説明

ケーブル

【課題】端末加工の作業性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることが可能なケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブル11を布設する際、シース14よりも高硬度のストライプ部16が優先的に摩擦面に接触する。ストライプ部16は、シース14の外周面15よりも外側に突出する部分を有することから、シース14の摩耗が防止される。ケーブル11の端末加工の際には、ストライプ部16同士の間が凹みとなり、この凹みにカッター等で切り込みを入れればシース14の切り裂きが容易に行えるようになる。シース14及び複数のストライプ部16は、同一種類で配合により硬度を変更した樹脂材料を用いて押出成形されている。シース14は、低硬度材料が用いられている。これに対してストライプ部16は、高硬度材料が用いられている。ストライプ部16は、摩耗し難い材料が用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル長手方向に伸びるストライプ部がシースの外周面に複数存在するケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には次のような技術が開示されている。図2において、引用符号1で示す電線は、導体2の周囲に被覆される絶縁体3の外周面にストライプ部4を複数有している。ストライプ部4は、絶縁体3の外周面にケーブル長手方向の溝を形成し、この溝に樹脂組成物を充填することによって形成されている。ストライプ部4及び絶縁体3は、これらの外周面が同一円周上となるように形成されている。ストライプ部4は、絶縁体3のベース樹脂よりも多くの可塑剤又は充填剤を添加して形成されている。ストライプ部4は、絶縁体3よりも柔らかく裂け易くなっている。図2(b)では、絶縁体3をストライプ部4の位置で裂いて、導体2を取り出している状態が示されている。
【特許文献1】特開平11−265619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術にあっては、ストライプ部4が絶縁体3よりも柔らかいことから、端末加工の際の導体2の取り出し時において裂き易い部分となっている。しかしながら、ストライプ部4は絶縁体3の外周面と同一円周上の外周面で形成されることから、ストライプ部4は電線布設時等において摩耗し易い部分となっている。
【0004】
ストライプ部4は、先ず摩擦面に対して線接触のような状態で擦れが始まり、次第に摩耗範囲が広がってくる。そして、ある程度擦れると、ストライプ部4を形成するための絶縁体3の溝縁部が摩耗しはじめて次第に絶縁体3の摩耗範囲が広がってくる。
【0005】
尚、ストライプ部4をケーブルのシースに適用した場合も上記と同じ問題点を有することになる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、端末加工の作業性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることが可能なケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のケーブルは、ケーブル長手方向に伸びるストライプ部をシースの外周面に複数有するケーブルにおいて、前記ストライプ部を前記シースよりも硬度のある部分とするとともに、前記ストライプ部に端点を設定して隣り合うストライプ部端点同士を直線で結ぶと該直線の内側に前記外周面が位置する形状に前記ストライプ部を形成することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の本発明のケーブルは、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記ストライプ部の前記外周面よりも外側に突出する部分の形状を端面視略台形となる形状に形成するとともに、前記ストライプ部を等ピッチで少なくとも8本設けることを特徴としている。
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、ケーブルを布設する際、シースよりも高硬度のストライプ部が優先的に摩擦面に接触する。ストライプ部は、シースの外周面よりも外側に突出する部分を有することから、シースの摩耗が防止される。ケーブルの端末加工の際には、ストライプ部同士の間が凹みとなり、この凹みにカッター等で切り込みを入れればシースの切り裂きが容易に行えるようになる。尚、ストライプ部の形状等に関しては、発明を実施するための最良の形態の欄で説明する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された本発明によれば、端末加工の作業性を維持しつつ耐摩耗性を向上させることができるという効果を奏する。また、請求項2に記載された本発明によれば、ストライプ部のより良い形状等を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態を示すケーブルの拡大端面図である。
【0012】
図1において、本発明のケーブル11は、端面形状が円形となるものであって、導体12と、この導体12を被覆する絶縁体13と、絶縁体13の外側を被覆するシース14とを備えて構成されている。導体12と絶縁体13は公知のものが用いられている。本発明のケーブル11は、シース14の外周面15にケーブル長手方向に伸びるストライプ部16を複数有しており、このストライプ部16の形状及び配置が特徴になっている。本発明のケーブル11は、耐摩耗性の向上が図られるものとなっている。以下、シース14及び複数のストライプ部16について説明をする。
【0013】
シース14及び複数のストライプ部16は、同一種類で配合により硬度を変更した樹脂材料を用いて押出成形されている。シース14は、低硬度材料(ショアD試験での値30程度)が用いられている。これに対してストライプ部16は、高硬度材料(ショアD試験での値40程度)が用いられている。ストライプ部16は、摩耗し難い材料が用いられている。
【0014】
シース14は、半径R、厚さTとなるように形成されている。このようなシース14には、外周面15からケーブル中心Cに向けて凹む溝17が複数形成されている。溝17は、シース14にストライプ部16を設けるための部分として形成されている。溝17は、ケーブル長手方向に伸びている。溝17は、本形態において、等ピッチ且つ同じ大きさで8本形成されている(溝17の数は最低8本とする(理由の一つとして、ストライプ部16を外周面15から大きく突出させないため))。溝17は、偶数本が好ましいものとする。
【0015】
溝17は、この深さDがシース14の厚さTの3/4程度の深さとなるように形成されている(溝17の深さD:シース14の厚さT≒3:4)。ケーブル11の端面において、溝17は、この部分の面積と、溝17が存在しない部分の面積(溝17を除いたシース14の面積)との比率が1.1:1程度となるように形成されている。
【0016】
ストライプ部16は、溝17に高硬度材料を充填することによって形成されている。高硬度材料は、外周面15の外側へ膨らむくらいに充填されている。もう少し具体的に説明すると、ストライプ部16は、外周面15から突出する部分を有しており、この突出する部分はケーブル11の端面視において略台形となる形状に形成されている。突出する部分を台形突出部分18とすると、この台形突出部分18の上底となる部分の長さは、特に符号を付さないが溝17の幅程度続くように設定されている。
【0017】
ストライプ部16は、シース14の半径Rに対して次のような寸法関係を有している。すなわち、シース14の半径Rを1.00とすると、ケーブル中心Cから台形突出部分18の上底となる部分までの長さL(又は上底となる部分の両端に設定される端点Pまでの半径)が1.03以上となるように設定されている。
【0018】
また、ストライプ部16は、シース14の外周面15に対して次のような関係を有している。すなわち、隣り合うストライプ部16の端点P同士を直線S(図中では仮想線)で結ぶと、この直線Sの内側に外周面15が位置するようにストライプ部16の形状が設定されている。
【0019】
ストライプ部16に二つの端点Pが存在し、隣り合うストライプ部16の端点P同士を直線Sで結ぶと、8本のストライプ部16の場合、ほぼ正16角形となる形状が形成されるようになっている。このほぼ正16角形の形状の内側には、外周面15により形成される同心円が包含されるようになっている。
【0020】
上記構成において、ケーブル11を布設する際、シース14よりも高硬度のストライプ部16が優先的に摩擦面に接触することになる。ストライプ部16は、シース14の外周面15よりも突出する部分を有することから、シース14の摩耗を防止することができる。本発明のケーブル11は、摩耗し難いものとなっている。
【0021】
ケーブル11の端末加工の際には、ストライプ部16同士の間が凹みとなり、この凹みにカッター等で切り込みを入れればシース14の切り裂きを容易に行うことができる。端末加工の際の作業性を従来レベルに維持することができる。
【0022】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。例えば、本発明を平型ケーブルに適用しても良いものとする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態を示すケーブルの拡大端面図である。
【図2】従来例の電線の図であり、(a)は断面図、(b)は端末加工の際の作業状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
11 ケーブル
12 導体
13 絶縁体
14 シース
15 外周面
16 ストライプ部
17 溝
18 台形突出部分
P 端点
S 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル長手方向に伸びるストライプ部(16)をシース(14)の外周面(15)に複数有するケーブル(11)において、
前記ストライプ部を前記シースよりも硬度のある部分とするとともに、前記ストライプ部に端点(P)を設定して隣り合うストライプ部端点同士を直線(S)で結ぶと該直線の内側に前記外周面が位置する形状に前記ストライプ部を形成する
ことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル(11)において、
前記ストライプ部(16)の前記外周面(15)よりも外側に突出する部分の形状を端面視略台形となる形状に形成するとともに、前記ストライプ部を等ピッチで少なくとも8本設ける
ことを特徴とするケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−140641(P2008−140641A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325118(P2006−325118)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】