説明

ゲスト材料を含む領域を有する有機層を形成する方法、およびそれを組入れる有機電子デバイス

有機電子デバイスは、ゲスト材料を含む第1の有機層を有する有機電子構成要素を含んでもよい。1つまたは複数の液体組成物を実質的に固体の第1の有機層の上に配置してもよい。各液体組成物は、ゲスト材料と、液体媒体とを含むことができる。液体媒体は、第1の有機層と相互作用して、溶液、分散液、エマルション、または懸濁液を形成してもよい。ゲスト材料のすべてではないとしてもほとんどが有機層中に移行して、有機層内の領域の電子特徴または電子放射特徴を局所的に変えることができる。第2の有機層を第1の有機層の少なくとも一部の上に蒸着してもよい。第2の有機層は、青色光を発することができる少なくとも1つの有機材料を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、有機材料および有機電子デバイスに関し、より詳細には、ゲスト材料を含む領域を有する有機材料、および有機層を形成するためのプロセス、およびそのような有機層を組入れる有機電子デバイス、およびそのようなデバイスを使用するためのプロセスに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
これは、2003年11月10日に出願された出願第10/705,321号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
近年、有機電子デバイスがますます注目されている。有機電子デバイスの例としては、有機発光ダイオード(「OLED」)が挙げられる。フルカラーOLEDの製造における現在の研究は、カラーピクセルを製造するための費用効果的高処理量プロセスの開発の方に向けられる。モノクロディスプレイの製造の場合、スピンコーティングプロセスが広く採用されている。しかし、フルカラーディスプレイの製造は、通常、モノクロディスプレイの製造で用いられる手順への特定の修正を必要とする。たとえば、フルカラー画像を有するディスプレイを製造するために、各ディスプレイピクセルが3つのサブピクセルに分けられ、各々が、3つの主色、すなわち、赤色、緑色、および青色のうちの1つを発する。フルカラーピクセルの3つのサブピクセルへのこの分割は、OLEDディスプレイの製造の間、異なった有機ポリマー材料を1つの基板上に堆積させるための現在のプロセスを修正する必要をもたらしている。
【0004】
有機材料層を基板上に堆積させるための1つのそのようなプロセスは、インクジェット印刷である。図1を参照すると、第1の電極120(たとえば、アノード)が基板100の上に形成される。さらに、ピクセルおよびサブピクセルを形成するために、ウェル構造130が基板100上に形成されて、インク滴を基板100上の特定の位置に閉じ込める。ウェル構造130は、典型的には、厚さ2〜5ミクロンであり、電気絶縁体から製造される。電荷輸送層140(たとえば、正孔輸送層)および有機活性層150を、順次、層140および150の各々を第1の電極120の上にインクジェット印刷することによって形成してもよい。
【0005】
1つまたは複数のゲスト材料を有機活性層150と混合してもしなくてもよい。たとえば、図1の左側に最も近いウェル構造130の間の有機活性層150が、赤色ゲスト材料を含んでもよく、図1の中心に近いウェル構造130の間の有機活性層150が、緑色ゲスト材料を含んでもよく、図1の右側に最も近いウェル構造130の間の有機活性層150が、青色ゲスト材料を含んでもよい。ウェル構造130は、ディスプレイの開口率を低減する傾向があり、したがって、ディスプレイの使用者によって見られるような十分な発光強度を達成するために、より高い電流が必要である。
【0006】
代替プロセスにおいて、電荷輸送層140および有機活性層150を、ウェル構造を伴ってまたは伴わずに形成してもよい。異なったゲスト材料を有するインクを有機活性層150の領域上に配置してもよい。インクは共役ポリマーを含んでもよい。インクを有機活性層150上に配置した後、ゲスト材料を、上にあるポリマーから有機活性層150中に駆動するために拡散工程を行う。第2の電極(図示せず)を有機活性層150およびインクの上に形成する。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,356,429号明細書
【特許文献2】米国特許第4,539,507号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0121638号明細書
【特許文献4】米国特許第6,459,199号明細書
【特許文献5】米国特許第5,247,190号明細書
【特許文献6】米国特許第5,408,109号明細書
【特許文献7】米国特許第5,317,169号明細書
【特許文献8】国際公開第02/02714号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2001/0019782号明細書
【特許文献10】EP 1191612号明細書
【特許文献11】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献12】国際公開第02/31896号パンフレット
【特許文献13】EP 1191614号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのようなプロセスによって形成される有機電子デバイスのためのこのプロセスを用いるとき、多くの問題が生じる。第1に、ゲスト材料のほとんどが有機活性層150中に拡散しない。典型的には、インクからのゲスト材料の25%以下が有機活性層150中に拡散される。したがって、ゲスト材料のほとんどが有機活性層150の外側にある。
【0009】
第2に、このインク拡散プロセスを用いて形成された有機電子構成要素は、劣った効率を有する。比較の基礎として、有機活性層を基板の上に形成する前、同じホスト材料(有機活性層150として)およびゲスト材料を混合してもよい。ホスト材料とゲスト材料との組合せをスピンコーティングし、その後処理して、有機電子構成要素を形成してもよい。スピンコーティングされた有機電子構成要素は、対応する従来の有機電子構成要素と呼ばれ、というのは、有機活性層が、拡散された構成要素と同じホスト材料およびゲスト材料を有するからである。インク拡散プロセスによって形成された有機電子構成要素は、それらの対応する従来の有機電子構成要素より低い効率を有する。より低い効率によって、インク拡散プロセスを用いて形成された有機電子構成要素は、市販のディスプレイのために使用されるには低すぎる強度を有する。
【0010】
第3に、拡散プロセスは、ゲスト材料濃度の非常に不均一な分布を引起し、有機電子デバイスで、電極間の高い濃度勾配(濃度の変化を距離で割ったもの)をもたらす。第2の電極に近い有機活性層150内のゲスト材料濃度は、典型的には、少なくとも2であり、通常、第1の電極120に近い有機活性層150内のゲスト材料濃度より数桁高い。高いゲスト材料濃度勾配は、ディスプレイを、特に経時的に、使用することをほとんど不可能にする。第1の電極と第2の電極との間の電位差を変えると、有機活性層150内の電子および正孔の再結合の位置も変わり、第1の電極120により近くまたは第1の電極120からより遠く移動する(電位差の相対変化によって)。再結合が第2の電極により近い場合、より多いゲスト材料が再結合位置に存在する。再結合が第1の電極120により近い場合、より少ないゲスト材料が再結合位置に存在する。
【0011】
有機活性層150中のゲスト材料濃度勾配は、第1の電極と第2の電極との間の電位差が変化すると、異なったスペクトルが有機電子構成要素から発されることを引起す。より高い強度が、典型的には、電流を増加させることによって達成され、これは、典型的には、第1の電極と第2の電極との間の電位差を増加させることによって生じることに留意されたい。したがって、1つの色(すなわち、「グレースケール」)の強度制御が困難であり、というのは、発光スペクトルが強度の変化とともにシフトし、これらの両方が、第1の電極と第2の電極との間の電位差の変化によって引起されるからである。
【0012】
構成要素が老化するにつれて、同じ強度のために必要な電流の量は、典型的には増加する。ホスト材料が青色光を発することができる場合、強度が経時的に衰え、電流が増加される(強度を経時的に比較的一定に保とうするために)につれて、赤色および緑色ドープピクセルの発光は、それらの初期の特徴的な発光に対してより青色になることがある。
【0013】
第4に、インク拡散プロセスは、有機活性層150の厚さに対する感度のため、製造に用いることがほとんど不可能である。厚さの比較的小さい変化が、有機活性層150内のゲスト材料濃度プロファイルに大きい影響を与えることがある。ディスプレイの場合、製造プロセスの間の有機活性層150の厚さの変化によって、使用者が、ディスプレイからディスプレイへの、またはさらには1つのディスプレイのアレイ内の変化を観察する。
【0014】
異なった従来のプロセスが、蒸気または固相拡散プロセスを用いる。両方のプロセスに、先に説明された同様の問題がある。拡散が、ゲスト材料の濃度を層の厚さ全体にわたってより均一にするのに十分に長い(すなわち、電極間の濃度勾配を低減する)場合、横方向の拡散が大きすぎ、低い解像度をもたらすことがあり、というのは、ピクセルは大きい必要があるからである。あるいは、横方向の拡散を高解像度のための受入れられるレベルに保つことができる場合、有機層の厚さ全体にわたるドーピング濃度勾配が受入れられないほど大きいことがある。いくつかの場合、両方の問題が生じることがある(すなわち、厳しすぎる有機電子デバイスの電極間の濃度勾配を有しながら、受入れられないほど大きい横方向の拡散)。
【課題を解決するための手段】
【0015】
有機層を形成するための方法であって、少なくとも1つの有機材料を含む第1の有機層を基板の上に形成する工程と、第1の液体組成物を第1の有機層の第1の部分の上に配置することによって、少なくとも1つのゲスト材料を第1の有機層中に組入れる工程とを含む方法を提供する。第1の液体組成物は、少なくとも、第1のゲスト材料と、第1の液体媒体とを含む。第1の液体組成物は第1の有機層と接触し、実質的な量の第1のゲスト材料が第1の有機層中に移行する。この方法は、第2の有機層を第1の有機層の少なくとも一部の上に蒸着する工程をさらに含む。第2の有機層は、青色光を発することができる少なくとも1つの有機材料を含む。
【0016】
別の実施形態において、有機電子デバイスが、基板と、基板の上にある第1の連続有機層とを含む。第1の連続有機層は第1の部分および第2の部分を含む。有機電子デバイスは、また、第1のゲスト材料を含む。実質的な量の第1のゲスト材料が第1の連続有機層内にある。第1のゲスト材料の少なくとも一部が第1の部分内にあり、第2の部分が、第1のゲスト材料を実質的に含まない。有機電子デバイスは、基板の上にある第2の連続有機層をさらに含む。第2の連続有機層は第3の部分および第4の部分を含む。有機電子デバイスは第2のゲスト材料をさらに含む。実質的な量の第2のゲスト材料が第2の連続有機層内にある。第2のゲスト材料の少なくとも一部が第3の部分内にあり、第4の部分が、第2のゲスト材料を実質的に含まない。
【0017】
先の一般的な説明および次の詳細な説明は、例示および説明にすぎず、特許請求の範囲に規定されるような本発明を限定するものではない。
【0018】
本発明を、添付の図において、限定ではなく例として示す。
【0019】
当業者は、図の要素が、簡単かつ明確にするために示されており、必ずしも同じ割合で描かれていないことを理解する。たとえば、本発明の実施形態の理解を向上させるのを助けるために、図の要素のいくつかの寸法を他の要素に対して誇張することがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、少なくとも1つのゲスト材料を有機層中に組入れるための方法を提供する。この方法は、液体組成物を有機層の一部の上に配置する工程を含む。液体組成物は、少なくともゲスト材料と、液体媒体とを含む。液体組成物は有機層と接触し、実質的な量のゲスト材料が有機層中に移行する。別の実施形態において、この方法を逆にすることができる(ゲスト材料の上に形成された有機層。そのような方法を用いて有機電子デバイスを形成してもよい。
【0021】
別の態様において、有機電子デバイスは、基板の第1の部分および第2の部分の上にある連続有機層を含む。第1のゲスト材料が連続有機層内に実質的に完全にある。第1のゲスト材料の少なくとも一部が第1の部分内にあり、第1のゲスト材料の実質的に少しも連続有機層の第2の部分内にない。有機電子デバイス内の有機電子構成要素が、第1の電極と、第2の電極と、連続有機層の第1の部分とを含むが、連続有機層の第2の部分を含まない。そのような有機電子デバイスを使用するための方法が、有機電子構成要素の第1および第2の電極を第1の電位差にバイアスする工程を含む。有機電子構成要素は、第1の発光最大における放射線を放出するか、第1の波長における放射線に応答する。この方法は、有機電子構成要素の第1および第2の電極を、第1の電位と著しく異なった第2の電位差にバイアスする工程をさらに含む。第1の電子構成要素は、実質的に第1の発光最大における放射線を放出するか、実質的に第1の波長における放射線に応答する。
【0022】
さらなる態様において、有機層を形成するための方法が、少なくとも1つの有機材料を含む第1の有機層を基板の上に形成する工程と、第1の液体組成物を第1の有機層の第1の部分の上に配置することによって、少なくとも1つのゲスト材料を第1の有機層中に組入れる工程とを含む。第1の液体組成物は、少なくとも、第1のゲスト材料と、第1の液体媒体とを含む。第1の液体組成物は第1の有機層と接触し、実質的な量の第1のゲスト材料が第1の有機層中に移行する。この方法は、第2の有機層を第1の有機層の少なくとも一部の上に蒸着する工程をさらに含む。第2の有機層は、青色光を発することができる少なくとも1つの有機材料を含む。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかであろう。詳細な説明は、最初に、用語の定義および明確化を扱い、次いで、液体組成物、液体組成物の導入前の製造、液体組成物の導入、製造の残り、代替実施形態、有機電子デバイスの電子動作、利点、および最後に実施例を扱う。
【0024】
(1.用語の定義および明確化)
以下で説明される実施形態の詳細を扱う前、いくつかの用語を定義または明確化する。ここで使用されるように、層または材料に言及するときの「活性」という用語は、電子特性、電子放射特性、またはそれらの組合せ示す層または材料を意味することが意図される。活性層材料は、放射線を放出してもよいし、放射線に応答するとき、電子−正孔対の濃度の変化を示してもよい。
【0025】
「アレイ」、「周辺回路」、および「遠隔回路」という用語は、有機電子デバイスの異なった領域または構成要素を意味することが意図される。たとえば、アレイは、整然とした配列(通常、列および行で示される)内のいくつかのピクセル、セル、または他の構造を含んでもよい。アレイ内のピクセル、セル、または他の構造を、アレイと同じ有機電子デバイス内であるがアレイ自体の外側にあってもよい周辺回路によって局所的に制御してもよい。遠隔回路は、典型的には、周辺回路から離れてあり、信号をアレイに送るかアレイから信号を受けることができる(典型的には周辺回路を介して)。遠隔回路は、また、アレイに無関係の機能を行ってもよい。遠隔回路は、アレイを有する基板上に存在してもしなくてもよい。
【0026】
層に言及するときの「連続」という用語は、層の途切れが少しもなく基板全体または基板の一部(たとえば、アレイ)を被覆する層を意味することが意図される。連続層が、層に途切れまたは間隙がない場合、別の部分より局所的に薄い部分を有してもよく、依然として連続していてもよいことに留意されたい。
【0027】
「発光最大」という用語は、放出される放射線の最高強度を意味することが意図される。発光最大は、対応する波長または波長スペクトル(たとえば、赤色光、緑色光、または青色光)を有する。
【0028】
層材料に言及するときの「フィルタ」という用語は、放射線放出層または放射線検知層と別個の層または材料を意味することが意図され、フィルタは、そのような層または材料を通過する放射線の波長を制限するために使用される。たとえば、赤色フィルタ層が、実質的に可視光スペクトルからの赤色光のみが赤色フィルタ層を通過することを可能にしてもよい。したがって、赤色フィルタ層は、緑色光および青色光をフィルタリング除去する。
【0029】
「ゲスト材料」という用語は、ホスト材料を含む層内の材料であって、そのような材料がないときの層の電子特徴または放射線放出、受容、もしくはフィルタリングの波長と比較して、層の電子特徴または放射線放出、受容、もしくはフィルタリングの目標波長を変える材料を意味することが意図される。
【0030】
「ホスト材料」という用語は、ゲスト材料を加えてもよい、通常層の形態の材料を意味することが意図される。ホスト材料は、電子特徴、または放射線を放出するか、受けるか、フィルタリングする能力を有しても有さなくてもよい。
【0031】
「最大動作電位差」という用語は、放射線放出構成要素の通常の動作の間の、放射線放出構成要素の電極間の電位の最大差を意味することが意図される。
【0032】
「移行する」という用語およびその変形は、外部電界を使用しない、層または材料中へのまたは内への移動と広く解釈されることが意図され、溶解、拡散、乳化、および懸濁(懸濁液のため)を網羅する。「移行する」は、イオン注入を網羅しない。
【0033】
「有機電子デバイス」という用語は、1つまたは複数の有機活性層または材料を含むデバイスを意味することが意図される。有機電子デバイスは、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、フラットパネルライト、またはダイオードレーザ)、(2)少なくとも部分的に環境条件への応答に基いて信号を発生し、検出のためにまたは他の論理動作を行うために使用されるエレクトロニクスを含んでも含まなくてもよいデバイス(たとえば、光検出器(たとえば、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管)、IR検出器、バイオセンサ)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機活性層を含む1つまたは複数の電子構成要素を含むデバイス(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含む。
【0034】
「精密堆積技術」という用語は、1つまたは複数の材料を、基板の上に、約1ミリメートル以下の、基板の図(plan)から見られるような寸法で、堆積させることができる堆積技術を意味することが意図される。ステンシルマスク、フレーム、ウェル構造、パターニングされた層、または他の構造が、そのような堆積の間存在してもよい。
【0035】
「主面」という用語は、電子構成要素が製造される基板の表面を指す。
【0036】
「室温」という句は、約20〜25℃の範囲内の温度を意味することが意図される。
【0037】
「実質的な量」という用語は、質量ベースで、元の量の少なくとも3分の1を意味することが意図される。たとえば、実質的な量のゲスト材料が有機層内にあるとき、有機層の上に配置された滴中のゲスト材料(ゲスト材料の元の量)の少なくとも3分の1が、その有機層内にある。
【0038】
「実質的に完全に」という用語は、材料、層、または構造が、そのような材料、層、または構造の、体積ベースのわずかな量の可能な例外を伴って、異なった層または異なった構造内に完全にあることを意味することが意図される。
【0039】
特定の材料に言及するときの「実質的にない」という用語は、微量の特定の材料が存在するが、特定の材料が存在する異なった材料の電気または放射(放出、受容、透過、またはそれらのいかなる組合せ)特性に著しくに影響を及ぼす量で存在しないことを意味することが意図される。
【0040】
層、材料、または組成物に言及するときの「実質的に液体」という用語は、液体、溶液、分散液、エマルション、または懸濁液の形態の層または材料を意味することが意図される。実質的に液体の材料は、1つまたは複数の液体媒体を含むことができ、適切に保持されない場合、著しく流れることができる。
【0041】
層または材料に言及するときの「実質的に固体」という用語は、基板の上にある場合、少なくとも1時間室温で基板がその側で配置された(グラウンドに実質的に垂直に配向された基板の主面)ときに著しく流れない層または材料を意味することが意図される。
【0042】
「ウェル構造」という用語は、処理の間液体を閉じ込めるために使用される構造を指す。ウェル構造を、また、ダム、ディバイダ、またはフレームと呼んでもよい。
【0043】
ここで使用されるように、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、またはそれらのいかなる他の変形も、非排他的な包含を網羅することが意図される。たとえば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、必ずしもそれらの要素のみに限定されないが、明白に記載されていないか、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、そうでないと明白に記載されていない限り、「または」は、包含的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。たとえば、条件AまたはBが、次のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(または存在し)、かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)、かつBが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。また、単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および構成要素を説明するために使用される。これは、単に、便宜上、本発明の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれなければならず、単数形は、別様に意味されることが明らかでない限り、また、複数形を含む。
【0044】
元素の周期表内の列に対応する族番号は、CRC化学物理学便覧(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、第81版、(2000)に見られるような「新表記」法を使用する。
【0045】
特に規定されない限り、ここで使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。ここで説明される方法および材料と同様であるか等しい方法および材料を、本発明の実施またはテストに用いることができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。ここで挙げられる刊行物、特許出願、特許、および他の引例をすべて、それらの全体を引用により援用する。抵触の場合には、定義を含む本明細書は調整する(control)。さらに、材料、方法、および例は、例示にすぎず、限定することは意図されていない。
【0046】
ここで説明されない程度に、特定の材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は、従来のものであり、有機発光ダイオードディスプレイ技術、光検出器技術、光起電力技術、および半導体技術の範囲内のテキストブックおよび他のソースに見出されるであろう。
【0047】
(2.液体組成物)
本明細書において教示されるような概念を、有機電子デバイスに適用して、1つまたは複数のゲスト材料の実質的な量が、少なくとも1つのホスト材料を含む有機層内に少なくとも部分的に組入れられた1つまたは複数の層を形成することができる。一実施形態において、実質的な量が、少なくとも約40パーセントであり、別の実施形態において、少なくとも約50パーセントである。さらなる実施形態において、1つまたは複数のゲスト材料の実質的にすべてを組入れてもよい。組入れプロセスの間、ウェル構造が存在してもしなくてもよい。より詳細には、1つまたは複数のゲスト材料と、液体媒体とを含む1つまたは複数の液体組成物が、溶液、分散液、エマルション、または懸濁液の形態であってもよい。
【0048】
このパラグラフは、有機層と液体組成物との間の1つの相互作用の説明を含む。有機層が、基板の上にある層であることができることに留意されたい。あるいは、基板は存在しなくてもよいし、有機層は基板である。このパラグラフの説明が、理解を簡単にするために、1つのゲスト材料を有する液体組成物に言及するが、1つを超えるゲスト材料を使用してもよく、分散液エマルション、または懸濁液のための原理は同様である。あるいは、液体組成物は、また、1つまたは複数のゲスト材料に加えて、また有機層中に存在するホスト材料を含んでもよい。液体組成物を、ゲスト材料が有機層中に移行するべきである精密な領域の上に配置してもよい。液体組成物の液体媒体は、有機層と、溶液、分散液、エマルション、または懸濁液を形成して、有機層を、実質的に固体状態から、そのような溶液、分散液、エマルション、または懸濁液の形態の実質的に液体状態に変えることができる。有機層は、液体組成物のために使用される液体媒体と良好な混和性特徴を有する。液体媒体が、有機層の局所化領域を実質的に液体状態に変えると、ゲスト材料は有機層中に移行することができる。予想外に、ゲスト材料のほとんどが有機層中に移行する。一実施形態において、液体組成物からのゲスト材料の実質的にすべてが、有機層中に移行する。ゲスト材料は、有機層の電子特徴から放出されるか、有機層の電子特徴によって応答されるか、有機層の電子特徴を通って透過される放射線をもたらす。
【0049】
有機層を形成するためのホスト材料は、有機電子デバイスの用途、および有機電子デバイス内の有機層の使用に基いて変わる。有機層の少なくとも一部を、放射線放出有機活性層、放射線応答有機活性層、フィルタ層、または電子構成要素内の層(たとえば、抵抗器、トランジスタ、キャパシタなどの少なくとも一部)として使用してもよい。
【0050】
放射線放出有機活性層の場合、適切な放射線放出ホスト材料としては、1つまたは複数の小分子材料、1つまたは複数のポリマー材料、またはそれらの組合せが挙げられる。小分子材料としては、たとえば、米国特許公報(特許文献1)(「タン(Tang)」)、米国特許公報(特許文献2)(「バン・スライク(Van Slyke)」)、米国特許公報(特許文献3)(「グルシン(Grushin)」)、および米国特許公報(特許文献4)(「キド(Kido)」)に記載されたものを挙げてもよい。あるいは、ポリマー材料としては、米国特許公報(特許文献5)(「フレンド(Friend)」)、米国特許公報(特許文献6)(「ヒーガー(Heeger)」)、および米国特許公報(特許文献7)(「ナカノ(Nakano)」)に記載されたものを挙げてもよい。例示的な材料は半導性共役ポリマーである。そのようなポリマーの例としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)(PPV)、PPVコポリマー、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(PVK)などが挙げられる。1つの特定の実施形態において、ゲスト材料が少しもない放射線放出活性層が、青色光を発してもよい。
【0051】
放射線応答有機活性層の場合、適切な放射線応答ホスト材料としては、多くの共役ポリマーおよびエレクトロルミネセンス材料を挙げてもよい。そのような材料としては、たとえば、多くの共役ポリマーならびにエレクトロルミネセンス材料およびフォトルミネセンス材料が挙げられる。特定の例としては、ポリ(2−メトキシ,5−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(「MEH−PPV」)、およびCN−PPVとのMEH−PPV複合体が挙げられる。
【0052】
フィルタ層の位置は、有機活性層と有機電子デバイスの使用者側との間であってもよい。フィルタ層は、基板、電極(たとえば、アノードまたはカソード)、電荷輸送層の一部であってもよいし、基板、電極、電荷輸送層のいずれか1つまたは複数の間にあってもよいし、またはそれらのいかなる組合せであってもよい。別の実施形態において、フィルタ層は、別々に製造され(基板に取付けられない間)、有機電子デバイス内の電子構成要素を製造する前、間、または後、いつでも、後で基板に取付けられる層であってもよい。この実施形態において、フィルタ層は、基板と有機電子デバイスの使用者との間にあってもよい。
【0053】
フィルタ層が、基板と別個であるか基板の一部であるか、基板と基板に最も近い電極との間にある場合、適切なホスト材料としては、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレン);ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート);ポリイミド;ポリアミド;ポリアクリロニトリルおよびポリメタクリロニトリル;ペルフルオロ化および部分フッ素化ポリマー(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、またはテトラフルオロエチレンとポリスチレンとのコポリマー);ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリウレタン;アクリル酸またはメタクリル酸のエステルのホモポリマーおよびコポリマーを含むポリアクリル樹脂;エポキシ樹脂;ノボラック樹脂;ならびにそれらの組合せを含む多くの異なった有機材料が挙げられる。
【0054】
フィルタ層が正孔輸送層の一部である場合、適切なホスト材料としては、ポリアニリン(「PANI」)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)、テトラチアフルバレンテトラシアノキノジメタン(TTF−TCQN)などの有機電荷移動化合物、キド(Kido)に記載されているような正孔輸送材料、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0055】
フィルタ層が電子輸送層の一部である場合、適切なホスト材料としては、金属キレート化オキシノイド(oxinoid)化合物(たとえば、Alq);フェナントロリンベースの化合物(たとえば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」));アゾール化合物(たとえば、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」)、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」);キド(Kido)に記載されているような電子輸送材料;およびそれらの組合せが挙げられる。
【0056】
抵抗器、トランジスタ、キャパシタなどの電子構成要素の場合、有機層は、チオフェン(たとえば、ポリチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)、アルキルチオフェン、ビス(ジチエンチオフェン(dithienthiophene))、アルキルアントラジチオフェンなど)、ポリアセチレン、ペンタセン、フタロシアニン、およびそれらの組合せの1つまたは複数を含んでもよい。
【0057】
ゲスト材料は、エレクトロルミネセンス層、電荷輸送(たとえば、正孔輸送、電子輸送)層のために使用されるすべての既知の材料、または有機活性層のために使用される他の材料のいずれか1つまたは複数、およびそれらの対応するドーパントを含むことができる。そのようなゲスト材料としては、有機染料、有機金属材料、ポリマー(共役、部分共役、または非共役)、およびそれらの組合せを挙げることができる。ゲスト材料は、蛍光特性または燐光特性を有しても有さなくてもよい。
【0058】
有機染料の例としては、4−ジシアンメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチアミノスチリル(dimethyaminostyryl))−4H−ピラン(DCM)、クマリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、それらの誘導体、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0059】
有機金属材料の例としては、少なくとも1つの金属に配位結合された官能基を含む官能基化ポリマーが挙げられる。使用のために企図される例示的な官能基としては、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸塩、OH部分を有する基、アミン、イミン、ジイミン、N−オキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシド、β−ジカルボニル基、およびそれらの組合せが挙げられる。使用のために企図される例示的な金属としては、ランタニド金属(たとえば、Eu、Tb)、7族金属(たとえば、Re)、8族金属(たとえば、Ru、Os)、9族金属(たとえば、Rh、Ir)、10族金属(たとえば、Pd、Pt)、11族金属(たとえば、Au)、12族金属(たとえば、Zn)、13族金属(たとえば、Al)、およびそれらの組合せが挙げられる。そのような有機金属材料としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq)などの金属キレート化オキシノイド化合物;(特許文献8)に開示されているような、イリジウムと、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子との錯体などのシクロメタル化(cyclometalated)イリジウムおよび白金エレクトロルミネセンス化合物、ならびに、たとえば、公開された米国特許公報(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、および(特許文献13)に記載された有機金属錯体;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0060】
共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
フルカラー有機電子デバイスの製造のために使用される場合、一実施形態において、第1のゲスト材料が、赤色光(600〜700nmの範囲内の発光最大を有する)を発するように選択され、第2のゲスト材料が、緑色光(500〜600nmの範囲内の発光最大を有する)を発するように選択される。液体組成物の各々の配置後、各ピクセル列は3つのサブピクセルを含み、1つのサブピクセルが赤色光を発し、1つのサブピクセルが緑色光を発し、1つのサブピクセルが青色光(400〜500nmの範囲内の発光最大を有する)を発する。あるいは、1つまたは複数のゲスト材料を、1つの液体組成物中に含有し、堆積させて、より広い発光スペクトルを有する、たとえば、100nmより大きい半値全幅(Full Width Half Maximum)(FWHM)を有するピクセルまたはサブピクセルを形成することができるか、400から700nmの可視スペクトルを網羅する発光プロファイルを有する白色光を発するように選択することさえできる。
【0062】
1つまたは複数の液体媒体を液体組成物中に使用してもよい。本発明の実施での使用のために企図される液体媒体は、ゲスト材料、およびゲスト材料を受ける有機層の両方のための適切な溶液特徴をもたらすように選択される。液体媒体を選択するときに考慮されるべき要因としては、たとえば、結果として生じる溶液、エマルション、懸濁液、または分散液の粘度、ポリマー材料の分子量、固形分ローディング、液体媒体のタイプ、液体媒体の蒸気圧力、下にある基板の温度、ゲスト材料を受ける有機層の厚さ、またはそれらのいかなる組合せも挙げられる。
【0063】
液体媒体を選択するとき、特定の液体媒体が、1つのタイプの有機層と、溶液、エマルション、懸濁液、または分散液を形成してもよいが、必ずしも、別のタイプの有機層と、溶液、エマルション、懸濁液、または分散液を形成しなくてもよい。たとえば、特定の液体媒体が、有機活性層250と、溶液、エマルション、懸濁液、または分散液を形成してもよいが、電荷輸送層240と、溶液、エマルション、懸濁液、または分散液を形成しなくてもよい。液体媒体は、ゲスト材料またはホスト材料の有機活性層250中への移行の所望のレベルの前に蒸発しないように、十分に低い蒸気圧力を有する。
【0064】
いくつかの実施形態において、液体媒体は、少なくとも1つの有機溶媒を含む。例示的な有機溶媒としては、ハロゲン化溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、環状エーテル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド溶媒、アミド溶媒、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0065】
例示的なハロゲン化溶媒としては、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ビス(2−クロロエチル)エーテル、クロロメチルエチルエーテル、クロロメチルメチルエーテル、2−クロロエチルエチルエーテル、2−クロロエチルプロピルエーテル、2−クロロエチルメチルエーテル、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0066】
例示的な炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレン、石油エーテル、リグロイン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0067】
例示的な芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン(イソ−プロピルベンゼン)メシチレン(トリメチルベンゼン)、エチルトルエン、ブチルベンゼン、シメン(イソ−プロピルトルエン)、ジエチルベンゼン、イソ−ブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0068】
例示的なエーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジソプロピル(disopropyl)エーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、グリム、ジグリム、ベンジルメチルエーテル、イソクロマン(isochroman)、2−フェニルエチルメチルエーテル、n−ブチルエチルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、sec−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n−ヘキシルメチルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、メチルn−プロピルエーテル、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0069】
適切な例示的な環状エーテル溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、4−メチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジヒドロフラン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0070】
例示的なアルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール(すなわち、イソ−ブタノール)、2−メチル−2−プロパノール(すなわち、tert−ブタノール)、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、シクロペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルブタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0071】
アルコールエーテル溶媒も使用してもよい。例示的なアルコールエーテル溶媒としては、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0072】
例示的なケトン溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ−ブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルメチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、ジイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヘプタノン、イソ−アミルメチルケトン、3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2−メチルシクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、5−メチル−2−オクタノン、3−メチルシクロヘキサノン、2−シクロヘキセン−1−オン、4−メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、イソホロン、ベンジルアセトン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0073】
例示的なニトリル溶媒としては、アセトニトリル、アクリロニトリル、トリクロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ピバロニトリル、イソブチロニトリル、n−ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、2−メチルブチロニトリル、イソバレロニトリル、N−バレロニトリル、n−カプロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、n−ヘプタンニトリル、グリコロニトリル(glycolonitrile)、ベンゾニトリル、エチレンシアノヒドリン、スクシノニトリル、アセトンシアノヒドリン、3−n−ブトキシプロピオニトリル、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0074】
適切な例示的なスルホキシド溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0075】
適切な例示的なアミド溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アシルアミド、2−アセトアミドエタノール、N,N−ジメチル−m−トルアミド、トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルドデカンアミド、エプシロン−カプロラクタム、N,N−ジエチルアセトアミド、N−tert−ブチルホルムアミド、ホルムアミド、ピバルアミド、N−ブチルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−ホルミルエチルアミン、アセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、1−ホルミルピペリジン、N−メチルホルムアニリド、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0076】
企図されるクラウンエーテルとしては、本発明に従って処理される組合せの一部としてのエポキシ化合物出発材料の塩化物含有量の低減を助けるように機能することができるすべてのクラウンエーテルが挙げられる。例示的なクラウンエーテルとしては、ベンゾ−15−クラウン−5;ベンゾ−18−クラウン−6;12−クラウン−4;15−クラウン−5;18−クラウン−6;シクロヘキサノ−15−クラウン−5;4’,4”(5”)−ジtert−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6;4’,4”(5”)−ジtert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6;ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6;ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8;4’−アミノベンゾ−15−クラウン−5;4’−アミノベンゾ−18−クラウン−6;2−(アミノメチル)−15−クラウン−5;2−(アミノメチル)−18−クラウン−6;4’−アミノ−5’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5;1−アザ−12−クラウン−4;1−アザ−15−クラウン−5;1−アザ−18−クラウン−6;ベンゾ−12−クラウン−4;ベンゾ−15−クラウン−5;ベンゾ−18−クラウン−6;ビス((ベンゾ−15−クラウン−5)−15−イルメチル)ピメレート;4−ブロモベンゾ−18−クラウン−6;(+)−(18−クラウン−6)−2,3,11,12−テトラ−カルボン酸;ジベンゾ−18−クラウン−6;ジベンゾ−24−クラウン−8;ジベンゾ−30−クラウン−10;ar−ar’−ジ−tert−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6;4’−ホルミルベンゾ−15−クラウン−5;2−(ヒドロキシメチル)−12−クラウン−4;2−(ヒドロキシメチル)−15−クラウン−5;2−(ヒドロキシメチル)−18−クラウン−6;4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5;ポリ−[(ジベンゾ−18−クラウン−6)−コ−ホルムアルデヒド];1,1−ジメチルシラ(dimethylsila)−11−クラウン−4;1,1−ジメチルシラ−14−クラウン−5;1,1−ジメチルシラ−17−クラウン−5;シクラム(cyclam);1,4,10,13−テトラチア−7,16−ジアザシクロオクタデカン;ポルフィン;およびそれらの組合せが挙げられる。
【0077】
別の実施形態において、液体媒体としては水が挙げられる。水不溶性コロイド形成ポリマー酸と複合された(complexed)導電性ポリマーを、基板上に堆積させ、電荷輸送層として使用することができる。
【0078】
多くの異なった種類の液体媒体(たとえば、ハロゲン化溶媒、炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、水など)を上述した。異なった種類からの1つを超える液体媒体の混合物も使用してもよい。
【0079】
(3.液体組成物の導入前の製造)
ここで、注意を、図2〜5に説明され示された例示的な実施形態の詳細に向ける。図2を参照すると、第1の電極220が基板200の部分の上に形成される。基板200は、有機電子デバイス技術において使用されるような従来の基板であってもよい。基板200は、可撓性または剛性、有機または無機であることができる。一般に、ガラスまたは可撓性有機フィルムが使用される。ピクセルドライバおよび他の回路を、従来の技術を用いて基板200内にまたは基板200の上に形成してもよい。アレイの外側の他の回路(図示せず)としては、アレイ内のピクセルを制御するために使用される周辺回路および遠隔回路を挙げてもよい。製造の焦点は、周辺回路または遠隔回路ではなくピクセルアレイにある。基板200は、約12〜2500ミクロンの範囲内の厚さを有することができる。
【0080】
第1の電極220は、アノードとして作用し、1つまたは複数の導電層を含んでもよい。基板200から最も遠い第1の電極220の表面は、高仕事関数材料を含む。この例示的な例において、第1の電極220は、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウムスズ、または有機電子デバイス内のアノードのために従来使用される他の材料の層の1つまたは複数を含む。この実施形態において、第1の電極220は、その後形成される有機活性層から放出されるかその後形成される有機活性層によって応答されるべき放射線の少なくとも70%を透過する。一実施形態において、第1の電極220の厚さは約100〜200nmの範囲内である。放射線が第1の電極220を通って透過される必要がない場合、厚さは、1000nmまでまたはさらに厚いなど、より大きくてもよい。
【0081】
第1の電極220は、従来のコーティング、キャスト、蒸着(化学または物理)、印刷(インクジェット印刷、スクリーン印刷、溶液分配(solution dispense)、またはそれらのいかなる組合せ)、他の堆積技術、またはそれらのいかなる組合せも含む、1つまたは複数のいかなる数の異なった技術を用いて形成してもよい。一実施形態において、第1の電極220を、パターニングされた層として(たとえば、ステンシルマスクを使用して)、または、層を基板200全体の上に堆積させ、従来のパターニング技術を用いることによって、形成してもよい。
【0082】
図2に示されているように、有機層230を第1の電極220の上に形成してもよい。有機層230は、1つまたは複数の層を含んでもよい。たとえば、有機層230は、電荷輸送層240と、有機活性層250とを含んでもよいし、電荷輸送層は、有機活性層250の両側に沿ってあってもよいし、電荷輸送層は、有機活性層250の下にあるのではなく上にあってもよいし、有機活性層250を、電荷輸送層240を伴わずに使用してもよい。電荷輸送層240が第1の電極220と有機活性層250との間にある場合、電荷輸送層240は正孔輸送層であり、電荷輸送層が、有機活性層250と、カソードとして作用するその後形成される第2の電極との間にある場合、電荷輸送層(図2に示されていない)は電子輸送層である。図2に示されているような実施形態は、正孔輸送層として作用する電荷輸送層240を有する。
【0083】
電荷輸送層240および有機活性層250は、第1の電極220の上に順次形成される。第1の電極220から有機活性層250への電荷の輸送を促進することに加えて、電荷輸送層240は、また、有機活性層250中への帯電キャリヤの注入を促進する電荷注入層、第1の電極220の上の平面化層、第1の電極220と有機活性層250との間のパッシベーション層または化学バリヤ層、またはそれらのいかなる組合せとして機能してもよい。電荷輸送層240および有機活性層250の各々は、以下で説明されるような適切な材料のための、スピンコーティング、キャスト、蒸着(化学または物理)、印刷(インクジェット印刷、スクリーン印刷、溶液分配、またはそれらのいかなる組合せ)、他の堆積、またはそれらのいかなる組合せも含む、1つまたは複数のいかなる数の異なった技術によって形成することができる。電荷輸送層240および有機活性層250の一方または両方を、堆積後、硬化させてもよい。
【0084】
電荷輸送層240が正孔輸送層として作用する場合、いかなる数の材料を使用してもよく(その選択は、デバイスおよび有機活性層250の材料による)、この例示的な例において、それは、ポリアニリン(「PANI」)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)、または有機電子デバイスに使用されるような正孔輸送層として従来使用される材料の1つまたは複数を含んでもよい。正孔輸送層は、典型的には、第1の電極220から隔置された位置において基板200の上で測定されるような約100〜250nmの範囲内の厚さを有する。
【0085】
有機活性層250の組成物は、典型的には、有機電子デバイスの用途による。図2に示された実施形態において、有機活性層250は放射線放出構成要素に使用される。有機活性層250は、有機電子デバイスの有機活性層として従来使用されるような材料を含むことができ、1つまたは複数の小分子材料、1つまたは複数のポリマー材料、またはそれらのいかなる組合せも含むことができる。本明細書を読んだ後、当業者は、有機活性層250のための、適切な材料、層、または両方を選択することができるであろう。
【0086】
形成されるように、有機層230(電荷輸送層240と、有機活性層250とを含む)は、形成されるべき有機電子構成要素のアレイの上で実質的に連続している。一実施形態において、有機層230は、周辺回路領域および遠隔回路領域を含む基板全体の上で実質的に連続していてもよい。有機層230が形成されることが意図される基板200の領域(たとえば、アレイ)の上で、有機層230が局所的により薄いが不連続でない領域を、有機層230が有することに留意されたい。図2を参照すると、電荷輸送層240および有機活性層250の一方または両方を含む有機層230は、第1の電極220の上で局所的により薄く、第1の電極220から離れて局所的により厚い。有機層230は、典型的には、第1の電極220から隔置された位置において基板200の上で測定されるような約50〜500nmの範囲内の厚さを有する。
【0087】
有機電子デバイスが放射線放出マイクロキャビティデバイスである場合、所望の発光波長スペクトルが得られるように、有機層230の厚さを選択する際に注意しなければならない。
【0088】
別の実施形態において、図1に示されているようなウェル構造130と同様のウェル構造を形成することができる。この実施形態において、有機層230を基板200およびウェル構造の上に形成してもよい。有機層230が、ウェル構造の頂部に近い側に沿って局所的により薄くてもよいが、有機層230が、第1の電極220の間でウェル構造の上で不連続を有さないことに留意されたい。後で説明される図7および図8は、ウェル構造を使用することができるさらに別の実施形態を含む。
【0089】
代替実施形態において、有機層230は、厚さとともに変わる組成物を有する1つの層を含んでもよい。たとえば、第1の電極220に最も近い組成物が正孔輸送体(transporter)として作用してもよく、隣の組成物が有機活性層として作用してもよく、第1の電極220から最も遠い組成物が電子輸送体として作用してもよい。1つまたは複数の材料が、有機層の厚さのすべてにわたってまたは一部のみ存在してもよい。
【0090】
(4.液体組成物の導入)
図3に示されているように、1つまたは複数の液体組成物(円302および304として示されている)を有機層230の部分の上に配置してもよい。一実施形態において、有機活性層250は、青色光を発することができるホスト材料を含み、液体組成物302は赤色ゲスト材料を含んでもよく、液体組成物304は緑色ゲスト材料を含んでもよい。配置前、有機層230は、実質的に固体であってもなくてもよい。液体組成物302および304を、精密堆積技術を用いて有機層230の上に配置してもよい。そのような堆積の間、ステンシルマスク、フレーム、ウェル構造、パターニングされた層、または他の構造が存在してもよい。精密堆積技術の非限定的な例としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、溶液分配(平面図からわかるように、液体組成物をストリップまたは他の所定の幾何学的形状もしくはパターンで分配する)、針吸引、ステンシル(シャドー)マスクを使用する蒸着、選択的な化学蒸着、選択的なめっき、およびそれらの組合せが挙げられる。液体組成物302および304を、順次または同時に有機層230の上に配置してもよい。簡単にするため、図2の液体組成物302および304の各々を、液体組成物302および304が滴として導入されるか否かにかかわらず、「滴」と呼ぶ。液体組成物302および304によって影響される有機層230の初期領域に影響を及ぼすいくつかのパラメータを変えることができる。たとえば、そのようなパラメータは、滴体積、有機電子構成要素間の間隔、滴粘度、およびそれらのいかなる組合せからなる群から選択される。
【0091】
液体組成物302および304からの1つまたは複数の液体媒体は、有機層230と接触し、有機層230を実質的に固体状態から実質的に液体状態に変えることができる。各滴からの液体媒体が有機層230と接触すると、液体媒体は、有機層230の厚さの一部またはすべてを溶解して、溶液を形成するか、有機層230の厚さの一部またはすべてを分散させて、分散液を形成するか、エマルションを形成するか、有機層230の厚さの一部またはすべてを懸濁して、懸濁液を形成することができる。より多くの液体媒体が有機層230と相互作用すると、液体組成物と有機層230との「混合物」の粘度が増加することに留意されたい。増加された粘度は、効果的に、滴の横方向の移動(基板200の主面に実質的に平行な移動)を抑制する。一実施形態において、ゲスト材料の有機層230中への移行を、40℃以下の温度で行ってもよく、別の実施形態において、実質的に室温で行ってもよい。
【0092】
滴のために選択される体積は、有機層230またはその一部の厚さによって、有機層230内のホスト材料、またはそれらの組合せによって影響されることがある。一実施形態において、滴からのゲスト材料は、有機活性層250中に移行さえすればよい。滴体積が小さすぎる場合、有機活性層250の厚さすべてが影響されるわけではないことがある。また、有機活性層250内のゲスト材料濃度が低すぎる場合、目標輝度効率が達成されないかもしれない。動作の間、有機活性層250の発光または応答スペクトル放射線は、第1の電極と第2の電極との間の電位(電圧)差によって著しく影響されることがある。滴体積が大きすぎる場合、液体組成物の望まれない横方向の広がりが生じることがあり、ゲスト材料は隣の領域に達することがあり、そのような領域内のゲスト材料は望まれない。たとえば、赤色ドープ滴の体積が大きすぎる場合、それは、緑色または青色発光を有するべきである領域に入ることがある。そのようなことが起こった場合、隣の領域は赤色を発することがある。したがって、液体組成物の体積と有機層230の厚さとの比を用いてもよい。
【0093】
ウェル構造の使用は、横方向の移行の可能性を低減することができるが、液体組成物の体積は、液体組成物が隣接したウェル中に移行することがあるように、ウェル構造によって形成された「堤防」が氾濫するほどであってはならない。
【0094】
液体組成物302および304が有機層230の上に配置され、液体組成物302および304内の実質的な量(本明細書において後で扱われる)のゲスト材料が有機活性層250中に移行した後、液体組成物302および304の液体媒体を蒸発させて、ドープ領域402および404を有する有機層230を与える。この実施形態において、領域402は、赤色光を発するように設計され、領域404は、緑色光を発するように設計される。蒸発を、約20〜240℃の範囲内の温度で、約5秒から5分の範囲内の時間行ってもよい。一実施形態において、蒸発を、約30〜50℃の範囲内の温度で、約0.5〜1.5分の範囲内の時間行ってもよい。蒸発を、オーブンまたはホットプレートを使用して行ってもよい。蒸発をさまざまな圧力で行ってもよい。一実施形態において、蒸発を実質的に雰囲気圧力で行ってもよい。別の実施形態において、真空圧力(雰囲気圧力より著しく低い)を用いてもよい。真空が使用される場合、沸騰が生じた場合に有機層230内に永久的な気泡を発生させるか材料を隣接した領域に吐き出すことを回避するように注意しなければならない。
【0095】
蒸発後、領域402および404を含む有機層230は、実質的に固体である。このプロセスを用いて、実質的な量のゲスト材料を有機層230中に導入することができる。質量ベースで、有機層の上に配置される前に滴302および304中にあったゲスト材料の一方または両方の少なくとも3分の1が、領域402および404において有機層230中に移行する。他の実施形態において、滴302および304中にあったゲスト材料の、少なくとも約40パーセント、50パーセント、または実質的にすべてが、有機層230内にある。
【0096】
液体組成物302および304を有機層230の上に繰返して配置することによって、ゲスト材料を有機活性層250中に導入する場合、液体組成物の連続堆積間に液体媒体を完全に蒸発させることは必要でないであろう。
【0097】
有機活性層250が、架橋されるべきであるホスト材料を含む場合、有機活性層250を、スピンコーティング、キャスト、蒸着(化学または物理)、印刷((インクジェット印刷、スクリーン印刷、溶液分配、またはそれらのいかなる組合せ)、他の堆積技術、またはそれらのいかなる組合せも含む、1つまたは複数のいかなる数の異なった技術によって形成してもよい。加熱工程を用いて、堆積工程の間に使用された液体媒体があれば蒸発させて、有機活性層250を実質的に固体にしてもよい。しかし、温度または他の条件は、架橋が生じるほどアグレッシブであってはならない。液体組成物は、有機活性層250の上に配置され有機活性層250と接触することができ、組成物内のゲスト材料は、有機活性層250中に移行することができる。液体組成物のための液体媒体を蒸発させることができ、有機活性層250を、架橋を行うのに十分な条件に曝してもよい。用いられる実際の温度および圧力は、架橋のために使用される材料によってもよい。
【0098】
液体媒体は、液体媒体と有機層230との組合せによって形成される溶液、分散液、エマルション、または懸濁液として、ゲスト材料を有機層230中に「引く」のを助ける。したがって、液体組成物内の実質的な量のゲスト材料が、実質的な横方向の移行または拡散を伴わずに、第1の電極220の方に移行してもよい。有機層230の表面(その上に第2の電極がその後形成される)に近いゲスト材料の濃度は、反対側の表面(第1の電極220に近い)に近いゲスト材料の濃度と1桁未満異なることができる。有機活性層250の両側に近いゲスト材料の濃度は、互いにより近い。熱駆動工程が必要でない。第1の電極220とその後形成される第2の電極との間の濃度勾配(基板の主面に垂直な方向で測定された濃度勾配)は、従来の熱拡散プロセスによって形成された濃度勾配より低い。そのような技術によって形成された有機電子デバイスからの発光スペクトルは、第1の電極と第2の電極との間の電位差を変えることによって、著しく影響されないであろう。
【0099】
(5.製造の残り)
示されていないが、電子輸送層として作用する任意の電荷輸送層を、有機活性層250の上に形成してもよい。任意の電荷輸送層は、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)または有機電子デバイスの電子輸送層として従来使用される他の材料の少なくとも1つを含んでもよい。任意の電荷輸送層は、以下で説明されるような適切な材料のための、スピンコーティング、キャスト、蒸着(化学または物理)、印刷(インクジェット印刷、スクリーン印刷、溶液分配、またはそれらのいかなる組合せ)、他の堆積技術、またはいかなる組合せも含む、1つまたは複数のいかなる数の異なった技術によって形成することができる。電子輸送層は、典型的には、第1の電極220から隔置された位置において基板200の上で測定されるような約30〜500nmの範囲内の厚さを有する。
【0100】
図5に示されているように、第2の電極502が、電荷輸送層240と、有機活性層250とを含む有機層230の上に形成される。この特定の実施形態において、第2の電極502は、アレイのための共通カソードとして作用する。第2の電極502の表面は低仕事関数材料を含む。第2の電極502は、1族金属、2族金属、または有機電子デバイス内のカソードのために従来使用される他の材料の1つまたは複数を含む。
【0101】
第2の電極502は、従来のコーティング、キャスト、蒸着(化学または物理)、印刷(インクジェット印刷、スクリーン印刷、溶液分配、またはそれらのいかなる組合せ)、または他の堆積技術、またはそれらのいかなる組合せも含む、1つまたは複数のいかなる数の異なった技術を用いて形成してもよい。第2の電極502を、パターニングされた層として(たとえば、シャドーマスクを使用して)、または層をアレイ全体の上に堆積させ、従来のパターニングシーケンスを用いることによって、形成してもよい。第2の電極502は、約100〜2000nmの範囲内の厚さを有する。
【0102】
図5に示されていない他の回路を、いかなる数の先に説明された層または付加的な層を使用して形成してもよい。示されていないが、付加的な絶縁層および相互接続レベルを形成して、アレイの外側にあってもよい周辺領域の回路(図示せず)を考慮してもよい。そのような回路は、行または列デコーダ、ストローブ(たとえば、行アレイストローブ、列アレイストローブ)、またはセンス増幅器を含んでもよい。あるいは、そのような回路を、図5に示されたいかなる層の形成の前、間、または後、形成してもよい。
【0103】
乾燥剤524を有するリッド522が、アレイの外側の位置(図示せず)で基板200に取付けられて、実質的に完成したデバイスを形成する。間隙526が第2の電極502と乾燥剤524との間にある。リッド522および乾燥剤524のために使用される材料ならびに取付けプロセスは従来のものである。
【0104】
図5は、各々が、赤色、緑色、および青色放射線放出構成要素を有する、2つのピクセルを含む。赤色放射線放出構成要素は赤色ドープ領域402を含み、緑色構成要素は緑色ドープ領域404を含み、青色構成要素は、第1の電極220の2つと第2の電極502との間にある有機活性層250のドープされていない部分(実質的に赤色および緑色ゲスト材料がない)を含む。
【0105】
一実施形態(図示せず)において、青色光を発することができる有機材料を、第1の有機層の少なくとも一部の上に蒸着する。この蒸着された青色発光層のための有機材料としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(「BAlq」)、ジフェニルアントラセン誘導体、ジナフチルアントラセン誘導体、4,4−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−ビフェニル(「DPVBI」)、9,10−ジ−β−ナフチルアントラセン、9,10−ジ−ナフェンチル(naphenthyl)アントラセン、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(「ADN」)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(「CBP」)、9,10−ビス−[4−(2,2−ジフェニルビニル)−フェニル]−アントラセン(「BDPVPA」)、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセンス(diphenylanthracence)(「DPA」)、N−アリールベンゾイミダゾール(「TPBI」など)、2−tert−ブチルフェニル−5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」)、1,4−ビス[2−(9−エチル−3−カルバゾイル)ビニレニル(vinylenyl)]ベンゼン、4,4’−ビス[2−(9−エチル−3−カルバゾイル)ビニレニル]−1,1’−ビフェニル、9,10−ビス[2,2−(9,9−フルオレニレン)ビニレニル]アントラセン、1,4−ビス[2,2−(9,9−フルオレニレン)ビニレニル]ベンゼン、4,4’−ビス[2,2−(9,9−フルオレニレン)ビニレニル]−1,1’−ビフェニル、ペリレン、置換ペリレン、テトラ−tert−ブチルペリレン(「TBPe」)、ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウムIII(「F(Ir)Pic」)、ピレン、置換ピレン、スチリルアミン、青色光を発することができる他の有機小分子材料、およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0106】
この実施形態の蒸着層を、1つの材料から、1つを超える材料の共堆積から、1つを超える材料の多層として、または堆積パラメータによって定められる連続的に変わる組成を有する1つの層として、形成することができる。この蒸着層を、連続層またはパターニングされた層として形成することができる。青色発光をもたらすことに加えて、蒸着層は、また、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層、およびそれらの組合せとして機能することができる。
【0107】
(6.代替実施形態)
図6は、青色構成要素の各々が青色ドープ領域606を含む図を含む。ドープ領域606を形成するためのプロセスは、図3および図4に関して説明され示されたものと同様である。
【0108】
さらなる実施形態において、有機層を形成する前に液体組成物を基板の上に配置してもよい。図7を参照すると、第1の電極220が基板200の上に形成される。フォトレジスト層をコーティングし、それをパターニングするなどの従来のプロセスを用いて、ウェル構造730が形成される。ウェル構造は約2〜5ミクロンの範囲内の厚さを有してもよい。先に説明された技術を用いて、電荷輸送層240を、第1の電極220の上に、かつウェル構造730間に形成してもよい。先に説明された技術のいずれか1つまたは複数を用いて、液体組成物302および304が電荷輸送層240の上に配置される。この時に液体組成物302および304内の液体媒体を蒸発させてもさせなくてもよい。
【0109】
図8に示されているように、有機活性層250は、電荷輸送層240の上に、かつウェル構造730間に形成される。液体組成物302および304内のゲスト材料は、電荷輸送層240および有機活性層250の両方に移行して、赤色有機電子構成要素802のための赤色ドープ電荷輸送層842および赤色ドープ有機活性層852を形成し、緑色有機電子構成要素804のための緑色ドープ電荷輸送層844および緑色ドープ有機活性層854を形成してもよい。青色有機電子構成要素806は、ゲスト材料を実質的に含まない電荷輸送層240および有機活性層250を有する。有機活性層852、854、および250を硬化させて、有機活性層852、854、および250を実質的に固体にすることができる。第2の電極502およびその後の処理を先に説明されたように行ってもよい。
【0110】
この実施形態において、液体組成物302および304を第1の電極220の上に配置した後、有機活性層250の形成を可能にする処理自由がある。ウェル構造730は、組成物302および304内のゲスト材料が望まれない領域に移行しないようにするのを助ける。
【0111】
さらなる実施形態(図示せず)において、有機層230を形成する前に、ゲスト材料を含む液体組成物を第1の電極220上に配置してもよい。有機層230を第1の電極220の上に形成する前に、液体組成物内の液体媒体を蒸発させて実質的に固体になってもよい。有機層230は、ゲスト材料と、溶液、分散液、エマルション、または懸濁液を形成することができ、かつその横方向の移行を制限する液体媒体を含むことができる。
【0112】
さらに別の実施形態において、フィルタ層が、有機活性層250と有機電子デバイスの使用者側との間にあることができる。フィルタは、ある波長または波長スペクトルにおける放射線がフィルタ層を通って透過されることを可能にする。フィルタ層は、そのような波長または波長スペクトル外の著しい量の放射線が透過されることを可能にしない。したがって、フィルタ層は、望まれない波長における放射線を「遮断する」ことができる。
【0113】
図9に示されているように、有機層900を基板200の上に形成することができる。有機層900は、基板200の一部を形成するために使用されるほとんどいかなる有機材料(たとえば、ポリマーフィルム)の1つまたは複数の層を含んでもよい。有機層900は、理論的には、ほとんどいかなる厚さ(1nmから数百ミクロン以上)も有してもよい。しかし、厚さが薄すぎる場合、フィルタ層は、良質なフィルタ層を提供するのに十分でないことがある。範囲の他の端において、フィルタ層がより厚くなるにつれて、フィルタ層を通る放射線の透過が低減される。一実施形態において、有機層900は約1〜10ミクロンの範囲内の厚さを有する。
【0114】
有機層900は、有機材料のための、スピンコーティング、キャスト、蒸着(化学または物理)、印刷(インクジェット印刷、スクリーン印刷、溶液分配、またはそれらのいかなる組合せ)、他の堆積技術、またはそれらのいかなる組合せも含む、1つまたは複数のいかなる数の異なった技術によって形成することができる。あるいは、機械的プロセスを用いて、有機層900を基板200の上に形成することができる。1つの機械的プロセスは、基板200または有機層900上の接着剤層(図示せず)を使用し、接着剤層が有機層900と基板200との間にあるように有機層900を基板200の近くに配置することを含んでもよい。あるいは、有機層900を基板200の上に配置し加熱して、有機層900および基板200がともに溶融することを可能にすることができる。説明されたプロセスは、用いてもよい潜在的に他の機械的プロセスのうちのわずか2つである。
【0115】
液体組成物に関して先に説明されたようなプロセスのいずれか1つまたは複数を用いて、ゲスト材料を有機層900中に導入することができる。赤色ドープ領域902は赤色ゲスト材料を含み、緑色ドープ領域904は緑色ゲスト材料を含み、青色ドープ領域906は青色ゲスト材料を含む。
【0116】
有機電子デバイスの残りの形成は、ゲスト材料を有機層930に加えても加えなくてもよい以外は、上で先に説明されたプロセスのいずれかと同様である。一実施形態において、有機層930は、実質的に白色光を発してもよい有機活性層950を含む。赤色ドープ領域902は、緑色光または青色光ではなく、赤色光が、有機層900を通って有機電子デバイスの使用者側に透過されることを可能にしてもよい。緑色ドープ領域904および青色ドープ領域906は、それぞれ、緑色光および青色光のための同様の機能を行う。
【0117】
有機電子デバイスが放射線応答構成要素を含む場合、赤色ドープ領域902は、緑色光および青色光ではなく、赤色光が、有機層900を通って有機活性層950に透過されることを可能にしてもよい。緑色ドープ領域904および青色ドープ領域906は、それぞれ、緑色光および青色光のための同様の機能を行う。
【0118】
さらなる実施形態(図示せず)において、フィルタ層の製造を基板200と別個に行ってもよい。有機層900と同様の有機層のための製造プロセスを行ってもよく、電子構成要素の形成の前、間、または後、フィルタ領域を有する有機層を基板200に取付けてもよい。一実施形態において、フィルタ層を取付ける前に、ドライバまたは他の回路を基板200の上に形成してもよい。フィルタ層を取付けた後、有機電子構成要素のための有機層(たとえば、有機活性層)を形成してもよい。このように、フィルタ層を基板200に取付けるために用いてもよい比較的より高い温度に有機活性層を曝さなくてもよい。
【0119】
示されていない別の実施形態において、有機活性層250ではなく、電荷輸送層240が、ゲスト材料を含んでもよい。理論上は電荷輸送層240はフィルタ層であるが、電荷輸送層240中のゲスト材料は、国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage)(「CIE」)標準で特定されるような波長により近い、有機活性層250による色発光または受光を得るのを助けることができる。
【0120】
さらに別の実施形態において、第1および第2の電極の位置を逆にしてもよい。第2の電極502は、第1の電極220と比較して基板200により近くてもよい。放射線が第2の電極502を通って透過されるべきである場合、第2の電極502の厚さを低減して、十分な放射線(少なくとも70%)がそれを通って透過されることを可能にしてもよい。
【0121】
さらに別の実施形態において、放射線が有機電子デバイスの基板側を通って放出されるか受けられる代わりに、またはそれに加えて、放射線を、基板200と反対の有機電子デバイスの側を通って放出するか受けてもよい。そのようなデバイスにおいて、第2の電極502およびリッド522の各々は、放射線の少なくとも70%が、有機活性層250から放出されるか、有機活性層250によって受けられることを可能にしてもよい。乾燥剤524の位置を、それが第1の電極220の上にないように変えてもよい。あるいは、乾燥剤524は、放射線の少なくとも70%が、有機活性層250から放出されるか、有機活性層250によって受けられて乾燥剤524を通過する厚さの1つまたは複数の材料を含んでもよい。
【0122】
さらに別の実施形態において、第2の電極502を複数の第2の電極と取替えてもよい。図5の構成要素のいずれか1つまたは複数が、それ自体の第2の電極を有してもよいし、アレイ中のいくつかまたはすべての他の構成要素と第2の電極を共有してもよい。
【0123】
有機活性層を有するほとんどいかなる有機電子デバイスも、先に説明されたドーピング技術を用いることができる。図5は、アクティブマトリックスOLEDディスプレイで使用してもよい構成を含むが、第1の電極220を、第1の方向に延びる長さを有する導電性ストリップに配向させ、第2の電極502を、第1の方向に実質的に垂直な別の方向に延びる長さを有する導電性ストリップに変えることによって、構成をパッシブマトリックスOLEDディスプレイのために変えてもよい。ドライバ回路(図5に示されていない)が、パッシブマトリックスOLEDディスプレイのために必要でないであろう。本明細書を読んだ後、当業者は、他の修正を他のタイプの有機電子デバイスのために行って、そのようなデバイス(たとえば、センサアレイ、ボルタ電池など)の適切な機能を達成してもよいことを理解するであろう。
【0124】
さらなる実施形態において、有機層230、852、854、900、またはそれらのいかなる組合せも、可視光スペクトル外の波長における放射線を放出するか、応答するか、透過するように設計してもよい。たとえば、有機活性層250または750に、UV、IR、他の非可視放射線、およびそれらのいかなる組合せも放出させるかそれらに応答させるように、有機電子構成要素の1つを設計してもよい。別の実施形態において、放射線放出構成要素および放射線応答構成要素を同じデバイスで使用してもよい。さらに別の実施形態において、同じ有機電子デバイス内で、1つまたは複数の有機電子構成要素が、可視光スペクトル内の放射線を放出するかそれに応答してもよく、1つまたは複数の有機電子構成要素が、可視光スペクトル外の放射線(たとえば、UV、IR、または両方)を放出するかそれに応答してもよい。組合せの数はほとんど無制限である。
【0125】
ここで説明される概念を用いて、放射線を、放出、応答、またはフィルタリングするように設計されていない有機層に影響を及ぼすことができる。そのような適用を用いて、トランジスタ、抵抗器、キャパシタ、ダイオード、およびそれらの組合せを含む回路要素を形成してもよい。ゲスト材料は、有機活性層の抵抗または導電性タイプ(pタイプまたはnタイプ)を変えてもよい。より詳細には、ゲスト材料を使用して、トランジスタのしきい値電圧または利得を調整し、電流搬送電極(たとえば、ソース領域、ドレイン領域、ソース/ドレイン領域、エミッタ領域、コレクタ領域、不活性ベース領域、抵抗器コンタクト、キャパシタコンタクト、およびそれらの組合せ)を規定し、キャパシタおよびダイオードならびにそれらの組合せのためのp−n接合を形成してもよい。これらの電子構成要素を、論理回路、増幅回路、または他の回路に使用してもよく、それらの放射線関連特性のために使用してもしなくてもよいことに留意されたい。
【0126】
(7.有機電子デバイスの電子動作)
有機電子デバイス内の有機電子構成要素が放射線放出構成要素である場合、適切な電位が第1の電極220および第2の電極502上に置かれる。放射線放出構成要素の1つまたは複数が十分に順方向バイアスされるようになると、そのような順方向バイアスは、放射線が有機活性層250から放出されることを引起すことができる。有機電子デバイスの通常の動作の間、放射線放出構成要素の1つまたは複数がオフであってもよいことに留意されたい。たとえば、放射線放出構成要素のために使用される電位および電流を調整して、そのような構成要素から放出される色の強度を変えて、可視光スペクトル内のほとんどいかなる色も達成してもよい。図5の右側に最も近い3つの第1の電極220を参照すると、赤色が表示されるために、ドープ領域402を含む放射線放出構成要素はオンであり、他の2つの放射線放出構成要素はオフである。ディスプレイにおいて、行および列に信号を与えて、適切なセットの放射線放出構成要素を活性化して、ディスプレイを、見る人に対して、人が理解できる形式で表示することができる。
【0127】
有機電子デバイス内の有機電子構成要素が放射線応答構成要素である場合、放射線応答構成要素を所定の電位で(たとえば、第2の電極502は、第1の電極220より約5〜15ボルト高い電位を有する)逆バイアスしてもよい。目標波長または波長スペクトルにおける放射線が有機活性層によって受けられると、有機活性層内のキャリヤ(すなわち、電子−正孔対)の数が増加し、アレイの外側の周辺回路内のセンス増幅器(図示せず)によって検知されるような電流の増加を引起す。
【0128】
光電池などのボルタ電池において、光または他の放射線を、外部エネルギー源を伴わずに流れることができるエネルギーに変換することができる。導電性部材220および502をバッテリ(充電されるべき)または電気負荷に接続してもよい。本明細書を読んだ後、当業者は、電子構成要素、周辺回路、および潜在的に遠隔回路を、それらの特定の有機電子デバイスのためのそれらの特定の必要に最もよく適するように設計することができる。
【0129】
(8.利点)
予想外に、上述されたプロセスを用いて、有機層を形成する前または後に、有機層中の局所化ドープ領域を形成することができ、有機層の両面(電極に近い)の間のゲスト材料濃度勾配が、従来の拡散プロセスと比較してより小さく、多くの従来の拡散プロセスで見られるような実質的な横方向の移行がない。すべてではないとしても実質的な量のゲスト材料が、有機層中に移行する。ゲスト材料を有機層中に「引き」、熱拡散プロセスを行う必要をなくすことができる。したがって、多すぎる横方向の拡散での問題が生じないはずである。また、有機層の厚さを通るゲスト材料の「部分的な」拡散(有機層の一部のみを通る)または急峻な濃度勾配が生じないはずである。
【0130】
新たなプロセスを従来のプロセスと比較する。1つの従来のプロセスにおいて、ゲスト材料が有機層の外側のインクから拡散され、ゲスト材料の約25%以下が有機層に入る。この従来のプロセスを用いる、第1および第2の電極に近いゲスト材料の濃度は、概して2、3桁から数桁異なることがある。ここで説明される新たなプロセスにおいて、第1および第2の電極に近いゲスト材料濃度は、1桁未満異なり、おそらくはそれ未満異なるはずである。より低い濃度勾配は、有機電子構成要素が、発光スペクトルまたは受光スペクトルのシフトを引起すことなく、より大きい電位差にわたって動作されることを可能にする。したがって、より良好な「グレースケール」強度制御を見ることができる。また、有機電子デバイスをより高い電圧で動作させることができ、というのは、そのようなデバイスの効率が、発光スペクトルの著しいシフトを伴わずに年とともに減少するからである。
【0131】
新たなプロセスを、ゲスト材料濃度勾配がゼロに近くなるまで拡散を行う(有機層の両側に近い濃度が実質的に等しい)従来の拡散プロセスと比較する。この従来の拡散プロセスは、多すぎる横方向の拡散を可能にし、かつ高解像度アレイ内のその使用を非常に困難にする。
【0132】
ゲスト材料濃度勾配を低減するために、ゲスト材料熱駆動工程を従来のインク拡散プロセスで用いる場合、ゲスト材料は、また、それが、隣接した有機電子構成要素の適切な放射線放出または受容を妨げることがある箇所に横方向に移行することがある。フィルタ層において、フィルタは、望まれないフィルタリング特徴を有することがある。新たなプロセスがゲスト材料駆動工程を用いないので、ゲスト材料の横方向の移行の量は比較的低く保たれる。
【0133】
新たなプロセスを用いて、ゲスト材料を有機活性層中に導入し、依然として、良好な効率を達成することができ、というのは、インク拡散プロセスが必要でないからである。0.4cd/Aより高い効率を達成することができる。一実施形態において、赤色ドープ有機活性領域の効率は少なくとも1.1cd/Aであり、緑色ドープ有機活性領域の効率は少なくとも3.0cd/Aであり、青色ドープ有機活性領域の効率は少なくとも1.1cd/Aである。さらに高い効率が可能である。
【0134】
新たなプロセスは、従来のインク拡散プロセスほど厚さに敏感でない。ゲスト材料濃度勾配がより低いので、液体配合物の体積を異なった厚さのために調整することができる。有機層の異なった厚さが望ましい場合、このプロセスは、より大きい柔軟性を考慮する。従来のインク拡散プロセスは、急峻な濃度勾配によって、厚さ変化に高度に敏感である。再び、熱拡散処理工程が、新たなプロセスで必要でない。
【0135】
有機電子デバイスを形成するとき、より急な(abrupt)p−n接合を形成してもよい。より急な接合は、降伏電圧を増加させ、それらの接合におけるキャパシタンスを向上させるのを助ける。また、エンハンスメントモードトランジスタおよびデプレッションモードトランジスタを、同じ有機活性層を使用して形成してもよい。より小さく、より密に間隔を空けられた電子構成要素を製造し、それにより、回路密度を増加させてもよい。さらに、より少ない横方向の拡散が、より小さい電子構成要素が形成されることを可能にする。
【0136】
本発明の一実施形態において、液体配合物の液体媒体は、有機層と相互作用することができ、したがって、結果として生じる溶液、分散液、エマルション、または懸濁液の粘度を上昇させることができる。増加された粘度は、液体媒体およびゲスト材料が有機層の厚さを通って進み、制御下で横方向の動きを保つのを助ける。したがって、ウェル構造が必要でないが、望ましい場合は使用してもよい。ウェル構造を形成しない場合、プロセス工程を低減し、それにより、製造コストを節約し、潜在的に収率を向上させてもよい。
【0137】
新たなプロセスを、既存の設備を使用して行うことができ、かつ実質的な修正を伴わずに既存のプロセスに一体化させることができる。したがって、新たなプロセスを、新たな設備を学び特徴づけなければならないか、プロセス一体化の間過度の複雑を生じさせる著しいリスクを伴わずに実現することができる。
【実施例】
【0138】
次の特定の例は、本発明の範囲を例示し、限定しないことが意図される。
【0139】
(実施例1)
この実施例は、有機活性層および液体組成物の物理的特性の適切な操作が、バンクまたはウェルを必要とせずに有機電子デバイスの有機電子構成要素を提供することを実証する。
【0140】
有機電子構成要素を、次の構造、すなわち、ITO(第1の電極、またはアノード)/バッファポリマー/有機活性/第2の電極(カソード)を含むように製造する。基板は30×30mm(公称)のITOコーティングガラスである。電荷輸送層はPEDOT材料(バイトロン(BAYTRON)−P、ドイツのバイエルAG(Bayer AG, Germany))である。有機活性層は青色発光ポリ(スピロビフルオレン)材料(ゲスト材料を少しも伴わずに青色光を発することができるホスト材料)を含む。PEDOTを室温で平坦なガラス/ITO基板上にスピンコーティングし、次に、約200℃で約5分間焼成する。フィルム厚さは、デクテック表面プロファイラ(Dektec surface profiler)で測定されるような約150nmである。次に、青色有機活性層を、約1000rpmにおける約0.5%アニソール−o−キシレン溶液から堆積させ、これは、約70〜100nmのフィルム厚さをもたらす。
【0141】
液体組成物が、赤色ゲスト材料(赤色発光ポリ(スピロビフルオレン)材料、1.1%、11mg/ml)と、アニソール:o−キシレン:3,4−DMAの共溶媒を含む液体媒体とを含む。公称30ミクロンのノズル直径を有する単一ノズルインクジェット機械で、液体組成物を予め規定された領域上に滴下する。各滴間の間隔を約90ミクロンに設定し、滴の行の間の間隔を約200nmに設定する。滴は合体せず、滴体積および有機活性層厚さのようなパラメータによって決定される一定の幅のままである。丸い赤色ドットのサイズは、約80ミクロン、または隣接した行の間の間隔の約3分の1である。次に、フィルムを120℃で約10分間焼成する。第2の電極を、熱蒸発器を使用して堆積させ、第2の電極は、約500nmのアルミニウムで被覆された約3.5nmのBaを含有する。ITOと第2の電極との間の約4Vのバイアスにおいて、発光強度は約200cd/mである。
【0142】
代替例として、赤色液体組成物を緑色液体組成物と取替える。赤色ゲスト材料を1つまたは複数の緑色ゲスト材料(たとえば、グリーン1300シリーズ(Green 1300 Series)ポリフルオレン、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company, Midland, MI))と取替える。用いられる処理詳細および設備は、先に説明するのと実質的に同じである。同様のピクセルサイズが緑色発光ゾーンで達成される。
【0143】
この例は、ここで説明されるプロセスを用いて、多数の色を有する有機電子デバイス(すなわち、有機活性層のホスト材料のみを有する領域が青色光を発し、ホスト材料と赤色ゲスト材料とを有する領域が赤色光を発し、ホスト材料と緑色ゲスト材料とを有する領域が緑色光を発する)を製造することができることを実証する。この例は、また、発光ゾーンを規定するためにウェル構造が必要でないことを実証する。
【0144】
(実施例2)
公称200ミクロンのピクセルピッチを有するフルカラーディスプレイを使用して、実施例1と同様の実験を行う。インクジェットノズルの直径を約20ミクロンに低減し、このより小さい直径ノズルを使用して、予め規定されたパターンの多数の色を有するディスプレイを製造する。赤色または緑色発光ゾーンの直径を約65ミクロンに低減する。したがって、この例は、ここで説明されるプロセスを使用して、200ミクロン未満のピッチを有するフルカラーディスプレイを製造することができることを実証する。
【0145】
(実施例3)
赤色、緑色、および青色ポリマー線を有するフルカラーディスプレイを、実施例1で説明された手順と同様の手順を用いて製造する。40のノズルを有するインクジェットプリンタを、カラーピクセルを規定するために使用する。これらのノズルの直径は約35ミクロンであり、各滴間の工程移動は約85ミクロンである。基板は公称100mm×100mm(4インチ×4インチ)であり、ディスプレイ領域は約80mm×60mm(3.2インチ×2.4インチ)である。基板はウェル構造を少しも含まない。赤色、緑色、および青色ストライプは、(1)バンク構造を使用せずに、線パターンを達成することができること、および(2)フルカラーディスプレイを100ピクセル毎インチ(pixels−per−inch)(254ミクロンのピッチに等しい)で製造することができることを示す。
【0146】
フルカラーアクティブマトリックスディスプレイも、薄膜トランジスタピクセルドライバを有する基板で製造する。有機活性層をピクセルドライバとITOコンタクトとの間に構成する。実施例1および2のように、カラーインク閉じ込めのためにバンク構造が必要でない。
【0147】
(実施例4)
この実施例において、フルカラーバックライトデバイスを完全に平面の構造(すなわち、ITOが連続しており、パッドも列もない)で製造する。光学的に平坦なガラスITO基板から始まり、PEDOT、および有機層(青色光を発することができるホスト材料)を、基板上にスピンコーティングする(先に説明されたように)。インクジェット堆積を用いて、赤色液体組成物および緑色液体組成物の線を形成する。ウェル構造が少しも使用されずに、線は幅約80ミクロンである。この例は、赤色および緑色ポリマー線の広がりを制限する有機層の能力を明確に実証する。
【0148】
滴の間隔を変えることによって(約30ピコリットルの一定の滴体積で)、線幅を約80ミクロン(85ミクロンの滴間隔で)から約150ミクロン(30ミクロンの滴間隔で)に変え、このプロセスを、より大きい面積のディスプレイの製造に適するようにすることができる。より大きい滴間隔における滴が、互いに比較的隔離されるので、液体組成物の横方向の広がりは、個別の滴の体積によって制限され、線幅はより狭い。逆に、滴がともにより近い場合、隣接した滴の液体組成物の間でより大きい重なりおよび相互作用があり、各個別の滴のより大きい横方向の拡散を促進し、より広い線幅をもたらす。滴がともにより近く堆積されるこの場合、赤色または緑色液体組成物の1つの線で堆積された液体組成物の総体積はより大きく、というのは、より大きい数の滴が1つの線のために堆積されるからである。
【0149】
同様に、より低い溶解度のホスト層が、液体組成物のより大きい横方向の拡散をもたらすことがあり、というのは、ゲスト材料がホスト層の厚さを通って完全にかつ均一に拡散することを可能にするために、より大きい体積の液体組成物が必要なことがあるからである。
【0150】
(実施例5)
フルカラーディスプレイについて電流の2〜3桁の変化にわたって色安定性を維持することができ、発光スペクトルの著しいシフトを伴わずに、色ごとのグレースケール制御を考慮する。
【0151】
赤色発光および緑色発光構成要素を、実施例1で説明された手順と同様の手順で準備する。青色発光構成要素も、ゲスト材料をインクジェット印刷せずに、スピンコーティングによって製造する。有機電子構成要素の発光特徴を、広い強度範囲にわたってカラーアナライザ(クロマ(Chroma)モデル71701)を使用して測定する。結果は図10〜12に示されている。青色構成要素は、図12において約0.16のxおよび約0.20のyにおける色座標を示す。色は、3桁にわたって安定したままである。赤色および緑色構成要素の色は、それぞれ、図10および図11において、強度範囲の2〜3桁にわたって同様の色安定性を示す(駆動電流が同様のスケールにわたって変わった)。これらの結果は、また、図13に示されているようなCIE1931色度チャートにおいて実証される。ゲスト材料を有する緑色および赤色構成要素の色安定性は、ゲスト材料を実質的に含まない青色構成要素の色安定性と同様である。
【0152】
これらの結果は、比較的均一な濃度プロファイルで、緑色および赤色ゲスト材料が有機活性層中に移行することを実証する。2〜3桁だけ変わる電流、およびドープ有機活性層のデバイス再結合ゾーンの場合、既知のプロセスによって観察される劇的な色変化と対照的に、色座標(およびしたがって発光プロファイル)は一定のままである。
【0153】
電流の2〜3桁の変化にわたる実証された色安定性は、フルカラーディスプレイが、色ごとに、6ビット(64レベル)、8ビット(256レベル)、およびさらには10ビット(1024レベル)グレーレベルにわたって、電流(およびしたがって強度)を制御することによって作動されることを考慮する。対照的に、現在知られているデバイスのカラーピクセルのグレースケール制御は、他の手段(時間領域など)によって、一定の発光ピーク強度で(色を固定するために)作動される。
【0154】
(実施例6)
小分子電子輸送材料の連続層を、液体組成物から形成された有機層上に蒸着することができる。
【0155】
この実施例において、PEDOT正孔輸送層を、室温で約1500rpmで約1分間ガラス/ITO基板上にスピンコーティングし、次に、約180℃で約10分間焼成する。PEDOT層の厚さは約100nmである。実施例1のように、次に、青色発光ポリ(スピロビフルオレン)有機活性層を溶液からスピンコーティングして、厚さが約70〜100nmの連続層を形成する。もう一度、青色発光層は、液体組成物からインクジェット堆積される赤色および緑色ゲスト材料のためのホストとして作用する。次に、従来の熱蒸着技術を用いて、9,10−ジフェニルアントラセン(「DPA」)の第1の電子輸送層、およびアルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(「Alq」)の第2の電子輸送層を形成する。電子輸送材料を約10−7トルの圧力でエレクトロルミネセンス有機活性層上に真空蒸着し、連続層を形成する。各蒸着プロセスにおいて、ソース材料を約200から250℃に加熱して蒸気を形成し、気体としてターゲットに輸送し、そこで、それは凝縮して層を形成する。ターゲットの温度はほぼ室温である。第2の電極を、また、熱蒸発器を使用して連続層として堆積させ、第2の電極は、約0.9nmのLiF、次いで約200nmのアルミニウムを含有する。表1は、別個の、赤色、緑色、および青色デバイスの結果を要約する。
【0156】
【表1】

【0157】
この実施例は、小分子電子輸送材料の連続層を、液体組成物から形成された有機層上に蒸着して、高い効率を有するOLEDデバイスを形成することができることを実証する。さらに、電子輸送層を変えることによって、デバイス性能を調整し向上させることができる。
【0158】
蒸着されたDPA材料は蛍光青色エミッタ(約x=0.17およびy=0.28の色座標を有する)であるが、デバイスCおよびDのスペクトル輝度は、ホスト有機活性層の青色発光ポリ(スピロビフルオレン)材料の特徴であり、DPAの特徴ではない。
【0159】
(実施例7)
正孔輸送層を変えることによって、デバイス性能をさらに向上させることができる。
【0160】
HT1(ドイツのバイエルAG(Bayer AG, Germany)からのバイトロン(BAYTRON)−P VP AI 4083およびバイトロン−P VP CH8000の1:1重量比ブレンド)、HT2(PEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)、ナフィオン(登録商標)は、国際公開第2004/029128号パンフレットに記載されているようなポリマーペルフルオロスルホン酸)、およびHT3(ポリ−[1,4−フェニレン−(1−ナフチル)イミノ−1,4−フェニレン−ヘキサフルオロイソプロピリデン−1,4−フェニレン−イミノ−(1−ナフチル)−1,4−フェニレン])、ならびにそれらの組合せを、実施例6のバイトロン−P正孔輸送層の代わりに使用することができる。この実施例において、正孔輸送層(「HTL」)を、材料組成物の1つの層として、または、第1の材料組成物の第1の層、次いで第2の材料組成物の第2の層として、ガラス/ITO基板上に堆積させる。液体組成物から堆積された、赤色、緑色、および青色エレクトロルミネセンス層、蒸着によって堆積された電子輸送層(DPA/Alq)、およびカソード層(LiF/Al)を、実施例6のように形成する。表2は、この実施例のデバイスの性能を要約する。
【0161】
【表2】

【0162】
表2からわかることができるように、正孔輸送層を変えることによって、デバイス性能のさらなる向上を達成することができる。さらに、正孔輸送層を修正することは、正孔輸送層の表面の、エレクトロルミネセンス材料を含有する液体組成物との処理適合性を向上させること(たとえば、液体組成物による、正孔輸送層の向上された湿潤)によって、デバイス製造の処理特徴を向上させることができる。
【0163】
(実施例8)
4インチQVGAフォーマット(320×RGB×240ピクセル)を有するアクティブマトリックスフルカラーディスプレイデバイスを、85×255ミクロンサブピクセルで製造することができる。赤色および緑色サブピクセルを、実施例7で用いられたプロセスと同様のプロセスに従って形成する。青色サブピクセルを、蒸着された小分子青色発光材料(たとえば、9,10−ジフェニルアントラセン、DPA)の有機層によって提供される青色ルミネセンスで形成する。
【0164】
パターニングされたアノード層を有するガラス/ITO基板上に、HT2(PEDOT/ナフィオン(登録商標)、約100nm)の連続した第1の正孔輸送層、およびHT3(ポリ−[1,4−フェニレン−(1−ナフチル)イミノ−1,4−フェニレン−ヘキサフルオロイソプロピリデン−1,4−フェニレン−イミノ−(1−ナフチル)−1,4−フェニレン])、約30nm)の連続した第2の正孔輸送層を、スピンコーティング技術を用いて形成することができる。HT3層は、また、精密堆積技術(たとえばインクジェット印刷)を用いて液体組成物から対応するサブピクセルに堆積させることができる赤色および緑色ゲスト材料のためのホスト層として機能する。赤色および緑色ゲスト材料を堆積させ、HT3ホスト材料中に拡散させる。次に、DPA(約11nm)の連続層およびAlq(約10nm)の連続層を、10−7トルにおける蒸着によって形成することができる。最後に、連続カソード層を熱堆積させ、連続カソード層は、約1.2nmのLiFの第1の層、次いで約200nmのアルミニウムの第2の層を含むことができる。
【0165】
この実施例の完成したデバイスにおいて、3つの異なったサブピクセルの赤色、緑色、および青色発光は、それぞれ、液体組成物から堆積された赤色ゲスト材料(赤色発光ポリ(スピロビフルオレン))、液体組成物から堆積された緑色ゲスト材料(緑色発光ポリフルオレン)、および連続層として蒸着された青色発光DPAの特徴である。
【0166】
(実施例9)
実施例7および8の正孔輸送層HT3を、次の合成経路によって製造することができる。
モノマー1から得られたポリマー
【0167】
【化1】

【0168】
モノマー1の合成
化合物1への合成経路を以下に示す。
【0169】
【化2】

【0170】
すべての反応を窒素雰囲気下で行い、反応フラスコを部屋の明りから離して保った。4,4’−(ヘキサフロウロ(hexaflouro)イソプロピリデン)ジアニリン(15.0g)、1−ヨードナフタレン(22.9g)、およびNaOBu(12.95g)のトルエン(無水、300mL)溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(4.12g)およびPBu(2.28g)の混合物を加えた。結果として生じる反応混合物を室温で5日間撹拌し、その後、それをセライトのプラグを通して濾過し、トルエン(3×500mL)で洗浄した。揮発性物質を回転蒸発によって除去し、生成物を、EtOAc/ヘキサン(1:5)を使用するカラムクロマトグラフィ(シリカ)、次いで、CHCl/ヘキサンからの結晶化によって精製して、67%の収率(17.6g)で1aをもたらした。
【0171】
次に、1a(17.6g)のトルエン(無水、480mL)溶液を、1−クロロ−4−ヨードベンゼン(28.6g)、NaOtBu(8.65g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(2.20g)、および1,1’−ビス(ジフェニホスフィノ(diphenyphosphino))フェロセン(2.66g)と混合した。結果として生じる反応混合物を100Cに48hr加熱し、その後、それをセライトのプラグを通して濾過し、トルエン(4×250mL)で洗浄した。揮発性物質を除去し、生成物を、1Lのヘキサンを使用するカラムクロマトグラフィ(シリカ)、次いで15%CHCl/ヘキサンによって精製し、64%(15.4g)の収率で白色粉末として1を与えた。
【0172】
1の重合
ビス(1,5−シクロオクタジエン)−ニッケル−(0)(3.334g、12.12mmol)を、2,2’−ビピリジル(1.893g、12.12mmol)および1,5−シクロオクタジエン(1.311g、12.12mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(無水、15mL)溶液に加えた。結果として生じる混合物を60Cに30分間加熱した。次に、油浴温度を70Cに上昇させ、1(4.846g,6.0mmol)のトルエン(無水、60mL)溶液を急速に撹拌触媒混合物に加えた。混合物を70Cで92時間撹拌した。反応混合物が室温に冷却した後、それを、約30mLの濃縮HClを含有するアセトン/メタノール(体積による50:50)混合物600mL中に、強力に撹拌しながら、ゆっくり注いだ。淡灰色繊維沈殿物が形成し、これは、撹拌の間部分的にばらばらになった。混合物を1時間撹拌し、固体を濾過によって単離した。固体をクロロホルム約200mLに溶解し、約30mLの濃縮HClを含有するアセトン/メタノール(50:50)混合物1200mL中に、強力に撹拌しながら注いだ。淡灰色繊維塊が形成し、これを1時間撹拌し、濾過によって単離した。固体を再び約200mLのクロロホルムに溶解し、シリカゲル60のベッド(約3〜4cm)を通過させた。フィルタベッドを約400mLのクロロホルムですすぎ、組合されたクロロホルム溶液を約150〜200mLに濃縮し、アセトン/メタノール(体積による50:50)1600mL中に、強力に撹拌しながら注いだ。わずかにオフホワイト色の繊維沈殿物が形成し、これを1時間撹拌した。固体を濾過によって単離し、真空下で一晩乾燥させた。固体をテトラヒドロフラン(250mL)に溶解し、次に、酢酸エチル1500mL中に、強力に撹拌しながらゆっくり注いだ。ポリマーは、わずかにオフホワイト色の繊維スラリーとして沈殿した。この混合物を1時間撹拌した後、沈殿物を濾過によって単離した。この固体を1回または複数回テトラヒドロフラン(220mL)に再溶解し、0.2umシリンジフィルタ(PTFEフィルタ膜)を通して濾過し、メタノール1200mL中に、強力に撹拌しながらゆっくり注いだ。ポリマーは白色繊維スラリーとして沈殿し、これを濾過によって単離した。結果として生じる材料を真空下で一晩乾燥させた後、ポリマー3.31g(75%)を単離した。GPC(THF、室温):Mn=92,000;Mw=219,900;Mw/Mn=2.39。
【0173】
(実施例10)
紫外光電子分光法(「UPS」)、光学吸収分光法、および電気化学レドックス測定を用いて、HT3の電子構造を測定した。HT3のLUMOおよびHOMOは、それぞれ、約2.0eVおよび約5.7eVであった。赤色、緑色、および青色エミッタのLUMO(それぞれ、約3.1eV、約2.9eV、および約2.7eV)がすべて、HT3のLUMOより大きいので、HT3は、正孔をアノードから発光層に輸送することができることに加えて、効果的な電子遮断層(発光層からアノードへの電子輸送を防止する)として役立つ。対照的に、実施例7および8のデバイスに組入れられたときのHT1およびHT2の主機能は、発光層中への正孔の注入を促進することである。
【0174】
先の明細書において、本発明を特定の実施形態に関して説明した。しかし、当業者は、特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を行うことができることを理解する。したがって、明細書および図は、限定的ではなく例示的な意味でみなされるべきであり、そのような修正はすべて、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0175】
利益、他の利点、および問題の解決策を、特定の実施形態に関して上述した。しかし、利益、利点、問題の解決策、および、いかなる利益、利点、または解決策も生じるかより顕著になることを引起してもよいいかなる要素も、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての、重要な、必要な、または本質的な特徴または要素と解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】基板、第1の電極、ウェル構造、ウェル構造間にある電荷輸送層および有機活性層の一部の断面図の図を含む。(先行技術)
【図2】第1の電極を含む基板、および有機層の部分の一部の断面図の図を含む。
【図3】ゲスト材料が有機層に加えられるときの図2の基板の図を含む。
【図4】ゲスト材料が有機層中に移行した後の図3の基板の図を含む。
【図5】実質的に完成した有機デバイスを形成した後の図4の基板の図を含む。
【図6】3つの異なったゲスト材料が有機層中に移行した後の図2の基板の図を含む。
【図7】有機層を形成する前に液体組成物が基板の上に配置される、ウェル構造を使用する図2の基板の図を含む。
【図8】有機層を形成する前に液体組成物が基板の上に配置される、ウェル構造を使用する図2の基板の図を含む。
【図9】基板、ゲスト材料を含むフィルタ層、第1の電極、および有機層の一部の断面図の図を含む。
【図10】さまざまな光強度についての色座標のプロットを含む。
【図11】さまざまな光強度についての色座標のプロットを含む。
【図12】さまざまな光強度についての色座標のプロットを含む。
【図13】CIE1931色度チャート上の、図10〜12からの点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機層を形成するための方法であって、
少なくとも1つの有機材料を含む第1の有機層を基板の上に形成する工程と、
第1の液体組成物を前記第1の有機層の第1の部分の上に配置することによって、少なくとも1つのゲスト材料を前記第1の有機層中に組入れる工程であって、
前記第1の液体組成物が、少なくとも、第1のゲスト材料と、第1の液体媒体とを含み、
前記第1の液体組成物が前記第1の有機層と接触し、
実質的な量の前記第1のゲスト材料が前記第1の有機層中に移行する工程と、
第2の有機層を前記第1の有機層の少なくとも一部の上に蒸着する工程であって、前記第2の有機層が、青色光を発することができる少なくとも1つの有機材料を含む工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の液体組成物を前記第1の有機層の上に配置する前、前記第1の有機層が実質的に固体の層であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の液体組成物を前記第1の有機層の上に配置した後、前記第1のゲスト材料の実質的にすべてが前記第1の有機層中に移行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の有機層が、青色光を発することができる材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の有機層が正孔輸送材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の有機層が電子遮断材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の有機層が連続層を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の有機層が連続層を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の有機層が電子輸送材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の有機層が正孔遮断材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の有機層が、前記第1のゲスト材料を実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の液体組成物を前記第1の有機層の上に配置する工程が、前記基板の上に存在するウェル構造なしで行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の有機層を前記基板の上に形成する前、ウェル構造を前記基板の上に形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の液体組成物を前記第1の有機層の上に配置する工程が、精密堆積技術を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって形成されたディスプレイであって、
前記ディスプレイが、少なくとも、第1の放射線放出構成要素と、第2の放射線放出構成要素と、第3の放射線放出構成要素とを含む放射線放出構成要素を有することを特徴とするディスプレイ。
【請求項16】
前記ディスプレイが、可視光スペクトルの実質的にすべてにわたって放射線を放出し、
前記第1の放射線放出構成要素が、赤色光スペクトル内の第1の発光最大を有し、
前記第2の放射線放出構成要素が、緑色光スペクトル内の第2の発光最大を有し、
前記第3の放射線放出構成要素が、青色光スペクトル内の第3の発光最大を有することを特徴とする請求項15に記載のディスプレイ。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって形成された有機電子デバイス。
【請求項18】
基板と、
前記基板の上にある第1の連続有機層であって、第1の部分および第2の部分を含む第1の連続有機層と、
第1のゲスト材料であって、実質的な量の前記第1のゲスト材料が前記第1の連続有機層内にあり、
前記第1のゲスト材料の少なくとも一部が前記第1の部分内にあり、
前記第2の部分が、前記第1のゲスト材料を実質的に含まない、第1のゲスト材料と、
前記基板の上にある第2の連続有機層であって、第3の部分および第4の部分を含む第2の連続有機層と、
第2のゲスト材料であって、実質的な量の前記第2のゲスト材料が前記第2の連続有機層内にあり、
前記第2のゲスト材料の少なくとも一部が前記第3の部分内にあり、
前記第4の部分が、前記第2のゲスト材料を実質的に含まない、第2のゲスト材料とを含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項19】
前記第1の連続有機層が正孔輸送材料を含むことを特徴とする請求項18に記載の有機電子デバイス。
【請求項20】
前記第1の連続有機層が電子遮断材料を含むことを特徴とする請求項18に記載の有機電子デバイス。
【請求項21】
前記第2の連続有機層が電子輸送材料を含むことを特徴とする請求項18に記載の有機電子デバイス。
【請求項22】
前記第2の連続有機層が正孔遮断材料を含むことを特徴とする請求項18に記載の有機電子デバイス。
【請求項23】
前記第1の連続有機層が第5の部分をさらに含み、
実質的な量の第3のゲスト材料が前記第1の連続有機層内にあり、
前記第3のゲスト材料の少なくとも一部が前記第5の部分内にあり、
前記第2の部分が、前記第3のゲスト材料を実質的に含まないことを特徴とする請求項18に記載の有機電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−511885(P2007−511885A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539840(P2006−539840)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037599
【国際公開番号】WO2005/048373
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】