説明

ケーブル防護材装着方法、ケーブル防護材及びケーブル防護材装着冶具

【課題】ケーブル収容管路の品質を管理するシステムにおいて、既設ケーブルに影響を及ぼすことなく管路内のケーブルにケーブル防護材を装着する技法を提供する。
【解決手段】本発明による、内部にケーブル(4)が収容されている管路(2)におけるケーブル防護材装着方法は、ケーブル防護材(20)を、防護すべきケーブル(4)にわたって管路(2)の開口部から挿入するステップと、ケーブル防護材(20)でケーブル(4)を包み込むステップとを含み、ケーブル防護材(20)でケーブル(4)を包み込むステップは、防護すべきケーブル(4)に沿って管路(2)内でケーブル防護材装着冶具(40a, 40b)を牽引して、ケーブル防護材装着冶具(40a, 40b)でケーブル防護材(20)の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部(10d)及び被嵌合部(10c)を嵌合させることにより、ケーブル防護材(20)でケーブル(4)を包み込むステップを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル防護材装着方法、ケーブル防護材及びケーブル防護材装着冶具に関し、特に、内部にケーブルが収容されている管路をライニング材で補修する際等、ケーブル収容管路の品質管理を行う際に、既設ケーブルに影響を及ぼすことなく該既設ケーブルを防護するケーブル防護材装着方法、ケーブル防護材及びケーブル防護材装着冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設され、内部にケーブルが収容されている通信管、電力管等の管路を、ケーブルが収容されたままの状態で、ライニング材を用いて補修する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術により、老朽化や、錆・腐食等による劣化が進んだ管路(不良管路)の内部に収容されているケーブルを保護することができる。また、近年ケーブルの細径化が進んでいるため、1つの管路内に複数のケーブルを布設すること(多条布設)が可能となっているが、上述の技術を用いて補修することによって、既にケーブルを収容している不良管路にも多条布設を行うことができる。
【0003】
ここで、特許文献1による従来技術を、図を用いて簡単に説明する。図12〜15は、従来技術によるケーブル布設済み保護管の補修方法を説明する図である。図内の符号は、特許文献1に則る。図12は、地中に埋設してある保護管の挿入口となる一方の開口部側からライニングシート(ライニング材)を挿入する工程を示す断面図、図13及び14は、それぞれ、保護管内でケーブルを包みながらライニングシートの両側辺を連結してライニングシート管を形成する工程を示す横断面図及び斜視図である。
【0004】
図12に示すように、地面1の地中に、光ファイバケーブル等のケーブル4が布設された保護管(管路)2が埋設されており、この保護管2は、所定間隔で垂直に立設するマンホール3a,3bで区切られている。このようなケーブル布設済み保護管2を補修するに際し、図12に示すように、保護管2の内径に応じた寸法の幅を有する帯状に形成されたライニングシート6を、保護管2内に通した牽引用ロープ14を用いて、挿入口12から引き出し口13まで通す。ライニングシート6は、回転自在にロールスタンド5に支持されるシートロール7に巻回されている。また、ライニングシート6は、例えば不浸透性内側フィルム層と硬化性樹脂を含浸した樹脂吸収性内層と不浸透性外側フィルム層の3層構造である。
【0005】
ライニングシート6は、互いに噛み合う又は嵌合する連結子10a,10bがその幅方向の両側辺に設けられており、さらに、連結子10a,10bを銜え移動することによりライニングシート6の両側辺を引き寄せて連結子10a,10bを連結するスライド連結操作体8を有する連結手段9を備えている。従って、図13及び14に示すように、保護管2の開口部(挿入口12又は引き出し口13)で連結子10a,10bを銜えさせたスライド連結操作体8を、牽引用紐11を用いて保護管2内を移動させることによって、保護管2の一方の開口部から他方の開口部に亘ってケーブル4を内包した状態のライニングシート管15を形成する。
【0006】
次に、ライニングシート管15内にチューブ19を引き込んでその内部に空気を送り込み、チューブ19を膨らませてライニングシート管15を保護管2の内面に密着させる。図15は、ライニングシート管15内に引き込まれたチューブが膨らんだ状態の保護管2の断面図である。かかる状態で、ライニングシート6に含浸或いは塗布されている硬化性樹脂の種類に応じて、チューブ19内に熱風、高温の温水又は蒸気を送り込むか、紫外線を照射するか、一定時間放置することによって、ライニングシート管15の未硬化の硬化性樹脂を硬化させて保護管2の内面に固定する。ライニングシート管15が保護管2の内面に固定されたら、ライニングシート管15内からチューブ19を取り除く。上述の方法により、内部にケーブルが布設された管路の補修をライニング材で行うことができる。
【0007】
なお、ケーブルが収容されている管路をライニング材で補修する際には、ライニング材の管路内への引き込み、ライニング材硬化時の熱風、温水等によるケーブルへの損傷を防ぐために、ケーブルを保護する必要がある。この、ケーブルを保護・防護するためのケーブル防護材を管路内に布設する方法として、従来技術に、ケーブルを包むように筒状にしたケーブル防護材を、牽引用冶具やグリップ等を用いて管路内に引き込むものが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−15704号公報
【特許文献2】特開2002−354622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術では次のような欠点がある。まず、ケーブル防護材は、ケーブルを包んだ筒状の状態で管路内に引き込まれるため、ケーブルの自重を受けることになる。従って、ケーブルを包み込んだ距離が長くなるにつれて、ケーブル防護材を管路内へ引き込む際の張力が増大し、ケーブルの損傷を与えるおそれがある。すなわち、引き込み張力に制限があるケーブルに対しては従来技術を適用することはできない。
【0010】
本発明の目的は、上述のような諸問題を解決し、ケーブル収容管路において、既設ケーブルに影響を及ぼすことなく管路内のケーブルにケーブル防護材を装着する技法(ケーブル防護材、ケーブル防護材装着冶具及びケーブル防護材装着方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明によるケーブル防護材装着方法は、内部にケーブルが収容されている管路にて、前記ケーブルを防護するケーブル防護材を前記ケーブルに装着するケーブル防護材装着方法であって、前記ケーブル防護材を、防護すべきケーブルにわたって前記管路の開口部から挿入するステップと、前記ケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むステップとを含み、当該ケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むステップは、前記防護すべきケーブルに沿って前記管路内でケーブル防護材装着冶具を牽引して、前記ケーブル防護材装着冶具で前記ケーブル防護材の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部及び被嵌合部を嵌合させることにより、前記ケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むステップを含むことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明によるケーブル防護材は、内部にケーブルが収容されている管路にて、前記ケーブルを防護するためのケーブル防護材であって、前記ケーブルを包み込むために、前記ケーブル防護材の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部及び被嵌合部を嵌合させる嵌合手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明によるケーブル防護材において、該ケーブル防護材は、可撓性を有するシート状に成形可能な材料から成ることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明によるケーブル防護材装着冶具は、内部にケーブルが収容されている管路にて、防護すべきケーブルに沿って前記管路内で牽引されたケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むのに用いるケーブル防護材装着冶具であって、前記ケーブルを内部に貫挿可能な内管と、前記内管の外壁に取り付けられた支持部材によって、前記内管との間に前記ケーブル防護材の厚み以上の空隙を設けて前記内管を囲むように前記内管に固定された外管とを備え、前記ケーブルを包み込むために、前記ケーブル防護材の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部及び被嵌合部を嵌合させる嵌合手段を有する前記ケーブル防護材を前記外管と前記内管との間に挿通して嵌合させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明によるケーブル防護材装着冶具において、前記内管及び前記外管が可撓性の材料から成り、前記ケーブルを内部に貫挿可能なように、前記内管及び前記外管の周面に、前記内管及び前記外管の両端に亘って割りが設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明によるケーブル防護材装着冶具において、前記ケーブルを内部に貫挿可能なように、前記内管及び前記外管の周面が、前記内管及び前記外管の両端面に亘って分割可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明によるケーブル防護材装着冶具において、前記分割された内管及び外管を管状に固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明によるケーブル防護材装着冶具において、前記内管が前記外管の牽引方向の中央に位置し、前記内管の牽引方向の両側が前記外管の両側から突出するようにして重心が該中央となる構造を有しており、且つ前記外管の周囲には、牽引方向の走行を補助する複数本のソリ部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明によるケーブル防護材装着冶具において、前記ケーブル防護材を挿通して前記被嵌合部及び前記嵌合部を前記支持部材付近に留めるケーブル防護材留め具を備えることを特徴とする。
【0020】
更に、本発明によるケーブル防護材牽引冶具は、内部にケーブルが収容されている管路にて、前記ケーブルを防護するためのケーブル防護材を牽引するためのケーブル防護材牽引冶具であって、半円形端部を両端に有する小判状本体と、前記ケーブル防護材を前記小判状本体に固定するための固定板と、前記小判状本体の長尺方向に走査可能にするためのローラー部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ケーブル収容管路において、既設ケーブルに影響を及ぼすことなく、管路内のケーブルにケーブル防護材を装着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ケーブル収容管路補修システムの概要を説明する簡略図である。
【図2】補修前の管路2を示す図である。
【図3】防護すべきケーブルのスパン全長に亘って、ケーブル防護材20でケーブルを覆う手順を説明する図である。
【図4】ライニング材6及び加圧チューブ31を、管路2内に引き込む手順を説明する図である。
【図5】ライニング材6を硬化させる手順を説明する図である。
【図6】加圧チューブを管路2から撤去する手順を説明する図である。
【図7】ケーブル防護材20を管路2から撤去する手順を説明する図である。
【図8】ケーブル防護材20の概略図である。
【図9】ケーブル防護材装着冶具の概略図である。
【図10】ケーブルとケーブル防護材とを備えつけたケーブル防護材装着冶具を示す図である。
【図11】管路2内で、ケーブル防護材装着冶具によってケーブル防護材20がケーブルに装着されていく様子を説明する図である。
【図12】従来技術によるケーブル布設済み保護管の補修方法を説明する図である。
【図13】従来技術によるケーブル布設済み保護管の補修方法を説明する図である。
【図14】従来技術によるケーブル布設済み保護管の補修方法を説明する図である。
【図15】従来技術によるケーブル布設済み保護管の補修方法を説明する図である。
【図16】(a)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具の概観図であり、(b)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具の上面図であり、(c)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具の下面図であり、(d)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具をケーブル防護材に装着した様子を示す図である。
【図17】(a)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具を用いずに、管路の曲線施工時にてケーブル防護材を牽引した場合の一例を示す図であり、(b)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具を用いて、管路の曲線施工時にてケーブル防護材を牽引した場合の一例を示す図である。
【図18】(a)は、別例のケーブル防護材装着冶具を示す概観図であり、(b)は、別例のケーブル防護材装着冶具のA−A’断面図である。
【図19】(a),(b),(c)は、別例のケーブル防護材装着冶具におけるケーブル防護材留め具の例を示す図である。
【図20】(a)は、ケーブル防護材装着冶具を用いた場合に、管路の管接続部にて想定しうる問題点を例示する図であり、(b)は、ケーブル防護材装着冶具を用いた場合に、管路の管接続部にて想定しうる問題点が解消されることを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、諸図面を参照しながら、本発明の実施例について詳細に説明する。まず、本発明の実施例の説明に先立ち、本発明による技法(ケーブル防護材、ケーブル防護材装着冶具及びケーブル防護材装着方法)が用いられるケーブル収容管路の品質管理システムの一例として、ケーブル収容管補修システムについて説明する。なお、説明を分かり易くするため、図面は必ずしも実際の寸法比を示していないことに留意されたい。
【0024】
図1は、ケーブル収容管路補修システムの概要を説明する簡略図である。図1(a)は、管路2が埋設されている地中の断面図、同図(b)は、管路2の断面図である。図1(a)に示すように、ケーブル収容管路補修システムでは、まず、地面1の地中に埋設されケーブル4を収容している管路2に、マンホール3aからライニング材6を引き込む。ライニング材6はシート状であり、管路2内には、ライニング材6によってケーブル4を包み込むライニング管を形成した上で引き込む。また、ライニング材6には、熱硬化性樹脂が塗布又は含浸されている。図1(b)に示すように、ライニング材6の幅方向の両側辺(長手方向の側辺)には、特許文献1による従来技術における連結子に相当する連結子10a,10bが設けられており、これらを嵌合することによってライニング管を形成する。ライニング管の引き込み後に、管路2内に圧力(水圧、空気圧等)をかけてライニング材6を管路2の内壁に密着させた状態で、ライニング材6を硬化させる。
【0025】
次に、図2〜7を用いて、ケーブル収容管路補修システムにおけるケーブル収容管補修方法の手順について簡単に説明する。これらの図には、管路の長手方向(側面)の断面図及び管路の径方向の断面図が示してある。なお、これ以降の説明では、図におけるマンホール3aから3bまでの管路2を補修するために、ライニング材やケーブル防護材を、マンホール3aの開口部からマンホール3bの開口部に向かって、管路2内のケーブルに布設するものとする。
【0026】
まず、図2は、補修前の管路2を示す図である。通常、ケーブルの多条布設が予定されている、既にケーブルを収容する管路の点検・診断を行い、錆・腐食等による不良管路であると判断された管路についてライニング材による補修を行う。なおこの場合、補修に先立ち管路内の錆やゴミ等を取り除き、管路2の内表面を平坦にするのが好適である(手順1)。検査技法については、本願発明の主題ではないため詳説しないが、管路内にカメラを走査させて検査することができる。尚、本願発明は、必ずしも管路内検査を要するものではない。次に、図3のように、防護すべきケーブルのスパン全長(例えば150m)に亘ってケーブル防護材20でケーブルを覆う(手順2)。ケーブル防護材20は可撓性を有するシート状に成形可能な材料から成る。このとき、ケーブルを包んだ状態でケーブル防護材20を引き込む従来技術と異なり、本発明によれば、シート状のケーブル防護材20を管路2内に単に引き込むだけである。なお、ケーブル防護材20の装着方法については後述する。
【0027】
ケーブル防護材20の装着後、図4のように、ライニング材6及び加圧チューブ31を管路2内に引き込む(手順3)。上述のように、ライニング材6は、管路2の開口部にて引込ガイド30を用いて連結子10a,10bを嵌合させ、ケーブル4を包み込む筒を形成する。そして、筒状に形成したライニング材6を牽引冶具45によって管路2内へ引き込む。この際、ケーブル防護材20によって包まれたケーブル4、加圧チューブ31、ライニング材6の位置関係は、図4の管路断面図のようになる。なお、牽引冶具45は、回転自在のローラーガイド34a,34bを介して牽引ロープ32で牽引器33に接続されている。ライニング材6は、ライニング材格納箱5aに格納されている。ライニング材6に含浸させた熱硬化性樹脂等が施工前に硬化しないように、ライニング材格納箱5aは、熱硬化性樹脂が硬化しない温度に保たれる。
【0028】
ライニング材6及び加圧チューブ31を防護すべきケーブルのスパン全長に亘って引き込んだ後、図5のように、ライニング材6を硬化させる(手順4)。まず、加圧チューブ31にホース37を装着し、ボイラー35から、加圧チューブ31内に加圧した温水を通水する。その際、調整弁36によって温水の排出量を調整して、ライニング材6が図5の管路断面図のように管路2の内壁に圧着するようにする。このようにして、ライニング材6に含浸されている熱硬化性樹脂を硬化させる。熱硬化性樹脂の種類に依存するが、温水の温度を高くするほど硬化するまでの時間は短くなる。しかしながら、温水の温度は、ケーブル4の耐熱性を考慮して決定するのが好適である。
【0029】
ライニング材6が硬化すると、図6のように、加圧チューブを管路2から撤去する(手順5)。そして、図7のように、ケーブル防護材20を管路2から撤去し(手順6)、管路の補修が完了する。図7のように、補修後の管路2内には、硬化したライニング材6によるライニング管が形成されている。補修完了後の管路2内には、不良管路でない通常の管路と同様に、管路内の余裕空間にインナーパイプ等を布設した上で2条目のケーブルを布設することが可能となる。また、硬化したライニング材6は自立管としての性能を有するため、既設の管路2の腐食が進んだとしても、管路としての機能を維持することができる。
【0030】
以上が、ケーブル収容管補修システムの概要である。次に、上述したケーブル収容管補修システムにおいて用いられる、本発明によるケーブル防護材、ケーブル防護材装着冶具及びケーブル防護材装着方法の実施例について詳細に説明する。
【0031】
図8は、ケーブル防護材20の概略図である。図8(a)はケーブルへの装着前のシート状のケーブル防護材20、同図(b)はケーブル(図示せず)を包む筒状のケーブル防護材20の一部を示す。ケーブル防護材20の幅方向の寸法は、ケーブル4の内径に応じ、ケーブル4を包むのに十分な大きさとする。
【0032】
図8(a)のように、ケーブル防護材20は、幅方向の両側辺に被嵌合部10c及び嵌合部10dが設けられている。被嵌合部10c及び嵌合部10dには、後述するケーブル防護材装着冶具40aの嵌合手段24を装着することができ、この嵌合手段24によって、図8(b)のように、被嵌合部10cと嵌合部10dとを嵌合させる(噛み合わせる)ことができる。すなわち、ケーブル防護材20の端部で被嵌合部10cと嵌合部10dとを嵌合させた嵌合手段24をケーブル防護材20の長手方向にスライド(移動)させることによって、ケーブル防護材20を筒状に形成することができる。なお、嵌合手段24、被嵌合部10c及び嵌合部10dは、例えばファスナーで実現することができる。すなわち、嵌合手段24をスライダー、被嵌合部10c及び嵌合部10dをエレメントとすることができる。しかしながらこれに限られるものではなく、嵌合手段24を移動させることにより被嵌合部10cと嵌合部10dとを嵌合可能なものであれば特に限定されない。また、ケーブル防護材20は、ライニング材を牽引する際や硬化させる際にケーブルへ損傷を与えないためのものである。従って、その材料としては、材料自体が高強度で、引張りに耐え、牽引ロープの接触による抵抗を抑制し、繰り返しの耐磨耗特性が優れているという特徴を有する汎用プラスチック、又は金属の繊維状材料を用いるのが好ましい。よって、ケーブル防護材20は、例えば、ポリエチレン(例えば、100〜1500dtexの高強度ポリエチレン繊維)、ポリエステル(例えば、100〜500μのポリエステルモノフィラメント)、ナイロン等のプラスチック材料又はステンレス系材料で形成する。
【0033】
次に、ケーブル防護材20をケーブルに装着するためのケーブル防護材装着冶具40aについて説明する。図9は、ケーブル防護材装着冶具40aの概略図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は断面図である。図に示すように、ケーブル防護材装着冶具40aは、内管21、外管22、支持部材23及び嵌合手段24を備える。さらに、ケーブル防護材装着冶具40aは、牽引ロープ25及び固定部材固定部26a,26bを備える。図のように、ケーブル防護材装着冶具40aは、内管21と、内管21を囲む外管22とによる二重構造である。なお、内管21と外管22との間の空隙は、前述したケーブル防護材20を挟み込めるように、ケーブル防護材20の厚み以上とする。例えば、内管21及び外管22の径は、それぞれ40mm及び60mmとする。なお、ケーブル防護材装着冶具40a自体は、ポリ塩化ビニル等の強度の高い合成樹脂材料又はステンレス、アルミ等の軽量の金属で形成し、その厚みを3mm程度とするのが好適である。
【0034】
また、内管21と外管22とは、内管21の外壁に取り付けられた支持部材23によって固定されている。さらに、外管22の端部には、嵌合手段24(スライダー)が取り付けられている。支持部材23は、外管22の内壁の両端面にわたって装着され、内管21と外管22とを固定する。嵌合手段24は、支持部材23の延長線上に、金属性のリング、天然又は合成繊維から成る紐等を介して取り付ける。また、内管21は、外管22よりも長くするのが好適であり、例えば、内管21の長さを140mm、外管22の長さを80mmとする。しかしながら、これに限られるものではない。詳細は後述するが、ケーブル防護材装着冶具40aを上述のように二重構造とし、嵌合手段24を支持部材23の延長線上に配置し、さらに内管21を外管22よりも長くすることにより、ケーブル防護材を容易に筒状にすることができる。
【0035】
なお、内管21及び外管22は、既設ケーブルを内部に貫挿可能にするために、内管21及び外管22の周面を内管21及び外管22の両端面に亘って分割できるようにする。図の例では、内管21及び外管22が、両端面に亘る切断線27によって半割可能となっている。この場合、内管21及び外管22が不必要に半割するのを防ぐために、外管22の周方向をバンド(固定部材、図示せず)で固定する。バンドとしては、例えば、ステンレススチール等の金属性の線材等、耐摩擦性・耐熱性を有する材料とするのが好適である。なお、ケーブル防護材装着冶具40aが管路2内を牽引される際にバンドがずれないようにするために、バンドは、固定部材固定部26aと26bとの間の隙間に位置付ける。固定部材固定部26a,26bの位置は図の例に限られるものではないが、嵌合手段24による被嵌合部10cと嵌合部10dとの嵌合が妨害されないように、嵌合手段24が取り付けられている位置とは異なる位置にするのが好適である。
【0036】
なお、ケーブル防護材装着冶具40aに既設ケーブル4を貫挿可能とするための構造は、上述の実施例のような、内管21及び外管22を半割する構造に限られるものではない。例えば、内管21及び外管22の周面(壁面)に、それぞれ両端に亘って1本の割りを設ける構造としてもよい。すなわち、ケーブル4を貫挿させる際には、割り部分を押し広げてケーブル4の入るスペースを確保し、内部にケーブル4を押し込むことができる構造とする。この場合、ケーブル4をその内部に通した後に管状に戻るように、ケーブル防護材装着冶具40aをプラスチック樹脂のような可撓性の材料で形成するのが好適である。
【0037】
次に、ケーブル防護材装着冶具40aによって、ケーブル防護材20をケーブルに装着する方法を説明する。図10は、ケーブルとケーブル防護材とを備えつけたケーブル防護材装着冶具40aを示す図である。図10(a)及び(b)は、それぞれ、斜視図及び断面図である。ケーブル防護材20をケーブルに装着する際には、図10(a)のように、ケーブル防護材装着冶具40aの内管21の内部にケーブル4を通し、内管21と外管22との間の隙間にケーブル防護材20を挿入する。その際、図10(b)のように、ケーブル防護材20は、その幅方向の両側面に設けた嵌合部10d及び被嵌合部10cによって支持部材23を挟み込んで筒を形成するように挿入する。また、嵌合手段24は、マンホール3aの開口部、すなわちケーブル防護材20の端部にて、嵌合部10d及び被嵌合部10cを噛み合わせるように(嵌合させるように)装着する。牽引ロープ25によって、ケーブル防護材装着冶具40aが図10(a)に示す矢印の方向に進行すると、内管21がガイドとなってケーブル防護材20を引き込み、内管21と外管22とによってケーブル防護材20が筒状となる。従って、嵌合手段24による嵌合部10dと被嵌合部10cとの嵌合が非常にスムーズとなる。ケーブル防護材装着冶具40aが進行した後には、ケーブル防護材によってケーブル4が包まれた状態となる。
【0038】
次に、図11を用いて、管路2内でケーブル防護材装着冶具40aによってケーブル防護材20がケーブルに装着されていく様子を説明する。図11(a)は、シート状のままケーブル防護材20を管路2内に引き込んだ後の状態を示す図である。従って、本発明によれば、ケーブルを包んだ状態で管路内に引き込まれる従来技術と異なり、引き込む際にケーブルの自重を受けることがない。なお、図では分かり易くするために、ケーブル4が管路2内に浮いている状態を示しているが、実際は、ケーブル4は管路2の底面に接していることに留意されたい。
【0039】
ケーブル防護材20を管路2内に引き込むと、開口部、すなわちケーブル防護材20の端部にてケーブル防護材装着冶具40aにケーブル4を貫挿させ、図10を用いて説明したようにケーブル防護材20を備えつける。そして、図11(b)のように、牽引ロープを用いて、ケーブル防護材装着冶具40aを矢印の方向へ牽引する。なお、図では、分かり易くするために牽引ロープ25を省略している。牽引ロープ25の牽引は、例えば、図4のライニング材及び加圧チューブの引込にて説明した方法と同様に、牽引器を用いて行う。ケーブル防護材装着冶具40aが管路2内を進んだ後には、図11(c)のように、ケーブル4がケーブル防護材20によって包まれた状態となり、ケーブル防護材装着冶具40aをマンホール3bの開口部へと移動させることによって、ケーブル防護材20を防護すべきケーブルに亘って装着することができる。
【0040】
なお、本発明によれば、ケーブル4の自重を受けるのがケーブル防護材装着冶具40aの部分のみであることに留意されたい。従って、従来技術と異なり、ケーブル4を包み込む距離が長くなっても、ケーブル防護材20を管路2内へ引き込む際の張力が増大しない。すなわち、ケーブル4に損傷を与えることがない。よって、本発明によるケーブル防護材装着方法によれば、引き込み張力に制限があり、これまでケーブル防護材20を装着することが不可能であったケーブル4に対しても、引っ張り張力による損傷をケーブル4に与えることなく、ケーブル防護材20を装着することが可能となる。
【0041】
さらに、上述したように、筒状のケーブル防護材20を管路2に引き込む従来技術の場合は、引き込んだ分だけケーブル4の自重を受けて管路内へ引き込む際の張力が増大する。ケーブルには引き込み張力に制限があるため、引き込む距離が長くなるにつれて引き込む速度は遅くせざるを得ない。しかしながら、本発明によれば、ケーブル4の自重を受けるのはケーブル防護材装着冶具40aの部分のみであるため、ケーブル防護材20によってケーブル4を包み込む距離が長くなっても、ケーブル防護材装着冶具40aを移動させる速度を落とす必要がない。その結果、従来技術と比べ、ケーブル防護材20の装着にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0042】
次に、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41について、図16を参照して説明する。図16(a)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41の概観図である。図16(b)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41の上面図である。図16(c)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41の下面図である。図16(d)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41をケーブル防護材20に装着した様子を示す図である。
【0043】
ケーブル防護材牽引冶具41は、主に、半円形端部41b,41bを両端に有する小判形状の本体(小判状本体)41bと、ケーブル防護材20を小判状本体41bに固定するための固定板41aと、小判状本体41bの長尺方向に走査可能にするためのローラー部41cとを備える。ケーブル防護材20を固定したケーブル防護材牽引冶具41を牽引するために、牽引用ロープ42を用いることができる。牽引用ロープ42は、小判状本体41bにおける半円形端部41b,41bの少なくとも一方に設けられた牽引用金具41dに取り付けることができる。また、固定板41aと小判状本体41bとの間にケーブル防護材20を設置して、例えば、3つの固定ネジm1,m2,m3を用いてケーブル防護材20をケーブル防護材牽引冶具41に装着することができる。
【0044】
図17(a)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41を用いずに、管路の曲線施工時にてケーブル防護材20を牽引した場合の一例を示す図であり、図17(b)は、本発明に係る一実施例のケーブル防護材牽引冶具41を用いて、管路の曲線施工時にてケーブル防護材20を牽引した場合の一例を示す図である。管路2における曲線2bの区間を経てケーブル防護材20を牽引した場合に、本来、ケーブル4の下部に回りこむことなくケーブル4の上部にケーブル防護材20が敷設されるのが望ましい。ケーブル4の上部にケーブル防護材20を敷設することで、ケーブル4の自重を受けることなくケーブル4をケーブル防護材20で包み込む施工過程が容易になるためである。
【0045】
しかしながら、図17(a)に示すように、ケーブル防護材20のロープ取り付け部20dで牽引用ロープ42を直接取り付けて、管路2における曲線区間2bを経てケーブル防護材20を牽引した場合に、ロープ取り付け部20d付近でケーブル防護材20の“ねじれ”が生じやすく、ケーブル4の下部にケーブル防護材20が回り込むことがある。
【0046】
一方、図17(b)に示すように、ケーブル防護材牽引冶具41を用いて、管路の曲線施工時にてケーブル防護材20を牽引した場合、ケーブル防護材牽引冶具41のローラー部41cの存在でケーブル4の上部を走りやすくなり、且つケーブル防護材牽引冶具41の半円形端部41b,41bの存在で管路2内での“引っかかり”を抑制できるようになり、ケーブル防護材20における“ねじれ”がほとんど生じなくなることが分かった。また、ケーブル防護材牽引冶具41による牽引により、ケーブル4の径方向へのずれ(回転)を抑制することで、ケーブル防護材20がケーブル4に巻きつくことも防止できることが分かった。
【0047】
従って、ケーブル防護材牽引冶具41を用いてケーブル防護材20を牽引すれば、曲線施工やケーブル4の捻回の有無に関わらず、ケーブル4の上にケーブル防護材20を配置することが容易になる。尚、ケーブル防護材牽引冶具41の端部を、半円形端部41b,41bとする代わりに、半円形の金具や付属部品を設けるように構成することもできる。また、ローラー部41cのローラー個数は、管路2やケーブル4の径に応じて適宜選定すればよい。
【0048】
次に、前述したケーブル防護材装着冶具40aの別例のケーブル防護材装着冶具40bについて説明する。尚、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。図18(a)は、別例のケーブル防護材装着冶具40bを示す概観図であり、図18(b)は、別例のケーブル防護材装着冶具40bのA−A’断面図である。前述した例のケーブル防護材装着冶具40a(図9参照)は、内管21と、内管21を囲む外管22とによる二重構造であり、且つ内管21の一部のみが牽引方法に外管22から突出するように組み合わされた構造を有していた。一方、図18に示すケーブル防護材装着冶具40bは、内管21と、内管21を囲む外管22とによる二重構造であり、且つ外管22が内管21の牽引方向の中央に位置し、内管21の牽引方向の両側が外管22の両側から突出するようにしてケーブル防護材装着冶具40bの重心が該中央となる構造を有しており、且つ外管22の周囲には、牽引方向の走行を補助する4本のソリ部28a,28b,28c,28dが固定ネジM1,M2,M3で固定されている。尚、4本のソリ部28a,28b,28c,28dは、外管22の周囲に接着してもよい。
【0049】
図18に示す一例のケーブル防護材装着冶具40bでは、内管21の牽引方向長さは170mmとし、外管22の牽引方向長さは120mmとした。各ソリ部28a,28b,28c,28dは、例えば牽引方向長さを230mmとして、外管22の約2倍の長さを有し、各ソリ部28a,28b,28c,28dをソリ角2°で構成した。尚、各ソリ部28a,28b,28c,28dは、牽引方向の走行を補助する機能を有するものであればよく、各ソリ部の両端部を、更なる傾斜角を有するソリ角の端部加工を施すのが好適である(図18(a)参照)。各ソリ部28a,28b,28c,28dの端部は、ケーブル4及びケーブル防護材20を挿通するのに十分な空間を保持する。
【0050】
図18(b)に示すように、各ソリ部28a,28b,28c,28dは、内管21及び外管22の断面中心に対して、均等に対象配置されている。尚、本例では、4本のソリ部を設ける例を説明したが、外管22の側面に沿う形状を有するソリ部とする場合には、2本または3本とすることができるし、或いは又、更に多数(5本以上)のソリ部で構成することもできる。
【0051】
更に、ケーブル防護材装着冶具40bは、図18(b)に示すように、支持部材23の両側付近に、ケーブル防護材20を挿通して被嵌合部10c及び嵌合部10dを留めるためのケーブル防護材留め具29a,29bが形成されている。従って、内管21、外管22、及び支持部材23を組み合わせた後、図18(b)の図面上手前からケーブル防護材20を挿通して装着することが可能であるが、ケーブル防護材20を予め内管21及び外管22間に挟み込み、その後、内管21、外管22、及び支持部材23を組み合わせてもよい。ケーブル防護材装着冶具40bの各構成要素は、ケーブル防護材装着冶具40aと同様に、アルミニウムやプラスチックで形成させることができる。例えばケーブル防護材装着冶具40bの各構成要素をアルミニウムで形成した場合には、ケーブル防護材留め具29a,29bを内管21又は外管22から削り出して形成することができる。一方、例えばケーブル防護材装着冶具40bの各構成要素をプラスチック等の可撓性の材料で形成した場合には、金属金具で形成したケーブル防護材留め具29a,29bを接着して構成することもできる。即ち、ケーブル防護材留め具29a,29bは、ケーブル防護材20の被嵌合部10c及び嵌合部10dを固定して留める機能を有すればよく、任意の材質及び形状とすることができる。
【0052】
例えば、図19(a)に示すように、ケーブル防護材留め具29a,29bを外管22から削り出し又は接着して形成することや、図19(b)に示すように、ケーブル防護材留め具29a,29bを内管21から削り出し又は接着して形成することができる。更に、ケーブル防護材留め具29a,29bを、図19(a)及び図19(b)に示すような“引っ掛け形状”とする代わりに、図19(c)に示すような“突起部形状”にすることもできる。また、ケーブル防護材留め具29a,29bは、内管21又は外管22の牽引方向長さに亘って全長に形成することができるし、内管21又は外管22の牽引方向長さに亘って局所的に複数形成してもよい。
【0053】
図20(a)は、ケーブル防護材装着冶具40aを用いた場合に、管路2の管接続部2aにて想定しうる問題点を例示する図である。図20(b)は、ケーブル防護材装着冶具40bを用いた場合に、管路2の管接続部2aにて想定しうる問題点が解消されることを例示する図である。管接続部2a(通常、管路2の管接続部2aは、伸縮作用がある)などの管路2の内空間が局所的に増大し、且つケーブル防護材装着冶具40aの牽引方向長さよりも長い局所的内空間が存在するような場合に、このような管路2にて、ケーブル防護材装着冶具40aを用いてケーブル防護材20の施工を実施すると、ケーブル防護材装着冶具40aが管接続部2aのような局所的内空間に落ち込み、施工不能となる恐れがある。
【0054】
通常、このような管接続部2aなどの局所的内空間の長さは、施工前に知ることができる。従って、管路2における管接続部2aなどの局所的内空間の長さよりも長い牽引方向長さのソリ部28a,28b,28c,28dを有するケーブル防護材装着冶具40bを用いることにより、管接続部2aなどの局所的内空間を通過させることができ、施工不能となる状況を回避することができる。また、ケーブル防護材装着冶具40bは、内管21が外管22の牽引方向の中央に位置しているため、ケーブル防護材装着冶具40bの牽引時における本体の傾きを抑制させる効果があり、管接続部2aなどの局所的内空間をスムーズに通過させることができるようになる。
【0055】
また、図17に示したような管路2における曲線2bの区間を経てケーブル防護材20を牽引する場合にも、ケーブル防護材装着冶具40bは有効に機能する。即ち、ケーブル防護材20がケーブル防護材装着冶具40a内で固定されていないと、曲線2bの区間を経てケーブル防護材20を牽引した際に、内管21及び外管22間の隙間でケーブル防護材20がずれて詰まり(いわゆる“たごみ”が生じて詰まる)、これが原因してケーブル4を収容してケーブル防護材20の被嵌合部10c及び嵌合部10dを嵌合する際に、嵌合の際の抵抗力が増大して品質不良を招くか、又は嵌合できずに施工不良となりうる。この現象は、ケーブル防護材20がケーブル4の上部から大きくずれた場合(図17(a)参照)、特に発生しやすくなることが分かった。一方、ケーブル防護材装着冶具40bは、ケーブル防護材20を固定するべくケーブル防護材留め具29a,29bを有しているため、仮にーブル防護材20がケーブル4の上部から大きくずれたとしても、ケーブル防護材20の被嵌合部10c及び嵌合部10dを嵌合する際に、嵌合の際の抵抗力が増大することもなく、施工不良となることもなくなる。
【0056】
尚、管接続部2aなどの局所的内空間を対象とする施工でない場合は、ケーブル防護材留め具29a,29bは、ケーブル防護材装着冶具40aに設けることも有効である。
【0057】
以上のように、管接続部2aなどの局所的内空間を有する管路2や、曲線施工時においても、ケーブル防護材装着冶具40b及びケーブル防護材牽引冶具41を用いることにより、スムーズ且つ迅速に、ケーブル布設済み保護管の補修を高品質で行うことができるようになる。
【0058】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。なお、上述の実施例では、管路内をライニング材で補修する際にケーブルにケーブル防護材を装着する場合を示したが、本発明はこれに限られるものではないことに留意されたい。例えば、内部にケーブルが収容されている管路の内壁への腐食・錆止め材の塗布、管路内の塗装替え又は管路内の洗浄等の、管路の品質を管理・保持する処理を行う場合や、その他管路内のケーブルを防護する必要がある場合全てに、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 地面
2 管路(保護管)
2a 管路の管接続部
2b 管路における曲線区間
3a,3b マンホール
4 ケーブル
5 ロールスタンド
6 ライニング材(ライニングシート)
7 シートロール
8 スライド連結操作体
9 連結手段
10a,10b 連結子
10c 被嵌合部
10d 嵌合部
11 牽引用紐
12 挿入口
13 引き出し口
14 牽引用ロープ
15 ライニングシート管
19 チューブ
20 ケーブル防護材
21 ケーブル防護材牽引冶具の内管
22 ケーブル防護材牽引冶具の外管
23 支持部材
24 嵌合手段
25 牽引ロープ
26a,26b 固定部材固定部
27 切断線
28a,28b,28c,28d ソリ部
29a,29b ケーブル防護材留め具
30 引込ガイド
31 加圧チューブ
32 牽引ロープ
33 牽引器
34a,34b ローラーガイド
35 ボイラー
40a,40b ケーブル防護材装着冶具
41 ケーブル防護材牽引冶具
41a 固定板
41b ケーブル防護材牽引冶具の小判状本体
41b,41bケーブル防護材牽引冶具の半円形端部
41c ケーブル防護材牽引冶具のローラー部
41d 牽引用金具
42 牽引用ロープ
45 牽引冶具
m1,m2,m3,M1,M2,M3 固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にケーブルが収容されている管路にて、前記ケーブルを防護するケーブル防護材を前記ケーブルに装着するケーブル防護材装着方法であって、
前記ケーブル防護材を、防護すべきケーブルにわたって前記管路の開口部から挿入するステップと、
前記ケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むステップとを含み、
当該ケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むステップは、
前記防護すべきケーブルに沿って前記管路内でケーブル防護材装着冶具を牽引して、前記ケーブル防護材装着冶具で前記ケーブル防護材の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部及び被嵌合部を嵌合させることにより、前記ケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むステップを含む、
ことを特徴とするケーブル防護材装着方法。
【請求項2】
内部にケーブルが収容されている管路にて、前記ケーブルを防護するためのケーブル防護材であって、
前記ケーブルを包み込むために、前記ケーブル防護材の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部及び被嵌合部を嵌合させる嵌合手段を有することを特徴とするケーブル防護材。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブル防護材において、
該ケーブル防護材は、可撓性を有するシート状に成形可能な材料から成る、
ことを特徴とするケーブル防護材。
【請求項4】
内部にケーブルが収容されている管路にて、防護すべきケーブルに沿って前記管路内で牽引されたケーブル防護材で前記ケーブルを包み込むのに用いるケーブル防護材装着冶具であって、
前記ケーブルを内部に貫挿可能な内管と、
前記内管の外壁に取り付けられた支持部材によって、前記内管との間に前記ケーブル防護材の厚み以上の空隙を設けて前記内管を囲むように前記内管に固定された外管とを備え、
前記ケーブルを包み込むために、前記ケーブル防護材の幅方向の両側辺にそれぞれ設けられた嵌合部及び被嵌合部を嵌合させる嵌合手段を有する前記ケーブル防護材を前記外管と前記内管との間に挿通して嵌合させることを特徴とするケーブル防護材装着冶具。
【請求項5】
請求項4に記載のケーブル防護材装着冶具において、
前記内管及び前記外管が可撓性の材料から成り、
前記ケーブルを内部に貫挿可能なように、前記内管及び前記外管の周面に、前記内管及び前記外管の両端に亘って割りが設けられていることを特徴とするケーブル防護材装着冶具。
【請求項6】
請求項4に記載のケーブル防護材装着冶具において、
前記ケーブルを内部に貫挿可能なように、前記内管及び前記外管の周面が、前記内管及び前記外管の両端面に亘って分割可能であることを特徴とするケーブル防護材装着冶具。
【請求項7】
請求項6に記載のケーブル防護材装着冶具において、
前記分割された内管及び外管を管状に固定する固定部材をさらに備えることを特徴とするケーブル防護材装着冶具。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載のケーブル防護材装着冶具において、
前記内管が前記外管の牽引方向の中央に位置し、前記内管の牽引方向の両側が前記外管の両側から突出するようにして重心が該中央となる構造を有しており、且つ前記外管の周囲には、牽引方向の走行を補助する複数本のソリ部が設けられていることを特徴とするケーブル防護材装着冶具。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか一項に記載のケーブル防護材装着冶具において、
前記ケーブル防護材を挿通して前記被嵌合部及び前記嵌合部を前記支持部材付近に留めるケーブル防護材留め具を備えることを特徴とするケーブル防護材装着冶具。
【請求項10】
内部にケーブルが収容されている管路にて、前記ケーブルを防護するためのケーブル防護材を牽引するためのケーブル防護材牽引冶具であって、
半円形端部を両端に有する小判状本体と、
前記ケーブル防護材を前記小判状本体に固定するための固定板と、
前記小判状本体の長尺方向に走査可能にするためのローラー部とを備えることを特徴とするケーブル防護材牽引冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−98940(P2010−98940A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213611(P2009−213611)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(508165490)旭テック環境ソリューション株式会社 (51)