ケーブル電線
【課題】本発明は、例えば、圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際の作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することを目的とする。
【解決手段】ケーブル電線1は、導電性の芯線3を被覆部4で覆った複数の被覆電線2と、前記複数の被覆電線2の外周を覆うシース部7と、前記複数の被覆電線2と前記シース部7との間に設けられ、前記複数の被覆電線2同士を固定する固定部材6と、を備えている。前記固定部材6は、前記シース部7より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部4それぞれの外周面には、離型剤8が塗布されている。
【解決手段】ケーブル電線1は、導電性の芯線3を被覆部4で覆った複数の被覆電線2と、前記複数の被覆電線2の外周を覆うシース部7と、前記複数の被覆電線2と前記シース部7との間に設けられ、前記複数の被覆電線2同士を固定する固定部材6と、を備えている。前記固定部材6は、前記シース部7より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部4それぞれの外周面には、離型剤8が塗布されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したケーブル電線は、図2に示すように、例えば、高圧電力を供給するために用いられるものであり、導電性の芯線103を被覆部104で覆った複数の被覆電線102と、前記複数の被覆電線102の外周を覆う、絶縁性の樹脂からなるシース部107と、前記複数の被覆電線102と前記シース部107との間に設けられ、前記複数の被覆電線102同士を固定する、複数の被覆電線102と束ねるように重ねられる棒状の介在物105、及び、互いに重ねられた複数の被覆電線102と介在物105の外周に巻き付けられる押さえ巻きテープ106、としての固定部材と、を備えている。上記固定部材としての介在物105、及び、押さえ巻きテープ106は、シース部107よりも融点が低い樹脂からなる(特許文献1、特許文献2参照)。なお、図2において、芯線103はハッチングが省略されている。
【0003】
上述した従来のケーブル電線101を製造する際には、複数の被覆電線102と介在物105とを束ねるように重ねて、互いに重ねられた複数の被覆電線102及び介在物105の外周に押さえ巻きテープ106を巻き付けた後、予め定められた設定温度で、押し出し被覆することでシース部107が成形されることで製造されている。前記「予め定められた設定温度」とは、シース部107を構成する樹脂の融点より高い温度をいう。
【0004】
しかしながら、上述した従来のケーブル電線101を、例えば、圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際には、複数の被覆電線102(被覆部104)と、介在物105及び押さえ巻きテープ106と、シース部107と、が密着した状態で一体化しているため、一体化した複数の被覆電線102(被覆部104)と、介在物105及び押さえ巻きテープ106と、シース部107と、から、(密着した状態で一体化した)複数の被覆電線102を引き剥がし、さらに、一体化した複数の被覆電線102を各被覆電線102それぞれに引き剥がさなければならず、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決したケーブル電線(フラットケーブル)が提案されている(特許文献3を参照。)。このフラットケーブルには、各芯線の外周面に、予め、離型剤が塗布されており、該フラットケーブルに端末処理を施す際には、該フラットケーブルの端末を皮剥ぎすることで、前記離型剤によって、一体化した介在物及び押さえ巻きテープ及びシース部が各芯線から剥がされることとなり、各芯線が露出されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−42521号公報
【特許文献2】特開2010−27387号公報
【特許文献3】特開2010−44866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のケーブル電線においては、以下に示す問題があった。即ち、特許文献3に記載の従来のケーブル電線(フラットケーブル)においては、露出された各芯線に圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際に、塗布された離型剤をふき取らなければならず作業性が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、例えば、圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際の作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線において、前記固定部材は、前記シース部より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部それぞれの外周面には、離型剤が塗布されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記樹脂は、植物由来の材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明によれば、導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線において、前記固定部材は、前記シース部より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部それぞれの外周面には、離型剤が塗布されているので、ケーブル電線は、シース部と固定部材とが密着した状態で一体化している。さらに、一体化したシース部及び固定部材と、複数の被覆電線とは分離可能に設けられており、かつ、各被覆電線同士も分離可能に設けられている。これにより、ケーブル電線に端末処理を施す際には、一体化したシース部と固定部材とが、一度に複数の被覆電線から剥がされることとなり、さらにシース部及び固定部材から剥がされた複数の被覆電線は、一体化することなくそれぞれが分離可能に設けられており、よって、作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することができる。
【0012】
さらに、前記離型剤は各被覆部それぞれの外周面に塗布されているので、ケーブル電線をコネクタに接続する際においても、従来のように芯線に塗布された離型剤をふき取ることなく各被覆電線とコネクタとが接続されることとなり、よって、より一層、作業性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明によれば、前記樹脂は、植物由来の材料からなるので、石油資材枯渇の抑制、及び、前記固定部材を廃棄する際においても、CO2排出量が増加することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるケーブル電線を示す断面図である。
【図2】従来のケーブル電線を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態にかかるケーブル電線を、図1に基づいて説明する。同図に示されたケーブル電線1は、例えば、高圧電力を供給するために用いられるものであり、導電性の芯線3を被覆部4で覆った複数の被覆電線2と、前記複数の被覆電線2の外周を覆うシース部7と、前記複数の被覆電線2と前記シース部7との間に設けられ、前記複数の被覆電線2同士を固定する固定部材としての介在物5、及び、押さえ巻きテープ6と、を備えている。また、各被覆部4(被覆電線2)の外周面には、離型剤としてのシリコーン樹脂8が塗布されている。なお、図1において、芯線3はハッチングが省略されている。
【0016】
上記芯線は、複数の導線が撚られて形成されている。芯線を構成する導線は、導電性の金属からなる。また、芯線は、一本の導線から構成されてもよい。
【0017】
上記被覆部4は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの絶縁性を有する合成樹脂からなる。また、被覆部4は、各芯線3の外周を覆うように設けられている。
【0018】
上記シース部7は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの絶縁性を有する合成樹脂からなる。また、シース部7は、後述する押さえ巻きテープ6の外周を覆うように設けられている。即ち、シース部7は、前述した複数の被覆電線2の外周を覆うように設けられている。
【0019】
上記介在物5は、ケーブル電線1の断面が丸形になるように複数の被覆電線2と後述する押さえ巻きテープ6との隙き間に設けられている。また、介在物5は、該介在物5の長手方向と、各被覆電線2の長手方向とは、平行になるように設けられている。
【0020】
上記介在物5は、紙材からなる芯部(図示しない)と、この芯部の外周を被覆するバイオプラスチック層(図示しない)と、によって構成されている。上記バイオプラスチック層は、植物由来のポリ乳酸の重合体などを含むバイオプラスチック樹脂からなる。即ち、介在物5は、植物由来の材料からなる。この植物由来のポリ乳酸の重合体などを含むバイオプラスチック樹脂の融点は、前述した被覆部4、及び、シース部7を構成する、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの合成樹脂より低い。即ち、介在物5及び後述する押さえ巻きテープ6は、シース部7よりも融点が低い樹脂からなる。
【0021】
また、バイオプラスチック樹脂とは、主原料が植物、生物を原料として生成された高分子樹脂である。このバイオプラスチック樹脂は、主に糊粉や糖の含有量の多いトウモロコシやサトウキビなどから製造されるが、木、生ごみ、牛乳などからも製造することができる。なお、バイオプラスチック樹脂には、植物由来のものではトウモロコシなどの乳酸から生成されるポリ乳酸、ポリカプロラクトン、コポリエステルなど、があるが、このような樹脂の中でも、耐熱性、力学的特性、透明性などの実用性能や、樹脂重合などの生産性、コストなどの観点から、ポリ乳酸、または、ポリ乳酸とその他樹脂との複合物が好ましい。
【0022】
また、バイオプラスチック樹脂は、生分解性プラスチックとしての性質を持つ。このようなバイオプラスチック樹脂は、介在物5として用いられている際には、通常のプラスチックと同様に用いることができ、介在物5として用いられた後、廃棄処理される際には、自然界の微生物によって分解させることができ、かつ、焼却廃棄をする際においてもダイオキシン類を発生することがないので、廃棄に伴って環境に悪影響を与えないという性質がある。
【0023】
上記押さえ巻きテープ6は、前述した複数の被覆電線2と介在物5とが断面形状が円形になるように束ねられた後、これら複数の被覆電線2及び介在物5の外周に巻き付けられている。また、押さえ巻きテープ6は、前述したバイオプラスチック樹脂からなる。即ち、押さえ巻きテープ6と、前述した介在物5と、は同じ植物由来の材料(ポリ乳酸)からなる。
【0024】
次に、上述したケーブル電線1の製造方法について説明する。まず、予め、各被覆電線2を、芯線3の外周にポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの合成樹脂を押し出し被覆して被覆部4を成形する。こうして、被覆電線2が製造される。そして、製造された複数の被覆電線2それぞれの(各被覆部4の)外周面に、離型剤としてのシリコーン樹脂8を塗布しておく。
【0025】
さらに、外周面にシリコーン樹脂8が塗布された各被覆電線2と、介在物5と、を断面が丸形となるように束ねて、断面が丸形となるように束ねられた複数の被覆電線2及び介在物5の外周に押さえ巻きテープ6を巻き付ける。すると、複数の被覆電線2と介在物5とは、押さえ巻きテープ6によって固定される。さらに、押さえ巻きテープ6によって固定された複数の被覆電線2及び介在物5の外周に、予め定められた設定温度で、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を押し出し被覆し、シース部7を成形する。前記「予め定められた設定温度」とは、シース部7を構成するポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートの融点より高い温度をいう。
【0026】
すると、シース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6とが密着した状態で一体化するとともに、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と、複数の被覆電線2とは分離可能に設けられており、かつ、各被覆電線2同士も分離可能に設けられている。こうして、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と分離可能に設けられた、複数の被覆電線2と、を備えたケーブル電線1を得ることができる。
【0027】
次に、上述したケーブル電線1とコネクタとを接続する際に行う、該ケーブル電線1に端末処理を施す手順についてについて説明する。
【0028】
まず、ケーブル電線1の端末を皮剥ぎする。すると、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と、が、各被覆電線2から剥がされて(分離されて)、各被覆電線2が露出される。こうして露出された各被覆電線2それぞれの被覆部4を皮剥ぎし、皮剥ぎすることで露出された各芯線3と、コネクタと、を接続する。こうして、ケーブル電線1とコネクタとは接続される。
【0029】
上述した実施形態によれば、導電性の芯線3を被覆部4で覆った複数の被覆電線2と、前記複数の被覆電線2の外周を覆うシース部7と、前記複数の被覆電線2と前記シース部7との間に設けられ、前記複数の被覆電線2同士を固定する固定部材としての介在物5、及び、押さえ巻きテープ6と、を備えたケーブル電線1において、前記介在物5、及び、押さえ巻きテープ6は、前記シース部7より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部4それぞれの外周面には、離型剤としてのシリコーン樹脂8が塗布されているので、ケーブル電線1は、シース部7と介在物5、及び、押さえ巻きテープ6とが密着した状態で一体化している。さらに、一体化したシース部7及び介在物5、及び、押さえ巻きテープ6と、複数の被覆電線2とは分離可能に設けられており、かつ、各被覆電線2同士も分離可能に設けられている。これにより、ケーブル電線1に端末処理を施す際には、一体化したシース部7と介在物5、及び、押さえ巻きテープ6とが、一度に複数の被覆電線2から剥がされることとなり、さらにシース部7及び介在物5、及び、押さえ巻きテープ6から剥がされた複数の被覆電線2は、一体化することなくそれぞれが分離可能に設けられており、よって、作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することができる。
【0030】
さらに、前記シリコーン樹脂8は各被覆部4それぞれの外周面に塗布されているので、ケーブル電線1をコネクタに接続する際においても、従来のように芯線3に塗布された離型剤をふき取ることなく各被覆電線2とコネクタとが接続されることとなり、よって、より一層、作業性の向上を図ることができる。
【0031】
また、介在物5及び押さえ巻きテープ6を構成する前記樹脂は、植物由来の材料(ポリ乳酸)からなるので、石油資材枯渇の抑制、及び、前記介在物5及び押さえ巻きテープ6を廃棄する際においても、CO2排出量が増加することを抑制することができる。詳しく説明すると、自然界の植物は光合成によって、大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長(炭素同化作用)するので、石油などの化石燃料を燃焼する場合と異なり、植物由来の原料や燃料を燃焼・分解しても、大気中の二酸化炭素の量は理論上変わらないという、カーボンニュートラルであるとの考え方に則り、CO2排出量が増加することを抑制することができる。
【0032】
なお、前述した実施形態によれば、固定部材として介在物5及び押さえ巻きテープ6が用いられているが、本発明はこれに限ったものではなく、介在物5及び押さえ巻きテープ6のうち少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0033】
また、前述した実施形態によれば、介在物5は、紙材からなる芯部(図示しない)と、この芯部の外周を被覆するバイオプラスチック層(図示しない)と、によって構成されているが、本発明はこれに限ったものではなく、介在物5は、バイオプラスチック層のみによって構成されていてもよい。
【0034】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ケーブル電線
2 被覆電線
3 芯線
4 被覆部
5 介在物(固定部材)
6 押さえ巻きテープ(固定部材)
7 シース部
8 シリコーン樹脂(離型剤)
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したケーブル電線は、図2に示すように、例えば、高圧電力を供給するために用いられるものであり、導電性の芯線103を被覆部104で覆った複数の被覆電線102と、前記複数の被覆電線102の外周を覆う、絶縁性の樹脂からなるシース部107と、前記複数の被覆電線102と前記シース部107との間に設けられ、前記複数の被覆電線102同士を固定する、複数の被覆電線102と束ねるように重ねられる棒状の介在物105、及び、互いに重ねられた複数の被覆電線102と介在物105の外周に巻き付けられる押さえ巻きテープ106、としての固定部材と、を備えている。上記固定部材としての介在物105、及び、押さえ巻きテープ106は、シース部107よりも融点が低い樹脂からなる(特許文献1、特許文献2参照)。なお、図2において、芯線103はハッチングが省略されている。
【0003】
上述した従来のケーブル電線101を製造する際には、複数の被覆電線102と介在物105とを束ねるように重ねて、互いに重ねられた複数の被覆電線102及び介在物105の外周に押さえ巻きテープ106を巻き付けた後、予め定められた設定温度で、押し出し被覆することでシース部107が成形されることで製造されている。前記「予め定められた設定温度」とは、シース部107を構成する樹脂の融点より高い温度をいう。
【0004】
しかしながら、上述した従来のケーブル電線101を、例えば、圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際には、複数の被覆電線102(被覆部104)と、介在物105及び押さえ巻きテープ106と、シース部107と、が密着した状態で一体化しているため、一体化した複数の被覆電線102(被覆部104)と、介在物105及び押さえ巻きテープ106と、シース部107と、から、(密着した状態で一体化した)複数の被覆電線102を引き剥がし、さらに、一体化した複数の被覆電線102を各被覆電線102それぞれに引き剥がさなければならず、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決したケーブル電線(フラットケーブル)が提案されている(特許文献3を参照。)。このフラットケーブルには、各芯線の外周面に、予め、離型剤が塗布されており、該フラットケーブルに端末処理を施す際には、該フラットケーブルの端末を皮剥ぎすることで、前記離型剤によって、一体化した介在物及び押さえ巻きテープ及びシース部が各芯線から剥がされることとなり、各芯線が露出されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−42521号公報
【特許文献2】特開2010−27387号公報
【特許文献3】特開2010−44866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のケーブル電線においては、以下に示す問題があった。即ち、特許文献3に記載の従来のケーブル電線(フラットケーブル)においては、露出された各芯線に圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際に、塗布された離型剤をふき取らなければならず作業性が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、例えば、圧着型端子を用いて、該ケーブル電線101に端末処理を施す際の作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線において、前記固定部材は、前記シース部より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部それぞれの外周面には、離型剤が塗布されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記樹脂は、植物由来の材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明によれば、導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線において、前記固定部材は、前記シース部より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部それぞれの外周面には、離型剤が塗布されているので、ケーブル電線は、シース部と固定部材とが密着した状態で一体化している。さらに、一体化したシース部及び固定部材と、複数の被覆電線とは分離可能に設けられており、かつ、各被覆電線同士も分離可能に設けられている。これにより、ケーブル電線に端末処理を施す際には、一体化したシース部と固定部材とが、一度に複数の被覆電線から剥がされることとなり、さらにシース部及び固定部材から剥がされた複数の被覆電線は、一体化することなくそれぞれが分離可能に設けられており、よって、作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することができる。
【0012】
さらに、前記離型剤は各被覆部それぞれの外周面に塗布されているので、ケーブル電線をコネクタに接続する際においても、従来のように芯線に塗布された離型剤をふき取ることなく各被覆電線とコネクタとが接続されることとなり、よって、より一層、作業性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明によれば、前記樹脂は、植物由来の材料からなるので、石油資材枯渇の抑制、及び、前記固定部材を廃棄する際においても、CO2排出量が増加することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるケーブル電線を示す断面図である。
【図2】従来のケーブル電線を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態にかかるケーブル電線を、図1に基づいて説明する。同図に示されたケーブル電線1は、例えば、高圧電力を供給するために用いられるものであり、導電性の芯線3を被覆部4で覆った複数の被覆電線2と、前記複数の被覆電線2の外周を覆うシース部7と、前記複数の被覆電線2と前記シース部7との間に設けられ、前記複数の被覆電線2同士を固定する固定部材としての介在物5、及び、押さえ巻きテープ6と、を備えている。また、各被覆部4(被覆電線2)の外周面には、離型剤としてのシリコーン樹脂8が塗布されている。なお、図1において、芯線3はハッチングが省略されている。
【0016】
上記芯線は、複数の導線が撚られて形成されている。芯線を構成する導線は、導電性の金属からなる。また、芯線は、一本の導線から構成されてもよい。
【0017】
上記被覆部4は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの絶縁性を有する合成樹脂からなる。また、被覆部4は、各芯線3の外周を覆うように設けられている。
【0018】
上記シース部7は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの絶縁性を有する合成樹脂からなる。また、シース部7は、後述する押さえ巻きテープ6の外周を覆うように設けられている。即ち、シース部7は、前述した複数の被覆電線2の外周を覆うように設けられている。
【0019】
上記介在物5は、ケーブル電線1の断面が丸形になるように複数の被覆電線2と後述する押さえ巻きテープ6との隙き間に設けられている。また、介在物5は、該介在物5の長手方向と、各被覆電線2の長手方向とは、平行になるように設けられている。
【0020】
上記介在物5は、紙材からなる芯部(図示しない)と、この芯部の外周を被覆するバイオプラスチック層(図示しない)と、によって構成されている。上記バイオプラスチック層は、植物由来のポリ乳酸の重合体などを含むバイオプラスチック樹脂からなる。即ち、介在物5は、植物由来の材料からなる。この植物由来のポリ乳酸の重合体などを含むバイオプラスチック樹脂の融点は、前述した被覆部4、及び、シース部7を構成する、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの合成樹脂より低い。即ち、介在物5及び後述する押さえ巻きテープ6は、シース部7よりも融点が低い樹脂からなる。
【0021】
また、バイオプラスチック樹脂とは、主原料が植物、生物を原料として生成された高分子樹脂である。このバイオプラスチック樹脂は、主に糊粉や糖の含有量の多いトウモロコシやサトウキビなどから製造されるが、木、生ごみ、牛乳などからも製造することができる。なお、バイオプラスチック樹脂には、植物由来のものではトウモロコシなどの乳酸から生成されるポリ乳酸、ポリカプロラクトン、コポリエステルなど、があるが、このような樹脂の中でも、耐熱性、力学的特性、透明性などの実用性能や、樹脂重合などの生産性、コストなどの観点から、ポリ乳酸、または、ポリ乳酸とその他樹脂との複合物が好ましい。
【0022】
また、バイオプラスチック樹脂は、生分解性プラスチックとしての性質を持つ。このようなバイオプラスチック樹脂は、介在物5として用いられている際には、通常のプラスチックと同様に用いることができ、介在物5として用いられた後、廃棄処理される際には、自然界の微生物によって分解させることができ、かつ、焼却廃棄をする際においてもダイオキシン類を発生することがないので、廃棄に伴って環境に悪影響を与えないという性質がある。
【0023】
上記押さえ巻きテープ6は、前述した複数の被覆電線2と介在物5とが断面形状が円形になるように束ねられた後、これら複数の被覆電線2及び介在物5の外周に巻き付けられている。また、押さえ巻きテープ6は、前述したバイオプラスチック樹脂からなる。即ち、押さえ巻きテープ6と、前述した介在物5と、は同じ植物由来の材料(ポリ乳酸)からなる。
【0024】
次に、上述したケーブル電線1の製造方法について説明する。まず、予め、各被覆電線2を、芯線3の外周にポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate:PET)などの合成樹脂を押し出し被覆して被覆部4を成形する。こうして、被覆電線2が製造される。そして、製造された複数の被覆電線2それぞれの(各被覆部4の)外周面に、離型剤としてのシリコーン樹脂8を塗布しておく。
【0025】
さらに、外周面にシリコーン樹脂8が塗布された各被覆電線2と、介在物5と、を断面が丸形となるように束ねて、断面が丸形となるように束ねられた複数の被覆電線2及び介在物5の外周に押さえ巻きテープ6を巻き付ける。すると、複数の被覆電線2と介在物5とは、押さえ巻きテープ6によって固定される。さらに、押さえ巻きテープ6によって固定された複数の被覆電線2及び介在物5の外周に、予め定められた設定温度で、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を押し出し被覆し、シース部7を成形する。前記「予め定められた設定温度」とは、シース部7を構成するポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートの融点より高い温度をいう。
【0026】
すると、シース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6とが密着した状態で一体化するとともに、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と、複数の被覆電線2とは分離可能に設けられており、かつ、各被覆電線2同士も分離可能に設けられている。こうして、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と分離可能に設けられた、複数の被覆電線2と、を備えたケーブル電線1を得ることができる。
【0027】
次に、上述したケーブル電線1とコネクタとを接続する際に行う、該ケーブル電線1に端末処理を施す手順についてについて説明する。
【0028】
まず、ケーブル電線1の端末を皮剥ぎする。すると、一体化したシース部7と介在物5と押さえ巻きテープ6と、が、各被覆電線2から剥がされて(分離されて)、各被覆電線2が露出される。こうして露出された各被覆電線2それぞれの被覆部4を皮剥ぎし、皮剥ぎすることで露出された各芯線3と、コネクタと、を接続する。こうして、ケーブル電線1とコネクタとは接続される。
【0029】
上述した実施形態によれば、導電性の芯線3を被覆部4で覆った複数の被覆電線2と、前記複数の被覆電線2の外周を覆うシース部7と、前記複数の被覆電線2と前記シース部7との間に設けられ、前記複数の被覆電線2同士を固定する固定部材としての介在物5、及び、押さえ巻きテープ6と、を備えたケーブル電線1において、前記介在物5、及び、押さえ巻きテープ6は、前記シース部7より融点が低い樹脂からなり、かつ、前記被覆部4それぞれの外周面には、離型剤としてのシリコーン樹脂8が塗布されているので、ケーブル電線1は、シース部7と介在物5、及び、押さえ巻きテープ6とが密着した状態で一体化している。さらに、一体化したシース部7及び介在物5、及び、押さえ巻きテープ6と、複数の被覆電線2とは分離可能に設けられており、かつ、各被覆電線2同士も分離可能に設けられている。これにより、ケーブル電線1に端末処理を施す際には、一体化したシース部7と介在物5、及び、押さえ巻きテープ6とが、一度に複数の被覆電線2から剥がされることとなり、さらにシース部7及び介在物5、及び、押さえ巻きテープ6から剥がされた複数の被覆電線2は、一体化することなくそれぞれが分離可能に設けられており、よって、作業性の向上を図ったケーブル電線を提供することができる。
【0030】
さらに、前記シリコーン樹脂8は各被覆部4それぞれの外周面に塗布されているので、ケーブル電線1をコネクタに接続する際においても、従来のように芯線3に塗布された離型剤をふき取ることなく各被覆電線2とコネクタとが接続されることとなり、よって、より一層、作業性の向上を図ることができる。
【0031】
また、介在物5及び押さえ巻きテープ6を構成する前記樹脂は、植物由来の材料(ポリ乳酸)からなるので、石油資材枯渇の抑制、及び、前記介在物5及び押さえ巻きテープ6を廃棄する際においても、CO2排出量が増加することを抑制することができる。詳しく説明すると、自然界の植物は光合成によって、大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長(炭素同化作用)するので、石油などの化石燃料を燃焼する場合と異なり、植物由来の原料や燃料を燃焼・分解しても、大気中の二酸化炭素の量は理論上変わらないという、カーボンニュートラルであるとの考え方に則り、CO2排出量が増加することを抑制することができる。
【0032】
なお、前述した実施形態によれば、固定部材として介在物5及び押さえ巻きテープ6が用いられているが、本発明はこれに限ったものではなく、介在物5及び押さえ巻きテープ6のうち少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0033】
また、前述した実施形態によれば、介在物5は、紙材からなる芯部(図示しない)と、この芯部の外周を被覆するバイオプラスチック層(図示しない)と、によって構成されているが、本発明はこれに限ったものではなく、介在物5は、バイオプラスチック層のみによって構成されていてもよい。
【0034】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ケーブル電線
2 被覆電線
3 芯線
4 被覆部
5 介在物(固定部材)
6 押さえ巻きテープ(固定部材)
7 シース部
8 シリコーン樹脂(離型剤)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、
前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、
前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線において、
前記固定部材は、前記シース部より融点が低い樹脂からなり、かつ、
前記被覆部それぞれの外周面には、離型剤が塗布されていることを特徴とするケーブル電線。
【請求項2】
前記樹脂は、植物由来の材料からなることを特徴とする請求項1に記載のケーブル電線。
【請求項1】
導電性の芯線を被覆部で覆った複数の被覆電線と、
前記複数の被覆電線の外周を覆うシース部と、
前記複数の被覆電線と前記シース部との間に設けられ、前記複数の被覆電線同士を固定する固定部材と、を備えたケーブル電線において、
前記固定部材は、前記シース部より融点が低い樹脂からなり、かつ、
前記被覆部それぞれの外周面には、離型剤が塗布されていることを特徴とするケーブル電線。
【請求項2】
前記樹脂は、植物由来の材料からなることを特徴とする請求項1に記載のケーブル電線。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2012−133982(P2012−133982A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284452(P2010−284452)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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