説明

ケーブル

【課題】発光部への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良いケーブルを提供する。
【解決手段】電力供給用の導体2と、導体2の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁被覆4及び防食被覆5から成る絶縁層3と、導体2から給電され、可撓性を有し、且つ、電圧の印加によって発光材が絶縁層3の外方に向かって発光する発光部10とを備えたケーブル1Aである。又、電力供給用の導体と、導体の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁被覆及び防食被覆から成る絶縁層とを備え、絶縁層には、導体から給電され、電圧の印加によって発光する有機発光材が含有されたケーブルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外方に向かって発光するケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁に停泊した船舶、駐車中の車両などに外部から電力を供給するのに、ケーブルが使用される。かかるケーブルの使用環境は、周囲の照明が不十な場合が多々あり、安全上の問題よりいわゆる、光るケーブルの使用が好適である。
【0003】
この種の従来のケーブルとしては、特許文献1に開示されたものがある。このケーブルは、導体と、導体の外周を被う絶縁内皮と、絶縁内皮の外周を被う遮蔽層と、遮蔽層の外周を被い、且つ、蓄電材料が含有された絶縁外皮と、絶縁外皮の外周を被う保護層とから構成されている。
【0004】
この従来例によれば、太陽光や蛍光灯などの光を絶縁外皮内の蓄電材料が受光すると、その蓄電したエネルギーによって夜間でも発光する。従って、夜間におけるケーブルの視認性が高い。しかし、昼間等にあって光の照射が得られない場合には、夜間に発光せず、又、蓄電したエネルギーがなくなると発光しなくなる。
【0005】
そこで、昼間等にあって光の照射が得られない場合にも夜間の発光が可能である従来のケーブルとしては、特許文献2に開示されたものがある。このケーブルは、導体と、この導体の外周を被い、電界によって発光する発光材料が含有された発光樹脂層とから構成されている。
【0006】
この従来例によれば、発光樹脂層に電界を発生させれば夜間でも発光し、夜間におけるケーブルの視認性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−288627号公報
【特許文献2】特開2000−311523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来例では、発光樹脂層が低密度ポリエチレンに発光材料のジスチルベンゼンを加えたものである。低密度ポリエチレン材料は、高い硬度であるため、ケーブルに可撓性がないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、発光部への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良いケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電力供給用の導体と、前記導体の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁層と、前記導体から給電され、可撓性を有し、且つ、電圧の印加によって発光材が前記絶縁層の外方に向かって発光する発光部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、他の本発明は、電力供給用の導体と、前記導体の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁層とを備え、
前記絶縁層には、前記導体から給電され、電圧の印加によって発光する有機発光材が含有されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光部への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性を有するケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、(a)はケーブルの斜視図、(b)はケーブルの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、発光部の構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示し、(a)はケーブルの斜視図、(b)はケーブルの断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示し、ケーブルの断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示し、ケーブルの断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態を示し、ケーブルの断面図である。
【図7】(a)は第1〜第4実施形態に係る発光部の発光層が無機発光材である場合の給電例を示す概略側面図、(b)はその概略断面図である。
【図8】第1〜第4実施形態に係る発光部の発光層が有機発光材である場合の給電例を示す概略側面図、(b)はその概略断面図である。
【図9】(a)は第5実施形態に係る防食被覆の防食発光層への給電例を示す側面図、(b)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示し、図1(a)はケーブル1Aの斜視図、図1(b)はケーブル1Aの断面図、図2は発光部の構成図である。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように、ケーブル1Aは、電力供給用の導体2と、この導体2の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁層3と、この絶縁層3の外周面に設けられた発光部10とを備えている。
【0017】
絶縁層3は、導体2の外周を覆う絶縁被覆4と、この絶縁被覆4の外周を覆う防食被覆5との二層より構成されている。
【0018】
発光部10は、電圧の印加によって発光材がエレクトロ・ルミネセンス(EL)電界発光を行うものであり、長尺状の薄膜シート状に形成されている。薄膜シート状の発光部10は、防食被覆5の外周面上に螺旋状に巻き付けられている。薄膜シート状の発光部10は、図2に詳しく示すように、例えば無機の発光材から成る発光体層(ZnS+Cu)11と、この発光体層11の裏面に配置された誘電体層(BaTiO)12と、発光体層11及び誘電体層12を挟むように配置された裏面電極(CA,Ag)13及び透明電極(ITO)14と、裏面電極13の外面に配置された保護層(メジウム)15と、透明電極14の外面を覆うPETフィルム16とから構成されている。各層11〜16は、可撓性を有する材料より形成され、発光部10全体としても可撓性良く形成されている。保護層15側、又は、PETフィルム16側が防食被覆5に例えば接着剤で固定されている。裏面電極13と透明電極14間には、交流電圧が給電されるよう構成されている。そして、裏面電極13と透明電極14間に交流電圧を印加されると、透明電極14側より外方に向かって発光する。
【0019】
上記構成において、発光部10に電圧が印加されると、発光部10が外方に向かって発光する。
【0020】
第1実施形態のケーブル1Aは、その導体2が電力供給用のものであり、必ず電源に接続されるものであるため、発光部10への電力供給が容易にできる。又、可撓性を有する絶縁層3に、同じく可撓性を有する発光部10を設けているので、ケーブル1A自体の可撓性も確保できる。以上より、ケーブル1Aは、発光部10への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良い。
【0021】
発光部10は、絶縁層3の外面に配置されているので、発光部10の設置が容易である。
【0022】
薄膜シート状の発光部10は、防食被覆5の外周面に螺旋状に配置されているので、ケーブル1Aの回転向きに拘わらず発光部10からの発光を視認できる。
【0023】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態を示し、図3(a)はケーブル1Bの斜視図、図1(b)はケーブル1Bの断面図である。
【0024】
図3(a)、(b)に示すように、この第2実施形態のケーブル1Bの防食被覆5には、ケーブル長手方向に沿って一直線状に溝5aが形成されている。この溝5a内に薄膜シート状の発光部10が埋設されている。他の構成は、発光部10の内部構成をも含めて前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。そして、第1実施形態と同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0025】
この第2実施形態のケーブル1Bは、前記第1実施形態と同様の理由によって、発光部10への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良い。
【0026】
発光部10は、防食被覆5の溝5aに埋設されているので、ケーブル1Bの径が大きくならない。又、発光部10は、一直線状に配置されるため、発光部10の設置を容易にできる。
【0027】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態に係るケーブル1Cの断面図である。図4に示すように、第3実施形態のケーブル1Cは、前記第1実施形態のものと比較して、発光部10の外周を覆う光透過性材の保護層7を備えている点が相違する。他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略し、同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0028】
この第3実施形態のケーブル1Cは、前記第1実施形態と同様の理由によって、発光部10への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良い。その上、発光部10が保護層7で被覆されているため、発光部10が外部からのダメージに強い。
【0029】
(第4実施形態)
図5は本発明の第4実施形態に係るケーブル1Dの断面図である。図5に示すように、第4実施形態のケーブル1Dは、前記第2実施形態のものと比較して、発光部10が埋設された防食被覆5に外周を覆う光透過性材の保護層7を備えている点が相違する。他の構成は、前記第2実施形態と同様であるため、重複説明を省略し、同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0030】
この第4実施形態のケーブル1Dは、前記第2実施形態と同様の理由によって、発光部10への電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良い。その上、発光部10が保護層7で被覆されているため、発光部10が外部からのダメージに強い。
【0031】
(第1〜第4実施形態の変形例)
第1〜第4実施形態では、予め薄膜シート状に形成された発光部10を防食被覆5に接着等によって設けているが、発光部10の各層を塗布・蒸着によって防食被覆5に直に積層することによって設けても良い。
【0032】
第1〜第4実施形態では、発光部10の発光層11は、無機発光材にて形成されているが、有機発光材にて形成しても良い。有機発光材の場合、発光の電源は直流電流である。
【0033】
第1及び第3実施形態では、発光部10を防食被覆5の外周面に螺旋状に設けたが、第2及び第4実施形態のように一直線上に設けても良く、配置パターン(2状の螺旋配列等)は自由である。第2及び第4実施形態では、発光部10を防食被覆5の溝5a内に一直線上に埋設したが、第1及び第3実施形態のように螺旋状に埋設しても良く、配置パターン(2状の一直線配列等)は自由である。
【0034】
(第5実施形態)
図6は本発明の第5実施形態のケーブル1Eの断面図である。図6に示すように、ケーブル1Eは、電力供給用の導体2と、この導体2の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁層3Aとを備えている。絶縁層3Aは、導体2の外周を覆う絶縁被覆4と、この絶縁被覆4の外周を覆う防食被覆5Aとの二層より構成されている。
【0035】
防食被覆5Aは、ビニル、ゴムなどの有機防食材に、電圧の印加によってエレクトロ・ルミネセンス(EL)電界発光を行う有機発光材が含有された防食発光層5aと、この防食発光層5aの内外周にそれぞれ配置された陽極5b及び陰極5cと、陰極5cの外周を覆う保護層5dとを備えている。陽極5bと陰極5cに直流電圧が給電されるよう構成されている。陽極5bと陰極5cの位置が逆でも良い。
【0036】
上記構成において、防食被覆5Aに電圧が印加されると、防食被覆5Aが外方に向かって発光する。
【0037】
この第5実施形態のケーブル1Eは、その導体2が電力供給用のものであり、必ず電源に接続されるものであるため、防食被覆5Aへの電力供給が容易にできる。又、可撓性を有する防食被覆5Aに有機発光材を含有しているので、ケーブル1E自体の可撓性も確保できる。以上より、ケーブル1Eは、防食被覆5Aへの電力供給が容易にでき、しかも、可撓性が良い。
【0038】
(第1〜第4実施形態に係る発光部への給電例)
図7(a)は第1〜第4実施形態に係る発光部10の発光層が無機発光材である場合の給電例を示す概略側面図、図7(b)はその概略断面図である。
【0039】
図7(a)、(b)に示すように、ケーブル1Fは、その一端が船外、車外に設置される交流電源部(AC200V)21に、他端が給電を行う船や車両側に接続される。ケーブル1Fは、各絶縁層3で覆われた二本の導体2と、発光部10とを備えている。発光部10の構成は、第1〜第4実施形態のものであり、その発光層が無機発光材で形成されている。発光部10の裏面電極と透明電極は、二本の導体2に例えば各電線30を介して電気的に接続されている。つまり、発光部10は、ケーブル1F自体から給電されている。
【0040】
尚、交流電源部21の供給電源値(AC200V)は、一例である。
【0041】
図8(a)は第1〜第4実施形態に係る発光部19の発光層が有機発光材である場合の給電例を示す概略側面図、図8(b)はその概略断面図である。
【0042】
図8(a)、(b)に示すように、ケーブル1Gは、その一端が船外、車外に設置される電源部20の交流電源部(AC200V、100V等)21に、他端が給電を行う船や車両側に接続される。電源部20は交流電源21の他に直流電源部(DC5V)22を有する。ケーブル1Fは、各絶縁層3で覆われた二本の導体2と、発光部10とを備えている。発光部10の構成は、第1〜第4実施形態のものであり、その発光層が有機発光材で形成されている。発光部10の裏面電極と透明電極は直流電源部22に例えば各電線30を介して電気的に接続されている。つまり、発光部10は、直流電源部22より給電されている。
【0043】
尚、交流電源部21の供給電源値(AC200V、100V等)、及び、直流電源部22の供給電源値(5V)は、一例である。
【0044】
図9(a)は第5実施形態に係る防食被覆5Aの防食発光層への給電例を示す側面図、図9(b)はその断面図である。
【0045】
図9(a)、(b)に示すように、ケーブル1Hは、その一端が船外、車外に設置される電源部の交流電源部(AC200V、100V等)21に、他端が給電を行う船や車両側に接続される。電源部20は交流電源21の他に直流電源部(DC5V)22を有する。ケーブル1Hは、絶縁被覆4で覆われた二本の導体2と、防食被覆5Aとを備えている。防食被覆5Aの構成は、第5実施形態のものである。その防食発光層は、有機発光材が含有されたものより形成されている。防食被覆5Aの陽極5bと陰極5cは直流電源部22に例えば各電線30を介して電気的に接続されている。つまり、防食被覆5Aは、直流電源部22より給電されている。
【0046】
尚、直流電源部22の供給電源値(5V)は、一例である。
【0047】
以上、各実施形態に係る発光部への給電例を示したように、各ケーブル1F〜1Hが電力供給用のものであり、必ず電源に接続されるものであるため、発光部への電力供給が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のケーブルは、送電ケーブル以外に、野鳥の送電線への衝突を防止する光るリング、工事現場等に置かれる表示灯等にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1A〜1H ケーブル
2 導体
3,3A 絶縁層
5a 溝
10 発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給用の導体と、前記導体の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁層と、前記導体から給電され、可撓性を有し、且つ、電圧の印加によって発光材が前記絶縁層の外方に向かって発光する発光部とを備えたことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
請求項1記載のケーブルであって、
前記発光部は、前記絶縁層の外面に配置されたことを特徴とするケーブル。
【請求項3】
請求項1記載のケーブルであって、
前記発光部は、前記絶縁層の溝に埋設されたことを特徴とするケーブル。
【請求項4】
電力供給用の導体と、前記導体の外周側に配置され、可撓性を有する絶縁性材料で形成された絶縁層とを備え、
前記絶縁層には、前記導体から給電され、電圧の印加によって発光する有機発光材が含有されたことを特徴とするケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−23293(P2011−23293A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169017(P2009−169017)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】