一対の係止爪25を突設し、固定基体10がわに向けて屈曲している(図2参照)。この係止爪25によって固定基体10の端部曲面に多少の変化があっても確実に連結できるようにしている。
【0028】
さらに、この連結部23の近傍上部に解除用係止部24を設けている(図4参照)。図示の解除用係止部24は、固定基体10の係止孔13と同様の孔状に開穿したもので、この解除用係止部24に、ドライバーなどの工具(図示せず)の先端を挿入係止して連結部23の連結状態を解除できるようにしたものである。
【0029】
尚、本発明クランプの各構成は図示例に限られるものではない。例えば、図6(イ)乃至(ハ)は、本発明の重合固定体20の他の実施例を示している。同図(イ)は、圧着帯22において、密着凹部22Aを形成せずにフラット状の圧着帯22を形成した例を示している。また同図(ロ)は、圧着帯22の側面形状が大きく湾曲した例を示す。更に、同図(ハ)は、密着凹部22Aの数を少なくした例を示している。このように、本発明クランプの固定基体10や重合固定体20の形状や寸法、材質などは実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において自由に設計変更できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明支持具は、ケーブルPを重ねて固定する構成に利用するあらゆる場面に利用することが可能であり、用途によってサイズや材質を自由に変更することができる。また、ケーブルPに代えて配管などを固定することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
P ケーブル
Q 被固定部材
10 固定基体
11 挟着固定部
12 係止板
13 係止孔
14 係止突片
20 重合固定体
21 係止片
22 圧着帯
22A 密着凹部
22B 補強リブ
23 連結部
24 解除用係止部
25 係止爪
100 支持金具
200 支持金具
210 台座金具
211 圧接体
220 係止金具
221 差込板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルや配管等のケーブルを被固定部材に固定するケーブル支持金具において、ケーブルを被固定部材に固定せしめる固定基体と、該固定基体上に重ねたケーブルを固定基体に固定せしめる重合固定体とを構成し、固定基体にて固定した既設のケーブルの上に追加のケーブルを重合して固定するように構成したことを特徴とするケーブル支持金具。
【請求項2】
前記固定基体は、板状の被固定部材の端部を挟着する挟着固定部と、該挟着固定部上面に配置した前記ケーブルを押圧係止せしめる係止板とを備えたクリップ状を成す請求項1記載のケーブル支持金具。
【請求項3】
前記重合固定体は、前記固定基体の一端部に開穿された係止孔に係脱自在に形成された係止片と、該係止片に連設され前記固定基体にて固定した既設のケーブル上の追加のケーブルを上から圧着せしめる圧着帯と、前記固定基体の他端部に連結係止せしめる連結部とを備えた請求項1記載のケーブル支持金具。
【請求項4】
前記重合固定体の前記連結部側端部に解除用係止部を設け、該解除用係止部に工具の先端を係止して前記連結部の連結係止状態を解除するように構成した請求項3記載のケーブル支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87817(P2013−87817A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226964(P2011−226964)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】