説明

ケーブル敷設構造およびケーブル敷設方法

【課題】構成が簡素で且つ敷設作業が容易であって、地中管路内における占有スペースが小さいケーブル敷設構造を提供する。
【解決手段】ケーブル敷設構造は、ケーブル8が挿通され、地中管路1内に配設される金属製のフレキシブル管9と、フレキシブル管9の管長手方向に離れた2箇所にそれぞれ取り付けられた2つの接続部材20a、20bと、2つの接続部材20a、20bにそれぞれ接続された2本の線条材10とを備えている。2本の線条材10が、それぞれ縦孔2、3内から上方へ引っ張られていることによって、フレキシブル管9は地中管路1内の上部へ引き上げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの縦孔の間に接続される地中管路内にケーブルを敷設される際のケーブル敷設構造およびその敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバーケーブル等のケーブルを、既設の下水道管やガス導管等の地中管路内に敷設することが行なわれている。ケーブルは、地中管路内の流水等の流れを妨げないように、地中管路の上方に配置する。
【0003】
このようなケーブルの敷設構造の1つとして、例えば特許文献1に記載されているものがある。このケーブル敷設構造では、ケーブルとテンションメンバーとが内部に挿通されたガイド管を地中管路内に引き込み、このテンションメンバーの両端部をガイド管の端部または途中部分から引き出して、地中管路内に接続されている2つのマンホール内にそれぞれ設けられたテンション付与装置によって上方に引っ張ることにより、ガイド管を地中管路内の上部に敷設している。このガイド管は、ポリエチレン等の樹脂製であって、内部には複数の仕切り壁が設けられており、この仕切り壁によって複数本のケーブルとテンションメンバーがそれぞれ挿通される複数の空間に仕切られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−299235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のケーブル敷設構造では、ケーブルを保護するガイド管とは別に、このガイド管を地中管路の上部につり上げるためのテンションメンバーが必要となる。また、敷設作業の際、ガイド管の内部に、ケーブルとテンションメンバーとを別々に挿通しなければならないため、敷設作業に手間を要する。また、ガイド管は、ケーブルとテンションメンバーとが挿通されるため、径が大きくなり、地中管路内での占有スペースが大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、構成が簡素で且つ敷設作業が容易であって、地中管路内における占有スペースが小さいケーブル敷設構造およびケーブル敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
第1の発明のケーブル敷設構造は、2つの縦孔に接続される地中管路内にケーブルを敷設するケーブル敷設構造であって、前記ケーブルが挿通され、前記地中管路内に配設される金属製のフレキシブル管と、前記フレキシブル管の管長手方向に離れた2箇所にそれぞれ取り付けられた2つの接続部材と、前記2つの接続部材にそれぞれ接続され、それぞれが前記2つの縦孔内から上方へ引っ張られることによって前記フレキシブル管を前記地中管路内の上部へ引き上げる2本の線条材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、ケーブルが挿通されたフレキシブル管に2つの接続部材が取り付けられ、この接続部材に接続された線条材が縦孔内から上方に引っ張られることによって、フレキシブル管は上方に引き上げられて地中管路の上部に敷設されている。フレキシブル管は、金属製であるため、このような引張力に十分に耐えることができる。
【0009】
フレキシブル管は、ケーブルを保護するものであると同時に、張力がかけられて地中管路の上部に引き上げられるものであり、従来のケーブル敷設構造のテンションメンバーとガイド管とを兼ねている。したがって、従来のケーブル敷設構造に比べて構成が簡素である。また、フレキシブル管内にはケーブルのみを挿通すればよく、テンションメンバーを挿通する工程が不要となるため、敷設作業が容易となる。さらに、フレキシブル管は、ケーブルのみが挿通可能な内径であればよく、上述のガイド管に比べて小さい径に設定できるため、地中管路内での占有スペースを小さくすることができる。また、フレキシブル管は、屈曲自在であるため、地中管路内への入線作業が行いやすく、また、地中管路内から例えば縦孔内に屈曲させて敷設することができる。
【0010】
第2の発明のケーブル敷設構造は、前記第1の発明において、前記フレキシブル管の一部が、前記地中管路内から前記縦孔内へ屈曲して引き出されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、ケーブルを地中管路内から縦孔内に屈曲して引き出す場合に、ケーブルをフレキシブル管によって簡単に保護することができる。
【0012】
第3の発明のケーブル敷設構造は、前記第1又は第2の発明において、前記接続部材が、前記フレキシブル管を挟持する挟持溝がそれぞれ形成された2つの分割体と、前記2つの分割体を連結固定する固定手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、フレキシブル管を2つの分割体で挟んで、この2つの分割体を固定手段によって連結固定するという簡単な方法で、接続部材をフレキシブル管に取り付けることができる。
【0014】
第4の発明のケーブル敷設構造は、前記第3の発明において、前記フレキシブル管は蛇腹状に形成され、前記分割体の前記挟持溝の、前記管長手方向の途中部に、前記蛇腹状のフレキシブル管の外周部と係合する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、フレキシブル管の外周部と凸部とが係合することによって、フレキシブル管は接続部材に対して管長手方向に移動不能となる。このように、フレキシブル管の外周部の谷部に係合される凸部を設けるという簡単な構成によって、接続部材をフレキシブル管に管長手方向に移動不能に取り付けることができる。
【0016】
第5の発明のケーブル敷設構造は、前記第3又は第4の発明において、前記2つの分割体には、それぞれ前記挟持溝が並列して複数形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、接続部材は、複数のフレキシブル管を保持することができるため、複数のフレキシブル管に同時に張力を付与することができる。
【0018】
第6の発明のケーブル敷設構造は、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記接続部材には、前記管長手方向に貫通する2つの挿通孔が形成されており、前記線条材は、U字状に折り返された状態で前記2つの挿通孔に挿通されていることを特徴とする。
【0019】
第7の発明のケーブル敷設方法は、2つの縦孔に接続される地中管路内にケーブルを敷設する方法であって、金属製のフレキシブル管に前記ケーブルを挿通する工程と、前記フレキシブル管の管長手方向に離れた2箇所に2つの接続部材をそれぞれ取り付けるとともに、前記2つの接続部材に2本の線条材をそれぞれ接続する工程と、前記2つの接続部材が取り付けられた前記フレキシブル管を、前記地中管路内に引き入れて、前記2つの接続部材にそれぞれ接続された前記2本の線条材を、前記2つの縦孔内からそれぞれ上方に引っ張ることにより、前記フレキシブル管を前記地中管路内の上部に敷設する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
この構成によると、ケーブルが挿通されたフレキシブル管に2つの接続部材を取り付けて、この接続部材に接続した線条材を縦孔内から上方に引っ張ることによって、フレキシブル管を上方に引き上げて地中管路の上部に敷設する。フレキシブル管は、金属製であるため、このような引張力に十分に耐えることができる。
【0021】
フレキシブル管は、ケーブルを保護するものであると同時に、張力がかけられて地中管路の上部に引き上げられるものであり、従来のケーブル敷設構造のテンションメンバーとガイド管とを兼ねている。したがって、従来のケーブル敷設構造に比べて構成が簡素である。また、フレキシブル管内にはケーブルのみを挿通すればよく、テンションメンバーを挿通する工程が不要となるため、敷設作業が容易となる。さらに、フレキシブル管は、ケーブルのみが挿通可能な内径であればよく、上述のガイド管に比べて小さい径に設定できるため、地中管路内での占有スペースを小さくすることができる。また、フレキシブル管は、屈曲自在であるため、地中管路内への入線作業が行いやすく、また、地中管路内から例えば縦孔内に屈曲させて敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るケーブル敷設構造を示す概略図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】接続部材の斜視図である。
【図7】接続部材の分解斜視図である。
【図8】接続部材の平面図である。
【図9】図1のIX−IX線断面図である。
【図10】弛み防止材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態は、下水道管の内部に光ファイバーケーブル等の通信ケーブルを敷設する場合に本発明を適用した一例である。
【0024】
図1に示すように、下水道管の本管(地中管路)1は、地上に延びるマンホール2、3の間に配設されている。一般に、下水道管の本管1は道路に沿って深さ数mの位置に敷設されている。また、本管1からは2本の分岐管4が分岐している。分岐管4は、本管1の上部から、分岐管口4aにおいて分岐して上方へ延びた後、傾斜が緩くなる方向に屈曲して、家屋等の建物6に隣接して設けられた分岐管桝5に接続されている。この屈曲部分を曲管部4bとする。
【0025】
本管1内には、幹線ケーブル8が幹線フレキシブル管9内に挿通された状態で敷設されている。幹線ケーブル8は、例えば、下水道処理場やポンプ場等のポイント同士を結ぶための通信ケーブルの一部である。また、マンホール2から本管1および分岐管4を経由して分岐管枡5まで、枝線ケーブル15が枝線フレキシブル管16内に挿通された状態で敷設されている。
【0026】
まず、本管1内の幹線ケーブル8の敷設構造について説明する。幹線ケーブル8の敷設構造は、幹線ケーブル8が挿通された幹線フレキシブル管9と、幹線フレキシブル管9に取り付けられた2つの接続部材20a、20bと、2つの接続部材20a、20bにそれぞれ接続されたワイヤー(線条材)10と、マンホール2、3の内壁に固定されたテンション付与装置11、12とを備える。
【0027】
幹線フレキシブル管9は、蛇腹状に形成された金属製の管であって、屈曲自在である。幹線フレキシブル管9の外周部には、山部と谷部とが管長手方向に交互に並んで形成されている。幹線フレキシブル管9の内径は、幹線ケーブル8の外径よりも若干大きい。幹線フレキシブル管9を構成する金属材料としては、ステンレス鋼(例えばSUS316)を用いることが好ましい。なお、枝線フレキシブル管16は、幹線フレキシブル管9と同じ構成の管、または、これよりも小径の管が用いられる。
【0028】
幹線フレキシブル管9の、本管1の両端部に相当する位置には、接続部材20a、20bが取り付けられている。接続部材20a、20bにはワイヤー10が接続されている。接続部材20a、20bは互いに同じ形状である。接続部材20a、20bは、3本のフレキシブル管を同時に保持することができる。図2に示すように、接続部材20aは、幹線フレキシブル管9と2本の枝線フレキシブル管16に取り付けられている。なお、図3および図4に示すように、接続部材20bは、幹線フレキシブル管9に取り付けられている。
【0029】
図5および図6に示すように、接続部材20(20a、20b)は、2つの分割体21、22と、この2つの分割体21、22同士を連結固定するネジ(固定手段)23とから構成されている。分割体21、22およびネジ23は、例えばステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0030】
図7に示すように、分割体21の分割体22に対向する面には、3つの挟持溝21aが並列して形成されており、分割体22には、3つの挟持溝21aに対向して、3本の挟持溝22aが並列して形成されている。対向する挟持溝21a、22aの間で幹線フレキシブル管9は挟持されている。挟持溝21a、22aは、それぞれ断面円弧状に形成されており、対向する2つの挟持溝21a、22aによって形成される円筒状の空間の径は、幹線フレキシブル管9の外径(山部の外径)とほぼ同じか若干大きい。
【0031】
また、挟持溝21a、22aの管長手方向のほぼ中央部には、周方向に延びる凸部21b、22bが形成されている。図5に示すように、凸部21b、22bは、幹線フレキシブル管9の外周部の谷部と係合する。これにより、幹線フレキシブル管9は接続部材20に対して管長手方向に移動不能となっている。
このように、幹線フレキシブル管9の外周部の谷部に係合される凸部21b、22bを設けるという簡単な構成によって、接続部材20を幹線フレキシブル管9に管長手方向に移動不能に取り付けることができる。
【0032】
枝線フレキシブル管16として、幹線フレキシブル管9と同じ形状の管を用いた場合には、枝線フレキシブル管16は幹線フレキシブル管9と同様に接続部材20aに取り付けられる。枝線フレキシブル管16として、幹線フレキシブル管9より小径の管を用いた場合には、挟持溝21aと枝線フレキシブル管16の外周部との間、および、挟持溝22bと枝線フレキシブル管16の外周部との間に、筒状のゴムパッキンを半円筒状になるように2分割した半割パッキンをそれぞれ介在させる。これにより、挟持溝21a、22aの間で枝線フレキシブル管16を管長手方向に移動不能に挟持する。
【0033】
分割体21の図4中上側の面は、本管1の内面に沿うように、図4中の左右方向の両端部が傾斜して形成されている。また、分割体21には、管長手方向に貫通する2つの挿通孔21cが形成されている。2つの挿通孔21cには、ワイヤー10がU字状の折り返された状態で挿通されている。2つの挿通孔21cからそれぞれ引き出されたワイヤー10の両端部は、ワイヤー10が挿通孔21cから抜けないように1つにまとめられて、テンション付与装置11、12に取り付けられている。
【0034】
図1に示すように、接続部材20aに接続されたワイヤー10は、マンホール2の内壁に固定されたテンション付与装置11に取り付けられ、接続部材20bに接続されたワイヤー10は、マンホール3の内壁に固定されたテンション付与装置12に取り付けられている。テンション付与装置11は、ワイヤー固定用フックであり、テンション付与装置12は、ワイヤー巻上げ用のウインチである。逆に、テンション付与装置11がウインチであって、テンション付与装置12が、ワイヤー固定用フックであってもよい。また、テンション付与装置11、12が共にウインチであってもよい。
【0035】
2つの接続部材20a、20bにそれぞれ接続されたワイヤー10は、テンション付与装置11、12によって上方に引っ張られており、これにより、幹線フレキシブル管9は引き上げられて本管1内の上部に配置されている。幹線フレキシブル管9は、金属製であるため、このような引張力に十分に耐えることができる。幹線フレキシブル管9を本管1内の上部に配置することにより、本管1内の下水等の流れが阻害されるのを防止できる。
【0036】
幹線フレキシブル管9の両端部は、本管1内からマンホール2、3内へ屈曲して引き出されて、マンホール2、3の内壁に取り付けられた接続箱13に取り付けられている。幹線フレキシブル管9のマンホール2、3内に引き出された部分は邪魔にならないように、マンホール2、3の内壁に沿って配置されている。
【0037】
また、本管1内に敷設されている幹線フレキシブル管9の長さが比較的長く、テンション付与装置11、12により付与された張力だけでは、幹線フレキシブル管9の弛みを十分に防止することが難しい場合には、弛み防止材30を本管1内に配置する。
【0038】
図10に示すように、弛み防止材30は、例えば、耐食性バネ鋼により形成された半円以上のリング状(略C字状)の部材である。弛み防止材30の頂部(両端部と反対側の部分)には、フレキシブル管9、16を下方から受け止めて保持する凹状の保持部30aが形成されている。弛み防止材30は、縮径状態で本管1内に配置されており、そのバネ弾性力によって、弛み防止材30の外側面が本管1の内面に押しつけられて密着している。
【0039】
この弛み防止材30を設けることによって、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16の弛みを補助的に防止できると同時に、下水道管内を高圧洗浄する際などに、幹線フレキシブル管9と枝線フレキシブル管16とが絡まるのを防止できる。なお、マンホール2、3の間の距離が短い場合など、本管1内における幹線フレキシブル管9の弛みが小さく、弛みによる不具合が生じない場合には、弛み防止材30の設置を省略してもよい。
【0040】
また、幹線ケーブル8は、幹線フレキシブル管9内に挿通されて、幹線フレキシブル管9にスライド可能に保持されている。そのため、幹線フレキシブル管9に張力が付与されても、幹線ケーブル8には張力が作用しない。幹線ケーブル8は、幹線フレキシブル管9を介してつり上げられて本管1の上部に敷設されている。幹線ケーブル8の両端部は、接続箱13において、本管1に隣接する本管内に敷設されている幹線ケーブルとそれぞれ接続されている。
【0041】
次に、枝線ケーブル15の敷設構造について説明する。上述したように、枝線ケーブル15は枝線フレキシブル管16内に挿通された状態で本管1内および分岐管4内に敷設されている。
【0042】
枝線フレキシブル管16は、本管1内において、接続部材20aおよび後述する連結部材40によって幹線フレキシブル管9と連結されている。そのため、枝線フレキシブル管16は、幹線フレキシブル管9に沿って本管1の上部に配置されている。枝線フレキシブル管16の一方の端部は、幹線フレキシブル管9と共に本管1内からマンホール2内へ屈曲して引き出されて、接続箱13に取り付けられている。
【0043】
また、枝線フレキシブル管16は、本管1内から分岐管口4aで屈曲して分岐管4内に引き出されて、分岐管4の端部(分岐管枡5)まで達している。枝線フレキシブル管16の他方の端部は、分岐管枡5内に取り付けられた固定具17に固定されている。
【0044】
連結部材40は、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16の本管1内の分岐管口4a近傍部分に取り付けられている。連結部材40としては、接続部材20(20a、20b)をそのまま利用することができる。連結部材40によって、幹線フレキシブル管9と枝線フレキシブル管16とは管長手方向に移動不能に連結されている。
【0045】
連結部材40を設けることにより、枝線フレキシブル管16を本管1内において幹線フレキシブル管9に沿って本管1の上部に配置することができる。また、幹線フレキシブル管9内に引き込む際に、枝線フレキシブル管16と幹線フレキシブル管9との位置がずれにくくなり、敷設作業が容易になる。また、下水道管内の高圧洗浄の際に、幹線フレキシブル管9と枝線フレキシブル管16とが絡まるのを防止できる。なお、連結部材40を取り付ける代わりに、上述の弛み防止材30を設置してもよい。
【0046】
また、分岐管4は、上方に向かって傾斜が緩くなる方向に折れ曲がった曲管部4bを有しているため、枝線フレキシブル管16を分岐管枡5から引っ張っても、枝線フレキシブル管16を分岐管4内の上部に沿って配置することができない。そこで、枝線フレキシブル管16を確実に分岐管4内の上部に沿わせるために、曲管部4b内と、分岐管4内の分岐管口4a近傍部分とに、弛み防止材30と同様の構成を有する弛み防止材50が配置されている。この弛み防止材50によって、枝線フレキシブル管16を分岐管4内の上部に配置することにより、分岐管4内の下水等の流れが阻害されるのを防止できる。
【0047】
なお、分岐管4が直線状に延びている場合、または、分岐管4が上方に向かって傾斜がきつくなる方向に折れ曲がっている場合には、枝線フレキシブル管16に張力をかけることにより、枝線フレキシブル管16を分岐管4の上部に沿って敷設することが可能である。この場合には、弛み防止材50を分岐管4内に配置しなくてもよい。
【0048】
枝線ケーブル15は、枝線フレキシブル管16内に挿通されて、枝線フレキシブル管16にスライド可能に保持されている。枝線ケーブル15は、接続箱13において、幹線ケーブル8から分岐している。また、分岐管枡5まで案内された枝線ケーブル15は、地上へと引き出された後、各建物6に設置された成端箱18へと引き込まれている。
【0049】
次に、幹線ケーブル8および枝線ケーブル15の敷設手順について説明する。
【0050】
まず、マンホール2、3間の距離(本管1の管路長)、マンホール2から各分岐管口4aまでの距離、分岐管口4aから分岐管枡5までの距離等を測定しておく。これらの測定結果を基に、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16の長さと、接続部材20a、20bおよび連結部材40のフレキシブル管9、16への取り付け位置を決めて、接続部材20a、20bおよび連結部材40をフレキシブル管9、16に取り付けておく。具体的には、所定のフレキシブル管を2つの分割体21、22で挟んで、この2つの分割体21、22をネジで固定する。このような簡単な方法で、接続部材20a、20bをフレキシブル管に取り付けることができる。また、接続部材20a、20bには2本のワイヤー10をそれぞれ取り付けておく。
【0051】
また、幹線フレキシブル管9内に幹線ケーブル8を挿通するとともに、枝線フレキシブル管16内に枝線ケーブル15を挿通しておく。なお、幹線ケーブル8を敷設する時点で、枝線ケーブル15がまだ不要な場合には、空の枝線フレキシブル管16を敷設しておき、必要となったときに枝線ケーブル15を分岐管枡5から枝線フレキシブル管16内に挿通してもよい。
【0052】
また、枝線フレキシブル管16の一方の端部(分岐管枡5側の端部)には、呼び子と呼ばれる本管1内の枝線フレキシブル管16を分岐管4内に引き上げる際に使用する部材(図示省略)を取り付けておく。呼び子の形状としては、フック状、リング状など種々の形状が採用可能である。
【0053】
次いで、マンホール2、3間に牽引策を通線する。通線の方法としては、ワイヤー等の剛直体を押し込む方法や、パラシュート状の通線具を空気圧で飛ばす方法、自走型管内移動車に接続しておく方法などが知られており、これらの公知の方法を適宜採用することができる。
【0054】
その後、牽引策のマンホール3側の端部に、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16を接続し、牽引策をマンホール2側から引き取って、本管1内に幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16を引き入れる。フレキシブル管9、16は、屈曲自在であるため、本管1内へ引き入れやすい。
【0055】
次に、枝線フレキシブル管16を、分岐管4内に引き込む。この作業においては、まず、マンホール2から本管1内の枝線フレキシブル管16を前後に動かして、分岐管枡5から挿入したTVカメラで確認しながら、枝線フレキシブル管16の先端に取り付けた呼び子を分岐管口4aのほぼ直下に位置させる。続いて、分岐管枡5から鉤状の冶具をロッドの先端に装備した作業棒(図示省略)を挿入し、TVカメラで確認しながら、本管1内の呼び子を鉤状の冶具に引っ掛けて分岐管枡5まで引き上げることにより、枝線フレキシブル管16を分岐管4内に引き入れる。枝線フレキシブル管16は、屈曲自在であるため、分岐管4内へ引き入れやすい。そして、枝線フレキシブル管16の端部を分岐管枡5内に取り付けられた固定具17に固定する。このとき、本管1内の幹線フレキシブル管9に仮のテンションを加えておくことが好ましく、適宜現場状況に合わせて採用する。
【0056】
その後、接続部材20aに接続されているワイヤー10を、テンション付与装置(ワイヤー固定用フック)11に固定してから、接続部材20bに接続されているワイヤー10をテンション付与装置(ウインチ)12で巻き上げることにより、2本のワイヤー10を上方に引っ張る。これにより、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16を引き上げて本管1内の上部側に配置する。
【0057】
その後、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16の、本管1からマンホール2側に突出した部分を屈曲させてマンホール2の内壁に沿わせて配置し、その先端部を接続箱13に取り付けるとともに、幹線ケーブル8および枝線ケーブル15を接続箱13に引き込む。また、幹線フレキシブル管9の本管1からマンホール3側に突出した部分も同様に屈曲させてマンホール3内に配置し、その先端部を接続箱13に取り付けるとともに、幹線ケーブル8を接続箱13に引き込む。
【0058】
次に、本管1内に、複数の弛み防止材30を適当な間隔を空けて設置する。本管1内への弛み防止材30の設置作業は、例えば、本願出願人が出願した2003−198238号の装置を用いて行う。まず、マンホールから本管1内に装置を進入させて、縮径状態の弛み防止材30を本管1内の所定位置まで移動させる。次に、凹状の保持部30aが幹線フレキシブル管9を保持可能な位置に到達するまで弛み防止材30の高さ及び取付角度を調整してから、弛み防止材30の縮径状態を解放して、その外側面を本管1の内面に密着させる。
【0059】
次に、曲管部4b内と、分岐管4内の分岐管口4a近傍部分とに、弛み防止材50を設置する。分岐管4内への弛み防止材50の設置作業は、例えば、本願出願人が出願した特願2002−376765号の装置を用いて行う。まず、分岐管枡5から分岐管4内に装置を進入させて、縮径状態の弛み防止材50を分岐管4内の所定の位置まで移動させる。次に、凹部状の保持部が枝線フレキシブル管16を保持可能な位置に到達するまで弛み防止材50の高さ及び取付角度を調整してから、弛み防止材50の縮径状態を解放して、その外側面を分岐管4の内面に密着させる。
【0060】
以上説明した本実施形態の幹線ケーブル8の敷設構造によると、幹線フレキシブル管9は、幹線ケーブル8を保護するものであると同時に、張力がかけられて本管1内の上部に引き上げられるものであり、従来のケーブル敷設構造のテンションメンバーとガイド管とを兼ねている。したがって、本実施形態の幹線ケーブル8の敷設構造は、従来のケーブル敷設構造に比べて構成が簡素である。
【0061】
また、幹線フレキシブル管9内には幹線ケーブル8のみを挿通すればよく、上述のテンションメンバーを挿通する工程が不要となるため、敷設作業を簡易化できる。
【0062】
さらに、幹線フレキシブル管9は、幹線ケーブル8のみが挿通可能な内径であればよく、上述のガイド管に比べて小さい径に設定できるため、本管1内での占有スペースを小さくすることができる。
【0063】
また、従来のケーブル敷設構造で用いられていた樹脂製のガイド管は、円弧状に曲げられる程度の可撓性を有するものの、ケーブルを保護するにはある程度の剛性が必要であるため、屈曲させることはできなかった。そのため、ケーブルを本管1内から屈曲させてマンホール内に配置する場合には、ガイド管はその端部が本管1とマンホールの接続部分に位置するように配置され、ケーブルはガイド管の端部から引き出されて屈曲されていた。しかし、マンホール内にケーブルをそのまま配置すると、例えば、下水道管内の洗浄時に洗浄用ホースがケーブルに引っかかるなどの理由でケーブルが破損する虞があるため、ケーブルの外周にステンレステープを巻き付けたり、マンホール内にカバーを設けたりして、ケーブルのガイド管から引き出した部分を保護していた。その結果、部品点数が多くなり、また敷設に手間を要していた。また、ガイド管の端部が露出しているため、ガイド管内に流水等が浸入するという問題も生じていた。
【0064】
一方、本実施形態では、フレキシブル管9、16は屈曲自在であり、上述したように、フレキシブル管9、16を本管1内からマンホール内に屈曲して引き出すことができるため、ケーブル8、15の本管1内からマンホール内に屈曲して引き出す場合に、ケーブル8、15を簡単に保護することができる。また、フレキシブル管9、16の端部が露出しないため、フレキシブル管9、16内に流水等が浸入するのを防止することができる。
【0065】
また、従来のケーブル敷設構造で用いられるガイド管は、その内部が仕切り壁によって複数の空間に仕切られた複雑な構造であり、このケーブル敷設構造のための専用部品である。一方、本実施形態で用いられる蛇腹状のフレキシブル管9、16は汎用品であるため、コストを抑制できる。
【0066】
また、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16は、金属製であるため、ネズミ等に齧られる心配がない。さらに、接続箱13も金属製であるため、接続箱13の間の幹線ケーブル8は全体が金属で覆われるため、ネズミ等に齧られる心配がない。また、下水道管内には汚水や薬品等が流れたり、汚水等から発生する硫化ガスが存在している場合があるが、金属材料として耐食性および防錆性に優れたステンレス鋼(例えばSUS316)を用いることにより、硫化ガスや薬品等による腐食を防止することができる。
【0067】
また、本実施形態では、幹線ケーブル8および枝線ケーブル15は、幹線フレキシブル管9および枝線フレキシブル管16に挿通されることによって、本管1および分岐管4内に敷設されている。そのため、ケーブル8(15)が断線した等の理由でケーブル8(15)を交換する際には、古いケーブル8(15)をフレキシブル管9(16)内から抜き出して、新たなケーブル8(15)をフレキシブル管9(16)内に挿入するだけでよく、容易に交換できる。
【0068】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0069】
1]前記実施形態では、接続部材20(20a、20b)に接続される線条材として、ワイヤー10を用いたが、線条材はこれに限定されるものではなく、例えば、樹脂繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維などの高強度低伸度性繊維よりなる、ロープ、紐、ベルトなどの長尺体を使用してもよい。
【0070】
2]ワイヤー10は、分割体21に形成された2つの挿通孔21cに挿通されることによって、接続部材20(20a、20b)に接続されているが、ワイヤー10と接続部材20との接続構造はこれに限定されるものではない。例えば、接続部材20にリング状の部材が取り付けられ、このリング状の部材にワイヤー10が挿通されていてもよい。
【0071】
3]前記実施形態では、2つの分割体21、22はネジ23によって連結固定されているが、2つの分割体21、22を連結固定する固定手段はネジ23に限定されるものではない。例えば、2つの分割体21、22は接着剤により固定されていてもよい。また、例えば、ネジ孔の代わりに、単純な円筒状の孔を形成し、この孔にワイヤー等を挿通してその両端部を結ぶことにより、2つの分割体21、22を連結固定してもよい。
【0072】
4]前記実施形態では、分割体21、22に形成される挟持溝21a、22aの数は3つであるが、この数に限定されるものではなく、2つ以下または4つ以上であってもよい。
【0073】
5]前記実施形態では、1つの挟持溝21a、22aに形成される凸部21b、22bの数は1つであるが、1つの挟持溝21a、22aに複数の凸部21b、22bを管長手方向に並べて形成してもよい。但し、隣接する2つの凸部21bの間隔は、フレキシブル管9、16の外周部の隣接する谷部同士の間隔と同じになるように設定する。この構成によると、接続部材20(20a、20b)をがたつきなくフレキシブル管9、16に取り付けることができる。また、ワイヤー10による引張力がフレキシブル管の複数箇所に分散して作用するため、フレキシブル管が破損しにくくなる。但し、前記実施形態のように、挟持溝21a、22aに形成される凸部21b、22bの数が1つの場合、1種類の接続部材20によって、蛇腹形状の谷部同士の間隔の異なるフレキシブル管に対応できるため、この点においては前記実施形態の方が好ましい。
【0074】
6]接続部材20(20a、20b)は、フレキシブル管9、16を管長手方向に移動不能に保持できる構成であればよく、前記実施形態の構成に限定されない。例えば、接続部材は、フレキシブル管9、16の外周部の谷部に巻き付けられて、その両端部がネジ等で固定されるリング状の部材であってもよい。また、このリング状の部材を、本管1内に敷設されるフレキシブル管9、16の数だけ連結したものであってもよい。
【0075】
7]前記実施形態では、本管1内に敷設される幹線フレキシブル管9は1本であるが、本管1内に敷設される幹線フレキシブル管9は2本以上であってもよい。接続部材20(20a、20b)は、複数のフレキシブル管を同時に保持することができるため、複数の幹線フレキシブル管9に接続部材20a、20bを取り付けて、接続部材20a、20bに接続されたワイヤー10を引っ張ることによって、複数の幹線フレキシブル管9に同時に張力を付与することができる。
【0076】
また、将来的に幹線ケーブル8を追加する予定がある場合には、上述の敷設作業を行う際に、幹線ケーブル8が挿通された幹線フレキシブル管9と共に、空の幹線フレキシブル管9を敷設しておく。その後、必要なときに幹線ケーブル8をこの空のフレキシブル管9内に挿入するだけで容易にケーブルを追加することができる。
【0077】
8]前記実施形態では、地中管路として下水道管を想定しているが、本発明の地中管路は必ずしも下水道管に限定されず、地中に埋設される管路であれば、例えば鋼管を用いたガス管路、鋳鉄管を用いた水道管路、雨水管路、電力ケーブル管路等、あらゆる管路に適用可能である。また、本発明の縦孔はマンホールに限定されるものではない。また、ケーブルを敷設する地中管路の区画に縦孔が設けられていない場合には、立抗を形成して本発明を実施することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 本管
2、3 マンホール
4 分岐管
8 幹線ケーブル
9 幹線フレキシブル管
10 ワイヤー(線条材)
11、12 テンション付与装置
13 接続箱
15 枝線ケーブル
15 枝線フレキシブル管
17 固定具
20a、20b(20) 接続部材
21、22 分割体
21a、22a 挟持溝
21b、22b 凸部
21c 挿通孔
23 ネジ(固定手段)
30 弛み防止材
40 連結部材
50 弛み防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの縦孔に接続される地中管路内にケーブルを敷設するケーブル敷設構造であって、
前記ケーブルが挿通され、前記地中管路内に配設される金属製のフレキシブル管と、
前記フレキシブル管の管長手方向に離れた2箇所にそれぞれ取り付けられた2つの接続部材と、
前記2つの接続部材にそれぞれ接続され、それぞれが前記2つの縦孔内から上方へ引っ張られることによって前記フレキシブル管を前記地中管路内の上部へ引き上げる2本の線条材と、
を備えていることを特徴とするケーブル敷設構造。
【請求項2】
前記フレキシブル管の一部が、前記地中管路内から前記縦孔内へ屈曲して引き出されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル敷設構造。
【請求項3】
前記接続部材が、
前記フレキシブル管を挟持する挟持溝がそれぞれ形成された2つの分割体と、
前記2つの分割体を連結固定する固定手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル敷設構造。
【請求項4】
前記フレキシブル管は蛇腹状に形成され、
前記分割体の前記挟持溝の、前記管長手方向の途中部に、前記蛇腹状のフレキシブル管の外周部と係合する凸部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のケーブル敷設構造。
【請求項5】
前記2つの分割体には、それぞれ前記挟持溝が並列して複数形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のケーブル敷設構造。
【請求項6】
前記接続部材には、前記管長手方向に貫通する2つの挿通孔が形成されており、
前記線条材は、U字状に折り返された状態で前記2つの挿通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のケーブル敷設構造。
【請求項7】
2つの縦孔に接続される地中管路内にケーブルを敷設する方法であって、
金属製のフレキシブル管に前記ケーブルを挿通する工程と、
前記フレキシブル管の管長手方向に離れた2箇所に2つの接続部材をそれぞれ取り付けるとともに、前記2つの接続部材に2本の線条材をそれぞれ接続する工程と、
前記2つの接続部材が取り付けられた前記フレキシブル管を、前記地中管路内に引き入れて、前記2つの接続部材にそれぞれ接続された前記2本の線条材を、前記2つの縦孔内からそれぞれ上方に引っ張ることにより、前記フレキシブル管を前記地中管路内の上部に敷設する工程と
を有することを特徴とするケーブル敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−30374(P2011−30374A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174144(P2009−174144)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(392008884)芦森エンジニアリング株式会社 (36)