説明

ケーブル送り引き戻し装置

【課題】
片方が位置移動する機器または装置間のケーブルを、計測に障害を与えるノイズを発生するスリップリング無しで、ケーブルがたるんだり,からまったりすることなく、かつケーブルに損傷を与えないように、送り,引き戻しを可能とする。
【解決手段】
本発明は、ケーブル送り引き戻し装置であって、ケーブル保持プレートを用いることにより機器または装置間のケーブルをケーブルに損傷を与えることなくケーブルを伸縮させる。
ケーブル送り引き戻し装置は、ケーブル送り引き戻しの動力にモータ,ケーブルが固定されたケーブル保持プレートを送り引き戻すため、ケーブル送り引き戻しローラと、ケーブル送り引き戻し歯車がある。ケーブル保持プレートの送り引き戻しの動力をモータとし、モータの回転速度は回転位置検出器で検知され、送り引き戻し速度はモータA・B制御装置で制御される機構とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平らな床・コンクリート面等で移動して稼動する計測器と固定機器とを接続すべきケーブルが存在する場合に使用されるケーブル送り引き戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルが接続されている計測器が台車に載置されて移動する場合、ケーブルの巻き取り,延長はケーブルドラムとスリップリングを用い、ケーブルの伸縮はケーブルドラムを回転・逆回転させることでケーブルで接続された装置等と電気的な導通を保つ特許文献1のように利用されている。
【0003】
またケーブルを駆動装置によってたるませないように巻き取り装置に同期するトリガーを利用する特許文献2がある。
【0004】
【特許文献1】特開7−330225号公報
【特許文献2】特開2001−114188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブルを接続した計測器を移動させる場合、ケーブルの巻き取りおよび延長する必要があり、そのために駆動ドラム等の巻き取り装置を用いてケーブルがたるんだり,からまったりしないように工夫されてきた。巻き取りおよび延長をするために、固定部分と回転部分の電気的導通を図るためのスリップリングが仲介役として必要としてきた。しかし、スリップリングの導通ブラシは回転する金属と常に物理的にも電気的にも接しているので摩擦により、電気ノイズの原因となっていた。弱電のケーブルも接続しなければならない計測器には信頼性確保の観点からスリップリングは使用に問題があった。
【0006】
本発明は、片端に計測器、片端に機器または装置等にケーブルを接続し、巻き取り延長をする際、ノイズに影響されることなく弱電信号を送信するケーブルを接続することのできるケーブル送り引き戻し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、辺同士が折りたたみ可能として接続され、歯車かみ合い穴の設けられた複数のケーブル保持プレートを折りたたんで収納し、かつ各ケーブル保持プレートに固定することによって載置された連続したケーブルを前記ケーブル保持プレートの積層,収納に伴って収納するケーブルおよびケーブル保持プレートの収納手段と、
計測器,モータおよび回転位置検出器を載置し、接続された複数のケーブル保持プレートの一端側のケーブル保持プレートが接続され、前記モータによって駆動される台車と、
支持手段によって支持され、前記ケーブル保持プレート送り引き戻しプレートローラ、前記歯車かみ合い穴に係合する歯部を有し、前記ケーブル保持プレート送り引き戻しローラの他側に配置されて前記ケーブル保持プレート送り引き戻しローラと共同して前記ケーブル保持プレートの送り引き戻しを行うケーブル保持プレート送り引き戻し歯車、これら両部材の駆動源としてのモータ、および回転位置検出器によって構成されたケーブル保持プレート送り引き戻し装置と、を有し、
前記ケーブルは前記計測器に接続されることを特徴とするケーブル送り引き戻し装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、本発明によれば、ケーブル送り引き戻し装置は、巻き取りのための駆動機構となる電気ノイズを発生するスリップリングを用いないので、ノイズの影響をなくし、ケーブルの伸縮を行いながらケーブルに損傷等を与えずに最低限の部品で弱電信号を送信して、位置移動することのできる計測器を設けることを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上述したケーブル送り出し引き戻し装置であって、このケーブル送り出し引き戻し装置は、台座上に固着された支持柱に取り付けられ、前記ケーブル保持プレートの送り引き戻し操作を一定の高さ位置で行うようにしている。また、前記移動台車の上に載置したモータに接続された電力供給ケーブルを前記ケーブルと共に前記各ケーブル保持プレートに固定することによって一体的に載置している。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例であるケーブル送り引き戻し装置100の構成を示す外観図であり、図2は、図1の1部詳細を示す図であり、図3は本実施例で使用する収納手段の詳細を示す図であり、図4は本実施例で使用するケーブル保持プレートの詳細を示す図である。
【0012】
これらの図において、ケーブル送り引き戻し装置100は、ケーブル16およびケーブル保持プレート10の収納手段である収納箱9と、引動台車(台車)12と、ケーブル保持プレート送り引き戻し装置90と、台座17と、支持柱8、およびモータA,B制御装置1とから構成される。以下、各構成部品について説明する。
【0013】
本実施例において、ケーブル16は、片端が計測器11に、片端が機器または装置(図示せず)に接続された出力信号電路を形成するケーブルとモータA14に接続された電力供給電路を形成する電力供給ケーブルとによって構成されるが、出力信号電路を形成するケーブルを表わす場合と、両者を合わせて表わす場合とがある。
【0014】
ケーブルおよびケーブルの保持プレートの収納箱9は、ケーブル10およびケーブル保持プレート10の双方を収納するが、以下ケーブル保持プレート10を収納する場合について特に説明する。
【0015】
収納箱9は、後述するように、辺同士が折りたたみ可能として接続され、歯車かみ合い穴24の設けられた複数のケーブル保持プレート10を折りたたんで収納することができ、また各ケーブル保持プレート10に固定することによって載置された連続したケーブル10をケーブル保持プレート10の積層(ただし、ケーブル保持プレート間には間隔を置く)、収納に伴ってケーブル16を収納することができ、これらのケーブル保持プレート10およびケーブルは上方から積層していって収納することが出来る。従って、収納のために収納箱9は、一定の高さを有するように形成されている。
【0016】
移動台車12は、矢印方向に移動可能であり、計測器11,モータA14及び回転位置検出器A(モータA14の回転検出)を載置し、接続された複数のケーブル保持プレート10の一端側のケーブル保持プレート(図で最左端)が接続され、モータA14に駆動される。
【0017】
ケーブル保持プレート送り引き戻し装置90は、支持手段である支持柱8によって支持され、ケーブル保持プレート送り引き戻しプレートローラ4,歯車かみ合い穴24に係合する歯部54を有し、ケーブル保持プレート送り引き戻しローラ4の他側に配置されてケーブル保持プレート送り引き戻しローラ4と共同してケーブル保持プレート10の送り引き戻しを行うケーブル保持プレート送り引き戻し歯車23、これら両部材の駆動源としてのモータB1,モータB2(以下、モータB3,モータB7で表わす)、およびこれらモータの回転位置検出器B1,B2(以下、回転位置検出器13で表わす)によって構成される。前述のようにケーブル16は、ケーブル保持プレート10上に載置されており、ケーブル16はケーブル保持プレート10と共に送り引き戻されて収納箱9に収納される。従って、ケーブル保持プレート送り引き戻し装置90は、ケーブル16についての機能も同様に持つ。
【0018】
台座17上には、一方側に配置された収納箱9と共に他側に配置された支持柱8が固着される。支持柱8は、収納箱9の上方面に対応した一定の高さを有し、ケーブル保持プレート送り出し装置90を所定の高さに保持することによってケーブル保持プレート10を水平に収納箱9の方向に送り、または引き戻し、ケーブル保持プレートの収納箱9からの出し入れを容易なものとしている。
【0019】
ケーブル保持プレート送り引き戻し装置(ケーブル保持プレートの駆動装置)90の詳細を図2に示す。前述のように、ケーブル保持プレート送り引き戻しローラ4およびケーブル保持プレート送り引き戻し歯車23が、ケーブル保持プレート10を挟んで両側に設けてあり、これらには駆動源としてのモータB3,モータB7が設けてあり、これらのモータB3,モータB7には回転位置検出器B2,B6が取り付けてある。
【0020】
ケーブル保持プレート10の両端部にはそれぞれ歯車かみ合い穴24が形成してあり、ケーブル保持送り引き戻し歯車の歯部54が噛み合う(係合する)。
【0021】
図3に示すように、収納箱9にはケーブル保持プレート10とケーブル16とが折りたたんで収納される。
【0022】
図4は、ケーブル保持プレート10を拡大して示す図である。ケーブル保持プレート10の間には、つなぎプレート44が配設してあり、ケーブル保持プレート10とつなぎプレート44とは、蝶番41,蝶番43(裏面側)で接続(接合)され、折りたたみ可能とされている。蝶番以外の手段によって折りたためるようにしてもよい。つなぎプレート44は、上に折れ曲がるものと下に折れ曲がるものとが交互に配置される。移動台車12と固定設置されたモータA・B制御装置1を電気的に結ぶケーブル16をケーブル固定金具5が固定している。
【0023】
ケーブルは計測器11の出力信号電路とモータA14への電力供給電路、回転位置検出器A13からの出力信号電路を移動台車12に接続されたケーブル保持プレート10に固定されたケーブル10を伝わり、ケーブル収納箱9を経てモータA・B制御装置1に到達する。
【0024】
計測器11が搭載されている移動台車12はモータA14の動力でひとつの方向を往復移動するが、移動する際、ケーブル保持プレート10がたるんだり、引張られることがないようモータB13の動力を受けるケーブル送り引き戻しローラ4によって回転位置検出器A13の電気信号を受けて移動台車12の移動位置に合わせて回転速度等をモータA・B制御装置1が制御する。
【0025】
ケーブル送り引き戻しローラ4の回転駆動に同期して、歯車かみ合い穴24にかみ合うよう、ケーブル送り引き戻し歯車23が回転する。
【0026】
ケーブル送り引き戻し歯車23の回転に伴ってケーブル保持プレート10は収納箱9に収納から出され、入れられ、また計測器11に対しても延長,短縮がなされる。この場合にケーブル保持プレート10はケーブル保持プレート送り引き戻し装置90の高さ位置に送り引き出しがなされる。
【0027】
このように、本実施例によれば、ノイズは発生させる原因となるケーブルドラムを用いずに、ケーブル保持プレート10およびその駆動装置を用いることによって、計測器11と機器または装置間のケーブルをケーブルに損傷を与えることなく、かつノイズを発生させることなくケーブルを伸縮させることができる。
【0028】
電力供給ケーブルを一体的にまとめることによってケーブル配線を整理よく配線し、当該ケーブルについても伸縮させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の全体構成を表す外観図。
【図2】ケーブル保持プレートの駆動装置を表した一部詳細図。
【図3】ケーブル収納箱の側面図。
【図4】ケーブル保持プレートの詳細図。
【符号の説明】
【0030】
1…モータA・B制御装置、2…回転位置検出器B1、3…モータB1、4…ケーブル保持プレート送り引き戻しローラ、5…ケーブル固定金具、6…回転位置検出器B2、7…モータB2、8…支持柱、9…ケーブル収納箱、10…ケーブル保持プレート、11…計測器、12…移動台車、13…回転位置検出器A、14…モータA、15…車輪、16…ケーブル、17…台座、23…ケーブル保持プレート送り引き戻し歯車、24…歯車かみ合い穴、41…蝶番、43…蝶番(裏面)、44…つなぎプレート、90…ケーブル保持プレート送り引き戻し装置(ケーブル保持プレートの駆動装置)、100…ケーブル送り引き戻し装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
辺同士が折りたたみ可能として接続され、歯車かみ合い穴の設けられた複数のケーブル保持プレートを折りたたんで収納し、かつ各ケーブル保持プレートに固定することによって載置された連続したケーブルを前記ケーブル保持プレートと積層し,収納に伴って収納するケーブルおよびケーブル保持プレートの収納手段と、
計測器,モータおよび回転位置検出器Aを載置し、接続された複数のケーブル保持プレートの一端側のケーブル保持プレートが接続され、前記モータによって駆動される台車と、
支持手段によって支持され、ケーブル保持プレート送り引き戻しプレートローラ、前記歯車かみ合い穴に係合する歯部を有し、前記ケーブル保持プレート送り引き戻しローラの他側に配置されて前記ケーブル保持プレート送り引き戻しローラと共同して前記ケーブル保持プレートの送り引き戻しを行うケーブル保持プレート送り引き戻し歯車、これら両部材の駆動源としてのモータ、および回転位置検出器Bによって構成されたケーブル保持プレート送り引き戻し装置と、を有し、
前記ケーブルは前記計測器に接続されることを特徴とするケーブル送り引き戻し装置。
【請求項2】
請求項1において、前記移動台車の上に載置したモータに接続された電力供給ケーブルを前記ケーブルと共に前記各ケーブル保持プレートに固定することによって一体的に載置することを特徴とするケーブル送り出し装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ケーブル保持プレート送り引き戻し装置は、台座上に固着された支持柱に取り付けられ、前記ケーブル保持プレートの送り引き戻し操作を所定の高さ位置で行うようにしたことを特徴とするケーブル送り引き戻し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−151521(P2006−151521A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340044(P2004−340044)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】