説明

ケーブル防護柵

【課題】道路に沿って延びる狭い場所に設置可能であり、施工期間の短縮が可能なケーブル防護柵を提供する。
【解決手段】ケーブル防護柵1は、複数本のケーブル2のそれぞれの端部を道路に沿って互いに離間した位置で保持するケーブル保持部5、および地面に打ち込まれて固定されるとともにケーブル保持部5に連結される固定部6を有する端末装置4を備えている。
ケーブル保持部5は、道路に沿って延びる連続体7と、複数本のケーブル2のそれぞれの端部を連続体7における当該連続体7の長手方向に沿って互いに離間した位置に連結する複数のケーブル連結部材8とを有している。固定部6は、地面に打ち込んで固定される少なくとも1本の鋼管杭9と、連続体7と鋼管杭9とを連結する杭連結部10とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿って設置されるケーブル防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高速道路の中央分離帯などには、車両の衝突時の衝撃を吸収して車両の損傷を小さくするためのケーブル防護柵が道路に沿って設置されている。通常、中央分離帯などに設置されるケーブル防護柵は、ガードレール用の鉄板または中空の梁材などを中央分離帯に沿って等間隔に設置された支柱の間に固定されることによって構成されている。
【0003】
このようなケーブル防護柵は、取付け性や視認性がわるいので、近年では、道路に沿って設置された複数の支柱の間に複数本のケーブルを互いに異なる高さで延びるように張設することにより耐衝撃性を維持しながら取付け性や視認性を改善したケーブル防護柵が用いられている。車両の衝突に耐えられるように、複数本のケーブルは、比較的大きな張力(20kN程度)がかけられた状態で、端末支柱に両端固定されている。端末支柱は、複数本のワイヤーの張力に耐えられるように、地面に設けられたコンクリートの土台に固定されている。
【0004】
また、特許文献1記載のケーブル防護柵では、複数のケーブルの端末が地面まで下ろされて、地面に設けられたコンクリート製アンカーブロックに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−158335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来における端末支柱をコンクリートの土台に固定した構造のケーブル防護柵では、端末支柱を固定するコンクリートの土台を設けるためにある程度広い奥行きまたは幅を必要とする。また、特許文献1記載のケーブル防護柵のように、ケーブル端末を地面に設けられたコンクリート製アンカーブロックに固定する構造においても、コンクリート製アンカーブロックを設置するための広い奥行きを必要とする。そのため、従来では、ケーブル防護柵を狭い中央分離帯などに設置することが困難である。
【0007】
とくに、暫定2車線や完成2車線などの2車線しかない有料道路では、中央分離帯のための奥行きが非常に狭くなるので、上記のようなコンクリートの土台等を設けることは困難である。
【0008】
また、ケーブルの端末を固定するためのコンクリートの土台やコンクリート製アンカーブロックを設ける作業はコンクリートの養生のための時間を必要とするので、ケーブル防護柵の施工期間の短縮が難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、道路に沿って延びる狭い場所に設置可能であり、施工期間の短縮が可能なケーブル防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのものとして、本発明のケーブル防護柵は、道路に沿って配置されるケーブル防護柵であって、前記道路に沿う方向に間隔をあけて立設される複数の支柱と、互いに異なる高さに並んで前記複数の支柱の間に配索された複数本のケーブルと、前記複数本のケーブルのそれぞれの端部を道路に沿って互いに離間した位置で保持するケーブル保持部、および地面に打ち込まれて固定されるとともに前記ケーブル保持部に連結される固定部を有する端末装置とを備えており、前記ケーブル保持部は、前記道路に沿って延びる連続体と、前記複数本のケーブルのそれぞれの端部を前記連続体における当該連続体の長手方向に沿って互いに離間した位置に連結する複数のケーブル連結部材とを有しており、前記固定部は、地面に打ち込んで固定されることが可能な形状を有する少なくとも1つの打込み部材と、前記連続体と前記打込み部材とを連結する打込み部材連結部とを有していることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ケーブル保持部は、道路に沿って延びる連続体と、複数本のケーブルのそれぞれの端部を連続体の長手方向に沿って互いに離間した位置に連結する複数のケーブル連結部材とを有しているので、道路に沿って間隔をあけて立設された複数の支柱の間に配索された複数のケーブルのそれぞれの端部は、ケーブル保持部によって道路に沿って離間した位置で一括して保持される。そして、当該ケーブル保持部は、固定部によって道路に沿って延びる地面に固定されているので、奥行きまたは幅を取らずに地面に設置できる。
【0012】
しかも、ケーブル保持部は、固定部によって道路に沿って地面に固定されているので、ケーブルの張力に耐えることができる。
【0013】
また、固定部における打込み部材が地面に打ち込まれ、当該打込み部材にケーブル保持部の連続体が打込み部材連結部を介して連結されるので、コンクリートの土台を固めた端末支柱などと比較して、道路中央の中央分離帯などの狭い設置場所に容易に設置できる。しかも、ケーブル防護柵がコンクリートを要しない構造であるので、コンクリートのための養生期間も必要なくなり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【0014】
前記打込み部材は、前記道路に沿う方向に間隔をあけて地面にそれぞれ打ち込まれ、前記打込み部材連結部は、前記連続体とそれぞれの前記打込み部材とを連結するのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、車両がケーブルに衝突したときに複数のケーブルに大きな衝撃荷重が作用し、このケーブルに作用する衝撃荷重が連続体に伝達されるが、打込み部材連結部は、連続体と複数の前記打込み部材のそれぞれとを連結しているので、複数の打込み部材に衝撃荷重を分散して伝達することができる。その結果、簡易な構造で耐衝撃性が向上する。
【0016】
前記打込み部材連結部は、前記道路に沿って延び、前記連続体と当接する当接板と、前記連続体と前記当接板と複数の前記打込み部材とを連結する当接板連結部材とを有しているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、連続体が道路に沿って延びる当接板に当接するとともに、連続体と当接板と複数の前記打込み部材とが当接板連結部材によって互いに連結されているので、連続体に伝達された衝撃荷重を当該連続体に当接する当接板によって分散し、さらに当接板連結部材によって当接板に連結された複数の打込み部材に衝撃荷重を分散して確実に伝達することができる。その結果、ケーブル防護柵の耐衝撃性を確実に向上させることができる。
【0018】
前記連続体は、前記道路の表面に沿って延びるとともに前記打込み部材連結部に連結される台座部分と、当該台座部分から立設された立直部分とを有しており、前記複数本のケーブルのそれぞれの端部は、前記ケーブル連結部材によって、前記立直部分に間隔をあけて連結されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、複数本のケーブルのそれぞれの端部は、ケーブル連結部材によって、連続体における台座部分から立設された立直部分に間隔をあけて連結されているので、地面から上方に離間した位置でケーブル連結部材を用いたケーブル端部の取付作業を行うことが可能になり、取付け作業性が向上する。
【0020】
しかも、連続体における立直部分が台座部分から立ち上がっているので、立直部分が台座部分および当該台座部分に連結される打込み部材連結部を補強するリブとして機能するので、ケーブル防護柵は大きな衝撃荷重に耐えることができる。
【0021】
前記連続体は、前記台座部分および前記立直部分をそれぞれ有する一対の棒状部材を備えており、一対の前記立直部分は、互いに対向させた状態で間隔をあけて配置され、前記ケーブルの端部には、少なくとも一部が一対の前記立直部分の間に挿入可能な形状を有する索端装置が連結され、前記索端装置は、一対の前記立直部分の間に挿入されるとともに、前記ケーブル連結部材によって、当該立直部分に連結されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、それぞれのケーブルの索端装置が一対の前記立直部分の間に挿入されてケーブル連結部によって連結されているので、ケーブルの張力を一対の立直部分に均等に分散して強い張力にも耐えることができる。
【0023】
前記連続体の長手方向において、前記連続体における前記ケーブル連結部材の取付位置は、前記連続体と前記打込み部材との連結位置に一致しているのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、連続体におけるケーブル連結部材の取付位置には、それぞれのケーブルの張力が作用するが、連続体の長手方向において、ケーブル連結部材の取付位置は連続体と打込み部材との連結位置に一致しているので、ケーブルの張力によって発生する打込み部材を地面から抜き出す方向に作用するモーメントを小さくすることができ、大きな衝撃荷重を打込み部材で受け止めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明のケーブル防護柵によれば、複数本のケーブルの端部が道路に沿って延びる連続体に連結され、当該連続体が地面に打ち込まれた打ち込み部材に連結された簡単な構造であるので、従来のように端末支柱をコンクリートの土台に固定する構造等と比較して、奥行きが狭い場所に設置することが可能になり、道路に沿って延びる狭い場所に設置可能である。しかも、コンクリートの土台が不要であるので、施工期間の短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のケーブル防護柵の一実施形態に係わる正面図である。
【図2】図1の端末装置の拡大正面図である。
【図3】図1の端末装置の拡大平面図である。
【図4】図3の端末装置のIV−IV線断面図である。
【図5】図1の鋼管杭を地面に打ち込んだ状態の正面図である。
【図6】図1の鋼管杭を地面に打ち込んだ状態の平面図である。
【図7】図2のベースプレートの(a)平面図および(b)正面図である。
【図8】図2の連続体を構成するアングルの(a)平面図および(b)正面図である。
【図9】図1の中間支柱をケーブルが延びる方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
つぎに、図面を参照しながら、本発明のケーブル防護柵についてさらに詳細に説明する。
【0028】
図1〜4に示されるケーブル防護柵1は、道路Rの中央分離帯Cなどの幅の狭い場所に沿って配置されるケーブル防護柵1である。
【0029】
ケーブル防護柵1は、複数本のケーブル2と、複数の中間支柱3および端末支柱33と、端末装置4とを備えている。
【0030】
図1〜4に示される複数の中間支柱3および端末支柱33は、道路Rの中央分離帯Cに沿う方向に間隔をあけてほぼ等間隔に立設される。中間支柱3および端末支柱33は、それぞれの下端部が地面に直接埋め込まれ、または、地面に打ち込まれたアンカーボルトに固定されている。本実施形態では、複数本のケーブル2にかかる張力は、中間支柱3および端末支柱33の設置範囲よりも外側に位置する端末装置4によって受けているので、張力を受けない端末支柱33は、コンクリート製の土台なしで自立できる程度の強度で地面に固定されていればよい。
【0031】
複数本のケーブル2は、互いに異なる高さに並んで複数の中間支柱3および端末支柱33の間に配索されている。本実施形態では、4本のケーブル2が配索され、それぞれの端部に取り付けられた索端装置17が端末装置4に一括して保持されている。
【0032】
端末装置4は、図2〜4に示されるように、ケーブル2を保持するケーブル保持部5と、固定部6とを備えている。ケーブル保持部5は、複数本のケーブル2のそれぞれの端部の索端装置17を道路Rの中央分離帯Cに沿って互いに離間した位置で保持する。固定部6は、地面Gに打ち込まれて固定されるとともにケーブル保持部5に連結される。
【0033】
ケーブル保持部5は、道路Rの中央分離帯Cに沿って延びる連続体7と、複数のケーブル連結部材8とを有している。ケーブル連結部材8は、複数本のケーブル2のそれぞれの端部の索端装置17を連続体7における当該連続体7の長手方向に沿って互いに離間した位置に連結する。
【0034】
本実施形態の連続体7は、図2〜4および図8に示されるように、L字状断面を有する一対の棒状のアングル7a、7bによって構成されている。これらのアングル7a、7bは、台座部分15および立直部分16をそれぞれ有する。
【0035】
図8(a)、(b)に示されるように、台座部分15は、道路Rの中央分離帯Cの表面に沿って延びる部分であり、8個の貫通孔15aが形成されている。また、立直部分16は、台座部分15の端縁から立設され、4個の貫通孔15aが等間隔に形成されている。
【0036】
なお、連続体7は、道路Rの中央分離帯Cに沿って延びる連続体であればよく、一対のアングル7a、7bでなくてもよく、1本のアングルなどの棒状部材だけでもよい。
【0037】
複数本のケーブル2のそれぞれの端部に設けられた索端装置17は、ケーブル連結部材8によって、立直部分16に間隔をあけて連結されている。
【0038】
本実施形態では、一対の立直部分16は、互いに対向させた状態で間隔をあけて配置され、ケーブル2の端部には、少なくとも一部が一対の立直部分16の間に挿入可能な形状を有する索端装置17が連結されている。
【0039】
本実施形態の索端装置17は、図4に示されるように、索端金具18と、オーフック19と、ターンバックル20とを備えている。索端金具18は、ケーブル2の端部を外周から締め付けて当該端部に連結されている。ターンバックル20は、索端金具18とオーフック19とを結合し、かつ、当該索端金具18とオーフック19との間隔を調整することによりケーブル2の張力を調整する。オーフック19は、貫通孔を有するリング状の頭部を備えている。リング状の頭部は、一対の立直部分16の間に挿入することが可能な幅を有している。
【0040】
なお、索端装置17は、上記のような構成以外でも、一対の立直部分16の間に挿入可能であり、かつ、ケーブル連結部材8によって立直部分16に連結可能な構成であればよい。
【0041】
索端装置17のオーフック19は、一対の立直部分16の間に挿入されるとともに、ケーブル連結部材8によって、当該立直部分16に連結されている。
【0042】
本実施形態のケーブル連結部材8は、図3に示されるように、ボルト8aと、ナット8bとから構成されている。ボルト8aは、一対の立直部分16の貫通孔16aおよび当該立直部分16の間に挿入されたオーフック19の貫通孔にそれぞれ挿通され、ボルト8aの先端部にナット8bが締め付けられる。なお、本発明のケーブル連結部材は、連続体7にケーブル2の端部を連結できるものであれば、ボルト8aおよびナット8bの組の他にも種々のものが採用されうる。
【0043】
固定部6は、地面Gに打ち込んで固定されることが可能な形状を有する複数の鋼管杭9と、連続体7と鋼管杭9とを連結する杭連結部10とを有している。
【0044】
鋼管杭9は、図5〜6に示されるように、その上端縁に正方形のフランジ14が固定されている。フランジ14の4箇所には、貫通孔14aが形成されている。また、フランジ14の中央には、鋼管杭9の内側開口に連通するように開口14bが形成されている。鋼管杭9は、本発明の打込み部材の概念に含まれるものである。
【0045】
鋼管杭9は、道路Rの中央分離帯Cに沿う方向に間隔をあけて地面Gにそれぞれ打ち込まれている。本実施形態では、連続体7の長手方向において、連続体7におけるケーブル連結部材8の取付位置が連続体7と鋼管杭9との連結位置に一致するように、鋼管杭9が配置されている。具体的には、鋼管杭9は、4本のケーブル2に対応して4本設けられ、ケーブル保持部5におけるケーブル2の取付け位置の真下の位置にそれぞれ地面に打ち込まれている。
【0046】
なお、鋼管杭9は、ケーブル保持部5を地面Gに固定できるだけの保持力が得られればよく、少なくとも1本あればよい。また、本発明の打込み部材として、鋼管杭のほかにも打ち込み可能な部材であれば、種々の部材を採用することが可能である。
【0047】
杭連結部10は、図2に示されるように、連続体7の台座部分15と4本の鋼管杭9のフランジ14とをそれぞれ連結する。
【0048】
杭連結部10は、ベースプレート11と、ボルト12と、高ナット13とを備えている。
【0049】
ベースプレート11は、図7(a)、(b)に示されるように、道路Rの中央分離帯Cに沿って延びる板状部材であり、連続体7の台座部分15に当接する。また、ベースプレート11における鋼管杭9のフランジ14の取付位置には、それぞれフランジ14の貫通孔14aと連通するように、貫通孔11aが形成されている。また、ベースプレート11の貫通孔11aの位置は、連続体7を構成する各アングル7a、7bの台座部分15の貫通孔15aの位置に対応している。ベースプレート11は、本発明の当接板に対応している。
【0050】
高ナット13は、全長が長いナットであり、フランジ14の下面において貫通孔14aに対応する箇所に固着されている。高ナット13は、フランジ14が道路の表面に沿って設置されたときには地面Gに埋め込まれる。
【0051】
ボルト12は、連続体7の台座部分15とベースプレート11と複数の鋼管杭9のフランジ14とを連結する。具体的には、ボルト12は、台座部分15の貫通孔15a、ベースプレート11の貫通孔11aおよびフランジ14の貫通孔14aに挿通される。そして、ボルト12がフランジ14の下面に固着された高ナット13にねじ込まれることにより、上記の連続体7の台座部分15とベースプレート11と複数の鋼管杭9のフランジ14とを強固に締結する。これにより、連続体7に伝達された衝撃荷重を当該連続体7に当接するベースプレート11によって分散し、さらにボルト12によってベースプレート11に締結された複数の鋼管杭9に衝撃荷重を分散する。ボルト12は、本発明の当接板連結部材に対応している。
【0052】
本実施形態では、図3に示されるように、連続体7の台座部分15の上に細長い座金31を挟んでボルト12が締結されている。座金31は、ボルト12が挿通可能な貫通孔(図示せず)を有する。
【0053】
また、本実施形態の中間支柱3は、図9に示されるように、その上端部3aから下方に延びるV字状の切欠き3bを有しており、当該切欠き3bの対向する内面3c、3dの間に複数本のケーブル2と各ケーブル2の抜け止めのための抜止め部材32とが交互に積層するように配置されている。抜止め部材32は、切欠き3bの対向する内面3c、3dとの摩擦によって保持されている。これにより、複数本のケーブル2の少なくとも1本に車両が衝突したときに、抜止め部材32と切欠き3bの内面3c、3dとの結合が外れながら、それぞれのケーブル2が中間支柱3の切欠き3bから時間差をおいて上から順番に外れていく。これにより、車両の衝突の際の衝撃を徐々に逃がすことができ、中間支柱3が破損するおそれが低くなる。なお、端末支柱33も同様の構成にしてもよい。
【0054】
(ケーブル防護柵1の設置方法)
本実施形態のケーブル防護柵1を設置する場合、まず、図5〜6に示されるように、中央分離帯Cにおいて、道路に沿って離間した前後一対の端末装置4を設置する予定の場所にそれぞれ、鋼管杭9を所定の位置に等間隔に地面Gに打ち込む。このとき、各鋼管9の上端のフランジ14は、道路の表面に当接する。
【0055】
ついで、図2〜3に示されるように、フランジ14の上に、ベースプレート11、一対のアングル7a、7bおよび座金31を順に積層する。このとき、一対のアングル7a、7bのそれぞれの立直部分16は、互いに対向させた状態で間隔をあけて配置される。その後、ボルト12を座金31、アングル7a、7bの台座部分15、ベースプレート11、およびフランジ14の各貫通孔に通した状態で高ナット13にねじ込むことによって、連続体7の台座部分15とベースプレート11と複数の鋼管杭9のフランジ14とを締結する。
【0056】
それとともに、図1に示されるように、中央分離帯Cにおける前後一対の端末装置4を設置する予定の場所に挟まれた範囲において、その範囲の両端付近に端末支柱33を地面Gに設置し、さらに、端末支柱33の間に複数の中間支柱3を等間隔に設置する。
【0057】
ついで、中間支柱3および端末支柱33の間に4本のケーブル2を配索する。索端装置17は、ケーブル2を支柱間に配索する前または後のいずれかの段階で、ケーブル2の端部に取り付けられる。
【0058】
その後、図3〜4に示されるように、各ケーブル2の端部に連結された索端装置17のオーフック19を、連続体7を構成するアングル7a、7bの一対の立直部分16の間に挿入し、各オーフック19をアングル7a、7bの長手方向において等間隔に離れた所定の位置、すなわち、アングル7a、7bの立直部分16の貫通孔16aの位置に配置する。
【0059】
さらに、一対の立直部分16およびオーフック19の各貫通孔にケーブル連結部材8を構成するボルト8aを挿通し、ボルト8aの先端部にナット8bを締め付けることにより、複数本のケーブル2の端部を連続体7の長手方向に沿って互いに離間した位置に固定することができる。
【0060】
最後に、各ケーブル2の端部の索端装置17のターンバックル20を調整して、ケーブル2の張力を所定の張力(例えば、2トン程度)になるように調整すれば、ケーブル防護柵1の設置が完了する。
【0061】
(本実施形態の特徴)
上記のように構成された本実施形態のケーブル防護柵1では、ケーブル保持部5は、道路Rの中央分離帯Cに沿って延びる連続体7と、複数本のケーブル2のそれぞれの端部を連続体7の長手方向に沿って互いに離間した位置に連結する複数のケーブル連結部材8とを有しているので、道路Rの中央分離帯Cに沿って間隔をあけて立設された複数の中間支柱3および端末支柱33の間に配索された複数のケーブル2のそれぞれの端部は、ケーブル保持部5によって道路Rの中央分離帯Cに沿って離間した位置で一括して保持される。そして、当該ケーブル保持部5は、固定部6によって道路Rの中央分離帯Cに沿って延びる地面Gに固定されているので、奥行きまたは幅を取らずに地面Gに設置できる。
【0062】
また、ケーブル2の本数を増やしても、ケーブル保持部5を長手方向に延長することによりケーブル2の端部を保持することができるので、ケーブル保持部5を幅方向に増設する必要がなく、狭い奥行きまたは幅でコンパクトに設置できる。
【0063】
しかも、ケーブル保持部5は、固定部6によって道路Rの中央分離帯Cに沿って地面Gに固定されているので、ケーブル2の張力に耐えることができる。
【0064】
また、端末装置4の固定部6では、鋼管杭9を地面Gに打ち込んで、当該鋼管杭9にケーブル保持部5の連続体7が杭連結部10を介して連結されるので、従来のようなコンクリートの土台を固めた端末支柱を備えた構造と比較して、道路Rの中央分離帯Cなどの狭い設置場所に容易に設置できる。また、ケーブル防護柵1はコンクリートを要しない構造であるので、コンクリートのための養生期間も必要なくなり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【0065】
また、本実施形態では、鋼管杭9は、道路Rの中央分離帯Cに沿う方向に間隔をあけて地面Gにそれぞれ打ち込まれ、杭連結部10は、連続体7とそれぞれの鋼管杭9とを連結している。これにより、車両がケーブル2に衝突したときに複数のケーブル2に大きな衝撃荷重が作用し、このケーブル2に作用する衝撃荷重が連続体7に伝達されるが、杭連結部10は、連続体7と複数の鋼管杭9のそれぞれとを連結しているので、複数の鋼管杭9に衝撃荷重を分散して伝達することができる。その結果、簡易な構造で耐衝撃性が向上する。
【0066】
さらに、本実施形態では、杭連結部10は、道路Rの中央分離帯Cに沿って延び、連続体7と当接するベースプレート11と、連続体7とベースプレート11と複数の鋼管杭9とを連結するボルト12とを有している。これにより、連続体7が道路Rの中央分離帯Cに沿って延びるベースプレート11に当接するとともに、連続体7とベースプレート11と複数の鋼管杭9とがボルト12によって互いに締結されているので、連続体7に伝達された衝撃荷重を当該連続体7に当接するベースプレート11によって分散し、さらにボルト12によってベースプレート11に締結された複数の鋼管杭9に衝撃荷重を分散して確実に伝達することができる。その結果、ケーブル防護柵1の耐衝撃性を確実に向上させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、連続体7は、道路Rの中央分離帯Cの表面に沿って延びるとともに杭連結部10に連結される台座部分15と、当該台座部分15から立設された立直部分16とを有しており、複数本のケーブル2のそれぞれの端部は、ケーブル連結部材8によって、立直部分16に間隔をあけて連結されている。これにより、複数本のケーブル2のそれぞれの端部は、ケーブル連結部材8によって、連続体7における台座部分15から立設された立直部分16に間隔をあけて連結されているので、地面Gから上方に離間した位置でケーブル連結部材8を構成するボルト8aおよびナット8bを用いてケーブル2の端部の索端装置17の取付作業を行うことが可能になり、取付け作業性が向上する。
【0068】
しかも、連続体7における立直部分16が台座部分15から立ち上がっているので、立直部分16が台座部分15および当該台座部分15に連結される杭連結部10を補強するリブとして機能するので、ケーブル防護柵1は大きな衝撃荷重に耐えることができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、連続体7は、台座部分15および立直部分16をそれぞれ有する一対のL字断面形状のアングル7a、7bを備えている。一対の立直部分16は、互いに対向させた状態で間隔をあけて配置され、ケーブル2の端部には、少なくとも一部が一対の立直部分16の間に挿入可能なオーフック19を有する索端装置17が連結されている。索端装置17のオーフック19は、リング状の頭部を有しており、一対の立直部分16の間に挿入されるとともに、ケーブル連結部材8を構成するボルト8aおよびナット8bによって、当該立直部分16に連結されている。これにより、それぞれのケーブル2の索端装置17のオーフック19が一対の立直部分16の間に挿入されてケーブル連結部材8を構成するボルト8aおよびナット8bによって連結されているので、ケーブル2の張力を一対の立直部分16に均等に分散して強い張力にも耐えることができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、連続体7の長手方向において、連続体7におけるケーブル連結部材8の取付位置は、連続体7と鋼管杭9との連結位置に一致している。これにより、連続体7におけるケーブル連結部材8の取付位置には、それぞれのケーブル2の張力が作用するが、連続体7の長手方向において、ケーブル連結部材8の取付位置は連続体7と鋼管杭9との連結位置に一致しているので、ケーブル2の張力によって発生する鋼管杭9を地面Gから抜き出す方向に作用するモーメントを小さくすることができ、大きな衝撃荷重を鋼管杭9で受け止めることができる。
【0071】
上記の実施形態では、本発明のケーブル防護柵の一例として、道路Rの中央分離帯Cに設置した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、道路沿いの幅の狭い場所であれば種々の場所に設置することができ、例えば路側帯などにも設置可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ケーブル防護柵
2 ケーブル
3 中間支柱
4 端末装置
5 ケーブル保持部
6 固定部
7 連続体
7a、7b アングル
8 ケーブル連結部材
8a ボルト
8b ナット
9 鋼管杭(打込み部材)
10 杭連結部(打込み部材連結部)
11 ベースプレート(当接板)
12 ボルト(当接板連結部材)
15 台座部分
16 立直部分
17 索端装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿って配置されるケーブル防護柵であって、
前記道路に沿う方向に間隔をあけて立設される複数の支柱と、
互いに異なる高さに並んで前記複数の支柱の間に配索された複数本のケーブルと、
前記複数本のケーブルのそれぞれの端部を道路に沿って互いに離間した位置で保持するケーブル保持部、および地面に打ち込まれて固定されるとともに前記ケーブル保持部に連結される固定部を有する端末装置と
を備えており、
前記ケーブル保持部は、前記道路に沿って延びる連続体と、前記複数本のケーブルのそれぞれの端部を前記連続体における当該連続体の長手方向に沿って互いに離間した位置に連結する複数のケーブル連結部材とを有しており、
前記固定部は、地面に打ち込んで固定されることが可能な形状を有する少なくとも1つの打込み部材と、前記連続体と前記打込み部材とを連結する打込み部材連結部とを有している、
ことを特徴とするケーブル防護柵。

【請求項2】
前記打込み部材は、前記道路に沿う方向に間隔をあけて地面にそれぞれ打ち込まれ、
前記打込み部材連結部は、前記連続体とそれぞれの前記打込み部材とを連結する、
請求項1に記載のケーブル防護柵。

【請求項3】
前記打込み部材連結部は、
前記道路に沿って延び、前記連続体と当接する当接板と、
前記連続体と前記当接板と複数の前記打込み部材とを連結する当接板連結部材と
を有している、
請求項2に記載のケーブル防護柵。

【請求項4】
前記連続体は、前記道路の表面に沿って延びるとともに前記打込み部材連結部に連結される台座部分と、当該台座部分から立設された立直部分とを有しており、
前記複数本のケーブルのそれぞれの端部は、前記ケーブル連結部材によって、前記立直部分に間隔をあけて連結されている、
請求項1から3のいずれかに記載のケーブル防護柵。

【請求項5】
前記連続体は、前記台座部分および前記立直部分をそれぞれ有する一対の棒状部材を備えており、
一対の前記立直部分は、互いに対向させた状態で間隔をあけて配置され、
前記ケーブルの端部には、少なくとも一部が一対の前記立直部分の間に挿入可能な形状を有する索端装置が連結され、
前記索端装置は、一対の前記立直部分の間に挿入されるとともに、前記ケーブル連結部材によって、当該立直部分に連結されている、
請求項4に記載のケーブル防護柵。

【請求項6】
前記連続体の長手方向において、前記連続体における前記ケーブル連結部材の取付位置は、前記連続体と前記打込み部材との連結位置に一致している、
請求項1から5のいずれかに記載のケーブル防護柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−184594(P2012−184594A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48667(P2011−48667)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】