ケーブル用シール部材およびその製造方法
【課題】 低硬度のゴムでは加工することが出来なかったリング状スリット部を安定に加工することができ、シール性に優れ、除去可能なリング状スリット部を備える新規なケーブル用シール部材を提供する。
【解決手段】 厚さ方向に対向する第1の平面(15)と第2の平面(16)と、第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部(12)とを有するゴム成形体(11)であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部(12)にホルダー(130,153,155)を被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面(15)からゴム成形体(11)内部にカット刃(140)を挿入させながらリング状スリット部(17,27,37)を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成する。
【解決手段】 厚さ方向に対向する第1の平面(15)と第2の平面(16)と、第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部(12)とを有するゴム成形体(11)であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部(12)にホルダー(130,153,155)を被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面(15)からゴム成形体(11)内部にカット刃(140)を挿入させながらリング状スリット部(17,27,37)を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光通信用の光ファイバーケーブルの接続部等を保護するために用いられるケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバーケーブルの接続部等を保護するためには、これを被包して保護するケーブル保護ケースが用いられる。ケーブル保護ケースは、例えば、長細い筒状のケースを縦割りした半片容器体の組み合わせ体から構成されており、光ファイバーケーブルの接続部等を内部に収納した後に、半片容器体の分割面を突き合わせた状態で筒状のケースを形成し、しかる後、固定手段を用いて分割面が開かないようにしっかりと、固定できるようになっている。
【0003】
このようなケーブル保護ケースの両端面は、ケーブルを挿通させた状態で、外部からの液体の浸入を防止するために、閉塞状態を保つことが要求される。
【0004】
従来、このようなケーブル保護ケースの両端面における閉塞手法としては以下のような手法が一般に行なわれていた。
【0005】
ケーブル保護ケースの両端面をシールできるように端面に取り付け可能な端面シール部材が部品として予め準備してあり、当該端面シール部材にはケーブル挿入口が実際に挿通されるケーブルの外径よりも大きく開口されており、ケーブル挿入口とケーブル間の隙間をスペーサとしてのパッキンやブッシュ、あるいは一定の厚さを有するゴムテープを巻回することによって、ケーブル挿入口とケーブル間の隙間のシール性を保つタイプのものが存在する。さらに、上記の構成に加えて、気密性や水密性を確保するためにシーリングテープを併用するタイプのものも存在する。
【0006】
その他、端面シール部材として、内部にテーパ状の孔部を有するものを用い、ケーブルの外径に対応させるように、現場にてテーパ部の所定の位置を切断して使用するタイプのものも存在する。
【0007】
しかしながら、上記の手法において、スペーサとしてのパッキンやブッシュを用いる場合、例えば数種のケーブル外径を想定してそれらに対応するように数種のスペーサを常に準備、保管しておかねばならず、部品点数が極めて多くなって取り扱いが煩雑になってしまうという問題がある。
【0008】
また、ゴムテープやシーリングテープを巻回することによってシール性を確保する方法は、その作業が煩雑であり、ケーブルの増設や保守には特に、これらのテープの除去作業が大変手間のかかる作業となる。
【0009】
また、内部にテーパ状の孔部を備える端面シール部材では、どの箇所で切断すれば、所定の内径が得られるのか、肉眼でみえないために、切断位置を決めることが困難であると言える。
【0010】
このような問題を解決するために、先行技術として特許文献1(US特許第5048382号)には、複数の同心リングを備えるゴム弾性シーリング(封止)デバイスの製造方法が開示されている。このような方法で製造されたゴム弾性シーリング(封止)デバイスは、複数の除去可能な同心リング状スリット部を備えており、挿通されるケーブルの外径に応じて、適宜、所望のリング径の箇所から除去可能なリング状スリット部を取り除くことによって、所望の穴径寸法を有するゴム弾性シーリング(封止)デバイスができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US特許第5048382号 しかしながら、上記の特許文献1に開示されている複数の同心リングを備えるゴム弾性シーリング(封止)デバイスの製造方法は、加工対象となるゴム体のデュロメータA硬度が35〜75である。このようなゴム体の硬度では、硬度が大きすぎて、ケーブル用の端面シール部材としては十分なシール性を保証することができない。
【0012】
また、ゴム体の硬度が上記開示のものより柔らかい場合、例えば、ゴム体のデュロメータA硬度が30以下の場合には、上記特許文献1に開示された手法では、除去可能な同心リングを安定して形成することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、シール性が良好な低硬度のゴム体であって、除去可能なリング状スリット部を備えるケーブル用シール部材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、本発明は、ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっているように構成される。
【0015】
本発明は前記のケーブル用シール部材の製造方法であって、当該方法は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0016】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記ゴム成形体は略円筒形状をなし、その厚さ方向の中心軸には貫通孔が形成されており、前記貫通孔に挿入することができるシャフト部と、シャフト部の基部に位置してシャフト部に対して垂直な載置平面を備える円形フランジ部と、当該円形フランジ部のシャフト部と反対方向に突出した保持シャフトを有する加工用ホルダーを準備し、前記加工用ホルダーのシャフト部にゴム成形体の貫通孔を挿入するともに、ゴム成形体の第2の平面を円形フランジ部の載置平面と当接させた状態でセットし、ゴム成形体の側面部に円筒状ホルダーを被せた状態で、前記加工用ホルダーの保持シャフトを回転機械に固着連結し、シャフト部を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0017】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成されるように構成される。
【0018】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記円筒状ホルダーは、樹脂からなり、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成されているように構成される。
【0019】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記ゴム成形体は、その厚さ方向の中心軸に貫通孔が無い略円柱形状をなしており、ゴム成形体の側面部に、円筒状のホルダーを被着させ、この円筒状のホルダーの上にさらに、外ホルダーを被着させ、当該外ホルダーの外周を回転機械のチャックで挟むように固着連結させ、ゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0020】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記円筒状のホルダーは、複数割りされており、当該複数割りされた円筒状のホルダーを元の円筒状に組み合わせてゴム成形体の側面部に被着させるように構成され、前記外ホルダーは、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成された金属ホルダーから構成される。
【0021】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成される。
【0022】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記複数割りされた円筒状のホルダーは、樹脂からなるように構成される。
【0023】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、次いで、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の他の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、複数のリング状スリット部を第1の平面の異なる場所に分散させるように配置させてなるように構成される。
【0024】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記リング状スリット部は、厚さ方向の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されており、前記リング状スリット部は、厚さ方向の他の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されているように構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のケーブル用シール部材は、ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっているように構成されている。
【0026】
従って、シール性が極めて良好であるとともに、除去可能なリング状スリット部を備えるので、部品点数の削減を図ることができる。多品種を常に持ち歩く必要性もなく、作業性の向上に大きく寄与することができる。
【0027】
また、このようなケーブル用シール部材の製造方法は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。従って、従来、デュロメータA硬度が30以下の低硬度のゴムでは加工することが出来なかったリング状スリット部を安定に加工することができ、シール性に優れ、除去可能なリング状スリット部を備える新規なケーブル用シール部材を提供することができるという効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)のA1−A1断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図2(B)は、図2(A)のA2−A2断面図である。
【図3】図3(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図3(B)は、図3(A)のA3−A3断面図である。
【図4】図4(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図4(B)は、図4(A)のA4−A4断面図である。
【図5】図5(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図5(B)は、図5(A)のA5−A5断面図である。
【図6】図6(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図6(B)は、図6(A)のA6−A6断面図である。
【図7】図7(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図7(B)は、図7(A)のA7−A7断面図である。
【図8】図8(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図8(B)は、図8(A)のA8−A8断面図である。
【図9】図9(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図9(B)は、図9(A)のA9−A9断面図である。
【図10】図10(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図10(B)は、図10(A)のA10−A10断面図である。
【図11】図11は、光ファイバーケーブル等を被包して保護するケーブル保護ケースの両端面にケーブル用シール部材を取り付けた状態のシンプルな一例を示す一部を断面にした概略図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好適な形態について詳細に説明する。
本発明のケーブル用シール部材10は、例えば、図11の簡略図に示されるように、ケーブル保護ケース100内へ外部からの液体の浸入を防止するために(液密性を保つために)、ケーブル保護ケース100の両端部100aに、それぞれ配置されるケーブル用シール部材10である。
【0030】
ケーブル保護ケース100は、例えば、長細い筒状のケースを縦割りした半片容器体の組み合わせ体から構成されており、例えば、光ファイバー等のケーブルの接続部等を内部に収納した後に、半片容器体の分割面を突き合わせた状態で筒状のケースを形成し、しかる後、図示していない固定手段を用いて分割面が開かないようにしっかりと、固定できるように構成されるものが好適例として挙げられるが、実際には、種々のタイプのものが存在しており、必ずしも、このような形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明におけるケーブル用シール部材10には、例えば、図示のごとくケーブル2が挿通される貫通穴10aを有し、この貫通穴10aとケーブル2との接合部、およびケーブル保護ケース100とケーブル用シール部材10との接合部において液体の浸入が防止される機能が要求される。
【0032】
また、ケーブル用シール部材10には、その使い道として貫通穴10aを設けずに、閉塞栓として使用される場合もあり、必ずしもケーブル2が挿通される貫通穴10aが形成されるものではない。特に、複数の貫通穴10aを形成可能にしておき、その中の一部をケーブル2を挿通させる貫通穴10aとして使用し、他は穴を形成せずに単に穴を塞ぐための閉塞栓として使用するという使い方もある。
【0033】
〔ケーブル用シール部材の第1の実施形態の説明〕
まず、最初に、本発明に係るケーブル用シール部材の第1の実施形態について、図1(A),(B)を参照しつつ説明する。 図1(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)のA1−A1断面図である。
【0034】
本発明のケーブル用シール部材10は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下、好ましくは、2〜20、さらに好ましくは、2〜15の物性を備えるゴム成形体11から構成される。
【0035】
デュロメータA(Duro-A)硬度、はJIS K6253に基づいて求めることができる。本発明において、デュロメータA硬度が30を超えると、ケーブル用シール部材10と他の部材との接合面におけるシール性が十分ではなく、液密性を保つことが困難となってしまう。
【0036】
具体的なゴム材質としては、例えば、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)、二トリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、および、これらの任意の混合物等を挙げることができる。このようなゴム材に、例えば、加硫剤、加硫促進剤、オイル等を加えた後、混練機により混練して、得られたゴム混合物を所定の形状に成型、加硫することにより、所望のゴム成形体を作製することができる。
ゴム硬度の調整には、例えば、ゴムとの相溶性の良いオイルを適当量含有させるようにすれば良い。また、より低分子量のゴム材質を選定することによってもゴム硬度の調整を行なうことができる。
【0037】
加硫剤としては、硫黄、過酸化物、キノイド、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂やアルキルフェノール・スルフィド樹脂等を挙げることができ、これらは使用されるゴム材質に対応させて適宜選定することができる。加硫促進剤としては、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等を使用することができる。また、上記のゴム材質には、必要に応じて老化防止剤、ステアリン酸等の有機脂肪酸、白色充填材(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー)、カーボンブラック等の充填剤等を含有させてもよい。後述するように、ゴム成形体を成形した後に行なわれるリング状スリット部の形成を容易にするためには、カーボンブラックの含有量を抑えて、その減少分を補填するように白色充填材を多目に添加させることが望ましい。
【0038】
本発明におけるゴム成形体11は、図1(B)に示されるように厚さ方向に対向する第1の平面15と第2の平面16と、前記第1の平面15の周縁15aと第2の平面16の周縁16aを繋ぐ側面部12とを有している。特に、第1の実施形態におけるゴム成形体11は、厚さ方向の中心軸に貫通孔が無い略円柱形状をなしている。ここで、略円柱形状とは、円柱形状の側面部の一部を厚さ方向や円周方向に削り取ったような形状も含む意味である。従って、三角形を含む多角形も含まれる。
【0039】
このようなゴム成形体11は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部17を有している(図示例では1個のみのリング状スリット部17)。
【0040】
リング状スリット部17は、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位18が形成されている。
【0041】
この未貫通の部位18は、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、この毟り取り作業によって、中央の中芯ゴム11aが除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。
【0042】
図1(B)に示されるスリットの最深部から第2の平面16までの距離δは、0.1〜1.0mm程度、好ましくは、0.1〜0.5mmとされる。
【0043】
この距離δの値が上限値の1.0mmを超えると、未貫通の部位18を強制的に毟り取って貫通穴を形成させるという作業が困難となってしまう。この一方で、この距離δの値が下限値の0.1mm未満であると、未貫通の部位18の残り厚さがあまりに薄くなってしまい、例えば、搬送中や包装中に未貫通の部位18の一部または全部が切れて貫通穴の一部あるいは全部が形成されてしまうという不都合が生じ得る。つまり、作業者の意図に応じて毟り取ることが可能であるという本来の仕様に反する仕様となってしまう。また、貫通穴を形成せずに閉塞栓として使用するという使い方ができなくなってしまうおそれが生じる。
【0044】
このような第1の実施形態におけるケーブル用シール部材10は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部17を有しているので、貫通穴を空けて使用することもできるし、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。つまり、1つのケーブル用シール部材10で2種の使い方ができるので、部品の点数を減らすことが可能となる。しかもデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなるので貫通穴を空けての使用においてもシール性が極めて良好である。
【0045】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部17を有するケーブル用シール部材10は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0046】
〔ケーブル用シール部材の第2の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第2の実施形態について、図2(A),(B)を参照しつつ説明する。図2(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図2(B)は、図2(A)のA2−A2断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0047】
第2の実施形態におけるケーブル用シール部材20が前記第1の実施形態のそれと本質的に異なるのは、リング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eが、複数個存在するとともに、これらが同心円状に形成されている点にある。
【0048】
すなわち、ゴム成形体11は、厚さ方向に形成された複数の同心円状のリング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eを有している。図示例では5個のリング状スリット部が形成されているが、特に、この数に限定されるものではない。また、同心円に配置された各リングの隣接する間隔は、0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.2mm程度とされるが特に限定されるものではない。
【0049】
これらの各リング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位18a,18b,18c,18d,18eが形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。
【0050】
この未貫通の部位18a,18b,18c,18d,18eは、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、各リング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eのどこを毟り取るかは、使用するケーブルの外径の大きさに合せて適宜選定すればよい。この作業によって、中芯ゴム11aを含む所定の同心円スリット部分が除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。もちろんどこも毟り取らずに、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。
【0051】
ケーブル用シール部材20のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0052】
このような第2の実施形態におけるケーブル用シール部材20は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、特に、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を備えているので、使用するケーブルの外径の大きさに合せて貫通穴の大きさを適宜選んで毟り取って形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。また、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもでき、これによっても、さらなる部品点数の削減を図ることができる。
【0053】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を有するケーブル用シール部材20は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0054】
〔ケーブル用シール部材の第3の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第3の実施形態について、図3(A),(B)を参照しつつ説明する。図3(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図3(B)は、図3(A)のA3−A3断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0055】
図3(A),(B)に示される第3の実施形態におけるケーブル用シール部材30が前記図2(A),(B)に示される第2の実施形態のそれと本質的に異なるのは、厚さ方向の中心軸に貫通孔19が形成されている点にある。そして、この貫通孔19の円形と同心円状にリング状スリット部17b,17c,17d,17eが複数個形成されている。リング状スリット部の個数は、4個の場合が例示されているが、この個数については何ら限定されるものではない。
【0056】
また、同心円状に配置された各リングの隣接する間隔は、上述したとおりにすればよい。
これらの各リング状スリット部17b,17c,17d,17eは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位18b,18c,18d,18eとなっている。距離δの設定は上述したとおりである。
【0057】
この未貫通の部位18b,18c,18d,18eは、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、各リング状スリット部17b,17c,17d,17eのどこを毟り取るかは、使用するケーブルの外径の大きさに合せて適宜選定すればよい。この毟り取り作業によって、同心円状のスリット部分が除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。ただし、この場合、そのままの状態で閉塞栓として使用することはできない。
【0058】
ケーブル用シール部材30のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0059】
このような第3の実施形態におけるケーブル用シール部材30は、極めて低い硬度のゴム成形体からなり、特に、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を備えているので、使用するケーブルの外径の大きさに合せて貫通穴の大きさを適宜選んで毟り取って形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。
【0060】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を有するケーブル用シール部材30の存在は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0061】
〔ケーブル用シール部材の第4の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第4の実施形態について、図4(A),(B)を参照しつつ説明する。図4(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図4(B)は、図4(A)のA4−A4断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0062】
図4(A),(B)に示される第4の実施形態におけるケーブル用シール部材40が前記図1(A),(B)に示される第1の実施形態のそれと本質的に異なるのは、複数のリング状スリット部27,37(図示の例では2個を例示しているが、必ずしもこの個数に限定されるものではない)を第1の平面部15の異なる場所に分散させるように配置させている点にある。すなわち、リング状スリット部27は、厚さ方向の一の軸G1を中心軸として形成されており、リング状スリット部37は、厚さ方向の他の一の軸G2を中心軸として形成されている。G1とG2との間隔は、リング状スリット部27とリング状スリット部37とが交差しないような範囲で適宜定めればよい。
【0063】
これらの各リング状スリット部27、37は、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位28、38が形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。この未貫通の部位28、38は、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっている。この作業によって、中芯ゴム11a、11bが除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。もちろん毟り取らずに、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。図示の2つのうち、一方を貫通穴とし、他方を閉塞栓とするようにしてもよい。
【0064】
ケーブル用シール部材40のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0065】
このような第4の実施形態におけるケーブル用シール部材40は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、厚さ方向に形成された複数のリング状スリット部27,37を第1の平面部15の異なる場所に分散させるように配置させているので、双方を貫通穴としたり、一方を貫通穴とし他方を閉塞栓とするようにしたりすることができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。
【0066】
なお、本願の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数のリング状スリット部を第1の平面部の異なる場所に分散させるように配置させてなるケーブル用シール部材40は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0067】
〔ケーブル用シール部材の第5の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第5の実施形態について、図5(A),(B)を参照しつつ説明する。図5(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図5(B)は、図5(A)のA5−A5断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0068】
図5(A),(B)に示される第5の実施形態におけるケーブル用シール部材50が前記図4(A),(B)に示される第4の実施形態のそれと本質的に異なるのは、複数のリング状スリット部27a,27b,27c,27dが、厚さ方向の一の軸G1を中心軸として同心円状に形成されており、複数のリング状スリット部37a,37b,37c,37dが、厚さ方向の他の一の軸G2を中心軸として同心円状に形成されている点にある。
【0069】
図示例では各々4個のリング状スリット部が形成されているが、特に、この数に限定されるものではない。また、同心円に配置された各リングの隣接する間隔は、0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.2mm程度とされるが特に限定されるものではない。
【0070】
G1を中心軸とするリング状スリット部27a,27b,27c,27dは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位28a,28b,28c,28dが形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。この一方で、G2を中心軸とするリング状スリット部37a,37b,37c,37dは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位38a,38b,38c,38dが形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。
【0071】
未貫通の部位28a,28b,28c,28dや38a,38b,38c,38dは、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、各リング状スリット部27a,27b,27c,27d(37a,37b,37c,37d)のどこを毟り取るかは、使用するケーブルの外径の大きさに合せて適宜選定すればよい。
【0072】
この毟り取りの作業によって、中芯ゴム11aを含む同心円状のスリット部分や、中芯ゴム11bを含む同心円状のスリット部分が除去されて、複数の離間した貫通穴を空けることが可能となっている。異なる外径のケーブルの径を複数使用する場合に、個々に対応させた貫通穴とすることもできる。もちろんどこも毟り取らずに、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。
【0073】
ケーブル用シール部材50のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0074】
このような第5の実施形態におけるケーブル用シール部材50は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、特に、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を複数セット分散配置させて備えているので、使用するケーブルの外径の大きさに合せて貫通穴の大きさを適宜選んで毟り取って形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。また、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもでき、これによっても、さらなる部品点数の削減を図ることができる。
【0075】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を有するケーブル用シール部材50の存在は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0076】
〔ケーブル用シール部材の第6の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第6の実施形態について、図6(A),(B)を参照しつつ説明する。図6(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図6(B)は、図6(A)のA6−A6断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0077】
図6(A),(B)に示される第6の実施形態におけるケーブル用シール部材60が前記図4(A),(B)に示される第4の実施形態のそれと本質的に異なるのは、特に、ゴム成形体11の外形形状であり、第6の実施形態では正面形状が瓢箪形状となっている。基本的な要部の構成については実質的に同じである。第6の実施形態の方が、ケーブル用シール部材60のゴム材料の使用割合が低く、経済的である。
【0078】
〔ケーブル用シール部材の第7の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第7の実施形態について、図7(A),(B)を参照しつつ説明する。図7(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図7(B)は、図7(A)のA7−A7断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0079】
図7(A),(B)に示される第7の実施形態におけるケーブル用シール部材70が前記図5(A),(B)に示される第5の実施形態のそれと本質的に異なるのは、特に、ゴム成形体11の外形形状であり、第7の実施形態では正面形状が瓢箪形状となっている。基本的な要部の構成については実質的に同じである。第7の実施形態の方が、ケーブル用シール部材70のゴム材料の使用割合が低く、経済的である。
【0080】
上述してきたケーブル用シール部材の各実施形態は好適例を示しただけであって、当該実施形態に限定されるものではない。
【0081】
〔ケーブル用シール部材の製造方法の説明〕
次に、上述してきたケーブル用シール部材の製造方法について説明する。
【0082】
まず最初に、厚さ方向に対向する第1の平面15と第2の平面16と、第1の平面15の周縁15aと第2の平面16の周縁16aとを繋ぐ側面部12とを有するゴム成形体11であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体11を成形する。
【0083】
ゴム組成物については上述した通りであり、ゴム材に、例えば、加硫剤、加硫促進剤、オイル等を加えた後、混練機により混練して、得られたゴム混合物を所定の形状に成型、加硫することにより、所望のゴム成形体を作製することができる。前述したようにゴム成形体の硬度の調整には、例えば、ゴムとの相溶性の良いオイルを適当量含有させるようにすれば良い。また、より低分子量のゴム材質を選定することによってもゴム硬度の調整を行なうことができる。
【0084】
次いで、成形されたゴム成形体の側面部12にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面15からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面16に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0085】
本発明の製造方法で特に重要なことは、成形されたゴム成形体の側面部12にホルダーを被せた状態でゴム成形体を回転させている点にある。本発明で使用するゴム成形体11は、シール性の向上を図るためにデュロメータA硬度が0を超えて30以下という極めて低い硬度のゴム成形物であり、このものをそのまま回転させた状態で加工すると遠心力でゴムが外方へ変形してしまいリング状スリット部を形成させることが出来ないが、本発明のホルダーはこのような不都合を解消するために用いられているのである。
【0086】
ゴム成形体は略円筒形状をなし、その厚さ方向の中心軸には貫通孔が形成されている場合と形成されていない場合との2タイプに別けられる。このようなタイプの相違によって、ゴム成形体を保持する形態は必ずしも同じでない。以下、貫通孔が形成されている場合(例えば、図3に示されるゴム成形体)と貫通孔が形成されていない場合(例えば図1、図2等に示されるゴム成形体)に分けて好適例を挙げて説明する。ただし、本発明の製造方法の要部の作用が発現すればよいのであって、以下に示す好適例に限定されるわけではない。
【0087】
(好適例1)
最初に、ゴム成形体の厚さ方向の中心軸に貫通孔19が形成されている場合のゴム成形体を保持する好適な形態について、図9(A),(B)を参照しつつ説明する。図9(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図9(B)は、図9(A)のA9−A9断面図である。
【0088】
ゴム成形体11の厚さ方向の中心軸に貫通孔19が形成されている場合(例えば、図3を参照)には、当該ゴム成形体11を加工する際に使用される加工用ホルダー110は、図9に示されるがごとくである。
【0089】
すなわち、ゴム成形体11の貫通孔19に挿入することができるシャフト部112と、シャフト部112の基部112aに位置してシャフト部112に対して垂直な載置平面115aを備える円形フランジ部115と、当該円形フランジ部115のシャフト部112と反対方向に突出した保持シャフト114を有する加工用ホルダー110が準備される。
【0090】
円形フランジ部115の外径は、ゴム成形体11の外径と同程度とすることが好ましい。
【0091】
このように準備された加工用ホルダー110のシャフト部112にゴム成形体11の貫通孔19を挿入するともに、ゴム成形体11の第2の平面16を円形フランジ部115の載置平面115aと当接させた状態でセットする。しかる後、ゴム成形体11の側面部12に円筒状ホルダー130を被せて図9(A),(B)に示される状態に至る。
【0092】
この状態で、加工用ホルダー110の保持シャフト114を図示しない回転機械(例えば、旋盤の回転チャック)に固着連結し、シャフト部112を回転軸としてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる。
【0093】
さらに、同心円状に複数の片側未貫通のリング状スリット部を形成させるには第1の平面15からゴム成形体11内部にカット刃140を挿入させる位置を半径方向に間欠的に順次変えることにより、複数の同心円状のリング状スリット部が形成される。
【0094】
シャフト部112を回転軸としてゴム成形体11を回転させる回転速度は、ゴム成形体11の硬度や各種物性、カット刃140の性状等を考慮しながら適宜選定すればよい。
【0095】
加工用ホルダー110は通常、金属材料から構成することが望ましいが、特に限定されるものではない。樹脂や無機材料等から構成することも可能である。特に、ゴム成形体11の粘着力によるホールド性を向上するために、ゴム成形体11が当接するシャフト部112の表面および円形フランジ部115の載置平面115aは、鏡面としておくことが好ましい。
【0096】
円筒状ホルダー130は、樹脂から構成することが好ましく、円周の一部に閉周路を切断する分断スリット130a(図9(A)参照)を形成しておくことが好ましい。取り扱い易く操作性に優れるからである。ただし、このような仕様に限定されるわけではない。
【0097】
また、円筒状ホルダー130は、回転による遠心力でゴムが外方へ変形することを防止するように作用するものであるから、円筒状ホルダー130の内径は、ゴム成形体11の外径と実質的に同じ径とすることが望ましい。また、図9(B)に示されるように、円形フランジ部115の外周側面115bをも同時に円筒状ホルダー130で覆うような仕様とすることが望ましい。
【0098】
(好適例2)
次に、ゴム成形体の厚さ方向の中心軸に貫通孔が無いゴム成形体を保持する好適な形態について、図8(A),(B)を参照しつつ説明する。図8(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図8(B)は、図8(A)のA8−A8断面図である。
【0099】
ゴム成形体11の厚さ方向の中心軸に貫通孔が形成されていない場合(例えば、図1,2を参照)には、当該ゴム成形体11を加工する際に使用される加工用ホルダー150は、図8に示されるごとくである。
【0100】
すなわち、ゴム成形体11の側面部12に被着させる円筒状のホルダー153と、この上に被着させる円筒状の外ホルダー155を備えている。
【0101】
本実施例の場合、円筒状のホルダー153は、複数割りされた円筒状ホルダー(図示例では2つ割りされている)を元の円筒状に組み合わせてゴム成形体の側面部12に被着させているが、必ずしもこの構造に限定されるわけではない。また、外ホルダー155は、円周の一部に閉周路を切断する分断スリット155aが形成された金属ホルダーとすることが好ましい。円筒状のホルダー153の内径は、ゴム成形体11の外径と同程度とすることが好ましい。外ホルダー155の内径は、円筒状のホルダー153の外径と同程度とすることが好ましい。
【0102】
この準備された加工用ホルダー150を用いて、ゴム成形体11の側面部12に、複数割りされた円筒状のホルダー153を元の円筒状に組み合わせて被着させ、この円筒状のホルダー153の上にさらに、外ホルダー155を被着させ、当該外ホルダー155の外周155bを回転機械のチャック(例えば、旋盤のチャック)で挟むように固着連結させて、図8(B)に示される状態に至る。
【0103】
この状態で、回転機械を回転させてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる(例えば、図1参照)。
【0104】
さらに、同心円状に複数の片側未貫通のリング状スリット部を形成させるには第1の平面15からゴム成形体11内部にカット刃140を挿入させる位置を半径方向に間欠的に順次変えることにより、複数の同心円状のリング状スリット部が形成される(例えば、図2参照)。
【0105】
ゴム成形体11を回転させる回転速度は、ゴム成形体11の硬度や各種物性、カット刃140の性状等を考慮しながら適宜選定すればよい。
【0106】
(好適例3)
上記の好適例1,2とは異なり、例えば、図6や図7に示されるように、一のリング状スリット部が、厚さ方向の一の軸G1を中心軸として形成されており、他の一のリング状スリット部が、厚さ方向の他の一の軸G2を中心軸として形成されている場合の製造方法について、図10(A),(B)を参照しつつ説明する。
【0107】
図10(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図10(B)は、図10(A)のA10−A10断面図である。
【0108】
例えば、図6や図7に示されるゴム成形体11を加工する際に使用される加工用ホルダー180の好適な一例が図10に示される。すなわち、図10に示される加工用ホルダー180は、円盤状のフランジ板185と、このフランジ板185の一方の面181側に形成される凹部188と、フランジ板185の他方の面182に形成された保持シャフト189とを備えている。
【0109】
一方の面181側に形成される凹部188は、図示のごとくゴム成形体11の第2の平面16(第2の平面16)と側面部12とが密着して収納されるような形態をなしている。すなわち、ゴム成形体11は凹部181内にすっぽりと嵌着される。それゆえ、ゴム成形体11の側面部12はホルダーを被せた状態と実質的に同じになっており、回転させた状態で加工しても遠心力でゴムが外方へ変形してしまうという不都合は生じない。
【0110】
また、保持シャフト189の中心軸と、厚さ方向の他の一の軸G2とは一致するように設定される。
【0111】
この準備された加工用ホルダー180を用いて、ゴム成形体11を凹部188内に嵌着して収納し、図10(A),(B)に示される状態に至る。
【0112】
この状態で、加工用ホルダー180の保持シャフト189を図示しない回転機械(例えば、旋盤の回転チャック)に固着連結し、シャフト部189を回転軸(軸G2と同じ)としてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる。
【0113】
さらに、同心円状に複数の片側未貫通のリング状スリット部を形成させるには、第1の平面15からゴム成形体11内部にカット刃140を挿入させる位置を半径方向に間欠的に順次変えることにより、複数の同心円状のリング状スリット部が形成される。
【0114】
次いで、ゴム成形体11を一旦、凹部188から外して、ゴム成形体11の上下位置を反対にセットする。これによって、G1がG2の位置に来るので、回転中心がG1となり、上記と同様にシャフト部189を回転軸(軸G1と同じ)としてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる。
【0115】
上記の操作は、以下の操作と実質的に同じである。すなわち、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、次いで、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の他の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、少なくとも複数のリング状スリット部を第1の平面部の異なる場所に分散させるように配置させた状態を形成しているのである。
【0116】
上記のごとくゴム成形体11の上下位置を反対にセットすることによって、回転軸をG1とG2、相互に交換してもよいし、図示していないがシャフト部189を着脱可能として取り付け位置をG1とG2の相互の2つの位置に変更できるようにしてもよい。
【0117】
なお、図4および図5に示されるケーブル用シール部材40および50の製造方法についても、基本的な製法は図10に示される手法に従えばよいので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0118】
以上の説明から分かるように、本発明のケーブル用シール部材は、ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっているように構成されている。従って、シール性が極めて良好であるとともに、除去可能なリング状スリット部を備えるので、部品点数の削減を図ることができる。多品種を常に持ち歩く必要性もなく、作業性の向上に大きく寄与することができる。
【0119】
また、このようなケーブル用シール部材の製造方法は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0120】
従って、従来、デュロメータA硬度が30以下の低硬度のゴムでは加工することが出来なかったリング状スリット部を安定に加工することができ、シール性に優れ、除去可能なリング状スリット部を備える新規なケーブル用シール部材を提供することができるという効果が発現する。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の産業上の利用可能性として、本発明は、ケーブルを用いた一般的な通信技術分野の技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
10,20,30,40,50,60,70…ケーブル用シール部材
12…側面部
15…第1の平面
16…第2の平面
17,27,37…リング状スリット部
130,153,155…ホルダー
140…カット刃
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光通信用の光ファイバーケーブルの接続部等を保護するために用いられるケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバーケーブルの接続部等を保護するためには、これを被包して保護するケーブル保護ケースが用いられる。ケーブル保護ケースは、例えば、長細い筒状のケースを縦割りした半片容器体の組み合わせ体から構成されており、光ファイバーケーブルの接続部等を内部に収納した後に、半片容器体の分割面を突き合わせた状態で筒状のケースを形成し、しかる後、固定手段を用いて分割面が開かないようにしっかりと、固定できるようになっている。
【0003】
このようなケーブル保護ケースの両端面は、ケーブルを挿通させた状態で、外部からの液体の浸入を防止するために、閉塞状態を保つことが要求される。
【0004】
従来、このようなケーブル保護ケースの両端面における閉塞手法としては以下のような手法が一般に行なわれていた。
【0005】
ケーブル保護ケースの両端面をシールできるように端面に取り付け可能な端面シール部材が部品として予め準備してあり、当該端面シール部材にはケーブル挿入口が実際に挿通されるケーブルの外径よりも大きく開口されており、ケーブル挿入口とケーブル間の隙間をスペーサとしてのパッキンやブッシュ、あるいは一定の厚さを有するゴムテープを巻回することによって、ケーブル挿入口とケーブル間の隙間のシール性を保つタイプのものが存在する。さらに、上記の構成に加えて、気密性や水密性を確保するためにシーリングテープを併用するタイプのものも存在する。
【0006】
その他、端面シール部材として、内部にテーパ状の孔部を有するものを用い、ケーブルの外径に対応させるように、現場にてテーパ部の所定の位置を切断して使用するタイプのものも存在する。
【0007】
しかしながら、上記の手法において、スペーサとしてのパッキンやブッシュを用いる場合、例えば数種のケーブル外径を想定してそれらに対応するように数種のスペーサを常に準備、保管しておかねばならず、部品点数が極めて多くなって取り扱いが煩雑になってしまうという問題がある。
【0008】
また、ゴムテープやシーリングテープを巻回することによってシール性を確保する方法は、その作業が煩雑であり、ケーブルの増設や保守には特に、これらのテープの除去作業が大変手間のかかる作業となる。
【0009】
また、内部にテーパ状の孔部を備える端面シール部材では、どの箇所で切断すれば、所定の内径が得られるのか、肉眼でみえないために、切断位置を決めることが困難であると言える。
【0010】
このような問題を解決するために、先行技術として特許文献1(US特許第5048382号)には、複数の同心リングを備えるゴム弾性シーリング(封止)デバイスの製造方法が開示されている。このような方法で製造されたゴム弾性シーリング(封止)デバイスは、複数の除去可能な同心リング状スリット部を備えており、挿通されるケーブルの外径に応じて、適宜、所望のリング径の箇所から除去可能なリング状スリット部を取り除くことによって、所望の穴径寸法を有するゴム弾性シーリング(封止)デバイスができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US特許第5048382号 しかしながら、上記の特許文献1に開示されている複数の同心リングを備えるゴム弾性シーリング(封止)デバイスの製造方法は、加工対象となるゴム体のデュロメータA硬度が35〜75である。このようなゴム体の硬度では、硬度が大きすぎて、ケーブル用の端面シール部材としては十分なシール性を保証することができない。
【0012】
また、ゴム体の硬度が上記開示のものより柔らかい場合、例えば、ゴム体のデュロメータA硬度が30以下の場合には、上記特許文献1に開示された手法では、除去可能な同心リングを安定して形成することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、シール性が良好な低硬度のゴム体であって、除去可能なリング状スリット部を備えるケーブル用シール部材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、本発明は、ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっているように構成される。
【0015】
本発明は前記のケーブル用シール部材の製造方法であって、当該方法は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0016】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記ゴム成形体は略円筒形状をなし、その厚さ方向の中心軸には貫通孔が形成されており、前記貫通孔に挿入することができるシャフト部と、シャフト部の基部に位置してシャフト部に対して垂直な載置平面を備える円形フランジ部と、当該円形フランジ部のシャフト部と反対方向に突出した保持シャフトを有する加工用ホルダーを準備し、前記加工用ホルダーのシャフト部にゴム成形体の貫通孔を挿入するともに、ゴム成形体の第2の平面を円形フランジ部の載置平面と当接させた状態でセットし、ゴム成形体の側面部に円筒状ホルダーを被せた状態で、前記加工用ホルダーの保持シャフトを回転機械に固着連結し、シャフト部を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0017】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成されるように構成される。
【0018】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記円筒状ホルダーは、樹脂からなり、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成されているように構成される。
【0019】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記ゴム成形体は、その厚さ方向の中心軸に貫通孔が無い略円柱形状をなしており、ゴム成形体の側面部に、円筒状のホルダーを被着させ、この円筒状のホルダーの上にさらに、外ホルダーを被着させ、当該外ホルダーの外周を回転機械のチャックで挟むように固着連結させ、ゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0020】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記円筒状のホルダーは、複数割りされており、当該複数割りされた円筒状のホルダーを元の円筒状に組み合わせてゴム成形体の側面部に被着させるように構成され、前記外ホルダーは、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成された金属ホルダーから構成される。
【0021】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成される。
【0022】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記複数割りされた円筒状のホルダーは、樹脂からなるように構成される。
【0023】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、次いで、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の他の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、複数のリング状スリット部を第1の平面の異なる場所に分散させるように配置させてなるように構成される。
【0024】
本発明のケーブル用シール部材の製造方法の好ましい態様として、前記リング状スリット部は、厚さ方向の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されており、前記リング状スリット部は、厚さ方向の他の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されているように構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のケーブル用シール部材は、ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっているように構成されている。
【0026】
従って、シール性が極めて良好であるとともに、除去可能なリング状スリット部を備えるので、部品点数の削減を図ることができる。多品種を常に持ち歩く必要性もなく、作業性の向上に大きく寄与することができる。
【0027】
また、このようなケーブル用シール部材の製造方法は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。従って、従来、デュロメータA硬度が30以下の低硬度のゴムでは加工することが出来なかったリング状スリット部を安定に加工することができ、シール性に優れ、除去可能なリング状スリット部を備える新規なケーブル用シール部材を提供することができるという効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)のA1−A1断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図2(B)は、図2(A)のA2−A2断面図である。
【図3】図3(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図3(B)は、図3(A)のA3−A3断面図である。
【図4】図4(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図4(B)は、図4(A)のA4−A4断面図である。
【図5】図5(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図5(B)は、図5(A)のA5−A5断面図である。
【図6】図6(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図6(B)は、図6(A)のA6−A6断面図である。
【図7】図7(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図7(B)は、図7(A)のA7−A7断面図である。
【図8】図8(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図8(B)は、図8(A)のA8−A8断面図である。
【図9】図9(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図9(B)は、図9(A)のA9−A9断面図である。
【図10】図10(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図10(B)は、図10(A)のA10−A10断面図である。
【図11】図11は、光ファイバーケーブル等を被包して保護するケーブル保護ケースの両端面にケーブル用シール部材を取り付けた状態のシンプルな一例を示す一部を断面にした概略図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好適な形態について詳細に説明する。
本発明のケーブル用シール部材10は、例えば、図11の簡略図に示されるように、ケーブル保護ケース100内へ外部からの液体の浸入を防止するために(液密性を保つために)、ケーブル保護ケース100の両端部100aに、それぞれ配置されるケーブル用シール部材10である。
【0030】
ケーブル保護ケース100は、例えば、長細い筒状のケースを縦割りした半片容器体の組み合わせ体から構成されており、例えば、光ファイバー等のケーブルの接続部等を内部に収納した後に、半片容器体の分割面を突き合わせた状態で筒状のケースを形成し、しかる後、図示していない固定手段を用いて分割面が開かないようにしっかりと、固定できるように構成されるものが好適例として挙げられるが、実際には、種々のタイプのものが存在しており、必ずしも、このような形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明におけるケーブル用シール部材10には、例えば、図示のごとくケーブル2が挿通される貫通穴10aを有し、この貫通穴10aとケーブル2との接合部、およびケーブル保護ケース100とケーブル用シール部材10との接合部において液体の浸入が防止される機能が要求される。
【0032】
また、ケーブル用シール部材10には、その使い道として貫通穴10aを設けずに、閉塞栓として使用される場合もあり、必ずしもケーブル2が挿通される貫通穴10aが形成されるものではない。特に、複数の貫通穴10aを形成可能にしておき、その中の一部をケーブル2を挿通させる貫通穴10aとして使用し、他は穴を形成せずに単に穴を塞ぐための閉塞栓として使用するという使い方もある。
【0033】
〔ケーブル用シール部材の第1の実施形態の説明〕
まず、最初に、本発明に係るケーブル用シール部材の第1の実施形態について、図1(A),(B)を参照しつつ説明する。 図1(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)のA1−A1断面図である。
【0034】
本発明のケーブル用シール部材10は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下、好ましくは、2〜20、さらに好ましくは、2〜15の物性を備えるゴム成形体11から構成される。
【0035】
デュロメータA(Duro-A)硬度、はJIS K6253に基づいて求めることができる。本発明において、デュロメータA硬度が30を超えると、ケーブル用シール部材10と他の部材との接合面におけるシール性が十分ではなく、液密性を保つことが困難となってしまう。
【0036】
具体的なゴム材質としては、例えば、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)、二トリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、および、これらの任意の混合物等を挙げることができる。このようなゴム材に、例えば、加硫剤、加硫促進剤、オイル等を加えた後、混練機により混練して、得られたゴム混合物を所定の形状に成型、加硫することにより、所望のゴム成形体を作製することができる。
ゴム硬度の調整には、例えば、ゴムとの相溶性の良いオイルを適当量含有させるようにすれば良い。また、より低分子量のゴム材質を選定することによってもゴム硬度の調整を行なうことができる。
【0037】
加硫剤としては、硫黄、過酸化物、キノイド、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂やアルキルフェノール・スルフィド樹脂等を挙げることができ、これらは使用されるゴム材質に対応させて適宜選定することができる。加硫促進剤としては、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等を使用することができる。また、上記のゴム材質には、必要に応じて老化防止剤、ステアリン酸等の有機脂肪酸、白色充填材(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー)、カーボンブラック等の充填剤等を含有させてもよい。後述するように、ゴム成形体を成形した後に行なわれるリング状スリット部の形成を容易にするためには、カーボンブラックの含有量を抑えて、その減少分を補填するように白色充填材を多目に添加させることが望ましい。
【0038】
本発明におけるゴム成形体11は、図1(B)に示されるように厚さ方向に対向する第1の平面15と第2の平面16と、前記第1の平面15の周縁15aと第2の平面16の周縁16aを繋ぐ側面部12とを有している。特に、第1の実施形態におけるゴム成形体11は、厚さ方向の中心軸に貫通孔が無い略円柱形状をなしている。ここで、略円柱形状とは、円柱形状の側面部の一部を厚さ方向や円周方向に削り取ったような形状も含む意味である。従って、三角形を含む多角形も含まれる。
【0039】
このようなゴム成形体11は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部17を有している(図示例では1個のみのリング状スリット部17)。
【0040】
リング状スリット部17は、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位18が形成されている。
【0041】
この未貫通の部位18は、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、この毟り取り作業によって、中央の中芯ゴム11aが除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。
【0042】
図1(B)に示されるスリットの最深部から第2の平面16までの距離δは、0.1〜1.0mm程度、好ましくは、0.1〜0.5mmとされる。
【0043】
この距離δの値が上限値の1.0mmを超えると、未貫通の部位18を強制的に毟り取って貫通穴を形成させるという作業が困難となってしまう。この一方で、この距離δの値が下限値の0.1mm未満であると、未貫通の部位18の残り厚さがあまりに薄くなってしまい、例えば、搬送中や包装中に未貫通の部位18の一部または全部が切れて貫通穴の一部あるいは全部が形成されてしまうという不都合が生じ得る。つまり、作業者の意図に応じて毟り取ることが可能であるという本来の仕様に反する仕様となってしまう。また、貫通穴を形成せずに閉塞栓として使用するという使い方ができなくなってしまうおそれが生じる。
【0044】
このような第1の実施形態におけるケーブル用シール部材10は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部17を有しているので、貫通穴を空けて使用することもできるし、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。つまり、1つのケーブル用シール部材10で2種の使い方ができるので、部品の点数を減らすことが可能となる。しかもデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなるので貫通穴を空けての使用においてもシール性が極めて良好である。
【0045】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部17を有するケーブル用シール部材10は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0046】
〔ケーブル用シール部材の第2の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第2の実施形態について、図2(A),(B)を参照しつつ説明する。図2(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図2(B)は、図2(A)のA2−A2断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0047】
第2の実施形態におけるケーブル用シール部材20が前記第1の実施形態のそれと本質的に異なるのは、リング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eが、複数個存在するとともに、これらが同心円状に形成されている点にある。
【0048】
すなわち、ゴム成形体11は、厚さ方向に形成された複数の同心円状のリング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eを有している。図示例では5個のリング状スリット部が形成されているが、特に、この数に限定されるものではない。また、同心円に配置された各リングの隣接する間隔は、0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.2mm程度とされるが特に限定されるものではない。
【0049】
これらの各リング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位18a,18b,18c,18d,18eが形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。
【0050】
この未貫通の部位18a,18b,18c,18d,18eは、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、各リング状スリット部17a,17b,17c,17d,17eのどこを毟り取るかは、使用するケーブルの外径の大きさに合せて適宜選定すればよい。この作業によって、中芯ゴム11aを含む所定の同心円スリット部分が除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。もちろんどこも毟り取らずに、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。
【0051】
ケーブル用シール部材20のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0052】
このような第2の実施形態におけるケーブル用シール部材20は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、特に、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を備えているので、使用するケーブルの外径の大きさに合せて貫通穴の大きさを適宜選んで毟り取って形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。また、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもでき、これによっても、さらなる部品点数の削減を図ることができる。
【0053】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を有するケーブル用シール部材20は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0054】
〔ケーブル用シール部材の第3の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第3の実施形態について、図3(A),(B)を参照しつつ説明する。図3(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図3(B)は、図3(A)のA3−A3断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0055】
図3(A),(B)に示される第3の実施形態におけるケーブル用シール部材30が前記図2(A),(B)に示される第2の実施形態のそれと本質的に異なるのは、厚さ方向の中心軸に貫通孔19が形成されている点にある。そして、この貫通孔19の円形と同心円状にリング状スリット部17b,17c,17d,17eが複数個形成されている。リング状スリット部の個数は、4個の場合が例示されているが、この個数については何ら限定されるものではない。
【0056】
また、同心円状に配置された各リングの隣接する間隔は、上述したとおりにすればよい。
これらの各リング状スリット部17b,17c,17d,17eは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位18b,18c,18d,18eとなっている。距離δの設定は上述したとおりである。
【0057】
この未貫通の部位18b,18c,18d,18eは、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、各リング状スリット部17b,17c,17d,17eのどこを毟り取るかは、使用するケーブルの外径の大きさに合せて適宜選定すればよい。この毟り取り作業によって、同心円状のスリット部分が除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。ただし、この場合、そのままの状態で閉塞栓として使用することはできない。
【0058】
ケーブル用シール部材30のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0059】
このような第3の実施形態におけるケーブル用シール部材30は、極めて低い硬度のゴム成形体からなり、特に、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を備えているので、使用するケーブルの外径の大きさに合せて貫通穴の大きさを適宜選んで毟り取って形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。
【0060】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を有するケーブル用シール部材30の存在は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0061】
〔ケーブル用シール部材の第4の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第4の実施形態について、図4(A),(B)を参照しつつ説明する。図4(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図4(B)は、図4(A)のA4−A4断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0062】
図4(A),(B)に示される第4の実施形態におけるケーブル用シール部材40が前記図1(A),(B)に示される第1の実施形態のそれと本質的に異なるのは、複数のリング状スリット部27,37(図示の例では2個を例示しているが、必ずしもこの個数に限定されるものではない)を第1の平面部15の異なる場所に分散させるように配置させている点にある。すなわち、リング状スリット部27は、厚さ方向の一の軸G1を中心軸として形成されており、リング状スリット部37は、厚さ方向の他の一の軸G2を中心軸として形成されている。G1とG2との間隔は、リング状スリット部27とリング状スリット部37とが交差しないような範囲で適宜定めればよい。
【0063】
これらの各リング状スリット部27、37は、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位28、38が形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。この未貫通の部位28、38は、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっている。この作業によって、中芯ゴム11a、11bが除去されて、貫通穴を空けることが可能となっている。もちろん毟り取らずに、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。図示の2つのうち、一方を貫通穴とし、他方を閉塞栓とするようにしてもよい。
【0064】
ケーブル用シール部材40のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0065】
このような第4の実施形態におけるケーブル用シール部材40は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、厚さ方向に形成された複数のリング状スリット部27,37を第1の平面部15の異なる場所に分散させるように配置させているので、双方を貫通穴としたり、一方を貫通穴とし他方を閉塞栓とするようにしたりすることができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。
【0066】
なお、本願の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数のリング状スリット部を第1の平面部の異なる場所に分散させるように配置させてなるケーブル用シール部材40は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0067】
〔ケーブル用シール部材の第5の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第5の実施形態について、図5(A),(B)を参照しつつ説明する。図5(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図5(B)は、図5(A)のA5−A5断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0068】
図5(A),(B)に示される第5の実施形態におけるケーブル用シール部材50が前記図4(A),(B)に示される第4の実施形態のそれと本質的に異なるのは、複数のリング状スリット部27a,27b,27c,27dが、厚さ方向の一の軸G1を中心軸として同心円状に形成されており、複数のリング状スリット部37a,37b,37c,37dが、厚さ方向の他の一の軸G2を中心軸として同心円状に形成されている点にある。
【0069】
図示例では各々4個のリング状スリット部が形成されているが、特に、この数に限定されるものではない。また、同心円に配置された各リングの隣接する間隔は、0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.2mm程度とされるが特に限定されるものではない。
【0070】
G1を中心軸とするリング状スリット部27a,27b,27c,27dは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位28a,28b,28c,28dが形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。この一方で、G2を中心軸とするリング状スリット部37a,37b,37c,37dは、それぞれ、第1の平面15からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面16に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位38a,38b,38c,38dが形成されている。距離δの設定は上述したとおりである。
【0071】
未貫通の部位28a,28b,28c,28dや38a,38b,38c,38dは、作業者の手によって、強引に毟り取ることが可能となっており、各リング状スリット部27a,27b,27c,27d(37a,37b,37c,37d)のどこを毟り取るかは、使用するケーブルの外径の大きさに合せて適宜選定すればよい。
【0072】
この毟り取りの作業によって、中芯ゴム11aを含む同心円状のスリット部分や、中芯ゴム11bを含む同心円状のスリット部分が除去されて、複数の離間した貫通穴を空けることが可能となっている。異なる外径のケーブルの径を複数使用する場合に、個々に対応させた貫通穴とすることもできる。もちろんどこも毟り取らずに、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもできる。
【0073】
ケーブル用シール部材50のデュロメータA硬度の設定や使用するゴム組成については、上述したとおりである。
【0074】
このような第5の実施形態におけるケーブル用シール部材50は、デュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体からなり、特に、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を複数セット分散配置させて備えているので、使用するケーブルの外径の大きさに合せて貫通穴の大きさを適宜選んで毟り取って形成することができ、部品点数の削減を図ることができる。しかもシール性が極めて良好である。また、貫通穴を形成せずにそのままの状態で閉塞栓として使用することもでき、これによっても、さらなる部品点数の削減を図ることができる。
【0075】
なお、本願のデュロメータA硬度が30以下の極めて低い硬度のゴム成形体であって、厚さ方向に形成された複数の同心円状に形成されたリング状スリット部を有するケーブル用シール部材50の存在は、本願出願人が調査した範囲で市場に存在していないことが確認されている。
【0076】
〔ケーブル用シール部材の第6の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第6の実施形態について、図6(A),(B)を参照しつつ説明する。図6(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図6(B)は、図6(A)のA6−A6断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0077】
図6(A),(B)に示される第6の実施形態におけるケーブル用シール部材60が前記図4(A),(B)に示される第4の実施形態のそれと本質的に異なるのは、特に、ゴム成形体11の外形形状であり、第6の実施形態では正面形状が瓢箪形状となっている。基本的な要部の構成については実質的に同じである。第6の実施形態の方が、ケーブル用シール部材60のゴム材料の使用割合が低く、経済的である。
【0078】
〔ケーブル用シール部材の第7の実施形態の説明〕
次いで、本発明に係るケーブル用シール部材の第7の実施形態について、図7(A),(B)を参照しつつ説明する。図7(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材の好適な一実施形態を示す正面図であり、図7(B)は、図7(A)のA7−A7断面図である。図面における同一符号は実質的に前述した部材と同様の部材を意味する。
【0079】
図7(A),(B)に示される第7の実施形態におけるケーブル用シール部材70が前記図5(A),(B)に示される第5の実施形態のそれと本質的に異なるのは、特に、ゴム成形体11の外形形状であり、第7の実施形態では正面形状が瓢箪形状となっている。基本的な要部の構成については実質的に同じである。第7の実施形態の方が、ケーブル用シール部材70のゴム材料の使用割合が低く、経済的である。
【0080】
上述してきたケーブル用シール部材の各実施形態は好適例を示しただけであって、当該実施形態に限定されるものではない。
【0081】
〔ケーブル用シール部材の製造方法の説明〕
次に、上述してきたケーブル用シール部材の製造方法について説明する。
【0082】
まず最初に、厚さ方向に対向する第1の平面15と第2の平面16と、第1の平面15の周縁15aと第2の平面16の周縁16aとを繋ぐ側面部12とを有するゴム成形体11であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体11を成形する。
【0083】
ゴム組成物については上述した通りであり、ゴム材に、例えば、加硫剤、加硫促進剤、オイル等を加えた後、混練機により混練して、得られたゴム混合物を所定の形状に成型、加硫することにより、所望のゴム成形体を作製することができる。前述したようにゴム成形体の硬度の調整には、例えば、ゴムとの相溶性の良いオイルを適当量含有させるようにすれば良い。また、より低分子量のゴム材質を選定することによってもゴム硬度の調整を行なうことができる。
【0084】
次いで、成形されたゴム成形体の側面部12にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面15からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面16に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0085】
本発明の製造方法で特に重要なことは、成形されたゴム成形体の側面部12にホルダーを被せた状態でゴム成形体を回転させている点にある。本発明で使用するゴム成形体11は、シール性の向上を図るためにデュロメータA硬度が0を超えて30以下という極めて低い硬度のゴム成形物であり、このものをそのまま回転させた状態で加工すると遠心力でゴムが外方へ変形してしまいリング状スリット部を形成させることが出来ないが、本発明のホルダーはこのような不都合を解消するために用いられているのである。
【0086】
ゴム成形体は略円筒形状をなし、その厚さ方向の中心軸には貫通孔が形成されている場合と形成されていない場合との2タイプに別けられる。このようなタイプの相違によって、ゴム成形体を保持する形態は必ずしも同じでない。以下、貫通孔が形成されている場合(例えば、図3に示されるゴム成形体)と貫通孔が形成されていない場合(例えば図1、図2等に示されるゴム成形体)に分けて好適例を挙げて説明する。ただし、本発明の製造方法の要部の作用が発現すればよいのであって、以下に示す好適例に限定されるわけではない。
【0087】
(好適例1)
最初に、ゴム成形体の厚さ方向の中心軸に貫通孔19が形成されている場合のゴム成形体を保持する好適な形態について、図9(A),(B)を参照しつつ説明する。図9(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図9(B)は、図9(A)のA9−A9断面図である。
【0088】
ゴム成形体11の厚さ方向の中心軸に貫通孔19が形成されている場合(例えば、図3を参照)には、当該ゴム成形体11を加工する際に使用される加工用ホルダー110は、図9に示されるがごとくである。
【0089】
すなわち、ゴム成形体11の貫通孔19に挿入することができるシャフト部112と、シャフト部112の基部112aに位置してシャフト部112に対して垂直な載置平面115aを備える円形フランジ部115と、当該円形フランジ部115のシャフト部112と反対方向に突出した保持シャフト114を有する加工用ホルダー110が準備される。
【0090】
円形フランジ部115の外径は、ゴム成形体11の外径と同程度とすることが好ましい。
【0091】
このように準備された加工用ホルダー110のシャフト部112にゴム成形体11の貫通孔19を挿入するともに、ゴム成形体11の第2の平面16を円形フランジ部115の載置平面115aと当接させた状態でセットする。しかる後、ゴム成形体11の側面部12に円筒状ホルダー130を被せて図9(A),(B)に示される状態に至る。
【0092】
この状態で、加工用ホルダー110の保持シャフト114を図示しない回転機械(例えば、旋盤の回転チャック)に固着連結し、シャフト部112を回転軸としてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる。
【0093】
さらに、同心円状に複数の片側未貫通のリング状スリット部を形成させるには第1の平面15からゴム成形体11内部にカット刃140を挿入させる位置を半径方向に間欠的に順次変えることにより、複数の同心円状のリング状スリット部が形成される。
【0094】
シャフト部112を回転軸としてゴム成形体11を回転させる回転速度は、ゴム成形体11の硬度や各種物性、カット刃140の性状等を考慮しながら適宜選定すればよい。
【0095】
加工用ホルダー110は通常、金属材料から構成することが望ましいが、特に限定されるものではない。樹脂や無機材料等から構成することも可能である。特に、ゴム成形体11の粘着力によるホールド性を向上するために、ゴム成形体11が当接するシャフト部112の表面および円形フランジ部115の載置平面115aは、鏡面としておくことが好ましい。
【0096】
円筒状ホルダー130は、樹脂から構成することが好ましく、円周の一部に閉周路を切断する分断スリット130a(図9(A)参照)を形成しておくことが好ましい。取り扱い易く操作性に優れるからである。ただし、このような仕様に限定されるわけではない。
【0097】
また、円筒状ホルダー130は、回転による遠心力でゴムが外方へ変形することを防止するように作用するものであるから、円筒状ホルダー130の内径は、ゴム成形体11の外径と実質的に同じ径とすることが望ましい。また、図9(B)に示されるように、円形フランジ部115の外周側面115bをも同時に円筒状ホルダー130で覆うような仕様とすることが望ましい。
【0098】
(好適例2)
次に、ゴム成形体の厚さ方向の中心軸に貫通孔が無いゴム成形体を保持する好適な形態について、図8(A),(B)を参照しつつ説明する。図8(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図8(B)は、図8(A)のA8−A8断面図である。
【0099】
ゴム成形体11の厚さ方向の中心軸に貫通孔が形成されていない場合(例えば、図1,2を参照)には、当該ゴム成形体11を加工する際に使用される加工用ホルダー150は、図8に示されるごとくである。
【0100】
すなわち、ゴム成形体11の側面部12に被着させる円筒状のホルダー153と、この上に被着させる円筒状の外ホルダー155を備えている。
【0101】
本実施例の場合、円筒状のホルダー153は、複数割りされた円筒状ホルダー(図示例では2つ割りされている)を元の円筒状に組み合わせてゴム成形体の側面部12に被着させているが、必ずしもこの構造に限定されるわけではない。また、外ホルダー155は、円周の一部に閉周路を切断する分断スリット155aが形成された金属ホルダーとすることが好ましい。円筒状のホルダー153の内径は、ゴム成形体11の外径と同程度とすることが好ましい。外ホルダー155の内径は、円筒状のホルダー153の外径と同程度とすることが好ましい。
【0102】
この準備された加工用ホルダー150を用いて、ゴム成形体11の側面部12に、複数割りされた円筒状のホルダー153を元の円筒状に組み合わせて被着させ、この円筒状のホルダー153の上にさらに、外ホルダー155を被着させ、当該外ホルダー155の外周155bを回転機械のチャック(例えば、旋盤のチャック)で挟むように固着連結させて、図8(B)に示される状態に至る。
【0103】
この状態で、回転機械を回転させてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる(例えば、図1参照)。
【0104】
さらに、同心円状に複数の片側未貫通のリング状スリット部を形成させるには第1の平面15からゴム成形体11内部にカット刃140を挿入させる位置を半径方向に間欠的に順次変えることにより、複数の同心円状のリング状スリット部が形成される(例えば、図2参照)。
【0105】
ゴム成形体11を回転させる回転速度は、ゴム成形体11の硬度や各種物性、カット刃140の性状等を考慮しながら適宜選定すればよい。
【0106】
(好適例3)
上記の好適例1,2とは異なり、例えば、図6や図7に示されるように、一のリング状スリット部が、厚さ方向の一の軸G1を中心軸として形成されており、他の一のリング状スリット部が、厚さ方向の他の一の軸G2を中心軸として形成されている場合の製造方法について、図10(A),(B)を参照しつつ説明する。
【0107】
図10(A)は、本発明に係るケーブル用シール部材を製造する際、片端が回転機構部に固定されるホルダーにケーブル用シール部材がホールドされた好適な状態を示す正面図であり、図10(B)は、図10(A)のA10−A10断面図である。
【0108】
例えば、図6や図7に示されるゴム成形体11を加工する際に使用される加工用ホルダー180の好適な一例が図10に示される。すなわち、図10に示される加工用ホルダー180は、円盤状のフランジ板185と、このフランジ板185の一方の面181側に形成される凹部188と、フランジ板185の他方の面182に形成された保持シャフト189とを備えている。
【0109】
一方の面181側に形成される凹部188は、図示のごとくゴム成形体11の第2の平面16(第2の平面16)と側面部12とが密着して収納されるような形態をなしている。すなわち、ゴム成形体11は凹部181内にすっぽりと嵌着される。それゆえ、ゴム成形体11の側面部12はホルダーを被せた状態と実質的に同じになっており、回転させた状態で加工しても遠心力でゴムが外方へ変形してしまうという不都合は生じない。
【0110】
また、保持シャフト189の中心軸と、厚さ方向の他の一の軸G2とは一致するように設定される。
【0111】
この準備された加工用ホルダー180を用いて、ゴム成形体11を凹部188内に嵌着して収納し、図10(A),(B)に示される状態に至る。
【0112】
この状態で、加工用ホルダー180の保持シャフト189を図示しない回転機械(例えば、旋盤の回転チャック)に固着連結し、シャフト部189を回転軸(軸G2と同じ)としてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる。
【0113】
さらに、同心円状に複数の片側未貫通のリング状スリット部を形成させるには、第1の平面15からゴム成形体11内部にカット刃140を挿入させる位置を半径方向に間欠的に順次変えることにより、複数の同心円状のリング状スリット部が形成される。
【0114】
次いで、ゴム成形体11を一旦、凹部188から外して、ゴム成形体11の上下位置を反対にセットする。これによって、G1がG2の位置に来るので、回転中心がG1となり、上記と同様にシャフト部189を回転軸(軸G1と同じ)としてゴム成形体11を回転させつつ、リング状スリット部を形成するためのカット刃140を第1の平面15からゴム成形体11の内部に進入させ、第2の平面16に到達する手前でカット刃140の進入を止めて(距離δの設定範囲内で止める)、未貫通の部位を形成し、いわゆる片側未貫通のリング状スリット部を形成させる。
【0115】
上記の操作は、以下の操作と実質的に同じである。すなわち、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、次いで、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の他の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、少なくとも複数のリング状スリット部を第1の平面部の異なる場所に分散させるように配置させた状態を形成しているのである。
【0116】
上記のごとくゴム成形体11の上下位置を反対にセットすることによって、回転軸をG1とG2、相互に交換してもよいし、図示していないがシャフト部189を着脱可能として取り付け位置をG1とG2の相互の2つの位置に変更できるようにしてもよい。
【0117】
なお、図4および図5に示されるケーブル用シール部材40および50の製造方法についても、基本的な製法は図10に示される手法に従えばよいので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0118】
以上の説明から分かるように、本発明のケーブル用シール部材は、ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっているように構成されている。従って、シール性が極めて良好であるとともに、除去可能なリング状スリット部を備えるので、部品点数の削減を図ることができる。多品種を常に持ち歩く必要性もなく、作業性の向上に大きく寄与することができる。
【0119】
また、このようなケーブル用シール部材の製造方法は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させるように構成される。
【0120】
従って、従来、デュロメータA硬度が30以下の低硬度のゴムでは加工することが出来なかったリング状スリット部を安定に加工することができ、シール性に優れ、除去可能なリング状スリット部を備える新規なケーブル用シール部材を提供することができるという効果が発現する。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の産業上の利用可能性として、本発明は、ケーブルを用いた一般的な通信技術分野の技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
10,20,30,40,50,60,70…ケーブル用シール部材
12…側面部
15…第1の平面
16…第2の平面
17,27,37…リング状スリット部
130,153,155…ホルダー
140…カット刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、
該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、
前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、
前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、
前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっていることを特徴とするケーブル用シール部材。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル用シール部材の製造方法であって、
当該方法は、
厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、
成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させることを特徴とするケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム成形体は略円筒形状をなし、その厚さ方向の中心軸には貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に挿入することができるシャフト部と、シャフト部の基部に位置してシャフト部に対して垂直な載置平面を備える円形フランジ部と、当該円形フランジ部のシャフト部と反対方向に突出した保持シャフトを有する加工用ホルダーを準備し、
前記加工用ホルダーのシャフト部にゴム成形体の貫通孔を挿入するともに、ゴム成形体の第2の平面を円形フランジ部の載置平面と当接させた状態でセットし、ゴム成形体の側面部に円筒状ホルダーを被せた状態で、前記加工用ホルダーの保持シャフトを回転機械に固着連結し、シャフト部を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させる請求項2に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項4】
前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成される請求項2または請求項3に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項5】
前記円筒状ホルダーは、樹脂からなり、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成されている請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項6】
前記ゴム成形体は、その厚さ方向の中心軸に貫通孔が無い略円柱形状をなしており、
ゴム成形体の側面部に、円筒状のホルダーを被着させ、この円筒状のホルダーの上にさらに、外ホルダーを被着させ、当該外ホルダーの外周を回転機械のチャックで挟むように固着連結させ、ゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させる請求項2に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項7】
前記円筒状のホルダーは、複数割りされており、当該複数割りされた円筒状のホルダーを元の円筒状に組み合わせてゴム成形体の側面部に被着させるように構成され、前記外ホルダーは、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成された金属ホルダーから構成される請求項6に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項8】
前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成される請求項7に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項9】
前記複数割りされた円筒状のホルダーは、樹脂からなる請求項7または請求項8に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項10】
成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、
次いで、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の他の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、
複数のリング状スリット部を第1の平面の異なる場所に分散させるように配置させてなる請求項2に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項11】
前記リング状スリット部は、厚さ方向の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されており、
前記リング状スリット部は、厚さ方向の他の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されている請求項10に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項1】
ケーブル保護ケース内へ外部からの液体の浸入を防止するために、ケーブル保護ケースの端部に配置されるケーブル用シール部材であって、
該ケーブル用シール部材は、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体からなり、
前記ゴム成形体は、厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有し、
前記ゴム成形体は、厚さ方向に形成された少なくとも1以上のリング状スリット部を有し、
前記リング状スリット部は、前記第1の平面からスリットの形成が開始されて厚さ方向に延設されており、第2の平面に到達する手前でスリットが終了して未貫通の部位となっていることを特徴とするケーブル用シール部材。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル用シール部材の製造方法であって、
当該方法は、
厚さ方向に対向する第1の平面と第2の平面と、前記第1の平面の周縁と第2の平面の周縁とを繋ぐ側面部とを有するゴム成形体であって、デュロメータA硬度が0を超えて30以下であるゴム成形体を成形し、
成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させることを特徴とするケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム成形体は略円筒形状をなし、その厚さ方向の中心軸には貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に挿入することができるシャフト部と、シャフト部の基部に位置してシャフト部に対して垂直な載置平面を備える円形フランジ部と、当該円形フランジ部のシャフト部と反対方向に突出した保持シャフトを有する加工用ホルダーを準備し、
前記加工用ホルダーのシャフト部にゴム成形体の貫通孔を挿入するともに、ゴム成形体の第2の平面を円形フランジ部の載置平面と当接させた状態でセットし、ゴム成形体の側面部に円筒状ホルダーを被せた状態で、前記加工用ホルダーの保持シャフトを回転機械に固着連結し、シャフト部を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させる請求項2に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項4】
前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面部からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成される請求項2または請求項3に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項5】
前記円筒状ホルダーは、樹脂からなり、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成されている請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項6】
前記ゴム成形体は、その厚さ方向の中心軸に貫通孔が無い略円柱形状をなしており、
ゴム成形体の側面部に、円筒状のホルダーを被着させ、この円筒状のホルダーの上にさらに、外ホルダーを被着させ、当該外ホルダーの外周を回転機械のチャックで挟むように固着連結させ、ゴム成形体を回転させつつ、片側未貫通のリング状スリット部を形成させる請求項2に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項7】
前記円筒状のホルダーは、複数割りされており、当該複数割りされた円筒状のホルダーを元の円筒状に組み合わせてゴム成形体の側面部に被着させるように構成され、前記外ホルダーは、円周の一部に閉周路を切断する分断スリットが形成された金属ホルダーから構成される請求項6に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項8】
前記リング状スリット部は、複数個存在するとともに同心円状に形成されており、当該複数個のリング状スリット部は、前記第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させる位置を半径方向に順次変えることにより、同心円状のリング状スリット部として形成される請求項7に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項9】
前記複数割りされた円筒状のホルダーは、樹脂からなる請求項7または請求項8に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項10】
成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、
次いで、成形されたゴム成形体の側面部にホルダーを被せた状態で、厚さ方向の他の一の軸を回転軸としてゴム成形体を回転させつつ、第1の平面からゴム成形体内部にカット刃を挿入させながらリング状スリット部を形成させていき、第2の平面に到達する手前でカット刃の挿入を止めて片側未貫通のリング状スリット部を形成させ、
複数のリング状スリット部を第1の平面の異なる場所に分散させるように配置させてなる請求項2に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【請求項11】
前記リング状スリット部は、厚さ方向の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されており、
前記リング状スリット部は、厚さ方向の他の一の軸を回転軸として同心円状に複数個形成されている請求項10に記載のケーブル用シール部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−244790(P2012−244790A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113179(P2011−113179)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】
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